JP4397000B2 - 多層パイプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層パイプ、特に温水循環法によるセントラルヒーティング、就中フロアーヒーティング設備に用いられる多層パイプであって、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、ポリアミド樹脂(B)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)および11以下の溶解性パラメーター(Fedorsの式から算出)を有する前記樹脂以外の熱可塑性樹脂(D)からなる樹脂組成物を有する多層パイプに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来温水循環法によるフロアーヒーティングパイプとしては、金属製のパイプが主として使われてきた。フロアーヒーティングパイプは施工時にコンクリート内に埋められて、床下に設置される場合が多く、一度設置されるとその後の補修が非常に困難であり、しかも通常約50年の長期にわたる耐久性が要求される。かかる厳しい条件下では、金属製のパイプに比べて安価で、かつパイプ材質自体の腐食もないプラスティック製パイプの方が好適である。このようなプラスティック製のパイプ材料としてポリエチレン、ポロプロピレン、ポリブテン等が使用されるが、かかるプラスティックパイプを温水循環方式によるフロアーヒーティングシステムに使用すると、熱交換器、ポンプ等の金属製の部分に酸素による腐食という問題が生じる。この腐食の原因については、大気中に存在する酸素がプラスティック壁を通してパイプ中を循環する温水中に浸透、溶解するためと考えられた。そこで、アルミニウムを中間層とする多層ポリエチレンパイプが使用されたが、温度変化に起因すると考えられるアルミニウム層の亀裂が発生するために、前記要求を満足するに至っていない。この解決策として、酸素ガスバリア性に優れたプラスティック樹脂とポリエチレンとからなる様々な多層パイプが評価された。その中でもエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHという)を使用した多層パイプが最もバリア性、機械強度に優れていることが確認され、今日、EVOH系多層プラスティックパイプがフロアーヒーティングパイプとして幅広く使用されている。
【0003】
しかしながら、EVOHは通常のプラスティック樹脂と比較して非常に剛直な樹脂であるため、多層パイプを極端に折り曲げる際に、EVOH層にクラックが生じる問題がある。更に、2本のパイプを金属製のコネクターで接続する場合に、特殊な拡大治具にてまずパイプ端部の径を拡大しなければならないが、その際も、特に外気温が非常に低い環境下の作業の時には、EVOH層に大きなクラックが生じるケースがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、酸素バリア性を有し、かつ特に低温での柔軟性を有するEVOH系多層プラスティックパイプの開発が強く望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、ポリアミド樹脂(B)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)および11以下の溶解性パラメーター(Fedorsの式から算出)を有する前記樹脂以外の熱可塑性樹脂(D)からなり、この(A)〜(D)の樹脂を特定の比率で含有するる樹脂組成物を有する多層パイプを提供することによって解決される。この樹脂組成物はバリア性、機械強度、柔軟性、特に低温での柔軟性に優れており、上記課題が解決される。
【0006】
すなわち、本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、ポリアミド樹脂(B)、オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体の金属塩(C)、および11以下の溶解性パラメーター(Fedorsの式から算出)を有する前記樹脂以外の熱可塑性樹脂(D)からなり、配合重量比が下記式(1)〜(4):
0.6≦W(A+D)/W(T)≦0.995 (1)
0.005≦W(B+C)/W(T)≦0.4 (2)
0.5≦W(A)/W(A+D)≦0.99 (3)
0.02≦W(B)/W(B+C)≦0.98 (4)
(但し、W(A);組成物中の(A)の重量
W(B);組成物中の(B)の重量
W(B+C);組成物中の(B)と(C)との合計重量
W(A+D);組成物中の(A)と(D)との合計重量
W(T);組成物の合計重量)
を満足する樹脂組成物を有する多層パイプに関する。
【0007】
好ましい実施態様によれば、本発明の多層パイプは、配合重量比 W(B)/W(B+C)が0.5以下の樹脂組成物を有する。
【0008】
好ましい実施態様によれば、本発明の多層パイプは、前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が連続相、熱可塑性樹脂(D)が分散相となる樹脂組成物を有する。
【0009】
また、好ましい実施態様によれば、本発明の多層パイプは、ポリアミド樹脂(B)およびオレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体の金属塩(C)を先に溶融混合してから、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)および熱可塑性樹脂(D)と溶融混合して得られる樹脂組成物を有する。
【0010】
