JP4380082B2 - 自動車用制御装置間の通信システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車に搭載される複数の制御装置間の通信システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車においては、複数の制御装置(以下、ECUとも記す)が通信によりデータを共有して制御対象を制御する、様々な形態の制御装置間通信システムが構築されている。そして、例えば、電気モータとガソリンエンジンとを動力源として備えた所謂ハイブリッド自動車では、図7に示すような自動車用制御装置間の通信システムが採用されていた。
【0003】
まず、図7において、HV−ECU10は、エンジン制御用のECU(エンジンECU)20と共にハイブリッド自動車の動力を制御するECUであり、自動車の運転状態に応じた電気モータの必要パワーとエンジンの必要パワーとを算出して、電気モータを制御すると共に、エンジンの必要パワーを示すパワー要求やエンジンの目標回転数などのデータを、エンジンECU20へ送信する。
【0004】
そして、エンジンECU20は、エンジン回転数や水温などを検出して、それら検出値のデータをHV−ECU10へ送信すると共に、HV−ECU10からの上記パワー要求や目標回転数などのデータに従って、エンジンのスロットル開度などを制御する。尚、このエンジンECU20からHV−ECU10へ送信されるエンジン回転数などのデータは、HV−ECU10にて電気モータとエンジンの各必要パワーなどを算出するのに用いられる。
【0005】
また、図7において、メータECU30は、車室内のメータやランプ類を制御するECUであり、エアコンECU40は、エアコン装置(空気調和装置)を制御するECUである。
ここで、HV−ECU10とエンジンECU20は、当該両ECU10,20に専用の通信線15を介して一対一に接続されている。尚、通信線15は、HV−ECU10からエンジンECU20への送信用線と、エンジンECU20からHV−ECU10への送信用線とからなっている。
【0006】
また、エンジンECU20と、メータECU30と、エアコンECU40は、自動車内でLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)を形成するためのLAN用通信線50に接続されている。
そして、この図7の通信システムにおいて、HV−ECU10とエンジンECU20は、通信線15を介した一対一のシリアル通信によって、互いが共有すべきデータ(上記パワー要求,目標回転数,エンジン回転数,水温など)をやり取りしている。
【0007】
また、HV−ECU10と、メータECU30やエアコンECU40との間でもデータが共有され、そのデータについては、エンジンECU20が、通信線15による通信系とLAN用通信線50による通信系とのゲートウエイになって共有を実現している。また更に、エンジンECU20と、メータECU30やエアコンECU40との間でも、LAN用通信線50を介した通信により、エンジン回転数や水温などの所定のデータが共有される。
【0008】
つまり、この図7の通信システムでは、通信線15を用いたシリアル通信により、HV−ECU10とエンジンECU20とで共有するデータ、及び、HV−ECU10とメータECU30やエアコンECU40とで共有するデータが送受信される。そして、LAN用通信線50を用いた所定の調停手順(アービトレーション)を伴うLAN通信により、HV−ECU10とメータECU30やエアコンECU40とで共有するデータ、及び、エンジンECU20とメータECU30やエアコンECU40とで共有するデータが送受信される。
【0009】
尚、この通信システムにおいて、HV−ECU10とエンジンECU20との間に専用の通信線15を設けているのは、HV−ECU10とエンジンECU20との間では、自動車の動力を制御するための重要な情報(例えばパワー要求やエンジン回転数)が共有されると共に、そのような情報のデータを、何等かの調停手順が伴うLAN通信でやり取りするように構成すると、リアルタイム性が不足して満足な制御ができないからである。また、リアルタイム性とは、送信相手に届くデータが最新の値に変更される度合いを意味しており、リアルタイム性を高めるためには、そのデータの送受信頻度を高くする必要がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記図7の通信システムにおいて、HV−ECU10とエンジンECU20との間では、自動車の動力を制御するための情報が通信線15を介してやり取りされるため、その通信線15による通信に異常が発生すると、自動車を走行させることができなくなってしまうという問題がある。
