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JP4415705B2 - 地中コンクリート構造物の補強方法及び地中コンクリート構造物 - Google Patents
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地中コンクリート構造物の補強方法及び地中コンクリート構造物 Download PDF

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Description

本発明は、コンクリート構造物の補強に関するものであり、特に、狭隘な施工条件である電気,水道,ガス等のインフラストラクチャ設備のボックスカルバートやマンホール等の補強に好適に用いることが出来る技術である。
コンクリート構造物は、長年経過することに伴い、本体構造物の劣化による強度低下、外力の変化により増加した作用荷重への対応等の影響によって補強の必要性が生じる。従来、劣化したコンクリート構造物の補強方法としては、例えば、既存のコンクリート構造物を外部から掘削して劣化部分を除去した後に、新たに鉄筋コンクリートにより増厚し、強度を向上させる方法が用いられていた。
しかし、前記補強方法では、コンクリートを打設するための型枠が必要であるため、補強に際し広い作業スペースを要していた。そのため、マンホール等の狭隘箇所のコンクリート構造物の補強には適用することが困難であった。
このような問題を鑑みて、狭隘箇所であるマンホールのコンクリート構造物の補強方法としては、補強すべきコンクリート構造物に炭素繊維等の高強度の繊維をシート状に織った繊維シートを貼付する方法を用いていた。この繊維シートによる補強方法によれば、予め繊維が含有されたシートを貼ることのみで良いため、狭隘箇所でも行うことができた。さらに、予め製造された繊維シートを用いるため、一定の品質で補強を行うことができ、十分に強度を補強することができた。しかし、この繊維シートは、コンクリートの引張、曲げに対する補強は十分に行うことができるが、コンクリートの剪断に対する補強は十分に行うことができないという問題があった。さらに、施工箇所によっては、補強箇所が漏水していることがあり、このような漏水箇所に繊維シートを接着させることが難しいこともあった。
本発明は、前記種々の問題点を鑑みてなされたものであり、コンクリート構造物に対する剪断、曲げ、引張のいずれの荷重に対しても補強を行うことが可能であり、狭隘箇所等であっても用いることが可能である施工場所の制限が少ないコンクリート構造物の補強方法を提供することを技術的課題とする。
本発明に係るコンクリート構造物の補強用パネルは、前述の技術的課題を解決するために以下のように構成されている。コンクリート構造物に貼付することによって、コンクリート構造物を補強するためのパネルであって、短繊維を含有したセメントモルタルパネルと、繊維を含有した繊維シートと、を有し、このセメントモルタルパネルと繊維シートが重合していることを特徴とする。
本発明は、既存のコンクリート構造物の補強に用いるパネルであり、前記構成により、セメントモルタルに含有された繊維と前記繊維シートに含有された繊維によって、コンクリート構造物の引張応力、曲げ応力に対して補強することができる。以下、本発明に係るコンクリート構造物の補強用パネルの前記構成について詳細に説明する。
まず、短繊維とは、繊維長が短いか又は短く切断した繊維のことであり、補強材として使用した場合、複合材料の中で不連続な状態で存在する。そのため、セメントモルタルに短繊維を含有することによって、セメントモルタルの引張及び曲げ強度の向上を図ることができる。この短繊維の種類としては、例えば、鋼、ステンレス、ビニロン、ポリスエチレン、ポリプロピレン、炭素繊維、ガラス繊維、ナイロン、カーボン、アラミド等が挙げられる。尚、この短繊維は、鉄筋の代わりとしてセメントモルタル材料に混入するため、鉄筋と同様に錆びないものが望ましい。