より、好ましい実施態様によれば、本発明の多層パイプは、温水循環用パイプである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明においては、EVOH(A)と熱可塑性樹脂(D)とを相容させるに際し、相容化剤としてポリアミド樹脂(B)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)の2成分を使用することが最大の特徴である。ポリアミド樹脂(B)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)との組合せを使用することにより、EVOH(A)と熱可塑性樹脂(D)間の相容性を著しく改善することができ、優れた特性を有する樹脂組成物を得ることができる。換言すれば、相容性の良くない樹脂、即ち、溶解性パラメーターの大きく異なる樹脂であるEVOH(A)と熱可塑性樹脂(D)との相容性を向上させる方策として、EVOH(A)に相容性の良いポリアミド樹脂(B)と熱可塑性樹脂(D)に相容性の良いオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)を相容化剤として使用することにより、本発明の樹脂組成物を見出すに至った。
【0012】
本発明に用いられるEVOH(A)としては、エチレン−ビニルエステル共重合体をけん化して得られるものが好ましく、その中でも、エチレン含有量は15〜70モル%、好適には20〜65モル%、最適には25〜60モル%であるものが好ましく、さらに、ビニルエステル成分のけん化度は85%以上、90%以上のものがより好ましく使用できる。エチレン含有量が15モル%未満では溶融成形性が悪く、耐水性、耐熱水性が低下する虞がある。一方、70モル%を超える場合は、バリア性が不足する虞がある。また、けん化度が85%未満では、バリア性、熱安定性が悪くなる虞がある。さらに、エチレン含有量が70モル%を超えるか、もしくはけん化度が85%未満では、ガスバリア性が低下する虞がある。
【0013】
EVOH製造時に用いるビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとしてあげられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。また、EVOHは共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有することができる。ここで、ビニルシラン系化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシランが挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。さらに、本発明の目的が阻害されない範囲で、他の共単量体、例えば、プロピレン、ブチレン、あるいは(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸又はそのエステルまたはN−ビニルピロリドンなどのビニルピロリドンを共重合することも出来る。
【0014】
本発明に用いられるEVOH(A)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は0.1〜50g/10min.、最適には0.5〜30g/10min.である。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。これらのEVOH樹脂(A)は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0015】
本発明に用いられるポリアミド樹脂(B)は、アミド結合を有する重合体であって、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,12)の如き単独重合体、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸重合体(ナイロン−6,9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6,6/6,12)、アジピン酸とメタキシリレンジアミンとの重合体、あるいはヘキサメチレンジアミンとm,p−フタル酸との重合体である芳香族系ナイロンなどが挙げられる。これらのポリアミド樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0016】
EVOHとの相容性の点から、これらのポリアミド樹脂(B)のうち、ナイロン6成分を含むポリアミド樹脂(例えば、ナイロン−6、ナイロン−6,12、ナイロン−6/12、ナイロン−6/6,6等)が好ましい。EVOHとポリアミド樹脂は高温での溶融過程で反応してゲル化するため、ブレンド組成物の熱劣化を抑制する点から、ポリアミド樹脂(B)の融点は240℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。
【0017】
本発明に用いるポリアミド樹脂(B)の好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下)は0.1〜50g/10min.、最適には0.5〜30g/10min.である。但し、融点が210℃付近あるいは210℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、210℃に外挿した値で表す。
【0018】
本発明に用いられるオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)とは、オレフィン、特にα−オレフィンと不飽和カルボン酸とからなる共重合体、および、この共重合体分子中のカルボキシル基を有するポリオレフィンおよびポリオレフィン中に含有されるカルボキシル基の全部あるいは一部が金属塩の形で存在しているものをいう。ここで、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩を使用することが極めて重要であり、後述の比較例でも示すように、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)を使用しない系では、本発明の効果を奏することはできない。
