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JP4469024B2 - 人工脂質膜形成方法および人工脂質膜形成装置 - Google Patents
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人工脂質膜形成方法および人工脂質膜形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、イオンチャンネルをはじめとする膜タンパク解析に用いられる人工脂質膜の形成方法に関する。また、本発明は、そのような方法の実施に適した人工脂質膜の形成装置に関する。
細胞内と細胞外の間の物質輸送は膜貫通性タンパクを通じて行われる。なかでもイオンチャンネルはイオンの透過により膜電位の変化を生ずるので、神経の活動電位のような信号発生による情報伝達に重要な役割を果たすことが知られており、近年研究が盛んに進められている。
イオンチャンネル研究を進める上で不可欠なのがパッチクランプ法と呼ばれる実験手法であり、1976年にNeherとSakmannらによって開発された。パッチクランプ法では、まずパッチ電極と呼ばれる微小ガラス管の先端を細胞膜表面に密着させる。その先端開口部の微小膜領域を電気的に他の領域から絶縁した状態で電位固定し、微小膜領域に含まれるイオンチャンネルを通るイオン電流を計測する。この方法の開発は、チャンネルタンパク分子の機能エレメントの同定、その動作メカニズムや構造解明に役立ち、生理学研究に大きな革新をもたらした。
しかしながら、パッチクランプ法は上述の通り生理学研究において極めて有効な方法であるにもかかわらず適用できない場合がある。例えば解剖学的にアクセスが困難な場合、すなわち細胞小器官上のチャンネルやシナプス前膜のような微小構造体上のチャンネルを解析する場合が、これに該当する。また、チャンネルの基本構造や詳細な構造機能相関研究を深めるためには単純な構成で実験を行う必要がある場合も適用できない。このときにはチャネル分子を単純な系、つまり水、塩類、リン脂質、チャンネルで構成される系で解析しなければならない。
これらのようにパッチクランプ法を適用できない時に有効な手段として脂質平面膜法が開発された。脂質平面膜法には大きく分けて、泡吹き付け法と貼り合わせ法がある(たとえば非特許文献1)。
図18は、泡吹き付け法による従来の人工脂質膜の形成方法を示す。図18において、容器10を、テフロン(登録商標)、ポリスチレンなどの疎水性表面を有する樹脂からなる平板11で仕切り、平板11で仕切られた空間へ電解液12を満たし、平板11に開けられた微小孔13へ、脂質溶液14、つまり脂質分子と有機溶媒との混合液をピペット15で塗布する。微小孔13へ塗布された脂質溶液14に含まれる余剰な有機溶媒は、微小孔13の周辺縁を徐々に伝わって取り除かれる。30分から3時間程度待てば人工脂質膜が形成される。
人工脂質膜を形成する場合、有機溶媒は飽和炭化水素、例えばデカン、ヘキサデカン、ヘキサンなどが多く用いられる。脂質はリン脂質を用いることが多い。例えば、ジフィタノイルホスファチジルコリン、グリセロルモノオレエイトなどを用いる。
一方、図19(a)、(b)、(c)は貼り合わせ法による従来の人工脂質膜の形成方法を示す。図19(a)において、容器20は、テフロン(登録商標)、ポリスチレンなどの疎水性表面を有する樹脂からなる平板21で、仕切られている。まず前処理として平板21に開けた微小孔22へ、スクアレンを塗布しておく。容器20の一方のチャンバへ、電解液23の液面の高さが微小孔22下端の高さを越えない程度に、電解液23を注入口24から加える。次に、容器20の上方から電解液23へ、脂質溶液、つまり脂質分子25と有機溶媒との混合液を滴下して数分間放置する。図19(a)に示すように電解液23の気−液界面には脂質単分子膜が形成される。脂質分子25は親水性部と疎水性部を有しており、脂質分子25の親水性部が電解液23の方へ向くように配向する。
そして図19(b)に示すように、電解液23の液面の高さが微小孔22上端の高さを通過するまで、電解液23を注入口24から加える。
次に、容器20のもう一方のチャンバにおいて同様の操作を行なう。すなわち、液面の高さが微小孔22下端の高さを越えない程度に、電解液26を注入口27から加える。次に、容器20の上方から電解液26へ、脂質溶液を加えて数分間放置する。電解液26の気−液界面には脂質単分子膜が形成される。そして電解液26の液面の高さが微小孔22上端の高さを通過するまで、電解液26を注入口27から加える。以上の操作を行なうことにより、先に微小孔22に形成された脂質単分子膜にもう一方の脂質単分子膜が貼り合わされる。その結果、微小孔22において人工脂質膜が形成される。
ところが、上述の2つの方法によって安定で再現性のある人工脂質膜を形成するには、かなりの熟練を要する。より簡便な人工脂質膜を形成する方法として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術や半導体微細加工技術などを利用して小型チップ上に人工脂質膜を形成するという方法が考案された(たとえば特許文献1参照)。
図20は、特許文献1に記載された従来の人工脂質膜形成装置を示す。図20において、第1の室31と、第1の室から隔壁32より隔離された第2の室33とを設けられ、隔壁32には、第1の室31と第2の室32とを流体的に連通する少なくとも1つの小孔34が設けられている。図20に示す人工脂質膜形成装置を用いて以下のように人工脂質膜が形成される。まず第1の室31を第1水溶液で満たし、続いて第2の室33を脂質溶液で満たす。小孔34を介して第1水溶液と脂質溶液とを接触させる。さらに第2の室33内にある脂質溶液を、第2水溶液へ置換することにより、小孔34において人工脂質膜35を形成できる。
また、別の人工脂質膜形成装置が特許文献2に開示されている。この人工脂質膜形成装置は、脂質溶液を微細流路に導入する第3の導入口、生体関連物質などの物質を含有する第1の電解液および第2の電解液をマイクロチャンネルにそれぞれ導入する第1の導入口および第2の導入口を備える。そして第1の電解液と第2の電解液との境界面に分子膜を形成する。
さらに、別の人工脂質膜形成装置が特許文献3に開示されている。この人工脂質膜形成装置は、基板に形成された微小孔を覆って人工脂質膜を形成する。このとき溶媒により微小孔の閉孔現象を利用して人工脂質膜を形成する。すなわち、微小孔が形成された基板上に脂質溶液を供給し、溶媒によって基板が膨潤し、微小孔が閉孔した状態で膜形成を行う。その後、溶媒の蒸発により微小孔を開孔させ、形成された人工脂質膜を引き伸ばす。なお、この人工脂質膜形成装置では、微小フロー操作を行い、混合液や電解液を界面移動させている。
特開2005−098718号公報(第15頁、図5) 特開2005−185972号公報(第73頁、図1) 特開2005−245331号公報(第14頁、図2)
岡田泰伸著「パッチクランプ実験技術法」吉岡書店 1996年9月25日(p.133−139)
従来の小型チップ上で実現した人工脂質膜装置は、複雑で時間を要するものであった。なぜなら、従来の人工脂質膜形成装置は、(1)いったん過剰な脂質溶液を供給し、それを排出する方法、もしくは、(2)脂質溶液と電解液を供給するための経路を兼用する方法を採用している。そのため、余剰な脂質溶液を排出する方法として、(1)外部ポンプ、バルブや流量調節器を設ける、もしくは、(2)脂質溶液中の有機溶媒が気化や展開するのを待機する、しかなかった。
たとえば特許文献1では、マイクロチャンネルに電解液、脂質分子と有機溶媒との混合液を順次送液するため、マイクロチャンネルの外部に設けられたシリンジポンプやダイアフラムポンプ、ペリスタティックポンプなどの送液手段を用いていた。
また、特許文献2で開示されている装置は、特許文献1の人工脂質膜形成装置と同様に、加圧手段、流量調整手段などを用いて電解液や脂質溶液を供給していた。
さらに、特許文献3で開示されている装置は、脂質溶液と電解液の供給は界面移動で行なうことができるので簡便であるものの、脂質溶液の排出は溶媒が気化するまで待機しなければならず、時間を要した。
本発明は、前記従来の課題を解決し、簡便で短時間に人工脂質膜を形成する方法および装置を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決する本発明は、
人工脂質膜形成装置を用いた人工脂質膜形成方法であって、
前記装置は、
基板と、
前記基板の一端に設けられた第1スペーサと、
前記第1スペーサを介して前記基板に設けられた第1薄膜と、
前記第1薄膜の一端に設けられた第2スペーサと、
前記第2スペーサを介して前記第1薄膜に設けられた第2薄膜と、
第2薄膜の一端に設けられたカバーと
を備え、
前記基板と前記第1薄膜との間には第1チャンバが備えられ、
前記第1薄膜は両面を貫通する第1貫通孔を備え、
前記第1薄膜と前記第2薄膜との間には第2チャンバが備えられ、
前記第2薄膜は両面を貫通する第2貫通孔を備え、
前記カバーには前記第2貫通孔へ接続する注入口が備えられ、
平面視において前記第1貫通孔は前記第2貫通孔と重なり、
前記第1チャンバは、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔を介して前記注入口に接続され、
