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JP4424348B2 - 音像定位装置 - Google Patents
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Description

本発明は、周囲から人間の耳までの空間伝搬特性を模擬した頭部伝達関数を利用して信号処理した後方用チャンネルの音声を前方のスピーカから出力することにより、後方のバーチャル音像定位を実現する音像定位装置に関する。
従来、周囲から人間の耳までの空間伝搬特性を模擬したモデル頭部伝達関数(以下頭部伝達関数と略す。)を用いて、さまざまな音像定位を実現する装置が開示されている。また、実際に多チャンネルのスピーカを配置するのが大掛かりで実際的でないことから、この空間伝搬特性をキャンセルするクロストークキャンセルを行い、さらに後方の音像定位を付加することにより、後方のバーチャル音像定位を実現する音像定位装置が提案されている(特許文献1参照。)。このクロストークキャンセルは、リア定位の付加をする前提として必要であると考えられている。即ち、前述の伝搬特性をキャンセルした上でリア定位の付加をすることが、正確な音像定位を実現する上で必要であると考えられている。
このクロストークキャンセルは、前方スピーカからの伝搬特性を模擬した頭部伝達関数の逆変換を行って、左前のスピーカの音声を左耳に入れ、右前のスピーカの音声を右耳に入れるような信号処理を行うものであり、あたかもヘッドホンで聴取するような効果を与えるものである。
特許文献1では、その図19に示すようにクロストークキャンセルをする方法が図示されている。
特開2001−86599号公報
しかしながら、クロストークキャンセルは、一般に逆変換の演算を必要としており、処理が大掛かりである問題があった。また、音声が耳までの空間伝搬する様子は、顔の幅等によって回折する様子が異なることから個人差がある。その個人差によって、後方から聞こえるという後方のバーチャル音像定位の効果を全く奏しない場合もあった。また、この音像定位の効果は、スピーカの設置角度、顔の向きに敏感に左右され、ピンポイント的にしか効果を奏しない問題があった。
そこで、本発明は、後方のバーチャル音像定位を実現する音像定位装置において、簡易な演算によって、より確実に後方のバーチャル音像定位を実現することを目的とする。
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。
(1)本発明は、
前方左に設けた実スピーカFLから左耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をLD、
前記実スピーカFLから右耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をLC、
前方右に設けた実スピーカFRから左耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をRC、
前記実スピーカFRから右耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をRD、
聴取者の頭の中心を通る、聴取者の左右方向の中心線をL、
前記中心線Lに関して前記実スピーカFLと線対称に設定した仮想スピーカVLから左耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をRLD、
前記仮想スピーカVLから右耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をRLC、
前記直線Lに関して前記実スピーカFRと線対称に設定した仮想スピーカVRから左耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をRRC、
前記仮想スピーカVRから右耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をRRDとして、
後方左の音声入力チャンネルの音声信号に、RLDをLDで除算した特性を持つフィルタをかけて出力するLダイレクト出力部と、
後方左の音声入力チャンネルの音声信号に、RLCをLCで除算した特性を持つフィルタをかけて出力するLクロス出力部と、
後方右の音声入力チャンネルの音声信号に、RRCをRCで除算した特性を持つフィルタをかけて出力するRクロス出力部と、
後方右の音声入力チャンネルの音声信号に、RRDをRDで除算した特性を持つフィルタをかけて出力するRダイレクト出力部と、
前記Lダイレクト出力部の出力信号と、前記Rクロス出力部の出力信号と、の差分信号を前方左の音声入力チャンネルの音声信号に加算して出力する第1の加算部と、
