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JP4409474B2 - 焼結含油軸受 - Google Patents
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Description

この発明は、各種用途のモータ、電子機器や電源設備等の冷却に用いられる軸流ファンモータの軸受として好適な、温度が高い環境下でも低い摩擦係数が長期にわたり維持される焼結含油軸受に関する。
電子機器等の冷却に用いられる軸流ファンモータは、枠形のケーシングの中央部にモータが固定されており、そのロータに回転翼(ファン)を取り付けた構造を有する。モータの駆動回路に通電するとロータが回転し、ケーシングとモータの間隙に一定方向の空気流を発生させる。軸流ファンモータは電子機器等の外枠などに設置され、枠内に外気を導入または枠内の空気を排出して電子機器等を冷却する。特に枠内の空気を排出する用途では、軸流ファンモータの温度環境が80〜100℃程度になることがあり、また、運転時間が長いので、その温度環境で耐久性がよい軸受が求められる。
前記軸流ファンモータの軸受には焼結含油軸受を用いているものがある(例えば特許文献1)。この種のモーターの軸受は、青銅または鉄・青銅系の多孔質焼結合金からなり、その気孔内に炭化水素系の合成油あるいは炭化水素系合成油に増稠剤として金属石けんを混合した合成潤滑油を含浸したものである。しかし前記のような高い温度環境で長期間使用される場合、潤滑性が低下し、金属接触の増大、摩擦力の増大、軸受部の発熱に伴うオイルの劣化、酸化摩耗などが起こり易くなるという現象が認められていた。
特開平10−164794号公報
ファンモータは長寿命であるとともに消費電力がより低いことが求められている。換言すると使用される軸受の長寿命化と低摩擦化が必要なことであり、高い温度環境下においても摩擦係数が低く長期的に安定するととともに、焼付きや摩耗が発生しないような焼結軸受の材質と、気孔に含浸される潤滑組成物との組み合わせを探索することが課題となっていた。
この発明は、軸流ファンモータに使用される軸受として好適な焼結含油軸受に関するもので、軸受材料の組成が鉄20〜60質量%、銅26〜74質量%、錫1〜8質量%および亜鉛2〜20質量%で、前記組成のうち銅・錫・亜鉛系合金成分の組成が錫2〜10質量%、亜鉛5〜25質量%および銅残部であって、合金組織が鉄相と銅合金相とが斑に分散している多孔質焼結合金からなり、前記多孔質焼結合金からなる軸受の気孔内にポリ−α−オレフィンを基油とし、少なくともジエステル2〜15質量%および極圧添加剤0.5〜3質量%を含有する潤滑油が含浸されていることを特徴とする。
このように、軸受を鉄相と亜鉛および錫を含む銅合金相との斑な金属組織である多孔質焼結合金に、少なくともジエステルおよび極圧添加剤を含有するポリ−α−オレフィンを基油の合成潤滑油を含浸した軸受材料と潤滑剤との組み合わせとした。これにより高い温度環境でも摩擦係数が低く、摩耗量が少ない軸受要素が提供することができ、特に、軸流ファンモータ用に好適なものであり、軸流ファンモータに使用すればモータの耐久性の向上、信頼性の向上に寄与することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態を説明する。
1.軸受用焼結合金
多孔質焼結合金は、組織が鉄相と銅合金相との斑な金属組織をしており、鉄相と銅合金相とは面積比でおおよそ20:80〜65:35の割合が好適である。比較的硬く、耐摩耗性で、安価であるなどの特徴をもつ鉄相と、滑り特性、なじみ性、放熱性がよいなどの特徴をもつ銅合金とが適量に混合分散した合金組織により、摺動特性と耐久性に優れたものになる。
前記鉄相は鉄のフェライト組織が主で、鉄相の周囲は銅合金成分が僅かに拡散した合金相を含んでいる。
