以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の用紙搬送装置の一実施形態である印刷装置10について説明する。
図1は、本発明の一実施例である印刷装置10の構成を示したブロック図である。図1に示すように、印刷装置1は、本体に搭載されている本体側制御基板12と、キャリッジに搭載されているキャリッジ基板13とを備えている。本体側制御基板12には、主に、1チップ構成のマイクロコンピュータ(CPU)32と、ROM33と、RAM34と、ゲートアレイ36と、イメージメモリ37とが搭載されている。
CPU32は、ROM33に予め記憶された制御プログラムに従い、印刷処理を実行し、タイミング信号およびリセット信号を生成し、また、各信号をG/A36へ転送するものである。CPU32には、CRモータ駆動回路39、LFモータ駆動回路41、位置制御装置44などが接続されており、各デバイスの動作はCPU32により制御されている。
ROM33は、CPU32により実行される各種制御プログラムや、それらの制御プログラムをCPU32により実行する上で必要なデータなどを格納した書き換え不能なメモリである。なお、図4,図5,図11,図13のフローチャートで示す処理を実行するプログラムは、このROM33内に格納されている。RAM34は、CPU32により実行される各種処理に必要なデータやプログラムを一時的に記憶するためのメモリであり、振幅メモリ34aと、現在位相メモリ34bとを備える。振幅メモリ34aは振幅Aを格納するためのメモリであり、現在位相メモリ34bは搬送ローラ20aの現在位相θを格納するためのメモリである。振幅Aおよび現在位相θは、図13を参照して後述する用紙搬送処理において、補正値Cを取得するために必要なパラメータであるが、その詳細は後述する。
CRモータ駆動回路39は、キャリッジを往復移動させるキャリッジモータ(CRモータ)16を駆動する回路である。キャリッジモータ16には、キャリッジモータ16の回転を検出するCR用エンコーダ17が接続されており、CR用エンコーダ17の検出信号はCPU32に帰還されている。LFモータ駆動回路41は、後述する位置制御装置44により生成された制御信号に基づいて制御された駆動電流をLFモータ42に出力し、LFモータ42を駆動する回路である。LFモータ42は、用紙を搬送する搬送ローラ20a(図2参照)を回転駆動するためのモータである。LFモータ42には、LFモータ42の回転量を検出するLF用エンコーダ18が接続されており、LF用エンコーダ18の検出信号はCPU32に帰還されている。
位置制御装置44は、搬送ローラ20aの目標回転量Xmと、LF用エンコーダ18によって検出される搬送ローラ20aの回転量との偏差に基づいて制御信号を生成し、LFモータ駆動回路41に出力することにより、LFモータ42をフィードバック制御するためのものである。LFモータ42のフィードバック制御により、搬送ローラ20aは目標回転量Xmの分だけ回転させられ、記録用紙Pを目的位置まで搬送する。
G/A36は、CPU32から転送されるタイミング信号と、イメージメモリ37に記憶されている画像データとに基づいて、その画像データを記録媒体に印刷するための記録データ(駆動信号)と、その記録データと同期する転送クロックと、ラッチ信号と、基本駆動波形信号を生成するためのパラメータ信号と、一定周期で出力される吐出タイミング信号とを出力し、それら各信号を、ヘッドドライバが実装されたキャリッジ基板13へ転送する。
また、G/A36は、コンピュータなどの外部機器からセントロ・インターフェース(I/F)46を介して転送されてくる画像データを、イメージメモリ37に記憶させる。そして、G/A36は、コンピュータなどからI/F44を介して転送されてくるセントロ・データに基づいてセントロ・データ受信割込信号を生成し、その信号をCPU32へ転送する。なお、G/A36とキャリッジ基板13との間で通信される各信号は、両者を接続するハーネスケーブルを介して転送される。また、CPU32と、ROM33、RAM34、EEPROM35及びG/A36とは、バスライン45を介して接続されている。
