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JP4420158B2 - 電動機速度制御装置 - Google Patents
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JP4420158B2 - 電動機速度制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はエレベータや産業用機械などに用いる電動機の速度制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5は例えば「サーボモータの適応制御」、計測と制御、Vol.32,No.12,pp.1010〜pp.1013に記載の従来のこの種の電動機の速度制御装置の構成を示す図である。前記の文献においては位置制御装置で記載しているが、内部に速度制御装置を含んでいるため、図5には速度制御の部分のみ抽出して記載している。図において1は電動機のトルク制御器と電動機および負荷の機械系と速度検出器(共に図示せず)を含む制御対象、2はモデル演算部、24は比例制御器、25は積分制御器である。
【0003】
次に動作を説明する。まず、制御対象1はトルク指令qrを入力し、制御対象1は内部においてトルク制御器によってトルク指令qrに一致するように電動機のトルクを制御することにより電動機および負荷となる機械系を駆動し、また速度検出器により電動機の速度である実速度vmを検出するものである。またトルク指令qrから実速度vmまでの伝達特性をG(s)と記述する。
【0004】
次にモデル演算部2の動作について説明する。モデル演算部2は外部から速度指令vrを入力する。また制御対象1のモデルを予め想定しておき、モデルの速度であるモデル速度vaとモデルのトルクであるモデルトルクqaを、モデル速度vaが速度指令vrに追従するように演算する。
【0005】
例えばモデル演算部2において想定する制御対象1のモデルをイナーシャがJaの剛体機械と想定すると、モデルトルクqaはモデル速度vaの微分、すなわちモデルの加速度にモデルイナーシャJaを乗じることにより演算されるため、モデル演算部2では例えば次の式(1)および式(2)によりモデル速度vaおよびモデルトルクqaを演算する。ただし以降ではsはラプラス演算子を表す。
【0006】
va=F(s)・vr ・・・・(1)
qa=Ja・s・F(s)・vr ・・・・(2)
【0007】
ただし上式においてF(s)は速度指令vrに対してモデル速度vaを追従させる所望の伝達特性であり、例えばローパス特性の伝達特性として設定するものである。
【0008】
次に、トルク指令qrの演算方法について説明する。比例制御器24はモデル速度vaと実速度vmの偏差に予め設定した比例ゲインKpを乗じた信号を出力し、また積分制御器25はモデル速度vaと実速度vmの偏差に予め設定した積分ゲインKiを乗じて積分した信号を出力し、比例制御器24の出力と積分制御器25の出力の和を誤差補償トルクqcとする。すなわちPI(比例積分)演算を行う。更にモデル演算部2で演算したモデルトルクqaと誤差補償トルクqcの和をトルク指令qrとして出力し、トルク指令qrを制御対象1に入力することにより制御対象1の機械系を駆動する。
【0009】
この従来技術は上記のように構成することにより、制御対象1の伝達特性G(s)がモデル演算部2で想定したモデルの特性と一致した場合、すなわち制御対象1の特性がイナーシャがJaの剛体と一致する場合には、速度指令vrの入力に対してトルク指令qrはモデルトルクqaと一致し、また実速度vmはモデル速度vaに完全に一致するように制御される。
【0010】
また、実際には制御対象1の伝達特性G(s)はモデル演算部2の特性とは誤差を生じ、また制御対象1には外乱トルクが加わるため、実速度vmはモデル速度vaと完全には一致せず、その誤差が比例制御器24および積分制御器25を介してフィードバックされ、誤差補償トルクqcとしてモデルトルクqaに加算されてトルク指令qrとなり、実速度vmのモデル速度vrに対する誤差が小さくなるように制御を行う。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように従来のこの種の装置では、PI演算により外乱に対して誤差の補償をする制御を行うが、制御対象が機械共振を持つような場合、特に電動機に対して負荷機械のイナーシャが大きい場合には、電動機が大きく振動を起こすため、比例ゲインKpや積分ゲインKiを十分に大きくすることができないという問題が生じ、その結果、外乱に対して電動機の実速度vmを精度良く制御することができないという問題が有った。
