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JP4402873B2 - 電子銃の使用方法 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属溶解用設備に付帯する電子銃を構成するフィラメントに関し、特に、フィラメントの断線を効果的に防止して、フィラメントの寿命を向上させ、ひいては安定した熱電子の照射を可能として製品の優れた生産性を実現したものである。
【0002】
【従来の技術】
熱電子を利用した金属の溶解技術は、鉄や鋼の溶解のみならず、例えばチタン等の高融点金属の溶解にも広く用いられている。このような金属の溶解作業は、金属溶解炉内に原料を供給した後炉内を真空引きし、炉内圧が十分に低くなった時点で電子銃を用いて原料に熱電子を照射することにより原料の溶解を開始する。
【0003】
従来の電子銃としては、フィラメント、カソード、グリッド、アノードを備え、フィラメントから発生された電子の衝撃に基づいてカソードから発生した電子をグリッドの電子通過孔を介してアノードの方向に加速するようにし、フィラメントとグリッドとの間に、グリッドに向かうフィラメントからの熱電子を遮蔽するカバーが配置され、上記カバーとグリッドとの間に、グリッドへ向かう上記カバーからの熱電子を遮蔽する別のカバーを配置したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。上記特許文献1に記載された技術は、金属製カバー8とグリッド3の間に、該グリッド3へ向かう前記カバー8からの熱電子を遮蔽する第2の金属製(例えば、タンタル)カバー9を配置し、該第2の金属製カバーをフィラメント1の支持体に、フィラメント1と同電位になるように支持させたことにより、熱電子の照射の安定化を図ったものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−6520号公報(第2,3頁、図2)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載された電子銃を使用して金属を溶解した場合には、金属の溶解中に熱電子の照射が停止する場合がある。このような場合には、金属溶解炉を解体して内部を点検する必要がある。この熱電子の照射停止は、経験上、電子銃を構成する部品の損傷に起因する場合が多く、なかでも、電子銃を構成するカソードを加熱するためのフィラメントが断線していることが多い。
【0006】
このようにフィラメントが断線した場合には、断線したフィラメントを新品と交換することにより金属溶解炉の操業を再開することができる。しかしながら、かかる場合には、電子銃の解体が必要であるのみならず、一時的に金属溶解炉内の真空状態を解除する必要があるため、製品の優れた生産性を実現することができないという問題があった。そこで、近年では、安定した熱電子の照射を可能として製品の優れた生産性を実現すべく、金属溶解炉の操業中において断線し難い電子銃用フィラメントの開発が要請されていた。
【0007】
本発明は、上記要請に鑑みてなされたものであり、安定した熱電子の照射を可能として製品の優れた生産性を実現すべく、金属溶解炉の操業中において断線し難い電子銃用フィラメントを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、フィラメントの断線は、フィラメントの長時間にわたる使用が原因である場合もあるが、多くの場合は使用時間にはほぼ関係なく、金属溶湯部から蒸発して放出される金属イオンが、カソードの吸引力によりフィラメント側へ飛翔し、フィラメントの径方向中央部分等に衝突することが原因であるとの知見を得た。
【0009】
図1は、従来から広く使用されている一般的な金属溶解用設備を示す図である。図中符号10は当該設備に付帯する電子銃を、符号20は金属溶解炉をそれぞれ示す。同図に示すように、電子銃10の内部には、フィラメント11、カソード12、アノード13、集束レンズ14、ガイド管15、集束レンズ16、および偏向レンズ17がそれぞれ順に配置されている。一方、金属溶解炉20には、その底部に設置されたハース21に溶解用の金属22が供給されている。このような構成の下、フィラメント11に通電を開始することで、フィラメント11が発熱し、その下方に位置するカソード12が加熱される。これにより、カソード12から熱電子が放出され、当該熱電子はカソード12の下方に位置するアノード13側に飛翔して下方側に加速される。加速された熱電子は、集束レンズ14、ガイド管15、集束レンズ16、および偏向レンズ17の作用の下、図中の左側の矢印で示すように、電子ビームとなって金属22の加熱原に供される。電子ビームが照射された金属22は溶融して、図示しないルツボに導かれて凝固し、インゴットが形成される。また、このように電子ビームが金属22に照射されると、金属溶湯部から蒸発して放出された金属イオンが、カソード12の吸引力により図中の右側の矢印で示すように上方に飛翔し、カソード12を通過してフィラメント11まで達して上記したフィラメントの断線を招いているものと考えられる。
