層状珪酸塩は、ポリ乳酸組成物の耐熱性、ガスバリヤ性及び機械的強度を向上させる事を目的として使用するものである。ポリ乳酸は通常結晶化が非常に遅いポリマーであり、例えば、70〜130℃に加熱した金型で成形する場合、十分に結晶化するまでに長時間かかる。また、金型の温度を室温以下に冷却した場合には、得られる成形品が非結晶のものとなってしまう。層状珪酸塩を使用してナノコンポシット化した本発明のポリ乳酸組成物は結晶化速度が速く、結晶化温度(70〜130℃)に加熱した金型で成形する場合に結晶化が十分に進行し、短時間で成形品を製造することができる。
層状珪酸塩を使用しないポリ乳酸組成物の耐熱温度、即ちビカット軟化点温度は、45℃〜70℃未満であったのに対し、層状珪酸塩を添加することで70℃以上に向上でき、更には乳酸系ブロック共重合体の組成及び層状珪酸塩の種類及び含有量、成形時間等を調整することで100℃以上に向上する事が可能となる。更に層状珪酸塩を後述する乳酸系ブロック共重合体(III)の製造段階の早い時期から使用し、層状珪酸塩を分散させると、ポリ乳酸に直接層状珪酸塩をブレンドする場合に比べ効率よく微分散でき、層状珪酸塩の使用量が従来より少なくとも、優れた耐熱性を付与することができる。それに伴い、透明性の消失も抑制が可能となる。
また、層状珪酸塩を使用することで、本発明のポリ乳酸組成物にガスバリア性を付与することができる。ここで言うガスバリア性は、酸素、窒素、二酸化炭素、水蒸気等のガスバリヤ性であり、その透過度を層状珪酸塩を使用しない場合の1/2〜1/5程度に減少できる。これはいわゆる「回り道理論」効果で発現する。
回り道理論とは、微分散した層状珪酸塩がガス分子の透過路を遮断し、ガス分子がそれを迂回して透過しようとすることで透過するまでの距離が長くなるものである。
層状珪酸塩は、タルクやガラス繊維等の強化材を使用する場合と同等以上の機械的強度をポリ乳酸組成物に付与することができる。層状珪酸塩は、その大きさがナノレベルでタルクやガラス繊維より小さく、また官能基を有することも可能なため、高分子鎖とより緻密な複合体構造をとることができる
前記層状珪酸塩としては、例えばアルミニウム、マグネシウム、リチウム等の元素を含む8面体シートの上下に珪酸4面体シートが重なって1枚の板状結晶層を形成している2:1型の構造を持つものが挙げられ、その板状結晶層の層間に交換性陽イオンを有しているものが好ましい。前記板状結晶層の大きさは、通常幅0.05〜0.5μm、厚さ6〜15オングストロームのものが好ましい。
前記交換性陽イオンのカチオン交換容量は、0.2〜3meq/gのものが好ましく、0.8〜1.5meq/gのものがより好ましい。
本発明に使用する層状珪酸塩の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウム等の各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素マイカ、Li型四珪素フッ素マイカ等の膨潤性マイカ等が挙げられ、天然のものでも合成されたものでもよい。これらの中でもモンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土鉱物やNa型四珪素フッ素マイカ、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性合成マイカが好ましい。
前記層状珪酸塩としては、予め有機カチオン処理を施したものが好ましい。有機カチオン処理は層状珪酸塩の有する交換性陽イオンを有機カチオンとイオン交換するもので、それにより層状珪酸塩の層間距離を大きくでき、層間剥離やポリマーの層間挿入によって層状珪酸塩の分散性を向上させることができ、透明性の良いポリ乳酸組成物を製造できる。
前記有機カチオン処理は、例えば、層状珪酸塩を水またはアルコール中に分散させたものに有機カチオンを塩の形で添加し攪拌混合することで層状珪酸塩の交換性陽イオンを有機カチオンとイオン交換させた後、濾別・洗浄・乾燥する方法であり、これにより得られた有機オニウム塩化された層状珪酸塩を使用することが好ましい。
前記有機カチオンとしては、例えば1級又は3級アミンおよびそれらの塩、4級アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩等が挙げられる。1級アミンとしては、例えばオクチルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン等が挙げられる。3級アミンとしては、例えばトリオクチルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジドデシルモオメチルアミン等が挙げられる。4級アンモニウムイオンとしては、例えばテトラエチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジヒドロキシエチルメチルオクタデシルアンモニウム、メチルドデシルビス(ポリエチレングリコール)アンモニウム、メチルジエチル(ポリプロピレングリコール)アンモニウム等が挙げられる。有機ホスホニウムイオンとしては、例えばテトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウム等が挙げられる。これらの有機カチオンは単独で使用してもよいが2種以上を組合せて使用してもよい。
前記層状珪酸塩としては、水酸基、カルボキシル基を有するものを使用することが好ましい。水酸基を有する層状珪酸塩はポリエーテルポリオール(I)との親和性を向上させ、層状珪酸塩同士の凝集を緩和させる作用があり好ましい。また、カルボキシル基を有する層状珪酸塩は、ポリエーテルポリオール(I)の末端水酸基と結合でき、均一に分散できる。
本発明で使用できる第1及び第2の有機オニウム塩の炭素数はそれぞれ6以上であることが好ましい。該炭素数が6以上であれば、層状珪酸塩の層間距離を十分に広げることができ、分散性を向上できる。
前記層状珪酸塩は、本発明のポリ乳酸組成物に対して0.1〜20重量%となるよう使用することが好ましく、0.5〜10重量%の範囲がより好ましく、1〜5重量%の範囲がさらに好ましい。かかる範囲で用いることで、充分な結晶化速度の促進効果を得ることができ、さらに成形がしやすく、ポリ乳酸組成物成分の分子量の低下を引き起こさず、短期及び長期に渡る機械物性の安定性に優れたポリ乳酸組成物を得ることができるが、本発明のポリ乳酸組成物の透明性を考慮すると、可能な限り少ない方が好ましい。
