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JP4457533B2 - リチウム二次電池 - Google Patents
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JP4457533B2 - リチウム二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムの吸蔵・脱離現象を利用したリチウム二次電池に関し、詳しくは、水溶液からなる電解液を含んで構成されるリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウムの吸蔵・脱離現象を利用したリチウム二次電池は、高エネルギー密度であることから、携帯電話、パソコン等の小型化に伴い、通信機器、情報関連機器の分野で広く普及するに至っている。また、自動車の分野においても、資源問題、環境問題から電気自動車の開発が急がれており、この電気自動車用の電源としても、リチウム二次電池が検討されている。
【0003】
現在実用化されているリチウム二次電池は、一般に、正極活物質にリチウム遷移金属複合酸化物を用いた正極と、負極活物質に炭素材料等を用いた負極と、リチウム塩を有機溶媒に溶解した非水系電解液とから構成されており、4V級の高い電圧を有する二次電池である。
【0004】
しかし、上述のリチウム二次電池は、電解液に非水系の有機溶媒を用いており、その安全性が問題となる。また、例えば、過充電状態に至った場合や、高温環境下にさらされた場合には、安全性を充分に確保することが困難となる場合がある。特に、自動車等の動力用電源としての二次電池は、大型であって、使用する有機溶媒の量が多いことに加え、使用温度等、過酷な条件下での使用が予想されるため、より安全性が問題となる。
【0005】
また、電池内にわずかでも水分が存在すると、水の電気分解反応によるガスの発生、水とリチウムとの反応によるリチウムの消費、電池構成材料の腐食等の種々の問題が生じる。このため、リチウム二次電池の製造においては、徹底したドライ環境が必要とされ、水分を完全に除去するための特殊な設備と多大な労力を要し、このことが、電池のコストを引き上げる一因となっている。
【0006】
一方、電解液に水溶液を用いた水系リチウム二次電池では、上記の問題は基本的に発生しない。また、一般に、水溶液は非水溶液に比べ導電性が良いため、電池の反応抵抗も減少し、電池の出力特性、レート特性は向上する。しかし、水系リチウム二次電池は、水の電気分解反応が起こらない電位範囲で作動させることが必要であり、通常、水系リチウム二次電池の電圧は、非水系のそれと比較して低くならざるを得ない。
【0007】
したがって、水系リチウム二次電池では、水の電気分解により酸素や水素が発生しない電位範囲において、可逆的にリチウムイオンの吸蔵・脱離が可能であり、かつ水溶液中で安定な活物質を用いることが必要となる。
【0008】
この水系リチウム二次電池の例として、特表平9−508490号公報には、正極活物質としてLiMn24等を、負極活物質としてLiMn24、VO2等を用いた電池が開示されている。また、特開平12−77073号公報には、正極活物質としてLiCoO2、Li(Ni,Co)O2、LiMn24等を、負極活物質としてLiV38等を用いた電池が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者が追試したところ、正極活物質であるLiCoO2、Li(Ni,Co)O2、LiMn24等は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・脱離する電位が高すぎて、水の電気分解反応が起こらない電位範囲において容量を取り出すことが困難であることがわかった。すなわち、水系リチウム二次電池において、充分な容量を取り出すことのできる正極活物質は見出されていなかった。
【0010】
一方、負極活物質であるLiMn24は可逆性に乏しく、また、VO2、LiV38はリチウムイオンを吸蔵・脱離する電位が比較的高く、正極電位に近いため、充分な電圧を確保することができないという問題がある。
