JP4491109B2 - おしゃぶり - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、特に、生後約8か月程度以降の乳幼児により好適に使用されるおしゃぶりに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、哺乳期から離乳期以降の乳幼児が主として玩具として使用するおしゃぶりは広く知られている。
このようなおしゃぶりは、乳幼児が口のなかに入れて、その口唇刺激による興味をおこさせるために与えられている。乳幼児のうち、生後すぐから月齢4か月程度までの間は、もっぱら哺乳運動により、母乳により栄養を摂取する時期に対応しており、このため、おしゃぶりの形態としても、人工乳首と共通した乳頭部を有するものが知られている。
【0003】
例えば、図9は、従来のおしゃぶりの一例を示す半断面図である。図において、おしゃぶり1は、人工乳首と同じ形状の乳頭部2と、この乳頭部2を支持するフランジ状の座板3と備えている。そして、座板3の乳頭部2とは反対面には、長く延びる把持部4が設けられている。
【0004】
このようなおしゃぶり1は、乳頭部2が人工乳首と同じ形状であることから、生後すぐから月齢4か月程度まで生まれて間もない乳幼児でも、これをくわえることで、哺乳運動が促され、興味を引くことができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図9のようなこのおしゃぶり1では、その乳頭部2の形状に基づいて、もっぱら哺乳運動を行う時期の乳幼児の興味を引くことができるが、摂食行動が、この哺乳運動から次第に離乳食や普通食に変化する時期には適した形態ではない。
すなわち、このような時期として、特に、生後約8か月以降では、これまでの母乳等を摂取するための哺乳運動から、全く異なる口唇の動きを必要とする離乳食や普通食の摂食運動を行うことが練習され始める。このため、哺乳運動だけを考えた、母親の乳首と同じような形状の乳頭部を備える従来のおしゃぶりでは、生後約8か月以降の乳幼児に与えるには不適切であり、成長の段階に応じた好適な刺激を与えて適切な興味を引くものではなかった。
【0006】
具体的には、次のような問題があった。
1.母乳やミルク等と異なった食物を摂取するためには、口腔内に食品が入ったら口を閉じる習慣を身につける必要があるが、従来のおしゃぶりでは、母親の乳首に近似した乳頭をもつため、これを口腔内に入れると哺乳窩に入り込んで、哺乳運動における蠕動様運動を促してしまう。このため、折角、哺乳運動の消失しはじめた乳幼児に対して、次の摂食行動に必要とされる口を閉じる訓練を阻害する。
2.また、この時期の乳幼児は、離乳食等の摂取や会話の試み等を始めることで、口唇の形態等が変化することにともない、口からの呼吸の頻度が増えてしまう。これに対して、食品の摂取時に口唇を閉じると、口呼吸はできないことから、食事の際における鼻呼吸をも訓練する必要があるが、従来のおしゃぶりは、このような点を配慮した構成となっていない。
3.さらに、この時期に、上述したように口呼吸の習慣がついてしまうと、大人になっても口呼吸が中心となってまい、喉への直接的な影響を及ぼし、場合によっては、免疫力の低下に結びつくという重大な問題がある。このためにも、鼻呼吸の習慣を身につけることは重要である。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、生後約8か月以降の乳幼児にとって、成長の段階に応じた好適な刺激を与えて適切な興味を引くことができ、次の摂食行動に適切に導き、あるいはこのような摂食行動に適合させて使用できるおしゃぶりを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明にあっては、乳首部と、この乳首部の基部に配置された所定の広がりを有する座板部とを備えたおしゃぶりであって、前記乳首部は、幅が広く上下方向の厚みが薄くなるように偏平に形成した先端部と、この先端部の上面に設けられ中央部が凸となるように形成した上側曲面部とを備えており、前記乳首部の前記先端部の下面には、中央部が凸となるように形成した下側曲面部が形成されていて、前記下側曲面部が、前記上側曲面部よりも変形しやすい構成とされていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、もともと、乳幼児の哺乳窩は穴であることから、母親の乳首の先端のように球状先端のものが適合して入り込むようになっている。これに対して、本発明のおしゃぶりの乳首部の前記先端部は幅が広く偏平に形成されていることから、乳幼児の上顎にある哺乳窩に適合した形状ではない。