【0011】
また、図7の通信システムにおいては、前述したように、エンジンECU20が、通信線15による通信系とLAN用通信線50による通信系とのゲートウエイになって、HV−ECU10と、メータECU30やエアコンECU40といった他のECUとの間のデータ共有を実現させているため、ただでさえ高速なデータ通信が要求されるHV−ECU10とエンジンECU20との間の通信線15による通信での通信データ量が増えてしまい、自動車の動力を制御する上で好ましくない。そして、その結果、エンジンECU20での通信処理が肥大化するという問題がある。
【0012】
尚、多重通信異常時の従来技術として、例えば特開平8−79313号公報のように、2線式通信線を用いて接続された各装置が、正常時には、2本の通信線の差電圧を使って通信し、一方の通信線が異常な時には、正常な他方の通信線のみで通信を実現するものや、特開平11−41261号公報のように、1つの制御装置に2系統の通信バスが接続された通信システムにおいて、一方の通信バス系に異常が生じた場合に、その通信バス系をシステムから切り離すことで、正常な通信バス系への影響をなくすようにしたものがある。しかし、その何れの技術でも上記各問題を解決することはできない。
【0013】
そこで、本発明は、自動車の動力を制御する一対の制御装置間の専用通信線による通信に異常が生じても自動車を走行させることが可能で、且つ、その専用通信線による通信での通信データ量を低減可能な自動車用制御装置間の通信システムを提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の自動車用制御装置間の通信システムでは、図7に示した従来の通信システムと同様に、互いが通信によりデータを共有して自動車の動力を制御する第1の制御装置と第2の制御装置とが、当該両制御装置に専用の通信線(以下、専用通信線という)を介して一対一に接続されると共に、その専用通信線とは別のLAN用通信線を介して、該LAN用通信線に接続された他の制御装置とも通信を行う。
【0015】
尚、第1の制御装置と第2の制御装置は、図7に例示したHV−ECU10とエンジンECU20のように、自動車のエンジンや電気モータといった動力源自体を制御するものでも良いし、そのような動力源とトランスミッションなどのパワートレインを制御するものでも良い。
【0016】
ここで特に、請求項1の通信システムにおいて、第1の制御装置と第2の制御装置は、LAN用通信線に夫々接続されている。
そして、第1の制御装置と第2の制御装置は、互いが共有するデータのうち、LAN用通信線を介した通信よりも高いリアルタイム性が要求される特定のデータを、専用通信線を介して通信し、前記特定のデータ以外のデータを、LAN用通信線を介して通信する。
【0017】
そして更に、第1の制御装置と第2の制御装置は、専用通信線による通信に異常が発生したことを検知すると、前記特定のデータも、LAN用通信線を介して通信するように構成されている。しかも、第1の制御装置と第2の制御装置との各々は、LAN用通信線から上記特定のデータを受信したと判断したならば、専用通信線による通信に異常が発生していることを検知しているか否かを確認して、異常の発生を検知している場合にのみ、上記LAN用通信線から受信した特定のデータを制御に用いるように構成されている。
このような請求項1の通信システムにおいて、第1の制御装置と第2の制御装置は、互いが共有するデータのうち、LAN用通信線を介した通信よりも高いリアルタイム性が要求される特定のデータだけを、両制御装置間の専用通信線を介して通信し、その特定のデータ以外のデータは、LAN用通信線を介して通信する。また、第1の制御装置と第2の制御装置は、その何れか一方が専用通信線による通信系とLAN用通信線による通信系とのゲートウエイになるのではなく、各々が他の制御装置とLAN用通信線を介して通信する。
【0018】