前記Rダイレクト出力部の出力信号と、前記Lクロス出力部の出力信号と、の差分信号を前方右の音声入力チャンネルの音声信号に加算して出力する第2の加算部と、を備えた音像定位装置である。
本発明のLダイレクト出力部、Lクロス出力部、Rクロス出力部、Rダイレクト出力部によれば、後方用の音声入力チャンネルの音声信号を加工している。この音声信号のフィルタをかける計算は、伝達関数を除算した特性を持つフィルタをかけているだけなので、簡易な演算により、音像定位装置を構成できる。
また、本発明の装置によれば、前方のスピーカから出力されているにもかかわらず、従前の理論に沿った逆行列計算によるクロストークキャンセルによる信号処理よりも確実に後方から音声が出力されているように知覚されることが、発明者の実験で確かめられている。本発明の装置が理論に沿った計算よりも良い結果が得られるのは、従前の理論はあくまで、1つの頭部伝達関数の観測結果のモデルを用いたものであり、実際の聴取者と異なるので、必ずしも本来の理論どおりに動作しなかった点が挙げられる。したがって、本発明が、この理論上の計算よりも良い結果が出たとしても、自然法則に反するものではない。
また、本発明によれば聴取者の顔の向きに敏感にならず、前方に設置した実スピーカに対して、聴取者が前後に移動したとしても後方から音声が出力されている感覚を損なわないことが発明者の実験により確かめられている。このことは、本発明は、人間の「後方から音声が出力されているように知覚される」という感覚のうち、音源の方向に左右されにくいところを巧みに捕らえているものと推測される。
ここで、(1)の構成について例を挙げると、後述する図1のリア定位付加部131は、本発明の各出力部と加算部を図示したものに相当する。ただし本発明を限定するものではない。
なお、本発明で、RLDをLDで除算した特性とは、周波数ごとにRLDのゲインをLDのゲインで除算したゲイン特性である。Lクロス出力部、Rクロス出力部、Rダイレクト出力部も同様である。
実スピーカとは、実際に設置するスピーカを言い、実際に設置しない仮想スピーカと反対の概念である。
(2)本発明は、
前記フィルタ演算部は、前記スピーカおよび前記仮想スピーカは、いずれも聴取者の前方方向に関して左右対称に設定すると共に、前記モデル頭部伝達関数をLD=RD、LC=RC、RLD=RRD、RLC=RRCとした。
このように構成すれば、頭部伝達関数を左右で同一にすることができるので(1)の構成よりもさらに簡略化が期待できる。また、左右の頭部伝達関数が全く同じなので、頭部伝達関数を用いたフィルタに複雑なピーク、ディップが立つことが軽減され、聴取者(ダミーヘッド)100の位置の変化に対して、より一層ロバストになると推測され、(1)にまして後方から音声が出力されているという定位感が向上するものと考えられる。
本発明によれば、後方用音声入力チャンネルの音声を前方のスピーカから出力することによって、より確実に後方のバーチャル音像定位を実現する。また、聴取者の顔の向きに敏感にならず、また、スピーカに対して、聴取者が前後に移動したとしても後方から音声が出力されている感覚を損なわない。
<本実施形態の概略>
図1〜図3を用いて、本実施形態の音像定位装置の概略を説明する。図1は、本実施形態の装置の内部構成図である。図1右に示すように、聴取者(ダミーヘッド)100の聴取者の顔の向き103の斜め前方に実際にLchスピーカFL、RchスピーカFRを設けることを想定する。出力系統は、DSP10の左に示すように、デコーダ14でデコードされた前方音声入力チャンネルLch、Rchが出力される。また、後方左右の音声入力チャンネルLSch、RSchがポストプロセッシング用DSP13に入力されている。これらの音声入力チャンネルは、リア定位付加部131で信号処理されたものが加算部135A、Bで前方音声入力チャンネルLch、Rchに加算される。これにより、後方の仮想スピーカVL、VRの音像定位を実現する(以下、これを「リア定位の付加」という。)。なお、後方のスピーカVL、VRを仮想スピーカとして音像定位させているのは、マルチチャンネルの音声を実スピーカで出力するのは大掛かりであり、必ずしも実際的でないからである。
このような後方の仮想の音像定位を実現するために、本実施形態の装置は、これらスピーカから両耳までの伝搬特性を模擬したモデル頭部伝達関数を加工したものを用いる。本実施形態の装置は、リア定位付加部131に特徴がある。従来形態の装置は、スピーカFL、FRから両耳M1、M2までの伝搬特性をキャンセルするクロストークキャンセル補正回路(特許文献1参照。)を設けているが、本実施形態の装置はリア定位付加部131で同時にこのクロストークキャンセル補正に相当するものを処理する。
