JP4404427B2 - エアバッグ用基布及びエアバッグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の乗員の安全のために設置されるエアバッグ用の基布に関するものであり、更に詳しくは、軽量性、柔軟性、低通気性、コンパクト性に優れ、裁断時のホツレ止め効果を有すると共に、難燃性能に優れたエアバッグ用基布に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の乗員保護安全装置としてエアバッグの装着が進みつつある。
このエアバッグは、通常ステアリングホイールやインストルメントパネルなどの狭い場所にインフレーターケースを含めたモジュールとして装着されており、このバッグの収納容積は小さいことが望ましく、以前より、収納容積をコンパクトにするために織物に使用する繊維として細い繊度のものを使用することや、バッグの機密性保持のため基布に被覆するエラストマーの種別を変更することなどが行われている。
【0003】
例えば、織物に使用する繊維は940dtexから470dtexの基布へ、且つ、被覆するエラストマーもクロロプレンゴムを90〜120g/m2 塗布からシリコーン樹脂40〜60g/m2 塗布に変更されて、現在は470dtexのシリコーンコーテングタイプの基布が、更にコーテング加工経費の経済性から微少通気性を持たせたノンコートタイプのものも使用されている。
【0004】
しかし最近は、更にステアリングホイールの空隙スペースを大きくして速度パネル等の計器を見やすくしたり、車内空間を大きくするために、エアバッグの収納容積を極力小さくするコンパクト性、風合いのソフト化が、基布に対して強く要求されている。
このコンパクト性と風合いソフト化に対応するには、織物に使用する繊維の全繊度や単糸繊度を更に細くすることや、樹脂をコーテングする場合は付着量を如何に軽減するかということ等が課題である。但し、全繊度を低くすると織物の初期抵抗は低くなり、高圧下では組織ズレにより動的通気度が高くなる現象がある。また、ノンコート基布では縫製時に基布切断面のホツレ現象もある。
【0005】
従来から、この組織ズレ及びホツレを防止するために、種々の検討がなされれており、ウレタン樹脂を使用する技術としては、特開平7−42043号公報、特開平7−40798号公報、特開平11−222778号公報等がある。
特開平7−42043号公報では、布帛に30wt%以下の樹脂を部分的に積層するか又は布帛内部の交絡部に付与する方法で、実施例2には、難燃性付与のために、臭素化芳香族系化合物を水系ポリウレタン樹脂に混合することが記載されており、特開平7−40798号公報でも、ポリウレタン樹脂中に防撚剤として有機リン・ハロゲン化合物、または臭素系芳香族化合物・無機複合物を含有させることが記載されており、特開平11−222778号公報には、ウレタンの主鎖中にハロゲンを含有するポリウレタン樹脂を基布に付着させる方法が記載されている。また、これらポリウレタン樹脂に含有させる難燃剤としては、ハロゲン系が有効であると記載されている。
【0006】
しかし最近は、環境問題のため、ハロゲン系難燃剤を使用しないで難燃性にする要求が強くなっており、これについての検討が行われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、折り畳み性、コンパクト性、軽量性に優れ、かつ低通気性、裁断時のホツレ止め効果を有すると共に、FMVSS302法燃焼試験で燃焼性が合格する高密度織物のエアバッグ用基布を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、ハロゲン系難燃剤を使用しない処方のウレタン樹脂を織物に付着させることで、低通気度で、組織ズレ、ホツレがなく難燃性の優れたものが得られることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は下記の通りである。
