JP4484343B2 - 長期強度抑制型速硬性セメント組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、長期強度抑制型速硬性セメント組成物に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、水と混和されたとき、初期において速硬性を示して所要の機械的強度を発現するが、その後は長期強度が抑制された性状を示し、この長期強度が抑制された期間中は、破壊又は掘削が容易なセメント組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にセメント用遅延剤を、セメント中に添加するとき、遅延剤の添加量が増大する程セメントの凝結も遅れるが、添加量と、凝結時間との間に比例的な関係を示すものは少なく、ある限度量を超えると、著しい凝結・硬化の遅延をもたらす傾向にあることが知られている(笠井芳夫・小林正几編著、改訂版セメント・コンクリート用混和材料、技術書院発行、第371頁)。
【0003】
また、セメント用凝結遅延剤として各種糖類が用いられることも知られており、例えば、特開昭59−84972号にはセメント類と石灰類との重量比99:1〜70:30の混合物100重量部に対し、0.1〜10重量部の糖類を混合したセメント組成物が開示されている。このセメント/糖類組成物は、連続的な施工により一体化した改良地盤を形成する場合には、一定期間の硬化遅延性を示し、しかる後に速やかな硬化強度を発現するという特性を有するものである。
【0004】
ところが、セメント組成物を使用する工事において、セメントモルタルを打設した後、初期においては、速やかに硬化して所要の機械的強度を発現し、しかも、その後は長期強度が抑制された性状を示して、機械的強度の増大速度が遅く、従って、初期強度発現後の硬化したコンクリートの破壊又は掘削が容易であることを必要とする場合がある。例えば緊急の道路工事などにおいて、一時交通を遮断してセメントモルタルの打設を行い、早急に(例えば1時間後に)所要の機械的強度を発現させて交通を開放し、その後にコンクリートの所要箇所に破壊、掘削などを施して、工事箇所を完成する場合、或は、工事箇所の一部にセメント系固化材による地盤改良を施し、これを速やかに硬化して補強し、その後、他の部分の工事の進行に応じて、地盤改良箇所の除去、又は掘削などを施して工事を完成させる場合などである。
【0005】
このような場合に、従来の遅硬性セメント組成物を用いると、初期における機械的強度発現が遅く、しかもその後に強度が著しく増大することとなり、初期速硬化長期強度抑制の目的を達成することができない。
【0006】
一方、上記目的に対して、従来の速硬性セメント(例えばジェットセメント、アルミナセメントなど)を主成分として含むグラウト材、或は水ガラスを含むグラウト材に、ハンドリングタイムを確保するための遅延剤を添加して用いると、所要のバンドリングタイムの経過後は、セメントは急速に硬化して初期に機械的強度を発現するが、その後も硬化は急速に進行してきわめて高い機械的強度を発現し、その破壊及び掘削などが困難になる。
【0007】
そこで、速硬性を有し、かつ長期強度が抑制されたセメント組成物の出現が強く望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、硬化初期においては速硬性を示して、所望の機械的強度を発現することができるが、その後は長期強度が抑制された性状を示して、硬化体を破壊及び掘削することが容易な、長期強度抑制型速硬性セメント組成物を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来硬化遅延剤として用いられている糖類のうちの特定の糖類を、セメント含有結合材に対して、特定の重量割合で混合することによって上記課題を、解決し得ることを見出し、この知見に基いて本発明を完成した。
【0010】
本発明の長期強度抑制型速硬性セメント組成物は、セメントを主成分として含む結合材と、前記結合材100重量部に対し、10重量部を超え、30重量部未満の、ブドウ糖、マルトース及び果糖から選ばれた少なくとも1種を主成分とする糖類とを含み、水と混合したとき、初期において速硬性を示すが、その後は長期強度が抑制された性状を示すことを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の長期強度抑制型速硬性セメント組成物は、セメントを主成分として含有する結合材に、ブドウ糖、マルトース及び果糖から選ばれた少なくとも1種を主成分とする糖類を速硬化・長期強度抑制剤として配合したものである。本発明においては、結合材100重量部に対し、前記糖類が、10重量部を超え、30重量部未満の、好ましくは11〜29重量部、より好ましくは15〜25重量部の割合で、配合されることが重要であり、それが、10重量部以下においては、前記糖類は硬化遅延剤として作用し、セメントモルタルの初期硬化の促進効果が不十分になり、また、それが30重量部以上になると、初期硬化促進効果が不十分になり、かつ長期硬化体にクラックが発生するなどの欠点を生じ耐久性が不十分になる。
本発明の長期強度抑制型速硬性セメント組成物において、その水性スラリーは、上記組成に基づき、室温における一軸圧縮強さが、硬化時間60分において50KN/m2以上(好ましくは100KN/m2以上)であり、かつ、硬化時間7日において、5000KN/m2以下(好ましくは3000KN/m2以下)であることが好ましい。
【0012】
本発明のセメント組成物に含まれる結合材は、セメントを主成分として含みその他の結合成分として、石灰、石こう等の自硬性を有するもの、高炉スラグ等の潜在水硬性を有するもの、フライアッシュ、シリカフューム等のポゾラン粉末などを含むことができる。前記他の結合成分は、セメント成分100重量部に対し、0〜40重量部の割合で配合されることが好ましく、より好ましくは0〜20重量部である。
【0013】