つまり、前記乳首部の先端部は、幅が広いことで哺乳窩に入り込まずに、むしろ、この先端部の上面に設けられ中央部が凸となるように形成した上側曲面部が、乳幼児の哺乳窩の手前(口唇側)の硬口蓋に沿った形状であることから、前記乳首部は口腔内でこの硬口蓋に位置決めされる。
これにより、乳幼児において、乳首が哺乳窩に入ることで引き起こされる哺乳反射による哺乳運動をあえてさせないようになっているとともに、乳首部を口腔内で保持しやすいようになっている。
そして、前記乳首が口唇内に入れられることで、哺乳運動ではなく、むしろ次の摂食行動に適合した、口腔内に物を入れた状態で口唇を閉じる動きが誘導されることになる。
また、哺乳運動の次の摂食行動として、離乳食や普通の食品を摂取する場合に特有に必要とされる動きが訓練される。すなわち、このような摂食行動においては、食品を舌の中央に集めてから嚥下しており、このような食品を下の中心に集めるように舌を変形する必要がある。前記下側曲面部は、舌の中央部を窪ませて、食品を舌の中央に集める運動を訓練することができる。
さらに、先端部の下側曲面部が、特に変形しやすい構造とされることで、後述するような摂食行動における舌の特有な運動を促すことができる。下側曲面部を変形しやすい構造とするためには、例えば、乳首部が中空に形成される場合には、上側曲面部よりも下側曲面部を形成する材料の肉厚を薄くすることにより実現できる。あるいは、上側曲面部よりも下側曲面部を形成する材料を柔らかい材料としてもよい。
【0010】
請求項2の発明は、前記乳首部の先端部の幅が、使用者である乳幼児の哺乳窩の幅よりも広く形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2の構成によれば、請求項1の構成において、乳首部の先端部の幅が、使用者である乳幼児の哺乳窩の幅よりも広く形成されていれば、この乳首部の先端部は、一層確実に哺乳窩に入り込むことがない。
【0016】
好ましくは、前記乳首部の前記基部付近には、幅方向よりも上下方向の長さを短くすることにより、断面が偏平な形状とされた括れ部が形成されている。
上記構成によれば、前記括れ部により、乳幼児が口唇を閉じる練習ができるとともに、この括れ部は、乳幼児の口腔内の上下の歯槽の間に挟まれて保持されるようになっている。つまり、この括れ部は、僅かに開いた上下の歯槽の間でひっかかりやすいように、幅方向よりも上下方向の長さを短くすることにより、断面が偏平な形状とされている。これにより、乳幼児がおしゃぶりを口に含んだ状態で落下することなく保持される。
好ましくは、前記括れ部が形成されている領域の長さが、前記乳首部の上側よりも下側が長い構成とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、乳幼児が口唇を閉じた時に、その上側の歯槽と下側の歯槽の位置が前後にやや異なる位置となることに対応して、前記括れ部が形成されている領域の長さが、前記乳首部の上側よりも下側が長い構成とされている。すなわち、口唇を閉じたときには、下側の歯槽は、上側の歯槽の内側に入るようにかみ合わされるのが正常である。このため、下側の歯槽が当接すべき前記括れ部の下側の位置は、座板側から遠く、これと比較すると、上側の歯槽が当接すべき括れ部の位置は、より座板側に近くなる。このため、括れ部を形成する長さを上述のように上側と下側で異なるようにしている。
好ましくは、前記乳首部の基部が前記座板部と接続される領域が座板材料よりもやわらかい材料にて形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、乳幼児の口腔内に乳首部を挿入した時に、その口唇先端が当たる領域が、「乳首部の基部が前記座板部と接続される領域」である。この領域を座板材料よりも柔らかい材料で形成することで、母親の乳房に口唇を当てた感触と近似する感触を与えることができる。
好ましくは、前記括れ部の幅が、前記先端部の幅よりも小さく構成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記括れ部の幅が前記先端部の幅よりも小さいことから、先端部は、幅方向に括れた箇所を有し、このため、この幅方向の括れた箇所が口腔内でひっかかるため、乳首部が口腔内から抜けにくくなり、不用意に取り落とすことが防止される。
