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JP4403033B2 - エキゾーストマニホールド用オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents
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本発明は、自動車エンジンの排気ガス経路部材であるエキゾーストマニホールド用の鋼であって、特に1000〜1050℃の高温排ガスに曝されるタイプの二重構造エキゾーストマニホールド内管に好適なオーステナイト系ステンレス鋼に関する。
近年、自動車エンジンおよび排気ガス処理システムには、厳しい排ガス規制をクリアする浄化性能が求められている。排ガス浄化手段としては排ガス経路に触媒コンバーターを設けるのが一般的であるが、エンジン始動直後は浄化装置の温度が低く通常運転時よりも浄化効率が低下するため、このときにできるだけ高効率で作動させることが重要となる。その対策として浄化装置をエキゾーストマニホールド直下に追加設置すること、あるいは燃焼ガス温度そのものを上昇させることなどが有効であり、種々検討されてきたが、これらにも限界がある。
その後、エキゾーストマニホールドを二重構造にする方法が提案され、既に一部で実用化されている。これによると従来の単構造パイプよりも部品単価は高くなるものの、燃焼ガスの保温効果が非常に高いので浄化効率が高まり、断熱材,加熱装置,更なる浄化装置等を付加する必要がなく、部品点数削減によるコスト低減メリットが生じる。
単構造のエキゾーストマニホールドでは加熱・冷却の繰り返しによる熱疲労破壊を避けるために、オーステナイト系よりも熱膨張係数の小さいフェライト系鋼種が使用される。一方、二重構造では、外側の管(外管)はやはり拘束された状態で加熱冷却の繰り返しを受けるため単管と同様にフェライト系鋼種を使用することが望ましい。しかし内側の管(内管)は、肉厚が1mm以下と薄いため外管より一層優れた加工性が要求され、また、材料が拘束されないように設計することが可能であることから、オーステナイト系鋼種を使用する方が有利な場合が多くなる。
エキゾーストマニホールドの内管は排ガスに直接曝されるため、材料温度は排ガスと同程度(従来一般的には800〜1000℃)に達する。この温度域で酸化増量の少ない鋼種を使用する必用があるが、例えば代表的なオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304では基本的にこの特性が不十分である。また、一般にオーステナイト系ステンレス鋼は、フェライト系ステンレス鋼よりも酸化スケールの密着性が劣るため、繰り返し加熱冷却における耐スケール剥離性には特に注意を要する。
さらに、エキゾーストマニホールドの内管用材料としては、高温強度,加工性,溶接性に優れることも要求される。すなわち、高温強度については、材料が拘束されないよう設計することで加熱冷却の繰り返しによる熱疲労破壊は回避し得るものの、エンジンの振動による疲労が問題となってくる。このため高温高サイクル疲労特性に優れることが望まれる。加工性については、曲げ加工,プレス成形など種々の加工が想定され、それぞれの成形法に見合った特性が要求される。溶接性については、TIG溶接,MIG溶接等における溶接割れ感受性の低い材料が好ましい。
耐熱性オーステナイト系鋼種については従来から種々の鋼種が開発されている(特許文献1〜12)。なかでも特許文献12には、エキゾーストマニホールドの内管に適したオーステナイト系ステンレス鋼が提案されている。
特開昭50−18313号公報 特開昭50−93219号公報 特開昭52−109420号公報 特開昭53−149114号公報 特開昭62−192562号公報 特開昭63−38558号公報 特開平5−98395号公報 特開平7−118810号公報 特開平7−188869号公報 特開平8−239737号公報 特開平9−87809号公報 特開2001−98344号公報
特許文献12のエキゾーストマニホールド内管用オーステナイト系ステンレス鋼は排ガス温度800〜1000℃を想定したものであり、特性としては、1000℃で100サイクルの断続加熱において優れた耐酸化特性を呈するものである。また、成形性や溶接性を配慮した成分設計となっている。しかしながら、自動車の最高排ガス温度は車種によって多様化しており、1000〜1050℃といった高温の燃焼ガスを排出するタイプのエンジンも生産されている。特許文献12の鋼ではこのような高温排ガスに対応できない。