キャリッジ基板13は、実装されたヘッドドライバ(駆動回路)によって記録ヘッド11を駆動するための基板である。記録ヘッド11とヘッドドライバとは、厚さ50〜150μmのポリイミドフィルムに銅箔配線パターンを形成したフレキシブル配線板19により接続されている。ヘッドドライバは、本体側制御基板12に実装されたG/A36を介して制御され、記録モードに合った波形の駆動パルスを圧電アクチュエータに印加するものである。これにより、インクが記録ヘッド11に穿設されているノズルから記録用紙Pに向けて吐出され印刷がされる。なお、キャリッジに搭載されて主走査方向に往復移動する記録ヘッド11により主走査方向1行分の印刷が終わる毎に、搬送ローラ20aが目標回転量Xmだけ回転駆動されて記録用紙Pが1行分搬送され、記録ヘッド11は次の1行分を印刷する。このように1行分の搬送と印刷とを繰り返して、記録用紙Pに画像が印刷される。
図2を参照して、印刷装置10内に設けられ、記録用紙Pを搬送する搬送ユニットについて説明する。図2(a)は、搬送ユニットの斜視図であり、図2(b)は、搬送ユニットの側面図である。
図2に示すように、搬送ユニットは、主な構成として、搬送ローラ20aと、排紙ローラ21aと、LFモータ42と、LFモータの回転駆動力を搬送ローラ20aおよび排紙ローラ21aに伝達するためのギヤやベルトで構成される動力伝達機構43とを備える。動力伝達機構43は、正逆回転可能なLFモータ42の駆動軸に取付けられたピニオン43aと、これに噛み合う伝動ギヤ43bと、伝動ギヤ43bに噛み合う中間ギヤ43cと、この中間ギヤ43cと排紙ギヤ43dとの間に架け渡された伝達ベルト43eとからなり、伝動ギヤ43bは搬送ローラ20aの一側(左端部)に取り付けられている。他方の排紙ギヤ43dは排紙ローラ21aの一端(左端部)に取付けられている。
搬送ローラ20aは対向する押さえローラ(図示せず)との間で用紙Pを挟持し、排紙ローラ21aは対向する押さえローラ(図示せず)との間で用紙Pを挟持する。そして、LFモータ42が正回転して搬送ローラ20aと排紙ローラ21aとを回転駆動すると、記録用紙Pが搬送方向(図2(b)において矢印Bで示す)の下流側へ搬送される。
また、図2(b)には、LF用エンコーダ18の回転スリット板18aの貼り付け位置を破線で図示する。回転スリット板18aには、円周に沿って所定間隔毎にスリットが形成されている。LF用エンコーダ18は、光センサ18bを通過する回転スリット板18aのスリット数(搬送ローラ20aの回転量に相当)を検出し、搬送ローラ20aの回転量に応じたパルス信号を出力するように構成されている。本実施例においては、図2(b)に示すように、この回転スリット板18aは、搬送ローラ20aと同軸回転するものである。
そして、LF用エンコーダ18によって検出される搬送ローラ20aの回転量と目標回転量Xmとの偏差に基づいて生成される制御信号に基づいて、LFモータ42をフィードバック制御することにより、搬送ローラ20aは目標回転量Xmの分だけ回転され、記録用紙Pを目的とする位置まで搬送する。
ここで、記録用紙Pを高精度に搬送するためには、LF用エンコーダ18から出力されるパルス信号の数(LF用エンコーダ18によって検出される搬送ローラ20aの回転量)と搬送ローラ20aの実際の回転量との間に高度な線形性が成り立っていることが望ましい。しかしながら、搬送ローラ20aの反りやコーティング厚みムラ、伝動ギヤ43bの偏心、さらに、回転スリット板18a自体の偏心や歪みに起因して、LF用エンコーダ18から出力されるパルス信号当たりの搬送ローラ20aの実際の回転量は、搬送ローラ20aの1周分を1周期として、周期的に変動している。
図3を参照して、搬送ローラ20aの1周分を1周期として発生する周期変動を説明する。図3は、搬送ローラ20aとその軸端に取り付けられた回転スリット板18aとを模式的に示す図である。図3に示すように、回転スリット板18aの周辺には、円周に沿って所定間隔毎にスリット18sが形成されている。なお、周期変動を理解しやすくするために、回転スリット板18aが搬送ローラ20aの軸心に対し、極端に偏心している状態を示している。