好ましくは、前記座板部が、前記乳首部の基部周囲を囲む板体でなり、この座板部の使用者に対する対向面の少なくとも両脇部が凹状に形成された密着部とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、座板部の使用者に対する対向面の少なくとも両脇部が、凹状とされることで、乳幼児の両頬部の曲面に対応した凹面とすることができ、その分座板部のフィット性が向上する。
すなわち、座板部は、乳幼児が乳首を吸引している時には、その口唇周辺に確実にフィットすることで、乳首部の上述した特別の各形状の機能が発揮できるようになる。
好ましくは、前記座板部の前記対向面の少なくとも両脇周縁部が、外側に向かうように反った逃げ領域とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記座板部の前記対向面の少なくとも両脇周縁部に逃げ領域を形成することで、座板部の周縁が使用者の口唇周辺部において、食い込むほど密着することが防止される。
好ましくは前記座板部の前記対向面の使用者の顎部に対応する領域が、前記密着部と反対の湾曲面とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記座板部の使用者の顎部に対応する領域が、密着部と反対に湾曲していることから、この領域が前方にむかって僅かに突出する特徴をもつ使用者の顎部と干渉することがない。
好ましくは、前記座板部の前記対向面の上側周縁部が、前記逃げ領域を形成せずに、前記対向面と同じ曲面とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記座板部の前記対向面の上側周縁部は、両頬部のような曲面となっていない使用者の口唇周辺の上部に対して、適切にフィットさせることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態を添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0033】
図1は、本発明の実施形態によるおしゃぶりの概略斜視図であり、図1(a)は、おしゃぶりを前上方から見た状態を、図1(b)は、おしゃぶりを前下方から見た状態をそれぞれ示している。また、図2は、このおしゃぶりの概略側断面図、図3は概略側面図、図4は概略水平断面図であり、これらの図を適宜参照しながら、本実施形態のおしゃぶりを説明する。
【0034】
図1において、おしゃぶり10は、乳首部11と、この乳首部の基部に配置された所定の広がりを有する座板部12とを備えている。
この乳首部11は、先端部15と、乳首部11を座板12に支持する基部13とを備えており、この先端部15と基部13との間には、幅方向よりも上下方向の長さを短くすることにより、断面が偏平な形状とされた括れ部14が設けられている。
【0035】
上記乳首部11は、例えば、熱湯等による加熱殺菌によっても容易に劣化せず、母親の乳首の感触と近似した感触を与えるように、形成されている。また、本実施形態のおしゃぶりでは、後述するように、乳幼児の口腔内で十分変形する必要があり、このような点を考慮すると、十分柔らかい材料、例えば、シリコーンゴムにより、例えば、幅10mmで先端半径5mm程度の形状の所定の治具を、毎分100mmで先端部15に押しつけた時に、先端部15の最大外径を40パーセント圧縮した場合、その反発力が1.0N(ニュートン)から2.5N、好ましくは、例えば1.5N程度となる硬度に設定されている。
また、座板部12は、乳首部11とともに、上記殺菌処理されても容易に劣化せず、また、所定の剛性を備えた材料で形成されており、例えば、ポリプロピレンやポリカーボネート等が使用されている。
【0036】
乳首部11は、図2に示すように、座板部12から先端までの長さdが、好適には約15mmないし26mmに設定され、この実施形態では、例えば、25.5mmとされている。これにより、後述するように、その先端部15がこの時期(生後約8か月から3歳程度)の乳幼児の残存する哺乳窩に適切に達することがないようにされている。この座板部12から先端部15の長さdが約26mmよりも長いと、先端部15が哺乳窩に入り込むおそれがある。15mmより短いと口唇先端から歯槽までの距離が限られていることから、後述する括れ部14を上下の歯槽により挟んで保持できなくなるおそれがある。
すなわち、この時期の乳幼児の上顎には、哺乳運動において乳首が入り込む穴である哺乳窩が次第に浅くなり消失しつつある。これは、乳幼児の食事が、哺乳から次の段階の食事に変化することに対応しており、このおしゃぶり10は、特にこの時期の乳幼児に適合するように構成されている。