図2(仮想音源の設定方法等を表す図)に示すように、本実施形態の装置は、仮想スピーカVL、VRは、前方に実際に設置するスピーカFL、FRと、中心線104に関して線対称な位置に設定する。
図3に示すように、リア定位付加部131に用いるフィルタとして、前方のスピーカFL、FRから両耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数LD(ω)、LC(ω)のゲインを(ωは角振動数とする。以下同じ。)、後方の仮想スピーカVL、VRから両耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数RearLD(ω)、RearRD(ω)とのゲインを角振動数ωごと、即ち周波数ごとに除算した特性を有するフィルタをインパルス応答に変換したものを用いる。リア定位付加部131は、このフィルタを後方用音声入力チャンネルにかけて出力する。このようにゲインを除算する計算をしたフィルタを畳み込むことにより、前方のスピーカFL、FRから両耳M1、M2までの伝搬特性をキャンセルするクロストークキャンセル類似の効果が生じていると推測される。
<本実施形態の音像定位装置の構成>
図1を用いて、本実施形態の装置の音像定位装置について説明する。図1は、前述のとおり、本実施形態の装置の内部構成図である。本実施形態の音像定位装置は、各種のソースを入力してこの入力を加工するDSP10を備える。また本実施形態の音像定位装置は、コントローラ32と、ユーザインターフェース33と、メモリ31を備える。さらに本実施形態の音像定位装置は、DSP10のディジタル音声信号出力をアナログ信号に変換するD/A変換器22と、D/A変換器22の音声出力の音量を調整する電子ボリューム41と、電子ボリューム41を通した音声信号を増幅するパワーアンプ42とを備える。また、本実施形態の音像定位装置外にスピーカFL、FRを備え、パワーアンプ42の出力を音声に変換して聴取者(ダミーヘッド)100に音声を出力する。以下それぞれの構成を説明する。
図1に示すDSP10は、DSP(Digital Signal Processor)で構成し、入力信号をデコードするデコーダ14とその出力信号を加工するポストプロセッシング用DSP13を備える。デコーダ14は、各種入力、例えばディジタル音声信号のビットストリーム(bit stream)、マルチPCM(multi PCM)、マルチビットストリーム(multi bit stream)を入力してデコードする。デコーダ14は、サラウンド音声入力、即ち、前方用左右音声入力チャンネルLch、Rch、前方用センタチャンネルCch、後方用左右音声入力チャンネルLSch、RSchを出力する。
図1のポストプロセッシング用DSP13は、後方用音声入力チャンネルにリア定位付加部131と加算部135A、Bとを少なくとも備えており、デコーダ14で入力したサラウンド音声入力を加工して出力する。ここで、本実施形態の装置では、図1に示すように実際に設置するスピーカは、前方のスピーカFL、FRのみである。DSP10は、後方のスピーカVL、VRを仮想スピーカとして、加算部135A、Bにより後方用チャンネルの音声入力をスピーカFL、FRの音声出力に合成して音像定位させる。また、センタチャンネル用の音声信号入力Cchは、Lch、Rchに振り分けて、加算部135A、Bにより合成する。このようにミックスダウンするのは、前述のとおり、マルチチャンネルの音声を実スピーカで出力するのは大掛かりであり、必ずしも実際的でないからである。
リア定位付加部131は、後方用音声入力チャンネルLSch、RSchを仮想スピーカとして音像定位させるため、フィルタ131LD、LC、RC、RDと加算部131L、131Rを備える。フィルタ131LD、LC、RC、RDの機能部は、実装上、DSP内部または外部のROM31と、畳み込み演算の計算部で構成する。このROM内部にFIRフィルタのパラメータが格納され、この畳み込み演算の計算部は、DSP内部に後方用左右音声入力チャンネルLsch、RschにこのROMから読み取ったFIRフィルタを畳み込み演算する。加算部131L、131Rは、フィルタ131LD、LC、RC、RDの出力を加算する。
リア定位付加部131のフィルタ131LD、LC、RC、RDは、後方用音声入力チャンネルLSch、RSchを仮想スピーカとして音像定位させるため、後方の仮想スピーカから両耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数のゲインを前方のスピーカFL、FRから両耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数で除算(この除算は角振動数ωごと、即ち周波数ごとに除算するものとする。)した特性を有するフィルタを用いる(詳細は図3を用いて後述する。)。また、図1に示すように、フィルタ131LC、RCの出力は−1倍して出力する。即ち、フィルタ131LD、RDの出力に対して逆相にする。