銅合金相は銅、錫、亜鉛からなる。銅合金相が銅錫合金(青銅)では高温環境下における摩擦熱により酸化して摩耗が起き易く、また硬さが高く回転軸とのなじみ面が形成され難いことより摩擦係数が比較的高くなる。一方、錫と亜鉛を含む銅合金にすると、亜鉛の添加によって高温における耐酸化性が青銅よりも良好になるとともに、銅合金部分の延性が高く、容易になじみ面が形成され摩擦係数が小さいものとなる。また、含浸される潤滑油中の添加剤に起因する腐食が起こり難くなり、銅錫合金よりも優れている。
焼結合金の組成は、前記の斑な金属組織の好ましい形態と整合しており、鉄が20〜60質量%、銅合金が80〜40質量%である。より好ましくは、鉄が40質量%前後、銅合金が60質量%前後である。
合金中の鉄の含有量が、20質量%未満であると銅系焼結合金で作られた軸受の耐摩耗性と比べて向上の程度が少なく、60質量%超えると回転軸とのなじみ性が低下し、摩擦係数が高くなるので20〜60質量%の範囲内とする。
銅合金相の錫は、合金基地の硬さを上げて耐摩耗性の向上を目的としている。銅・錫・亜鉛系合金成分中の錫含有量が2質量%未満では耐摩耗性が不足し、10質量%を超える場合は銅合金基地が硬くなりすぎて相手軸を傷付け易く摩耗の原因になるので2〜10質量%とする。亜鉛は、銅と合金化することにより銅合金摺動面の酸化を防止し摩耗を少なくする効果がある。亜鉛含有量が銅・錫・亜鉛系合金成分全体に対して5質量%未満であるとその効果が少なく、25質量%を超えて添加しても酸化摩耗の低減が認められないことから5〜25質量%の範囲内とする。
上記のように、鉄が20〜60質量%で、銅合金が80〜40質量%であって、前記銅合金部分の組成が銅・錫・亜鉛を100%として錫2〜10質量%、亜鉛5〜25質量%、残部銅である合金は、全体組成に換算すると、鉄が20〜60質量%、銅26〜74質量%、錫1〜8質量%および亜鉛2〜20質量%である。なお、多孔質焼結合金の有効多孔率は、従来の焼結含油軸受と同様に10〜35%程度の範囲内で、ファンモータの大きさや使用環境によって決定される。
多孔質焼結合金からなる軸受は、通常の焼結含油軸受の製造方法と同様に作ることができる。鉄粉、銅粉、錫粉、亜鉛粉、および成形潤滑剤を所定割合で混合し所定の形状に圧縮成形したのち焼結して焼結体とされる。前記の錫および亜鉛の添加のためには、青銅合金粉、黄銅合金粉を用いることもできる。
このような焼結体は、サイジングあるいはシェービング等の加工が施され、所定寸法に仕上げられるとともに、内周面を平滑にし、内周面に露出している気孔を適度に減少させる。表面の露出気孔は含浸された潤滑油を摺動面に供給する通路であるから、軸との金属接触を回避して安定した潤滑を得るために軸受摺動面の露出気孔の量は軸受摺動面積を100%とした面積率で2%以上は必要である。軸受摺動面の露出気孔が多過ぎると、潤滑油が多量に供給できる反面、軸と摺動する摺動面積が少なくなって軸受摺動面の局所面圧が高くなり潤滑膜が壊れやすくなるため、40%を超えないようにすることが望ましい。焼結合金を製造する際には、用いる原料粉末の粒度、成形密度、焼結体のサイジングの強さなどを調整して適正な露出気孔量に調整される。
また、軸受の内周には、潤滑油の飛散を防止するため、軸受摺動面に隣接して軸受端面に向かい拡径するテーパ面を設けたり、軸とのすき間を比較的大きくする段付き大径部を形成したりすることも好ましい実施態様である。端面近傍のテーパ面は回転軸との間でくさび状すき間を形成し、端面近傍の段付き大径部は、回転軸との間ですき間を形成し、これらは潤滑油のたまり場となってラビリンスシールを形成する。
2.含浸される潤滑油
温度が比較的高い環境下でも低い摩擦係数が長期にわたり維持されるような前記多孔質焼結合金からなる軸受との好適な組み合わせとなる潤滑油は、基油がポリ−α−オレフィンで、少なくとも油性剤としてジエステル2〜15質量%と極圧添加剤0.5〜3質量%とを含有する合成潤滑油である。潤滑油は通常の方法により前記多孔質焼結合金の軸受に含浸される。