【0037】
このため、乳首部11の先端部15は、図2に示すように、幅広の平らな端部を有し、かつ先端部15は、図4に示すようにその幅mが広く設定されており、例えば、幅mは約20mmないし30mmとされている。
ここで、乳首部11の先端部15の幅mが20mmより小さいと哺乳窩に入り込んで、哺乳運動を誘発してしまうおそれがある。30mmより大きいと、後述する奥歯側の歯槽と干渉してしまう。この実施形態では、幅mは23mmに設定されている。
また、乳首部11は、図2や図4に示されているように、中空に形成されていて、基端側の座板部12に形成した貫通孔16により外部と連通している。
これにより、乳首部11が上述した硬度で口腔内に接触することができ、しかも、使用により、乳幼児のよだれや洗浄の際の水等が内部に入っても水切りしやすい。
【0038】
先端部15を含む乳首部11は、上下の長さが幅よりも小さな偏平な形状とされている。
この偏平形状に加えて、先端部15の上面には、上側曲面部19が形成されている。すなわち、先端部15は、やや潰れた球状,もしくは偏平な球状で、上側には、中央部が凸となるように形成した上側曲面部19が設けられている。
この上側曲面部19の基部側は、このおしゃぶり10が対象とする乳幼児の上顎の内面の曲面に沿うように形成されている。具体的には、上側曲面部19は、中央部の第1の曲面部19aと、その周囲を囲む第2の曲面部19bを有している。第2の曲面部19bは、図4に示すように、その幅jが例えば、13mmないし17mmとされている。第1の曲面部19aは、第2の曲面部19bよりも内側で、その幅mが例えば11mmないし13mmとされている。さらに、上側曲面部19の湾曲面が曲率半径9mmないし22mmの範囲で設けられることで、上側曲面部19は乳幼児の上顎の内面とほぼ一致した形状とされている。
【0039】
また、先端部15の下面には、下側曲面部18が形成されている。この下側曲面部18は、先端部15の下面のほぼ中央部に、例えば、半径7.5mm程度の幅となるように設けられて、例えば、曲率半径が8mm程度の湾曲面とされている。これにより、先端部15の下面は、丸く突き出た形状となっている。
この下側曲面部18は、後述するように、この時期の乳幼児の摂食運動における舌の動きを訓練するために重要な役割を果たす。
【0040】
ここで、先端部15の下側曲面部18は、好ましくは、上側曲面部19よりも変形しやすい構造とされている。例えば、この実施形態では、乳首部11が中空に形成されていることから、図2に示されているように、上側曲面部19よりも、下側曲面部18を形成する材料の肉厚を、薄くすることで変形しやすくしている。
これにより、後述するように、摂食行動における舌の特有な運動を訓練することができる。このように、下側曲面部18を変形しやすい構造とするためには、例えば、上側曲面部19よりも下側曲面部18を形成する材料を柔らかい材料とする等種々の方法を採用できる。
【0041】
また、乳首11の先端部15と基部13との間には、幅方向よりも上下方向の長さを短くすることにより、断面が偏平な形状とされた括れ部14が設けられている。
また、この括れ部14は、後述するように、乳幼児がおしゃぶり10の乳首部11を口腔内に収容した状態で、乳幼児の上下の歯槽の間に挟まれて、保持されるためのものである。これにより、おしゃぶり10が口から落ちることが防止されるとともに、後述するように、乳幼児が口唇を閉じる訓練を行うことができる。
このため、括れ部14の厚みは、約3mmから7mmに設定されている。この括れ部14の厚みが約3mmよりも薄いと、薄すぎて上下の歯槽の間で挟み込みずらい。また、製造上も乳首部11を中空とする場合には、その成形が困難となってしまう。括れ部14の厚みが、7mmよりも厚いと、前記先端部との厚みの相違が少なくなって機能しにくく、また、顎を閉じたときに上下の歯槽または歯が当接しないオープンバイトの習慣を誘発するおそれがある。これらの点を考慮してこの実施形態では、括れ部14の厚みは、約6.7mmとされている。
【0042】
また、図2に示すように、括れ部14が形成されている領域の長さに関しては、上側の長さoよりも下側の長さpの方が長い構成とされている。
