JP4393021B2 - エッチング液の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エッチング液の製造方法に関する。詳しくは、本発明は、エッチング速度の制御が容易で、且つ、エッチング速度の暴走などが抑制されて安定であり、更に、エッチング廃液の再利用も容易に行える、エッチング液の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピューター等の電子機器分野における半導体装置として、例えば、制御素子や記憶素子としての半導体集積回路や光半導体がある。これらの半導体装置の製造においては、シリコン、GaAs、GaP、InPの基板(ウエハ)に対し、エッチングや金属薄膜の積層などを行って回路が形成される。
【0003】
特にシリコンウエハを使用した半導体装置は、産業上利用範囲も広く、使用量も最も多いので重要である。斯かる半導体装置の製造の場合、基板上に回路を集積する前のウエハ製造においても複数の表面処理などが行われる。特に、エッチングプロセスは、シリコン基板の状態を決定する上で重要である。
【0004】
従来より、上記のエッチングプロセスでは、硝酸、弗酸、硫酸、燐酸、酢酸などの酸性液や複数種の強酸成分を含む混酸液をエッチング液として使用するエッチング、この様なエッチング液とNaOH、KOH等のアルカリ性薬液を併用するエッチング、これらに緩衝成分などを含有したエッチング液を使用するエッチング等が知られている。
【0005】
例えば、混酸液を使用したエッチング液は、特開平6−314684号公報、特開平6−45314号公報、特開平9−232279号公報、特開平9−266194号公報などに記載され、アルカリ性薬液を使用したエッチング液は、特開平9−266193号公報に記載され、混酸液とアルカリ性薬液との併用例は特開平11−233485号公報に記載されている。
【0006】
シリコンウェハの製造工程は、概略、シリコン結晶インゴットの引き上げ、インゴットのスライス、ラッピング、エッチング、ポリッシングの順に行われる。そして、ラッピング後のウェハは最も精度の高い平坦度が要求され、残留砥粒と加工変質層を取り除くため、エッチング等により、40〜60ミクロン厚さのウエハ表面が取り除かれるが、ラッピング後の形状精度を維持することは困難である。
【0007】
シリコンウエハのエッチング液としては、弗酸、硝酸、酢酸の3成分の混酸液、弗酸、硝酸、燐酸の3成分系の混酸液が一般的に使用されている。また、これらに硫酸を加えた4成分系も知られている。
【0008】
また、特開平10−050682号公報では、燐酸に弗化水素を添加したシリコンウエハ用エッチング液が提案されている。また、特開平11−194120号公報では、硝酸、弗酸およびヘキサフルオロ珪酸を含むエッチング液が開示されている。さらに、特開平11−060377号公報では、シリコン結晶の表面を水酸基で終末化するための処理液として、ヘキサフルオロ珪酸と、弗酸、過酸化水素、アンモニウム又は弗化アンモニウムを含む酸性溶液が提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
最近、ディバイスの集積度が向上するにつれて極めて高い形状精度が要求され、多くのウェハメーカーでは、アルカリエッチングと酸エッチングを組み合わせた併用型エッチングが採用される様になった。この併用型エッチングでは、アルカリエッチングによるエッチング量が10〜30μm程度と大きいため、酸エッチングによるエッチング量は5〜20μm程度と極めて僅かな値にする必要がある。例えば、前述の弗酸、硝酸、酢酸の3成分系エッチング液によってこの様な極めて薄いエッチングを行う場合には、エッチング液とウエハとの接触時間(エッチング完了所要時間)を5〜20秒と極めて短時間とする必要がある。
【0010】