図3に示すように、回転スリット板18aが搬送ローラ20aの軸心に対し偏心して取り付けられていると、同じ数のスリット数(出力されるパルス数に相当)が検出された場合であっても、搬送ローラ20aの実際の回転量は変動する。よって、出力パルス数に基づいて搬送ローラ20aの回転量を制御すると、搬送ローラ20aの実際の回転量には、搬送ローラ20aの1周分を1周期とする周期的な位置ずれ(以下、周期ズレという)が生じる。よって、記録ヘッド11(図1参照)による1行分の印刷と記録用紙Pの1行分の搬送とを繰り返す動作がされると、その搬送距離にはムラが生じ、画像の疎密が発生するので、画質が低下する。なお、搬送ローラ20aの反りやコーティング厚みムラ、伝動ギヤ43bの偏心、さらに、回転スリット板18a自体の歪みがあっても、同様の周期ズレが生じる。
このような周期ズレを補正するために、従来では、回転スリット板18aの一回転分のパルス補正データを予めメモリに格納しておき、格納されたパルス補正データをパルスが計数される毎に読み出して補正し、周期ズレを補正して搬送ローラ20aの正確な回転量を演算することが行われていた。しかしながら、このように構成すると、搬送ローラ20aの所定の原点を基準とした絶対的な位置に対応した補正データを用いなければならないので、搬送ローラ20aの原点を検出可能なLF用エンコーダを用いなければならずコストアップが避けられない。また、一回転分のパルスのパルス補正データを全てメモリに記憶させるために、メモリを大容量としなければならないので、コストアップが避けられない。
これに対し、図4から図13を参照して以下に説明するように、本実施例の印刷装置10では、搬送ローラ20aの原点とは無関係に、LF用エンコーダ18により検出可能な相対的な値である搬送ローラ20aの回転量に基づいて補正値Cを取得することとした。
図4を参照して、補正パラメータ決定処理について説明する。図4は、補正パラメータ決定処理を示すフローチャートである。補正パラメータ決定処理は、印刷装置10の電源投入時、印刷装置10において用紙づまりが発生したとき、印刷装置10の搬送ユニット(図2参照)を覆うカバー(図示せず)が開閉されたとき、または予め定められた解像度以上の高解像度での印刷を実行するときの少なくともいずれか1つの条件が成立した場合に起動される。
補正パラメータ決定処理では、まず、周波数変動データ取得処理により、周波数変動データg(t)を取得する(S16)。なお、周波数変動データg(t)については、後述する。次に、周波数変動データ解析処理により、周波数変動データg(t)に基づいて、振幅Aおよび現在位相θを決定する(S18)。補正パラメータ決定処理で決定される振幅Aおよび現在位相θは、後述する用紙搬送処理(図13参照)において、補正値Cを決定するためのパラメータに相当する。
図5を参照して、周波数変動データ取得処理(S16)について説明する。図5は、周波数変動データ取得処理を示すフローチャートである。
図5に示すように、周波数変動データ取得処理(S16)では、まず、搬送ローラ20aの回転速度が一定の目標回転速度Vとなるように、LFモータ42を所定時間の間フィードバック制御し、その回転速度vを取得する(S162)。なお、このフィードバック制御は、LF用エンコーダ18により検出される搬送ローラ20aの回転速度vをフィードバック値として、そのフィードバック値vが目標回転速度Vに一致するように、位置制御回路44(図1参照)において制御指令が生成され、その生成された制御信号に基づいてLFモータ42に駆動電流が流されることにより実行される。そして、目標回転速度Vで回転される搬送ローラ20aの回転速度vを、Δtのサンプリング周期(例えば0.001sec)でN回分検出する。なお、Δtのサンプリング周期で回転速度vをN回検出するために、S162における搬送ローラ20aの回転制御では、搬送ローラ20aが一定速度で回転される区間が、NΔt以上あるように制御される。
次に、サンプリングした回転速度vに基づいて、回転速度データv(t)を生成する(S164)。