この括れ部の上側の長さoを下側の長さpよりも短くしたのは、次の理由による。すなわち、乳幼児が口唇を閉じた時に、その上側の歯槽と下側の歯槽の位置が前後にやや異なる位置となることに対応させているのである。つまり、口唇を閉じたときには、下側の歯槽は、上側の歯槽の内側に入るようにかみ合わされるのが正常である。このため、下側の歯槽が当接すべき前記括れ部の下側の位置は、座板側から遠く、これと比較すると、上側の歯槽が当接すべき括れ部の位置は、より座板側に近くなる。このため、括れ部を形成する上側の長さoと下側の長さpを異なるようにしている。
好ましくは、上側の括れ部14の長さoは、0.7mmないし1.5mmで、この実施形態では、0.9mmである。下側の括れ部14の長さpは、1.0mmないし2.0mmで、この実施形態では、1.2mmである。
【0043】
また、図4に示されているように、上記括れ部14の幅sは、先端部15の幅mよりも小さくされている。
これにより、先端部15は、幅方向に括れた箇所を有し、このため、この幅方向の括れた箇所が口腔内でひっかかるため、乳首部が口腔内から抜けにくくなり、不用意に取り落とすことが防止される。
ここで、括れ部14の幅sは、約10mm以上で20mm未満とすることが好ましい。括れ部14の幅sを10mmよりも小さくすると、乳幼児が乳首部11を口腔内に含んだ時に、口唇が接触する面積が不足して保持しにくい。括れ部14の幅sを20mmより大きくすると、乳幼児が乳首部11を口腔内に含んだ時に、口角を横に引いてしまう動きを誘い、自然に口唇を閉じる練習ができない。
【0044】
乳首部11の基部13には、座板部12が配置されている。ここで、基部13は、座板部12に保持されるように、図2に示すようにやや拡大した径を有しており、この部分は、例えば、乳首部11と同じ比較的柔らかい材料で形成されている。これにより、後述するように、乳幼児が乳首部11を口に含んだ時に上下の口唇が当接する部分が柔らかい感触を与えるようになっている。
座板部12は、乳首部11の基部13を支持するボックス状の本体17を有しており、この本体17は一体に設けられた、所定の面積でなる面状部21を備えている。本体17の面状部21の背面側には、リング状の掛止め手段23が配置されている。
面状部21は、図1に示されているように、乳首部11の基部13の周囲に大きくフランジ状に広がって、例えば、図示のようなハート形状を呈している。この面状部21は、乳幼児が乳首部11を取り込んだ時に、乳首部11の基端部13付近が口唇先端で止まるように位置決めする役割を果している。
【0045】
座板部12の面状部21は、例えば、図1に示されているように、使用者である乳幼児の顔の両脇側である左右の方向に比較的広い面積を有している。そして、面状部21の使用者に対する対向面の少なくとも両脇部が凹状に形成された密着部22,22とされている。つまり、密着部22,22は、使用者の顔面の両頬近傍の領域の湾曲と沿った凹面とされている。
これにより、乳幼児が乳首部11を吸引する際に、座板部12の各密着部22,22が乳幼児の両頬の付近に密接に接触することで、正しく位置決めされる。ここで、面状部22,22は、その全体が乳幼児の両頬に完全に密着する必要はないが、その湾曲面は、新生児から1歳程度までの乳幼児の頬への接触を種々確認した結果、例えば、半径40mm程度の湾曲面とされている。
【0046】
さらに、面状部21の密着部22,22の一部の領域には、貫通孔24,24が形成されており、面状部21が乳幼児の口腔を塞いだ状態で、万一窒息などの事態が起きないようになっている。
また、好ましくは、面状部21の両側面側,すなわち、密着部22,22の周縁部(外側の領域)は、図4に示すように、この密着部22,22とは反対の湾曲を備える逃げ領域25が形成されている。この逃げ領域25は、密着部22,22の凹状面とは反対に、使用者に向いて凸となるような面とされることにより、密着部22,22が使用者の顔面に密着しても、その周縁部が食い込むことがないようにされている。これにより、面状部21の特に密着部22,22が使用者である乳幼児の両頬近傍に密着しても、その周縁のエッジ部が食い込んで、後で肌の上に食い込んだ跡を残すようなことがないようになっている。
ここで、上記逃げ領域25は、座板部12の面状部21を構成する板体の端面の湾曲とは明確に区別される。つまり、このような板体の厚みを表す端面部も曲面で構成されているが、逃げ領域25の曲率半径はこれより大きい点で区別される。例えば、本実施形態では、上記端面部の曲率は、0.9mm程度であるのに対して、逃げ領域25を構成する曲面は、その曲率が例えば7mm程度となっている。
また、上述したように、面状部22,22は、必ずしも、その全体が乳幼児の両頬に完全に密着する必要はないが、面状部22,22と逃げ領域25,25との境界(曲面の方向が変わる領域)付近は必ず密着し、その当接による刺激を緩和するようになっている。