前述のように本発明に用いるセメントモルタルパネルは、短繊維を含有したものであり、この短繊維をセメントモルタルに混入することにより、短繊維を含有しないセメントモルタルと比較して、引張強度を約10〜20倍程度向上させることができる。しかし、この短繊維のみでは、鉄筋と比較して十分な強度を得ることは困難である。そのため、短繊維と併せて用いて補強用パネルの引張強度を高めるため、セメントモルタルパネルに繊維シートを重合した。繊維シートは、引張強度を効率良く付加できるものが良く、例えば、炭素繊維シート、アラミド繊維シートを用いることができ、特に優れた特性を有する炭素繊維を好適に用いることができる。尚、前記セメントモルタルパネルは、コンクリートからなるコンクリートパネルであっても良い。
炭素繊維とは、窒素気流中で有機繊維を700〜1800℃で加熱し炭化させた繊維である。炭素繊維は、高比強度、高比弾性率、導電性、耐熱性、低膨張率、化学安定性、自己潤滑性及び高熱伝導性等の優れた特性を有する。炭素繊維の種類としては、フィラメント、トウ、クロス、ブレード等を例示できる。また、本発明は、補強を行う際に、容易に扱うことができ、種々の場所に適用可能とするために繊維をシート状にした。
この繊維シートの強度は、繊維量及びシートの厚みによる。そのため、設計条件に応じて適宜に変更することが望ましい。繊維量は目付けで表すことができ、例えば、200(g/m)目付量、厚み0.011cmの炭素繊維シートが5500(N/mm)の引張強度であるとする。この炭素繊維シートの1mあたりの引張強度は、55000(kg/cm)×0.011(cm)×100(cm)×1/3(安全率)=20167(kg)となる。この値を鉄筋に置き換えると、D19mm200ピッチ配筋の場合、1mあたりの引張強度が、π×19×19/4(断面積)×4(本数)×1600(鉄筋の許容引張強度)=18137kgとなる。この両計算値を比較すると、炭素繊維シートの値の方が大きく、鉄筋より高い引張強度を有することがわかる。一方、両計算値を比較して、炭素繊維の値が小さい場合には、補強状況に応じて、繊維量の増加又は厚みの増幅を行えば良い。
また、本発明に係る前記セメントモルタルパネルは、予め工場等で製作することが望ましい。補強現場によっては、狭隘箇所であり現場で型枠の設置空間がほとんど得られない場合があるとともに、現場でセメントモルタルパネルを施工すると短繊維を均等に混入することができない等一定の品質を保持できない場合がある。これに対して、工場等で予めセメントモルタルパネルを施工すると、施工性、品質の安定性、コストをいずれも向上させることができるため、好適である。また、セメントモルタルパネルの形状は、補強箇所に合わせて製作することが望ましく、平板、曲線板、凹凸板、ハンチ板等種々の形状にすることができる。加えて、セメントモルタルパネルの厚みは、特に制限されないが、薄すぎるとセメントモルタルパネルの反り、ひびわれが生じるおそれがあり、厚すぎると自重により運搬、設置等扱いが困難になるおそれがある。このような観点から本出願人は、セメントモルタルパネルの厚みについて種々実験、検討を行った。その結果、セメントモルタルパネルの厚みは15mm以上60mm以下が好適である。
本発明は、前記セメントモルタルパネルと繊維シートを重合して、両部材で強度を高め
ている。そのため、セメントモルタルパネルと繊維シートとは、止着していることが望ましい。この止着方法としては、例えば、接着剤を用いて両部材を接着する方法、ボルト等を用いて螺着する方法が挙げられる。前記接着剤は、セメントモルタルパネルと繊維シートを所定の接着強度で一体化できるものであれば良く、例えば、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、ポリマーセメント系接着剤、ビニルエステル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤を用いることができる。