よって、第1の制御装置と第2の制御装置との間の専用通信線上には、第1の制御装置と第2の制御装置とで共有されるデータのうち、高いリアルタイム性が必要なデータだけが流れることとなり、その専用通信線による通信での通信データ量を低減することができる。このため、第1の制御装置と第2の制御装置との通信処理も軽減することができる。尚、LAN用通信線には、第1の制御装置と第2の制御装置とで共有されるデータのうちで高いリアルタイム性が必要の無いデータと、第1の制御装置と他の制御装置とで共有されるデータ及び第2の制御装置と他の制御装置とで共有されるデータとが流れることになる。
【0019】
しかも、請求項1の通信システムにおいて、第1の制御装置と第2の制御装置は、専用通信線による通信に異常が発生したことを検知すると、その専用通信線で通信していた上記特定のデータもLAN用通信線を介して通信するようになっているため、上記専用通信線が切れる等して、その専用通信線による通信が不能となっても、第1の制御装置と第2の制御装置は、上記特定のデータを本来のリアルタイム性は得られないものの最低限共有することができる。
【0020】
よって、第1の制御装置と第2の制御装置との間の専用通信線による通信に異常が生じても、自動車の動力が制御不能とならず、自動車の最低限の走行を可能にすることができる。
以上のように、請求項1の通信システムによれば、自動車の動力を制御する一対の制御装置間の専用通信線による通信での通信データ量を低減することができると共に、その専用通信線による通信に異常が生じても自動車を走行させることが可能になる。
【0021】
ところで、第1の制御装置と第2の制御装置との各々は、専用通信線による通信に異常が発生したことを検知した場合に、請求項2に記載の如く、上記特定のデータのうち、固定値では自動車を退避走行させることができないデータ(即ち、固定値では自動車の動力を制御することができないデータ)だけを、LAN用通信線を介して通信するように構成することができる。
【0022】
そして、このようにすれば、専用通信線による通信に異常が生じた場合のLAN用通信線でのトラフィック増加を抑えることができる。つまり、専用通信線による通信に異常が生じた場合には、それまで専用通信線で通信されていたデータがLAN用通信線で通信されることとなるため、そのLAN用通信線での通信データ量あるいは通信頻度が増加することとなるが、その増加分を極力抑えつつ、自動車の退避走行(所謂リンプホーム)を可能にすることができる。
【0023】
また更に、本発明の自動車用制御装置間の通信システムでは、前述したように、第1の制御装置と第2の制御装置との各々は、LAN用通信線から上記特定のデータ(即ち、本来は専用通信線で通信されるデータ)を受信したと判断したならば、専用通信線による通信に異常が発生していることを検知しているか否かを確認して、異常の発生を検知している場合にのみ、上記LAN用通信線から受信した特定のデータを制御に用いるように構成されている。
【0024】
このため、専用通信線による通信が本当は正常であるにもかかわらず、第1の制御装置と第2の制御装置との何れかが、ノイズなどの影響によってLAN用通信線から上記特定のデータを受信したと判断しても、そのような不確かな受信データが制御に用いられてしまうことがなく、その結果、制御の信頼性を高めることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明が適用された実施形態の自動車用制御装置間の通信システムについて、図面を用いて説明する。
まず図1は、実施形態の自動車用制御装置間の通信システムを表す構成図である。尚、本実施形態の通信システムも、前述した図7の通信システムと同様に、電気モータとガソリンエンジンとを動力源として備えたハイブリッド自動車に搭載されるものである。そして、図1において、図7と同様のものについては、同じ符号を付しているため、詳細な説明は省略する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の通信システムでは、図7の通信システムと比較すると、エンジンECU20だけでなく、HV−ECU10もLAN用通信線50に接続されている点が異なる。
そして、HV−ECU10とエンジンECU20は、互いが共有するデータのうち、高いリアルタイム性が必要でLAN用通信線50を介した通信ではリアルタイム性が足らない特定のデータ(以下、第1種データという)は、両ECU10,20間に設けられた専用通信線15を介して通信し、その第1種データ以外のデータ(即ち、高いリアルタイム性が必要なく、リアルタイム性の面においてLAN用通信線50を介した通信でも十分なデータであり、以下、こうしたデータを第2種データという)は、LAN用通信線50を介して通信する。