【0047】
さらに、面状部21の乳首部11よりも下の領域,すなわち、図1の26で示す領域は、図2によく表れているように、密着部22,22とは反対の湾曲を備える下部領域26とされている。これは、乳幼児の下顎部分がやや前方に張り出す形状を有しているという特徴を考慮して形成されたもので、この下顎の張出を逃げる逃げ領域とされている。これにより、面状部21の下部領域26は、乳幼児の下顎近傍に適切に密着することができるようになっている。
すなわち、この乳首部11よりも下の領域では、上側密着部22,22は、例えば、その曲率が半径160mm程度で、対向する使用者の顔面に対して凹面とされているが、下部領域26は、これとは反対の曲面で、例えば、曲率半径が7mm程度とされている。
尚、この下部領域26が、座板部12の面状部21を構成する板体の端面の湾曲とは区別される点は、逃げ領域25の場合と同じである。
【0048】
また、面状部21の乳首部11よりも上側の領域は、図2に示されているように、上記密着部22,22(この場合、例えば、曲率半径160mm)と同じ方向の湾曲で、これよりも小さな曲率(例えば、曲率半径50mm)を有するようにされている。つまり、この上部領域27は、使用者の顔面に対向する面が密着部22,22と同じように凹面とされており、その湾曲の曲率半径が、密着部22,22よりも小さくなるようにされている。
これにより、乳幼児の湾曲した上唇の形状に適合して、新生児から1歳程度の乳幼児の上唇に密着しやすい(特に、口唇を閉じた状態における上唇に密着しやすい)湾曲とすることで、上唇に適切にフィットして密着するようにされている。
【0049】
本実施形態は以上のように構成されており、次に、その使用状態を説明しつつ、作用を述べる。
先ず、本実施形態の作用を説明する前に、乳幼児の口腔内の構造について説明する。
図6は、本実施形態のおしゃぶり10を、生後約8か月から3歳の乳幼児の口腔内に入れた状態を水平断面で上顎側を概略的に示した図である。哺乳運動を行う乳幼児において、重要な役割を果たす哺乳窩という穴が上顎の軟口蓋と硬口蓋の境界付近に存在する。しかしながら、乳幼児の発達に伴い、この哺乳窩は次第に浅くなり、消滅する方向へ向かう。
符号Cはその哺乳窩の最深部を示している。これらの図において、Aは乳幼児の口唇先端部、Bは歯槽の頂上点、そして、Xはおしゃぶりの乳首部11が適切な位置をとった場合の先端をそれぞれ示している。
【0050】
また、生後8か月から3歳程度までの乳幼児に関して、本発明者等の研究によれば、各サイズは以下のようである。
すなわち、口唇の厚さ(A−B)は約5mmないし12mm程度、歯槽頂上点から哺乳窩最深点までの距離(B−C)は約19mmないし20mm、哺乳窩の外周直径(D−D’)は約18mmないし21mm程度である。
【0051】
図7は、使用者である乳幼児hがおしゃぶり10を口腔内にくわえ、乳首部11を口腔内に含んで使用している状態を示す概略断面図である。
図において、31は、乳幼児hの上唇、32は下唇を示し、33,34はそれぞれ歯槽上部、歯槽下部を示している。
図7の段階では、口腔内において、乳首部11は、その上側曲面部19を上口蓋に密着させている。この状態においては、図6に示されているように、2つの点から乳首部11の先端部15は哺乳窩に入り込まない。
つまり、図2で説明した先端部15の幅は広くて、この幅mは哺乳窩の幅D−D’よりも大きく哺乳窩に入ることができない。また、座板部12から先端部15の長さdが哺乳窩に達することがないようにされている。。
これにより、乳幼児hがおしゃぶり10を口に含んでも、反射により哺乳運動を誘発されることがない。
そして、このおしゃぶり10によって、次に説明するように、哺乳運動に続く、次の段階の摂食運動が誘発される。
【0052】
すなわち、図7に示されているように、乳首部11は、先端部15よりも基部13側に括れ部14を有しており、この括れ部14の厚みが薄いことに基づいて、乳幼児が口唇を閉じるように導くことができる。また、この括れ部14は、乳幼児の上下の歯槽(または乳歯)にはさまれることで、おしゃぶり10を保持するための掛止手段として機能する。
この括れ部14は、上述したように、上下つぶれた偏平な形状であるから、上下の歯槽33,34との間で容易に挟まれることができる。そして、上述したように、括れ部14の厚み(図7ではc)は、約3mm乃至7mmで4mm程度が好ましい。aが7mmよりも大きいと、先端部の外形との差が小さくなりすぎて、上下の歯槽間で掛止保持しにくくなってしまう。また、aが3mmよりも小さいと製造時に金型からの離型がしにくく、製造が困難となる。また薄く成りすぎて、歯槽33,34間で保持することが困難となる。