ところが、上記の様な短時間の操作は、現在のエッチングプロセスマシンの操作速度上無理であり、ウェハ引き上げ操作などで機械的な問題が発生する。この問題を解決するため、前述の様な混酸液において、酢酸や燐酸の濃度を高くして、エッチング速度を調節する方法が提案されている。実際、酢酸や燐酸は、シリコンのエッチング反応に直接は関与せず、エッチング速度を減少させるインヒビターとして作用することが知られている。
【0011】
しかしながら、弗酸、硝酸、酢酸の3成分系エッチング液で、エッチング速度を減少させるために酢酸濃度を高めた場合、特開平6−314684号公報などに記載されている様に、エッチング反応が不均一になり、その結果、シリコンウェハにエッチングむらが発生する場合がある。これは、硝酸によるシリコンの酸化反応が、酢酸の増加により妨げられるためと推定される。具体的には、エッチング液中で酸化剤の濃度分布のむらが生じ、シリコンウェハ表面が均一に酸化されないためと考えられる。エッチングむらが起こると、ウエハ品質の維持、管理が困難となるので、酢酸濃度を高くしたエッチング液を使用することは難しい。
【0012】
一方、弗酸、硝酸、燐酸の3成分系エッチング液において、エッチング速度を減少させるために燐酸濃度を高めた場合は、新たに調製した新品のエッチング液を使用してエッチングを開始した当初においてはエッチング速度が減少するが、エッチングを繰り返すうちに、以下のような理由により、エッチング速度が異常上昇し、エッチング反応が暴走することがある。なお、エッチング反応の暴走とは、Siエッチングの操作過程で、突然、瞬間的にエッチング反応速度が加速され制御困難な状態になる事をいう。
【0013】
弗酸と燐酸を混合すると、フルオロ燐酸が生成する。フルオロ燐酸は、シリコンエッチングには直接関与しないが、シリコンエッチングにより生成される水によって加水分解され、エッチング速度を高める弗酸と燐酸に解離する。弗酸と燐酸の濃度は、エッチングの進行と共に次第に高くなり、その結果、エッチング速度が異常に高くなり、エッチング反応が暴走するものと考えられる。本発明者らは、弗酸、硝酸、燐酸の混酸液によってシリコンウェハをエッチングする場合、エッチング速度が通常12μm/分(0.2μm/s)以上になった場合はエッチング中に暴走反応が起こるという知見をもっている。
【0014】
上記の様に弗酸、硝酸、酢酸(又は燐酸)の3成分系のエッチング液においても、エッチングプロセスにおけるエッチング速度の調節の問題以外に、エッチング性能の低下の問題やエッチングプロセスの安定性の欠如という問題がある。更に、酢酸および燐酸を含むエッチング液は、臭気などの問題から、廃液処理面で不都合が生じている。また、使用済みのエッチング液は再生することなく、使い捨てているため、リサイクルが強く望まれている現状の産業界において大きな問題となっている。
【0015】
一方、前述の通り、フルオロ珪酸を含有させた混酸液からなるエッチング液も知られているが、斯かるエッチング液では充分な性能が未だ得られていない。
【0016】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、半導体ウェハ、特にシリコンウエハに要求されるウェハの平坦度と光沢度の向上を図り、ウエハ全体の「うねり」を抑制でき、好適なエッチング速度を容易に選択でき、安定したエッチングレイトを持続でき、更には、容易に再利用が出来、再利用場面が拡大された、エッチング液の製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、次の様な知見を得た。
【0018】
(1)フルオロ珪酸は、エッチング反応のインヒビターとして作用し、特定濃度以上のフルオロ珪酸を含有する、硝酸、弗酸系エッチング液は、エッチング速度の制御が容易であり、エッチング反応の暴走もなく、優れた性能を有する。
【0019】
(2)弗酸および硝酸を含むエッチング液によるシリコンウエハのエッチングにおいては、エッチングによって溶解したシリカが混酸液と反応して、次の反応式で表される化学反応が起こる。
【0020】
【化1】