また、本発明に係るコンクリート構造物の補強用パネルは、前記セメントモルタルパネルと繊維シートとを複数重合していることが望ましい。前述のように、セメントモルタルパネルの厚みは、15mm以上60mm以下が好適である。また、繊維シートは、扱いを容易にする観点から、その厚みは0.1mm前後が好適である。すなわち、セメントモルタルパネルと繊維シートは、いずれも施工性等の観点から一定の厚みに制限される。しかし、補強用パネルの強度は混入する繊維量と各部材の厚みにより、混入する繊維量にも一定の制限を伴うことから、高い強度を得るためには、厚みを大きくする必要性がある。このように、補強用パネルの強度を高くしたい際には、セメントモルタルパネルと繊維シートを複数層重合することが望ましい。これにより、個々の部材の強度に基づいて、これらを組み合わせることにより、所望の強度の補強用パネルを得ることができる。
さらに、本発明に係るコンクリート構造物の補強用パネルは、複数層重合したセメントモルタルパネルと繊維シートが、交互に配置されていることを特徴としても良い。補強用パネルの強度を高めるために、セメントモルタルパネルと繊維シートを複数重合する際に、その配置方法は特に制限されない。しかし、例えば、工場等で予め、セメントモルタルパネルと繊維シートを貼り合わせたものを1層とし、この層を組み合わせて補強用パネルとすることにより、更に効率良くかつ容易に所望の強度を有する補強用パネルを得ることが可能となる。また、他の配置方法としては、セメントモルタルパネル間に繊維シートを配置しても良い。前述のように繊維シートは小さな厚みのものであっても高い引張強度を有する。しかし、表面に傷等が付くとその部分の引張強度が低下してしまうおそれがある。一方、繊維シートは、その扱いやすさ等の観点から小さな厚みで形成することが望ましく、前記傷の部分から亀裂が生じてしまう恐れもある。そのため、傷等が付き難いセメントモルタルパネルを外側に配置し、そのセメントモルタルパネル間に繊維シートを配置することが望ましい。また、このセメントモルタルパネル間に配置される繊維シートは、1枚であっても、複数枚重合されていても良く、必要な補強強度を得られるように適宜に設計することが望ましい。
また、本発明は、前記補強用パネルを用いたコンクリート構造物の補強方法であり、補強すべき壁面に前記補強用パネルをアンカーで固定し、この補強用パネルと壁面の隙間に接着剤を充填し、補強用パネルと壁面を一体化することを特徴とする。前記補強方法によれば、容易、かつ効果的に壁面の補強を行うことが可能となる。
以上のように本発明に係るコンクリート構造物の補強方法によれば、セメントモルタルパネルと繊維シートの繊維によって効果的に補強を行うことができるため、コンクリート構造物に対する剪断、曲げ、引張のいずれの荷重に対しても補強を行うことが可能である。また、前記補強用パネルは、その厚みが小さく、従来のように配筋作業を伴わないため、施工場所の制限が少なく、狭隘箇所等であっても好適に用いることができる。また、補強用パネルを予め工場等で製作することにより、現場での作業を大幅に低減することができるため、施工の工期を短縮することができる。
以下、本発明に係るコンクリート構造物の補強方法の一実施例を説明する。本実施形態は、既存のボックスカルバートの補強である。このボックスカルバートは、地中送電線路が配置されており、上部に点検等の出入口となるマンホールを有している。図1は、ボックスカルバートの平面図であり、図2は、図1のA矢視図である。各図に示すように、ボックスカルバートの壁面4には、送電線路を引き込むための送電線路管口4aが複数形成されており、本実施の形態では送電線路管口4aの下部の壁面4の補強を行う。劣化状況は、コンクリートにひび割れが発生し、ひび割れ部分から漏水が生じている。