【0019】
また、本発明の多層中空成形容器に用いる樹脂組成物において、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体より、その金属塩の方がより好ましく用いられる。オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体より、その金属塩を用いる方が優れている理由は明確でないが、金属塩の方が極性が高くなるために、ポリアミド樹脂に対する相容性が増すためと考えられる。
【0020】
本発明に用いられるオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)の中でも、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸またはその無水物をランダム共重合して得られる重合体が好ましく、エチレンと不飽和カルボン酸またはその無水物がランダムに共重合していることがさらに望ましい。ランダム共重合体またはその金属塩がグラフト化合物よりも優れている理由は、グラフト化合物では、相容性を発揮するのに必要な高い酸含有量を得ることが難しいためである。さらに、不飽和カルボン酸、例えば無水マレイン酸のグラフト化合物の場合は、EVOH中の水酸基とグラフト共重合体中のカルボキシル基が反応して、ゲル・ブツの原因となるため、好ましくない場合がある。
【0021】
不飽和カルボン酸の含有量は、好ましくは2〜15モル%、さらに好ましくは3〜12モル%である。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、エタアクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸などが例示され、特にアクリル酸あるいはメタアクリル酸が好ましい。また、共重合体に含有されても良い他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸イソブチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素などが例示される。
【0022】
オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩における金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛などの遷移金属が例示され、特に亜鉛を用いた場合がポリアミド樹脂に対する相容性の点で好ましい。オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属塩における中和度は、100%以下、特に90%以下、さらに70%以下の範囲が望ましい。中和度の下限値については、通常5%以上、特に10%以上、さらには30%以上が望ましい。
【0023】
本発明に用いるオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は、好ましくは0.05〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜30g/10分である。これらのオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0024】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(D)は、成分(A)、(B)、(C)とは異なる熱可塑性樹脂であり、溶解性パラメーターが11以下である事が重要である。即ち、熱可塑性樹脂(D)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)の溶解性パラメーター(Fedorsの式から算出)に近いことにより、結果として、4成分(A)、(B)、(C)、(D)間の相容性が向上する。熱可塑性樹脂(D)の溶解性パラメーターが11以上である場合、4成分(A)、(B)、(C)、(D)間の相容性が低下し、機械強度等が著しく低下する。
【0025】
溶解性パラメーターが11以下の熱可塑性樹脂(D)として、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。その中でも、ポリオレフィン系樹脂が最も好ましく、高密度もしくは低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1などのα−オレフィンの単独重合体、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1などから選ばれたα−オレフィン同士の共重合体などが例示される。また、α−オレフィンに以下の成分:ジオレフィン、塩化ビニル、酢酸ビニルなどのビニル化合物、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの不飽和カルボン酸エステルなど;を共重合したものも含まれる。また、スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS)、スチレン−イソプレンとのブロック共重合体、あるいはスチレン−イソプレンとのブロック共重合体等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0026】
本発明に用いる熱可塑性樹脂(D)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は、好ましくは0.05〜100g/10分、さらに好ましくは0.05〜50g/10分、最適には0.5〜30g/10分である。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。これらの熱可塑性樹脂(D)は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0027】