【0010】
図2(a),(b)は、それぞれ従来の電子銃用フィラメントを示す。例えば図2(a)に示すような各フィラメントを電子銃に使用した場合には、上記したように上方に飛翔した金属イオンが、フィラメントの、例えば、図2(a)における環状部の径方向中央部分等(同図においては幅方向中央部分)に衝突する。そこで、発明者らは、フィラメントの環状部の径方向中央部分等に中空部を形成すれば、上記衝突が回避され、ひいてはフィラメントの断線を防止することができるとの知見を得た。
【0011】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、金属溶融部から金属イオンが蒸発して放出された場合においても断線し難いフィラメントの構造に係るものである。すなわち、本発明の電子銃の使用方法は、環状部と、環状部の任意の異なる点においてそれぞれ接続された2本のリード線とからなる電子銃用フィラメントから構成された電子銃の使用方法であって、電子銃は、フィラメントおよびカソードを有し、フィラメントおよびカソードは、溶解する金属に対して一直線上に配置され、フィラメントは、中央部が中空であり、環状部は、軸線からほぼ等距離に離間して少なくとも一周延在し、しかも環状部の内径に対する外径の比が1.0〜1.7のフィラメントであることを特徴とするものである。
【0012】
本発明では、フィラメントの構造を上記のようにし、すなわち、例えば図2(a)に示す従来は渦巻き状となっているフィラメントの径方向中央部分を中空として、外周部にコイルを集中的に延在させる構成としている。これにより、金属溶融部から蒸発して放出された金属イオンのフィラメントへの衝突が回避され、ひいては金属溶解炉の操業中においフィラメントの断線を防止することができる。したがって、本発明によれば、安定した熱電子の照射を可能として製品の優れた生産性を実現することができる。
【0013】
また、本発明に係る電子銃用フィラメントにおいては、特に、中央部が中空であり、環状部の内径に対する外径の比を1.0〜3.0としていることにより、ヒータとしての機能を維持しつつ、金属溶融部から飛翔してきた金属イオンの衝突を回避できるという効果が得られる。
【0014】
なお、このような電子銃用フィラメントにおいては、2本のリード線は、使用態様により直線状としても曲線状としてもよい。また、環状部は、円状等のように同一平面内に存在させても、スプリング状等のように非同一平面内に存在させてもよい。なお、リード線と環状部とを1本の線材により加工してフィラメントを構成してもよい。
【0015】
このような電子銃用フィラメントにおいて、上記環状部の外径が、10〜30mmであることが望ましい。電子銃用フィラメントは、出力にもよるが、その環状部の外径が10mm未満の場合にはコイルの曲率が大きくなり、加工時の残留応力がコイルの変形や破損を招くおそれがある。また、環状部の外径が30mmを超えると、電子銃中でフィラメントの下方に位置するソードの外径に比べて環状部の外径が大きくなるので、カソードの加熱を十分に行うことができない。なお、上記効果をさらに得るには、環状部の外径を10〜20mmとするのが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の電子銃用フィラメントを図面を参照しながら詳細に説明する。
図3(a)は、本発明の電子銃用フィラメント30を示す図である。フィラメント30は、環状部31と環状部31の任意の異なる点32,33においてそれぞれ接続された2本のリード線34,35とからなる。環状部31は、軸線Lからほぼ等距離に離間して一周半延在し、しかも環状部31の内径に対する外径の比が1.7となっている。同図に示すフィラメント30は、図2(a)において示した従来は渦巻き状になっているフィラメントの径方向中央部分を中空構造として、外周部にコイルを集中的に延在させる構成としている。当該構成により、金属溶融部から蒸発して放出された金属イオンのフィラメントへの衝突が回避され、ひいては金属溶解炉の操業中においフィラメントの断線を防止することができる。したがって、図3(a)の構造を有するフィラメント30を使用した場合には、安定した熱電子の照射を可能として製品の優れた生産性を実現することができる。また、図3(a)に示すフィラメント30においては、特に、断線の頻度を低減して長時間の連続操業を行うことが要求されるため、環状部31の内径に対する外径の比を1.7としている。
【0017】
また、図3(a)に示す電子銃用フィラメントにおいては、環状部31の外径を、10〜30mmとすること、さらには10〜20mmとすることが、コイルの変形や破損を防止するとともに、カソードの加熱が十分に実現される点で好ましい。
【0018】
