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JP4388764B2 - めっき鋼板の曲げ加工方法 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、糸状のめっき屑の発生を抑制しためっき鋼板のフランジ曲げ加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱延鋼板,冷延鋼板を所望形状に成形・加工した後、耐食性を付与するために後工程でドブ漬けめっきして家電部品,車体部品,建材部品等を製造していた。しかしながら、この方法ではコストが嵩むため、近年では、低コスト化を目的に、加工用原板としてめっき鋼板を用いることにより、後めっき工程を省略しようとしている。
通常、各種製品を構成する部材としてめっき鋼板を使用する場合、適宜形状に成形した鋼板に打抜き,曲げ,張出し,絞り,穴拡げ等の様々な加工が施されている。
【0003】
しかし、このままでは切断端面により使用者が傷付けられたり、切断端面に衣服が引っ掛かったりするので、切断端面にフランジ曲げ加工を施す対策が講じられている。
ところで、めっき原板1aにめっき層1bを形成しためっき鋼板1の端部の曲げ加工法としては、図1に示すように、ダイ11上に載置しためっき鋼板1を板押さえ12で押さえた状態で、ダイ端部から出されている鋼板端部を上方からパンチ13で押圧することにより、端部を下方に折り曲げるスライド曲げ加工法が一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような加工法でめっき鋼板1を曲げ加工するとき、特に板厚が厚いめっき鋼板1の場合、加工後端面に、脱落しためっき金属が糸状に伸びためっき屑が残りやすい。めっき屑が発生すると、後工程で打痕の原因になったり、残存することにより、外観が損なわれて製品の品質を低下させたり、家電製品などでは絶縁不良の原因になるという問題がある。
めっき屑の発生を抑制するため、クリアランスの拡大やパンチ肩半径を大きくする等も行われているが、めっき屑を完全に無くすことはできていない。また、フランジ長さをパンチの押し込み量以上に長くすればめっき屑の発生が防止可能であるが、設計上長くできない場合がある。
【0005】
塗装鋼板をフランジ曲げ加工する際に、めっき屑と同様の機構で発生するエナメルヘアを考慮したプレス加工法として、パンチ先端縁部に断面曲線部を設け、プレス時にパンチのこの断面曲線状縁部が塗装鋼板先端部を通り過ぎないようにする方法が、特開平8−267147号公報として提案されている。
しかし、この方法をめっき鋼板の曲げ加工に採用しようとすると、曲げフランジ長さに応じて、曲線縁部形状の調整およびパンチ押込み量の調整等において極めて精緻な調整を必要とし、板厚の2〜3倍以下などの極めて短いフランジの場合、適用が困難になるというという問題もある。
【0006】
さらに、フランジを直角に起こすのではなく、例えば70°以下にフランジを曲げる場合、一般的に曲げたフランジ端面がパンチの側面に当接するような位置関係になるようにクリアランスを調整し、パンチの押込み量を大きくして、フランジの端面からパンチ先端を突出させて所定の曲げ角度を得るようにしている。しかし、この方法だと、パンチ先端がフランジ端面を通過する際に糸状のめっき屑を発生し易い。この傾向は、板厚に比べてフランジ長さが短い場合に顕著になる。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、剪断加工が施されためっき鋼板の端部に90°未満の角度のフランジ曲げ加工を施す際に、端面に糸状のめっき屑を発生させることのない曲げ加工方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のめっき鋼板の曲げ加工方法は、その目的を達成するため、ダイ上に載置しためっき鋼板を板押さえで押さえた状態で、ダイ端部から出されている鋼板端部を上方からパンチで押圧することにより、板厚の3倍以下の短い端部を下方に折り曲げるスライド曲げ加工を行う際に、ダイとパンチの間隔を加工するめっき鋼