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JP4484556B2 - 乾癬及び扁平上皮細胞癌の治療のための方法及び医薬組成物 - Google Patents
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JP4484556B2 - 乾癬及び扁平上皮細胞癌の治療のための方法及び医薬組成物 - Google Patents

乾癬及び扁平上皮細胞癌の治療のための方法及び医薬組成物 Download PDF

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本発明は、細胞の扁平上皮細胞癌関連抗原(Squamous Cell Carcinoma Antigen、以下「SCCA」と称す)の発現を抑制することで、乾癬及び扁平上皮細胞癌から成る群から選ばれる疾患を治療及び/又は予防する方法、医薬組成物を提供する。
SCCAは扁平上皮癌細胞から抽出される抗原であり、子宮頚部、肺、食道、皮膚の扁平上皮細胞癌で高い血中濃度を示し、扁平上皮細胞癌の診断によく利用されている(H. Kato et al. Cancer 40:1621-1628 (1977); N.Mino et al. Cancer 62: 730-734 (1988))。特に、SCCAの血中レベルは扁平上皮細胞癌の進行段階、悪性度、腫瘍の大きさなどに良好に相関するため、癌の早期発見のみならず、癌治療効果の評価や再発のおそれの診断などにおいて特に有効な癌マーカーである。
SCCAはまた、乾癬表皮の上層において発現の亢進が認められることでも知られる(Takeda A.ら、 J. Invest. Dermatol. (2002) 118(1), 147-154)。乾癬は皮膚病の一つであり、表皮細胞の増殖・分化異常と炎症細胞浸潤を特徴とする慢性、再発性の炎症性不全角化症である乾癬がある。乾癬は遺伝的素因に種々の環境因子が加わって発症すると考えられる(Hopso-Havu et al. British Journal of Dermatology (1983) 109, 77-85)。
SCCAは染色体18q21.3上にタンデムに並んでいる二つの遺伝子SCCA−1及びSCCA−2遺伝子によりコードされる。それらによりコードされるタンパク質、SCCA−1及びSCCA−2は共に分子量約45,000のタンパク質であり、非常に相同性が高いが、反応部位のアミノ酸配列が異なり、異なる機能を有していると考えられている(Schick et al. J. Biol. Chem. (1997) 27213, 1849-55)。扁平包皮細胞癌や乾癬などの疾患においてSCCA−1及びSCCA−2が高発現することはわかっていたが、それらが疾患細胞においてどのような機能を果たしているかは不明であった。
Cancer 40:1621-1628 (1977) Cancer 62: 730-734 (1988) J. Invest. Dermatol. (2002) 118(1), 147-154 British Journal of Dermatology (1983) 109, 77-85 J. Biol. Chem. (1997) 27213, 1849-55
本発明者はSCCAが関与する表皮の生理学的メカニズムの解明を目的とする研究を行っていたところ、SCCAが細胞のアポトーシスを抑制する作用を有する抗アポトーシス因子であることを驚くべきことに見出した。
簡単に説明すると、本発明者は皮膚UV防御メカニズムの検討を行い、ヒト皮膚へのUV照射により有棘層及び顆粒層においてSCCAの発現が強力に亢進することを明らかにした。そこで、SCCA発現の認められない3T3細胞にヒトSCCA−1及びSCAA−2遺伝子を導入して安定発現系を確立し、SCCA安定発現系細胞のUV照射によるアポトーシスを調べたところ、いずれのSCCA安定発現系においてもUV照射によるアポトーシスが有意に減少することが明らかになった。
さらに、SCCAを高発現するHaCat細胞にpSilencerベクターで恒常的にsiRNAを発現させるRNA干渉法によりSCCA−1及びSCCA−2のノックダウン(siSCCA)細胞株を樹立し、その細胞株にUV照射をした結果、コントロール株と比べ、SCCAノックダウン細胞のアポトーシス率が有意に高いことが示された。以上から、本発明者はSCCAがアポトーシスを抑制する作用を有するタンパク質であると結論づけることができた。
癌や乾癬など、細胞の増殖・分化異常を伴う疾患においては、癌細胞などはアポトーシスの抑制により細胞死から免れ、異常増殖し続けるものと考えられる。従って、SCCAの高発現性を示す細胞においては、抗アポトーシス作用を有するSCCAがその細胞死を抑え、結果としてその細胞の異常増殖につながることが明らかである。よって、アポトーシス抑制作用を有するSCCAの発現を抑えれば、扁平上皮細胞癌や乾癬など、細胞の増殖異常等を伴う疾患を治療・予防できることが明らかである。