3Si+4HNO3+18HF → 3H2SiF6+4NO+8H2O(式1)
【0021】
(3)シリコンウェハのエッチングにおいて、弗酸と硝酸が消費され、反応生成物として、ヘキサフルオロ珪酸、水および一酸化窒素が生成される。従って、使用済みのエッチング液は、エッチングにより生成したヘキサフルオロ珪酸を除去したり、エッチングにより消費された硝酸、弗酸を追加することにより、再度、エッチング液として利用することが出来る。
【0022】
(4)弗酸、硝酸およびヘキサフルオロ珪酸を含むエッチング液の製造は、上記の反応式に従って行うことが出来る。すなわち、エッチング液は、弗酸と硝酸と珪素または二酸化珪素とを反応させて得ることが出来る。特に、弗酸源として弗化水素ガスを使用することにより、高濃度の硝酸、弗酸およびヘキサフルオロ珪酸を含有した混酸液を容易に製造することが出来る。この方法は、簡便かつ安全であり、しかも、各成分の濃度を任意に設計し得る利点を有する。
【0024】
本発明は、上記の知見に基づき達成されたものであり、その要旨は、弗酸、硝酸および珪素または二酸化珪素を反応させ、弗酸、硝酸およびヘキサフルオロ珪酸を含み、弗酸の濃度が1〜20重量%、硝酸の濃度が20〜60重量%、ヘキサフルオロ珪酸の濃度が10〜40重量%であるエッチング液の製造方法であって、弗酸として弗化水素ガスを使用し、硝酸として濃度70重量%以上の硝酸水溶液を使用し、珪素または二酸化珪素との反応を行なうことを特徴とするエッチング液の製造方法に存する。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
(1)エッチング液について:
本発明のエッチング液は、少なくとも、弗酸、硝酸およびヘキサフルオロ珪酸を含む溶液である。ヘキサフルオロ珪酸の濃度は10重量%以上、好ましくは14重量%以上、更に好ましくは15重量%以上、特に好ましくは20重量%以上、最も好ましくは22重量%以上である。ヘキサフルオロ珪酸の濃度の上限は40重量%以下、更に好ましくは30重量%以下、特に好ましくは27重量%以下とされる。
【0029】
ヘキサフルオロ珪酸の濃度が低すぎる場合は、エッチング速度が速すぎて実用に適さない場合がある。また、ヘキサフルオロ珪酸濃度が低すぎる組成では、エッチング液中の水の含有量が多くなり、ウエハの種類によってはエッチング後の品質に問題が起こる場合がある。一方、ヘキサフルオロ珪酸濃度が高すぎる場合は、エッチング速度が遅くなり工業的に不利な場合がある。
【0030】
一方、弗酸の濃度は、1重量%以上、好ましくは2重量%以上、更に好ましくは5重量%以上であり、20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。
【0031】
硝酸の濃度は、20重量%以上、好ましくは25重量%以上、更に好ましくは30重量%以上であり、60重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
【0032】
本発明のエッチング液は、組成を調節することにより、エッチング速度を任意に調節することが出来る。エッチング速度は、エッチング量により決定されることが多く、エッチング量が20〜40μm程度の場合のエッチング速度は、通常20μm/分以下、好ましくは14.5μm/分以下である。エッチング速度が14.5μm/分未満の場合は、エッチング液の安定性が特に良好である。エッチング速度の下限は特に制限されないが、エッチング速度が遅すぎるとエッチングに要する時間が長くなるため、通常10μm/分以上、好ましくは14μm/分以上である。エッチング量が0.5〜2μm/分程度のエッチング量が非常に少ない超薄膜エッチングの場合、エッチング速度は、通常1μm/分以上、好ましくは2μm/分以上であり、通常5μm/分以下、好ましくは2μm/分以下である。
【0033】