一方、昨今では自動車の長期信頼性を向上させる取り組みが各自動車メーカーで行われ、断続加熱に対する耐久性に関しては特許文献12で行っている100サイクル程度の試験では足りず、1000サイクル以上、好ましくは2000サイクルの耐久試験において優れた耐久性、特に耐スケール剥離性を示す性能が望まれるようになってきた。
また、1000〜1050℃という高温領域での使用を考慮したとき、高温酸化特性、特に耐スケール剥離性の面ではオーステナイト系よりフェライト系の鋼種が有利となってくる。ところが、最近では自動車用の鋼管部材の加工法として「ハイドロフォーミング」が採用されるようになってきた。これは鋼管内部に液体による圧力を付与して所望形状の鋼管部材に成形する技術であり、従来、鋼板のプレス成形品をいわば「もなか」のように溶接して管状しなければ製造できなかった複雑形状の鋼管部材が容易に製造できる利点がある。エキゾーストマニホールドの内管においてもハイドロフォーミングを想定した延性を具備するものが求められるようになってきた。このような優れた延性をフェライト系の耐熱鋼種において実現することは困難であり、オーステナイト系鋼を用いた成分設計が必要となる。
本発明は、このような現状に鑑み、材料温度が1000〜1050℃となるような環境で使用されるエキゾーストマニホールド、特に二重構造の内管に好適な高温強度,長期繰り返しにおける耐スケール剥離性を有し、かつハイドロフォーミングの適用も可能な延性を具備した鋼を開発し提供しようというものである。
本発明で提供する鋼は、質量%で、C:0.15%以下,Si:1〜3%,Mn:2%以下,P:0.04%以下,S:0.01%以下,Ni:12超え〜20%,Cr:22超え〜25%,N:0.048〜0.15%,Al:0.5超え〜2.0%,Nb:0〜0.5%,Ti:0〜0.5%,Mo:0〜0.5%,Cu:0〜0.5%,REM,Y,Caの合計:0〜0.1%,V:0〜0.5%,W:0〜0.5%,Zr:0〜0.5%,残部Feおよび不可避的不純物であり、かつ下記(1)式を満たすエキゾーストマニホールド用オーステナイト系ステンレス鋼である。
Cr+0.5Si+3Al≧26 ……(1)
ここで、Nb,Ti,Mo,Cu,REM,Y,Ca,V,W,Zrは任意添加元素である。元素含有量の下限「0%」は、製鋼段階で行われる通常の分析方法において測定限界以下となる場合である。
(1)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量が代入される。
また上記鋼において特に、質量%で、Nb:0.05〜0.5%,Ti:0.05〜0.5%,Mo:0.05〜0.5%,Cu:0.05〜0.5%,V:0.05〜0.5,W:0.05〜0.5%,Zr:0.05〜0.5%の1または2以上を満たすものが提供される。
あるいはまた、質量%で、REM(希土類元素),Y,Caの合計:0.005〜0.1%であるものが提供される。
本発明によれば、1000〜1050℃の温度域で長期間繰り返し使用したときに優れた耐久性、特に優れた耐スケール剥離性を呈する鋼が実現された。この鋼は高温強度にも優れ、エキゾーストマニホールドの特に二重構造の内管に好適な特性を有する。また、ハイドロフォーミングに適用可能な延性を有する。したがって本発明は、最高排ガス温度が1000〜1050℃と高いタイプの自動車において、エキゾーストマニホールドの信頼性向上およびコスト低減に寄与するものである。
本発明の鋼は、1000〜1050℃の温度に曝される二重構造エキゾーストマニホールドの内管に好適な高温強度,長期繰り返しにおける耐スケール剥離性、および優れた延性を実現すべく、以下のような成分設計を行ったものである。
Cは、オーステナイト系ステンレス鋼の高温強度向上に有効である。しかし、過剰に含有させるとエキゾーストマニホールドとして使用中にCr炭化物を形成して靱性が劣化するとともに、耐高温酸化性の向上に有効な固溶Cr量が減少する。このためC含有量は0.15質量%以下に制限される。好ましいC含有量の範囲は0.02〜0.15質量%である。
Siは、高温酸化特性の改善に非常に有効である。本発明では後述のCr,AlとともにSiを複合添加することで1050℃レベルでのスケール密着性を改善するのであるが、Siは1質量%以上の含有が必要となる。しかし過剰添加は延性を損ねるのでSi含有量の上限は3質量%に制限される。