前記層状珪酸塩は、後述するポリエーテルポリオール(I)と、ラクタイド(II)又はポリ乳酸(II’)と反応させる過程で使用するものである。層状珪酸塩をかかる過程で使用することで、従来のように乳酸系ブロック共重合体(III)と層状珪酸塩とを混合した場合よりも、より微分散できる。
また、前記層状珪酸塩は、乳酸系ブロック共重合体(III)を重合した後に、再度使用しても良い。また、乳酸系ブロック共重合体(III)とポリ乳酸(IV)とを溶融ブレンドする場合にも再度使用できる。その場合、層状珪酸塩をポリ乳酸組成物中に均一且つナノレベルで分散させるのが難しいため、混練能力が高いスクリューを使用したり、2軸押出機であれば回転数を上げる等の工夫が必要である。
次に本発明で使用できるカーボンナノチューブについて説明する。
カーボンナノチューブは、前記層状珪酸塩同様、本発明のポリ乳酸組成物の耐熱性、ガスバリヤ性及び機械的強度を向上させる目的で使用するものであるが、カーボンナノチューブを使用する場合は、さらに導電性導電性、熱伝導性、電磁波シールド性等の機能を本発明のポリ乳酸組成物に付与することができる。
ポリ乳酸は通常結晶化が非常に遅いポリマーであり、例えば、70〜130℃に加熱した金型で成形する場合、十分に結晶化するまでに長時間かかる。また、金型の温度を室温以下に冷却した場合には、得られる成形品が非結晶のものとなってしまう。カーボンナノチューブを使用してナノコンポシット化した本発明のポリ乳酸組成物は結晶化速度が速く、結晶化温度(70〜130℃)に加熱した金型で成形する場合に結晶化が十分に進行し、短時間で成形品を製造することができる。
カーボンナノチューブは、直径1nm〜数十nm、長さは0.1〜数μm程度のチューブ状分子であり、中空構造をなしている壁の層数により単層タイプと多層タイプがあるが、本発明ではいずれも使用することができる。カーボンナノチューブは極細で長く、機械的強度が高く、導電性に優れ、構造安定性が高いなどの利点を有する。
カーボンナノチューブは、通常カーボンナノチューブ同士が絡まり合った固まりで構成された粉末状であり、これを分散させるには、カーボンナノチューブ表面に官能基を有するものを使用することが好ましい。表面に官能基を有するカーボンナノチューブとは、カーボンナノチューブ外表面に少なくとも1種類以上の官能基を有するカーボンナノチューブであり、かかる官能基の種類は特に限定されないが、例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホン基、エーテル基、などが挙げられる。
かかるカーボンナノチューブを使用することで、カーボンナノチューブ外表面に存在する官能基同士が反発し、絡まり合っていたカーボンナノチューブがほぐれ、この結果、乳酸系ブロック共重合体(III)を製造する過程に於ける分散性を向上できる。
カーボンナノチューブの表面に官能基を付与する方法としては、例えば構造の結合が切れた部位に生じるカルボキシル基を用いる方法、高温フッ素による方法、ポリメチルメタクリレート中での超音波処理による欠陥生成法、芳香族分子による修飾法、プラズマ処理などがある。
本発明では、カーボンナノチューブ存在下でポリエーテルポリオール(I)と、ラクタイド(II)又はポリ乳酸(II’)とを重合させることが必要であるが、この際、得られる硫酸系ブロック共重合体(III)がカーボンナノチューブ表面を被覆するため、ポリ乳酸組成物とした場合、カーボンナノチューブ同士の凝集が抑制されるため、本発明のポリ乳酸組成物においてカーボンナノチューブ同士の凝集を抑制でき、溶融混練等の機械的分散の際により優れた分散性を発現できる。
カーボンナノチューブは、アスペクト比が高いため、層状珪酸塩同様タルク、ガラス繊維、カーボンブラック(例えば炭素繊維)と比べ、その使用量は少量で良く、本発明のポリ乳酸組成物に対して0.1〜20重量%となるよう使用することが好ましく、0.5〜10重量%の範囲がより好ましく、0.5〜5重量%の範囲がさらに好ましい。かかる範囲で用いることで、充分な結晶化速度の促進効果を得ることができ、さらに成形がしやすく、高分子組成物成分の分子量の低下を引き起こさず、短期及び長期に渡る機械物性の安定性に優れたポリ乳酸組成物を得ることができるが、本発明のポリ乳酸組成物の透明性を考慮すると、可能な限り少ない方が好ましい。
次に、本発明で使用するポリエーテルポリオール(I)について説明する。
ポリエーテルポリオール(I)としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド等のアルキレンオキサンドを重合して得られるものが挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコール等のブロック共重合体、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。なかでもポリエチレングリコールが後述するポリ乳酸(IV)との相溶性に最も優れており、本発明のポリ乳酸組成物に対して柔軟性及び透明性を付与できることから好ましく用いられる。また、ポリプロピレングリコールは、側鎖であるメチル基を有することから耐衝撃性をポリ乳酸組成物に付与でき、更に室温で液状のため透明性も良好であることから好ましく用いられる。また、ポリテトラメチレングリコールは、メチレン鎖が長いことから0℃以下の低温状態でも優れた可塑化効果即ち柔軟性を付与できることから好ましく用いられる。
前記ポリエーテルポリオール(I)の分子量は、現状販売されているポリエーテルポリオール(I)の分子量を考慮すると、重量平均分子量で500〜250000である。耐衝撃性を付与する場合は長いほど望ましく、柔軟性を付与する場合は短い方が望ましいが、あまり低分子量ではブリードアウトを引き起こしやすくなり、反対に高分子量になるほど層状珪酸塩またはカーボンナノチューブの分散性が減少し、物性が発現しにくくなる。これらを鑑みると重量平均分子量で1,000〜100,000が好ましく、2,000〜30,000が更に好ましく、2,000〜20,000がより更に好ましい。