図6(a)を参照して、回転速度データv(t)について説明する。図6(a)は、回転速度データv(t)を示す図である。図6(a)に示すように、回転速度データg(t)は、時間的変化に伴う回転速度vの変化を示すデータであり、搬送ローラ20aの回転速度vは、目標回転速度V(図6(a)においては、14インチ/sec)を中心に振動する。なお、図6(a)において、搬送ローラ20aの1周分の時間間隔Tを示す。発明者は、搬送ローラ20aの周期Tと、回転速度データv(t)とを比較検討した結果、この回転速度データv(t)には、搬送ローラ20aの1周分を1周期とする振動の周波数の周期的変動が含まれることを知見した。
そして、さらに、周期Tで振動する周波数の周期的変動の大きさおよび位相は、LF用エンコーダ42により検出される搬送ローラ20aの回転量と実際の回転量との間に発生する、ローラ1周分を1周期とする周期ズレの大きさ及び位相と高い相関関係にあることを知見した。
そこで、回転速度データv(t)に含まれる、振動の周波数の周期的変動の大きさおよび位相を取得するために、単位時間u内に含まれる回転速度データv(t)の振動回数をカウントする。本実施例では、まず、回転速度データv(t)を速度変動データv’(t)に変換する。速度変動データv’(t)は、回転速度データv(t)から目標回転速度Vを減算して得られるデータである。
図6(b)は、速度変動データv’(t)を示す図である。上述のように、回転速度データv(t)は目標回転速度Vを中心として振動するから、速度変動データv’(t)は、図6(b)に示すように、0を中心として振動する。
図7は、図6(b)に示す速度変動データv’(t)を拡大して示す図である。図7を参照して、速度反転回数gをカウントする方法の一例を説明する。本実施例では、単位時間u内において、速度変動データv’(t)が0となる要素の数を速度反転回数gと称する。なお、速度変動データv’(t)が0になる回数は、単位時間u内に含まれる振動回数に相当するから、速度反転回数gは、搬送ローラ20aの加速度の正負の入れ替わり回数に相当するデータである。ここで、Δtはサンプリング周期を示し、v’(nΔt)はn番目にサンプリングされた搬送ローラ20aの回転速度vと目標回転速度Vとの差分を示し、v’((n+1)Δt)はn+1番目にサンプリングされた搬送ローラ20aの回転速度vと目標回転速度Vとの差分を示す。よって、v’(nΔt)×v’((n+1)Δt)を演算し、その値が正であれば、n番目にサンプリングされた速度vと、n+1番目にサンプリングされた速度vとは、目標回転速度Vを境界として反転していないことが判断できる。一方、v’(nΔt)×v’((n+1)Δt)を演算し、その値が負であれば、n番目にサンプリングされた回転速度vと、n+1番目にサンプリングされた回転速度vとは、目標回転速度Vを境界として反転していることが判断できる。
そして、単位時間u内において、v’(nΔt)×v’((n+1)Δt)の値が負となる回数をカウントする。ここでは、単位時間uとは、搬送ローラ20aの周期Tの1/4に相当する時間であって、単位時間u内には、回転速度vが12回サンプリングされるものとして説明する。したがって、時間(nΔt)における速度反転回数g(nΔt)を取得するためには、時間(nΔt)から12サンプル分の速度変動データv’について、上記演算結果が負となる回数をカウントすればよい。図7に示す例では、時間(nΔt)から単位時間uの間に、12サンプル分の速度変動データが含まれ、速度変動データv’(t)=0となる要素が5つあるから、速度反転回数g(nΔt)として、「5」が取得される。
図8は、時間的経過に伴う速度反転回数gの変化を示す周波数変動データg(t)を示す図である。上述のように、周波数変動データg(t)は、回転速度データv(t)の振動の周波数の周期的変動を示すデータであるから、回転速度データv(t)の振動が密である時間tにおいては値が高くなり、回転速度データv(t)の振動が疎である時間tにおいては値が低くなるデータである。なお、図8において、正方形で示す点の間隔は、搬送ローラ20aの周期Tに相当する。図8に示すように、周波数変動データg(t)には、搬送ローラ20aの周期Tを1周期とする振動成分が含まれる。後述する周波数変動データ解析処理(S18)において、この周波数変動データg(t)に含まれる振動成分の大きさと位相とが決定され、その大きさと位相とに基づいて、補正値C取得のためのパラメータである振幅Aと現在位相θとが演算されるが、その詳細は後述する。