本発明は、上記見地に鑑み、SCCA高発現細胞の増殖異常を伴う疾患、例えば癌、特に扁平上皮細胞癌、さらには乾癬などの治療・予防のための方法、医薬組成物の提供を課題とする。
第1の観点において、本発明は細胞の扁平上皮細胞癌関連抗原(SCCA)の発現を抑制することで、乾癬及び扁平上皮細胞癌から成る群から選ばれる疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。好ましくは、細胞のSCCAの発現の抑制は、SCCAをコードする遺伝子のRNA干渉により実施する。より好適な態様において、RNA干渉には、配列番号1のオリゴヌクレオチド又はその変異体を含むセンスオリゴヌクレオチド鎖及び配列番号のオリゴヌクレオチド又はその変異体を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド鎖を含んで成る二本鎖RNAを利用する。ここで、上記配列番号1のオリゴヌクレオチドの変異体はSCCAをコードする遺伝子のヌクレオチド番号46〜66位に対し高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を有し、そして上記配列番号のオリゴヌクレオチドの変異体はSCCAをコードする遺伝子のヌクレオチド番号46〜66位の相補鎖に対し高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を有する。
別の観点において、本発明は細胞のSCCAの発現を抑制することで、乾癬及び扁平上皮細胞癌から成る群から選ばれる疾患を治療及び/又は予防するための医薬組成物を提供する。好ましくは、医薬組成物は、SCCAをコードする遺伝子に対してRNA干渉する短鎖RNAを供する二本鎖RNA含有する。より好適な態様において、上記医薬組成物は、配列番号1のオリゴヌクレオチド又はその変異体を含むセンスオリゴヌクレオチド鎖及び配列番号のオリゴヌクレオチド又はその変異体を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド鎖を含んで成る二本鎖RNAを含有する。ここで、上記配列番号1のオリゴヌクレオチドの変異体はSCCAをコードする遺伝子のヌクレオチド番号46〜66位に対し高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を有し、そして上記配列番号のオリゴヌクレオチドの変異体はSCCAをコードする遺伝子のヌクレオチド番号46〜66位の相補鎖に対し高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を有する。
好適な態様において、上記二本鎖RNAはベクター、例えばpSilencerベクターの中に含有された形態にある。
本発明はさらに、SCCAの発現の抑制された細胞を調製するための方法を提供する。好ましくは、SCCAの発現の抑制は、SCCAをコードする遺伝子のRNA干渉により行われる。より好適な態様において、RNA干渉には、配列番号1のオリゴヌクレオチド又はその変異体を含むセンスオリゴヌクレオチド鎖及び配列番号のオリゴヌクレオチド又はその変異体を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド鎖を含んで成る二本鎖RNAを利用する。ここで、上記配列番号1のオリゴヌクレオチドの変異体はSCCAをコードする遺伝子のヌクレオチド番号46〜66位に対し高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を有し、そして上記配列番号のオリゴヌクレオチドの変異体はSCCAをコードする遺伝子のヌクレオチド番号46〜66位の相補鎖に対し高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を有する。本発明はさらに、上記方法によりSCCAの発現の抑制された細胞及びそのような細胞を含有する哺乳動物も提供する。
本発明により、扁平上皮細胞癌及び乾癬から成る群から選ばれる疾患の治療・予防のための方法、医薬組成物が提供される。
本発明者は、SCCAがアポトーシスを抑制する作用を有するタンパク質であることを解明した。従って、SCCAの発現を抑制することで、癌や乾癬など、扁平上皮細胞癌抗原を発現する細胞の増殖・分化異常を伴う疾患を治療・予防することができることが明らかである。扁平上皮細胞癌としては、例えば子宮頚、肺、食道、上顎、皮膚などの器官における扁平上皮細胞癌が挙げられる。
SCCAは上述のとおり扁平上皮癌細胞や乾癬表皮に存在する分子量約45,000のタンパク質である。SCCA−1及びSCCA−2のアミノ酸配列並びにそれらをコードする核酸配列はTakeda A et al. J. Invest. Dermatol. 118, 147-154 (2002)(前掲)に記載されている。