Mnは、オーステナイト安定化元素であり、本発明では主として相バランス調整のために添加される。しかし、過剰なMn添加は耐高温酸化性の低下を招くので2質量%以下に制限される。
Pは、オーステナイト系ステンレス鋼の熱間加工性を損なう元素であり、可能な限り低減することが望ましい。このためP含有量は0.04質量%以下に制限される。
Sは、Pと同様にオーステナイト系ステンレス鋼の熱間加工性を損なう元素であり、鋼の製造歩留りを低下させないために可能な限り低減することが望ましい。このためS含有量は0.01質量%以下に制限される。
Niは、オーステナイト安定化元素であり、Cr含有量が高い本発明鋼においてはオーステナイトバランス調整のため12質量%を超えるNi含有を必要とする。しかし、Niの多量添加は延性を低下させるとともに経済性を損なうので、Ni含有量の上限は20質量%に制限される。より好ましいNi含有量は15〜19質量%である。
Crは、高温でのスケール生成を抑制する基本元素であり、本発明では1050℃レベルでの耐高温酸化性を付与するために22質量%を超えるCr含有を必要とする。ただし過剰にCrを含有させると加熱によるσ脆化が生じやすくなり、また原料コストも高くなる。このためCr含有量は25質量%以下に制限される。
Nは、固溶強化により高温強度の向上に有効であるが、過剰添加はCr窒化物の形成により鋼の靱性や延性を低下させる。このため、N含有量の下限は0.048質量%、上限は0.15質量%に制限される。
Alは、耐高温酸化性の改善に有効であり、特にCr,Si酸化物の内層にAl酸化物を形成しスケール密着性を向上させる。この効果を十分に発揮させるためには0.5質量%を超えるAl含有が必要になる。ただし多量に含有させると鋼が硬質化して延性を損ない、また原料コストも高くなる。このため、Al含有量の上限は2.0質量%に制限される。
以上の元素に加え、本発明では以下の元素を選択的に含有させることができる。
Nb,Ti,V,Zrは、析出強化により高温強度を向上させる作用を有する。これらの元素はいずれも0.05質量%以上の含有により上記作用を効果的に発揮させることができる。ただし多量添加は延性低下を招く恐れがあるので、これらの元素を添加する場合は各元素とも0.5質量%以下の範囲で行う必要がある。なお、これらの元素は1種を単独で添加しても2種以上を複合で添加してもよい。
Mo,Cu,Wは、固溶強化により高温強度を向上させる作用を有する。これらの元素はいずれも0.05質量%以上の含有により上記作用を効果的に発揮させることができる。ただし多量添加は延性低下を招く恐れがあるので、これらの元素を添加する場合は各元素とも0.5質量%以下の範囲で行う必要がある。なお、これらの元素は1種を単独で添加しても2種以上を複合で添加してもよい。
REM,Y,Caは、1000〜1050℃での耐スケール剥離性をより高いレベルで確保するために有効な元素である。その効果を十分に発揮させるためにはこれらの元素の1種または2種以上を添加することによりその合計含有量を0.005質量%以上とすることが望ましい。ただし多量に含有させると鋼が硬質化し延性を阻害する。このため、これらの元素の合計含有量は0.1質量%以下に制限される。
本発明では、1050℃レベルでの繰り返しの使用に長期間耐え得る優れた耐スケール剥離性を付与することを重要な課題としている。具体的には、後述の実施例で説明する1050℃,2000サイクルの高温酸化試験において、板厚0.8mmの材料で減肉率20%未満となるような優れた特性を具備させる。その手法としてCr,SiおよびAlを下記(1)式を満たすように複合で含有させる。
Cr+0.5Si+3Al≧26 ……(1)
(1)式は発明者らの詳細な検討の結果見出された関係式である。前述したCr,Si,Alの含有量範囲において(1)式を満たす場合、1000〜1050℃での加熱によって、鋼材表面にはCr酸化物の内側にSi,Alの濃化した「くさび型」の内層スケールが形成され、これがキーイング効果を発揮してスケール密着性を強固にすると考えられる。REM,Y,Caの1種以上を前記含有量範囲で添加すると、スケール密着性は一層強固になる。