【0011】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、電解液に水溶液を用いた水系リチウム二次電池において、充分な容量を取り出すことのできる正極活物質を見出し、また適当な負極活物質を組み合わせて電池を構成することにより、容量の大きい水系リチウム二次電池を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のリチウム二次電池は、基本組成をLiMnOとし六方晶系の層状岩塩構造を有するリチウムマンガン複合酸化物を活物質とする正極と、TiS 、MoS 、NbS 、及び、VS から選ばれる少なくとも1種以上の物質を活物質とする負極と、リチウム塩を溶解した水溶液からなる電解液とを含んで構成されることを特徴とする。
【0013】
本発明者は、主な活物質材料の充放電の挙動を調べ、基本組成をLiMnO2とし層状構造を有するリチウムマンガン複合酸化物が、水の電気分解による酸素発生が生じない電位範囲において、可逆的に大量のリチウムイオンの吸蔵・放出が可能であり、水系リチウム二次電池における正極活物質として好適であることを見出した。すなわち、本発明のリチウム二次電池の正極活物質であるリチウムマンガン複合酸化物は、水の電気分解による酸素発生が生じない電位範囲において、充分に容量を取り出すことができる。
【0014】
したがって、本発明のリチウム二次電池は、安価で、安全性が非常に高く、かつ高出力、大容量の水系二次電池となる。また、後の実験で明らかになったことであるが、充放電を繰り返しても容量の低下が小さく、サイクル特性、特に高温下でのサイクル特性が良好な水系二次電池となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のリチウム二次電池の実施形態を、それぞれの構成要素ごとに説明する。
【0016】
(1)正極活物質
正極活物質には、基本組成をLiMnO2とし層状構造を有するリチウムマンガン複合酸化物を用いる。ここで、基本組成とは、リチウムマンガン複合酸化物の代表的な組成という意味であり、上記組成式で表されるものの他、例えば、リチウムサイトやマンガンサイトをCo、Ni、Al等の他の1種または2種以上の元素で一部置換したもの等の組成をも含む。また、必ずしも化学量論組成のものに限定されるわけではなく、例えば、製造上不可避的に生じるリチウムやマンガンの陽イオン原子が欠損した、あるいは酸素原子が欠損した非化学量論組成のもの等をも含む。
【0017】
図1に主な活物質の容量と電位(vs.Li/Li+)との関係を示す。図1から明らかなように、LiCoO2、LiMn24は、水の電気分解による酸素発生が生じない電位範囲ではほとんど容量を取り出すことはできず、Li(Ni,Co)O2も本来の容量の半分程度にとどまっている。なお、実際は、水中で微量のLiがLiOHとなって溶解し、電解液がアルカリ性になり、さらに酸素発生電位が低くなるため、Li(Ni,Co)O2も、ほとんど容量を取り出すことはできない。一方、本発明のリチウム二次電池の正極活物質であるLiMnO2は、水の電気分解による酸素発生が生じない電位範囲において、可逆的に大量のリチウムイオンの吸蔵・放出が可能であるため、充分に容量を取り出すことができる。したがって、LiMnO2を正極活物質として用いた本発明のリチウム二次電池は、大容量の二次電池となる。
【0018】
また、層状構造を有するリチウムマンガン複合酸化物には、六方晶系の層状構造、いわゆる層状岩塩構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(空間群は下記化1式に示す。)、斜方晶系の層状構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(空間群C2/m)、単斜晶系のジグザグ層状構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(空間群Pmnm)があり、これらのうち1種類のものを単独で用いることも、また、2種類以上のものを混合して用いることもできる。