図1の加算部131L、131Rの機能ブロックは、フィルタ131LD、LC、RC、RDの出力を合成する計算部を備え、その出力を加算部135A、135Bに出力する。なお、前述したフィルタ131LC、RCの出力に−1倍する計算は、加算部131L、131Rで減算する計算を行なってもよい。
図1の加算部135A、135Bはリア定位付加部131の出力信号とセンタチャンネル用音声信号入力Cchを合成するため、信号の出力を加算する計算部を備え、この計算部は、その出力をD/A変換器22に出力する。
図1のコントローラ32は、ユーザインターフェース33の指示を受けて、ポストプロセッシング用DSP13内部の動作を制御する。メモリ31は、ポストプロセッシング用DSP13を制御するための各種の制御データが格納されている。例えば、リア定位付加部131のフィルタのFIRパラメータを記憶する。ユーザインターフェース33は、操作子および、GUIを備え、コントローラ32に指示を送る。
図1のD/A変換器22は、D/A変換器用ICを備え、ディジタル音声信号をアナログ信号に変換する。
電子ボリューム41は、電子ボリューム制御用IC等で構成し、D/A変換器22の出力の音量を調整して、パワーアンプ42に出力する。パワーアンプ42は、電子ボリューム41のアナログ出力を増幅して、スピーカFL、FRに出力する。
<本実施形態の装置の仮想音源の設定>
図2を用いて、本実施形態の装置の仮想音源の設定について説明する。図2は、この設定方法と、本実施形態の装置で用いる頭部伝達関数の定義を示した図である。前述のとおり、本実施形態の装置では後方用音声入力チャンネルは仮想音源として音像定位させる。図2に示すように、本実施形態では、仮想スピーカVL、VRを、スピーカFL、FRと中心線104に関して線対称な位置に設定する。ここで、中心線104は、聴取者100の中心を通り、聴取者100の左右方向である。
図2に示すように、仮想スピーカVL、VRを、聴取者の左右方向の中心線104に関してスピーカFL、FRと線対称な位置に設定すれば、以下のメリットがある。即ち、前方のスピーカFL、FR、後方の仮想スピーカVL、VRからの伝搬距離がそれぞれ等しいので、前後双方からの伝搬時間差異による位相差、伝搬距離の差異による音量差はほぼ相等しくなる。音声が入射する角度が前後で等しいので、頭部の干渉具合の差異も小さくできる。その結果、リア定位付加部131のフィルタに複雑なピーク、ディップが立つことが軽減され、聴取者(ダミーヘッド)100の位置の変化に対してロバストになると推測される。
本実施形態の装置では、さらに、聴取者の顔の向き103の直線に関して、左右の前方のスピーカFL、FRおよび後方の仮想スピーカVL、VRをそれぞれ互いに対称の位置に設定するので、左右の頭部伝達関数を同じにすることができる。これにより、一層、リア定位付加部131のフィルタを通した信号の周波数特性に複雑なピーク、ディップが立つことが軽減され、聴取者(ダミーヘッド)100の位置の変化に対してロバストになると推測される。
<本実施形態の装置のリア定位付加部のフィルタの設定>
前述の図2と、図3、図4を用いて、リア定位付加部131のフィルタの設定方法について説明する。
図2に示すように、前方のスピーカFL、FR、後方の仮想スピーカVL、VRから両耳M1、M2までの頭部伝達関数を定義する。図2に示すように、スピーカから近い側の耳へ伝搬する経路の頭部伝達関数をD(Direct)、スピーカから遠い側の耳へ伝搬する経路の頭部伝達関数をC(Cross)という添え字をつけて表すことにする。また、後方から伝搬する経路の頭部伝達関数をRearという添え字をつけて表すことにする。さらに、斜め左から伝搬される頭部伝達関数をL(Left)、右から伝搬されるものをR(Right)として表す。例えば、左斜め後ろの102LCの経路の頭部伝達関数をRearRC(ω)とする(前述のとおり、ωは角振動数とする。以下同じ。)。なお、いずれもこれらは冒頭のとおりモデル頭部伝達関数である。このモデル頭部伝達関数は、実測データが公表されており、そのデータを用いることができる。