前記方法は、
前記第1チャンバへ電解液を注入する第1電解液注入工程、
前記第2チャンバを経て、前記第1貫通孔または前記第2貫通孔の少なくとも一方へ、脂質溶液を注入する脂質溶液注入工程、および
前記注入口へ電解液を注入して、前記脂質溶液が注入された貫通孔の内部に人工脂質膜を形成する第2電解液注入工程、
を順に包含する人工脂質膜形成方法である。
また、本発明は、
人工脂質膜形成装置であって、
前記装置は、
基板と、
前記基板の一端に設けられた第1スペーサと、
前記第1スペーサを介して前記基板に設けられた第1薄膜と、
前記第1薄膜の一端に設けられた第2スペーサと、
前記第2スペーサを介して前記第1薄膜に設けられた第2薄膜と、
第2薄膜の一端に設けられたカバーと
を備え、
前記基板と前記第1薄膜との間には第1チャンバが備えられ、
前記第1薄膜は両面を貫通する第1貫通孔を備え、
前記第1薄膜と前記第2薄膜との間には第2チャンバが備えられ、
前記第2薄膜は両面を貫通する第2貫通孔を備え、
前記カバーには前記第2貫通孔へ接続する注入口が備えられ、
平面視において前記第1貫通孔は前記第2貫通孔と重なり、
前記第1チャンバは、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔を介して前記注入口に接続されている、人工脂質膜形成装置である。
本発明において、前記第1薄膜、第1スペーサ、および前記第2薄膜は、一体的に形成されていることが好ましい。
本発明において、前記第1貫通孔は、前記第2貫通孔の断面積と同じ断面積を有することが好ましい。
本発明において、前記注入口は、平面視において前記第1チャンバと重なり合うことが好ましい。
本発明において、前記第1チャンバの外周面は、親水性を有することが好ましい。
本発明において、前記第2チャンバの外周面は、疎水性を有することが好ましい。
本発明において、前記注入口の外周面は、親水性を有することが好ましい。
本発明において、前記第1チャンバと前記注入口のうち少なくとも一方は、電極を備えていることが好ましい。
本発明において、前記第1チャンバと前記注入口のうち少なくとも一方は、センサを備えていることが好ましい。
本発明において、前記第1電解液注入工程では、毛細管現象により前記第1チャンバへ前記電解液が注入されることが好ましい。
本発明において、前記脂質溶液注入工程では、毛細管現象により前記第1貫通孔または前記第2貫通孔の少なくとも一方へ、前記脂質溶液が注入されることが好ましい。
本発明において、分析装置に請求項1に記載の人工脂質膜形成方法を用いることが好ましい。
本発明の上記目的、他の目的、特徴および利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
本発明の人工脂質膜形成方法および人工脂質膜形成装置によれば、適量の脂質溶液を貫通孔へ導入することができるので、余剰な脂質溶液を排出するための排出口を設けなくて良いし、外部ポンプを設ける必要もない。また人工脂質膜が形成されるまで長時間待機する必要もない。その結果、従来の人工脂質膜形成装置よりも簡便で短時間に人工脂質膜を形成することができる。
図1は、本発明の実施形態1における人工脂質膜形成装置の断面図である。 図2は、本発明の実施形態1における人工脂質膜形成装置の分解斜投影図である。 図3は、本発明の実施形態1における人工脂質膜形成装置の斜投影図である。 図4は、本発明の実施形態1における人工脂質膜形成装置の拡大図である。 図5は、本発明の実施形態1における第1貫通孔と第2貫通孔の拡大図である。 図6は、本発明の実施形態1における人工脂質膜形成装置の動作図である。 図7は、本発明の実施形態1における第2電解液注入工程の説明図である。 図8は、本発明の実施形態2における人工脂質膜形成装置の断面図および斜投影図である。 図9は、本発明の実施形態2における人工脂質膜形成装置の分解斜投影図である。 図10は、本発明の実施形態3における人工脂質膜形成装置の断面図および斜投影図である。 図11は、本発明の実施形態4における人工脂質膜形成装置の断面図および斜投影図である。 図12は、本発明の実施形態5における人工脂質膜形成装置の断面図および斜投影図である。 図13は、本発明の実施例における人工脂質膜の顕微鏡写真である。 図14は、本発明の実施例における人工脂質膜に流れる電流の過渡応答を示すグラフである。 図15は、比較例における人工脂質膜形成装置を示す図である。 図16は、比較例における人工脂質膜の顕微鏡写真である。 図17は、人工脂質膜の形成率の比較図である。 図18は、従来の人工脂質膜形成装置(泡吹き付け法)の模式図である。 図19は、従来の人工脂質膜形成装置(貼り合わせ法)の模式図である。 図20は、従来の人工脂質膜形成装置(特許文献1)の模式図である。
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1〜図3は、本発明の実施形態1における人工脂質膜形成装置の断面図、分解斜投影図および斜投影図である。
本実施形態において、人工脂質膜形成装置100は基板101を備えている。基板101の材料はガラスが最も好ましい。ガラスはソーダガラスでも良いし、石英、ホウケイ酸ガラス、低融点ガラス、感光性ガラスなどでも良い。なお、基板101はシリコン、酸化アルミなど他の無機材料でも良いし、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルなどの有機材料でも良いし、他の有機材料でも良い。基板101の材料は、複数の材料を組み合わせても良い。基板101の外周面の少なくとも一部は親水性表面を有することが好ましい。基板101の外周面の少なくとも一部を親水的にするために、酸素プラズマ処理を行なっても良いし、親水性材料で被覆しても良い。また、一般的に知られている他の親水処理を行なっても良い。基板101は、光学計測の観点から透明であることが好ましい。なお本発明では、基板101の形状は限定されない。
基板101の上には第1スペーサ102が設けられている。第1スペーサ102の材料は、有機材料でも良いし、無機材料でも良い。有機材料はテフロン(登録商標)が最も好ましく、ポリサルフォン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリジメチルシロキサンなどの有機ポリマーでも良い。ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルなどのプラスチックでも良いし、有機材料を用いる場合、シリコン系、エポキシ系、ビニル系の接着剤や、フォトレジスト、ポリイミドを含む感光性有機材料などを用いても良い。
無機材料を用いる場合、ガラスが好ましい。ガラスは、ソーダガラスでも良いし、石英、ホウケイ酸ガラス、低融点ガラスなどでも良い。その他の無機材料を用いる場合、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミ、窒化シリコンなどでも良い。第1スペーサ102の材料は、複数の材料を組み合わせても良い。
第1スペーサ102の外周面の少なくとも一部は親水性表面を有することが好ましい。第1スペーサ102を親水処理することが好ましい。第1スペーサ102の外周面の少なくとも一部を親水的にするために、酸素プラズマ処理を行なっても良いし、親水性材料で被覆しても良い。また、一般的に知られている他の親水処理を行なっても良い。なお本発明では、第1スペーサ102の形状は限定されない。ただし、一般的には、第1スペーサ102は、基板101の外周に沿って設けられる。
第1薄膜103は第1スペーサ102の上に設けられている。すなわち、基板101と第1薄膜103の間に第1スペーサ102が設けられている。第1薄膜103の材料は、有機材料が好ましい。有機材料はテフロン(登録商標)が最も好ましいが、ポリサルフォン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、パリレンなどの有機ポリマーでも良い。その他の有機材料として、シリコン系、エポキシ系、ビニル系の接着剤や、フォトレジスト、ポリイミドを含む感光性有機材料などを用いても良い。
第1薄膜103は、ガラス、酸化シリコン、酸化アルミなどの無機材料を基材にして、その表面をテフロン(登録商標)、ポリサルフォン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、パリレンなどの有機ポリマーや、シリコン系、エポキシ系、ビニル系の接着剤や、フォトレジスト、ポリイミドを含む感光性有機材料、炭化水素を含む自己組織化膜(SAM膜)などで被覆しても良い。第1薄膜103の材料は、複数の材料を組み合わせても良い。
第1薄膜103の外周面の少なくとも一部は疎水性表面を有することが好ましい。なぜなら、第1薄膜103の疎水性表面により脂質分子の疎水部が保持されるため、人工脂質膜が安定になるためである。
第1薄膜103の厚みは50nm以上10mm以下が好ましく、1μm以上1mm以下がより好ましい。