板の板厚よりも狭くして、上方からパンチで押圧することにより90°未満の角度の曲げ加工を行うことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、めっきを施した鋼板の剪断端部にフランジ曲げ加工を施す際、ダイとパンチの間隔を加工するめっき鋼板の板厚よりも狭くして、上方からパンチを押し込んで曲げ加工することにより、パンチ先端のR部はごく初期にフランジ端面のめっき面に接触するものの、パンチの下降とともに接触位置がフランジ端面から曲げ支点方向に向かって移動し、めっき金属が鋼板端面より下方に押出されることが防止される。
このため、これまでめっき屑の発生防止が困難であった、板厚の2〜3倍以下などの極めて短い曲げフランジの場合の加工であっても、パンチストロークを調整するだけで、糸状のめっき屑を発生させることなく、めっき鋼板端部に90°未満の角度のフランジ曲げ加工を施すことができる。
【0009】
ところで、めっき鋼板の端部に90°未満の曲げ角度でスライド曲げ加工を施す際に、糸状のめっき屑が発生する機構を検討したところ、次のような知見が得られた。
すなわち、図2に示すように、パンチ13がめっき鋼板1を下方に押圧するとき、めっき面はパンチ13と強く摺動するため、剪断力でめっき層1bが伸ばされ、鋼板先端から下方に押し出されて脱落する。めっき面はパンチ13に強い力で押し当てられ、しかもパンチ13は下方に移動しようとしているので、めっき層自身には強い剪断力が作用する。めっき層はその剪断力で鋼板先端のパンチ側端部で脱落して糸状のめっき屑Wとしてめっき鋼板から分離される(図2のb参照)。
【0010】
めっき層自身の潤滑性の違いや潤滑剤の使用状況等によっても変わるが、めっき屑は塗膜厚が厚いほど発生しやすくなる。めっき屑の発生を抑制するためには、パンチ下降時にめっき層に作用する剪断力を小さくする意味で、フランジ長さを長く、クリアランスを大きく取ることが有効である。
また、パンチの表面仕上げをスムースにしたり、高粘度の潤滑油を用いることも効果がある。
しかし、設計上めっき鋼板の板厚に対して比較的フランジ長さが短く、90°未満の、例えば60°程度のフランジ曲げ角度が必要な場合、クリアランスは変更されておらずフランジ長さが短くなっているので、前述したようにパンチ先端を突出させて所定の角度を得ようとすると、糸状のめっき屑の発生を防止することは非常に困難となる。
【0011】
これに対して、本発明の好ましい実施の形態では、図3の(a)に示すように、フランジを曲げるときのダイ11とパンチ13の間隔(C)を、加工しようとするめっき鋼板の板厚(t)よりも狭くして、すなわち、クリアランスをマイナスにして、パンチの先端R部分でフランジ部を押して、フランジを所定の曲げ角度にする曲げ加工を行う。なお、クリアランスは、加工しようとする鋼板の板厚(t)に対するダイとパンチの間隔(C)の比率で、クリアランス(%)=(C−t)/t×100で表される。
この加工方法では、クリアランスの関係上90°近くに曲げることはできないが、90°未満、例えば70°以下の曲げ角度であれば、パンチストロークを調整することによって、所望の角度を得ることができる。
【0012】
パンチが下降するとき、パンチ先端のR部はごく初期にフランジ端面のめっき層に接触するものの(図3のa参照)、パンチのさらなる下降とともに接触位置がフランジ端面から曲げ支点方向に向かって移動する(図3のb参照)。このパンチ先端R部が接触する位置がフランジ端面より曲げ支点方向に向かって内側に入る作用によって、めっき金属が鋼板端面より下方に押出されるようなことはない。
ダイとパンチの間隔が、加工しようとするめっき鋼板の板厚よりも狭く調整されているので、パンチ先端を鋼板端面から突出させることはできない。さらにパンチ先端にはR部が設けられているので、前述のように、パンチ先端がめっき鋼板端面に接触するのは下降のごく初期のみで、その後接触することはない。したがって、めっき金属が鋼板端面より下方に押出されるようなことはなく、糸状のめっき屑を発生することはない。
【0013】