【0019】
【化1】
Figure 0004457533
【0020】
なかでも、六方晶系の層状岩塩構造を有するリチウムマンガン複合酸化物を用いることが望ましい。六方晶系の層状岩塩構造を有するリチウムマンガン複合酸化物は、充放電を繰り返しても、取り出せる容量の小さいスピネル構造への転移が生じないため、これを正極活物質として用いた本発明のリチウム二次電池は、より容量の大きい水系二次電池となる。
【0021】
なお、この六方晶系の層状岩塩構造を有するリチウムマンガン複合酸化物は、その製造方法を特に限定するものではないが、後述する本発明者が見出した製造方法によれば、このリチウムマンガン複合酸化物を簡便に製造することができる。
【0022】
(2)負極活物質
負極活物質には、リチウムを吸蔵・脱離できる物質を用いる。リチウムを吸蔵・脱離できる物質として、リチウムを吸蔵・脱離する電位が適当であるという理由から、遷移金属カルコゲナイドを用いることが望ましい。遷移金属カルコゲナイドは、可逆的にリチウムイオンを吸蔵・脱離する電位が、2〜2.5V(vs.Li/Li+)であり、上記リチウムマンガン複合酸化物と組み合わせて使用した場合に、2Vに近い電圧を確保することができ、かつ容量の大きな二次電池を構成し得る。なかでも、安価で、活物質の単位重量当たりの容量が大きいという理由から、TiS2、MoS2、NbS2、VS2を用いることが望ましい。これらのうちの一種を単独で用いることも、また、2種以上を混合して用いることもできる。なお、特に、容量が大きいという理由から、TiS2を用いることが望ましい。
【0023】
また、上記各遷移金属カルコゲナイドは、その製造方法を特に限定するものではなく、通常用いられている方法で製造すればよい。
【0024】
(3)正極、負極の構成
正極および負極は、ともに、粉末状の各活物質に導電材および結着剤を混合し、正極および負極合材としたものを、それぞれ金属製の集電体表面に圧着、または塗布乾燥して形成することができる。
【0025】
導電材は、電極の電気伝導性を確保するためのものであり、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質粉状体の1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。また、結着剤は、活物質粒子および導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0026】
(3)電解液
電解液は、電解質としてのリチウム塩を水に溶解させたものである。リチウム塩は水に溶解することによって解離し、リチウムイオンとなって電解液中に存在する。一般に、酸化物系の活物質材料は、中性からアルカリ性の水溶液中でより安定に存在する。また、リチウムイオンの吸蔵・脱離反応をより活性化させることをも考慮する場合には、使用する電解液は中性からアルカリ性であることが望ましい。なお、ここで中性とは、pHの値でいえばpH=6〜8程度のことを意味する。
【0027】
例えば、pH=7の中性電解液を用いた場合、水の電気分解による水素発生電位は2.62V、酸素発生電位は3.85V(vs.Li/Li+)であり、pH=14のアルカリ性電解液を用いた場合は、水素発生電位は2.21V、酸素発生電位は3.44V(vs.Li/Li+)である。すなわち、中性の電解液を用いた場合には、水の電気分解による酸素発生電位が高いことから、その電位に至るまで、正極活物質であるリチウムマンガン複合酸化物は、より多くのリチウムイオンを放出できることになり、より大きな容量を取り出すことができる。したがって、より容量の大きな二次電池とする場合には、中性に近い電解液、具体的には、pH=6〜10である電解液を用いることが望ましい。
【0028】
また一般に、水溶液は、非水溶液と比べて導電性が良く、例えば中性の水溶液は非水溶液の10倍以上の導電率を有し、アルカリ性の水溶液は、非水溶液の100倍以上の導電率を有する。そのため、電解液に水溶液を用いた二次電池は、非水系の二次電池と比較して、内部抵抗、特に反応抵抗が小さいものとなり、アルカリ性の電解液を用いた場合には、内部抵抗はより小さいものとなる。したがって、より出力特性やレート特性の良好な二次電池とする場合には、強アルカリ性の電解液、具体的には、pH=10〜12である電解液を用いることが望ましい。