【0009】
1)カバーファクターが2100以上であるポリアミド繊維の織物にポリウレタン樹脂が付着している基布であって、該織物に油剤が0.2wt%以上付着していることを特徴とするエアバッグ用基布。
2)ポリウレタン樹脂の付着量が20g/m2 以下であることを特徴とする上記1記載のエアバッグ用基布。
【0010】
3)ポリウレタン樹脂が、有機硫黄化合物を含有していることを特徴とする上記1又は2記載のエアバッグ用基布。
4)ポリアミド繊維が、銅含有率10〜200ppm、硫酸相対粘度(ηr)2.5〜3.3、全繊度67〜250dtex、引張強度5.7cN/dtex以上であることを特徴とする上記1、2又は3記載のエアバッグ用基布。
【0011】
5)上記1から4のいずれかに記載のエアバッグ用基布を用いてなるエアバッグ。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエアバッグ用基布は、軽量性、柔軟性、収納性に優れ、かつウレタン樹脂塗布で、低通気度であり、燃焼性能の基準をクリアーすることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のエアバッグ用基布を構成するポリアミド繊維としては、アミド結合を有するものであれば特に限定はないが、ポリヘキサメチレンアジパミドを主体とする繊維が好ましく、特に融点が215℃以上であるポリヘキサメチレンアジパミド (以下、ナイロン66という)繊維、ナイロン66コポリマー(ナイロン66/6、ナイロン66/6I、ナイロン66/610)を含むナイロン66繊維、及びポリアミド系ポリマー(ナイロン6(ポリカプラミド)、ナイロン610(ポリヘキサメチレンセバカミド))を含むナイロン66繊維などが耐熱性の点で特に好ましい。
【0013】
このナイロン66を主体とする繊維の硫酸相対粘度(ηr)は2.5〜3.3が望ましい。ηr2.5未満では高強度を安定的に得ることが難しくなる傾向があり、硫酸相対粘度ηr3.3を越えると高粘性による流動性の低下に伴うゲル化進行により紡糸性が低下し使用が難しくなる傾向がある。なお、硫酸相対粘度(ηr)の測定方法は、95.5%硫酸100ccに油剤が付着していない繊維1gを溶解して25℃恒温槽内でオストワルド粘度計にて測定して求める。
【0014】
またナイロン66を主体とする繊維は、銅含有率が10〜200ppmであることが、繊維自身の高温、高湿、オゾン等の長期間暴露された時の性能低下を抑制するために有効であり、より好ましくは20〜80ppmである。銅含有率が10ppm未満では耐熱強度保持率が低下し、200ppmを越えると溶解したナイロン66を主体としたポリマー中に不溶化した銅化合物が析出し易くなり、析出した銅化合物が濾過フィルター上に堆積してパック交換周期を早め、生産性を阻害する傾向がある。なお、銅含有率は、繊維中の銅成分を原子吸光や比色法で測定したものである。
【0015】
銅としては、銅系熱安定剤、例えば、酢酸銅、塩化第一銅及び塩化第二銅等の有機銅錯塩やハロゲン化銅塩が挙げられる。また、銅塩及び金属ハロゲン化合物との併用が好ましい。金属ハロゲン化合物としては、例えば、沃化カリウム、臭化カリウム及び塩化カリウム等が挙げられる。最も好ましい組み合わせの具体例としては、沃化第一銅と沃化カリウム、酢酸銅と沃化カリウムであり、沃素/銅の添加モル比で銅による耐熱性効果も変化するので、添加モル比は8〜50、好ましくは10〜40である。
【0016】
本発明のコートされたエアバッグ用基布においては、エアバッグの軽量性、コンパクト性と引張や引裂強力等の機械特性を満足させるために、エアバッグ用基布を構成する繊維の全繊度、単糸繊度、織物のカバーファクターなどもまた重要である。
カバーファクターとは、織物を構成している糸条総繊度の平方根と1インチ(2.54cm)当たりの糸条数(織密度)との積の経と緯の和をいう。すなわち、次式により算出されるものである。