本発明において、結合材の主成分として用いられるセメントは、普通セメント、早強セメント、超早強セメント、中庸熱セメント、低熱セメント、耐硫酸塩セメントなどの各種ポルトランドセメントやジェットセメント、アルミナセメントなどの特殊セメントなどを包含する。
【0014】
本発明において用いられる糖類は、単糖類及び還元性二糖類から選ばれた1種以上を含むものであって、好ましくはブドウ糖(グルコース)、マルトース(麦芽糖)及び果糖から選ばれた少なくとも1種を主成分として含む糖類が用いられる。前記糖類は、粉末状態で結合材成分と混合し、この混合組成物を、水性スラリーとして用いてもよいし、結合材成分の水性スラリーの調製の際にその中に、糖類の水溶液を混合してもよい。
【0015】
【実施例】
本発明は、下記実施例によりさらに説明する。
下記実施例及び比較例において用いられる「液糖A」とは、糖類固形分75重量%、水分25重量%からなり、糖類固形分中のマルトース含有量が約70重量%及び比重が1.38の糖類水溶液である。
【0016】
実施例1〜3及び比較例1〜4
実施例1〜3及び比較例1〜4の各々において、糖類含有セメント組成物の水性スラリーを、表1の組成で調製した。このセメント組成物の水性スラリーの調製において、水と普通ポルトランドセメント(NC、比重:3.05)とから、水/セメント比約60%のセメントミルクを調製し、これに液糖Aの水溶液を混合した。表1において、液糖Aの混合量は、セメントの重量に対する液糖(A)の重量の割合(パーセント)により示されている。
得られたセメントスラリーの硬化状況を、60分〜91日後の一軸圧縮強さと、クラック発生の有無により、表2に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
液糖AをNCに対して重量比10%を超え30%未満の範囲で添加した場合にのみ1時間経過で強度発現が起こる。
一方、NCに対して液糖Aの添加重量比が10%以下の場合は、1時間では硬化せず、測定不能であった。また30%以上の場合は、耐久性に関して問題があり、空気に触れるとクラックが発生した。
【0020】
実施例4〜6並びに比較例5及び6
実施例4〜6並びに比較例5及び6の各々において、普通ポルトランドセメント(NC)と、水と、ブドウ糖とを表3に記載の組成で混合してセメント組成物スラリーを調製し、その硬化状況(一軸圧縮強さ及びクラックの有無)を検討した。その結果を表4に示す。
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
実施例7〜9並びに比較例7及び8
実施例7〜9並びに比較例7及び8の各々において、普通ポルトランドセメント(NC)と水と、マルトースとを、表5に記載の組成で混合してセメント組成物スラリーを調製し、その硬化状況を測定した。その結果を表6に示す。
【0024】
【表5】
【0025】
【表6】
【0026】
実施例10〜14及び比較例9〜10
実施例10〜14及び比較例9〜10の各々において、普通ポルトランドセメント(NC)1078kg/m3 と、水646kg/m3 と、表7に記載の糖類15重量%(NC重量に対し)とからセメント組成物スラリーを調製し、その硬化状況を測定した。結果を表7に示す。表7中、果糖、トレハロース及びデキストリンは粉末状のものを用いた。なお液糖Bは糖類固形分75重量%と水分25重量%とからなり、糖類固形分75重量%のうち、果糖が55重量%を占めていた。
【0027】
【表7】
【0028】
表7より明らかなように、糖類の中で、特に強度発現が速いものは、ブドウ糖またはマルトースを含むものであった。
また、マルトース以上の鎖長をもつグルコース重合体混合物であるデキストリンや、非還元性二糖であるトレハロースでは、速硬性が得られなかった。
【0029】
実施例15〜17
実施例15〜17の各々において、表8に示されているセメント(普通ポルトランドセメント(NC)、早強ポルトランドセメント(HC)、又は高炉セメントB種(BB)1078kg/m3 と、水646kg/m3 と、液糖A15重量%(セメント重量に対し)とから、セメント組成物スラリーを調製し、その硬化状況を測定した。その結果を表8に示す。
【0030】
【表8】
【0031】
表8から、普通ポルトランドセメントとはクリンカの組成において異なる早強ポルトランドセメント、及び結合材中に高炉スラグを含んでいる高炉セメントB種についても、普通ポルトランドセメントと同様に、本発明において使用できることが認められた。
【0032】
実施例18及び比較例11
実施例18及び比較例11の各々において、表9に示す組成のセメント組成物スラリーを調製した。比較例11においては、普通ポルトランドセメントの代りに、ジェットセメント系材料を用い、液糖Aを使用しなかった。得られたセメント組成物の硬化性試験結果を表10に示す。
【0033】
【表9】
【0034】
【表10】
【0035】
表9、表10から明らかなように、本発明の組成物は、普通ポルトランドセメントを用いてジェットセメント系材料と同等の初期強度を有しており、しかも、ジェットセメント系材料に比べて、大幅に長期強度を抑制出来ることがわかる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の長期強度抑制型速硬性セメント組成物は、その水性スラリーの硬化の初期においては、速硬性を示し、実用上十分な機械的強度を発現するが、その後は長期強度が抑制される性状を示し、このため、硬化後のコンクリートを容易に破壊又は掘削できるものであり、地盤改良材、注入材、充填材として各種工事に利用できるものである。
Claims (1)
- セメントを主成分として含む結合材と、前記結合材100重量部に対し、10重量部を超え、30重量部未満の、ブドウ糖、マルトース及び果糖から選ばれた少なくとも1種を主成分とする糖類とを含み、水と混合したとき、初期において速硬性を示し、その後は長期強度が抑制された性状を示す長期強度抑制型速硬性セメント組成物。
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