【0029】
電解質として使用できるリチウム塩は、水に溶解するものであれば特に限定されるものではないが、正極活物質である酸化物の安定性等を考慮すると、溶解後、電解液が中性からアルカリ性となるようなリチウム塩を用いることが望ましい。具体的には、例えば、硝酸リチウム、水酸化リチウム、ヨウ化リチウム等を用いることが望ましい。これらのリチウム塩は、それぞれ単独で用いてもよく、また、これらのもののうち2種以上のものを併用することもできる。特に、溶解度が高く、従って導電性も良いという理由から、中性の電解液とするためには硝酸リチウムを用いることが望ましく、また、強アルカリ性の電解液とするためには、硝酸リチウムと水酸化リチウムとを混合して用いることが望ましい。
【0030】
また、電解液中のリチウム塩の濃度は、電解液の電気伝導度を高くし、二次電池の内部抵抗を小さくできるという理由から、飽和濃度、あるいはそれに近い濃度とすることが望ましい。
【0031】
(4)その他の構成要素等
本発明のリチウム二次電池は、上記正極と上記負極とを対向させて電極体を形成させる。正極と負極との間にはセパレータを挟装する。このセパレータは、正極と負極とを分離し電解液を保持するものであり、セルロース系等のものを用いることができる。
【0032】
本発明のリチウム二次電池は、その形状を特に限定するものではなく、円筒型、積層型、コイン型等、種々のものとすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、電池形状に応じて形成させた上記電極体を、所定の電池ケースに収納し、正極集電体および負極集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を集電用リード等を用いて接続し、この電極体に上記電解液を含浸させ電池ケースに密閉し、リチウム二次電池を完成することができる。
【0033】
(5)六方晶系の層状岩塩構造リチウムマンガン複合酸化物の製造方法
上述した、六方晶系の層状岩塩構造を有するリチウムマンガン複合酸化物は、従来、固相反応法で合成したα−NaMnO2を、リチウムイオンを含む非水溶液中で300℃以下の温度でイオン交換することによって合成するのが一般的であった。しかし、この方法は、固相反応法とイオン交換という2段階の煩雑なプロセスを経なければならないため、工業的に不利である。
【0034】
また、リチウム以外のアルカリ金属水酸化物を過剰に含む水溶液中で、マンガン原料と、水溶性リチウム塩とを水熱反応させることで、斜方晶系の層状岩塩構造を有するリチウムマンガン複合酸化物を合成した例もある。しかし、得られたリチウムマンガン複合酸化物は、充放電を繰り返すうちに、スピネル構造への転移が見られ、非水系の二次電池の活物質として用いた場合には、その電池のサイクル特性は良好とはいえなかった。
【0035】
本発明者は、実験を重ね、六方晶系の層状岩塩構造を有するリチウムマンガン複合酸化物を簡便に製造する方法を見出した。その方法は、マンガン源となる二酸化マンガンと、リチウム源となる水酸化リチウム水溶液とを、Li/Mnがモル比で2以上10以下となるような割合で混合して分散水溶液を調製する分散水溶液調製工程と、該分散水溶液を120℃以上250℃以下の温度で加熱保持する水熱処理工程とを含んで構成される。
【0036】
すなわち、本製造方法は、従来の固相反応とは異なり、水熱処理を行うものであり、水酸化リチウム水溶液に二酸化マンガンを分散させ、その分散水溶液を加熱保持するだけで、六方晶系の層状岩塩構造リチウムマンガン複合酸化物を得る方法である。マンガン源として二酸化マンガンを用いることにより、充放電を繰り返してもスピネル構造への転移のない六方晶系の層状岩塩構造リチウムマンガン複合酸化物を得ることができる。そして、本製造方法は、一段階の水熱処理により目的とするリチウム複合酸化物を合成することが可能であるため、簡便、かつ工業的にも有利な製法となる。以下、本製造方法の各工程について説明する。