図3(b)は、図3(a)に示したフィラメント30に対して類似的構造をなすフィラメント40を示す図である。同図に示すところによれば、フィラメント40は、環状部41と環状部41の任意の異なる点42,43においてそれぞれ接続された2本のリード線44,45とからなり、環状部41は、軸線Lからほぼ等距離に離間して一周半延在し、しかも環状部41の内径に対する外径の比が1.1となっている。このように、フィラメント30,40は、その環状部31,41の構造を、適宜選択して、上記したように円形状とすることも多角形形状とすることもできる。当該部分を図3(b)に示すように多角形形状としたフィラメント40においても、図3(a)に示す構造のフィラメント30と同様に、安定した熱電子の照射を可能として製品の優れた生産性を実現することができる。なお、場合によっては外周部に延在部を集中させるかわりに、渦巻き状の中心部のみを除去したフィラメントを用いてもよい。
【0019】
図3(a),(b)に示したフィラメント30,40は、一種の抵抗発熱体を構成するものである。このため、フィラメント30およびフィラメント40の環状部31,41の径方向中央部分にコイルを延在させない場合には、例えば、図2(a)に示す従来のフィラメントに比して、全体として抵抗が減少することから熱電子の放出が十分に実現されないおそれがある。しかしながら、フィラメント30,40の線径を細くすることで全体の抵抗を維持することができる。
【0020】
さらに、フィラメント30,40には、高融点金属を使用することが好ましく、例えば、TaやW等が好適である。
【0021】
また、フィラメント30,40の環状部31,41の巻き数は1〜5巻きとするのが好ましく、さらには1〜3巻きとするのがより好ましい。なお、フィラメント30,40の外径は上記したようにある程度制限することが好ましく、しかも上記中央部分が中空構造をなしているので、コイルの巻き数を過度に増加させるとフィラメント30,40の温度が上昇し過ぎて断線の原因となるおそれがある。
【0022】
【実施例】
次に、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。
[実施例]
図3(a)に示す構造を有し、環状部の内径に対する外径の比が1.7であり、環状部の外径が15mmである本発明のフィラメントを採用した。このフィラメントを有する出力600kwの電子銃を備える金属溶解用設備を用いて、300kgのスポンジチタンを溶解し、20本のチタンインゴットを溶製した。その結果、フィラメントの断線はなく、安定した溶解作業を継続することができた。
【0023】
[比較例]
一方、図2(a)に示す構造を有し、図3(a)の環状部31に対応する環状部の内径に対する外径の比が2.5であり、環状部の外径が15mmである従来のフィラメントを採用した。このフィラメントを有する出力400kwの電子銃を備える金属溶解炉を用いて、300kgのスポンジチタンを溶解し、チタンインゴッドを溶製したところ、7本目のインゴットを溶解している最中にフィラメントが断線した。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、フィラメントの環状部の径方向中央部分を中空として、外周部にコイルを集中的に延在させる構成としたことで、金属溶融部から蒸発して放出された金属イオンによるフィラメントへの衝突が回避され、ひいては金属溶解炉の操業中においフィラメントの断線を防止することができる。よって本発明は、熱電子を利用して金属の溶解作業を行うに際して安定した熱電子の照射を可能として製品の優れた生産性を実現し得る銃用フィラメントを提供することができる点で有望である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一般的な金属溶解用設備を示す正面図である。
【図2】 (a),(b)は、それぞれ従来のフィラメントを示す図である。
【図3】 (a),(b)は、それぞれ本発明の実施形態のフィラメントを示す図である。
【符号の説明】
30,40…フィラメント、31,41…環状部、32,33,42,43…環状部31の任意の異なる点、34,35,44,45…リード線、L…軸線。

Claims (2)

  1. 環状部と、前記環状部の任意の異なる点においてそれぞれ接続された2本のリード線とからなる電子銃用フィラメントから構成された電子銃の使用方法であって、
    前記電子銃は、前記フィラメントおよびカソードを有し、前記フィラメントおよび前記カソードは、溶解する金属に対して一直線上に配置され、
    前記フィラメントは、中央部が中空であり、前記環状部は、軸線からほぼ等距離に離間して少なくとも一周延在し、しかも環状部の内径に対する外径の比が1.0〜1.7のフィラメントであることを特徴とする電子銃の使用方法
  2. 前記環状部の外径が、10〜30mmであることを特徴とする請求項1に記載の電子銃の使用方法
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