【0017】
K=(D1)1/2 ×N1+(D2)1/2 ×N2
(式中、Kはカバーファクター、D1は経糸総繊度(dtex)、N1は経糸織密度(本/2.54cm)、D2は緯糸総繊度(dtex)、N2は緯糸織密度(本/2.54cm)を表す。)
本発明においては、織物のカバーファクターは、2100以上が必要である。カバーファクターが2100未満では得られる基布の引張機械特性が低くなり、バッグ作動時の機械特性を満足させない恐れがある。また、製織性の観点から、カバーファクターは2600以下であることが好ましい。
【0018】
糸条総繊度とは、織物を構成する時に使用する経方向、緯方向の繊維の1本単位当たり合計繊度を指すもので、1ヤーンでもよいし複数のヤーンを撚糸、合糸、引き揃え糸とした状態でもよい。
本発明においては、総繊度は250dtex以下、より好ましくは67〜250dtexである。総繊度が250dtexを越えると、軽量性、コンパクト性が悪くなる傾向があり、総繊度を小さくすると軽量性、コンパクト性は良くなるが、67dtex未満では、エアバッグ用基布としては、バッグ作動時の機械特性を満足させない場合がある。その理由は、使用する繊維の強度が繊度に関係なく限界があるため、基布にしても引張や引裂機械特性が低くなるからである。
【0019】
また、糸条総繊維の単糸繊度は、1.1〜3.3dtexが好ましい。単糸繊度が3.3dtexを越えると基布が硬くなり収納性が劣る傾向があり、1.1dtex未満では繊維製造時の毛羽や高密度製織時に停台等による製織稼働率低下を発生し易くなる。
また、繊維の引張強度も、エアバッグ用基布のバッグ作動時の耐圧機械特性に影響する。繊維の引張強度は5.7cN /dtex以上、好ましく引張強度は6.2cN /dtex以上であり、繊維の糸長方向の物性均一性から強度の上限は繊維製造時に糸切れが許容される範囲として9.7cN /dtex以下が好ましい。
【0020】
総繊度250dtex以下、かつ、単糸繊度が3.3dtex以下でカバーファクター2100以上の高密度織物を製織する場合は、経糸毛羽による製織停台等の製織性が問題となる。
この為に、製織に使用する経糸は交絡数が多いほど製織性は向上して、特に繊度160dtex以下の繊維でノンサイジングエアージェットルームで製織する場合は交絡数は25ケ/m以上が好ましく、より好ましくは30〜55ケ/mである。交絡数25ケ/m未満では製織時の経毛羽が発生し易く、製織停台が多く製織継続が困難となる傾向がある。また交絡数55ケ/mを越える場合は製糸段階で高圧圧気で付与することが難しい。
【0021】
また、織物に使用する緯糸の交絡数は、経糸ほど綜絖や筬によるしごき抵抗を受けないので、経糸の交絡数と同等以下でよいが、下限は原糸捲形態からの解舒を阻害させないためには5ケ/m以上欲しい。しかし、交絡数は特に限定されるものではない。なお、交絡数の測定は、繊維を水上に置いた時に、非交絡部分はフィラメントが開繊するが、交絡部分はフィラメントが収束されるので、フィラメントの95%以上が収束された節部が直線1m上に何個あるかを数えたものである。
【0022】
本発明のエアバッグ用基布の織物構造は、平織、斜子、格子のいずれでもよい。
織物の製織は、ウオータージェット製織、エアジェット製織、レピア製織等が行われ、どの製織方法でもよいが、ウレタン樹脂加工を行う前の織物に油剤を付着させる為には、製織中に油剤の脱落が少ないエアジェット製織やレピア製織が望ましい。ウオータージェット製織の場合は、製織性を向上させるために経糸にアクリル糊剤を付着させるが、このアクリル糊剤はエアバッグ基布としては難燃性に悪影響を与えるので、製織後に精練で織物に付着した糊剤や油剤を除去した後に、再度難燃性付与として油剤をデップ加工して使用することが出来る。
【0023】
従来の技術では、油剤の付着していない織物の組織ズレや切断面のホツレ防止としてウレタン樹脂を織物に付着させる場合、ウレタン樹脂のみを付着させると難燃性が劣る為に、難燃対策として樹脂内にハロゲン系難燃剤が加えられている場合が多い。