【0037】
(a)分散水溶液調製工程
分散水溶液調製工程は、マンガン源となる二酸化マンガンと、リチウム源となる水酸化リチウム水溶液とを、Li/Mnがモル比で2以上10以下となるような割合で混合して分散水溶液を調製する工程である。
【0038】
二酸化マンガンと、水酸化リチウム水溶液との混合割合は、Li/Mnがモル比で2以上10以下となるような割合とする。Li/Mnがモル比で2未満であると、スピネル構造リチウムマンガン複合酸化物との混相となり、反対に10を超えると、不純物であるLi2MnO3の割合が増加するからである。
【0039】
また、各原料の混合は、二酸化マンガンが水酸化リチウム水溶液中に均一に分散されるようにすればよく、通常の方法に従えばよい。例えば、超音波ホモジナイザー等の装置を用いて超音波分散する方法や、ホモジナイザー等で高剪断力を与えて分散する方法等が挙げられる。
【0040】
なお、粉末状で使用する二酸化マンガンは、その平均粒径が0.1μm以上20μm以下であるものを用いることが望ましい。平均粒径が0.1μm未満であると、得られるリチウムマンガン複合酸化物の粒径が小さくなるために電極作製が困難となり、20μmを超えると、リチウムマンガン複合酸化物の粒径が大きくなり出力特性に不利となるからである。
【0041】
(b)水熱処理工程
水熱処理工程は、分散水溶液調製工程で調製された分散水溶液を、120℃以上250℃以下の温度で加熱保持する工程である。120℃未満の温度では、反応が進行せず、反対に250℃を超えると、耐圧にするためのコストが高くなるからである。
【0042】
加熱保持時間は、反応が完全に終了し得る時間であればよく、通常、72時間程度行えばよい。また、水熱処理は、例えば、テフロンで内張りされたオートクレーブに、分散水溶液調製工程で得られた水溶液を入れ、所定温度で所定時間保持し、その後水冷することにより、あるいはその容器内で徐冷することにより、室温付近にまで降温させてから取り出すようにして行うことができる。
【0043】
生成されたリチウムマンガン複合酸化物は、水溶液中から濾過することにより取り出し、水洗、乾燥を行って粉末状のものとする。なお、濾過、水洗、乾燥の方法は特に限定するものではなく、例えば具体的には、吸引濾過器等を用いて濾過し、超音波等により水洗し、さらに同様に濾過した後、乾燥炉等にて50〜120℃の温度下、60〜180分間程度乾燥すればよい。
【0044】
本製造方法で合成した六方晶系の層状岩塩構造を有するリチウムマンガン複合酸化物は、充放電を繰り返してもスピネル構造への転移はなく、これを活物質として用いた二次電池は、充放電を繰り返しても容量の低下が小さい、すなわちサイクル特性が非常に良好な電池となる。
【0045】
また、本製造方法で合成した六方晶系の層状岩塩構造を有するリチウムマンガン複合酸化物は、その用途を、水系リチウム二次電池の正極活物質に限定するものではなく、例えば、非水系電解液を使用する非水系二次電池の活物質等にも用いることができる。
【0046】
現在、非水系のリチウム二次電池の正極活物質には、合成が容易でかつ取り扱いも比較的容易であることに加え、充放電サイクル特性において優れることから、LiCoO2を正極活物質に使用する二次電池が主流となっている。しかし、コバルトは資源量として少なく、LiCoO2を正極活物質に使用した二次電池では、電気自動車用電源をにらんだ将来の量産化、大型化に対応しにくく、また価格的にも極めて高価なものにならざるを得ない。そこで、資源として豊富であり、安価なマンガンを構成元素として含む上記リチウムマンガン複合酸化物は、コバルトに代わる有用な正極活物質として期待されている。したがって、本製造方法は、有用な活物質である六方晶系の層状岩塩構造リチウムマンガン複合酸化物を、簡便に製造することができる方法となる。
【0047】
(6)以上、本発明のリチウム二次電池の実施形態について説明したが、上述した実施形態は一実施形態にすぎず、本発明のリチウム二次電池は、上記実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【0048】
【実施例】