また、本発明に用いる熱可塑性樹脂(D)は、低ヤング率であることが好ましい。EVOH(A)は一般のポリマーに比べて剛性が高く柔軟性に欠けるため、機械強度、耐衝撃性が劣る。そこで、EVOH(A)と熱可塑性樹脂(D)とを配合させる場合には、良好な機械強度、耐衝撃性を発現させるために、一般的には低ヤング率の樹脂を配合することが好ましい。例えば、20℃における弾性モジュラス(ASTM D882)が500kg/cm2以下の熱可塑性樹脂(D)をEVOH(A)にブレンドすることが特に有効である。20℃における弾性モジュラスについては、より好適には400kg/cm2以下であり、さらに好適には300kg/cm2以下である。
【0028】
弾性モジュラスが500kg/cm2以下である熱可塑性樹脂(D)の例としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、スチレン系エラストマー(SBS、SEBS、SEPS、SBR樹脂等)などが挙げられる。
【0029】
本発明の多層チューブは、上記(A)〜(D)の樹脂を配合した樹脂組成物を成形して得られるが、各(A)〜(D)成分の配合重量比は下記式(1)〜(4)を満足するものである。
0.6≦W(A+D)/W(T)≦0.995 (1)
0.005≦W(B+C)/W(T)≦0.4 (2)
0.5≦W(A)/W(A+D)≦0.99 (3)
0.02≦W(B)/W(B+C)≦0.98 (4)
(但し、W(A);組成物中の(A)の重量
W(B);組成物中の(B)の重量
W(B+C);組成物中の(B)と(C)との合計重量
W(A+D);組成物中の(A)と(D)との合計重量
W(T);組成物の合計重量)
(1)〜(4)式は、それぞれ好適には、
0.65≦W(A+D)/W(T)≦0.99 (1’)
0.01≦W(B+C)/W(T)≦0.35 (2’)
0.5≦W(A)/W(A+D)≦0.98 (3’)
0.04≦W(B)/W(B+C)≦0.96 (4’)
であり、より好適には、
0.70≦W(A+D)/W(T)≦0.985 (1”)
0.015≦W(B+C)/W(T)≦0.30 (2”)
0.5≦W(A)/W(A+D)≦0.97 (3”)
0.05≦W(B)/W(B+C)≦0.95 (4”)
である。
【0030】
W(A+D)/W(T)が0.995を超える場合あるいはW(B+C)/W(T)が0.005未満の場合には、EVOH(A)と熱可塑性樹脂(D)の相容性が低下し、本発明の効果が得られない。また、 W(A+D)/W(T)が0.6未満の場合あるいはW(B+C)/W(T)が0.4を超える場合には、組成物全体の量のうちEVOH(A)と熱可塑性樹脂(D)の比率が低下するため、本来EVOH(A)の有するバリア性や熱可塑性樹脂(D)の有する溶融成形性等の性能が低下する。
【0031】
W(A)/W(A+D) の値は0.5以上、0.99以下の範囲、好ましくは0.55以上、0.98以下、より好ましくは、0.6以上、0.97以下の範囲である。0.5未満の場合にはEVOHが連続相を形成しにくくなり、組成物のガスバリア性が不足し、 W(A)/W(A+D)が0.99を超える場合には組成物の柔軟性の改善効果が不充分である。
【0032】
また、 W(B)/W(B+C)が0.02未満の場合、EVOH(A)とポリアミド樹脂(B)の相容性が低下し、 W(B)/W(B+C)が0.98を超える場合、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)と熱可塑性樹脂(D)との相容性が低下する。各成分間の相容性の低下は、樹脂組成物自身の機械強度、あるいはバリア性の低下につながる。
【0033】
また、ポリアミド樹脂(B)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)との配合重量比W(B)/W(B+C)が、0.5以下であることが、熱安定性の観点から好ましく、より好適には0.45以下であり、最適には0.4以下である。配合重量比W(B)/W(B+C)がかかる範囲にあることで、樹脂組成物の溶融安定性が改善され、長時間におよぶ溶融成形においても良好な外観の成形物を得ることができ、生産性が向上する。この理由は明らかではないが、EVOH(A)とポリアミド樹脂(B)の反応が溶融安定性に悪影響を与えているものと考えられる。
【0034】
本発明の多層チューブにおいては、EVOH(A)が連続相、熱可塑性樹脂(D)が分散相となる樹脂組成物を用いて層構造を構成することが好ましい。このような樹脂組成物を用いて層構造を構成することにより、優れたバリア性を保持しながら柔軟性、機械強度が改善された多層パイプが得られる。このような分散形態を得るためには、 W(A)/W(A+D) の値を大きくするか、あるいは(A)/(D)の溶融粘度比を小さくすればよい。
【0035】
本発明に用いられる樹脂組成物中には、前記(A)〜(D)の樹脂の他に酸化防止剤を添加することが望ましい。例えば、3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの適切な酸化防止剤が用いられる。更に、他の適切な添加剤(例えば熱安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、着色剤、フィラー、他の樹脂など)含まれてもよいが、これらの添加量剤は、本発明の容器の有する効果を阻害しない範囲で使用される。
【0036】
本発明に用いられる樹脂組成物は、通常の溶融混練装置により各成分を溶融混練することにより容易に得ることができる。ブレンドする方法に関しては、特に限定されるものではないが、EVOH(A)、ポリアミド樹脂(B)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)、熱可塑性樹脂(D)を同時に単軸または二軸スクリュー押出機などでペレット化し乾燥する方法、あるいはまず最初にポリアミド樹脂(B)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)を溶融混合−冷却−ペレット化した後、EVOH(A)と熱可塑性樹脂(D)にドライブレンドし、単軸または二軸スクリュー押出機などでペレット化し乾燥する方法等があげられる。