また、括れ部14の厚みaが7mmよりも大きいと、上下の歯槽33,34の閉じ方が不十分となり、口唇を歯槽を閉じることにより、口唇を閉じる練習にならなくなってしまう。
【0053】
すなわち、このおしゃぶり10では、上述したように、反射としての哺乳運動が誘発されることを防止すると同時に、この括れ部14を上下の歯槽33,34で挟むことで、かみ合わせ、口唇を閉じる練習を行わせることができる。これにより、哺乳運動から、離乳食や普通食の摂食運動に特徴的な口唇を閉じる練習を行うことができるのである。
しかも、この時期の乳幼児は、離乳食等の摂取や会話の試み等を始めることで、口唇の形態等が変化することにともない、口からの呼吸の頻度が増えてしまう。これに対して、食品の摂取時に口唇を閉じると、口呼吸はできないことから、食事の際における鼻呼吸を訓練する必要がある。この場合、おしゃぶり10を口に含んで、図7の状態で、上下の歯槽33,34で括れ部14を挟むと、口唇31,32が閉じられることから、口から呼吸することができない。したがって、このおしゃぶり10を習慣的に口にくわえることで、鼻呼吸を行う訓練をすることができる。
【0054】
一方、先端部15の下面の下側曲面部18は、乳幼児hの舌35の上面中央付近に接している。
この下側曲面部18は、上述した形状であり、その中央付近が凸の形状であるから、乳幼児hの舌35の中央を押し込むことになる。
ここで、図8は、摂食行動時の舌35の動きを模式的に説明した図である。図8(a)では、固体状の食品がかみ砕かれた食塊が、舌35の運動により矢印で示すように、舌35の中央に導かれる。この時、舌35はその中央部が凹となるような運動をしている。図8(b)では、矢印に示すように、次第に食塊が中央によるように舌35は動き続けている。そして、図8(c)では、舌35の窪みに食塊が集められて、まとめられ、次いで嚥下されることになる。
このように、摂食行動においては、舌35の中央に窪みを形成する動きが重要であり、先端部15の下面の下側曲面部18は、乳幼児hの舌35の上面中央付近に接することにより、このように舌35の中央を窪ませる摂食行動に必須の動きを学習させることができる。
特に、上述のように、先端部15の下面の下側曲面部18は、変形されやすい構造となっていることから、上述した摂食行動における舌35の特有の動きをしやすいようにされている。これにより、舌35の運動を巧みに誘導して、訓練できるようにされている。
【0055】
また、図7の状態において、座板部12の特殊な形状が最もその効果を発揮している。すなわち、図6において、先ず、座板部12の面状部21少なくとも両脇に設けた密着部22,22は、使用者の顔面の両頬近傍の領域の湾曲と沿った凹面とされている。このため、乳幼児hが乳首部11を吸引する際に、座板部12の各密着部22,22が乳幼児の両頬の付近に密接に接触する。
【0056】
さらに、座板部12の面状部21の上部領域27は、上述したように、使用者の顔面に対向する面が密着部22,22と同じように凹面とされており、その湾曲の曲率半径が、密着部22,22よりも小さくなるようにされている。このため図8に示すように、乳幼児の湾曲した上唇に適切にフィットして密着する。
【0057】
さらに、面状部21の下側領域26は、上述したように、密着部22,22とは反対の湾曲を備える下部領域26とされている。そして、図7に示されているように、乳幼児の下顎部分がやや前方に張り出す形状を有しているので、面状部21の下部領域26は、乳幼児の下顎近傍に適切に密着することができる。
このように、座板部12の面状部21は、その両脇の領域22,22と上側領域27及び下側領域26がそれぞれ、乳幼児の顔全面の対応領域に密着できるようにされていることで、乳首部11の上述の寸法設定が生かされるように、正しく位置決めされる。
【0058】
また、このように座板部12が乳幼児hの顔の前面に密着しても、特に、その両脇部には、上述したように、逃げ領域25が形成されていることから、周縁部が乳幼児hの顔前面に食い込むことがなく、肌の上に食い込んだ跡を残すようなことがない。
【0059】