次に、前記ポリエーテルポリオール(I)に共重合するラクタイド(II)及びポリ乳酸(II’)について説明する。
ラクタイド(II)とは、乳酸2分子が脱水縮合で環状2量化した化合物で、立体異性体を有するモノマーであり、L−乳酸2分子からなるL−ラクタイド、D−乳酸2分子からなるD−ラクタイド、及びD−乳酸及びL−乳酸からなるmeso−ラクタイドが挙げられる。L−ラクタイド、又はD−ラクタイドのみを含む共重合体は結晶化し、高融点であり、用途に応じてこれら3種類のラクタイドを種々の割合で組み合わせることにより好ましい樹脂特性を実現できる。また、ラクタイド(II)のL−ラクタイドとD−ラクタイドの構成割合と、ポリ乳酸(IV)のD−乳酸とL−乳酸の構成割合が極端に異なる場合、例えばラクタイド(II)がD−ラクタイド、ポリ乳酸(IV)がポリ(L−乳酸)の様な場合、ポリ乳酸組成物がステレオコンプレックスを形成するため、高融点で、耐熱性、機械的物性等に優れるので好ましい。
ポリ乳酸(II’)は、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)やこれらの混合体をいう。また、ポリ乳酸(II’)のD−乳酸とL−乳酸の構成割合と、ポリ乳酸(IV)のD−乳酸とL−乳酸の構成割合が極端に異なる場合、例えばポリ乳酸(II’)がポリ(D−乳酸)、ポリ乳酸(IV)がポリ(L−乳酸)の様な場合、ポリ乳酸組成物がステレオコンプレックスを形成するため、高融点で、耐熱性、機械的物性等に優れるので好ましい。
前記したポリ乳酸(II’)は、重量平均分子量5万〜40万を有するものが好ましく、10万〜25万であることがより好ましい。かかる範囲の重量平均分子量を有するポリ乳酸を用いることで、機械物性や耐熱性等の実用物性を発現でき、さらに適度な溶融粘度となることから成形加工性に優れた乳酸系ブロック共重合体(III)を得ることができる。
ポリ乳酸(II’)は、層状珪酸塩又はカーボンナノチューブとの相溶性を向上させることを目的として、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸等の酸無水物で変性したものであっても良い。酸無水物の添加量としては、ポリ乳酸(IV)に対して好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%である。かかる範囲の量を添加することによって、ポリ乳酸の分子量を維持し、層状珪酸塩又はカーボンナノチューブとの相溶性が発現せしめることができる。変性方法に関しては、種々の方法が有るが、通常は2軸押出機によるリアクティブプロセシングが用いられる。
前記ポリ乳酸(II’)には、分子量増大を目的として少量の鎖伸長剤、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物、エポキシ化合物などを使用することができる。
次に本発明で用いられる乳酸系ブロック共重合体(IIIa)及び(IIIb)(本発明において、乳酸系ブロック共重合体(IIIa)及び(IIIb)を併せて「乳酸系ブロック共重合体(III)」と省略。)について説明する。
次に本発明で用いられる乳酸系ブロック共重合体(III)について説明する。本発明で用いられる乳酸系ブロック共重合体(III)とは、前記したポリ乳酸(IV)に添加することによって、本発明のポリ乳酸組成物に耐衝撃性、柔軟性及び耐熱性を付与することができる改質剤であり、層状珪酸塩若しくはカーボンナノチューブの存在下、ラクタイド(II)又はポリ乳酸(II')と、重量平均分子量500〜250000のポリエーテルポリオール(I)とを共重合させて得られ、ポリ乳酸セグメント及びポリエーテルポリオールセグメントからなるブロック共重合体である。ここで、本発明で用いられる乳酸系ブロック共重合体(III)は、ブロック共重合体であることが重要である。これがランダム共重合体である場合、ポリ乳酸(IV)との相溶成分である乳酸ブロックが存在しないため、本発明の乳酸系ブロック共重合体(III)とポリ乳酸との界面の密着性を良好にして界面剥離を抑制する機構が働かず、ブリードアウトを起こし、更には耐衝撃性の向上にもマイナスに作用する。
乳酸系ブロック共重合体(III)の重量平均分子量は3000〜250000であり、好ましくは10000〜250000、より好ましくは20000〜200000、更に好ましくは30000〜150000である。かかる重量平均分子量が3000未満であると耐衝撃性付与の発現がしにくく、250000を超えると溶融粘度が高くなり、ポリ乳酸(IV)への分散性が悪くなる。
前記乳酸系ブロック共重合体(III)の有するポリ乳酸セグメントの平均鎖長は長いほど好ましいが、その製造方法から考えると実質は、乳酸の水酸基のHとカルボキシル基のOHを除いた乳酸残基を1ユニットとする場合、好ましくは5〜3000ユニットであり、より好ましくは10〜2000ユニットであり、更に好ましくは50〜1000ユニットであり、より更に好ましくは100〜1000ユニットである。かかる範囲に調製することで、ポリ乳酸セグメントがポリ乳酸(IV)とより相溶しやすくなり、乳酸系ブロック共重合体(III)とポリ乳酸(IV)との界面の密着性を良好にして界面剥離を抑制し、更にはブリードアウトも防ぐことが可能となり、さらに適度な粘度に維持できることから、ポリ乳酸(IV)中に乳酸系ブロック共重合体(III)を均一分散せしめることができる。なお、前記したユニットを数平均分子量に換算する為には、乳酸残基1ユニットの分子量(72)×ユニット数となり、例えば10ユニットは数平均分子量で720となる。
次に、前記したラクタイド(II)又はポリ乳酸(II')と、ポリエーテルポリオール(I)の重量比に関しては、耐衝撃性、柔軟性をどの程度付与したいかにより違ってくるが、少なくともラクタイド(II):ポリエーテルポリオール(I)、又は、ポリ乳酸(II'):ポリエーテルポリオール(I)=10:90〜90:10である必要があり、好ましくは25:75〜70:30、より好ましくは30:70〜60:40、さらに好ましくは40:60〜60:40である。かかる範囲に調整することで、ブリードアウトを抑制し、耐衝撃性、柔軟性等を十分に付与できる。耐衝撃性、柔軟性を大きく付与したい場合は、当然ポリエーテルポリオール(I)の量を多くすることが望ましい