図3を用いて、リア定位付加部131のフィルタの具体的な値について説明する。図3は、この設定について示した図であり、図1のリア定位付加部131の部分のみ拡大している。図3に示すように、リア定位付加部131の各フィルタは、聴取者の左右方向の中心線104に関して対称同士の位置から伝搬される頭部伝達関数のゲインの比をとったものである(図2の頭部伝達関数の定義参照。)。ここで、図3のフィルタ131の内部の”/”記号は角振動数それぞれにおけるゲインの除算を表している(なお、これにより除算した値は、dB値(対数表記)では、dB値の差の値となる。)。図3のフィルタ131LD、LC、RC、RDは周波数特性で表しているが、実際は、入力信号はディジタル音声信号として時系列データが入力されるから、このゲインの差の周波数特性をFIRフィルタに変換したものを用いて、このフィルタを入力信号に畳み込み演算する。
なお、図2で、聴取者の顔の向き103の線に関して対称に、仮想音源とスピーカFL、FRの位置を設定すれば、頭部伝達関数は左右対称とみなすことができるから、図3のフィルタ131LDとフィルタ131RD、フィルタ131LCと131RCはそれぞれ同じになる。
図4を用いて、リア定位付加部131のフィルタの具体例を示す。図4は、この具体例を示した図である。図4の例では、いずれも聴取者の顔の向き103(図3参照。)の線に関して対称に、スピーカFL、FR、仮想音源VL、VRの位置を設定した場合のフィルタを示しているので、フィルタ131LDと131RD、フィルタ131LCと131RCは、それぞれ同じ周波数特性となる。図4(A)は、フィルタ131LD、131RDを曲線53で表している。図4(B)は、フィルタ131LC、131RCを曲線56で表している。
図4の例ではスピーカの設定角度は、前方のFL、FRが聴取者の顔の向き103から30度、後方の仮想スピーカVL、VRが150度となっている。このように設定すると、スピーカFL、FRと仮想音源VL、VRは、図2で示した中心線104に関して線対称となる。
図4(A)に示すように、曲線53で表したフィルタ131LDと131RDの周波数応答は、曲線51で表した頭部伝達関数LD(ω)、RD(ω)(LD(ω)=RD(ω))と、曲線52で表した頭部伝達関数RearLD(ω)、RearRD(ω)(RearLD(ω)=RearRD(ω))との周波数応答のゲインの除算(この除算は、dB値(対数表記)では、dB値の差の値となる。)としている。図4(B)のクロス方向のフィルタ131LCと131RC(曲線56で図示。)についても、同様に曲線54と曲線55のゲインの除算となっている。なお、これらの頭部伝達関数は、上述のスピーカの設置角度に対応したものを用いる。
図4で示したフィルタの実装について説明する。図4で示したようなゲインの除算の値を計算して、工場設定値として、予めリア定位付加部131のフィルタを決定する。そして、図1のメモリ31にFIRのフィルタのパラメータとして格納しておく。このパラメータは、複数パターンの聴取者の顔の向き103からの回転角度に対応してフィルタを設定してもよい。例えば、ユーザインターフェース33から角度をユーザの設置したスピーカの設置角度に合わせて選択できるようにする。そして、コントローラ32は、リア定位付加部131の制御パラメータとしてこの角度に対応するフィルタ係数を読み出して、リア定位付加部131に指示する。リア定位付加部131の各フィルタは、上述図1で説明したとおり、このFIRパラメータに基づいて、後方用音声入力チャンネルLSch、RSchの音声信号にこのFIRフィルタを畳み込み演算をする。
本実施形態の装置によれば、前方のスピーカから出力されているにもかかわらず、逆行列計算によるクロストークキャンセルによる信号処理よりも、確実に後方から音声が出力されているように知覚されることが発明者の実験で確かめられている。なお、前述の除算の計算により、前方のスピーカFL、FRから両耳M1、M2までの伝搬特性をキャンセルするクロストークキャンセル類似の効果が生じていると推測される。
なお、請求項1の発明の別表現として以下の構成が考えられる。
(A)本発明は、
後方左右の音声入力チャンネルの音声信号列をそれぞれLSch、RSchとして、
伝達関数LD(z)、LC(z)、RC(z)、RD(z)として行列を用いた以下の式、
OutputL=LD(z)×LSch−RC(z)×RSch
OutputR=−LC(z)×LSch+RD(z)×RSch
(「×」は畳み込み演算、「+」は、加算演算とする。)
の演算を用いて、畳み込み演算および加算演算をするフィルタ演算部と、
前方左右の音声入力チャンネルの音声信号そのまま、またはこれを信号処理した音声信号をLch、Rchとして、前記フィルタ演算部の演算結果であるOutputL、OutputRの出力を前記Lch、Rchにそれぞれに加算する加算部と、を備え、
角振動数をωとして、
実際に設置することを想定した前方左のスピーカから左右の耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をLD(ω)、LC(ω)、実際に設置することを想定した前方右のスピーカから左右の耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をRC(ω)、RD(ω)として、