このように、本実施形態のおしゃぶり10によれば、従来のおしゃぶりと異なり、特に、生後約8か月ないし3歳程度の乳幼児に対して、次第に哺乳運動を終了して、次の段階の摂食運動を適切に誘導する訓練がされる特殊なおしゃぶりとなっている。このため、成長の段階に応じた好適な刺激を与えて適切な興味を引くことができ、次の摂食行動に適切に導きつつ、この時期の乳幼児に適合した口唇刺激を与えることで、その注意を巧みにひきつけることができる。
【0060】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。
各実施形態の各構成要素は、本発明の効果を発揮する限りにおいて、個々に省略することができ、相互に組み合わせることができる。そして、さらに、上述の説明で言及しない構成を付加することができる。
【0061】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、生後約8か月以降の乳幼児にとって、成長の段階に応じた好適な刺激を与えて適切な興味を引くことができ、次の摂食行動に適切に導き、あるいはこのような摂食行動に適合させて使用できるおしゃぶりを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るおしゃぶりを示し、(a)はその前上方から見た概略斜視図、(b)はその前下方から見た概略斜視図である。
【図2】図1のおしゃぶりの概略側断面図である。
【図3】図1のおしゃぶりの概略側面図である。
【図4】図1のおしゃぶりの水平方向の概略断面図である。
【図5】図1のおしゃぶりの概略背面図である。
【図6】図1のおしゃぶりを乳幼児の口腔内に入れた状態を水平断面にて上顎側を概略的に示した図である。
【図7】使用者である乳幼児がおしゃぶりを口腔内に含んだ状態を示す概略断面図である。
【図8】摂食行動における舌の動きを説明するための模式図である。
【図9】従来のおしゃぶりの一例を示す半断面図である。
【符号の説明】
10・・・おしゃぶり、11・・・乳首部、12・・・座板部、13・・・基部、14・・・括れ部、15・・・先端部、18・・・下側曲面部、19・・・上側曲面図
Claims (10)
- 乳首部と、この乳首部の基部に配置された所定の広がりを有する座板部とを備えたおしゃぶりであって、
前記乳首部は、
幅が広く上下方向の厚みが薄くなるように偏平に形成した先端部と、
この先端部の上面に設けられ中央部が凸となるように形成した上側曲面部と
を備えており、
前記乳首部の前記先端部の下面には、中央部が凸となるように形成した下側曲面部が形成されていて、
前記下側曲面部が、前記上側曲面部よりも変形しやすい構成とされている
ことを特徴とする、おしゃぶり。 - 前記乳首部の先端部の幅が、使用者である乳幼児の哺乳窩の幅よりも広く形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のおしゃぶり。
- 前記乳首部の前記基部付近には、幅方向よりも上下方向の長さを短くすることにより、断面が偏平な形状とされた括れ部が形成されていることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のおしゃぶり。
- 前記括れ部が形成されている領域の長さが、前記乳首部の上側よりも下側が長い構成とされていることを特徴とする、請求項3に記載のおしゃぶり。
- 前記乳首部の基部が前記座板部と接続される領域が座板材料よりもやわらかい材料にて形成されていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載のおしゃぶり。
- 前記括れ部の幅が、前記先端部の幅よりも小さく構成されていることを特徴とする、請求項3ないし5のいずれかに記載のおしゃぶり。
- 前記座板部は、前記乳首部の基部周囲を囲む板体でなり、この座板部の使用者に対する対向面の少なくとも両脇部が凹状に形成された密着部とされていることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載のおしゃぶり。
- 前記座板部の前記対向面の少なくとも両脇周縁部が、外側に向かうように反った逃げ領域とされていることを特徴とする、請求項7に記載のおしゃぶり。
- 前記座板部の前記対向面の使用者の顎部に対応する領域が、前記密着部と反対の湾曲面とされていることを特徴とする、請求項7に記載のおしゃぶり。
- 前記座板部の前記対向面の上側周縁部は、前記逃げ領域を形成せずに、前記対向面と同じ曲面とされていることを特徴とする、請求項8に記載のおしゃぶり。
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