次に、乳酸系ブロック共重合体(III)の製造方法を説明する。製造方法としては、乳酸セグメントとポリエステルセグメントからなるブロック共重合体が得られる製造方法であれば特に制限はないが、例えば、
(1)ラクタイド(II)とポリエーテルポリオール(I)とを重合触媒を用いて、層状珪酸塩若しくはカーボンナノチューブの存在下で反応させる方法、
(2)ポリ乳酸(II')とポリエーテルポリオール(I)と、層状珪酸塩又はカーボンナノチューブとを溶融混合後、エステル化又はエステル交換触媒の存在下、減圧で脱水、重縮合する方法、
(3)ポリ乳酸(II')とポリエーテルポリオール(I)と、層状珪酸塩若しくはカーボンナノチューブとを、高沸点溶媒に加え、エステル交換触媒を使用し、減圧で共沸脱水重縮合即ち直接重縮合反応させる方法などが挙げられる。
まず、(1)ラクタイド(II)とポリエーテルポリオール(I)の共重合法について説明する。反応温度はラクタイド(II)の着色及び分解を防ぐという点で220℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下の反応温度が好ましく、また反応系内の水分の存在は好ましくない為、ポリエーテルポリオール(I)は十分に乾燥させておく必要がある。このような条件下、ラクタイド(II)とポリエーテルポリオール(I)を100℃〜220℃で混合して溶解する。この際、必要に応じてこれらの合計重量に対して1〜30重量部のトルエン等非反応性の溶剤を用いてもよい。更に、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、140〜220℃で重合触媒(例えば、オクタン酸錫)をラクタイド及びポリエーテルポリオールの合計量に対して50〜5000ppmを添加し重合させる。
重合触媒としては、一般にエステル化触媒、エステル交換触媒、開環重合触媒として知られる触媒はいずれも使用可能であり、例えば、Sn、Ti、Zr、Zn、Ge、Co、Fe、Al、Mn、Hf等のアルコキサイド、酢酸塩、酸化物、塩化物等が挙げられる。これらの中でも、錫粉末、2−エチルヘキシル酸錫、ジブチルスズジラウレート、テトライソプロピルチタネート、テトラブトキシチタン、チタンオキシアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、鉄(III)エトキサイド、アルミニウムイソプロポキサイド、アルミニウムアセチルアセトナートは、反応が早いので、好ましい。
次に、(2)ポリ乳酸(II')とポリエーテルポリオール(I)の共重合法について説明する。ポリ乳酸(II')とポリエステル(I)を溶融混合後、触媒存在下、減圧重縮合反応を行うことで乳酸系ブロック共重合体ポリエステル(III)を得ることができる。ポリエステル(I)はポリ乳酸(II')と溶融混合する前にポリエステル(I)合成で使用した触媒を除去しておくか、触媒失活剤で触媒を不活性しておくことが好ましい。その理由は、ポリエステルの残存活性触媒がポリ乳酸のエステル交換触媒として作用することでポリ乳酸分子鎖を過剰に切断し、重合開始時点でのポリ乳酸分子量を大きく低下させ、重縮合反応終了後に得られる乳酸系ブロック共重合体ポリエステル(III)の分子量を必要以上に低下させるためである。重合温度は、高すぎるとポリ乳酸が熱分解によりラクタイドに分解するため、170〜220℃が好ましく、180〜210℃がより好ましい。減圧度は高真空であるほど重合が速く進行するので好ましく、2kPa以下が好ましく、1kPa以下がより好ましく、0.5kPa以下が更に好ましい。
重合触媒としては、前記と同様のものを使用できる。中でも、テトライソプロピルチタネート、テトラブトキシチタン、チタンオキシアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、アルミニウムアセチルアセトナート、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウム・2THF錯体、塩化ハフニウム、4塩化ハフニウム・2THF錯体は、反応が早くなり好ましく、アルミニウムアセチルアセトナート、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウム・2THF錯体、塩化ハフニウム、4塩化ハフニウム・2THF錯体は得られるポリマーの着色が少ないのでより好ましい。触媒の使用量はポリ乳酸とポリエステル総量の50〜500ppmが好ましい。
(3)ポリ乳酸(II')とポリエーテルポリオール(I)と高沸点溶媒との共存下、エステル交換触媒を用い、減圧で共沸脱水重縮合即ち直接重縮合反応させる方法は、キシレン、アニソール、ジフェニルエーテル等の高沸点溶媒を使用する以外は(2)と同様な条件で行う。しかし、(2)に比べ、最終的には溶媒を除去する必要があるため、製造方法としては(1)又は(2)の方法を適用することが好ましい。
さらに乳酸系ブロック共重合体体(III)は重合終了後、溶媒により重合触媒を抽出除去するか、又は前述した触媒失活剤により重合触媒を失活させることにより、その保存安定性を更に向上させることができる。
かかる触媒失活剤としては、特にキレート化剤及び/又は酸性リン酸エステル類が好ましい。キレート化剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、しゅう酸、リン酸、ピロリン酸、アリザリン、アセチルアセトン、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、カテコール、4−t−ブチルカテコール、L(+)−酒石酸、DL−酒石酸、グリシン、クロモトロープ酸、ベンゾイルアセトン、クエン酸、没食子酸、ジメルカプトプロパノール、トリエタノールアミン、シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジトルオイル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸が挙げられる。
また、酸性リン酸エステル類とは、ヒドロキシカルボン酸系ポリエステル中に含有される触媒の金属イオンと錯体を形成し、触媒活性を失わせ、ポリマー鎖の切断抑制効果を示すものであり、例えば従来公知の酸性リン酸エステル、ホスホン酸エステル、アルキルホスホン酸等及びその混合物が挙げられ、例えば2−エチルヘキサンホスフェートが挙げられる。前記した酸性リン酸エステル類は、有機溶剤との溶解性がよいため作業性に優れ、乳酸系ポリエステルとの反応性に優れ、重合触媒の失活に優れた効果を示す。