図5に戻り説明する。上述したように、回転速度データv(t)に基づいて、速度変動データv’(t)が取得される(S166)。そして、v’((n+1)Δt)*v’(nΔt)が負である場合(S168:Yes)、f(nΔt)=1とされる(S170)。一方、v’((n+1)Δt)*v’(nΔt)が正である場合(S168:No)、f(nΔt)=0とされる(S172)。そして、単位時間u分のf(nΔt)を累積加算することにより、下記数1で特定される周波数変動データg(t)を生成する(S174)。
次に、定速区間NΔt内における総速度反転回数GTを、下記式2に基づいて演算して取得する(S176)。
(式2)
GT=Σf(f)=Σ{g(t)}/m
このように、周波数変動データ取得処理によれば、周波数変動データg(t)が生成され、総速度反転回数GTが取得される。
図9を参照して、周波数変動データg(t)の大きさと位相とを決定する方法の一例を説明する。図9(a)は、周波数変動データg(t)の大きさと位相とを決定するために生成される参照信号rQ(t)を示す図であり、図9(b)は、周波数変動データg(t)から周波数変動データg(t)の平均値GAを差し引いた相対周波数変動データ{g(t)−GA}と、参照信号rQ(t)とを重ね合わせて示す図である。
図9(a)に示すように、参照信号rQ(t)とは、搬送ローラ1周分の時間間隔Tを1周期とし、半周期連続する「1」と、半周期連続する「−1」との繰り返しで構成される信号であり、互いに位相が2π/qずつ異なるq個の参照信号rQ(t)が生成される(但し、Qを参照番号と称し、0≦Q<q)。ここで、参照信号の個数qは、搬送ローラ20aの周期T内におけるサンプル数であって、本実施例では、q=48であるものとして説明する。
そして、生成されたq個の参照信号rQ(t)のそれぞれと、相対周波数変動データ{g(t)−GA}との内積値SQを算出する。具体的には、相対周波数変動データ{g(t)−GA}の各要素と参照信号rQ(t)の各要素とを乗算し、その乗算結果の総和を演算する。相対周波数変動データと参照信号との正負が一致している場合、その乗算結果は正の値となる。一方、相対周波数変動データと参照信号との正負が不一致である場合、その乗算結果は負の値となる。よって、その乗算結果の総和である内積値SQを算出し、その内積値SQが最大値となる参照信号rQ(t)の位相が、相対周波数変動データの位相と最も一致度が高い。なお、図9(b)においては、図面を見易くするために、周期T内に12点の要素のみを図示するが、本実施例では、周期T内に48点の要素が存在する。
図9(b)は、参照信号rQ(t)と周波数変動データg(t)とを重ね合わせて示す図である。図9(b)に示すように、参照信号rQ(t)と周波数変動データg(t)との位相が一致しているとき、内積値SQが最大になる。よって、内積値SQが最大になるときの参照信号rQ(t)の位相に基づいて、周波数変動データg(t)の位相を決定することができる。
図10は、参照番号Qと内積値SQとの対応関係を示す図である。図10に示すように内積値SQが最大値となるときの参照番号QをQ’とする。この参照番号Q’で特定される参照信号rQ’(t)の位相は、(Q’/q)×2πであるから、周波数変動データg(t)の位相も(Q’/q)×2πであることが分かる。また、周波数変動データg(t)の周波数変動が大きいほど内積値SQも大きくなるから、内積値SQは周波数変動データg(t)変動の大きさ(振幅)に相当する値である。
図11を参照して、周波数変動データ解析処理(S18)について説明する。図11は、周波数変動データ解析処理(S18)を示すフローチャートである。周波数変動データ解析処理は、周波数変動データg(t)に含まれる、ローラ1周分を1周期とする振動成分の大きさと位相とを決定する処理である。