これに対し、本発明では、ウレタン樹脂を用い、難燃対策として、ハロゲン系難燃剤以外を検討した結果、織物に油剤を0.2wt%以上、好ましくは0.5wt%以上付着させると、難燃剤を添加しなくても難燃性は合格することを見出した。また、油剤を0.8wt%以上付着さた織物にウレタン樹脂等を付着させると、ウレタン樹脂付着による基布の引裂低下を防止するという効果も有する。例えば、油剤付着のない基布の引裂低下率は55%であるのに対し、1.0wt%油剤を付着させた場合は、引裂低下率が17%と著しい効果も示す。油剤の付着量の上限は10wt%程度で、これ以上では基布の表面がベタツキ感が強くなる。
【0024】
また、更に難燃性を確実にするためには、難燃剤として有機硫黄化合物を樹脂に加えてもよい。有機硫黄化合物としては、チオ尿素、チオ尿素のホルムアルデヒド縮合物、縮合硫酸カルバメート等があるが、安価な点で、チオ尿素がよく、ウレタン樹脂の溶剤であるジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、ウレタン樹脂固形分に対して45wt%以下添加することが好ましい。
【0025】
織物に油剤を付着させる方法は、織物を製織した後に、織物に付着した糊剤や油剤を精練して乾燥し、次いで再度油剤溶液にデップ、マングル、乾燥処理をしてウレタン樹脂加工に供するか、精練処理をしないで、織物製織前の経糸(原糸には、製糸時に原糸油剤が0.5〜3.0wt%付着しているもの)に撚糸や整経油剤等で収束性を付与したノンサイジングで製織を行い、無セット又はセット処理をしてウレタン樹脂加工に供する。
【0026】
付着させる油剤としては、繊維段階では、ジアルキルチオジプロピオネート平滑剤を主成分とするもので、プロピレンオキサイド(PO)/エチレンオキサイド(EO)アルキルポリエーテルと、ポリオキシエチレン(POE)硬化ヒマシ油トリアルキルエステルの乳化剤との組み合わせが有効であり、混合比率は、特に限定されるものではないが、主成分が40wt%以上であり、乳化剤は乳化性を考慮して等量程度が適当である。
【0027】
また整経油剤は、エアバッグ用基布とした時の自動車の窓ガラス曇り防止も含めて加熱減量率差が2%以下の耐熱油剤で、高引火点鉱物油や合成パラフィン及びグリセリンエステルを主成分とするものが有効である。なお、整経油剤の加熱減量率差は、直径6cmのアルミ皿に油剤1gを精秤して、120℃及び150℃の各々のホットプレート上で10分間加熱した後の重量を測定し、150℃と120℃の減量率差を算出して求める。
【0028】
更に、織物を長期間放置した場合のカビ防止として、整経油剤中に抗菌剤を添加することが好ましく、抗菌剤としては抗菌効果があり、更に整経油剤の安定性に阻害を与えないものであれば、種別、添加量に制限はないが、例えば、塩化イソチアゾロン、イソチアゾロン、ブロモニトリルアルコールの混合物等を整経油剤に対して0.02〜0.5wt%添加するのが好ましい。
【0029】
この織物を精練せずに直接コーテング加工する場合は、織物の皺を修正する為に100〜180℃で約20〜60秒間ヒートセット処理を行うことが好ましいが、織物に皺等が少なければヒートセット処理を省略することも出来る。
本発明で用いられるウレタン樹脂としては、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂などが挙げられる。ウレタン樹脂には、エポキシ、メラミン、多官能イソシアネート等からなる架橋剤、カルボジイミド系加水分解防止剤、フェノール類、芳香族アミン酸化防止剤やサリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系誘導体等の紫外線吸収剤、チオ尿素等の難燃剤を添加してもよい。
【0030】