本実施の形態に用いる補強用パネル1について説明する。図3は、補強用パネル1の斜視図である。この補強用パネル1は、予め工場にてセメントモルタルパネル2と繊維シート2を各1層重合した状態で製造した。補強用パネル1は、短繊維としてポリプロピレン繊維2aを混入したセメントモルタルパネル2と、炭素繊維からなる繊維シート3を張り合わせたものである。この補強用パネル1は、現場での作業の施工性を考慮して、200×20×3(cm)として1枚あたりの重量を30kgにした。
前記セメントモルタルパネル2は、ポリプロピレン繊維2aをセメントモルタルに混入したパネルであり、以下の特徴を有している。(1)短繊維として混入されたポリプロピレン繊維は錆びないため、セメントモルタルパネル自体も錆びが生じない。(2)工場で予め製作しているため、品質が安定している。(3)凍結融解試験方法による300サイクルにおける相対動弾性係数が80%以上であり、耐候性、耐久性に優れている。(4)ポリプロピレン繊維を混入しているため、曲げ、引張強度が大きく、ポリプロピレン繊維を混入しないセメントモルタルと比較して初期ひび割れ耐力が大きい。(5)圧縮強度が100N/mm2であり、耐摩耗に対する抵抗性が高い。(6)ポリプロピレン繊維はダイオキシン、環境ホルモン等の課題がないため、環境に優しく、繊維を含有しないセメントモルタルと同様の産業廃棄物として処理することができる。(7)曲げタフネスが大きい。
以上のように、本実施の形態に係るセメントモルタルパネル2は。種々優れた特徴を有している。また、本実施の形態に用いるセメントモルタルパネル2について、圧縮、引張、曲げ強度を調べる実験を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0004415705
次いで、本実施の形態に用いる炭素繊維シート3は、目付200(g/m)で製造したものであり、その厚さは、0.111mmである。この炭素繊維シート3について引張強度を実験した結果、3、500(N/mm)以上の結果を得られた。すなわち、高い引張強度を有することがわかった。本実施の形態に係る補強用パネル1は、セメントモルタルパネル2と炭素繊維シート3を重ね合わせたパネルであり、設計条件に応じて複数重ね合わせて、前記壁面4に固定して一体化させることにより壁面4の補強を行う。
まず、補強すべき壁面4の補強検討を行う。図4に示すフローチャートに基づいて補強検討について、詳細に説明する。ステップ11として、既存の壁面の曲げ、剪断、及び押し抜き剪断についての耐力の計算を行う。補強すべき壁面の耐力を計算して、既存の状態
での耐力を確認するためである。ここでは詳細な計算は省略するが、曲げ、剪断、及び押し抜き剪断耐力は有しているとの結果を得た。
ステップ12として、既存の壁面の現状と補強の検討を行う。本実施の形態では、前記耐力確認において、いずれについても耐力を有しているとの結果が得られたが、現状の壁面の劣化状況は、コンクリートにひび割れが生じ、ひび割れ部分からは漏水が生じている。このような状況を鑑みて、ステップ11で得られた計算結果と現状の違いの要因について検討を行う。この要因として考えられることは、第1に、設計荷重が過小評価であったことが考えられる。すなわち、耐力計算を行う上での土圧、水圧等の値が現状と異なっていたこと、及び、予想外の上載荷重が作用していたこと等が要因であるということである。第2の要因として、壁面の施工時に側面と頂版と真壁が一体施工されていないことが考えられる。本実施の形態では、種々検討した結果、現状の壁面劣化は、これらの要因によるものであると判断し、前記計算結果及び劣化状況から補強案を作成した。
ステップ13として、前記補強案に基づいた補強用パネルを壁面に取り付けた際の剪断耐力を計算する。本実施の形態に係る壁面の補強をモデル化した概略図を図5に示す。今回検討を行う壁面は、1.8m×2.7mの壁面である。この壁面の受ける土圧を地表面からの距離、土の比重等を考慮して算出する。その結果を図6(a)に示す。また、この図6(a)に示した台形荷重を横向きとして単純梁として作用する剪断力を求める。その計算過程を図6(b)に示す。図6(a)、(b)にて算出した計算値に基づいて、壁面に生じる作用面全長の剪断力を求める。