第1薄膜103の上には第2スペーサ104が設けられている。すなわち、第2スペーサ104と第1スペーサ102の間に、第1薄膜103が設けられている。第2スペーサ104の材料は、有機材料でも良いし、無機材料でも良い。有機材料はテフロン(登録商標)が最も好ましく、ポリサルフォン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリジメチルシロキサンなどの有機ポリマーでも良い。ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルなどのプラスチックでも良い。有機材料を用いる場合、シリコン系、エポキシ系、ビニル系の接着剤や、フォトレジスト、ポリイミドを含む感光性有機材料などを用いても良い。
無機材料を用いる場合、ガラスが好ましい。ガラスは、ソーダガラスでも良いし、石英、ホウケイ酸ガラス、低融点ガラスなどでも良い。その他の無機材料を用いる場合、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミ、窒化シリコンなどでも良い。第2スペーサ104の材料は、複数の材料を組み合わせても良い。第2スペーサ104の外周面の少なくとも一部は親水性表面を有することが好ましい。
第2スペーサ104を親水処理することが好ましい。第2スペーサ104の外周面の少なくとも一部を親水的にするために、酸素プラズマ処理を行なっても良いし、親水性材料で被覆しても良い。また、一般的に知られている他の親水処理を行なっても良い。なお本発明では、第2スペーサ104の形状は限定されない。ただし、一般的には、第2スペーサ104は、基板101の外周に沿って設けられる。
第2薄膜105は第2スペーサ104の上に設けられている。すなわち、第2薄膜105と第1薄膜103の間に第2スペーサ104が設けられている。第2薄膜105の材料は、有機材料が好ましい。有機材料はプラスチックが好ましい。有機材料はテフロン(登録商標)が最も好ましく、ポリサルフォン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、パリレンなどの有機ポリマーでも良い。その他の有機材料として、シリコン系、エポキシ系、ビニル系の接着剤や、フォトレジスト、ポリイミドを含む感光性有機材料を用いても良い。
第2薄膜105は、ガラス、酸化シリコン、酸化アルミなど無機材料を基材にして、その表面をテフロン(登録商標)、ポリサルフォン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、パリレンなどの有機ポリマーや、シリコン系、エポキシ系、ビニル系の接着剤や、フォトレジスト、ポリイミドを含む感光性有機材料、炭化水素を含む自己組織化膜(SAM膜)などで被覆しても良い。第2薄膜105の材料は、複数の材料を組み合わせても良い。
第2薄膜105の外周面の少なくとも一部は疎水性表面を有することが好ましい。なぜなら、第2薄膜105の疎水性表面により脂質分子の疎水部が保持されるため、人工脂質膜が安定になるためである。
第2薄膜105の厚みは50nm以上10mm以下が好ましく、1μm以上1mm以下がより好ましい。
カバー106は第2薄膜105の上に設けられている。すなわち、カバー106と第2スペーサ104の間に第2薄膜105が設けられている。カバー106の材料は、有機材料が好ましい。有機材料はポリジメチルシロキサンが好ましい。有機材料は、ポリサルフォン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、パリレンなどの有機ポリマーでも良い。また、フォトレジスト、ポリイミドを含む感光性有機材料を用いても良い。
カバー106は、ガラス、酸化シリコン、酸化アルミなど無機材料でも良い。カバー106の外周面の少なくとも一部は親水性表面を有することが好ましいが、疎水性表面を有していても良い。カバー106の材料は、複数の材料を組み合わせても良い。カバー106は光学計測の観点から透明であることが好ましい。なお本発明では、カバー106の形状は限定されない。
第1チャンバ107は、基板101と第1薄膜103の間に形成される。第1チャンバ107の高さ114は、10nm以上100mm以下が好ましく、10nm以上1mm以下がより好ましい。図2において、第1チャンバ107の幅120は、10nm以上100mm以下が好ましく、1μm以上5mm以下がより好ましい。第1チャンバ121の長さ121は、10nm以上100mm以下が好ましく、1μm以上5mm以下がより好ましい。
第1チャンバ107の高さ114は、第1チャンバ107内において、全て同じでも良いし、異なっていても良い。第1チャンバ107の幅120および第1チャンバ107の長さ121は、第1チャンバ107内において、全て同じでも良いし、異なっていても良い。なお、本発明では、第1チャンバ107の形状は限定されない。第1チャンバ107の形状は、直方体が最も好ましいが、円柱、三角柱など他の形状でも良い。
第1貫通孔108は、第1薄膜103の両面を貫通するように形成される。第1貫通孔108を第1薄膜103の法線方向から眺めた時、第1貫通孔108の形状は円形が最も好ましい。なお、第1貫通孔108の形状は楕円形、正方形、長方形、ひし形、六角形、多角形など他の形状でも良い。
第1貫通孔108の直径122は、10nm以上1mm以下が好ましく、2μm以上200μm以下がより好ましい。
第1貫通孔108の加工方法は、切削加工、抜き加工などの機械加工でも良いし、リソグラフィ、エッチング、サンドブラスト、光造形、ナノインプリントなどでも良い。
第1貫通孔108の内壁は、平坦であることが好ましいが、溝構造や凹凸構造などを設けても良い。
第1貫通孔108の数は1つであることが最も好ましいが、2つ以上でも良い。第1貫通孔108を2つ以上設ける場合、第1貫通孔108の形状は、全て同じ形状でも良いし、異なっていても良い。また、第1貫通孔108を2つ以上設ける場合、第1貫通孔108の直径122は、全て同じでも良いし、異なっていても良い。
第2チャンバ109は、第1薄膜103と第2薄膜105の間に形成される。第2チャンバ109は第1貫通孔108を介して第1チャンバ107と接続する。第2チャンバ109の高さ115は、10nm以上1mm以下が好ましく、10nm以上10μm以下がより好ましい。図2において、第2チャンバ109の幅123は、10nm以上100mm以下が好ましく、1μm以上5mm以下がより好ましい。第2チャンバ109の長さ124は、10nm以上100mm以下が好ましく、1μm以上5mm以下がより好ましい。
第2チャンバ109の高さ115は、第2チャンバ109内において、全て同じでも良いし、異なっていても良い。例えば、開口部から遠ざかる方向へ向かって第2チャンバ109の高さ115が減少する場合、脂質溶液は一方向へ注入されるので好ましい。第1貫通孔108と第2貫通孔110の外周縁の近傍で高さが減少する場合、余剰な脂質溶液の注入を抑制できるので好ましい。
第2チャンバ109の幅123および第2チャンバ109の長さ124は、第2チャンバ109内において、全て同じでも良いし、異なっていても良い。なお、本発明では、第2チャンバ109の形状は限定されない。第2チャンバ109の形状は、直方体が最も好ましいが、円柱、三角柱など他の形状でも良い。脂質溶液の注入を制御するために第2チャンバ109の内壁に溝構造や凹凸構造を設けても良い。
第2貫通孔110は、第2薄膜105の両面を貫通するように形成される。第2貫通孔110を第2薄膜105の法線方向から眺めた時、第2貫通孔110の形状は円形が最も好ましい。第2貫通孔110の形状が円形の場合、なお、第2貫通孔110の形状は楕円形、正方形、長方形、ひし形、六角形、多角形など他の形状でも良い。
第2貫通孔110の直径125は、10nm以上1mm以下が好ましく、2μm以上200μm以下がより好ましい。第2貫通孔110の直径125は、第1貫通孔108の直径122と同じであることが好ましいが、異なっても良い。
第2貫通孔110の加工方法は、切削加工、抜き加工などの機械加工でも良いし、リソグラフィ、エッチング、サンドブラスト、光造形、ナノインプリントなどでも良い。
第2貫通孔110の内壁は、平坦であることが好ましいが、溝構造や凹凸構造などを設けても良い。
第2貫通孔110の数は1つであることが最も好ましいが、2つ以上でも良い。第2貫通孔110を2つ以上設ける場合、第2貫通孔110の形状は、全て同じ形状でも良いし、異なっていても良い。また、第2貫通孔110を2つ以上設ける場合、第2貫通孔110の直径125は、全て同じでも良いし、異なっていても良い。
第1貫通孔108と第2貫通孔110の形状は、同じであることが好ましい。第1貫通孔108と第2貫通孔110の形状について、以下に詳しく述べる。図4(a)〜(c)は、本発明の実施形態1における人工脂質膜形成装置の、第1貫通孔108と第2貫通孔110周辺の拡大図である。なお、図4(a)〜(c)では、説明しやすくするために、第1薄膜103と第2薄膜105のみを示す。
図4(a)に示すように、第1貫通孔108と第2貫通孔110は円柱型であることが最も好ましい。第1貫通孔108と第2貫通孔110は同じ大きさであることが好ましい。第1貫通孔108の断面108bの面積は、第2貫通孔110の断面110aの面積とほぼ等しいことが好ましい。なぜなら脂質溶液を注入しやすいためである。第1貫通孔108の断面108bの直径は10nm以上1mm以下が好ましく、2μm以上200μm以下がより好ましい。第2貫通孔110の断面110aの直径は10nm以上1mm以下が好ましく、2μm以上200μm以下がより好ましい。