図1に、板厚0.8mmのCr−10〜20%Niオーステナイト系ステンレス鋼について、耐スケール剥離性に及ぼす合金元素の影響を示す。横軸には合金元素の指標としてCr+0.5Si+3Alの値、縦軸には耐スケール剥離性の指標として後述実施例に示す方法による1050℃,2000サイクル試験における重量変化量を示してある。
図1より、Cr+0.5Si+3Al≧26とすることによって1050℃,2000サイクルの耐スケール剥離性は顕著に改善されることがわかる。
以上のように成分調整した鋼は、通常のステンレス鋼板製造設備を用いて例えば板厚0.8mm程度の鋼板とし、溶接造管によりエキゾーストマニホールド用の鋼管とすることができる。その鋼管は所定形状に曲げ加工されるか、あるいは曲げや潰し加工とハイドロフォーミングを組み合わせて複雑形状に成形され、エキゾーストマニホールドの部材(例えば内管)に使用される。
表1に示す鋼を溶製し、通常のステンレス鋼板製造条件にしたがって、熱間圧延→焼鈍酸洗→冷間圧延→焼鈍酸洗の工程により板厚2.0mmの鋼板を得た。さらに冷間圧延と焼鈍酸洗を行って板厚0.8mmの鋼板を得た。
Figure 0004403033
板厚0.8mmの各鋼板から圧延方向に平行方向の引張試験片(JIS 13B号)を切り出し、JIS Z 2241に準拠して常温での引張試験を行い、延性を評価するために伸びを測定した。また、板厚2.0mmの各鋼板から圧延方向に直角方向の高温引張試験片を切り出し、JIS G 0567に準拠して高温引張試験を1050℃で行い、高温強度の指標として1050℃における0.2%耐力を求めた。
また、板厚0.8mmの各鋼板から25×35mmの高温酸化試験片を切り出し、JIS Z 2282に準拠して「大気中1050℃×5分→5分間の空冷」を1サイクルとする2000サイクル繰り返しの高温酸化試験に供した。高温酸化試験前後の重量変化、および試験後最も板厚が減少した箇所の減肉率を求めた。減肉率は次式により算出される。
減肉率=(試験前板厚−試験後板厚)/試験前板厚×100
結果を表2に示す。
Figure 0004403033
表2からわかるように、本発明で規定の化学組成を満たす材料は、2000サイクルの高温酸化試験後の減肉率が20%未満であり、1050℃での繰り返し加熱において優れた耐スケール剥離性を呈した。高温酸化試験前後の重量変化も10kg/m2以下と小さかった。つまり、本発明鋼は1000〜1050℃域での繰り返し加熱に曝した場合に優れた耐久性を安定して呈することが確認された。高温強度(1050℃での0.2%耐力)も20N/mm2以上と十分であった。また延性に関しては常温伸びが45%以上であり、ハイドロフォーミングに適用可能な性能を有していると言える。
これに対し、鋼No.12,15,21は前記(1)式を満たさないため、また鋼No.13,17,19はCr,Si,Alのいずれかの含有量が低すぎるため、これらは耐スケール剥離性(減肉率)に劣った。鋼No.14,16,18,20,22,23はSi,Mn,Ni,Cr,N,Alのいずれかの含有量が高すぎるため、延性(常温伸び)が低かった。
Cr−10〜20%Niオーステナイト系ステンレス鋼について、耐スケール剥離性に及ぼす合金元素の影響を示すグラフ。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.15%以下,Si:1〜3%,Mn:2%以下,P:0.04%以下,S:0.01%以下,Ni:12超え〜20%,Cr:22超え〜25%,N:0.048〜0.15%,Al:0.5超え〜2.0%,Nb:0〜0.5%,Ti:0〜0.5%,Mo:0〜0.5%,Cu:0〜0.5%,REM,Y,Caの合計:0〜0.1%,V:0〜0.5%,W:0〜0.5%,Zr:0〜0.5%,残部Feおよび不可避的不純物であり、かつ下記(1)式を満たすエキゾーストマニホールド用オーステナイト系ステンレス鋼。
    Cr+0.5Si+3Al≧26 ……(1)
  2. 質量%で、Nb:0.05〜0.5%,Ti:0.05〜0.5%,Mo:0.05〜0.5%,Cu:0.05〜0.5%,V:0.05〜0.5,W:0.05〜0.5%,Zr:0.05〜0.5%の1または2以上を満たす請求項1に記載のエキゾーストマニホールド用オーステナイト系ステンレス鋼。
  3. 質量%で、REM,Y,Caの合計:0.005〜0.1%である請求項1に記載のエキゾーストマニホールド用オーステナイト系ステンレス鋼。
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