【0027】
具体例を挙げると、本実施形態において、HV−ECU10からエンジンECU20へは、エンジンの必要パワーを示すパワー要求,トランスミッションの変速状態を示すシフト情報,エンジンの目標回転数,エンジンへの燃料カットを指示する燃料カット要求,エンジンの吸排気バルブの開閉タイミングを変更させるためのVVT進角要求,エアコンの動作を許可したことを示すエアコン許可信号,ラジエータファンの駆動を指示するラジエータファン駆動要求,エンジンECU20による通信線15へのデータ送信に異常が生じていることを示すエンジンECU送信異常情報などの各データが送信される。
【0028】
そして、それらデータのうち、パワー要求,シフト情報,目標回転数,燃料カット要求,及びエンジンECU送信異常情報の各データは、上記第1種データとして、通信線15を介しエンジンECU20へと送信され、その他のVVT進角要求,エアコン許可信号,及びラジエータファン駆動要求などの各データは、上記第2種データとして、LAN用通信線50を介しエンジンECU20へと送信される。
【0029】
また逆に、エンジンECU20からHV−ECU10へは、エンジン回転数,エンジンの冷却水温,エンジンの吸気温度,エンジンへの燃料カットを実行している最中であることを示す燃料カット実行中情報,HV−ECU10による通信線15へのデータ送信に異常が生じていることを示すHV−ECU送信異常情報などの各データが送信される。
【0030】
そして、それらデータのうち、エンジン回転数,燃料カット実行中情報,及びHV−ECU送信異常情報の各データは、上記第1種データとして、通信線15を介しHV−ECU10へと送信され、その他の冷却水温,及び吸気温度などの各データは、上記第2種データとして、LAN用通信線50を介しHV−ECU10へと送信される。
【0031】
尚、本実施形態の通信システムにおいては、HV−ECU10とメータECU30やエアコンECU40との間、及び、エンジンECU20とメータECU30やエアコンECU40との間でも、LAN用通信線50を介した通信によりデータが共有される。例えば、HV−ECU10からエアコンECU40へ、LAN用通信線50を介して、エアコン装置を制御するためのデータが送信され、また、HV−ECU10からメータECU30へ、LAN用通信線50を介して、車速データなどが送信される。そして、エアコンECU40は、HV−ECU10からのデータに応じてエアコン装置を制御し、メータECU30は、上記車速データに応じて車速メータの表示を制御する。また例えば、エンジンECU20からメータECU30へ、LAN用通信線50を介して、冷却水温などのデータが送信される。そして、メータECU30は、エンジンECU20からの冷却水温データに応じて水温メータの表示を制御する。
【0032】
そして更に、本実施形態の通信システムにおいて、HV−ECU10とエンジンECU20は、通信線15による通信に異常が発生したことを検知すると、上記第1種データのうちの一部を、LAN用通信線50を介して通信するようになっている。
【0033】
そこで次に、HV−ECU10とエンジンECU20とで夫々実行される通信のための処理について、図2〜図6を用いて説明する。尚、以下の説明においては、LAN用通信線50介して行う通信のことを、LAN通信と言う。
まず図2は、専用通信線15による一対一のシリアル通信(以下単に、シリアル通信ともいう)の受信処理を表すフローチャートであり、この受信処理は、シリアル通信の受信毎(即ち、通信線15からデータを受信する毎)に実行される。
【0034】
図2に示すように、この受信処理では、まずステップ(以下単に「S」と記す)110にて、シリアル通信の受信異常(換言すれば、通信相手の送信異常)を検出するための受信間隔カウンタをクリアする。
そして、続くS120にて、今回受信したシリアル通信のデータを、制御で使用するデータ用に解凍する。具体的には、受信したデータから実質的なデータ部分を抽出して、それをRAMなどの記憶手段に格納する。そして、このS120の処理により、通信相手からの第1種データが自分側の記憶手段に格納され、その後、当該受信処理が終了される。
【0035】
次に、図3は、シリアル通信の異常検出処理を表すフローチャートであり、この処理は所定時間毎(例えば16ms毎)に実行される。
図3に示すように、この異常検出処理では、まずS210にて、前述の受信間隔カウンタをインクリメント(+1)する。
【0036】