図4(b)に示すように、第1貫通孔108と第2貫通孔110の少なくとも一方は、台形柱型であっても良い。第1貫通孔108と第2貫通孔110は同じ大きさであっても良い。第1貫通孔108の断面108bの面積は、第2貫通孔110の断面110aの面積と、ほぼ等しいことが好ましい。第1貫通孔108の断面108bの面積は、第1貫通孔108の断面108aの面積よりも小さいことが好ましい。第2貫通孔110の断面110aの面積は、第2貫通孔110の断面110bの面積よりも小さいことが好ましい。
図4(c)に示すように、第1貫通孔108および第2貫通孔110は、台形柱型であっても良い。第1貫通孔108の断面108bの面積は、第2貫通孔110の断面110aの面積と、ほぼ等しいことが好ましい。第1貫通孔108の断面108bの面積は、第1貫通孔108の断面108aの面積よりも大きいことが好ましい。第2貫通孔110の断面110aの面積は、第2貫通孔110の断面110bの面積よりも小さいことが好ましい。
なお、簡単のため、図4(a)〜(c)に示したように、第1貫通孔108と第2貫通孔110の形状は円柱型についてのみ説明した。しかし、他の形状でも同様である。
第1貫通孔108と第2貫通孔110は重なる位置に設けられることが好ましい。第1貫通孔108と第2貫通孔110の位置関係について、以下に詳しく述べる。図5(a)〜(c)は、本発明の実施形態1における人工脂質膜形成装置の、第1薄膜103と第2薄膜105の法線方向からみた、第1貫通孔108と第2貫通孔110の拡大図である。なお、図5(a)〜(c)では、説明しやすくするために、第1貫通孔108と第2貫通孔110のみを示す。
図5(a)に示すように、第1貫通孔108と第2貫通孔110が一致することが最も好ましい。なお本段落での説明では、簡単のため、第1貫通孔108と第2貫通孔110の形状は円柱形とする。
図5(b)に示すように、第1貫通孔108と第2貫通孔110が一部重なっていても良い。図5(b)では、第1貫通孔108の直径が、第2貫通孔110の直径よりも、小さいことを示す。なお、第1貫通孔108の直径が、第2貫通孔110の直径よりも、大きくても良い。
図5(c)に示すように、第1貫通孔108の中心位置が、第2貫通孔110の中心位置と異なっても良い。なお、このとき第1貫通孔108の直径が、第2貫通孔110の直径と異なっても良い。
なお、複数の第1貫通孔108と第2貫通孔110を設ける場合、それらの配列は直線状でも良いし、円周状でも良いし、放射状でも良いし、正方格子状でも良いし、三角格子状などでも良い。
図1に示すように、第1開口111は、基板101および第1薄膜103の一端に形成される。基板101の端部と第1薄膜103の端部の位置を違えることにより第1張り出し部191を形成し、第1開口111とすることが好ましい。図3に示す第1開口111の第1張り出し部191の長さ130は、1mm以上10mm以下が好ましい。第1開口111の第1張り出し部191の幅131は1mm以上20mm以下が好ましい。第1開口111は、図3に示すように平坦であっても良いし、液体を注入しやすいように溝構造や凹凸構造を備えていても良い。
第2開口112は、第1薄膜103および第2薄膜105の一端に形成される。図1に示すように、第1薄膜103の端部と第2薄膜105の端部の位置を違えることにより第2張り出し部192を形成し、第2開口112とすることが好ましい。図3に示す第2開口112の第2張り出し部192の長さ132は、1mm以上10mm以下が好ましい。第2開口112の第2張り出し部192の幅133は1mm以上20mm以下が好ましい。第2開口112は、図3に示すように平坦であっても良いし、液体を注入しやすいように溝構造や凹凸構造を備えていても良い。
注入口113は、カバー106の一端に形成される。注入口113は第2貫通孔110を介して第2チャンバ109と接続する。図1に示すように、カバー106を貫通するように形成されることが好ましい。図3に示すように、注入口113の形状は円柱形であることが好ましいが、その他の形状でも良い。注入口113の形状が円柱形の場合、注入口113の直径134は0.5mm以上2mm以下が好ましい。
基板101と第1スペーサ102は一体でも良い。第1スペーサ102と第1薄膜103は一体でも良い。第1薄膜103と第2スペーサ104は一体でも良い。第1スペーサ102と第1薄膜103と第2スペーサ104は一体でも良い。第1薄膜103と第2スペーサ104と第2薄膜105は一体でも良い。第2スペーサ104と第2薄膜105は一体でも良い。第2薄膜105とカバー106は一体でも良い。
基板101、第1スペーサ102、第1薄膜103、第2スペーサ104、第2薄膜105、カバー106は、積層した後に接合されることが好ましい。接着剤を使って各層を接着しても良いし、熱を加えて溶着しても良い。積層された各層を、2枚の板によって挟み、ボルトにより固定しても良いし、他の方法で接合しても良い。
次に、人工脂質膜の形成手順を説明する。図6は本発明の実施形態1における人工脂質膜形成装置の動作図を表す。なお、図6において、図1〜図3と同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
まず、図6(a)および(b)は第1電解液注入工程を表す。第1電解液注入工程では、第1チャンバ107へ第1電解液301を第1開口111から注入する。第1電解液301は、KClを含むことが好ましく、等張のKCl液がより好ましい。第1電解液301は細胞内の生理的条件であることが好ましい。pHは7付近が好ましい。pHの調節にはHEPESなどの緩衝液などを用いても良い。あるいは、電気生理実験で用いられる一般的な溶液を用いても良い。Ca2+濃度は10〜100nMであることが好ましい。Ca濃度の調節にはEGTAなどのCa2+キレータなどを用いても良い。注入する第1電解液301の液量は第1チャンバ107の容積と同程度が最も好ましいが、第1チャンバ107の容積より少なくても良いし、多くても良い。
第1電解液注入工程では、第1電解液301を毛細管現象により第1チャンバ107へ注入することが最も好ましいが、第1電解液301の自重で注入しても良いし、他の方法で注入しても良い。図6(a)および(b)は、毛細管現象により第1電解液301を第1チャンバ107へ注入する様子を表している。毛細管現象により第1電解液301を注入する場合、図6(a)に示すように、第1電解液301は、第1開口111から第1貫通孔108へ向かって順次注入される。そして、図6(b)に示すように、第1チャンバ107の内部は第1電解液301により満たされる。毛細管現象により第1電解液301を第1チャンバ107へ注入する場合、基板101の外周面の少なくとも一部は親水処理されることが好ましい。基板101の外周面のうち、第1電解液301に接する部分が親水処理されることが好ましい。基板101の外周面のうち、第1貫通孔108の近傍を親水処理することが好ましい。
第1電解液注入工程には、第1電解液301を第1チャンバ107へ注入し終えたことを検出する工程を含んでいても良い。第1電解液301を第1チャンバ107へ注入し終えたことを検出するには、光学顕微鏡による観察でも良い。第1チャンバ107に複数の電極を設けて、電気伝導度を測定して検出しても良い。その他の一般的な電解液の存在を検出する方法を用いても良い。
次に、図6(c)は脂質溶液注入工程を表す。脂質溶液注入工程では、第2チャンバ109へ脂質溶液302を第2開口112から注入する。脂質溶液注入工程では、第2チャンバ109を経由して第1貫通孔108へ脂質溶液302を注入することが最も好ましい。脂質溶液注入工程では、第2チャンバ109を介して第1貫通孔108および第2貫通孔110へ脂質溶液302を注入しても良い。脂質溶液注入工程では、第2チャンバ109を介して第2貫通孔110へ脂質溶液302を注入しても良い。
脂質溶液302は、脂質を有機溶媒に分散したものであることが好ましい。脂質はリン脂質であることがもっとも好ましい。なお、脂質は糖脂質でも良いし、リポ脂質でも良いし、他の脂質でも良い。脂質はアゾレクチンでも良いし、その他の天然由来の脂質であっても良いし、合成脂質でも良い。合成脂質は高純度で化学的に安定なものが得やすいのでより好ましい。具体的にはリン酸脂質であるジフィタノイルフォスファジルコリン、グリセロルモノオレエイト、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンでも良いし、その他のリン酸脂質でも良い。また脂質分子の脂肪酸部分は炭素数が10から20の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸が好ましい。これらの脂質は単独で用いても良いし、2種類以上混合して用いても良い。また有機溶媒に対する脂質の濃度は3〜50mg/mLが好ましく、4〜40mg/mLがより好ましい。
脂質溶液302には、脂質と有機溶媒のほかに、人工脂質膜に正味の表面電荷を持たせる物質を混合しても良い。人工脂質膜の表面電荷はマイナスであることが好ましい。人工脂質膜に電荷を持たせるためにホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールなどを混合しても良い。人工脂質膜に電荷を持たせるための物質は、脂質溶液注入工程の前に予め混合しても良いし、人工脂質膜形成工程の後で混合しても良い。なお本発明では、人工脂質膜に電荷を持たせるための物質量は限定されない。