上記実施形態に基づいて、正極活物質等の異なる種々の水系リチウム二次電池を作製し、それぞれの電池を評価した。以下に、作製したリチウム二次電池、初期容量の評価、サイクル特性の評価について説明する。
【0049】
〈作製したリチウム二次電池〉
(1)実施例1のリチウム二次電池
(a)六方晶系の層状岩塩構造リチウムマンガン複合酸化物の合成
6.29gのLiOH・H2Oを80mlの水に溶解して、LiOH水溶液を調製した。このLiOH水溶液に、MnO2を2.61g添加し(Li/Mnはモル比で5となる)、30分間超音波分散して分散水溶液を調製した。次いで、この分散水溶液をオートクレーブに入れ、200℃の温度で7日間反応させた。反応後、オートクレーブを冷却し、容器内の沈殿物を濾過、水洗、120℃で乾燥して、六方晶系の層状岩塩構造リチウムマンガン複合酸化物を得た。
【0050】
(b)リチウム二次電池の作製
上記リチウムマンガン複合酸化物を正極活物質に用いてリチウム二次電池を作製した。正極は、まず、活物質であるリチウムマンガン複合酸化物70重量部に、導電材としてのカーボンを25重量部、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレンを5重量部混合した。次いで、この混合粉末をあらかじめコインセルの内側に溶接したSUS製のメッシュ上に、約0.6ton/cm2で圧着して正極とした。
【0051】
対向させる負極は、TiS2を活物質として用いた。正極と同様、まず、活物質であるTiS270重量部に、導電材としてのカーボンを25重量部、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレンを5重量部混合した。次いで、この混合粉末をあらかじめコインセルの内側に溶接したSUS製のメッシュ上に、約0.6ton/cm2で圧着して負極とした。
【0052】
セパレータにはセルロース系セパレータを用いた。また、リチウム塩であるLiNO3を水に溶解させて、5MのLiNO3水溶液としたものを電解液とした。なお、電解液のpHは7程度とした。上記正極および負極を、セパレータを介して対向させ、上記電解液を適量注入して含浸させた後、2032型コイン型電池ケースに収納することにより、水系のリチウム二次電池を作製した。このようにして作製した水系のリチウム二次電池を実施例1の二次電池とした。
【0053】
(2)実施例2のリチウム二次電池
実施例1の二次電池において、電解液である5MのLiNO3水溶液にLiOHを適量添加して、pHを12に調製した水溶液を電解液として用いた。それ以外は、すべて実施例1と同様にして水系二次電池を作製し、実施例2のリチウム二次電池とした。
【0054】
(3)参考例のリチウム二次電池
(a)単斜晶系のジグザグ層状構造リチウムマンガン複合酸化物の合成
2.52gのLiOH・HOを80mlの水に溶解して、LiOH水溶液を調製した。このLiOH水溶液に、MnOに代えて、Mnを2.37g添加し(Li/Mnはモル比で2となる)、30分間超音波分散して分散水溶液を調製した。次いで、この分散水溶液をオートクレーブに入れ、200℃の温度で1日間反応させた。反応後、オートクレーブを冷却し、容器内の沈殿物を濾過、水洗、120℃で乾燥して、単斜晶系のジグザグ層状構造リチウムマンガン複合酸化物を得た。
【0055】
(b)リチウム二次電池の作製
上記リチウムマンガン複合酸化物を正極活物質に用いてリチウム二次電池を作製した。作製方法は、正極活物質が異なることを除き、すべて実施例1と同様にして行った。そして作製された水系二次電池を参考例のリチウム二次電池とした。
【0056】
(4)比較例1のリチウム二次電池
実施例1の二次電池において、電解液を非水電解液に変更し、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比で3:7に混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解したものを電解液として用いた以外は、すべて実施例1と同様にして作製し、比較例1のリチウム二次電池とした。
【0057】