細胞のSCCAの発現の抑制は、様々な遺伝学的技術、例えばRNA干渉法、アンチセンスRNA・DNA法、ペプチド及びRNA・DNAアプタマー、部位特異的欠失、相同組換え、ドミナントネガティブ対立遺伝子、イントラボディーなど、様々な技術により達成できるが、RNA干渉法によるのが特に好ましい。
RNA干渉法は、標的遺伝子の一部をコードするmRNAの一部に対し相補性な21〜23塩基対程度のセンスオリゴヌクレオチドを含む鎖と上記mRNAの一部に対し相同な21〜23塩基対程度のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む鎖とから構成される二本鎖RNAを細胞へ導入することで標的遺伝子の発現を抑制する方法である。この方法は、遺伝子のコード領域に由来する二本鎖RNAの干渉特性に基づくもので、線虫の遺伝学的研究において優れた有用性を持つことが証明されており(Fire等, Nature (1998)391:806-811)、ショウジョウバエや哺乳動物においても機能欠損表現型を産出するために利用することができる。
本方法では、SCCA遺伝子の適当な標的領域、好ましくはヌクレオチド長さが約18〜23個の領域に相補的な配列(センスオリゴヌクレオチド)と該センス配列に相補性のヌクレオチド長さ約18〜23個の配列(アンチセンスオリゴヌクレオチド)とから構成される二本鎖RNA(dsRNA)をインビトロ合成する。好ましくは、二本鎖RNAはSCCA遺伝子のヌクレオチド番号46〜66位の配列に相補性の配列(ACATGAACTT GGTGTTGGCT T:配列番号1)を含むセンスオリゴヌクレオチドと、上記ヌクレオチド番号46〜66位の配列と相同の配列(AAGCCAACAC CAAGTTCATG T;配列番号)を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドとから構成される。センス及びアンチセンスオリゴヌクレオチド全体の長さは特に限定されるものではないが、例えば25ヌクレオチド以上100ヌクレオチド以下、好ましくは40ヌクレオチド以上80ヌクレオチド以下、より好ましくは50ヌクレオチド以上70ヌクレオチド以下程度である。
センスオリゴヌクレオチドは、配列番号1のオリゴヌクレオチドの変異体を含むオリゴヌクレオチドであってもよい。この変異体はSCCAをコードする遺伝子のヌクレオチド番号46〜66位に対し高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を有するものが好ましい。また、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号のオリゴヌクレオチドの変異体を含むオリゴヌクレオチドであってもよい。この変異体はSCCAをコードする遺伝子のヌクレオチド番号46〜66位の相補鎖に対し高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を有するものが好ましい。ここで高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、例えばナトリウム濃度が約10〜40mM、好ましくは約20mM、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃であることを含む条件をいう。
得られた二本鎖RNAは、標的細胞の直接導入するか、又はdsRNAをプロモーター、ターミネーターなどの転写に必要な要素をもつベクターに予め連結してから標的細胞に導入してよい。ベクターとしては、当業者周知の様々なものを使用することができるが、pSilencerベクター(Ambion)が好ましい。上記二本鎖RNAを含有するベクターを細胞に導入することで、細胞内での転写により、配列番号1(又はその変異体)のセンス鎖と配列番号(又はその変異体)のアンチセンス鎖及びそのセンス鎖とアンチセンス鎖とをつなぐショートヘアピンRNA(shRNA)が生成される。shRNAは次に細胞内のヌクレアーゼ、ダイサーにより21〜23塩基対程度の短鎖RNA(short interfering RNA)へと切断され、複合体RISCを形成してSCCAのmRNAを切断するRNA干渉を起こし、結果として導入細胞によるSCCAの発現が抑制される。
好適には、本発明において、SCCAの発現を抑制する遺伝子、例えば上記二本鎖RNAやその他のSCCAの発現を抑制する遺伝子、例えばアンチセンスDNA又はRNA、アプタマーRNA又はDNAなど(以下、単に「SCCA発現抑制遺伝子」と称す)を、SCCAの発現を抑制し、その結果乾癬や扁平上皮細胞癌の予防・治療のための医薬組成物の活性成分として使用される。上記SCCA発現抑制遺伝子は注射により直接投与するか、該遺伝子が組込まれたベクター又はプラスミドを投与する方法により、患部に投与してよい。