脂質溶液302には、脂質と有機溶媒のほかに、受容体、イオンチャンネル、Gタンパクなど生体膜タンパクや分泌タンパクを混合しても良い。脂質溶液303にはグラミシジンなどのポリペプチドを混合しても良い。生体膜タンパクや分泌タンパク、ポリペプチドなどは、1種類だけ混合しても良いし、複数種類を混合しても良い。生体膜タンパクや分泌タンパク、ポリペプチドなどは、脂質溶液注入工程の前に予め混合しておいても良い。生体膜タンパクや分泌タンパク、ポリペプチドなどは、人工脂質膜形成工程の後で混合しても良い。
なお、人工脂質膜形成工程の後で生体膜タンパクや分泌タンパクなどを混合する場合、生体膜タンパクや分泌タンパクなどを一旦ベシクルに組み込んで、ベシクルを人工脂質膜へ融合しても良いし、公知の混合技術を用いても良い。人工脂質膜形成工程の後で混合する場合は、生体膜タンパクや分泌タンパク、ポリペプチドなどを混合するための機構を人工脂質膜形成装置100に設けても良い。
脂質溶液注入工程では、毛細管現象により第2チャンバ109へ脂質溶液302を注入することが最も好ましい。脂質溶液注入工程では、脂質溶液302の自重により第2チャンバ109へ脂質溶液302を注入しても良いし、他の方法で注入しても良い。
脂質溶液注入工程では、第1チャンバ107が第1電解液301により満たされた後で、第2チャンバ109へ脂質溶液302の注入を開始することが好ましい。
脂質溶液注入工程には、脂質溶液302を第2チャンバ109へ注入し終えたことを検出する工程を含んでいても良い。脂質溶液302を第2チャンバ109へ注入し終えたことを検出するには、光学顕微鏡による観察でも良い。その他の一般的な有機溶媒または脂質溶液の存在を検出する方法を用いても良い。
次に、図6(d)は第2電解液注入工程を表す。第2電解液注入工程では、注入口113へ第2電解液303を注入する。第2電解液303は、KClを含むことが好ましく、等張のKCl液がより好ましい。第2電解液303は細胞内の生理的条件であることが好ましい。pHは7付近が好ましい。pHの調節にはHEPESなどの緩衝液などを用いても良い。Ca2+濃度は10〜100nMであることが好ましい。Ca濃度の調節にはEGTAなどのCa2+キレータなどを用いても良い。注入する第2電解液303の液量は注入口113の容積と同程度が最も好ましいが、注入口113の容積よりも少なくても良いし、多くても良い。第2電解液303は、第1電解液301と同じでも良いし、異なっても良い。
第2電解液注入工程では、適量の第2電解液303を注入口113へ滴下することが好ましい。図7(a)および(b)は、第2電解液注入工程において、第2電解液303を注入口113へ注入する様子を示す。図7(a)に示すように、第2電解液303を注入口113へ滴下する時、第1貫通孔108に形成された脂質溶液302の膜を壊さないように、注入口113の内壁面113aに沿って第2電解液303を注入することが好ましい。注入口113の内壁面113aは傾斜していることが好ましい。第2貫通孔110の内壁面110cは傾斜していることが好ましい。図7(b)に示すように、第2貫通孔110の内壁面110cは傾斜していても良い。注入口113の内壁面113aと、第2貫通孔110の内壁面110cの傾斜角は、同じでも良いし、異なっていても良い。第2電解液303を容易に注入するために、注入口113の内壁面113aは、親水処理されることが好ましい。第2電解液303を容易に注入するために、第2貫通孔110の内壁面110cは、親水処理されることが好ましい。注入口113の内壁面113aは、平坦であっても良いし、第2電解液303を注入しやすいように溝構造や凹凸構造を備えていても良い。
第2電解液注入工程では、第1貫通孔108が脂質溶液302で満たされた後で、第2電解液303の注入を開始することが好ましい。第2電解液注入工程では、第1貫通孔108および第2貫通孔110が脂質溶液302で満たされた後で、第2電解液303の注入を開始することが好ましい。第2電解液注入工程では、第2貫通孔110が脂質溶液302で満たされた後で、第2電解液303の注入を開始することが好ましい。
第2電解液注入工程には、第2電解液303を注入口113へ注入し終えたことを検出する工程を含んでいても良い。第2電解液303を注入口113へ注入し終えたことを検出するには、光学顕微鏡による観察でも良い。注入口113に複数の電極を設けて、電気伝導度を測定して検出しても良い。その他の一般的な電解液の存在を検出する方法を用いても良い。
このようにして、第1貫通孔108に人工脂質膜が形成される。第1貫通孔108と第2貫通孔110に人工脂質膜が形成されても良い。第2貫通孔110のみに人工脂質膜が形成されも良い。人工脂質膜は脂質二重膜であることが最も好ましい。ここでは、第2電解液303の自重により、脂質溶液302の薄膜から有機溶媒が除去される。余剰な有機溶媒は、第1薄膜103と第2薄膜105の少なくとも一方の外周面に沿って、除去されることが好ましい。有機溶媒の除去を促進するために、第1薄膜103と第2薄膜105の少なくとも一方の外周面にあって、第1貫通孔108と第2貫通孔110の近傍に、溝構造や凹凸構造などの微小流体を制御する構造を設けても良い。また、有機溶媒の除去が必要以上に進みすぎないように、第1薄膜103と第2薄膜105の少なくとも一方の外周面にあって、第1貫通孔108と第2貫通孔110の近傍に、溝構造や凹凸構造などの微小流体を制御する構造を設けても良い。
人工脂質膜形成工程には、人工脂質膜の形成を検出する工程を含んでいても良い。人工脂質膜の形成を検出するには、光学顕微鏡による観察でも良い。人工脂質膜の吸光度を測定しても良い。第1チャンバ107と注入口113に複数の電極を設けて、人工脂質膜の膜抵抗や膜容量、膜電流などを測定しても良いし、他の電気的特性を測定しても良い。
かかる構成と動作の手順によれば、(1)適量の脂質溶液を貫通孔へ注入することができるので、外部ポンプなどを用いて余剰な脂質溶液を排出する必要がなくなる(2)脂質溶液を注入する経路と、電解液を注入する経路を別に設けているので、脂質溶液を電解液に置換する必要がなくなるため、簡便で短時間に人工脂質膜を形成することができる。
本実施形態において、人工脂質膜装置100を図1に示す向きに設置して動作させても良いし、他の向きで動作させても良い。図1に示す人工脂質膜形成装置100を、紙面内で反時計方向へ90度回転させた向きに設置し、動作させても良い。
本実施形態において、第1電解液注入工程から人工脂質膜形成工程までの一連の工程は、20℃以上60℃以下で行なうことが好ましく、25℃以上40℃以下がより好ましい。
本実施形態において、分析装置へ上述の人工脂質膜形成方法を採用することが好ましい。分析装置は、臨床検査用分析装置、電気化学分析装置、ガス分析装置、味覚分析装置、神経生理解析装置、イオンチャンネル解析装置、イオンチャンネル機能解析装置、ドラッグスクリーニング分析装置、バイオセンシング装置などに用いても良い。
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2における人工脂質膜形成方法について、図面を参照しながら説明する。
図8(a)および(b)は、実施形態2における人工脂質膜形成装置の断面図および斜投影図である。なお本実施形態において、実施形態1と同様の部分については同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態と実施形態1との相違点は、注入口113の形状である。また、本実施形態と実施形態1との相違点は、第2電解液注入工程である。
図8(a)に示すように、人工脂質膜形成装置100は、第3スペーサ201を備えている。第3スペーサ201の一端には、カバー106が設けられている。第2薄膜105とカバー106の間に、第3チャンバ202が形成される。第3チャンバ202の高さ203は、10nm以上100mm以下が好ましく、10nm以上1mm以下がより好ましい。第3チャンバ202の高さ203は、第3チャンバ202内において、同じでも良いし、異なっていても良い。
図9は、本発明の実施形態2における人工脂質膜形成装置の分解斜投影図である。第3チャンバ202の幅126および第3チャンバ202の長さ127は、第3チャンバ202内において、同じでも良いし、異なっていても良い。なお、本発明では、第3チャンバ107の形状は限定されない。第3チャンバ107の形状は、直方体が最も好ましいが、円柱、三角柱など他の形状でも良い。
第3チャンバ202の幅126は、10nm以上100mm以下が好ましく、1μm以上5mm以下がより好ましい。第3チャンバ202の長さ127は、10nm以上100mm以下が好ましく、1μm以上5mm以下がより好ましい。
図8(a)に示すように、注入口113は、第2薄膜105とカバー106の一端に形成される。第2薄膜105とカバー106の端部の位置を違えることにより第3張り出し部193を形成し、注入口113とすることが好ましい。図8(b)に示す注入口113の第3張り出し部193の長さ204は、1mm以上10mm以下が好ましい。注入口113の第3張り出し部193の幅205は1mm以上20mm以下が好ましい。注入口113は、図8(b)に示すように平坦であっても良いし、液体を注入しやすいように溝構造や凹凸構造を備えていても良い。