例えば、下記の方法でエッチングを行った場合のエッチング速度が15μm/分(0.25μm/s)程度となるエッチング液の組成は、次の通りである。すなわち、弗酸は、通常5重量%以上、好ましくは7.5重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは9.5重量%以下である。また、硝酸は、通常30重量%以上、好ましくは35.5重量%以上であり、通常40重量%以下、好ましくは37.5重量%以下である。さらに、ヘキサフルオロ珪酸は、通常10重量%以上、好ましくは12.5重量%以上であり、通常15重量%以下、好ましくは14.5重量%以下である。
【0034】
<エッチング方法>
ポリエチレン製のエッチング槽を使用し、室温の混酸液を循環しながら使用する。エッチング槽に直径125mmのラッピング処理後のシリコンウェハ1枚を静かに浸漬し、通常30秒から3分経過後に、シリコンウエハを引き上げる。引き上げられたシリコンウエハを水洗し、エッチング終了とする。
【0035】
<エッチング速度の求め方>
エッチングの前後のシリコンウエハの重量差をエッチング量とし、エッチング量をシリコンウエハの混酸液への浸漬時間で除して求める。
【0036】
本発明のエッチング液の特徴の一つは、特定濃度のヘキサフルオロ珪酸を含有することである。
【0037】
ヘキサフルオロ珪酸は、混酸液中の硝酸、弗酸、シリコン等と反応しないため、エッチング液のヘキサフルオロ珪酸の濃度を調節することにより、エッチング速度を簡単に制御することが出来る。しかも、ヘキサフルオロ珪酸は、酢酸と異なり、刺激臭もない。
【0038】
本発明のエッチング液は、酢酸や燐酸を含有させなくても、エッチング速度などの制御が可能である。エッチング液が、酢酸や燐酸を含有しない場合には、これらの刺激臭などの問題もなく、使用後のエッチング廃液の処理も容易である。また、エッチング廃液を、例えば、ステンレス表面洗浄液として使用する等、他分野で再利用することも考えられる。
【0039】
エッチング液は、弗酸、硝酸、ヘキサフルオロ珪酸の他の成分として、水を必須成分として含有する。また、他の酸成分(酢酸、燐酸)や添加物を含有していてもよい。
【0040】
本発明のエッチング液は、本発明の効果を損なわない範囲で酢酸および/または燐酸を含有していてもよい。酢酸の含有量は、エッチング液に対し、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。燐酸の含有量は、エッチング液に対し、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。
【0041】
本発明のエッチング液は、その効果を損なわない範囲で添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、界面活性剤、錯化剤などが挙げられる。界面活性剤としては、例えば特開平7−183288号公報に記載されている界面活性剤が挙げられるが、アミン系化合物が好ましい。界面活性剤を含有することにより、ウェハの濡れ性の向上と、発泡性を抑える効果が期待できる。
【0042】
本発明のエッチング液は通常pH1以下の強酸であるが、エッチング液のpHは、適用するウエハやエッチングプロセス等によって適宜調節すればよい。
【0043】
本発明のエッチング液は、特にシリコンウエハのエッチング用として好適に使用される。その理由は、シリコンウエハのエッチングにより、エッチング速度の制御に必要なヘキサフルオロ珪酸が生成し、エッチング液中のヘキサフルオロ珪酸濃度の減少がなく安定化が図られ、ひいてはエッチング反応の安定化に繋がるからである。
【0044】
(2)エッチング液の製造方法について:
本発明のエッチング液は、弗酸、硝酸および珪素または二酸化珪素を反応させて製造することが出来る。
【0045】
弗酸としては、弗化水素ガスを使用する。硝酸としては、濃度70重量%以上の硝酸水溶液を使用する。98重量%硝酸水溶液である発煙硝酸でもよい。弗酸および硝酸の何れも不純物含有量が小さい方が好ましく、不純物含有量は、通常10ppb以下、好ましくは5ppb以下である。
【0046】