(5)比較例2のリチウム二次電池
(a)層状岩塩構造LiNi0.8Co0.15Al0.052の合成
いわゆる固相反応法で合成した。原料となるLiOH・H2O、Ni(OH)2、Co34、Al(OH)3をそれぞれ、Li、Ni、Co、Alがモル比で1:0.8::0.15:0.05となるように混合した。そして、この混合物を酸素気流中、900℃の温度で、24時間焼成し、冷却後、解砕して、粉末状の層状岩塩構造LiNi0.8Co0.15Al0.052を得た。
【0058】
(b)リチウム二次電池の作製
上記LiNi0.8Co0.15Al0.052を正極活物質に用いてリチウム二次電池を作製した。作製方法は、正極活物質が異なることを除き、すべて実施例1と同様にして行った。そして作製された水系二次電池を比較例2のリチウム二次電池とした。
【0059】
(6)比較例3のリチウム二次電池
実施例1の二次電池において、正極活物質を上記比較例2のリチウム二次電池で用いた層状岩塩構造LiNi0.8Co0.15Al0.052に変更し、さらに、電解液である5MのLiNO3水溶液にLiOHを適量添加して、pHを12に調製した水溶液を電解液として用いた以外は、すべて実施例1と同様にして水系二次電池を作製し、比較例3のリチウム二次電池とした。
【0060】
(7)比較例4のリチウム二次電池
実施例1の二次電池において負極活物質を変更し、V25を用いた以外は、すべて実施例1と同様にして水系二次電池を作製し、比較例4のリチウム二次電池とした。
【0061】
〈初期容量の評価〉
上記実施例1、2参考例、及び、比較例1〜4の各リチウム二次電池を、以下の2種類の条件で充放電し、初期容量を測定した。第1の充放電の条件は、20℃の温度において、電流密度1.0mA/cm2の定電流で充電上限電圧1.5Vまで充電を行い、次いで電流密度0.5mA/cm2の定電流で放電下限電圧0.05Vまで放電を行うものとした。また、第2の充放電の条件は、充電上限電圧を1.8Vとした以外は、第1の条件と同様にして行うものとした。各リチウム二次電池の初期容量を表1に示す。
【0062】
【表1】
Figure 0004457533
【0063】
表1中、「充電できず」は、充電開始から9時間経過しても、充電終止電圧に到達しなかったものである。表1から明らかなように、実施例1、2、及び、参考例の二次電池は、いずれも大きな容量が得られている。特に、六方晶系の層状岩塩構造リチウムマンガン複合酸化物を正極活物質に用いた実施例1の二次電池は容量が大きいことがわかる。これは、正極活物質であるリチウムマンガン複合酸化物が、水の電気分解による酸素発生が生じない電位範囲において、リチウムイオンを吸蔵・脱離できたためである。一方、比較例2〜4のリチウム二次電池は、充電できていない。これは、水の電気分解による酸素または水素の発生が起こり、リチウムイオンの吸蔵・脱離ができなかったためと考えられる。
【0064】
なお、図2に比較例2、3のリチウム二次電池の充電時の電位の変化を示す。なお、図2では、比較例2、3と同様の正極および負極を用い、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比で3:7に混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解した非水電解液を用いた非水系二次電池の電位変化を、参考として実線で示してある。
【0065】
図2より、非水電解液を用いたリチウム二次電池は、充電開始後、速やかに電位が上昇していくが、比較例2、3の二次電池は、ある一定の電位に達するとそれ以上電位は上昇しない。しかも、pHが7の電解液を用いた比較例2の二次電池よりも、pHが12の電解液を用いた比較例3の二次電池の方が、より低電位である。すなわち、pH値が高いほど、正極における酸素発生電位は低いことから、比較例2、3の二次電池の充電時には、正極において酸素が発生している可能性が高いと考えられる。
【0066】