(1)基油
基油のポリ−α−オレフィン(PAO)は焼結軸受用含浸油として必要な、潤滑性、低温特性が良好で、熱的、化学的にも安定であり、腐食性、毒性もなく鉱油に比較して好ましい。極性を持たない構造であるため、焼結合金との反応物形成に伴うスラッジの発生が少なく、各種添加剤の効果を出しやすい利点がある。ポリ−α−オレフィンとしては例えば炭素数6〜14のα−オレフィンのオリゴマー、エチレン−プロピレン共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体や1−デセンのオリゴマーを例示することができる。
また、基油の選択の指標としては動粘度が挙げられる。動粘度が低すぎると耐荷重性、耐蒸発性に劣ることがあり、動粘度が高すぎると摩擦係数が高くなる問題があるため、40℃における動粘度が20〜100mm/s(cSt)の範囲にあるものが好ましい。
(2)潤滑油に含まれる油性剤
含浸用潤滑油は、油性剤としてジエステルを2〜15質量%含有する。ジエステルとしてはジオクチルアジペート(DOA)、ジオクチルアゼレート(DOZ)、ジオクチルセバケート(DOS)等があるが、ジオクチルセバケート(DOS)が潤滑性の面で特に好適である。
ジエステルの含有量は、2質量%未満では摩擦係数の低減効果および耐久性延長効果を得ることができない。一方、15質量%を超えると、潤滑特性がポリ−α−オレフィンよりもジエステルの特性に近づき摩擦係数が低くなるものの、後述する極圧添加剤の効果が抑制されて摩擦係数および耐久性が向上しなくなる。これは、ジエステルの極性をもった分子が軸受摺動面に整列して吸着した(ミセルの形成)状態が緻密になり過ぎてしまい、摺動摩擦に対して極圧添加剤との相互作用が発揮されないためと考えられる。ジエステルを適度に添加することにより、軸受摺動面に極性をもった分子が適度に吸着し、その間に極圧添加剤が分散して吸着した分布になり、ジエステルと極圧添加剤とが協働して低い摩擦係数を呈する。
なお、油性剤として用いられる一般的なエステル油としては、モノエステル、ポリオールエステルがあるが、モノエステルは耐熱性、潤滑性の点で十分な特性は得られない。また、ポリオールエステルは摺動面の金属への吸着力が高く油性効果が高く摩擦係数を低下させるが、吸着力が高いことに起因してポリオールエステルが軸受摺動面へ優先的に吸着する。このため、極圧剤等の添加剤の効果が抑制され、一時的に摺動部への荷重負荷がかかり油膜が破断した際、摩耗が発生しやすくなるという問題があり、極圧添加剤と共存する場合は油性剤としてジエステルの方が優れている。
(3)極圧添加剤
含浸用潤滑油は、前記ジエステルの他に極圧添加剤を0.5〜3質量%を含有する。極圧添加剤は、摺動面に前記ジエステルの分子が吸着したミセルの間に分布し、ジエステルのもつ潤滑作用を補って潤滑膜を保持し、低摩擦係数を長期にわたり維持する効果がある。
極圧添加剤としては、硫黄系、りん系、有機金属系などを用いることができる。特に、ジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP)、トリクレジルホスファイト(TCP)が耐摩耗性の点で優れている。含有量が0.5質量%未満では、前記ジエステルとの相互作用が発揮されない。また、含有量が3質量%を超えると、軸受摺動面にジエステルの分子が適度に吸着し、その間に極圧添加剤が分散して吸着した分布を形成するものの、過剰な極圧添加剤は低摩擦係数の発現に寄与することなく存在することになり、含有量に見合う効果が得られない。
(4)その他の添加剤
含浸用潤滑油は、前記ポリ−α−オレフィンを基油とし、ジエステルおよび極圧添加剤だけを含有するものでもよいが、通常の潤滑油の場合と同様に、その他の添加剤として、粘度指数向上剤、酸化防止剤、腐蝕防止剤などを添加することができる。