弗酸として弗化水素ガスを使用し、硝酸として濃硝酸を使用した場合、原料由来の水分量が少ないため、硝酸、弗酸の濃度が高いエッチング液を得ることが出来る。
【0047】
珪素または二酸化珪素は不純物含有量が小さい方が好ましく、不純物含有量は、通常1ppb以下、好ましくは0.1ppbである。
【0048】
例えば、弗酸の濃度が約9.1重量%、硝酸の濃度が約36.7重量%、ヘキサフルオロ珪酸の濃度が約13.8重量%の組成のエッチング液を1リットル製造する場合は、例えば、弗化水素ガス201gと硝酸(70重量%)662gと水106gを混合し、この混合溶液にシリコン31gを溶解すればよい。
【0049】
図1は、本発明のエッチング液の製造設備の一例の説明図である。吸収塔(1)は、塩化ビニル製であり、その内部には弗素樹脂製のラシヒリング(6)が充填されている。吸収塔(1)の下方にはポリエチレン製の調製タンク(3)が配置されている。吸収塔(1)と調製タンク(3)とは循環配管で連結され、循環配管の途中には、塩化ビニル製のシエルと弗素樹脂製のチューブを備えた冷却器(2)と弗素樹脂製の循環ポンプ(4)とが配置されている。また、吸収塔(1)の下方には、弗酸ボンベ(5)からの供給配管が導入されている。配管は何れも弗素樹脂製である。斯かる材質の装置構成によれば不純物の溶出が防止される。
【0050】
調製タンク(3)に収容された、初期濃度が70重量%の硝酸を、循環ポンプ(4)によって吸収塔(1)の上部から霧状や液滴状で導入する。その際、冷却器(2)で温度調節を行ってもよい。そして、弗酸ボンベ(5)に充填された弗化水素ガスを、吸収塔(1)の下部から導入する。弗化水素ガスと工業用硝酸とはラシヒリング(6)の作用によって良好に接触する。なお、ガス状の弗化水素ガスと発煙硝酸または濃度70重量%以上の濃硝酸とを反応させる際には激しい発熱を伴う。従って、安全な温度上昇以内になる様に無水弗酸の吹き込み量をコントロールする必要がある。
【0051】
そして、珪素または二酸化珪素は、前記の循環系内の任意の箇所から供給しても、循環系外で混酸液と反応させてもよいが、所望の組成となった後に調製タンク(3)に添加して反応させるのが好ましい。タンク(3)に回収された混酸液は、所望組成となった後に抜き出される。
【0052】
硝酸の吸収塔(1)への供給量は、通常500〜1000[リットル/hr]である。吸収塔(1)への弗酸ガスの吹き込み量(供給量)は、通常0.3〜0.5[リットル/hr]である。調製タンク(3)内の硝酸(又は弗酸と硝酸の混酸液)の温度は30℃以下とするのが好ましい。吸収塔(1)では、濃硝酸の持ち込む水に無水弗酸が溶解するため、温度上昇が激しい。従って、吸収塔(1)における温度は、反応物量などによらず、通常20〜40℃、好ましくは20〜30℃に調節するのがよい。
【0054】
本発明のエッチング液の製造方法は、エッチング液の組成変更に容易に対応可能であり、しかも、安全性が高いため、反応物(弗酸、硝酸、珪素など)の使用量や濃度を広範囲で変更でき、収率も良く、製造に要する反応時間も短いという特徴がある。
【0055】
(3)エッチング方法について:
本発明のエッチング液は、シリコンウエハ、GaAsウエハ、GaPウエハ、InPウエハ等のエッチングに使用することが出来、特にシリコンウエハのエッチングに好適に使用される。
【0056】
エッチング方式としては、例えば、エッチング槽によるディップ式、コンベアによるスプレー式、スピンコーターを使用したスピンエッチングによる枚葉式などが挙げられる。
【0057】
例えば、ディップ式によるウェハの浸漬の際は、エッチング液が整流となる様に一定の方向に流し、エッチング槽壁に当たって乱流となることを避けることが好ましい。エッチング液にウェハを浸漬する際は、例えばテフロン製のキャリアにウェハをセットし、流れに対して平行に且つ回転させながら浸漬するのが好ましい。この操作によりキャリア部でのエッチング残りを防止することが出来る。
【0058】