次に、本発明のポリ乳酸組成物について説明する。
ポリ乳酸組成物は、乳酸系ブロック共重合体(III)とポリ乳酸(IV)を含有してなり、その重量比に関しては、耐衝撃性、柔軟性をどの程度付与したいかにより調整すれば良く、乳酸系ブロック共重合体(III)の使用量が多いほど、耐衝撃性、柔軟性を大きく付与でき、ポリ乳酸組成物の粘度も下げることができるため加工が良好になり望ましいことから、好ましくはポリ乳酸(IV):乳酸系ブロック共重合体(III)=97:3〜40:60、より好ましくは95:5〜50:50、更に好ましくは95:5〜60:40である
また、前記したポリ乳酸(IV)と乳酸系ブロック共重合体(III)のモルフォロジーに関しては、ポリ乳酸(IV)が海相であるのに対し乳酸系ブロック共重合体(III)は島相になるが、この島の粒径が小さいと柔軟性、透明性維持が優れ、島相が大きいと耐衝撃性に優れる。すなわち、平均粒径が0.20〜2μmと比較的大きいと、耐衝撃性及びポリ乳酸(IV)と乳酸系ブロック共重合体(III)の界面密着性にも優れ、より好ましくは0.2〜1μm、更に好ましくは0.3μm〜1μm、更により好ましくは0.5μm〜1μmである。
一方、島の平均粒径が0.2μm以下と比較的小さい粒径であると、柔軟性、透明性維持が良好になることから好ましく、より好ましくは0.1μm以下、更に好ましくは0.01〜0.0.05μmであり、当然相溶していれば一番好ましい。なお、本発明で言う平均粒径とは島相の長軸及び短軸の長さの平均値を言う。
島径とポリエーテルポリオールの関係としては、高分子量であると島径が大きくなり、種類で上げれば、ポリテトラメチレングリコールが大きく、次いでポリプロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)共重合体、ポリエチレングリコールの順でその傾向が強くなる。
本発明のポリ乳酸組成物は、乳酸系ブロック共重合体(III)を含有していることから、優れた耐衝撃性、柔軟性を示す。また、層状珪酸塩又はカーボンナノチューブの存在により、耐熱性に優れる。更にはガスバリヤ性にもすぐれ、例えば層状珪酸塩又はカーボンナノチューブが存在しないポリ乳酸組成物と比べて酸素透過度が1/3〜1/4程度まで減少する。また、乳酸系ブロック共重合体(III)の添加量を調整することにより、実施例に記載の方法で、3(kJ/m2)以上、好ましくは4〜20(kJ/m2)、より好ましくは5〜20(kJ/m2)、特に好ましくは7〜20(kJ/m2)のIZOD衝撃強度を有する。または、無延伸フィルム又は延伸フィルムで0.2J以上、好ましくは0.3〜5Jのデュポン衝撃強度を有し、または、延伸熱セットフィルムで1J以上、好ましくは1〜10Jのフィルムインパクトを有する。
さらに、乳酸系ブロック共重合体(III)の添加量を調整することにより、優れた柔軟性を呈し、例えば、ポリ乳酸組成物をフィルム化し、レオメトリクス株式会社製のRSAIIで測定した20℃、1Hzでの貯蔵弾性率(E’)は0.5〜5.0GPaの範囲を示し、より優れたものは、0.6〜3GPa、更に優れたものは0.6〜2.5GPaの範囲を示す。
また、本発明のポリ乳酸組成物は、層状珪酸塩又はカーボンナノチューブの使用量が少量の場合、乳酸系ブロック共重合体(III)重合時に微分散されるため、ポリ乳酸組成物中においても、機械的混練より良好に分散するため、透明性を損ないにくくなる。この際の透明性は、ポリ乳酸組成物の厚さ200μmプレスフィルムのヘイズ値が35%以下を指し、より好ましくは1〜30%、さらに好ましくは1〜25%、更により好ましくは1〜20%のものが挙げられる。
本発明のポリ乳酸組成物には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、ブチル・ヒドロキシアニソール(BHA)の様な酸化防止剤、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、および、燐酸エステル、イソシアネート、カルボジイミド、カルボジライト等の安定剤を使用し、重合時又は成形時の熱的安定性を向上させることもできる。これらの安定剤の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではないが、添加対象ポリマーに対して、通常0.01〜10%の量で添加することが好ましい。
また、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシュウム等の金属石鹸類、鉱油、流動パラフィン、エチレンビスステアリルアマイド等の滑剤、グリセリン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル等の非イオン系、アルキルスルホン酸塩等のイオン系等の界面活性剤、酸化チタン、カーボンブラックの様な着色剤、リン系、臭素系、シリコーン系のような難燃剤等の添加も何等差し支えない。
また、塩化ビニル系樹脂によく使われる可塑剤、例えばアジピン酸ジオクチル(DOA)、アセチルトリブチルクエン酸アセチルトリブチル(ATBC)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、トリメリット酸可塑剤、アジピン酸系ポリエステル等の低分子可塑剤を使用しても構わない。この添加により特に引張伸度が向上し、柔軟性も更に向上する。低分子可塑剤使用量はあまり多くなると耐熱性を大幅に下げることになるため、ポリ乳酸組成物に対し、0.5〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましく、1〜10重量%が更に好ましい。
また、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム等の無機系発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、スルホニルヒドラジド等の有機系発泡剤等の添加により、もしくはペンタン、ブタン、フレオン等の発泡剤を本発明ポリマーに事前に含浸させるか、押出工程の途中で押出機内に直接供給することにより発泡体とすることもできる。また押出ラミ、ドライラミ又は共押出により紙、アルミホイル又は他の分解性ポリマーフィルムとの積層化も可能である。