【0012】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、特に、機械系の剛性が低くかつ電動機に比べて大きなイナーシャの機械負荷を駆動するような場合にも、簡単な調整で安定に外乱に対する制御精度を向上させるような制御を実現する電動機速度制御装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的に鑑み、この発明は、電動機の回転速度である実速度を和の要素に含む信号を入力して低周波数成分をろ過した信号を出力する第1のローパスフィルタと、少なくとも前記第1のローパスフィルタの出力を比例倍した信号と電動機速度制御のための速度指令に基づく信号との和または差に基づき低域トルク指令を演算する第1の制御演算部と、前記低域トルク指令と実速度を入力し、少なくとも前記実速度の比例倍に基づく信号と前記低域トルク指令との和または差に基づき前記トルク指令を演算する第2の制御演算部を備えることを特徴とする電動機速度制御装置にある。
【0014】
また、前記第2の制御演算部は、前記実速度を和の要素に含む信号の低周波数成分をろ過した信号を出力する第2のローパスフィルタを備え、少なくとも前記低域トルク指令と前記第2のローパスフィルタの出力を比例倍した信号との和または差に基づき前記トルク指令を演算することを特徴とする請求項1に記載の電動機速度制御装置にある。
【0015】
また、前記速度指令を入力し、想定した制御対象のモデルの速度であるモデル速度と前記モデルのトルクであるモデルトルクを前記モデル速度が前記速度指令に追従するように演算して出力するモデル演算部をさらに備え、前記第1のローパスフィルタが、前記モデル速度と前記実速度の差信号を入力して低周波数成分をろ波した信号を出力し、前記第1の制御演算部が、前記第1のローパスフィルタの出力を比例倍した信号とモデルトルクの和に基づき低域トルク指令を演算し、前記第2の制御演算部が、前記低域トルク指令と前記モデル速度と前記実速度を入力し、前記モデル速度と前記実速度の差信号の比例倍に基づく信号と前記低域トルク指令との和により前記トルク指令を演算する、ことを特徴とする請求項1に記載の電動機速度制御装置にある。
【0016】
また、前記第2の制御演算部は、前記モデル速度と前記実速度の差信号の低周波数成分をろ過した信号を出力する第2のローパスフィルタを含み、少なくとも前記低域トルク指令と前記第2のローパスフィルタの出力を比例倍した信号との和に基づき前記トルク指令を演算することを特徴とする請求項3に記載の電動機速度制御装置にある。
【0017】
また、前記第2の制御演算部は前記第1の制御演算部よりも高速のサンプル周期で演算を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電動機速度制御装置にある。
【0018】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による電動機速度制御装置の構成を示す図である。図において1は電動機のトルク制御器と電動機および負荷の機械系と速度検出器(共に図示せず)を含む制御対象である。2はモデル演算部である。3は第1のローパスフィルタ、4は第1の比例制御器、5は積分制御器、6は第2のローパスフィルタ、7は第2の比例制御器である。8は低速演算部、9は高速演算部である。なお、第1の比例制御器4および積分制御器5が第1の制御演算部を構成し、第2のローパスフィルタ6および第2の比例制御器7が第2の制御演算部を構成する。
【0019】
次に動作を説明する。まず、制御対象1はトルク指令qrを入力し、制御対象1は内部においてトルク制御器によってトルク指令qrに一致するように電動機のトルクを制御することにより電動機および負荷となる機械系を駆動し、また速度検出器により電動機の速度である実速度vmを検出するものである。またトルク指令qrから実速度vmまでの伝達特性をG(s)と記述する。