上記ベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター等が挙げられ、これらのウイルスベクターを用いることにより効率よくSCCA発現抑制遺伝子を投与することができる。また、SCCA発現抑制遺伝子をリポソームなどのリン脂質小胞に導入し、そのリポソームを投与する方法を採用することもできる。リポソームは、生分解性材料を含む閉鎖小胞であるため、リポソームと遺伝子とを混合することにより、リポソーム内部の水層や脂質二分子層に遺伝子を保持させる(リポソーム-遺伝子複合体)。次に、該複合体を細胞とともに培養すると複合体中の遺伝子が細胞内に取り込まれる(リポフェクション法)。そして、得られる細胞を以下の投与方法で投与してよい。
上記医薬組成物の投与形態としては、通常の静脈内、動脈内等の全身投与のほか、腫瘍や乾癬が存在する各組織に局所投与を行うことができる。さらに、カテーテル技術、外科的手術等と組み合わせた投与形態を採用することもできる。本発明の医薬組成物の投与量は、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なり、医師などにより適宜決定されるであろう。
プラスミドDNAを直接静脈内に投与すると、DNAが血中のDNaseなどによって即座に分解されてしまうため、遺伝子を発現させることは困難である。そこで、プラスミドDNAを用いる場合は、プラスミドの直接注射法を採用することが好ましい。この方法は、ウイルス性ベクターを用いた方法に比べ、ベクターの精製が簡単であるため、短時間で大量に調製することができ、導入遺伝子の大きさおよび注入時の濃度に制限がないなど、さまざまなメリットを有する(Verma I M et al., Nature 389: 239-242, 1997)。
DNA直接注射方法は、精製したプラスミドDNAを生理食塩水などに溶解し、それを直接筋肉内に注射するだけでよい。その結果、注射部位周辺の細胞にプラスミドDNAが取り込まれ、プラスミド上の真核生物の発現ユニットに組み込まれた遺伝子の発現が起こり、その遺伝子産物が作られる。DNA直接注射法は、現在筋肉内注射が主流となっているが、腫瘍内(Yang J P et al., Gene. Ther. 3: 542-548, 1996 )、皮内(Hengge U R et al., J. Clin. Invest. 97: 2911-2916, 1996; Choate K A et al., Hum. Gene. Ther. 8: 1659-1665,1997)などへのプラスミドDNA直接注射をすることが可能である。
筋肉内注射するプラスミドDNAは、例えば1μg〜1mg、好ましくは25μg〜100μgのDNAを50μlの生理食塩水に溶解し、注射する。これにより、4〜7日後に発現の最高値を得ることができる。
SCCAの発現の抑制の確認は、例えば細胞中のSCCAの量を直接測定することにより行うことができる。好ましくは、細胞からRNAを抽出し、SCCAをコードするmRNAの量を測定することにより決定する。mRNAの抽出、その量の測定も当業界において周知であり、例えばRNAの定量は定量ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により行われる。他に、SCCAの測定はSCCAに特異的な抗体を利用し、当業界において周知の方法、例えば蛍光物質、色素、酵素などを利用する免疫染色法、ウェスタンブロット法、免疫測定方法、例えばELISA法、RIA法など、様々な方法により実施できる。以上の他、SCCAの既知の生物活性を測定することによりSCCAの発現量を測定することもできる。他に、SCCAの発現はin situハイブリダイゼーション法やその生物活性の測定を通じて決定することができる。
本発明によりSCCAの発現の抑制される細胞は好ましくは表皮細胞、例えば顆粒細胞、有棘細胞などであってよい。また、そのような細胞を有する哺乳動物としては、ヒト以外に、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、サルなどの非ヒト哺乳動物であってよい。本発明に係る動物及び細胞は、例えば表皮のUV防御機構の解明や、UVによる皮膚傷害を予防又は抑制する薬剤の研究・開発やスクリーニングに利用されるモデル動物や細胞としても使用することができる。
以下、具体例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
免疫組織化学的検査
表皮生検をAMeX手順(Sato Y. et al. Am. J. Pathol., 125, 431-435(1986))に従い、冷却アセトンで固定してからパラフィンの中に包埋した。切片をキシレンで脱パラフィン処理し、アセトン、次いでPBSで洗浄した。次にその切片の非特異的結合部位を10%正常ウサギ血清(Histofine, Tokyo, Japan)でブロックした。