第2電解液注入工程は、適量の第2電解液303を毛細管現象により注入口113から第3チャンバ202へ注入することが好ましい。毛細管現象により第2電解液303を第3チャンバ202へ注入する場合、カバー106の外周面の少なくとも一部は親水処理されることが好ましい。カバー106の外周面のうち、第2電解液303に接する部分が親水処理されることが好ましい。カバー106の外周面のうち、第2貫通孔110の近傍を親水処理することが好ましい。カバー106の外周面の少なくとも一部を親水処理するために、酸素プラズマ処理を行なっても良いし、親水性材料で被覆しても良い。また、一般的に知られている他の親水処理を行なっても良い。
本実施形態において、人工脂質膜装置100を図8(a)に示す向きに設置して動作させても良いし、他の向きで動作させても良い。図8(a)に示す人工脂質膜形成装置100を、紙面内で反時計方向へ90度回転させた向きに設置し、動作させても良い。
本実施形態の構成であれば、(1)開口が同一方向を向いている、(2)第3チャンバ202へ第2電解液303を注入する時に、毛細管現象を利用することができるので、容易に溶液を注入することができ、その結果として簡便に人工脂質膜を形成できる。
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態3における人工脂質膜形成方法について、図面を参照しながら説明する。
図10(a)および(b)は、実施形態3における人工脂質膜形成装置の断面図および斜投影図である。なお本実施形態において、実施形態1と同様の部分については同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態と実施形態1との相違点は、第1開口111および第2開口112の形状である。
本実施形態において、図10(a)に示すように、第1開口111は、第1薄膜103と第2薄膜105とカバー106に形成された貫通孔でも良い。
本実施形態において、図10(b)に示すように、第2開口112は、第2薄膜105とカバー106に形成された貫通孔でも良い。
本実施形態の構成であれば、(1)開口が同一方向を向いている、(2)開口や注入口を小さくできるので、溶液が蒸発しにくいので、その結果として簡便に人工脂質膜を形成できる。
(実施形態4)
以下、本発明の実施形態4における人工脂質膜形成方法について、図面を参照しながら説明する。
図11は、実施形態4における人工脂質膜形成装置の断面図および斜投影図である。なお本実施形態において、実施形態1と同様の部分については同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態と実施形態1との相違点は、第1チャンバ107と注入口113に電極401を設けることである。
本実施形態において、電極401は1つでも良いし、複数でも良い。電極401は電気化学測定に適した電極が好ましい。非分極性の電極であることが好ましい。電極401はAg/AgCl電極が最も好ましが、飽和カロメル電極、水素電極などでも良い。電極401は、あるいは、Ag電極、Pt電極、Au電極などの金属電極でも良いし、カーボン電極、グラファイト電極、カーボンナノチューブ電極などでも良い。電極401を用いて人工脂質膜のコンダクタンス、電気容量を測定しても良い。
また、電極401を用いて、第1電解液301または第2電解液303に含まれるイオン、酵素、反応生成物、基質などの化学物質を測定しても良い。なお、本発明では、電極形状、大きさは限定されない。
電極401の位置は、第1チャンバ107と注入口113にあって、第1貫通孔108と第2貫通孔110の近傍に設けることがより好ましい。図11に示すように第1チャンバ107と注入口113に電極401a、401bをそれぞれ設ける場合、同じ電極でも良いし、異なっても良い。複数の電極を組み合わせても良い。
電極401は、人工脂質膜を形成する前に予め設けてあっても良いし、人工脂質膜を形成した後で設けても良い。電極401は、人工脂質膜形成装置100に固定しても良いし、取り外し可能でも良い。第1チャンバ107に設けられる電極401aは、基板101の外周面に形成されることが好ましい。注入口113に設けられる電極401bは、第2薄膜105の外周面またはカバー106の外周面に形成されることが好ましい。
電極401には、増幅器を接続することが好ましい。増幅器はパッチクランプアンプが最も好ましいが、電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ、オペアンプ、作動アンプなどの増幅器を接続しても良い。
本実施形態の構成であれば、人工脂質膜脂を形成するまでの各工程の進捗状況や終点などを、電極401を用いて検出できる。例えば、第1電解液注入工程において、第1チャンバ107に2つの電極を設けて、2つの電極間の電気伝導度を測定すれば、第1電解液301の注入が完了したことを容易に検出できる。
さらには、脂質溶液を注入する経路と電解液を注入する経路を別に設けているので、電解液に浸漬される電極は、脂質溶液によって汚染されない。したがって、電極表面の保護や電極表面の洗浄といったわずらわしい工程を必要としないので、容易に人工脂質膜を形成できる。
(実施形態5)
以下、本発明の実施形態5における人工脂質膜形成方法について、図面を参照しながら説明する。
図12は、実施形態5における人工脂質膜形成装置の断面図および斜投影図である。なお本実施形態において、実施形態1と同様の部分については同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態と実施形態1との相違点は、第1チャンバ107にセンサ402を設けることである。
センサ402は、人工脂質膜を形成する前に予め設けてあっても良いし、人工脂質膜を形成した後で設けても良い。センサ402は、人工脂質膜形成装置100に固定しても良いし、取り外し可能でも良い。第1チャンバ107に設けられるセンサ402は、基板101の外周面に形成されることが最も好ましい。
本実施形態において、センサ402は、電気化学測定に適したセンサが最も好ましい。センサ402は、イオン電極、イオン感応電界効果トランジスタ(ISFET)が最も好ましい。イオン電極はカリウムイオン電極、ナトリウムイオン電極、カルシウムイオン電極、塩化物イオン電極などが好ましい。イオン感応電界効果トランジスタにより、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオンなどを検出することが好ましい。
なお、センサ402は、オプトード、QCM(Quartz crystal microbalance)、SAW(Surfaceacousticwave)センサ、SPR(Surface plasmonresonance)、LSPR(Localizedsurface plasmon microbalance)、有機電気化学トランジスタ、酵素センサなどでも良い。吸光度や反射率など光学特性を計測するための光源や検出器などを設けても良い。
本発明では、センサ402の数、形状、大きさは限定されない。またセンサ402の位置は、第1チャンバ107にあって、第1貫通孔108の近傍に設けることがより好ましい。なお、センサ402は注入口113に設けても良い。センサ402を注入口113に設ける場合、第2薄膜105の外周面またはカバー106の外周面に形成されることが好ましい。
本実施形態において、注入口113に電極403を設けても良い。電極403は、人工脂質膜を形成する前に予め設けてあっても良いし、人工脂質膜を形成した後で設けても良い。電極403は、人工脂質膜形成装置100に固定しても良いし、取り外し可能でも良い。電極403は、第2薄膜105の外周面またはカバー106の外周面に形成されることが好ましい。電極403は第1チャンバ107に設けても良い。電極403を第1チャンバ107に設ける場合、基板101の外周面に形成されることが最も好ましく、第1薄膜103の外周面に形成されても良い。
電極403は電気化学測定に適した電極が好ましい。非分極性の電極であることが好ましい。電極403はAg/AgCl電極が最も好ましいが、飽和カロメル電極、水素電極などでも良い。電極403は、あるいは、Ag電極、Pt電極、Au電極などの金属電極でも良いし、カーボン電極、グラファイト電極、カーボンナノチューブ電極などでも良い。電極403を用いて人工脂質膜のコンダクタンス、電気容量を測定しても良い。また、電極403を用いて、第1電解液301または第2電解液303に含まれるイオン、酵素、反応生成物、基質などの化学物質を測定しても良い。
なお、本発明では、電極形状、大きさは限定されない。また電極403の位置は、注入口113にあって、第2貫通孔110の近傍に設けることがより好ましい。電極403は参照電極として用いても良い。
本実施形態の構成であれば、人工脂質膜脂を形成するまでの各工程の進捗状況や終点などを、センサ402を用いて検出できる。例えば、第1電解液注入工程において、第1チャンバ107にセンサ402としてイオン電極を設けることにより、第1電解液301の注入が完了したことを容易に検出できる。