また、ウェハに付着した微細なゴミを除去するため、必要に応じてエッチング液のバブリングを行ってもよい。バブリングは、ウェハ表面の反応熱の拡散、ウェハの酸化反応により生成される過剰なNOxを放出させて反応が平衡になるのを防ぐ等の効果があり、反応が安定しウエハの平坦度向上に有効である。これと同様の理由で、エッチング槽の底に振動板を設置し高周波振動させるメガソニック等を使用してもよい。
【0059】
エッチング液にウエハを浸漬させる際のウエハの回転数、エッチング液の流量および流速、バブラーの流量などは、ウェハの物性や望まれる平坦度に応じて適宜選択すればよいが、一般的に、回転数は10〜50rpm、循環流量は50〜100リットル/分、バブラーの流量は20〜80リットル/分の範囲が適当である。また、エッチング時のエッチング液の温度は、通常20℃以上、好ましくは25℃以上、また、通常35℃以下である。
【0060】
エッチング後の処理としては、例えば、シリコンウェハのエッチング終了後は、一般的には速やかに超純水による洗浄を行う。ウェハの引き上げから洗浄までの所要時間は0.5秒以内が好ましい。また、洗浄槽内の超純水は洗浄中3回程度の入れ替えを行い、超純水の入れ替え時間も速やかに行うことが好ましい。そのためには例えばQDV(クィック ダンプ バルブ)等を使用すればよい。
【0061】
本発明のエッチング液で例えばシリコンウェハをエッチングした場合、シリコンと硝酸の酸化反応および酸化膜の除去反応により、硝酸および弗酸が消費されて減少する。一方、これらの反応によりヘキサフルオロ珪酸と水が生成する。(前記(式1)参照)従って、エッチング終了後のエッチング液では、ヘキサフルオロ珪酸の濃度が当初より高くなり、硝酸と弗酸の濃度が当初より低くなる。
【0062】
本発明のエッチング液では、被エッチング材がシリコンである場合は、エッチングにより不純物成分が生成しないことから、エッチング液をリサイクルして使用することが出来る。すなわち、少なくとも、弗酸、硝酸およびヘキサフルオロ珪酸を含むエッチング液を使用してシリコン基板のエッチングを行い、次いで、エッチング後のエッチング液の組成を定量分析し、その結果に基づき、「(1)エッチング液について」の欄で記載したエッチング液の濃度の範囲、具体的には、弗酸濃度1〜20%、硝酸濃度20〜60重量%及びヘキサフルオロ珪酸濃度が10重量%以上となる様に、エッチング後のエッチング液の濃度調節を行い、次いで、得られたエッチング液でシリコン基板のエッチングを行なうことが出来る。
【0063】
エッチング後のエッチング液は、反応で生成した水により、硝酸および弗酸の濃度が当初より低下している。従って、エッチング後のエッチング液を再度エッチング液として使用するためには、硝酸および弗酸の濃度を元に戻す必要がある。このためには、高濃度の硝酸および弗酸またはこの混酸液をエッチング後のエッチング液に添加する必要がある。また、硝酸および弗酸またはこの混酸液をエッチング後のエッチング液に添加することにより、当初より高くなったヘキサフルオロ珪酸の濃度を低下させ、当初の濃度に調節することが出来る。
【0064】
しかしながら、単に硝酸および弗酸を添加したただけでは、エッチング液の総量が組成を調節する度に増えてしまうので、エッチング後のエッチング液の少なくとも一部を抜き取ることが好ましい。
【0065】
エッチング後のエッチング液の全部を抜き取った場合は、抜き取ったエッチング液から水およびヘキサフルオロ珪酸の一部を除去し、必要に応じて、珪素化合物、弗酸、硝酸などを添加して、組成を調節し、得られた液をエッチング液として再度利用すればよい。
【0066】
エッチング後のエッチング液を一部抜き取った場合は、抜き取ったエッチング液から水およびヘキサフルオロ珪酸を除去することにより、高濃度の硝酸、弗酸混合液が得られる。これをエッチング後のエッチング液に添加して、組成を調節するために使用してもよい。
【0067】