しかし、曲げ加工しようとするめっき鋼板の板厚(t)に対して、ダイ11とパンチ13の間隔(C)を極端に狭くすると、パンチの下降によって急激にフランジが曲げられるため、フランジの曲げ角度を安定させることが困難になる。
フランジの曲げ角度を安定させるためには、(C−t)/t×100で表されるクリアランスを−35%までに止めることが好ましい。
【0014】
【実施例】
板厚1.5mmの低炭素冷延鋼板を原板とし、目付け120g/m2で亜鉛めっきされた鋼板を供試材として使用した。
剪断されためっき鋼板の剪断端部に、図1に示すようなスライド曲げ加工装置を用いて、長さ2.0mmの曲げフランジを、次表に示すように加工条件を変えて形成した。
なお、クリアランスは、加工しようとする鋼板の板厚(t)に対するダイとパンチの間隔(C)の比率で、クリアランス(%)=(C−t)/t×100で表される。また、パンチ押込み量はパンチがめっき鋼板に接触してから押し込んだ長さ(図1中L)である。
【0015】
Figure 0004388764
【0016】
糸状のめっき屑発生の有無からみた加工性評価結果は表2に示す通りである。なお、表2中、○は糸状のめっき屑が発生していなかったものであり、△は軽度な糸状めっき屑が発生していたもの、×は糸状めっき屑が発生していた場合を示している。
クリアランスが0以上の範囲では、パンチストローク0.5〜4.0mmの範囲において、軽度なものを含めて糸状めっき屑の発生が認められた。一方、クリアランスがマイナスの範囲に、すなわちダイとパンチの間隔を板厚の厚さよりも狭くすると、糸条のめっき屑の発生は認められなかった。
クリアランスをマイナスにしてスライド曲げ加工したフランジの端面を観察すると、フランジ端面から少し内側に入った部位のめっき面若干窪んでいるものの、めっき層の剥離や脱落は認められなかった。
【0017】
パンチが下降するにつれて、パンチ先端のR部はごく初期にフランジ端面のめっき面に接触するものの、パンチの下降とともに接触位置がフランジ端面から曲げ支点方向に向かって移動したために、めっき金属が鋼板端面より下方に押出されることが防止されたものである。
クリアランスが狭くなるほどパンチストロークが短くなっているが、これは、クリアランスが狭くなるほどフランジの曲げ角度がパンチストロークにより敏感になり、曲げ角度が急激に立ち上がるためである。
クリアランスが−35%にもなると、パンチストロークが0.25mm変化することによって曲げ角度が15°程度変化することがわかった。製品のフランジ曲げ角度の規格によっても関係するが、これ以上クリアランスを小さくすることは、品質管理上現実的には困難である。
【0018】
Figure 0004388764
【0019】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、これまでめっき屑の発生防止が困難であった、板厚に対して極めて短い曲げフランジの場合の加工であっても、パンチストロークを調整するだけで、糸状のめっき屑を発生させることなく、めっき鋼板端部に90°未満の角度のフランジ曲げ加工を施すことができる。このため、家電部品,車体部品,建材部品等に用いるめっき鋼板切断端面のフランジ曲げ加工が生産性良く行えるようになる。さらに、使用者も切断端面により傷付けられたり、切断端面に衣服が引っ掛かったりすることがなくなるので、めっき鋼板を用いた製品を安心して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スライド曲げ加工方法を説明する模式図
【図2】 糸状めっき屑の発生状況を模式的に説明する図
【図3】 本発明の曲げ加工方法を説明する模式図

Claims (1)

  1. ダイ上に載置しためっき鋼板を板押さえで押さえた状態で、ダイ端部から出されている鋼板端部を上方からパンチで押圧することにより、板厚の3倍以下の短い端部を下方に折り曲げるスライド曲げ加工を行う際に、ダイとパンチの間隔を加工するめっき鋼板の板厚よりも狭くして、上方からパンチで押圧することにより90°未満の角度の曲げ加工を行うことを特徴とするめっき鋼板の曲げ加工方法。
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