前記した本発明のポリ乳酸組成物を用いた成形物に関しては、下記に示す成形方法によって成形されたものであり、かかる成形品又はフィルム(10×10cm正方形、250μm厚の)に関しては、35℃、湿度80%の恒温恒湿器に放置したとき、該成形品表面から60日以上、好ましくは180日以上ブリード物が現れないものである。
本発明のポリ乳酸組成物からなる成形物としては、射出成形物、繊維又はTダイキャスト成形やインフレーション成形等の押出成形によるフィルム等が挙げられる。また、複数の押出機による多層化フィルムを行うことも可能である。なお、通常厚みによりシート、フィルムを慣用的に使い分けているが、本発明では混乱を避けるために総称してフィルムというものとする。本発明のフィルムの厚みは特に制限されないが、一般的に用いられている5μm〜2mmを言うものとする。
また、本発明のポリ乳酸組成物の成形方法に、ポリ乳酸組成物を結晶化温度でアニーリングする方法がある。例えば、真空成形、圧空成形、射出成形、ブロー成形及び圧縮成形の場合、金型温度をDSCの降温時結晶化開始温度から終了温度の範囲に設定して、本発明の組成物を金型内で結晶化をさせる。この方法により、耐熱性、耐衝撃強度に優れた耐熱性乳酸系ポリマー成形物を得ることができる。金型温度は、70〜130℃で、80〜120℃が好ましく、80℃〜110℃がより好ましく、90〜110℃がより好ましい。この温度範囲だと、容易に結晶化し、また成形後、型内から成形物を取出すとき固化して寸法精度の良い成形物を得ることができる。この温度範囲を外れると、結晶化の速度が遅い場合があり、成形物の固化時間を要するため、実用性に劣る場合がある。結晶化時間としては1秒から10分間であるが、生産性等の実用性を考えた場合、この時間は短い程良いため、好ましくは1秒〜3分間、より好ましくは1秒〜1分間である。
また、本発明のポリ乳酸組成物は、吸湿性が高いために加水分解しやすいことから、射出成形、繊維又はフィルム包装材等の加工にあたっては、成型機又は押出機内での加水分解を避けるため事前に真空乾燥器等により除湿乾燥を行い、原料中の水分を50ppm以下に抑えるのが好ましい。
次に本発明のポリ乳酸組成物を用いて得られるフィルムに関しては、そのフィルム成膜する際の押出機スクリューは、通常、スクリューのニーディング部の長さ(L)とニーディングスクリューの径(D)との比であるL/D比が、20〜50程度のフルフライトタイプで良く、ベントを付設しても良い。適正な押出温度は使用するポリ乳酸組成物の分子量、組成、粘度によって異なるが、流動開始温度以上が望ましい。
Tダイキャスト成形でポリ乳酸組成物をフィルム化する際の溶融温度は、特に限定されないが、通常、ポリ乳酸(VI)の融点より10〜60℃高い温度である。溶融押し出されたフィルムは、通常、所定の厚みになるようにキャスティングされ、必要により冷却される。その際、フィルム厚が厚い場合は、タッチロール、エアーナイフ、薄い場合には静電ピンニングを使い分けることにより均一なフィルムとする。
成膜されたフィルムは、ガラス転移温度以上、融点以下の温度でテンター方式やインフレーション方式等で、一軸および二軸に延伸することができる。さらに延伸処理を施すことにより、分子配向を生じさせ、耐衝撃性、剛性、透明性等の物性を改良することが出来る。
一軸延伸の場合は、ロール法による縦延伸又はテンターによる横延伸により、縦方向又は横方向に1.3〜10倍延伸するのが好ましい。二軸延伸の場合は、ロール法による縦延伸及びテンターによる横延伸が挙げられ、その方法としては、一軸目の延伸と二軸目の延伸を逐次的に行っても、同時に行っても良い。延伸倍率は、縦方向及び横方向にそれぞれ1.3〜6倍延伸するのが好ましい。延伸倍率がこれ以上低いと十分に満足し得る強度を有するフィルムが得難く、また、高いと延伸時にフィルムが破れてしまい良くない。なお、シュリンクフィルム等の特に加熱時の収縮性を要求するような場合には、一軸又は二軸方向への3〜6倍等の高倍率延伸が好ましい。
延伸温度は、ポリ乳酸組成物のガラス転移温度(以下、Tgという。)〜(Tg+50)℃の範囲が好ましく、Tg〜(Tg+30)℃の範囲が特に好ましい。かかる範囲の延伸温度にすることで、充分に延伸することができ、さらに延伸による強度も向上することができる。
また、本発明のポリ乳酸組成物を用いて得られるフィルムの耐熱性をより向上させるために、延伸直後の緊張下で熱セット処理(結晶化処理)を行うと、歪の除去又は結晶化を促進することにより耐熱特性を向上させることができる。かかる熱セット処理温度は、70〜130℃で、70〜120℃が好ましく、80℃〜110℃がより好ましく、90〜110℃がより好ましい。このような範囲で行うと耐熱性だけではなく、引張伸び等他のフィルム物性も向上するので、望ましい。その際の熱セット処理時間は通常1秒〜3分間、好ましくは1秒〜1分間であり、1秒から30秒がより好ましい。
本発明のフィルムの二次加工法としては、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法等が利用できる。本発明のポリ乳酸組成物のフィルム化は、汎用樹脂のフィルム製造に使用されている既存装置を用い、成形することが可能である。
かかるフィルムの成形法に関しては、真空成形、真空圧空成形の場合には、プラグアシスト成形を行っても良い。延伸フィルムについては圧空成形を行うのが好ましい。なおこれら成形時に金型の加熱、冷却も任意に併用することができる。特に、金型を結晶化温度以上に加熱し、結晶化を積極的に進めることにより耐熱性能を向上させることもできる。
インフレーション成形の際は、通常のサーキュラーダイ、エアーリングを備えた成形装置で容易に成形でき、特別の付属装置は必要としない。なおこの際偏肉を避けるため、ダイ、エアリング又はワインダーの回転を行っても良い。
フィルムの製造に関しては、横ピロー製袋機、縦ピロー製袋機、ツイストバック製袋機等通常の製袋機で容易にヒートシールし、袋状物を得ることができる。
これらフィルム以外の加工製品を得る際には、通常の射出成型機を用いて容器等の型物を問題なくを得ることができる。