表皮切片を抗−SCCA−1モノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology, CA, USA)(1:500に希釈)、抗−SCCA−2モノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology, CA, USA)(1:500に希釈)又は抗−SCCAポリクローナル抗体(Takeda A. et al. J. Invest. Dermatol. 118, 147-154 (2002)に記載のとおりにして精製)のそれぞれとインキュベーションした。PBSで洗浄後、切片をヘマトキシリンでカウンター染色し、DAKO Envision System(DAKO Corp., CA, USA)で観察を行った。
図1は、表皮検体として、非露光部位である上腕部(ヒト24歳)、臀部(ヒト46歳)、太腿部(ヒト75歳)由来の表皮、及び露光部位である頬部(ヒト20歳、76歳)、目瞼(ヒト82歳)由来の表皮を採取し、抗体としてSCCA−1及びSCCA−2の両者に結合する抗−SCCAポリクローナル抗体を用い、顕微鏡観察した結果である。図1から、非露光部位と比べ、露光部位の表皮上層でSCCAが顕著に亢進していることがわかる。しかしながら、露光部位でも、基底層ではSCCAの発現の亢進は認められなかった。
図2は、表皮検体として、UV照射(トランスルミネーターTOREX FL205−E−30/DMR(Toshiba Medical Supply)を施したヒト表皮及び照射を施していないコントロール表皮におけるSCCA−1及びSCCA−2のそれぞれの発現の顕微鏡観察結果である。抗体として、抗−SCCA−1モノクローナル抗体及び抗−SCCA−2モノクローナル抗体それぞれを使用した。図2から、SCCA−1及びSCCA−2共に、ヒト表皮にUVを照射することで発現が亢進されることが明らかとなった。また、発現の亢進は皮膚有棘層及び顆粒層において顕著であった。
以上により、表皮にUVが照射されると、表皮、特にその有棘層及び顆粒層においてSCCA−1及びSCCA−2の発現が亢進されることが明らかとなった。
定量PCR実験
次に、表皮におけるSCCA−1及びSCCA−2の発現がUV照射により亢進されることを遺伝子レベルで確認する実験を行った。
ヒト角化細胞をケラチノサイト−SFM培地(GIBCO, Invitrogen)中、L−グルタミン及び上皮細胞成長因子の存在下で高湿、CO25%の雰囲気において、37℃にて培養した。集密度60〜70%の細胞にUVBを0〜48時間にわたり、照射した。UVB照射はトランスルミネーターTOREX FL205−E−30/DMR(Toshiba Medical Supply)を用い、50mJ/cm2の強度で行った。コントロール細胞にはUVB照射を施さなかった。
上記培養細胞から総RNAを、Isogen(Nippon Gene)を用い、添付の説明書に従い、単離精製した。SCCA−1及びSCCA−2それぞれの発現レベルを定量リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により決定した。簡単には、総RNAをSuperscript II(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用い、cDNAへと変換させた。その試料をABI PRISM 7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用い、2−ステップPCRを40サイクル行い、増幅させた。内部標準としてGAPDH(グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)を用いた。
使用したプライマーは下記のとおりである。
SCCA−1:
順方向プライマー
5'-GTGCTATCTGGAGTCCT-3'(配列番号3)
逆方向プライマー
5'-CTGTTGTTGCCAGCAA-3'(配列番号4)
Taq Man プローブ
5'-CATCACCTACTTCAACT-3'(配列番号5)
SCCA−2:
順方向プライマー
5'-CTCTGCTTCCTCTAGGAACACAG-3'(配列番号6)
逆方向プライマー
5'-TGTTGGCGATCTTCAGCTCA-3'(配列番号7)
Taq Man プローブ
5'-AGTTCCAGATCACATCGAGTT-3'(配列番号8)
GAPDH:
順方向プライマー
5'-GAAGGTGAAGGTCGGAGTC-3'(配列番号9)
逆方向プライマー
5'-GAAGATGGTGATGGGATTTC-3'(配列番号10)
Taq Man プローブ