さらには、人工脂質膜の直近にセンサを設けるので、人工脂質膜の電気的特性を測定するときにノイズを低減することができる。その結果、容易に人工脂質膜の形成を検出できるのでより好ましい。
[実施例]
まず、人工脂質膜形成装置の作製方法を説明する。基板101としてホウケイ酸ガラスを用いた。ホウケイ酸ガラスは22mm×22mm×0.17mmであった。まず、ホウケイ酸ガラスを純水、エタノール、アセトンで10分ずつ超音波洗浄した。次に、UVオゾンアッシャーによりホウケイ酸ガラスの外周面を親水化処理した。処理時間は5分間とした。
第1スペーサ102、第1薄膜103、第2スペーサ104、第2薄膜105は厚み100μmのテフロン(登録商標)フィルムを用いた。第1スペーサ102と第1薄膜103と第2スペーサ104と第2薄膜105には、一枚のテフロン(登録商標)フィルムを用いた。テフロン(登録商標)フィルムの大きさは20mmx10mmであった。1枚のテフロン(登録商標)フィルムを中央で折り曲げて成型した。
カバー106にはポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いた。ポリジメチルシロキサンは厚み0.5mmのフィルム状に成型し、第2貫通孔110へ溶液を注入できる位置に直径3mmの貫通孔を形成した。
第1貫通孔108は第1薄膜103の両面を貫通するようにドリルにより形成した。第1貫通孔108の直径は200μmであった。
第2貫通孔110は第2薄膜105の両面を貫通するようにドリルにより形成した。第2貫通孔110の直径は200μmであった。
第1貫通孔108と第2貫通孔110は、位置ずれを抑制するために、第1薄膜103と第2薄膜105を重ねた状態で同時に形成した。
なお、第1貫通孔108と第2貫通孔110の形成は、第1薄膜103と第2薄膜105にそれぞれ第1貫通孔108と第2貫通孔110を別々に形成した後、位置合わせを行いながら、第1薄膜103と第2薄膜105を積層しても良い。
第1貫通孔108と第2貫通孔110は、第1薄膜103と第2薄膜105の一辺から2mmの位置に形成した。第1貫通孔108と第2貫通孔110は、第1薄膜103と第2薄膜105の一辺から0.5mm以上3mm以下の位置に形成することが好ましい。
第2薄膜105に第2開口112を設けた。第2開口112は第2薄膜105を貫通する直径1mmの円形の孔であった。第2開口112はドリルで形成した。
第1薄膜103と第2薄膜105に第1開口111を設けた。第1開口111は、第1薄膜103と第2薄膜105を貫通する直径1mmの円形の孔であった。第1開口111は、第1薄膜103と第2薄膜105を重ねた状態で同時にドリルにより形成した。
基板101、第1スペーサ102、第1薄膜103、第2スペーサ104、第2薄膜105、カバー106を積層した。第1チャンバ107と第2チャンバ109から溶液が漏洩しないように積層された基板101、第1スペーサ102、第1薄膜103、第2スペーサ104、第2薄膜105、カバー106の周縁部をエポキシ接着剤で封止した。なお、カバー106は第2薄膜105へ自発密着させた。
最後に、積層された基板101、第1スペーサ102、第1薄膜103、第2スペーサ104、第2薄膜105、カバー106を、2枚のポリカーボネート板(36mm×36mm×1mm)で挟み、ポリカーボネート板の4隅をボルトで固定した。カバー106に接する方のポリカーボネート板には、第1開口111、第2開口112、注入口113へ溶液を注入できるように、直径9mmの円形孔を1つ設けた。
次に、人工脂質膜の形成手順を説明する。まず、第1電解液注入工程を行なった。第1電解液301として1M KCl溶液を用いた。第1電解液301の液量は1μLであった。第1電解液301を第1開口111へ滴下した。滴下された第1電解液301は、毛細管現象により第1チャンバ107へ注入された。第1チャンバ107の内壁面は親水処理されているため、容易に第1電解液301を注入することができた。第1電解液301を注入するのに要する時間は1秒以下であった。第1電解液注入工程では、はじめに、第1チャンバ107の中で第1貫通孔108および第1貫通孔108周辺領域以外が、第1電解液で満たされた。その後、第1貫通孔108周辺領域および第1貫通孔108が第1電解液301で満たされた。第1電解液301が第1チャンバ107へ注入される様子を光学顕微鏡により観察した。
第1電解液注入工程の後で、脂質溶液注入工程を行なった。脂質溶液302としてリン脂質(1,2-diphytanoyl-sn-glycero-3-phosphocholine, Avanti Polar Lipids)と有機溶媒(chloroform, 和光純薬)の混合液を用いた。脂質溶液302の濃度は25mg/mLであった。脂質溶液302を第2開口112へ滴下した。脂質溶液302の液量は0.4μLであった。脂質溶液302は、第2チャンバ109を経由して、第1貫通孔108と第2貫通孔110へ注入した。脂質溶液302は毛細管現象により注入した。第2チャンバ109の内壁面はテフロン(登録商標)であって疎水的であるため、容易に脂質溶液302を注入することができた。脂質溶液302を注入するのに要する時間は1秒以下であった。脂質溶液302が第1貫通孔108と第2貫通孔110へ注入される様子を光学顕微鏡により観察した。
次に、脂質溶液注入工程の後で、第2電解液注入工程を行なった。第2電解液303は1M KCl溶液を用いた。第2電解液303の液量は2μLであった。第2電解液303を注入口113へ滴下した。第2電解液303は、注入口113の内壁を伝わって注入された。第2電解液303を注入するのに要する時間は1秒以下であった。第2電解液303が注入口113へ注入される様子を目視および光学顕微鏡により観察した。
最後に、第2電解液注入工程の後で、人工脂質膜形成工程を行なった。人工脂質膜形成工程として、10秒間待機した。なお人工脂質膜形成工程を経て、人工脂質膜が形成されたことを確認するために、光学顕微鏡により人工脂質膜を観察した。人工脂質膜が形成されるといわゆる黒膜として観察される。なぜなら人工脂質膜の厚みは2〜5nm程度であり、光をほとんど反射しないためである。図13(a)および(b)は人工脂質膜の顕微鏡写真である。図13(b)は、図13(a)において、第1貫通孔108および人工脂質膜の領域501の境界線を白点線により明示したものである。図13(b)において領域501は、その周りに比べて暗く見えた。時間の経過と共に領域501の面積は広がり、人工脂質膜の薄膜化が進展する様子を観察できた。
さらに、人工脂質膜の電気的特性を測定するために、第1開口111と注入口113にそれぞれ電極401aと電極401bを設けた。電気的特性の測定にはパッチクランプアンプ(EPC-10, HEKA)を用いた。電極401aはグランド線、電極401bは信号線に接続した。電極401aに対して電極401bへ、5mV、10msecのパルス電圧を印加した。人工脂質膜に流れる電流の過渡応答を記録した。図14は人工脂質膜に流れる電流の過渡応答を示す。過渡応答は人工脂質膜に見られる電気容量性の膜電流が測定された。
一方、人工脂質膜が形成されずに、第1チャンバ107の中の第1電解液301と注入口113の中の第2電解液303が直接接触する場合には、図14に示すような電気容量性の膜電流は測定されなかった。
さらに、上述の人工脂質膜形成の手順によれば、第1開口111と注入口113に設けられた電極401aと電極401bは、脂質溶液302に触れることなく、電極表面を清浄な状態を保ったままで人工脂質膜を形成できた。その結果、人工脂質膜の電気的特性を正常に測定できた。
[比較例]
従来の人工脂質膜形成方法の1つである、泡吹き付け法を用いて、人工脂質膜を形成した。
図15は比較例の人工脂質膜形成装置である。第1チャンバ601は、薄膜602に直径1.5mmの円形の貫通孔を開けて作製した。第1チャンバ601は抜き加工により作製した。薄膜602としてポリジメチルシロキサンを用いた。薄膜602の大きさは、10mm×10mm×0.5mmであった。人工脂質膜を形成する貫通孔603は、厚さ100μmのテフロン(登録商標)フィルム604に直径200μmの円形の貫通孔を開けて作製した。貫通孔603はドリルにより形成した。注入口605は、薄膜606に直径1.5mmの円形の貫通孔を開けて作製した。注入口605は抜き加工により作製した。薄膜606としてポリジメチルシロキサンを用いた。薄膜606の大きさは、10mm×10mm×0.5mmであった。そして、図15に示すように、テフロン(登録商標)フィルム604と薄膜602と薄膜606をガラス基板607の上に積層した。ガラス基板607としてホウケイ酸ガラスを用いた。ガラス基板607の大きさは、22mm×22mm×0.17mmであった。
次に、人工脂質膜形成方法の手順を説明する。まず、マイクロピペットを用いて、第1チャンバ601へ電解液を注入した。電解液として1M KClを用いた。注入した電解液の量は1μLであった。次に薄膜602の上にテフロン(登録商標)フィルム604を積層した。余剰な電解液を除去した。次に、テフロン(登録商標)フィルム604の上に薄膜606を積層した。そして、マイクロピペットを用いて、注入口605へ電解液を注入した。電解液として1M KClを用いた。注入した電解液の量は1μLであった。最後に、マイクロピペットを用いて脂質溶液を貫通孔603へ吹き付けた。脂質溶液は、リン脂質(1,2-diphytanoyl-sn-glycero-3-phosphocholine, Avanti Polar Lipids)と有機溶媒(chloroform, 和光純薬)の混合液を用いた。脂質溶液の濃度は25mg/mLであっ