例えば、粘度指数向上剤としてはポリメタクリレート、ポリイソブチレン等があり、含有量は1〜3質量%程度である。
また、酸化防止剤としてはアミン系やフェノール系のものが適用できる。含有量は0.3〜1質量%程度である。なお、前記の極圧添加剤として挙げたジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP)は、酸化防止剤および腐蝕防止剤としても効果がある。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明する。
1.試験−1
(1)軸受の作製
原料粉末は、還元鉄粉(ヘガネス社製、商品名NC100−24)、電解銅粉(福田金属箔粉工業(株)製、商品名CE−56)、錫粉(日本アトマイズ加工(株)製、商品名Sn−325)、銅・35%亜鉛合金粉(福田金属箔粉工業(株)製、商品名Bra−At−35)の各金属粉末と、成形潤滑剤(ステアリン酸亜鉛粉)とを用意した。表1に示す各種組成になるように各金属粉を配合し、金属粉に対して0.5質量%の成形潤滑剤を追加して混合した。
次に、その混合粉末を円筒形の軸受形状に圧縮成形し、焼結およびサイジングを行った。焼結は水素ガスと窒素ガスの混合ガス中で焼結温度780℃で行い、通常の方法でサイジングを行った。軸受の密度は6.5Mg/m、有効多孔率は約20%である。軸受合金の断面顕微鏡組織は、鉄のフェライト組織粒子と銅合金粒子とが斑状に分散した金属組織中に気孔が分布している。表1に示すように焼結合金は2種類で、鉄の量が40質量%一定で、銅合金組成が錫含有量5質量%のもの、ならびに、銅合金組成が錫含有量5質量%および亜鉛含有量15質量%のものである。
これら組成が異なる軸受試料に潤滑油を通常の減圧含浸装置を用いて含浸した。
潤滑油は、ポリ−α−オレフィンを基油とし、油性剤としてジエステルであるジオクチルセバケート(DOS)5質量%および極圧添加剤としてジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP)1質量%を含有する潤滑油、前記ジエステルに代えてモノエステル5質量%および極圧添加剤ジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP)1質量%を含有するもの、ならびに、ジエステルに代えてポリオールエステル(トリメチルプロパントレオレート)5質量%および極圧添加剤ジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP)1質量%を含有するものの3種類である。
各潤滑油の粘度グレードはISO VG68相当(40℃における動粘度が61.2〜74.8mm/s)である。
(2)軸受試験方法
試験方法は、モータで回転する軸の固定部に、試験用の軸を水平に固定し、軸受はハウジングに固定して軸と嵌合させ、ハウジングに垂直方向の荷重を与えた状態で軸を回転させて軸受ハウジングにかかる回転トルクを測定できる装置を用いて摩擦係数を測定した。また、試験後に軸受の摩耗量を測定して、各種合金組成の軸受と含浸した合成潤滑油との組み合わせの良否を比較した。
回転軸(シャフト)は熱処理されたマルテンサイト系ステンレス鋼SUS420材で表面粗さが約0.3Sである。周囲温度は80℃に保持され、軸の回転数を3000rpm、負荷面圧を0.1MPaにして運転した。摩擦係数は、安定期になる前の摩擦係数が比較的高い運転初期段階で比較することとし、軸受の摩耗量は、試験前の軸受内径寸法と1000時間運転した後の軸受内径寸法の差である。
Figure 0004409474
(3)試験結果