【0020】
次に低速演算部8の動作について説明する。低速演算部8は外部から入力した速度指令vrと制御対象1で検出した実速度vmを入力する。また低速演算部8はモデル演算部2、第1のローパスフィルタ3、第1の比例制御器4および積分制御器5から構成され、以下で説明する動作を行う。
【0021】
次に低速演算部8におけるモデル演算部2の動作について説明する。モデル演算部2は外部から速度指令vrを入力する。また制御対象1のモデルを予め想定しておき、モデルの速度であるモデル速度vaとモデルのトルクであるモデルトルクqaを、モデル速度vaが速度指令vrに追従するように演算する。例えばモデル演算部2において想定する制御対象1のモデルをイナーシャがJaの剛体機械だとすると、モデルトルクqaはモデル速度vaの微分、すなわちモデルの加速度にモデルイナーシャJaを乗じるとモデルトルクqaとなるため、モデル演算部2では例えば次の式(1)および式(2)によりモデル速度vaおよびモデルトルクqaを演算する。ただし以降ではsはラプラス演算子を表す。
【0022】
va=F(s)・vr ・・・・(1)
qa=Ja・s・F(s)・vr ・・・・(2)
【0023】
ただし上式においてF(s)は速度指令vrに対してモデル速度vaを追従させる所望の伝達特性であり、例えばローパス特性の伝達特性として設定するものである。
【0024】
次に、第1のローパスフィルタ3はモデル速度vaと実速度vmの差信号を入力し、予め設定したローパス特性(低周波数成分を抽出する)の伝達関数演算を行った信号を出力する。ここで、第1のローパスフィルタ3の遮断周波数をωf1と記述する。
【0025】
次に第1の比例制御器4は第1のローパスフィルタ3の出力を入力し、予め設定した第1の比例ゲインKp1を乗じた信号を出力し、積分制御器5は第1のローパスフィルタ3の出力を入力して予め設定した積分ゲインKiを乗じて積分した信号を出力し、低速演算部8は前記の第1の比例制御器4の出力と積分制御器5の出力の和信号を第1の誤差補償トルクqc1として演算する。すなわちPI(比例積分)演算により第1の誤差補償トルクqc1の演算を行う。また低速演算部8はモデル演算部2で演算したモデルトルクqaおよびモデル速度vaと第1の誤差補償トルクqc1の和信号を低域トルク指令qrlとして出力する。
【0026】
次に高速演算部9の動作について説明する。高速演算部9は低域トルク指令qrlとモデル速度vaと制御対象1で検出した実速度vmを入力する。また高速演算部9の内部において、第2のローパスフィルタ6はモデル速度vaと実速度vmの差信号を入力し、予め設定した遮断周波数ωf2のローパス特性の伝達関数演算を行った信号を出力する。ここで、第2のローパスフィルタの遮断周波数ωf2は第1のローパスフィルタの遮断周波数ωf1よりも大きく(高く)設定するものとする。
【0027】
次に第2の比例制御器7は第2のローパスフィルタ6の出力に予め設定した第2の比例ゲインKp2を乗じた信号を第2の誤差補償トルクqc2として出力し、高速演算部9は低域トルク指令qrlと第2の誤差補償トルクqc2の和信号をトルク指令qrとして出力し、トルク指令qrを制御対象1に入力することにより制御対象1の機械系を駆動する。
【0028】
ここで、高速演算部9は低速演算部8に比べて高速のサンプル周期で演算を行う。すなわち、実速度vmおよびトルク指令qrの値の更新周期は、モデル演算部2の出力であるモデル速度va、モデルトルクqaの更新周期より高速の周期で更新されるように演算を行う。
【0029】
この実施の形態1は以上のように構成することにより、モデル速度vaと実速度vmの誤差を第1の誤差補償トルクqc1と第2の誤差補償トルクqc2により補償することにより誤差が小さくなるように制御を行う。
【0030】
次に、この発明によって得られる効果の原理について図2に基づいて説明する。図2において(a)は従来技術を用いた後述の一巡伝達関数の周波数応答を示す。(b)はこの発明の電動機速度制御装置の後述するフィードバック部の伝達特性の周波数応答を示す。(c)はこの発明の電動機速度制御装置の一巡伝達関数の周波数応答を示す。なお、これらの周波数応答は全てゲインを折れ線近似した図で示す。