単位面積辺りの作用剪断力は、
τ=4.725+2.286=7.011(t/m)
作用面全長の作用剪断力は、これに全長2.7(m)を乗じた値であり、
W=7.011×2.7=18.9(t)
次いで、壁面4に補強用パネル1を取り付けた際の評価を行う。ここで用いる補強用パネル1は、当該補強用パネル1を2枚用い、炭素繊維シート3が夫々向かい合うように重ね合わせたものである。この補強用パネル1の許容剪断力は10.1N/mであり、許容曲げ応力は25.2N/mである。補強用パネル1は、アンカー5を用いて補強用パネル1を壁面4に取り付ける。なお、このアンカー5は、補強用パネル1と壁面4を一体化するために用いており、剪断力を受けるのは定着用アンカー6である。
また、ここで、定着アンカー6の施工案の検討を行う。平均剪断力4.9tの定着アンカー6を用いる場合、その安全率を3とすると、許容剪断力は、4.9/3=1.6tとなる。ここで壁面4の作用剪断力が18.9tなので、必要な定着アンカー数は、18.9/1.6=12本となる。また、アンカーピッチは、2.7/12=0.225mと算出される。この計算値に安全率2を更に考慮して、定着アンカー12本×2列とする。
前記計算で求めた定着アンカー数で補強用パネル1を壁面4に固定した場合、補強用パネル1の支柱7に該当する箇所(図5A部)で剪断力を受けるため、その支柱7との角で発生する剪断力耐力を検討する(ステップ14)。
補強用パネルを単純梁として計算すると、単位長さあたりの作用剪断力は、
τc=S/bd=7.011×1000/(100×6)=11.685(kg/cm
一方、2枚重ね合わせた補強用パネルの許容剪断力τpは、安全率を3とすると、
τp=10.1×1/3=3.37(N/mm)=34.4kg/cm
この値を比較するとτp>τであるため、支柱部分に作用する剪断耐力を有していると評価される。
ステップ15として、壁面背面の土圧等による曲げ応力に対する曲げ耐力を検討する。本実施の形態の曲げ試験は、JIS A1106−1993「コンクリートの曲げ強度試験方法」に準じて行った。壁面から補強用パネルに作用する曲げ耐力σcは、
σc=MX1/bd2×1/LC=1.075×105/(100×(62))×6.0=179.16kgf/cm=17.6N/mm
一方、2枚重ね合わせた補強用パネルの許容曲げ応力σpは、安全率を1.4とすると、
σp=25.2/1.4=18.0N/mm
この値を比較すると、σp>σcであるため、曲げ耐力を有していると評価される。
以上の検討の結果、前記補強用パネル1で既存壁面4の補強が可能であると評価されたため、補強案とした2層からなる補強用パネル1を用いて補強を行う。
次いで、補強用パネル1の施工について図7に示すフローチャートに基づいて説明する。まず、準備工として、電線防護、排水処理を行う(ステップ21)。補強すべき壁面4には、送電線路管口4aが設けられており、この送電線路管口4aに送電線路が引き込まれているため、送電線路を防護する必要がある。また、壁面4には、ひび割れ部分から漏水が生じておりボックスカルバート内に貯留しているため、予め貯留した水を除去する。
補強すべき壁面4の漏水部分の止水及び導水処理を行う(ステップ22)。壁面4に漏水が生じた状態では、補強用パネル1を取り付けることができないため、漏水部分にウレタン系止水材等の止水材料を注入する。この止水材料の注入では十分に止水できない箇所には、導水管を設置し、施工する壁面4からの漏水の止水を行う。
補強すべき壁面4のはつり及び断面修復を行う(ステップ23)。壁面4の劣化状況が激しい場合には、そのままの状態では補強用パネル1と一体化しにくく、取り付けが困難となる場合がある。このような場合には、壁面4のはつり及び断面修復を行う。本実施の形態では劣化状況が激しかったため、壁面4を5cmはつり、ひび割れ、断面欠損箇所にポリマーセメントモルタルを充填し、修復を行った。