そして、続くS220にて、受信間隔カウンタが、予め設定された所定値N以上であるか否かを判定し、所定値N以上でなければ、正常であると判断して、そのまま当該異常検出処理を終了する。
これに対し、S220にて、受信間隔カウンタが所定値N以上であると判定した場合には、「当該異常検出処理の実行周期T×所定値N」の間、通信線15からデータを受信していないということであり、この場合には、通信線15によるシリアル通信に異常が発生したと判断して、S230に進む。そして、このS230にて、受信異常情報のフラグをセットし、その後、当該異常検出処理を終了する。
【0037】
そして更に、HV−ECU10とエンジンECU20との各々は、上記S230で受信異常情報のフラグをセットすると、通信線15によるシリアル通信と、LAN用通信線50によるLAN通信との両方で、通信相手のECUへ、そのECUにシリアル通信の送信異常が生じていることを示す送信異常情報を送信する。例えば、HV−ECU10側にて、上記受信異常情報のフラグがセットされた場合には、HV−ECU10からエンジンECU20へ、前述のエンジンECU送信異常情報がシリアル通信とLAN通信との両方で送信され、逆に、エンジンECU20側にて、上記受信異常情報のフラグがセットされた場合には、エンジンECU20からHV−ECU10へ、前述のHV−ECU送信異常情報がシリアル通信とLAN通信との両方で送信される。
【0038】
つまり、本実施形態の通信システムにおいて、HV−ECU10とエンジンECU20との各々は、少なくとも上記「T×N」の間に1回は、通信線15にデータを送出するようになっているため、各ECU10,20は、異常検出処理(図3)のS220にて、上記「T×N」の間、通信線15からデータを受信していないことを検知した場合に、通信線15によるシリアル通信に異常が発生したと判断して、自己のECU内では、通信相手のECUからシリアル通信のデータを受信できない旨を示す受信異常情報のフラグをセットし、また、通信相手のECUへは、その通信相手のECUがシリアル通信のデータを正常に送信していない旨を知らせるための送信異常情報を送信するようにしている。
【0039】
次に、図4は、LAN通信の送信データを作成するための送信データ作成処理を表すフローチャートであり、この処理は所定時間毎(例えば8ms毎)に実行される。
図4に示すように、この送信データ作成処理では、まずS310にて、LAN通信で送信する通常のデータ(即ち、前述した第2種データと、メータECU30やエアコンECU40との間で共有する汎用性の高いデータ)を、LAN通信の送信データとして作成する。
【0040】
具体的には、当該ECUにて算出したデータに、そのデータの種別を表すIDを付け、そのIDを付したデータを、送信データとして、所定の送信データ用アドレスにコピーする。
尚、本実施形態において、送信データ用アドレスとしては、一定時間毎に送信(以下、この送信を定期送信という)すべきデータが夫々格納される定期送信データ用アドレスと、値が変化した時に送信(以下、この送信をイベント送信という)すべきデータが夫々格納されるイベント送信データ用アドレスとの2種類があり、S310の処理では、定期送信すべきデータにIDを付したものは、上記定期送信データ用アドレスのうち、予め当該データ種に割り当てられたアドレスにコピーし、イベント送信すべきデータにIDを付したものは、上記イベント送信データ用アドレスのうち、予め当該データ種に割り当てられたアドレスにコピーする。そして、定期送信データ用アドレスの各々に格納された各データは、一定時間毎に実行される定期送信処理(図示省略)により、LAN用通信線50へ定期的に送出され、イベント送信データ用アドレスの各々に格納された各データは、後述する図5のイベント送信処理により、そのデータ値が変化したと判定された時に、LAN用通信線50へと送出される。
【0041】
次に、S320にて、通信相手のECUから、前述した送信異常情報(本処理を実行するのがHV−ECU10であれば、エンジンECU20からのHV−ECU送信異常情報であり、本処理を実行するのがエンジンECU20であれば、HV−ECU10からのエンジンECU送信異常情報)が送信されて来ているか否かにより、自己のシリアル送信(即ち、通信線15へのデータ送信)に異常が発生しているか否かを判定する。
【0042】
ここで、送信異常情報が送信されて来ていない場合には、異常無しと判断して、そのまま当該送信データ作成処理を終了するが、送信異常情報が送信されて来ている場合には、通信線15への自己のシリアル送信に異常が発生していると判断して、S330に進む。