【0031】
制御対象1の機械系の剛性が低い場合は機械共振が生じ、制御対象1の伝達特性G(s)は反共振と共振を持つ特性となる。また、説明の簡単化のため電動機と機械負荷の2つの慣性が低剛性のバネで結合されているような2慣性系で考えると、電動機の慣性に対する機械負荷の慣性の比が大きい程、反共振周波数と共振周波数が離れるという特性を持つ。ここで、制御対象1に対して従来技術のようなPI演算によるフィードバックのみを行い、制御ゲインをある値に設定した場合を考える。
【0032】
すなわち、この実施の形態1の構成において、第2の比例制御器7の第2の比例ゲインKp2を0にし、第1のローパスフィルタ3の遮断周波数ωf1を無限大に大きくした場合を考えると、この場合の一巡伝達関数のゲインの周波数応答を折れ線近似で表すと図2の(a)となる。ただし、一巡伝達関数とは制御対象1の伝達特性G(s)と、制御装置のフィードバック部の伝達特性(制御装置の演算における実速度vmからトルク指令qrまでの伝達特性)を直列に接続した特性である。また図2における表示では、説明の簡単化のため積分制御器5の積分ゲインKiは小さく設定しているとして、無視して表示する。
【0033】
図2の(a)に示したように、電動機の慣性に対する機械負荷の慣性の比が大きい場合には反共振周波数と共振周波数が離れるため、一巡伝達関数のゲインは高周波数で大きくなる特性を持つ。また、制御器のゲイン設定を適切に行った場合、図2の(a)に示したように、一巡伝達関数のゲインが0[dB]と交差する交差周波数が複数表れる。
【0034】
この複数の交差周波数のうち、反共振周波数より低周波数側の交差周波数を第1の交差周波数ωc1、共振周波数より高周波数側の交差周波数を第2の交差周波数ωc2と表すと、第1の交差周波数ωc1は制御対象1に加わる外乱に対して実速度vmが収束する応答の速さ(外乱応答速度)を表し、制御器のゲインをなるべく大きくして、この第1の交差周波数ωc1を大きくすることにより、外乱抑制効果を大きくすることができる。一方で、制御系が振動を起こして発散しないように制御するためには、第2の交差周波数ωc2において、一巡伝達関数の位相遅れが小さい必要がある。
【0035】
しかしながら、制御器にはサンプル周期に起因した位相遅れが生じるため第2の交差周波数ωc2をあまり大きくすることはできず、その結果、図2の(a)に示したような単純なPI制御を用いると、第1の交差周波数ωc1も小さく設定しなければならなくなる。
【0036】
また、一巡伝達関数の高周波数領域のゲインを低減させるために従来技術で説明したPI演算によるフィードバックにローパスフィルタを付加することを考えた場合、すなわち、この実施の形態1において第2の比例制御器の第2の比例ゲインKp2を0にし、第1のローパスフィルタ3の遮断周波数ωf1を、一巡伝達関数の高周波数領域のゲインを低減するために図2の(a)における第1の交差周波数ωc1より高周波数領域を遮断するように設定したとすると、第1のローパスフィルタの遮断周波数ωf1より高周波数領域ではゲインを低減するものの、位相も遅れてしまう。
【0037】
その結果、共振周波数における一巡伝達関数のゲインのピークが0[dB]を超えれば共振周波数で制御系が振動的に発散して不安定になる現象が生じる。したがって、やはり一巡伝達関数のゲインのピークが0[dB]を超えないように一巡伝達関数のゲインを小さく設定する必要が生じ、第1の交差周波数ωc1を小さくせざるを得なくなる。
【0038】
したがって、安定な制御系で第1の交差周波数ωc1をなるべく大きく設定するためには、共振周波数における一巡伝達関数の位相遅れを大きくせずに、第1の交差周波数ωc1より高周波数領域の一巡伝達関数のゲインを小さくすることが必要とされる。
【0039】