前記壁面4の修復を行った後、一層目の補強用パネル1を取り付ける(ステップ24)。1層目の補強用パネル1を適宜の箇所にセットして、補強用パネル1と壁面4の空隙に接着剤を充填する。次いで、2層目の補強用パネル1を取り付ける(ステップ25)。1層目と2層目の補強用パネル1間は、接着剤を用いて貼付する。本実施の形態では、接着剤としてエポキシ樹脂を用いて1層目と2層目の補強用パネル1を貼り合わせた。また、補強用パネル1の炭素繊維シート3は表面に傷が付き易く、傷が付くとその箇所の強度が低下するおそれがある。そのため、2層目の補強用パネル1は、炭素繊維シート3を内側に配置することが望ましく、本実施の形態では、1層目の補強用パネルの炭素繊維シートと2層目の補強用パネルの炭素繊維シートを当接させた状態で重合した。
必要層分の補強用パネル1をセットした後、アンカー5で補強用パネル1を壁面4に固定する(ステップ26)。アンカー5で固定した後、必要に応じて、エポキシ樹脂パテを用いて補強用パネル1の周囲及び目地のシールを行う。次いで、壁面4と補強用パネル1が一体化しているか否かの検査を行う(ステップ27)。壁面4と補強用パネル1の間に空隙がありこれらが一体化していないと、補強用パネル1による補強効果が十分に発現しないためである。本実施の形態では、補強用パネル1の表面を打音検査することにより空隙を検査した。その結果、数カ所の空隙が確認されたため、その付近を削孔してエポキシ樹脂を充填して空隙を塞いだ。
このように補強用パネル1を施工することにより、壁面4と補強用パネル1は一体化し、壁面4のひび割れ、曲げ及び剪断補強を行うことができ、水圧、土圧による壁面変位を
抑制することが可能となる。しかし、壁面4と補強用パネル1を一体化しても、コンクリーと構造物との一体化が不十分だと、構造物として必要な水力、土圧に対する耐力(あるいは強度)が得られないおそれがある。そのため、次いで、補強した壁面4と隣接する側壁8に支柱7を打設する(ステップ28)。本実施の形態では、補強した壁面4と隣接する両側壁8に定着アンカー6を打設し、鉄筋コンクリート製の支柱7を打設した。この定着アンカー6の打設により、コンクリート構造物との一体化が図れることとなる。
このように本実施の形態によれば、必要層の補強用パネル1を補強すべき壁面4に施工することにより、補強用パネル1と壁面4を一体化させて、壁面4の補強を容易に行うことができた。また、従来の補強方法と比較して、配筋作業、コンクリート打設作業等が不要であるため、施工効率を向上させることができた。
尚、本実施の形態では、2層からなる補強用パネル1を用いて壁面4の補強を行ったが、この層数は補強すべき壁面4に応じて種々の層とすることが望ましい。例えば、図8は、3層からなる補強用パネル1を取り付けた壁面の概略図である。3層からなる補強用パネル1を取り付ける際は、1層目、2層目は、炭素繊維シート3部分を表面に配置し、3層目では、炭素繊維シート3部分を裏面に配置している。これは炭素繊維シート3を保護するためであり、層数が多くなった場合でも、最も上層部分の表面には、セメントモルタルパネル2を配置することが望ましい。なお、その施工方法は、層数が異なっても前記施工方法を用いることができるが、層数が多い場合には、1層毎に壁面に取り付けると作業の効率が低下するおそれがある。従って、層数が多い際には、必要に応じて、予め各層を接着して、必要層数接着した補強用パネルを壁面に取り付ける方法としても良い