またブロー成形も容易で、既存の成型機を使用することにより単層、多層ボトルを容易に成形を行うことができる。プレス成形についても特段の問題はなく通常の成型機で単層又は積層製品を得ることができる。
本発明のポリ乳酸組成物の用途としては、各種成形品、成形用樹脂、包装用材料、塗料用樹脂、インキ用樹脂、トナー用樹脂、接着剤用樹脂、衛生材料、医療用材料、繊維材料、農業資材、漁業資材、紙等へのラミネーション用材料、発泡樹脂材料等として有用である。より具体的には例えば、各種成形品としてはトレー、カップ、皿、ブリスター、ブロー成形品、シャンプー瓶、化粧品瓶、飲料瓶、オイル容器、射出成形品(ゴルフティー、綿棒の芯、キャンディーの棒、ブラシ、歯ブラシ、ヘルメット、注射筒、皿、カップ、櫛、剃刀の柄、テープのカセットおよびケース、使い捨てのスプーンやフォーク、ボールペン等の文房具等)等に有用である。包装材料としては、シート用材料、フィルム用材料等、より具体的には、シュリンクフィルム、蒸着フィルム、ラップフィルム、食品包装、その他一般包装、ゴミ袋、レジ袋、一般規格袋、重袋等の袋類等、衛生材料としては紙おむつ、生理用品、医療用材料としては創傷被覆材、縫合糸等、繊維材料としては織物や編物をはじめ、レース、組物、網、フェルト、不織布等、農業資材として発芽フィルム、種ヒモ、農業用マルチフィルム、緩効性農薬及び肥料のコーテイング剤、防鳥ネット、養生フィルム、苗木ポット等、漁業資材としては漁網、海苔養殖網、釣り糸、船底塗料等、また、紙へのラミネーション製品としては、トレー、カップ、皿、メガホン等に、その他に、結束テープ(結束バンド)、プリペイカード、風船、パンティーストッキング、ヘアーキャップ、スポンジ、セロハンテープ、傘、合羽、プラ手袋、ヘアーキャップ、ロープ、チューブ、発泡トレー、発泡緩衝材、緩衝材、梱包材、煙草のフィルター等、多岐にわたる用途が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
実施例で行った測定は以下の通りである。
(分子量測定)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(以下、GPCと省略する。東ソー株式会社製HLC−8020、カラム温度40℃、テトラヒドロフラン溶媒)によりポリスチレン標準サンプルとの比較で測定した。
(熱的物性測定)
示差走査熱量測定装置(以下、DSCと省略する。セイコー電子工業株式会社製DSC220C)を用い、−100〜200℃の範囲を昇温速度10℃/分で測定した。
(ビカット軟化点温度)
東洋精機社製ヒートデスターテーションを用い、ASTM−D1525に従い、荷重1kgf、昇温速度50℃/時間の条件で成形後の試験片を測定。
(貯蔵弾性率(E’);以下、DMAと省略する。)
レオメトリックス社製RSAIIを用い、厚さ200μm×幅5mm×長さ35mmのフィルムをFILM TEXTUREジオメトリーにより、チャック間22.4mm、6.28rad、−50〜120℃の条件で測定した。
(透明性測定;以下、「ヘイズ」と省略する。)
縦10cm×横10cmのフィルムを縦5cm×横5cmに切り、濁度計(日本電色工業株式会社製ND−1001DP)にて測定した。
(アイゾット衝撃試験;以下、IZODと省略する。)
JIS K 7110に準拠したアイゾット衝撃試験法(ノッチ付き)により測定した。
(デュポン衝撃強度試験)
JIS K 5400のデュポン衝撃強度測定法を用いて、一定重さの重錘の高さを変えて落下させ、破壊の有無により、得られたフィルムの50%破壊エネルギーを求めた。フィルムとの打突部は鋼製であり、半径6.3mmの滑らかな半球状(ウエシマ製作所製)である。
(フィルムインパクト試験)
ASTMD−3420に準拠した方法で測定した。
(引張試験)
島津製作所社製テンシロンを用い、JIS−K7127に従い測定した。試験片はJIS2号ダンベル、引張速度5mm/minで行った。
(製造例1)(改質剤A−1の合成)
数平均分子量2,000のポリエチレングリコール(三洋化成社製PEG−2000。以後PEG2000と略)を1.40kgと、ポリ乳酸(三井化学社製H−400、以下PLAと略)を3.27kgと、層状珪酸塩(コープケミカル社製SAN、以下SANと略)を0.33kgとを10Lの反応釜に仕込み、190℃で攪拌溶融後、触媒としてチタンテトラブトキサイドを100ppm添加し、0.1kPa減圧下5時間重合した。その後、触媒失活剤としてエチレンジアミン4酢酸(以下EDTAと略)100ppmを添加、0.1kPa減圧下1時間残留ラクタイドを脱揮して重合を終了し、改質剤(A−1)を得た。なお、ガラス転移点(Tg)はPEGの融点のピークと重なり不明。
(製造例2)(改質剤A−2の合成)
数平均分子量20,000のポリエチレングリコール(三洋化成社製PEG−20000、以後PEG20000と略)を3.27kgと、PLAを1.40kgと、SANを0.33kgとを用い、製造例1と同様な条件で重合し、改質剤(A−2)を得た。なお、TgはPEGの融点のピークと重なり不明。
(製造例3)(改質剤A−3の合成)
数平均分子量3,000のポリプロレングリコール(三洋化成社製サンニックスPP−3000、以後PPGと略)を3.15kgと、L−ラクタイド(ピュラック社製、以後L−LDと略)を1.35kgと、層状珪酸塩(コープケミカル社製ME100、以下ME100と略)を0.50kgとを、10L反応釜に仕込み、窒素雰囲気下185℃で溶解した。溶液が均一になってからオクタン酸錫250ppmを添加し、185℃で3時間撹拌後、触媒失活剤として2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(大八化学社製AP−8)を200ppm添加、0.1kPa減圧下1時間残留ラクタイドを脱揮し、改質剤(A−3)を得た。
(製造例4)(改質剤A−4の合成)
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール−ポリプロレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体(三洋化成社製ニューポールPE−75、以後PE75と略)を0.86kgと、L−LDを0.87kgと、カーボンナノチューブ(Hyperion社製)0.27kgを使用した以外は製造例3と同様な条件で重合し、改質剤(A−4)を得た。