繊維基布に付着させるウレタン樹脂の付着量は20g/m2 以下、好ましくは0.5〜20g/m2 が望ましい。付着量が0.5g/m2 未満では基布裁断面のホツレ止め効果が十分とはいえず、付着量が20g/m2 を越えると、基布が硬くなり折り畳み時のコンパクト性が劣る傾向が生じると共に、不粘着性評価をすると貼り付きを示すので、樹脂表面にタルクを微量付着させて貼り付き防止を施すのが好ましい。なお、不粘着性評価は、3kgf荷重下で70℃×24時間処理して、貼り付き性を評価する。
【0031】
ウレタン樹脂を付着させる方法としては、ナイフコーター法、エアードクター法、グラビアコ−ター法、キスコーター法、リバースロールコーター法、デップ法等が代表的であるが、均一付着出来ればどの様な方法でもよい。上記の方法で付着させた後に、反応を進めるために120℃〜180℃で乾燥させる。
基布の通気度は、ウレタン樹脂を付着させることにより、フラジール法(水柱12.7mm下)で、0.5cc/cm2 /秒以下の低通気度もしくは非通気度となる。
【0032】
基布の燃焼性評価は、基布を熱処理することにより未処理よりも過酷になるので、120℃×400時間熱処理を施した基布での水平燃焼法で、基布端面より着火して1.5インチ(38mm)以内のA評線未満で消火した時、もしくは、A評線を越えてもA評線から50mm未満で且つ燃焼時間が60秒以内で消火した時は「自己消火性」、またはA評線から50mm以上燃焼した時は燃焼速度を測定して燃焼速度100mm/分未満であれば遅燃3級として燃焼合格とし、燃焼速度100mm/分以上は燃焼不合格とした。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
なお、使用繊維及びエアバッグ用基布は、次に示す方法で評価した。
1.引張強度(cN/dtex):JIS L−1013に従った。
2.引張伸度(%):JIS L−1013に従った。
【0034】
3.密度(本/2.54cm):JIS L−1096に従った。
4.重さ(gf/cm2 ):JIS L−6328に従った。
5.厚さ(mm):JIS L−6328に従った。
6.通気度(cc/cm2 /秒):フラジール法(差圧12.7mm水柱)に従った。
【0035】
7.残留油脂分(%):JIS L−1096に準じ、溶媒としてヘキサンを使用した。
8.燃焼性(mm/分):120℃×400時間フリー状態で熱処理した基布をFMVSS302法に従い評価した。
9.裁断面ホツレ状態:鋏で裁断した基布面を指先で軽く擦って、糸のホツレ状態を目視で判断した。
【0036】
【実施例】
実施例1
酸化チタン無添加、銅系熱安定として酢酸銅と沃化カリウムを添加比率1:12でポリマー中に銅として70ppm含有し、95.5%硫酸相対粘度(ηr)2.95であるヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)チップを用い、該チップをエクストルダー型紡糸機で溶融紡糸し、原糸油剤を付着させた後に熱延伸して、強度6.9cN/dtex、伸度25%、沸水収縮率7.3%、交絡数34ケ/m、油剤付着率0.9wt%、155dtex/48フィラメント(単糸繊度3.2dtex)のナイロン66糸を得た。
【0037】
この時に付着した原糸油剤は「ジアルキルチオジプロピネート:60質量部、PO/EOアルキルポリエーテル:20質量部、POE硬化ヒマシ油トリアルキルエステル:20質量部」の30wt%ストレート希釈液(希釈剤:鉱物油28秒)としてノズルオイリング方法で給油した。
この糸5600本を整経する時に、整経油剤S560〔鉱物油27質量部、天然油脂28質量部、脂肪酸エステル28質量部、高級アルコール12質量部、アニオン活性剤5質量部(互応化学工業株式会社製で150℃と120℃の加熱減量率差1.3%〕を、常温でキスロール方式で原糸に対して油剤付着率1.0wt%付着させて、ビーミング等の経準備を行い、緯糸は上記物性で交絡数が11ケ/mを使用して、エアージェットルーム製織機で、織密度(経×緯)89×89本/2.54cmの織物を製織した。