聴取者に関して、前記前方左右のスピーカと、それぞれ前後対称となる後方の位置に仮想スピーカを想定し、後方左の前記仮想スピーカから左右の耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をVLD(ω)、VLC(ω)、後方右の前記仮想スピーカから左右の耳までの空間伝搬を模擬したモデル頭部伝達関数をVRC(ω)、VRD(ω)として、
前記フィルタ演算部は、伝達関数LD(z)、LC(z)、RC(z)、RD(z)として、それぞれRLD(ω)をLD(ω)で除したゲイン比、RLC(ω)をLC(ω)で除したゲイン比、RRC(ω)をRC(ω)で除したゲイン比、RRD(ω)をRD(ω)で除したゲイン比の周波数応答をインパルス応答に変換したものを用いる音像定位装置。
本実施形態の音像定位装置の内部構成図 本実施形態の音像定位装置の仮想音源の設定方法と、本実施形態の装置で用いる頭部伝達関数の定義を示した図 本実施形態の音像定位装置のリア定位付加部のフィルタの設定方法を表した図 本実施形態の音像定位装置のリア定位付加部のフィルタの実施例を示す図
符号の説明
1−音像定位装置
10−DSP
13−ポストプロセッシング用DSP
131−リア定位付加部
131LD、LD、RC、RD−フィルタ
131L、R−加算部、135A〜D−加算部
14−デコーダ
22−D/A変換器
31−メモリ
32−コントローラ
33−ユーザインターフェース
41−電子ボリューム
42−パワーアンプ
100−聴取者(ダミーヘッド)
103−聴取者の顔の向き
104−中心線
FL、FR−スピーカ
VL、VR−仮想スピーカ
M1−左の耳
M2−右の耳

Claims (2)

  1. 前方左に設けた実スピーカFLから左耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をLD、
    前記実スピーカFLから右耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をLC、
    前方右に設けた実スピーカFRから左耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をRC、
    前記実スピーカFRから右耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をRD、
    聴取者の頭の中心を通る、聴取者の左右方向の中心線をL、
    前記中心線Lに関して前記実スピーカFLと線対称に設定した仮想スピーカVLから左耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をRLD、
    前記仮想スピーカVLから右耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をRLC、
    前記直線Lに関して前記実スピーカFRと線対称に設定した仮想スピーカVRから左耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をRRC、
    前記仮想スピーカVRから右耳までの空間伝搬を模擬した頭部伝達関数をRRDとして、
    後方左の音声入力チャンネルの音声信号に、RLDをLDで除算した特性を持つフィルタをかけて出力するLダイレクト出力部と、
    後方左の音声入力チャンネルの音声信号に、RLCをLCで除算した特性を持つフィルタをかけて出力するLクロス出力部と、
    後方右の音声入力チャンネルの音声信号に、RRCをRCで除算した特性を持つフィルタをかけて出力するRクロス出力部と、
    後方右の音声入力チャンネルの音声信号に、RRDをRDで除算した特性を持つフィルタをかけて出力するRダイレクト出力部と、
    前記Lダイレクト出力部の出力信号と、前記Rクロス出力部の出力信号と、の差分信号を前方左の音声入力チャンネルの音声信号に加算して出力する第1の加算部と、
    前記Rダイレクト出力部の出力信号と、前記Lクロス出力部の出力信号と、の差分信号を前方右の音声入力チャンネルの音声信号に加算して出力する第2の加算部と、を備えた音像定位装置。
  2. 前記フィルタ演算部は、前記スピーカおよび前記仮想スピーカは、いずれも聴取者の前方方向に関して左右対称に設定すると共に、前記モデル頭部伝達関数をLD=RD、LC=RC、RLD=RRD、RLC=RRCとした請求項1に記載の音像定位装置。
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