まず、参照番号Q=0とし(S182)、図9を参照して説明した参照信号rQ(t)を生成する(S184)。最初は、Q=0であるから、参照信号r0(t)が生成される。次に、下記式3に示すように、生成した各参照信号rQ(t)と相対周波数変動データ(g(t)−GA)との内積値SQを演算する(S186)。最初は、参照番号Q=0であるから、参照信号r0(t)と相対周波数変動データ(g(t)−GA)との内積値S0が演算される。
(式3)
SQ=(g(t)−GA)・rQ(t)
ただし・は内積演算記号である。
次に、参照番号Qに1を加算する(S188)。そして、参照番号Qが参照信号の個数であるqに等しくなるまで、S184から処理を繰り返す。これにより、参照番号0から(q−1)までの全ての参照信号rQ(t)が生成され、それぞれの参照信号rQ(t)と相対周波数変動データ(g(t)−GA)との内積値SQが演算される。
全ての参照信号rQ(t)について内積値SQが演算され、参照番号Q=qとなると(S190:Yes)、次に、演算された内積値SQのうち最大値SQ’、およびその最大値SQ’に対応する参照番号Q’を決定する。
そして、決定された内積値の最大値SQ’および参照番号Q’に基づいて、振幅Aおよび現在位相θを演算し、振幅メモリ34aおよび現在位相メモリ34bにそれぞれ格納する(S194)。なお、本実施例では、下記の式4、式5に従って、振幅Aおよび現在位相θを演算するものとして説明する。
(式4)
振幅A=K*SQ’*GT
ただし、Kは予め定められた比例定数、GTは周波数変動データ取得処理(S16)で取得された総速度反転回数
(式5)
現在位相θ=(Q’/q)*2π+θ0
ただし、現在位相θは搬送ローラ20aの現在の位相、θ0は予め定められた定数。
このように補正パラメータ決定処理によれば、周波数変動データg(t)に基づいて、振幅Aおよび現在位相θが決定される。なお、ここで決定される現在位相θは、定速回転終了時における搬送ローラ20aの位置(以下、基準位置という)に対応する初期位相である。
図12を参照して、振幅Aおよび現在位相θを用いて、周期ズレを補正するための補正値Cを演算する方法について説明する。図12は、搬送ローラ20aの現在位相θと、その現在位相θに対応した補正値Cとの関係を示す図である。図12に示すように、本実施例では、搬送ローラ20aを現在位相θから目標回転量Xmだけ回転させるとき、周期ズレを補正するための補正値Cを、下記の式6のように演算し、取得することとした。
(式6)
C=Asin(θ+Xm/2)
ここで、Xmは、記録用紙Pを目的位置まで搬送するために必要な搬送ローラ20aの回転量である。そして、θ+Xm/2は、現在位相θから目標回転量Xmだけ回転させる際の搬送ローラ20aの中間位相(平均位相)である。すなわち、搬送ローラ20aの現在位相θおよび目標回転量Xmに応じて、補正値Cが演算され、取得される。
図13のフローチャートを参照して、上記のように構成される印刷装置10において実行される用紙搬送処理について説明する。図13は、用紙搬送処理を示すフローチャートである。この用紙搬送処理は、LF用エンコーダ18により検出される搬送ローラ20aの回転量をフィードバック値として、LFモータ42をフィードバック制御することにより、用紙Pを目標位置まで搬送させる処理である。
まず、振幅メモリ34aから振幅Aを読み込み、現在位相メモリ34bから現在位相θを読み込む(S2)。次に、用紙Pを目標位置まで搬送させる間にLF用エンコーダ18により検出される搬送ローラ20aの回転量、すなわち目標回転量Xmを取得する(S4)。そして、上記式6で説明したように、現在位相θと目標回転量Xmとに基づいて、現在位相θと目標位相(θ+Xm)との中間位相(θ+Xm/2)に対応した補正値Cを演算し、取得する(S6)。
次に、目標回転量Xmから補正値Cを減算し、目標回転量Xmを補正する(S8)。そして、現在位相θを、θ+Xmに更新する(S10)。なお、現在位相θは位相であるから、その値が2πを超えた場合には、2πを減算し、常に0≦θ≦2πを満たすように、値を調整する。