一方、このような制御対象1に対して、この発明の電動機速度制御装置でゲインを適切に設定した場合の、フィードバック部の伝達特性(実速度vmからトルク指令qrまでの伝達特性)の周波数応答(ゲイン折れ線図)を図2の(b)に示す。また、この場合の一巡伝達関数の周波数応答(ゲイン折れ線図)を図2の(c)に示す。なお、積分ゲインKiは小さいとして無視して示している。図2の(b)に示すように、フィードバック部の伝達特性は全体的に高周波数側が小さくなるようにするとともに、単なるローパス特性でなく、共振周波数付近ではゲインがフラットに近くなるように設定することによって、共振周波数付近の位相の遅れを小さくすることが可能になり、一巡伝達関数の共振周波数付近でゲインが0[dB]より大きくなっても、安定に制御することが可能になる。
【0040】
また、第1の交差周波数ωc1と第2の交差周波数ωc2の差を小さくすることができ、サンプル周期による位相遅れが原因となって第2の交差周波数ωc2をあまり大きくできなくても、第1の交差周波数ωc1を大きくし、外乱に対する応答を速くすることが可能になる。
【0041】
更に、実際の機械系には図2に示した主要な共振周波数より更に高い周波数領域にも共振モードが存在する場合があるため、第2の交差周波数ωc2より高い周波数領域のゲインは、第2のローパスフィルタ6によって高周波数成分を低減することにより、このような高い機械共振に対する安定性を向上させることが可能である。なお、主要な機械共振より高い周波数領域に機械共振が存在しない場合には、第2のローパスフィルタ6を用いずにモデル速度vaと実速度vmとの差信号をそのまま第2の比例制御器7に入力しても良い。
【0042】
また、制御系の調整の手順としては、まず最初に第2のローパスフィルタの遮断周波数を共振周波数より高く設定した後、第2の比例ゲインKp2を制御系が安定な範囲でなるべく大きくした後、外乱に対する応答が十分に速くなければ、すなわち第1の交差周波数ωc1が小さければ、目標とする第1の交差周波数ωc1より少し大きな値に第1のローパスフィルタの遮断周波数ωf1を設定し、第1の比例ゲインKp1を大きくしていくという簡単な手順で、良好な制御系の調整を実現できる。なお、積分ゲインKiは適宜設定すればよい。
【0043】
さらに、上記で説明したようにフィードバック部の伝達特性の位相遅れは小さくする必要があるため、制御装置のサンプル周期に起因する位相遅れを小さくした方が、より広い周波数範囲の機械共振に対応することが可能になるが、上記で説明した制御系の演算を全て単一のサンプル周期で演算すると演算量が多いためサンプル周期を短くすることが難しくなる。
【0044】
しかしながら、図2の(b)に示したゲイン折れ線図における零点周波数ωzより高周波数領域のフィードバック部の伝達特性は、第2のローパスフィルタおよび第2の比例制御器によって演算する特性が支配的になるため、第2のローパスフィルタおよび第2の比例制御器を含む高速演算部9の演算のみ高速のサンプル周期で演算することによって、高周波数領域におけるサンプル周期に起因した位相遅れを小さくすることが可能になる。
【0045】
この発明の実施の形態1は上記のように構成し、第1のローパスフィルタ3と第1の比例制御器4とから構成する低速演算部8と第2のローパスフィルタ6と第2の比例制御器7とから構成する高速演算部9とから構成され、上述したように一巡伝達関数のゲインを高周波数領域を低減しながら、共振周波数で位相をなるべく遅らさないようにするため、簡単な調整で、安定性を損なうことなく外乱の抑制効果を向上させることが可能である。また、主要な機械共振より高い周波数領域に機械共振が存在する場合にも安定に制御することが可能である。
【0046】
更に第2のローパスフィルタ6と第2の比例制御器7とから構成する高速演算部9の演算を低速演算部8よりも高速のサンプル周期で演算することにより、より広い範囲の機械共振に対して安定に外乱抑制効果を向上させることが可能である。
【0047】
更にモデル演算部2を備え、モデル演算部で演算したモデル速度vaとモデルトルクqaとを演算し、モデル速度vaと実速度vmとの差信号に基づいて演算した第1の誤差補償トルクqc1とモデルトルクqaとの和信号を低域トルク指令qrlとし、モデル速度vaと実速度vmとの差信号に基づいて演算した第2の誤差補償トルクqc2と低域トルク指令qrlとの和信号をトルク指令qrとする構成としているので、制御対象1が剛体に近似されるような低周波数領域では速度指令vrに対してモデル速度vaと実速度vmとの誤差を小さく制御することが可能である。
【0048】
実施の形態2.