【0043】
そして、S330にて、通常はシリアル通信で送信している第1種データのうち、固定値では自動車を退避走行させることができないデータ(即ち、固定値では自動車の動力を制御することができないデータであり、以下、最重要データという)を、LAN通信の送信データとして作成する。
【0044】
具体的には、S310の処理と同様に、当該ECUにて算出した最重要データに、そのデータの種別を表すIDを付け、そのIDを付したデータを、送信データとして、イベント送信データ用アドレスのうち、予め当該データ種に割り当てられたアドレスへコピーする。そして、このS330の後、当該送信データ作成処理を終了する。
【0045】
尚、本実施形態にいおいて、HV−ECU10からエンジンECU20への最重要データは、パワー要求,シフト情報,及び目標回転数であり、エンジンECU20からHV−ECU10への最重要データは、エンジン回転数である。また、HV−ECU10とエンジンECU20との各々は、図3のS220でシリアル通信に異常が発生したと判断した場合、通信相手から受け取るはずの上記最重要データ以外の第1種データについては、異常になる前の値または予め定められたフェイルセーフ値(デフォルト値)といった固定値を制御に用いる。
【0046】
次に、図5は、LAN通信のイベント送信処理を表すフローチャートであり、この処理は所定時間毎(例えば4ms毎)に実行される。
図5に示すように、このイベント送信処理では、まずS410にて、イベント送信対象の各データが格納されているイベント送信データ用アドレスの先頭のアドレスを、検索アドレスとしてセットする。
【0047】
次に、続くS420にて、検索アドレスのデータ値が前回から変化しているか否かを判定し、変化している場合には、S430に進んで、その検索アドレスのデータを、イベント送信するために送信バッファへセット(コピー)する。すると、その送信バッファからLAN用通信線50へデータが送出されることとなる。
【0048】
このようなS430の処理により、検索アドレスのデータをイベント送信したならば、次のS440にて、検索アドレスを、1送信データ分だけ次のアドレスに更新し、続くS450にて、検索アドレスが終了した(即ち、検索アドレスが、イベント送信データ用アドレスの最終アドレスを越えた)か否かを判定する。そして、検索アドレスが終了していなければ、上記S420以降の処理を再度行い、検索アドレスが終了していれば、当該イベント送信処理を終了する。
【0049】
また、上記S420にて、検索アドレスのデータ値が前回から変化していないと判定した場合には、その検索アドレスのデータについてはイベント送信する必要がないので、そのままS440に進む。
つまり、このイベント送信処理では、イベント送信データ用アドレスの各々を先頭から順にサーチして、格納されているデータの値が前回から変化していれば、そのデータをLAN用通信線50へと送出するようにしている。
【0050】
このため、図4のS320でシリアル送信が異常であると判断されて、S330の処理により、最重要データがLAN通信の送信データとしてイベント送信データ用アドレスの何れかに格納されるようになれば、当該イベント送信処理にて、その最重要データの値が前回から変化したと判定される毎に、その最重要データがLAN用通信線50へと送出されることとなる。
【0051】
次に、図6は、LAN通信の受信処理を表すフローチャートであり、この受信処理は、LAN通信の受信毎(即ち、LAN用通信線50からデータを受信する毎)に実行される。
図6に示すように、この受信処理では、まずS510にて、LAN用通信線50から受信したデータが、通常のデータか、シリアル通信の異常時にだけ送信される第1種データ(詳しくは前述の最重要データ)かを、その受信データに付されているIDから判別する。
【0052】
そして、受信したデータが通常のデータであれば、そのままS530に移行して、その受信データに対してデータ解凍処理を行う。具体的には、受信したデータから実質的なデータ部分を抽出して、そのデータが自己のECUにおける制御に必要なデータであれば、それをRAMなどの記憶手段に格納して制御に用いられるようにする。
【0053】
そして、このS530で上記データ解凍処理を行った後、当該受信処理を終了する。