5'-AGGCTGAGAACGGGAAGCTTGT-3'(配列番号11)
リポーター色素(6−カルボキシ−フルオレセイン)をTaq Manプローブ配列の5’末端に結合させ、そしてクエンチャー色素(6−カルボキシ−テトラメチル−ローダミン)をその3’末端に組み込ませた。
図3に培養ヒト角化細胞におけるSCCAの発現についてのUVB照射の影響の結果を示す。SCCA−1、SCCA−2、共にUV照射により発現が亢進されることが明らかとなった。従って、表皮細胞はUV照射により、遺伝子レベルでSCCA−1、SCCA−2の発現が亢進されることが明らかとなった。
UV照射におけるSCCAの役割の検討
以上により、表皮細胞では、UV照射を受けることでSCCA−1及びSCCA−2の発現が亢進することが解明された。次に、SCCA−1及びSCCA−2がUV照射を受けた表皮細胞においてどのような役割を担っているかを検討した。
SCCA−1及び2高発現細胞の樹立
3T3細胞(ATCCより入手)はSCCA−1及び2を発現しないマウス胎児由来の細胞である。この細胞に、下記のとおりにしてSCCA−1又は2をコードする遺伝子を導入した。
SCCA−1及びSCCA−2のcDNA(Takeda A et al. J. Invest. Dermatol. 118, 147-154 (2002))をBam HI及びKpn Iで二重消化した。それらをpTarget ベクターの中にサブクローニングし、次いでLipofectamine Plus(GIBCO, Invitrogen Corp.)を用い、3T3細胞に導入した。簡単に述べると、無血清DMEM培地(Invitrogen Corp.) 675μl中のcDNA 20μgを75μlのPlus試薬と混合し、25℃にて15分放置した。Lipofectamine(100μl)を650μlの無血清DMEM培地に添加し、次いでそれを上記cDNA−Plus混合物に加え、そして25℃にて15分放置した。このcDNA混合物を10mlの無血清DMEM培地に添加し、そして3T3細胞をその中で37℃にて4時間、5%のCO2雰囲気下でインキュベーションした。その培地を10%のFCS(Invitrogen Corp.)含有のDMEM培地と交換し、そして一晩インキュベーションした。翌日、G418(Calbiochem)を最終濃度500μg/mlとなるように添加した。G418は培養期間中この濃度に保っておいた。培地は2〜3日ごとに交換した。培養4週間後、いくつかのG418耐性コロニーを単することができ、SCCA−1及びSCCA−2発現細胞系が樹立された。
SCCA−1をコードするcDNAが導入された細胞(SCCA−1導入細胞)はSCCA−1を特異的且つ安定的に発現し、そしてSCCA−2をコードするcDNAが導入された細胞(SCCA−2導入細胞)はSCCA−2を特異的且つ安定的に発現することが確認された。また、同様の操作で非特異的な配列の導入された3T3細胞(コントロール細胞)はSCCA−1、SCCA−2のいずれも発現しなかった。
上記SCCA−1導入細胞、SCCA−2導入細胞及びコントロール細胞を用い、表皮細胞にUV照射を与えたときのSCCA−1、SCCA−2が果たす役割について検討した。詳しくは、表皮細胞におけるUV誘導アポトーシスに対するSCCA−1、SCCA−2の役割について検討した。
上記各種細胞を10%FCSを含むDMEM培地中で高湿、CO25%の雰囲気において、37℃にて培養した。集密度60〜70%の細胞にUVBを0〜48時間にわたり、照射した。UVB照射はトランスルミネーターTOREX FL205−E−30/DMR(Toshiba Medical Supply)を用い、50mJ/cm2の強度で行った。
これらの細胞についてのアポトーシス評価はFACS COULTER(EPIX XL-MCL, Becjman Coulter)を用い、アネキシンV−FITC及びプロピジウムイオダイン(PI)二重染色法(Annexin V-FITC kit, Immunotech)を指標とするFACS(蛍光活性化セルソータ)解析により行った。
その結果を図4に示す。図4から明らかなとおり、SCCA−1及びSCCA−2導入細胞のいずれもUV照射によるアポトーシスが有意に減少することが認められた。従って、SCCA−1及びSCCA−2共に、UVによる誘導されるアポトーシスを抑制できるものと推定された。
このことを確認するため、本発明者は次にSCCA−1及びSCCA−2ノックダウン細胞株をRNA干渉法により樹立し、UV照射における表皮細胞内でのSCCA−1及びSCCA−2の役割についてさらに検討した。
SCCAノックダウン細胞の樹立
HaCat細胞(H. Hans. et al. Experimental Cell Research 239, 399-410 (1998))はSCCAを高発現するヒト角化細胞である。この細胞に、RNA干渉法に従い、pSilencerベクター(Ambion)で恒常的にsiRNA(short interference RNA)を発現させることにより、SCCA−1及び2のノックダウン細胞株を樹立した。