【0037】
なかでも、後述する実施例で示されているように、まず最初に、ポリアミド樹脂(B)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体(C)またはその金属塩とを溶融混合し、造粒・乾燥してから、 EVOH(A)と熱可塑性樹脂(D)とにドライブレンドし、単軸または二軸スクリュー押出機などで造粒し、乾燥する方法が好ましい。この理由として、各成分を同時に溶融混練する場合は、相容性の良い成分同士(例えば、EVOH(A)とポリアミド樹脂(B))の混合が優先して進む場合があるために、4成分からなる樹脂組成物のモルフォロジーを安定に制御することが難しいことがある。しかしながら、ポリアミド樹脂(B)とオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)とのブレンド物を予め作製しておくことにより、溶融混合時の条件にあまり影響を受けずに、安定したEVOH(A)と熱可塑性樹脂(D)の相容化効果が得られる。
【0038】
なお、溶融配合操作においては、ブレンドが不均一になったり、ゲル、ブツが発生、混入したりする可能性があるので、ブレンドペレット化はなるべく混練度の高い押出機を使用し、ホッパー口を窒素ガスでシールし、低温で押出しすることが望ましい。
【0039】
本発明の多層パイプはEVOH(A)、ポリアミド樹脂(B)、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩(C)および熱可塑性樹脂(D)からなる樹脂組成物を有する多層パイプは、本発明に用いられる樹脂組成物の単層構成の成形物とすることもできるが、上記樹脂組成物と他の各種基材との、2種以上の多層構成の成形物として使用できる。上記樹脂組成物層とそれに隣接する熱可塑性樹脂層としては、高密度、中密度、あるいは低密度のポリエチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、あるいはブテン、ヘキセンなどのα−オレフィン類を共重合したポリエチレン、アイオノマー樹脂、ポリプロピレンホモポリマー、あるいは、エチレン、ブテン、ヘキセンなどのα−オレフィン類を共重合したポリプロピレン、ゴム系ポリマーをブレンドした変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、あるいはこれらの樹脂に無水マレイン酸を付加、あるいはグラフトした熱可塑性樹脂が好適なものとして挙げられる。さらにその他の熱可塑性樹脂層として、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などが挙げられる。
【0040】
また、本発明の多層パイプの多層を構成する樹脂組成物層とそれに隣接する熱可塑性樹脂層との間に接着性樹脂層を有していても良い。接着性樹脂は特に限定されるものではないが、不飽和カルボン酸またはその無水物(無水マレイン酸など)をオレフィン系重合体または共重合体(例えば、LLDPE、VLDPEなど)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体にグラフトしたものが代表的なものとして挙げられる。
【0041】
本発明の多層パイプを得る方法としては、特に限定されるものではないが、例えば2台または3台の押出機と多層用円形ダイを用いて行う共押出成形操作で、最も効率的にエンドレスパイプを得ることができる。
【0042】
多層構造体(パイプ)の層構成に関しては特に限定されるものではないが、成形性およびコスト等を考慮した場合、熱可塑性樹脂層/酸素バリア層/熱可塑性樹脂層、酸素バリア層/接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層、熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/酸素バリア層/接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層が代表的なものとして挙げられる。両外層に熱可塑性樹脂層を設ける場合は、異なる樹脂を用いてもよいし、同じものを用いてもよい。
【0043】
以上のように、本発明の多層パイプは、バリア性、機械強度、柔軟性等に優れた多層パイプとして有用である。本発明の多層パイプは前述したとおり、温水循環用パイプとして特に有用であるが、燃料用パイプ、あるいはその他の各種液体、またはガス用パイプとしても使用することができる。
【0044】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0045】
(使用材料)
本発明の実施例および比較例の多層パイプ用の樹脂組成物として用いた樹脂成分を以下の表1〜4に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
参考例1
表1〜4の樹脂のうち、EVOHとしてA−1、ポリアミド樹脂としてB−1、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその金属塩としてC−1、および熱可塑性樹脂としてD−1を用いて樹脂組成物を作成し、多層パイプを作製した。
【0051】
EVOH(A−1)80重量部、ポリアミド樹脂(B−1)2重量部、エチレン−メタクリル酸ランダム共重合体(EMAA;C−1)3重量部および超低密度ポリエチレン(VLDPE;D−1)15重量部からなるブレンド物を以下の方法で得た。すなわち、まずポリアミド樹脂(B−1)とEMAA(C−1)を二軸スクリュータイプのベント式押出機に入れ、窒素の存在下220℃で押出しペレット化を行い、得られたブレンドペレット、EVOH(A−1)およびVLDPE(D−1)を再度同様の方法でブレンドし、EVOH樹脂組成物のペレットを得た。