【0038】
この織物を精練せず、150℃でヒートセット仕上加工を行い、織密度91×90本/2.54cmの織物を得た後、ポリエーテル系ウレタン樹脂(ME−8115LP;大日精化工業株式会社製)100質量部と架橋剤(DN−950;大日本インキ株式会社製)3質量部をDMF溶剤で溶液粘度を4500cpsに調整した液を、ナイフコーターで塗布し、130℃で30秒間乾燥の1回塗布を行い、塗布量7g/m2 、基布の織密度(経×緯)91×88本/2.54cm、通気度0.05cc/cm2 /秒、残留油脂分1.2wt%の基布を得た。
【0039】
この基布の水平燃焼性は自己消火性を示し、基布を裁断して運転席用バッグを作成したが、裁断面のホツレもなく作業性が容易であった。また、基布の厚みが0.195mmと薄く、バッグに折り畳むとコンパクト性に優れたものであった。
比較例1
実施例1で使用した原糸を用い、経原糸に対してアクリル糊剤を5wt%付着させて、ビーミング等の経準備を行い、緯糸は上記物性で交絡数が11ケ/mの糸を使用して、ウオータージェット製織機で、織密度(経×緯)87×89本/2.54cmの織物を製織した。
【0040】
この織物を、オープンソーパーにてアルカリ精練、水洗、乾燥、ヒートセットを行って、織密度90×90本/2.54cmの基布を得た。次いで、実施例1で用いたウレタン樹脂加工処方で加工を行い、塗布量7g/m2 、通気度0.04cc/cm2 /秒、残留油脂分0.1wt%の基布を得た。
この基布の水平燃焼性は、燃焼速度287mm/分で燃焼性不合格であった。
【0041】
また、この基布を裁断して運転席用バッグを作成したが、裁断面のホツレもなく作業性が容易であった。
比較例2
実施例1で使用した原糸及び製織方法で、無精練で150℃で30秒間の熱セット加工のみを行って表2に示すようなノンコート基布を得た。この基布は、残留油脂分が1.3wt%で、通気度が0.4cc/cm2 /秒と高い通気性を有する基布であった。
【0042】
この基布の水平燃焼性は自己消火性を示し、基布を裁断して運転席バッグを作成すると、裁断面を手でしごくと糸が簡単にホツレ現象を示し、縫製部を裁断面より広く取る必要があった。
実施例2
ウレタン樹脂の塗布・乾燥操作を2回行い、塗布量14g/m2 としたこと以外は、実施例1と同様にして基布を得た。
【0043】
この基布は、通気度0.04cc/cm2 /秒で、水平燃焼性も自己消火性を示した。また、この基布を裁断して運転席用バッグを作成したが、裁断面のホツレもなく作業性が容易であった。
実施例3
ウレタン樹脂溶液中にチオ尿素(全固形分に対しチオ尿素濃度25wt%)を加え、溶液粘度11500cpsの溶液を1回塗布して塗布量9g/m2 としたこと以外は、実施例1と同様にして基布を得た。
【0044】
この基布は、通気度0.05cc/cm2 /秒で、水平燃焼性も自己消火性を示した。また、この基布を裁断して運転席用バッグを作成したが、裁断面のホツレもなく作業性が容易であった。
実施例4
ウレタン樹脂をポリエステル系ウレタン樹脂(ME−44ELP;大日精化工業株式会社製)100質量部に変更して、溶液粘度6000cpsで塗布を行い塗布量7g/m2 としたこと以外は、実施例1と同様にして基布を得た。
【0045】
この基布は、通気度0.04cc/cm2 /秒で、水平燃焼性も自己消火性を示した。また、この基布を裁断して運転席用バッグを作成したが、裁断面のホツレもなく作業性が容易であった。
比較例3
実施例1で用いたヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)チップを用いて溶融紡糸を行い、強度8.2cN/dtex、伸度20%、油剤付着率1.0wt%、470dtex/140フィラメントのナイロン66糸を得た。この糸条を用いて、経糸にアクリル糊剤を4wt%付着させ、織密度(経×緯)43×45本/2.54cmの織物をウオータージェット織機で製織し、オープンソーパーにてアルカリ精練、水洗、乾燥した。