一方、上記S510にて、LAN用通信線50から受信したデータが、シリアル通信の異常時にだけ送信される第1種データ(最重要データ)であると判別した場合には、S520に進む。
【0054】
このS520では、図3のS230でセットされる受信異常情報のフラグを参照することにより、当該ECUにてシリアル通信の異常を検知しているか否かを確認する。
そして、受信異常情報のフラグがセットされていれば、当該ECUにてシリアル通信の異常を検知しており、LAN用通信線50から今回受信したデータは、通信線15を介したシリアル通信相手のECUからLAN用通信線50へ送出された本当の第1種データ(最重要データ)であると判断できるため、S530に進んで、前述のデータ解凍処理を行う。よって、この場合には、LAN用通信線50から受信した最重要データが、RAMなどの記憶手段に格納されて制御に用いられることとなる。
【0055】
これに対し、上記S520で、当該ECUにてシリアル通信の異常を検知していない(即ち、受信異常情報のフラグがセットされていない)と判定した場合には、S530のデータ解凍処理を行うことなく、そのまま当該受信処理を終了する。つまり、この場合には、LAN用通信線50から第1種データ(最重要データ)が送信されて来るはずがないためである。
【0056】
尚、本実施形態では、HV−ECU10とエンジンECU20とのうち、一方が、第1の制御装置に相当し、他方が、第2の制御装置に相当している。そして、メータECU30とエアコンECU40との各々が、LAN用通信線に接続された他の制御装置に相当している。
【0057】
以上のような本実施形態の通信システムでは、ハイブリッド自動車の動力を制御するHV−ECU10とエンジンECU20とが、LAN用通信線50にも夫々接続されている。そして、その両ECU10,20は、互いが共有するデータのうち、LAN用通信線50を介した通信よりも高いリアルタイム性が要求される第1種データだけを、専用の通信線15を介してシリアル通信し、その第1種データ以外の第2種データは、LAN用通信線50を介して通信するようになっている。また更に、HV−ECU10とエンジンECU20は、その何れか一方が通信線15による通信系とLAN用通信線50による通信系とのゲートウエイになるのではなく、各々が他のECU30,40とLAN用通信線50を介して通信するようになっている。
【0058】
よって、HV−ECU10とエンジンECU20との間の専用通信線15上には、その両ECU10,20で共有されるデータのうち、高いリアルタイム性が必要な第1種データだけが流れることとなり、その専用通信線15によるシリアル通信での通信データ量を低減することができる。このため、HV−ECU10とエンジンECU20との通信処理も軽減することができる。
【0059】
しかも、本実施形態の通信システムにおいて、HV−ECU10とエンジンECU20との各々は、所定時間(=T×N)以上継続して通信線15からデータを受信できない場合に、通信線15によるシリアル通信に異常が発生したと判断して(S220:YES)、その旨を示す送信異常情報を相手のECUに送信するようになっている(S230)。そして、HV−ECU10とエンジンECU20とのうち、相手からの送信異常情報を受けた方は、通信線15で送信していた第1種データをLAN用通信線50で送信し(S320:YES,S330)、送信異常情報を送った方は、LAN用通信線50から第1種データを受信して、制御に用いるようにしている(S510〜S530)。
【0060】
このため、通信線15が切れる等して、その通信線15によるシリアル通信が不能となっても、HV−ECU10とエンジンECU20は、第1種データを本来のリアルタイム性は得られないものの最低限共有することができ、自動車の動力が制御不能とならず、その結果、自動車の最低限の走行(退避走行)を可能にすることができる。
【0061】
また特に、HV−ECU10とエンジンECU20との各々は、通信線15によるシリアル通信に異常が発生したことを検知した場合に、第1種データの全てではなく、そのうち、固定値では自動車を退避走行させることができない最重要データだけを、LAN用通信線50を介して通信するようにしているため、通信線15によるシリアル通信に異常が生じた場合のLAN用通信線50でのトラフィック増加(LAN用通信線50での通信データ量あるいは通信頻度の増加)を抑えることができる。
【0062】