図3にこの発明の実施の形態2による電動機速度制御装置の構成を示す。図において、13は第1のローパスフィルタ、14は第1の比例制御器、15は積分制御器、16は第2のローパスフィルタ、17は第2の比例制御器、18は低速演算部、19は高速演算部である。なお、第1の比例制御器14および積分制御器15が第1の制御演算部を構成し、第2のローパスフィルタ16および第2の比例制御器17が第2の制御演算部を構成する。
【0049】
次に動作を説明する。まず、第1のローパスフィルタ13、第1の比例制御器14、積分制御器15からなる低速演算部18の動作について説明する。低速演算部18は速度指令vrと実速度vmを入力する。次に低速演算部18の内部において第1のローパスフィルタ13は実速度vmを入力し、予め設定したローパス特性の伝達関数演算を行った信号を出力する。
【0050】
次に第1の比例制御器14は第1のローパスフィルタ13の出力を入力し、予め設定した第1の比例ゲインKp1を乗じた信号を出力する。次に積分制御器15は速度指令vrと第1のローパスフィルタ13の出力との差信号を入力して予め設定した積分ゲインKiを乗じて積分した信号を出力し、低速演算部18は第1の比例制御器14の出力と積分制御器15の出力との差信号を低域トルク指令qrlとして出力する。
【0051】
ここで、低速演算部18は実速度vmに第1のローパスフィルタ13を介した信号を用い、I−P制御と一般的に呼ばれる制御を行っていることになる。
【0052】
次に高速演算部19は実速度vmと低域トルク指令qrlを入力し、高速演算部19の内部において第2のローパスフィルタ16は実速度vmを入力してローパス特性の伝達関数演算を行った信号を出力し、第2の比例制御器17は第2のローパスフィルタ16の出力に予め設定した第2の比例ゲインKp2を乗じた信号を出力し、高速演算部19は第2の比例制御器17の出力と低域トルク指令qrlとの差信号をトルク指令qrとして出力する。そして高速演算部19はトルク令qrを制御対象1に入力することにより、制御対象1の機械系を駆動する。
【0053】
また、高速演算部19の演算のサンプル周期は低速演算部18の演算のサンプル周期よりも高速に演算を行う。
【0054】
なお、速度指令vrを積分制御器15の入力側に加える代わりに図4に示すように、第1のローパスフィルタ13の入力を速度指令vrと実速度vmの差信号としてもよい。これは低速演算部18においてローパスフィルタを付加したPI制御を行うことに相当する。この場合には、低速演算部18では第1の比例制御器14の出力と積分制御器15の出力との和信号が求められ、これを低域トルク指令qrlとして出力し、高速演算部19では第2の比例制御器17の出力と低域トルク指令qrlとの和信号をトルク指令qrとして出力する。
【0055】
この実施の形態2は以上のように構成しているため、実施の形態1におけるモデル演算部2を備えておらず、I−P制御に基づいた簡単な構成としているため、速度指令vrに対する実速度vmの応答をあまり速く設定することはできない。しかしながらフィードバック部の伝達特性(制御装置の演算における実速度vmからトルク指令qrまでの伝達特性)は実施の形態1と全く同様であるため、実施の形態1と全く同様に外乱抑制効果を向上させる効果がある。
【0056】
【発明の効果】
以上のようにこの発明の第1の発明によれば、電動機の回転速度である実速度を和の要素に含む信号を入力して低周波数成分をろ過した信号を出力する第1のローパスフィルタと、少なくとも前記第1のローパスフィルタの出力を比例倍した信号と電動機速度制御のための速度指令に基づく信号との和または差に基づき低域トルク指令を演算する第1の制御演算部と、前記低域トルク指令と実速度を入力し、少なくとも前記実速度の比例倍に基づく信号と前記低域トルク指令との和または差に基づき前記トルク指令を演算する第2の制御演算部を備えることを特徴とする電動機速度制御装置としたので、一巡伝達関数の周波数応答を制御対象の共振周波数付近の位相遅れが小さいまま高周波数のゲインを低減でき、簡単な調整で、外乱に対する応答を速く設定して外乱抑制効果を向上させることが可能である。
【0057】
また第2の発明によれば第1の発明において、前記第2の制御演算部は、前記実速度を和の要素に含む信号の低周波数成分をろ過した信号を出力する第2のローパスフィルタを備え、少なくとも前記低域トルク指令と前記第2のローパスフィルタの出力を比例倍した信号との和または差に基づき前記トルク指令を演算することを特徴とする電動機速度制御装置としたので、主な機械共振より高い周波数領域に機械共振が存在しても安定に外乱抑制効果を向上させることが可能である。
【0058】