エッチング液の一部を抜き取る場合の、エッチング廃液の抜き出し量(E)は、エッチング液容量(A)、エッチング液中のヘキサフルオロ珪酸の濃度(B)、エッチング後のヘキサフルオロ珪酸濃度(D)を利用した次の計算式で求めることができる。
【0068】
【数1】
A−{(D−B)×A}=E
【0069】
エッチングにより生成するヘキサフルオロ珪酸重量は、前述の化学反応式から求めてもよい。抜き取り量は、上述の式に基づき決定してもよいが、エッチング液の2〜5重量%程度を抜き取るならば、エッチング液の組成の安定化が図られるので好ましい。
【0070】
エッチング後のエッチング液を一部抜き取った場合の他のケースとしては、次の様なことも出来る。すなわち、抜き取ったエッチング液から、ヘキサフルオロ珪酸を除去し、硝酸と弗酸の混酸液を得る。これに、必要に応じて珪素または二酸化珪素、弗化水素ガス、濃硝酸とを混合し、得られた溶液を、エッチング後のエッチング液に添加し、組成を調節する。
【0071】
エッチング後のエッチング液から、ヘキサフルオロ珪酸および/または水を除去する方法としては、例えば、減圧下にてエッチング液を加熱し、ヘキサフルオロ珪酸を四弗化珪素(SiF4)として水と共に気体分離する方法が挙げられる。
【0072】
以上の様に、本発明のエッチング液を使用すれば、エッチング液のリサイクル使用が容易に行える。
【0073】
エッチング液の組成の定量分析方法は、任意であるが、例えば、特開平11−194120号公報などに記載の方法を使用することが出来る。
【0074】
(4)半導体装置の製造方法について:
本発明のエッチング液は、特にシリコン基板および/またはシリコン薄膜を構成要素とする半導体装置の製造で使用した場合、正確なエッチングプロセスを再現し、精度良く且つ工業的に安定して微細な回路製造を行えるという効果を発揮する。例えば、シリコン基板上にシリコン酸化膜を成長させた後にフォトリソグラフィ工程や現像工程などの操作により回路を形成する半導体装置の製造工程中、特に下地に残っているシリコン酸化膜の除去、または、ウエハ上に付着した金属などの不純物除去を目的としたエッチング等の工程において、本発明のエッチング液を使用したエッチングプロセスは、使用目的に合致した種々のエッチング速度が得られるという工業的に極めて優れた効果を奏する。
【0075】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない範囲において、以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
エッチング液製造装置は図1に示したのと同様の装置を使用した。吸収塔(1)の直径は100mm、高さは1000mm、調製タンク(3)は20Lである。組成の分析については次の様に行った。すなわち、本発明で製造した弗酸/硝酸/ヘキサフルオロ珪酸のエッチング液4mlを脱炭酸水100mlと混合して滴定試料溶液を調製し、この滴定試料溶液2mlとアセトン70mlとを混合し、フッ素樹脂被覆回転子を投入後、非水中和滴定装置(三菱化学社製、商品名「GT−07」)を使用し、窒素ガスを流しながら1/10NaOHエタノール標準液を使用して滴定した。滴定結果として、硝酸、ヘキサフルオロ珪酸、弗酸および酢酸などの当量点に対応する三つの変曲点を得、これから濃度を導いた。
【0077】
また、別に、上記の滴定試料溶液1.7mlと水250mlを混合し、紫外部吸光光度法分析装置(日立製作所製、商品名「u−2001」)を使用して302.0mmの硝酸に固有の波長の光源により吸光度から硝酸濃度を測定した。
【0078】
実施例1〜13及び比較例1、2
表1に示す組成のエッチング液を製造した。ただし、実施例1の場合は、調製タンク(3)に硝酸(70重量%)6930gを仕込み、水880gを加えて循環量700[リットル/hr]で循環し、また、吸収塔(1)に弗酸ボンベ(5)から弗化水素ガス2190gを供給し、8時間吸収混合を行って混酸液を製造した。次いで、調製タンク(3)に珪素310gを添加し、ヘキサフルオロ珪酸濃度が13重量%の本発明のエッチング液を得た。
【0079】