【0052】
一方、密度0.952g/cc、メルトフローレート0.5g/10分の高密度ポリエチレン(HDPE:三菱油化製ユカロンハードBX−50)100重量部、アセトンに溶解したビニルトリメトキシシラン2重量部およびジクミルパーオキサイド0.2重量部を混合した。その混合物を、一軸スクリューを用いて230℃でストランド状に押し出し、ビニルシランが1.5重量%付加された変性ポリエチレンのペレットを得た。
【0053】
次に、このペレット100重量部に対してジブチルスズラウレート2重量部を配合したBX−50を5重量部配合したものを一台の押出機に、前述したEVOH樹脂組成物のペレットを別の押出機に、更に接着性樹脂(無水マレイン酸変性LDPE)をもう一台の押出機に入れ、3種3層の円形ダイを用いて、EVOH樹脂組成物/接着性樹脂/HDPE(100/100/2000μm)の構成からなる外径20mmの多層パイプを作製した。
【0054】
このようにして成形した多層パイプの一部を切断し、小片を得た。小片の切断面のEVOH(A)をヨウ素で染色し、小片の切断面を光学顕微鏡で観察することにより、EVOH(A)が連続相であるか、分散相であるかを判別した。本実施例においては、EVOH樹脂層中のEVOH(A)は連続相であった。
【0055】
得られた多層パイプを用いて、以下の方法で酸素バリア性、耐クラック性について評価した。評価結果を表5に示す。
【0056】
(1)酸素バリア性
得られたパイプに、金属スズを充填した充填塔を用いて溶存酸素を除去した水を循環し、温度70℃で該水中の溶存酸素の増加速度を20℃―65%RHの条件下にて測定した。その結果、該溶存酸素の増加速度は28μg/リットル・hrであった。ここで、増加速度μg/リットル・hrとは、パイプ中の水1リットル当たりμg/リットル・hrの速度で溶存酸素の増加があることを示す。即ち、パイプを含む装置全系の水の体積をV1cc、上記パイプ内の水の体積をV2ccとし、単位時間当たりの装置内循環水の酸素濃度増加量をBμg/リットル・hrとした場合、上記の溶存酸素増加速度(Aμg/リットル・hr)とはA=B(V1/V2)で計算される値を示す。
【0057】
(2)耐クラック性
得られたパイプを20cmにカットし、−15℃の恒温ボックス内にて10分間放置した後、片側のパイプ端部から4つの爪をもつ金属製拡大器にてパイプ内径が30mmになるまで瞬時に拡大した。その後、EVOH層にクラックが発生していないかを目視にて観察した。100本のパイプサンプルを使用して該テストを行い、以下に示すクラック発生の程度および発生率について評価を行った。
A:クラックの発生なし。
B:微細なクラックの発生あり。
C:微細なクラックおよび大きなクラックが発生した。
D:大きなクラックのみ発生した。
その結果、A:98%、B:2%、C:0%、D:0%であった。
【0058】
実施例2〜3および比較例1〜4
表1〜4に記載の樹脂を、表5に記載の配合比率で用いた以外は参考例1と同様にして多層パイプを作製した。なお、比較例の樹脂組成物が2成分または3成分からなる場合には1回の混練操作でブレンドを行い、1成分からなる場合には、混練操作は行わなかった。
【0059】
参考例1、実施例2、実施例3、および比較例の評価結果を表5にまとめて示す。
【0060】
【表5】
【0061】
本発明の4成分系の樹脂組成物を多層構造の層として有する多層ボトルは、3成分系に比較してバリア性と耐衝撃性に優れていることが示されている。
【0062】
【発明の効果】
本発明により、ガスバリア性、機械強度、耐衝撃性においても優れた性能を有する樹脂組成物を有する多層パイプが提供される。
Claims (5)
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、ポリアミド樹脂(B)、オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体の金属塩(C)、および11以下の溶解性パラメーター(Fedorsの式から算出)を有する前記樹脂以外の熱可塑性樹脂(D)からなり、配合重量比が下記式(1)〜(4)を満足する樹脂組成物を有する多層パイプ:
0.6≦W(A+D)/W(T)≦0.995 (1)
0.005≦W(B+C)/W(T)≦0.4 (2)
0.5≦W(A)/W(A+D)≦0.99 (3)
0.02≦W(B)/W(B+C)≦0.98 (4)
(但し、W(A);組成物中の(A)の重量
W(B);組成物中の(B)の重量
W(B+C);組成物中の(B)と(C)との合計重量
W(A+D);組成物中の(A)と(D)との合計重量
W(T);組成物の合計重量)。 - 配合重量比 W(B)/W(B+C)が0.5以下の樹脂組成物を有する請求項1に記載の多層パイプ。
- 前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が連続相、熱可塑性樹脂(D)が分散相となる樹脂組成物を有する、請求項1または2に記載の多層パイプ。
- ポリアミド樹脂(B)およびオレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体の金属塩(C)を先に溶融混合してから、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)および熱可塑性樹脂(D)と溶融混合して得られる樹脂組成物を有する、請求項1ないし3いずれかの項に記載の多層パイプ。
- 多層パイプが温水循環用パイプである、請求項1ないし4いずれかの項に記載の多層パイプ。
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