また、本実施の形態では、予め工場にて一定規格で補強用パネルを製作して、これらを組み合わせて壁面の補強を行った。従って、各層毎に隣接する補強用パネル同士を一体化させる必要がある。隣接する補強用パネル同士を接合する方法としては、接着剤を用いる方法、補強用パネル間の接合部分に継手部材を設ける方法が挙げられる。継手部材は、隣接する補強用パネル間を接合できる構成であれば良く、例えば、図9に示した継手部材10a,10bを例示できる。この継手部材10a,10bは、一方の補強用パネル1の接合部分に突起を設け、他方の補強用パネル1の接合部分に前記突起と嵌合する溝部を設けたものである。この継手部材10a,10bによれば、容易に補強用パネル1間を連結することができる。なお、突起と溝部との間に間隙が生じる場合には、隣接する補強用パネル間を一体化させるために間隙部分に充填材を充填し、間隙を塞ぐことが望ましい。また、前記突起、溝部の断面形状は、図9(a)に示すような台形であっても良いし、図9(b)に示すような半円形であっても良い。しかし、半円形断面の継手部材10bを用いることにより、隣接する補強用パネル1同士を接合する角度を異ならせることができるため、補強すべき壁面にゆがみが生じている場合であっても、壁面4に合わせて補強用パネル1を配置することが可能となり、好適である。
次いで、各層毎の補強用パネルの配置例を説明する。前述のように、各層毎隣接する補強用パネル間を接合する、複数層にわたって一定方向に接合部分が配置されると、接合部分における強度が低下するおそれがある。このような強度の低下を防止するため、複数層からなる補強用パネルを用いる際は、各層毎に補強用パネルの配列方向を異ならせることが望ましい。図10(a),(b)は、3層からなる補強用パネル1の配置例であり、1層目から3層目までの配置方向を示している。いずれの配置例も各層毎に並列する方向を異ならせている。このように、補強用パネル1を配置することにより、隣接する補強用パネル1の接合部分においても強度の低下を防ぐことができる。
また、本実施の形態では、補強用パネルを用いてボックスカルバートの補強を行ったが、この補強用パネルは種々の場所の補強に用いることができる。例えば、スラブの補強、
洞道の補強、橋梁の補強が例示できる。また、本発明に係る補強用パネルは、種々の形状とすることができるため、補強する壁面の形状は平面に限られず、曲線面であっても良い。
<試験例>
本発明に係る補強用パネルの強度を検証する試験を行った。試験方法は、土木学会規準JSCE−G552−1983の「曲げタフネス試験」に準じて行った。供試体は、無筋コンクリート31、D19mmピッチ150mmの鉄筋コンクリート32、本発明に係る補強用パネル33の3体である(図11参照)。補強用パネル33は、ポリプロピレン繊維を混入したセメントモルタルパネルと目付200g/mの炭素繊維シートを各1層重合したパネルを用いた。各供試体31,32,33を2点支持の試験治具(下)35に載置し、その上部に試験治具(上)34を載置し、荷重を加え、荷重に対するひずみを測定した(図12参照)。その結果を図13に示す。この試験結果から明らかなように、本発明に係る補強用パネル33は、他の2体と比較して高い強度を有することがわかった。
本実施の形態の補強対象となるボックスカルバートの平面図である。 図1のA矢視図である。 本実施の形態に係る補強用パネルの斜視図である。 本実施の形態に係る補強検討手順を示すフローチャートである。 本実施の形態に係る補強パネル(2層)を壁面に取り付けた状態の概略図である。 本実施の形態に係る補強すべき壁面の受ける土圧の計算過程を示した図である。 本実施の形態に係る壁面補強の施工手順を示すフローチャートである。 本実施の形態に係る補強パネル(3層)の配置例を示した図である。 補強パネル間の継手部材を示した図である。 補強用パネルの配置例を示した図である。 補強用パネルの強度検証試験の供試体の断面図である。 補強用パネルの強度検証試験の試験の概略を示した図である。 補強用パネルの強度検証試験の試験結果である。
符号の説明
1 補強用パネル
2 セメントモルタルパネル
2a ポリプロピレン繊維
3 炭素繊維シート
4 壁面
5 アンカー
6 定着アンカー
7 支柱
8 側壁
10 継手部材

Claims (7)

  1. 短繊維を含有したセメントモルタルパネルと、繊維を含有した繊維シートと、を有し、このセメントモルタルパネルと繊維シートが重合しており、補強すべき壁面と少なくとも同じせん断耐力および曲げ耐力を有する補強用パネルを用いた地中コンクリート構造物の補強方法であって、