一方、実施例2〜13の場合は、所望のエッチング液におけるヘキサフルオロ珪酸、硝酸、弗酸の各濃度から逆算して、製造に使用する各々の量を適宜変更して、本発明のエッチング液を製造した。また、比較例1及び2の場合も同様にしてエッチング液を得た。表1に示す組成中、表示成分以外の残余部分は水である。
【0080】
ポリエチレン製のエッチング槽に各エッチング液4.6Lを分取し、直径125mmのラッピング処理後のシリコンウエハをキャリアに1枚セットしてエッチング槽に静かに浸漬し、1分後にキャリアを引き上げて直ちに超純水で水洗した。そして、電子天秤(メトラー製)でエッチング前後の重量を測定し、その重量差をエッチング量とした。エッチング槽中ではウエハを静止状態とした。すなわち、回転、揺動およびバブリングは行なわず、液循環のみ行った。エッチングは室温で行い、エッチング開始時のエッチング液温度は25℃であった。
【0081】
【表1】
【0082】
表1中の「珪酸」はヘキサフルオロ珪酸を示し、「エッチングの安定性」及びエッチング使用後の混酸液についての「廃液利用の可否」(金属表面洗浄としての再利用の容易性)の記号の意義は次の通りである。
【0083】
【表2】
<エッチングの安定性>
安定性とはエッチング開始から終了までのエッチング速度の安定性を示し、安定しているとはエッチング速度がエッチング開始から終了までほぼ一定に行われることを示す。その評価基準は以下の通りである。
◎:安定している。
○:やや不安定であるが、実用上問題ない。
◇:安定しているが、エッチング速度は遅い。(超)薄膜エッチングに適す。
△:やや不安定である(且つウエハ種によりエッチング速度が速すぎる場合がある)。
×:不安定である。
【0084】
【表3】
<廃液利用の可否>
◎:刺激臭がなく且つ溶液中の不純物もなく良好な状態である。
○:刺激臭は実用上問題ないが、使用場面によって酸性成分の追加が必要である。
△:刺激臭が強くて使用上問題がある。
×:刺激臭が強くて使用に耐え得ない。
【0085】
表1から明らかな様に、本発明のエッチング液は、優れたエッチング速度および安定性ならびに廃液可能性を有する。そして、この様に最適なエッチング速度を有する本発明のエッチング液を使用したエッチングプロセスでは、シリコン等の半導体基板などの基板特性を示す光沢値が高くなり、良好な基板が得られる。これに対し、比較例1及び2では安定性および廃液利用性に欠ける。
【0086】
【発明の効果】
本発明のエッチング液は、所望のエッチング速度を有してエッチングプロセスにて優れた効果を発揮する。更に、従来のエッチング液とは異なり、酢酸、燐酸などの廃棄の際に環境負荷の大きい酸を必須としないため、臭気の問題を生じないことは勿論、廃棄物問題の負荷を軽減できる。また、本発明のエッチング液の製造方法によれば、簡便な方法によって高濃度のエッチング液を製造することが可能となる。更に、本発明の場合、使用済みエッチング廃液から含有されているフルオロ珪酸を分離することによって容易にリサイクルが可能であり、得られた混酸液を他分野へ再利用することが容易となる等、産業上極めて有意義な効果をも有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエッチング液の製造設備の一例の説明図
【符号の説明】
1:吸収塔
2:冷却器
3:調製タンク
4:循環ポンプ
5:弗酸ボンベ
6:ラシヒリング
Claims (1)
- 弗酸、硝酸および珪素または二酸化珪素を反応させ、弗酸、硝酸およびヘキサフルオロ珪酸を含み、弗酸の濃度が1〜20重量%、硝酸の濃度が20〜60重量%、ヘキサフルオロ珪酸の濃度が10〜40重量%であるエッチング液の製造方法であって、弗酸として弗化水素ガスを使用し、硝酸として濃度70重量%以上の硝酸水溶液を使用し、珪素または二酸化珪素との反応を行なうことを特徴とするエッチング液の製造方法。
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