次に、補正された目標回転量Xmと、LF用エンコーダ18により検出される搬送ローラ20aの回転量が一致するように、LFモータ42をフィードバック制御することにより、記録用紙Pを目的とする位置まで搬送する(S12)。ここで、LF用エンコーダ18により検出される搬送ローラ20aの回転量と実際の回転量との間には、搬送ローラ20aの1周分を1周期とする周期ズレが発生するが、適切な補正値Cにより目標回転量Xmを補正しているので、その周期ズレが相殺され、記録用紙Pは目的とする位置まで高精度に搬送される。
そして、全ての搬送が終了したかを判断し(S14)、搬送が未だ終了していない間は(S14:No)、S4の処理に戻り次の搬送処理を開始するが、搬送が終了すると(S14:Yes)、用紙搬送処理を終了する。
このように、本実施例の印刷装置10によれば、定速回転終了時における搬送ローラ20aの位置を基準位置として、その基準位置に対応する現在位相θ(初期位相)が、パラメータ決定処理(図11参照)により決定される。そして、その後は、基準位置に対する搬送ローラ20aの回転量に応じて、現在位相θが更新される。すなわち、LF用エンコーダ18が原点を検出不可能なものであっても、搬送ローラ20aの現在位相θを演算により決定することができるから、安価な構成としつつ、高精度な搬送が可能となる。
図14を参照して、本実施例で説明した処理で取得される補正値Cの効果について説明する。図14は、LF用エンコーダ18により検出される搬送ローラ20aの回転量と記録用紙Pの実際の搬送距離(搬送ローラ20aの実際の回転量に相当)との関係を示す図であり、横軸は搬送回数を示し、縦軸は搬送距離を示す。そして、破線は補正値Cを用いない場合において、搬送距離が3.937mmとなるように、54回搬送したときの実際の搬送距離の推移を示す。これによれば、補正前の搬送距離には、搬送回数7〜8回を周期とするバラツキが見られる。これは、ローラ径の約一周分の周期に相当し(=3.94mm*7.5=約1.2inch)、ローラ径由来のバラツキであることがわかる。
これに対し、実線は補正値Cを用いた場合の測定結果を示し、一点鎖線は、補正値Cを示す。補正値Cにより目標回転量Xmを補正した場合、図14において実線で示すように、記録用紙Pの実際の搬送距離の目標搬送距離3.937(mm)からのズレが抑制され、より高精度で記録用紙Pが搬送されることがわかる。
このように、本実施例の印刷装置10によれば、搬送ローラ20aの現在位相θと振幅Aと目標回転量Xmとに基づいて適切な補正値Cが演算され、取得されるので、搬送ローラ20aの回転角度位置毎に補正値Cを記憶させておく必要がなく、また、搬送ローラ20aの原点を検出可能な機構を備えた高価なLF用エンコーダを用いる必要がないため、印刷装置10の構成を安価としつつ、記録用紙Pを高精度に搬送することができる。
また、参照信号Q’との内積値SQに総速度変動回数GTは予め定められた比例定数Kとを乗算した値が振幅Aとして決定されるので、簡単な演算処理で、個々の印刷装置10に応じた適切な補正値Cを取得することができ、より高精度な搬送が可能である。
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、本実施例では、参照信号rQ(t)を生成し、参照信号rQ(t)と相対周波数変動データg’(t)との内積値SQを演算することにより、振幅Aと現在位相θとを演算する場合を説明したが、周波数変動データg(t)をフーリエ変換することにより、周波数変動データg(t)から搬送ローラ20aの1周分を1周期とする振動成分を抽出し、その位相に基づいて現在位相θを決定し、およびその振幅に所定の定数を乗算して得られる値に基づいて、振幅Aを決定しても良い。
また、本実施例で説明した周波数変動データ取得処理(S16)では、一定速度で回転される搬送ローラ20aの回転速度vを取得し、その回転制御が終了した後、周波数変動データg(t)を生成していたが、搬送ローラ20aの一定速度回転動作の間にリアルタイムで周波数変動データg(t)を生成するように構成しても良い。