結果を表1に示す。焼結合金組成に亜鉛を含有しない比較例1〜3は、総体的に摩擦係数が高く摩耗量も大きいが、亜鉛を含有する焼結合金では、摩擦係数が比較的低く摩耗量も小さい。特に、実施例1のように、潤滑油に添加されている油性剤がジエステルでは、他の試料と比べて摩擦係数が低く摩耗量も小さい。油性剤としてポリオールエステルを用いたものは、吸着性がよく滑り特性がよい物質とされており低い摩擦係数を示すが、摩耗量も比較的大きい。ポリオールエステルは、極性をもった分子が軸受摺動面に整列して吸着した状態が緻密で強いため、摺動摩擦に対して極圧添加剤との相互作用が発揮されないためと考えられる。また、焼結合金中の亜鉛は、摺動摩擦による酸化摩耗を生じ難くする効果があるものと考えられる。
このように、錫と亜鉛を含有する銅合金相と鉄相の斑組織からなる多孔質焼結合金とポリ−α−オレフィン基油にジエステルおよび極圧添加剤を含有する合成潤滑剤との組み合わせたものは相性が良好であることが分かる。
2.試験−2
次に、多孔質焼結合金に含浸する潤滑油を、ポリ−α−オレフィン基油にジエステルおよび極圧添加剤を含有する合成潤滑剤とし、鉄含有量、錫および亜鉛含有量の異なる各種組成の多孔質焼結合金との組み合わせについて、焼結合金組成の適正範囲を調べた。
(1)軸受の作製および軸受試験方法
前記と同じ原料粉を用いて、表2に示す各種組成になるように各金属粉を配合し、金属粉に対して0.5質量%の成形潤滑剤を追加して混合した。全体組成で鉄の含有量が20質量%、40質量%、60質量%の3水準で、錫および亜鉛の含有量を変化させた各種組成である。粉末成形、焼結、サイジングおよび潤滑油の含浸は前記の場合と同様に行った。試験方法はやはり前記と同様で、運転初期の摩擦係数と1000時間運転後の軸受摩耗量を測定した。
Figure 0004409474
(2)試験結果
結果を表2に示す。なお、比較例1と実施例1は、表2に示した結果と同じである。また、実施例1と実施例2は亜鉛含有量の順番に表示しており、実施例2を実施例1の上欄に記載してある。
表2の比較例1から比較例7までの上から7つの試料は銅・錫・亜鉛系(銅合金)中における錫量を一定の5質量%とし、亜鉛含有量が異なる組成の焼結合金について比較したものである。銅・錫・亜鉛合金組成における亜鉛含有量が5質量%より少ないと摩擦係数および摩耗量とも大きく、また、亜鉛含有量が25質量%より大きいと摩擦係数は低いが摩耗量が少し大きくなる傾向を示している。
また、比較例8から比較例9までの4つの試料は、銅・錫・亜鉛系(銅合金)中における亜鉛を15質量%一定とし、錫含有量が異なる組成の焼結合金について比較したものである。銅・錫・亜鉛系(銅合金)中における錫含有量が3.3%より少なく1.6%になると、摩耗量が増え、また同様に錫含有量が10%を超え11.6%になると摩擦係数がやや高くまた摩耗量も増える。
この結果から、鉄相が40質量%、銅合金相が60質量%で、銅・錫・亜鉛系(銅合金)中の錫含有量が2〜10質量%、亜鉛含有量が5〜25質量%程度のとき、摩擦係数が低く、摩耗量も少ない結果になっている。
実施例7から実施例12までの6つの試料は、鉄の含有量が20質量%の場合で、前記比較例1から比較例7までと同様に錫の含有量を一定として亜鉛含有量の異なる焼結体(実施例7〜10)、および亜鉛含有量を一定として錫含有量の異なる焼結体(実施例8、11、12)について比較したものである。
焼結合金の鉄の含有量が少ない(銅合金相が多い)ことにより前記の鉄の含有量が40質量%のものに比べて摩擦係数および摩耗量が僅かに低くなっている。銅・錫・亜鉛系銅合金中の錫含有量が2.5〜7.5質量%、亜鉛含有量が5〜25質量%の範囲内にある各実施例は摩擦係数、摩耗量ともに少ない結果になっている。
実施例13から実施例18までの6つの試料は、鉄の含有量が60質量%(銅合金相が40質量%)の場合である。前記の実施例等と同様に、錫の含有量を一定として亜鉛含有量の異なる焼結体(実施例13〜16)、および亜鉛含有量を一定として錫含有量の異なる焼結体(実施例14、17、18)について比較したものである。焼結合金が鉄の含有量が比較的多い(銅合金相が比較的少ない)ことにより、摩擦係数および摩耗量が僅かに高めになっているが、良好な状況を示している。