そして更に、本実施形態の通信システムにおいて、HV−ECU10とエンジンECU20との各々は、通信線15で本来通信される最重要データをLAN用通信線50から受信したと判断したならば(S510:シリアル通信異常時のみ送信されるデータ)、通信線15によるシリアル通信に異常が発生していることを検知しているか否かを確認して(S520)、異常の発生を検知している場合にのみ、LAN用通信線50から受信した最重要データを制御に用いるようにしている(S520:YES,S530)。
【0063】
このため、通信線15によるシリアル通信が本当は正常であるにもかかわらず、両ECU10,20の何れかが、ノイズなどの影響によってLAN用通信線50から最重要データを受信したと判断しても、そのような不確かなデータが制御に用いられてしまうことがなく、制御の信頼性を高めることができる。
【0064】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
例えば、 上記実施形態の通信システムでは、HV−ECU10とエンジンECU20とが、自動車の動力源自体(電気モータ及びガソリンエンジン)を制御するものであったが、自動車の動力を制御する一対の制御装置としては、エンジン等の動力源を制御するECUとトランスミッションなどのパワートレインを制御するECUでも良い。
【0065】
また、上記実施形態の通信システムにおいて、HV−ECU10とエンジンECU20との各々が、LAN用通信線50による第2種データの通信に異常が発生したことを検知すると、その第2種データを通信線15でシリアル通信する、といったフェイルセーフ機能を追加すれば、信頼性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態の自動車用制御装置間の通信システムを表す構成図である。
【図2】 HV−ECUとエンジンECUとの夫々で実行されるシリアル通信の受信処理を表すフローチャートである。
【図3】 HV−ECUとエンジンECUとの夫々で実行されるシリアル通信の異常検出処理を表すフローチャートである。
【図4】 HV−ECUとエンジンECUとの夫々で実行されるLAN通信の送信データ作成処理を表すフローチャートである。
【図5】 HV−ECUとエンジンECUとの夫々で実行されるLAN通信のイベント送信処理を表すフローチャートである。
【図6】 HV−ECUとエンジンECUとの夫々で実行されるLAN通信の受信処理を表すフローチャートである。
【図7】 従来の自動車用制御装置間の通信システムを表す構成図である。
【符号の説明】
10…HV−ECU、15…通信線、20…エンジンECU、30…メータECU、40…エアコンECU、50…LAN用通信線
Claims (2)
- 互いが通信によりデータを共有して自動車の動力を制御する第1の制御装置と第2の制御装置とが、当該両制御装置に専用の通信線を介して一対一に接続されると共に、前記専用の通信線とは別のLAN用通信線を介して、該LAN用通信線に接続された他の制御装置とも通信を行う自動車用制御装置間の通信システムにおいて、
前記第1の制御装置と前記第2の制御装置は、前記LAN用通信線に夫々接続されており、互いが共有するデータのうち、前記LAN用通信線を介した通信よりも高いリアルタイム性が要求される特定のデータを、前記専用の通信線を介して通信すると共に、前記特定のデータ以外のデータを、前記LAN用通信線を介して通信し、
更に、前記第1の制御装置と前記第2の制御装置は、前記専用の通信線による通信に異常が発生したことを検知すると、前記特定のデータも、前記LAN用通信線を介して通信するように構成されており、
しかも、前記第1の制御装置と前記第2の制御装置との各々は、
前記LAN用通信線から前記特定のデータを受信したと判断したならば、前記専用の通信線による通信に異常が発生していることを検知しているか否かを確認して、異常の発生を検知している場合にのみ、前記受信した特定のデータを制御に用いるように構成されていること、
を特徴とする自動車用制御装置間の通信システム。 - 請求項1に記載の自動車用制御装置間の通信システムにおいて、
前記第1の制御装置と前記第2の制御装置との各々は、
前記専用の通信線による通信に異常が発生したことを検知した場合に、前記特定のデータのうち、固定値では自動車を退避走行させることができないデータだけを、前記LAN用通信線を介して通信するように構成されていること、
を特徴とする自動車用制御装置間の通信システム。
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