(製造例5)(改質剤A−5の合成)
PE−75を0.90kgと、PLAを0.90kgと、ME100を0.40kgとを用い、製造例1と同様な条件で重合し、改質剤(A−5)を得た。
(製造例6)(改質剤A−6の合成)
数平均分子量3,000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学社製PTMG3000、以下PTMGと略)を1.95kgと、PLAを1.95kgと、カーボンナノチューブ(Hyperion社製)0.10kgと、触媒として4塩化ジルコニウム・2THFを100ppmとを用い、それ以外は製造例1と同様な条件で重合し、改質剤(A−6)を得た。
(比較製造例1)(改質剤HA−1の合成)
PEG2000を1.50kgと、PLAを3.50kgとを用い、製造例1と同様な条件で重合し、改質剤(HA−1)を得た。
(比較製造例2)(改質剤HA−2の合成)
PPGを3.5kgと、L−LDを1.5kgとを用い、製造例1と同様な条件で重合し、改質剤(HA−2)を得た。
(実施例1)(ポリマーブレンド物P−1の作製)
PLAを3.50kgと、改質剤(A−1)を1.50kgとをドライブレンド後、L/D=36の35mm2軸押出機(東芝機械社製)、シリンダー温度200℃で溶融混練し、コンパウンドしたペレット(P−1)を得た。
(実施例2)(ポリマーブレンド物P−2の作製)
無水マレイン酸0.10kgと、PLAを3.40kgと、改質剤(A−2)を1.50kg用い、実施例1と同様な条件でペレット(P−2)を得た。
(実施例3)(ポリマーブレンド物P−3の作製)
PLAを9.00kgと、改質剤(A−3)を1.00kgとを用い、実施例1と同様な条件でペレット(P−3)を得た。
(実施例4)(ポリマーブレンド物P−4の作製)
PLAを3.50kgと、改質剤(A−4)を1.50kgとを用い、実施例1と同様な条件でペレット(P−4)を得た。
(実施例5)(ポリマーブレンド物P−5の作製)
PLAを2.00kgと、予め2軸押出機で3wt%無水マレイン酸変性したPLAを1.25kgと、改質剤(A−5)を1.50kgと、SANを0.25kgとを用い、実施例1と同様な条件でペレット(P−5)を得た。
(実施例6)(ポリマーブレンド物P−6の作製)
PLAを2.00kgと、予め2軸押出機で3wt%無水マレイン酸変性したPLAを0.95kgと、改質剤(A−6)を2.00kgと、カーボンナノチューブを0.05kg用い、実施例1と同様な条件でペレット(P−6)を得た。
(比較例1)(ポリマーブレンド物HP−1の作製)
PLAを3.50kgと、改質剤(HA−1)を1.50kgとを用い、実施例1と同様な条件でペレット(HP−1)を得た。
(比較例2)(ポリマーブレンド物HP−2の作製)
PLAを9.00kgと、改質剤(HA−2)を1.00kgとを用い、実施例1と同様な条件でペレット(HP−2)を得た。
(比較例3)(ポリマーブレンド物HP−3の作製)
PLA100を29.1kgと、SANを0.9kgとを用い、実施例1と同様な条件でペレット(HP−3)を得た。
(試験例1)(ポリマーブレンド物の評価(結晶化温度))
実施例1〜6及び比較例1〜3で得た各ポリマーブレンド物について、DSCにより、結晶化温度を測定し、その結果を表3〜5にまとめて示した。
(試験例2)(ポリマーブレンド物の射出成形及び評価)
実施例1〜6及び比較例1〜3で得た各ポリマーブレンド物を、100℃で6時間減圧乾燥後、1オンスの射出成形機で射出成形後、90℃に温調した金型内で30秒結晶化させ、IZOD試験片を得た。これらのビカット軟化点温度、IZOD衝撃強度(ノッチ付き)を測定し、その結果を表3〜5にまとめて示した。
(試験例3)(熱セット200μmフィルムの成膜及び評価)
実施例1〜6及び比較例1〜3で得た各ポリマーブレンド物を、100℃で6時間減圧乾燥後、L/D=36の50mm単軸押出機(田辺プラスチック社製)、シリンダー温度220℃で溶融混練し、ダイスから幅30cm、厚さ200μmのシートに押出した。ダイス出口で熱溶融したシートの冷却は、実施例4〜7に関してはタッチロールを用い、それ以外はエアーナイフを用いた。フィルムは100℃で1分間熱セットを行い結晶化させた。得られた200μmフィルムは、デュポン衝撃値、ヘイズ、引張弾性率、引張伸度及びDMAでの20℃の貯蔵弾性率を測定し、その結果を表3〜5にまとめて示した。
(試験例4)(フィルムの生分解性試験)
前記試験例3で得た実施例1〜6のフィルムを金網で挟み、45℃に保った電動コンポスト装置中に放置した。嫌気環境にならないように数時間おきに撹拌を行った。30日後にフィルムを取り出したところ、ボロボロで殆ど原形をとどめていなかった。60日後には、フィルムは消失して確認できなかった。
(試験例5)(2軸延伸熱セットフィルムの成膜及び評価)
実施例1〜6及び比較例1〜3で得た各ポリマーブレンド物を、L/D=36の50mm単軸押出機(田辺プラスチック社製)、シリンダー温度220℃で溶融混練し、ダイスから幅30cm、厚さ100μmのシートに押出した。ダイス出口で熱溶融したシートの冷却はエアーナイフを用いた。更に延伸温度条件70℃、延伸速度10mm/秒で逐次延伸により、縦方向、横方向同倍率の2倍にそれぞれ延伸後、140℃で50秒熱セットを行い、厚さ25μmの2軸延伸熱セットフィルムを得た。これについて、フィルムインパクト、ヘイズ、、引張弾性率及び引張伸度を測定し、その結果を表3〜5にまとめて示した。
(試験例6)(フィルムのブリードアウト評価)
また、試験3及び5で得たフィルムを35℃、湿度80%に保ったタバイエスペック社製恒温恒湿器PR−2F中に放置した。毎日フィルムの状態を観察し、ブリードアウトが始まる日数で評価し、その結果を表3〜5にまとめて示した。なお、評価中はブリードアウトしなかった。
本発明のポリ乳酸組成物は、比較例1、2のビカット軟化点温度が70℃以下なのに対し、いずれも80℃以上と高い耐熱性を示し、且つ耐衝撃性又は柔軟性は同等かそれ以上の数値を実現している。比較例3はビカット軟化点温度が85℃であるが、実施例に比べ、IZOD衝撃強度、デュポン衝撃値及びフィルムインパクトの耐衝撃値がいずれも低く、また、引張弾性率あるいは貯蔵弾性率は高く、柔軟性に乏しい。