siRNAはpSilencerベクターを用い、添付の説明書に従い、構築した。詳しくは、SCCAをコードする遺伝子のヌクレオチド番号46〜66位に相補性な21merのオリゴヌクレオチド(ACATGAACTT GGTGTTGGCT T:配列番号1)を含む65merのセンスオリゴヌクレオチド(配列番号12)と、ヌクレオチド番号46〜66位に相同な21merのオリゴヌクレオチド(AAGCCAACAC CAAGTTCATG T;配列番号)を含む65merのアンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号13)とから成る二本鎖オリゴヌクレオチドをpSilencerベクターのHind III部位及びBam HI部位にクローニングした。HaCat細胞へのトランスフェクションはLipofectamine 2000(Invitrogen)を用い、添付の説明書に従って行った。コントロール細胞は、哺乳動物の遺伝子配列と有意な相同性、相補性をもたない二本のオリゴヌクレオチドから成る二本鎖オリゴヌクレオチドを用い、作製した。安定な細胞系はトランスフェクション細胞をハイグロマイシン−B選択培地の中で4〜6週間培養して選択を行うことにより獲得した。SCCAの発現が抑制されていることを確認するため、上述のとおりにして、リアルタイムPCRによりSCCA−1及びSCCA−2の発現を測定した。
センスオリゴヌクレオチド(配列番号12)
GATCCCGGCCAACACCAAGTTCATGTTTCAAGAGA ACATGAACTTGGTGTTGGCTT TTTTGGAAA
(下線部が相同領域)
アンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号13)
AGCTTTTCCAAAA AAGCCAACACCAAGTTCATGT TCTCTTGAAACATGAACTTGGTGTTGGCCGG
(下線部が相補性領域)
その結果を図5に示す。上記siRNAの導入された細胞では、コントロールに比べ、SCCA−1及び2ともには発現が90%以上抑制(ノックダウン)されていることが確認された。
上記ノックダウン細胞及びコントロール細胞を用い、表皮細胞におけるUV誘導アポトーシスに対するSCCA−1、2の役割について検討した。
上記各種細胞をケラチノサイト−SFM培地(GIBCO, Invitrogen)中、L−グルタミン及び上皮細胞成長因子の存在下で高湿、CO25%の雰囲気において、37℃にて培養した。集密度60〜70%の細胞にUVBを照射した。UVB照射はトランスルミネーターTOREX FL205−E−30/DMR(Toshiba Medical Supply)を用い、50mJ/cm2の強度で行った。
これらの細胞についてのアポトーシス評価をFACS COULTERを用い、アネキシンV−FITC及びプロピジウムイオダイン(PI)二重染色法を指標とするFACS(蛍光活性化セルソータ)解析により行った。
その結果を図6に示す。ノックダウン細胞にUV照射を行った結果、コントロール細胞では38%の細胞がアポトーシスを生じるのに対し、ノックダウン細胞では約80%もの細胞がアポトーシスを引き起こすことが明らかになった。従って、SCCAはUV照射により誘導される表皮細胞のアポトーシスを有意に抑制することがわかった。よって、SCCAは表皮細胞のUV防御機構を担い、またアポトーシスを抑制する作用を有するタンパク質であることが明らかとなった。
露光及び非露光部位の表皮におけるSCCAの発現。 UV照射による表皮におけるSCCAの発現の変動。 培養ヒト角化細胞におけるSSCA発現に対するUV照射の影響。 SCCA高発現細胞とSCCA非発現細胞との、UV照射により誘導されるアポトーシス率の比較。 SSCAノックダウン細胞株の樹立を示す。 SCCAノックダウン細胞とコントロール細胞との、UV照射により誘導されるアポトーシス率の比較。

Claims (3)

  1. 扁平上皮細胞癌関連抗原(SCCA)の発現の抑制された細胞を調製するための方法であって、SCCAの発現の抑制がSCCAをコードする遺伝子のRNA干渉により行われ、RNA干渉に、配列番号1のオリゴヌクレオチドからなるセンスオリゴヌクレオチド鎖及び配列番号のオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスオリゴヌクレオチド鎖を含んで成る二本鎖RNAを利用することを特徴とする、方法。
  2. 請求項記載の方法によりSCCAの発現の抑制された細胞。
  3. 請求項記載の細胞を有する、ヒトを除く動物。
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