た。
形成された人工脂質膜を光学顕微鏡により観察した。図16(a)および(b)は、比較例での人工脂質膜の光学顕微鏡写真である。図16(b)は、図16(a)において、貫通孔603および人工脂質膜の領域608の境界線を白点線により明示したものである。図16(b)において領域608は、その周りに比べて暗く見えた。時間の経過と共に領域608の面積は広がり、人工脂質膜の薄膜化が進展する様子が観察された。
図17は、本発明の実施例と比較例において、人工脂質膜の形成率を比較した図である。ここで言う形成率とは、人工脂質膜が形成された回数を試行回数で除して100を掛けた数値である。具体的には、実施例および比較例において10回ずつ人工脂質膜の形成を試みた。その結果、実施例においては60%、比較例では10%の形成率で人工脂質膜を形成できた。この結果は、従来例に比べて簡便な操作で人工脂質膜を高率に形成できることを示す。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。したがって、上記説明は例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
本発明によれば、適量の脂質溶液を貫通孔へ導入することができるので、余剰な脂質溶液を排出するために外部ポンプを設ける必要もないし、長時間待機する必要もない。その結果、従来の人工脂質膜形成方法および人工脂質形成装置よりも簡便で短時間に人工脂質膜を形成することができる。
簡便で短時間に人工脂質膜を形成できるならば、人工脂質膜を利用するような各種分析操作を大幅に効率化できる。例えば、イオンチャンネルや受容体などの膜タンパクを組み込んだ人工脂質膜は、膜タンパクの基本構造解析、機能解明および膜タンパク−膜タンパク間の相関研究への用途に応用できる。本発明は上述の研究発展に直接寄与できるだけでなく、イオンチャンネルに起因する疾患の診断や新薬開発のスクリーニングなどの医療、製薬分野への産業応用の可能性もある。また、膜タンパクが有する特異的な分子認識性を利用すればバイオセンサなどへ応用することが可能である。
10 容器
11 平板
12 電解液
13 微小孔
14 脂質溶液
15 ピペット
20 容器
21 平板
22 微小孔
23 電解液
24 注入口
25 脂質分子
26 電解液
27 注入口
31 第1の室
32 隔壁
33 第2の室
34 小孔
35 人工脂質膜
100 人工脂質膜形成装置
101 基板
102 第1スペーサ
103 第1薄膜
104 第2スペーサ
105 第2薄膜
106 カバー
107 第1チャンバ
108 第1貫通孔
108a、108b 断面
109 第2チャンバ
110 第2貫通孔
110a、110b 断面
110c 内壁面
111 第1開口
112 第2開口
113 注入口
113a 内壁面
114 第1チャンバの高さ
115 第2チャンバの高さ
120 第1チャンバの幅
121 第1チャンバの長さ
122 第1貫通孔の直径
123 第2チャンバの幅
124 第2チャンバの長さ
125 第2貫通孔の直径
126 第3チャンバの幅
127 第3チャンバの長さ
130 第1開口の張り出し部の長さ
131 第1開口の張り出し部の幅
132 第2開口の張り出し部の長さ
133 第2開口の張り出し部の幅
134 注入口の直径
191 第1張り出し部
192 第2張り出し部
193 第3張り出し部
201 第3スペーサ
202 第3チャンバ
203 第3チャンバの高さ
204 注入口の張り出し部の長さ
205 注入口の張り出し部の幅
301 第1電解液
302 脂質溶液
303 第2電解液
401、401a、401b 電極
402 センサ
403 電極
501 領域
601 第1チャンバ
602 薄膜
603 貫通孔
604 テフロン(登録商標)フィルム
605 注入口
606 薄膜
607 ガラス基板
608 領域

Claims (20)

  1. 人工脂質膜形成装置を用いた人工脂質膜形成方法であって、
    前記装置は、
    基板と、
    前記基板の一端に設けられた第1スペーサと、
    前記第1スペーサを介して前記基板に設けられた第1薄膜と、
    前記第1薄膜の一端に設けられた第2スペーサと、
    前記第2スペーサを介して前記第1薄膜に設けられた第2薄膜と、
    第2薄膜の一端に設けられたカバーと
    を備え、
    前記基板と前記第1薄膜との間には第1チャンバが備えられ、
    前記第1薄膜は両面を貫通する第1貫通孔を備え、
    前記第1薄膜と前記第2薄膜との間には第2チャンバが備えられ、
    前記第2薄膜は両面を貫通する第2貫通孔を備え、
    前記カバーには前記第2貫通孔へ接続する注入口が備えられ、
    平面視において前記第1貫通孔は前記第2貫通孔と重なり、
    前記第1チャンバは、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔を介して前記注入口に接続され、
    前記方法は、
    前記第1チャンバへ電解液を注入する第1電解液注入工程、
    前記第2チャンバを経て、前記第1貫通孔または前記第2貫通孔の少なくとも一方へ、脂質溶液を注入する脂質溶液注入工程、および
    前記注入口へ電解液を注入して、前記脂質溶液が注入された貫通孔の内部に人工脂質膜を形成する第2電解液注入工程、
    を順に包含する人工脂質膜形成方法。
  2. 前記第1薄膜、第1スペーサ、および前記第2薄膜は、一体的に形成されている、請求項1に記載の人工脂質膜形成方法。
  3. 前記第1貫通孔は、前記第2貫通孔の断面積と同じ断面積を有する、請求項1に記載の人工脂質膜形成方法。
  4. 前記注入口は、平面視において前記第1チャンバと重なり合う、請求項1に記載の人工脂質膜形成方法。
  5. 前記第1チャンバの外周面は、親水性を有する、請求項1に記載の人工脂質膜形成方法。
  6. 前記第2チャンバの外周面は、疎水性を有する、請求項1に記載の人工脂質膜形成方法。
  7. 前記注入口の外周面は、親水性を有する、請求項1に記載の人工脂質膜形成方法。
  8. 前記第1チャンバおよび前記注入口のうち少なくとも一方は、電極を備えている、請求項1に記載の人工脂質膜形成方法。
  9. 前記第1チャンバおよび前記注入口のうち少なくとも一方は、センサを備えている、請求項1に記載の人工脂質膜形成方法。
  10. 前記第1電解液注入工程では、毛細管現象により前記第1チャンバへ前記電解液が注入される、請求項1に記載の人工脂質膜形成方法。
  11. 前記脂質溶液注入工程では、毛細管現象により前記第1貫通孔または前記第2貫通孔の少なくとも一方へ、前記脂質溶液が注入される、請求項1に記載の人工脂質膜形成方法。
  12. 人工脂質膜形成装置であって、
    前記装置は、
    基板と、
    前記基板の一端に設けられた第1スペーサと、
    前記第1スペーサを介して前記基板に設けられた第1薄膜と、
    前記第1薄膜の一端に設けられた第2スペーサと、
    前記第2スペーサを介して前記第1薄膜に設けられた第2薄膜と、
    第2薄膜の一端に設けられたカバーと
    を備え、
    前記基板と前記第1薄膜との間には第1チャンバが備えられ、
    前記第1薄膜は両面を貫通する第1貫通孔を備え、
    前記第1薄膜と前記第2薄膜との間には第2チャンバが備えられ、
    前記第2薄膜は両面を貫通する第2貫通孔を備え、
    前記カバーには前記第2貫通孔へ接続する注入口が備えられ、
    平面視において前記第1貫通孔は前記第2貫通孔と重なり、
    前記第1チャンバは、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔を介して前記注入口に接続されている、人工脂質膜形成装置。
  13. 前記第1薄膜、第1スペーサ、および前記第2薄膜は、一体的に形成されている、請求項12に記載の人工脂質膜形成装置。
  14. 前記第1貫通孔は、前記第2貫通孔の断面積と同じ断面積を有する、請求項12に記載の人工脂質膜形成装置。
  15. 前記注入口は、平面視において前記第1チャンバと重なり合う、請求項12に記載の人工脂質膜形成装置。
  16. 前記第1チャンバの外周面は、親水性を有する、請求項12に記載の人工脂質膜形成装置。
  17. 前記第2チャンバの外周面は、疎水性を有する、請求項12に記載の人工脂質膜形成装置。
  18. 前記注入口の外周面は、親水性を有する、請求項12に記載の人工脂質膜形成装置。
  19. 前記第1チャンバと前記注入口のうち少なくとも一方は、電極を備えている、請求項12に記載の人工脂質膜形成装置。
  20. 前記第1チャンバと前記注入口のうち少なくとも一方は、センサを備えている、請求項12に記載の人工脂質膜形成装置。
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