これらの結果から、摩擦係数および耐摩耗性ともに良好な軸受の多孔質焼結合金は、鉄相が20〜60質量%、銅合金相が80〜40質量%の斑組織であり、前記銅合金相の組成が銅合金を100として錫が2〜10質量%、亜鉛が5〜25質量%である。これは全体組成で鉄が20〜60質量%、銅が26〜74質量%、錫1〜8質量%、亜鉛2〜20質量%に相当する。また、この合金の気孔内に基油がポリ−α−オレフィンでジエステルおよび極圧添加剤を含有する合成潤滑剤を含浸した軸受が摩擦係数が低く摩耗量の少ないものであることが分かる。
3.試験−3
次に、含浸した潤滑油のジエステル含有量および極圧添加剤の含有量と、摩擦係数および摩耗量との関係を調べた。
(1)軸受の作製と軸受試験方法
多孔質焼結合金は、前記実施例1と同じで、全体組成が鉄40質量%、銅48質量%、錫3質量%、および亜鉛9質量%であり、粉末成形、焼結、サイジングおよび潤滑油の含浸などの製法も同じである。また、軸受試験方法も前記の試験方法と同じである。なお、潤滑油に含まれるジエステルはジオクチルセバケート(DOS)、極圧添加剤はジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP)である。
Figure 0004409474
(2)試験結果
結果を表3に示す。実施例19と比較例10を比較すると、ジエステル含有量が2質量%より少ないと摩擦係数および摩耗量が増加する。添加による効果が不足しているものと考えられる。また、実施例20と比較例11を対比すると分かるように、ジエステルの含有量が15質量%を超えると、摩耗量が大きくなる。これは、ジエステルの量が摺動面に対して多すぎて、極圧添加剤の効果が発揮されないためと考えられる。比較例12は極圧添加剤を加えない場合であり、ジエステルだけでは潤滑が不充分であることを示している。実施例21は極圧添加剤の含有量が異なるものを比較しており、極圧添加剤の含有量が0.5質量%で摩耗量の減少に効果が認められる。実施例22の極圧添加剤の含有量が3質量%では摩擦係数および摩耗量が、実施例1の1質量%のものと同等であり、多量添加しても効果が伴わないことを示している。
これらのことから、ジエステルと極圧添加剤の共存が潤滑性を良好にしているということができ、ジエステルの含有量が2〜15質量%で極圧添加剤の含有量が0.5〜3質量%の潤滑油が良好である。
本願発明の焼結含油軸受は、高い温度環境でも摩擦係数が低く、摩耗量が少ない軸受要素を提供することができ、特に、軸流ファンモータ用に好適なものであり、軸流ファンモータに使用すればモータの耐久性の向上、信頼性の向上に寄与することができる。

Claims (3)

  1. 軸受材料の全体組成が鉄20〜60質量%、銅26〜74質量%、錫1〜8質量%および亜鉛2〜20質量%で、前記組成のうち銅・錫・亜鉛系合金成分の組成が錫2〜10質量%、亜鉛5〜25質量%および銅残部であって、合金組織が鉄相と銅合金相とが斑に分散している多孔質焼結合金からなり、
    前記多孔質焼結合金からなる軸受の気孔内にポリ−α−オレフィンを基油とし、ジエステル2〜15質量%および極圧添加剤0.5〜3質量%を含有し、残部が前記基油である潤滑油が含浸されていることを特徴とする焼結含油軸受。
  2. 前記潤滑油が、さらに、粘度指数向上剤1〜3質量%、酸化防止剤0.3〜1質量%の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の焼結含油軸受。
  3. 前記軸受の用途が軸流ファンモータ用軸受であることを特徴とする請求項1または2に記載の焼結含油軸受。
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