【0046】
得られた基布に、ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョン(MELUSI−520;トーヨーポリマー株式会社製;固形分64wt%)と架橋剤(芳香族イソシアネート/オキシムブロック体;固形分1wt%)、デカブロモジフェニールオキサイド(固形分32wt%)とを含む溶液粘度5500cpsの液を、ナイフコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後に150℃で2分間熱処理を行い、更にタルクを1g/m2 以下付着させて、ウレタン樹脂塗布量40g/m2 で、基布の織密度(経×緯)45×46本/2.54cm、通気度が0.04cc/cm2 /秒、残留油脂分0.1wt%の基布を得た。
【0047】
この基布の水平燃焼性は自己消火性で、裁断面の糸ホツレもないが、基布厚みが0.320mmと厚く、バッグに折り畳むとコンパクト性が劣るものであった。
以上の実施例1〜4の結果を表1に、比較例1〜3の結果を表2に示す。
比較例1は、精練セット加工が施され油剤が付着されていない織物にウレタン樹脂加工した基布であり、非通気性や基布裁断面のホツレは問題ないが、燃焼性がアウト(不合格)である。
【0048】
比較例2は、原糸油剤や整経油剤を付着させた織物でウレタン樹脂を付着させていない基布であり、樹脂による織物の目止め効果がないので、基布裁断面が簡単にホツレを示す。
比較例3は、原糸470dtexでハロゲン系難燃剤のウレタン樹脂を用いたものであり、燃焼性や裁断面のホツレは問題ないが、基布厚みが厚く、バッグに折り畳むと実施例1〜4に比べてコンパクト性が劣るものである。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【発明の効果】
本発明のエアバッグ用基布は、軽量性、コンパクト性に優れ、基布裁断面からのホツレが殆どなく、ハロゲン系難燃剤を用いていないにもかかわらず、燃焼試験でも燃焼性の規格に合格する基布である。従って、この基布を用いることにより優れたエアバッグが得られる。
Claims (6)
- カバーファクターが2100以上であるポリアミド繊維の織物にポリウレタン樹脂が付着している基布であって、ポリウレタン樹脂の付着量が0.5〜20g/m2であり、該織物に油剤が0.8wt%以上付着していることを特徴とするエアバッグ用基布。
- 油剤が1.0〜10wt%付着していることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ用基布。
- ポリウレタン樹脂が、有機硫黄化合物を含有していることを特徴とする請求項1又は2記載のエアバッグ用基布。
- ポリアミド繊維が、銅含有率10〜200ppm、硫酸相対粘度(ηr)2.5〜3.3、全繊度67〜250dtex、引張強度5.7cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のエアバッグ用基布。
- 請求項1から4のいずれかに記載のエアバッグ用基布を用いてなるエアバッグ。
- 銅含有率が10〜200ppm、硫酸相対粘度(ηr)が2.5〜3.3および引張強度が5.7cN/dtex以上のポリアミド繊維に加熱減量率差が2%以下である整経油剤を付与し、ノンサイジングでエアジェット製織により、カバーファクターが2100以上の織物と成し、得られた織物を精練処理せずにヒートセット処理するか、または、ヒートセット処理もせずに、該織物にポリウレタン樹脂を付着させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエアバッグ用基布の製造方法。
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