図15は、周波数変動データ取得処理の変形例を示すフローチャートである。図15に示すように、変形例の周波数変動データ取得処理(S26)では、まず、変数t、v0に初期値「0」を設定する(S262)。ここで、変数tは現在時刻を示す変数であり、変数v0は、前回取得された回転速度を示す変数である。
次に、時刻tにおける速度反転の有無を示す関数f(t)のうち、f(−mΔt)からf(−Δt)のまでの値に「0」を設定する(S264)。ここで、mは、正の整数であり、1/4周期分のサンプル数である。このように予め設定しておくことにより、後に周波数変動データg(t)を演算する処理(S276)において、整合性がある値を得ることができる。
次に、搬送ローラ20aの回転速度が一定の目標回転速度Vとなるように、LFモータ42を所定時間の間フィードバック制御する(S266)。そして、現在の回転速度v1を取得する(S268)。
次に、(v0−V)×(v1−V)を演算し、その値が負であるかを判断する。負である場合(S270:Yes)、f(nΔt)=1とされる(S272)。一方、正である場合(S270:No)、f(nΔt)=0とされる(S274)。そして、時刻(t−mΔt)から時刻tまでのf(nΔt)を集計することにより、周波数変動データg(t)を生成する(S276)。すなわち、時刻t−mΔtから現在時刻tまでに含まれる速度反転回数を周波数変動データg(t)として取得する。なお、これ以降は、mサンプル分前の速度反転の有無を示すデータf(t−mΔt)は使用されないので、破棄することができる。
次に、変数v0をv1とし、現在時刻tをt+Δtとし、且つ時間Δtだけ待機する(S278)。そして、現在時刻tが未だNΔtに到達していなければ(S280:No)、S268の処理に戻る。これにより、今回取得した回転速度v1が、前回の回転速度v0とされ、且つ、時間Δt後に回転速度v1が取得され(S268)、処理が繰り返される。
そして、現在時刻tがNΔtに到達すると(S280:Yes)、取得した周波数変動データg(t)に基づいて、総速度反転回数GTを演算し(S282)、一定速度回転を停止し(S284)、処理を終了する。
図15に示す変形例の周波数変動データ取得処理(S26)によれば、本実施例で説明した周波数変動データ取得処理と同様の効果が得られるが、特に一定速度回転動作の間に周波数変動データg(t)をリアルタイムで演算するので、回転速度vを保持するメモリが節約でき、さらにコストを抑制できるという効果がある。
また、本実施例では、振幅Aを、内積値の最大値SQ’に比例する値として演算したが、内積値の最大値SQ’を0.5乗した値に、所定の比例定数を乗算して、振幅Aを演算してもよい。このようにすれば、より適切な補正値Cを取得することができ、より高精度の搬送が可能となる。
また、本実施例では、速度変動データv’(t)は、目標回転速度Vと回転速度データv(t)との差分を示すデータであったが、回転速度データv(t)の平均速度を演算し、その平均速度と回転速度データv(t)との差分を、速度変動データv’(t)として生成しても良い。
また、本実施例では、回転速度データv(t)を周波数変動データg(t)に変換する際に基準とする単位時間uを、搬送ローラ20aの1周分の時間の1/4に相当する時間であるものとして説明した。このようにすれば、周波数変動データg(t)を生成するために必要な演算量はそれほど多くないので、高速に処理できると共に、十分な精度が得られるからである。しかし、これは、単位時間uの具体的な値を限定するものではなく、適宜変更可能である。
また、本実施例では、定速回転終了時における搬送ローラ20aの位置を基準位置として、その基準位置に対する回転量から搬送ローラ20aの現在位相θを決定していたが、定速回転開始時における搬送ローラ20aの位置を基準位置としてもよい。いずれの場合も、基準位置に対する回転量に基づいて、搬送ローラ20aの現在位相θを決定することができるので、搬送ローラ20aの原点を検出する必要はなく、原点検出可能な高価なエンコーダを用いずに、高精度な用紙搬送を実現できる。