    前記補強すべき壁面と異なる壁面であって、前記補強すべき壁面と隣接する壁面にアンカー固定された支柱と接続して、前記補強用パネルを、前記補強すべき壁面に対して独立して該補強すべき壁面上に設置する設置工程と、
    前記補強用パネルと前記補強すべき壁面の隙間に接着剤を充填し、前記補強用パネルと前記地中コンクリート構造物とを一体化する一体化工程と、を備えることを特徴とする地中コンクリート構造物の補強方法。
  2. 前記一体化工程では、前記補強すべき壁面の漏水部分に該補強すべき壁面からの漏水を止水する止水材料を注入し、前記補強用パネルと前記補強すべき壁面の隙間に、前記接着剤を充填し、前記補強用パネルと前記地中コンクリート構造物とを一体化することを特徴とする請求項1に記載の地中コンクリート構造物の補強方法。
  3. 前記地中コンクリート構造物は、前記補強すべき壁面と該補強すべき壁面と直交する側壁とを有し、
    前記設置工程では、前記補強すべき壁面と異なる壁面であって、該補強すべき壁面と隣接する壁面としての前記側壁にアンカー固定された支柱と接続して、前記補強用パネルを、前記補強すべき壁面に対して独立して該補強すべき壁面上に設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の地中コンクリート構造物の補強方法。
  4. 前記地中コンクリート構造物は、前記補強すべき壁面と該補強すべき壁面と直交する側壁とを有するボックスカルバートであり、
    前記ボックスカルバートの前記補強すべき壁面には、送電線路を引き込むための送電線路管口が複数設けられており、
    前記設置工程では、前記補強すべき壁面と異なる壁面であって、該補強すべき壁面と隣接する壁面としての前記側壁にアンカー固定された支柱と前記補強用パネルの端部とを接続して、該補強用パネルを、前記補強すべき壁面に対して独立して該補強すべき壁面上に設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の地中コンクリート構造物の補強方法。
  5. 短繊維を含有したセメントモルタルパネルと、繊維を含有した繊維シートと、を有し、このセメントモルタルパネルと繊維シートが重合しており、補強すべき壁面と少なくとも同じせん断耐力および曲げ耐力を有する補強用パネルを用いた地中コンクリート構造物であって、
    前記補強すべき壁面と異なる壁面であって、該補強すべき壁面と隣接する壁面にアンカー固定された支柱と、
    前記支柱と接続されることで、前記補強すべき壁面に対して独立して該補強すべき壁面上に設けられる前記補強用パネルと、
    前記補強用パネルと前記補強すべき壁面の隙間に充填される接着剤であって、前記補強用パネルと地中コンクリート構造物とを一体化する接着剤と、を備えることを特徴とする地中コンクリート構造物。
  6. 前記地中コンクリート構造物は、前記補強すべき壁面と該補強すべき壁面と直交する側壁とを有し、
    前記支柱は、前記補強すべき壁面と異なる壁面であって、該補強すべき壁面と隣接する壁面としての前記側壁にアンカー固定されていることを特徴とする請求項5に記載の地中コンクリート構造物。
  7. 前記地中コンクリート構造物は、前記補強すべき壁面と該補強すべき壁面と直交する側壁とを有するボックスカルバートであり、
    前記ボックスカルバートの前記補強すべき壁面には、送電線路を引き込むための送電線路管口が複数設けられており、
    前記支柱は、前記補強すべき壁面と異なる壁面であって、該補強すべき壁面と隣接する壁面としての前記側壁にアンカー固定されており、
    前記補強用パネルは、該補強用パネルの端部と前記支柱とが接続されることを特徴とする請求項5に記載の地中コンクリート構造物。
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