また第3の発明によれば第1の発明において、前記速度指令を入力し、想定した制御対象のモデルの速度であるモデル速度と前記モデルのトルクであるモデルトルクを前記モデル速度が前記速度指令に追従するように演算して出力するモデル演算部をさらに備え、前記第1のローパスフィルタが、前記モデル速度と前記実速度の差信号を入力して低周波数成分をろ波した信号を出力し、前記第1の制御演算部が、前記第1のローパスフィルタの出力を比例倍した信号とモデルトルクの和に基づき低域トルク指令を演算し、前記第2の制御演算部が、前記低域トルク指令と前記モデル速度と前記実速度を入力し、前記モデル速度と前記実速度の差信号の比例倍に基づく信号と前記低域トルク指令との和により前記トルク指令を演算する、ことを特徴とする電動機速度制御装置としたので、一巡伝達関数の周波数応答を制御対象の共振周波数付近の位相遅れが小さいまま高周波数のゲインを低減でき、外乱に対する応答を速く設定して外乱抑制効果を向上させることが可能であるとともに、速度指令に対する実速度の応答を速く、高精度に制御することが可能である。
【0059】
また第4の発明によれば第3の発明において、前記第2の制御演算部は、前記モデル速度と前記実速度の差信号の低周波数成分をろ過した信号を出力する第2のローパスフィルタを含み、少なくとも前記低域トルク指令と前記第2のローパスフィルタの出力を比例倍した信号との和に基づき前記トルク指令を演算することを特徴とする電動機速度制御装置としたので、主な機械共振より高い周波数領域に機械共振が存在しても安定に外乱抑制効果を向上させることが可能であるとともに、速度指令に対する実速度の応答を速く、高精度に制御することが可能である。
【0060】
また第5の発明によれば第1ないし4のいずれかの発明において、前記第2の制御演算部は前記第1の制御演算部よりも高速のサンプル周期で演算を行うことを特徴とする電動機速度制御装置としたので、高周波数領域においてサンプル周期に起因した位相遅れを小さくすることができ、より広い周波数範囲の機械共振に対して安定に外乱抑制効果を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による電動機速度制御装置の構成を示す図である。
【図2】 本発明および従来技術の制御系の周波数応答を説明するための図である。
【図3】 この発明の実施の形態2による電動機速度制御装置の構成を示す図である。
【図4】 この発明の実施の形態2による他の電動機速度制御装置の構成を示す図である。
【図5】 従来の電動機速度制御装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 制御対象、2 モデル演算部、3 第1のローパスフィルタ、4 第1の比例制御器、5 積分制御器、6 第2のローパスフィルタ、7 第2の比例制御器、8 低速演算部、9 高速演算部、13 第1のローパスフィルタ、14第1の比例制御器、15 積分制御器、16 第2のローパスフィルタ、17第2の比例制御器、18 低速演算部、19 高速演算部。

Claims (5)

  1. 電動機の回転速度である実速度を和の要素に含む信号を入力して低周波数成分をろ過した信号を出力する第1のローパスフィルタと、
    少なくとも前記第1のローパスフィルタの出力を比例倍した信号と電動機速度制御のための速度指令に基づく信号との和または差に基づき低域トルク指令を演算する第1の制御演算部と、
    前記低域トルク指令と実速度を入力し、少なくとも前記実速度の比例倍に基づく信号と前記低域トルク指令との和または差に基づき前記トルク指令を演算する第2の制御演算部を備えることを特徴とする電動機速度制御装置。
  2. 前記第2の制御演算部は、前記実速度を和の要素に含む信号の低周波数成分をろ過した信号を出力する第2のローパスフィルタを備え、少なくとも前記低域トルク指令と前記第2のローパスフィルタの出力を比例倍した信号との和または差に基づき前記トルク指令を演算することを特徴とする請求項1に記載の電動機速度制御装置。
  3. 前記速度指令を入力し、想定した制御対象のモデルの速度であるモデル速度と前記モデルのトルクであるモデルトルクを前記モデル速度が前記速度指令に追従するように演算して出力するモデル演算部をさらに備え、
    前記第1のローパスフィルタが、前記モデル速度と前記実速度の差信号を入力して低周波数成分をろ波した信号を出力し、
    前記第1の制御演算部が、前記第1のローパスフィルタの出力を比例倍した信号とモデルトルクの和に基づき低域トルク指令を演算し、
    前記第2の制御演算部が、前記低域トルク指令と前記モデル速度と前記実速度を入力し、前記モデル速度と前記実速度の差信号の比例倍に基づく信号と前記低域トルク指令との和により前記トルク指令を演算する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の電動機速度制御装置。
  4. 前記第2の制御演算部は、前記モデル速度と前記実速度の差信号の低周波数成分をろ過した信号を出力する第2のローパスフィルタを含み、少なくとも前記低域トルク指令と前記第2のローパスフィルタの出力を比例倍した信号との和に基づき前記トルク指令を演算することを特徴とする請求項3に記載の電動機速度制御装置。
  5. 前記第2の制御演算部は前記第1の制御演算部よりも高速のサンプル周期で演算を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電動機速度制御装置。
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