また、実施例1の二次電池は、比較例1の二次電池よりもかなり容量が大きくなっている。これは、水溶液の方が非水溶液より導電性が優れていることから、電解液に水溶液を用いた実施例1の二次電池は、非水溶液を用いた比較例1の二次電池よりも、内部抵抗が小さくなったためであると考えられる。なお、実施例および比較例の各二次電池の内部抵抗を評価するために、各二次電池のインピーダンスを測定した。測定方法は、1KHzの交流抵抗を四端子法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
Figure 0004457533
【0068】
表2より明らかなように、比較例1の二次電池に用いた非水溶液の電解液は、他の二次電池に用いた水溶液の電解液よりも抵抗が大きく、実施例1の二次電池と比較すると約4倍の抵抗値となっている。したがって、水溶液を電解液に用いた本発明のリチウム二次電池は、容量が大きいことに加え、内部抵抗が小さく、出力特性、レート特性も優れていることがわかる。
【0069】
〈サイクル特性の評価〉
次に、実施例1のリチウム二次電池について、サイクル特性を評価すべく、充放電サイクル試験を行った。充放電サイクル試験は室温である20℃、および電池の実使用温度範囲の上限と目される60℃の2種類の温度で行った。その条件は、電流密度1.0mA/cm2の定電流で充電終止電圧1.5Vまで充電を行い、次いで電流密度0.5mA/cm2の定電流で放電終止電圧0.05Vまで放電を行う充放電を1サイクルとし、このサイクルを100サイクル繰り返すものとした。なお、充電と放電との間の休止時間は1分とした。また、同様に、充電終止電圧を1.8Vとした充放電サイクル試験も行った。
【0070】
各サイクルにおける放電容量を測定し、その結果を図3および図4のグラフに示す。図3は、20℃下での各サイクルにおける放電容量を、また、図4は、充電終止電圧を1.5Vとした場合の、60℃下での各サイクルにおける放電容量を示すグラフである。なお、図4には、同様に60℃下でサイクル充放電試験を行った、非水系二次電池である比較例1のリチウム二次電池の放電容量も併せて示してある。
【0071】
図3から明らかなように、充電終止電圧にかかわらず、初期10回の充放電により容量は多少減少するが、その後の容量の低下は小さく、サイクル特性が良好であることがわかる。また、図4から、実施例1のリチウム二次電池は、60℃という高温下であっても、充放電を繰り返すことによる容量低下は小さく、そのサイクル特性は非常に良好であることがわかる。一方、比較例1のリチウム二次電池は、容量低下が著しい。これは比較例1のリチウム二次電池は、電解液に非水溶液の有機溶媒を用いているため、内部抵抗が大きく、さらに充放電に伴う抵抗増加の影響を受けやすいためであると考えられる。
【0072】
したがって、本発明のリチウム二次電池は、充放電を繰り返しても容量低下の少ない、サイクル特性の良好な二次電池であることが確認できた。また、特に、高温下でのサイクル特性が良好な二次電池であることも確認できた。
【0073】
【発明の効果】
本発明のリチウム二次電池は、電解液に水溶液を用いた水系リチウム二次電池であって、好適な正極活物質材料を用いることにより、安価で安全性が非常に高く、かつ高出力、大容量の二次電池となる。また、充放電を繰り返しても容量の低下が小さく、サイクル特性、特に高温下でのサイクル特性が良好な二次電池となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 各活物質の容量と電位(vs.Li/Li+)との関係を示す。
【図2】 比較例2、3のリチウム二次電池の充電曲線を示す。
【図3】 実施例1のリチウム二次電池の20℃下での各サイクルにおける放電容量を示す。
【図4】 実施例1および比較例1のリチウム二次電池の60℃下での各サイクルにおける放電容量を示す。

Claims (1)

  1. 基本組成をLiMnOとし六方晶系の層状岩塩構造を有するリチウムマンガン複合酸化物を活物質とする正極と、TiS 、MoS 、NbS 、及び、VS から選ばれる少なくとも1種以上の物質を活物質とする負極と、リチウム塩を溶解した水溶液からなる電解液とを含んで構成されるリチウム二次電池。
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