以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
図1〜図15は本発明の実施例を示すものであり、図1〜図12は本発明の第1実施例を示し、図1は車両用ブレーキ装置の全体構成を示すブレーキ液圧系統図、図2はブレーキ液圧発生装置の非作動初期位置での左側面要部断面図、図3はブレーキ液圧発生装置の増圧ブレーキ作動位置での左側面要部断面図、図4はブレーキ液圧発生装置の非増圧ブレーキ作動位置での左側面要部断面図、図5はブレーキ液圧発生装置の非作動初期位置でのマスタシリンダ、ストロークシミュレータの上面要部断面図、図6はストロークシミュレータの非作動初期位置での左側面要部断面拡大図、図7はブレーキ液圧発生装置の非作動初期位置でのモータ直動手段の正面要部断面図、図8はモータ直動手段および入力選択手段の正面要部展開断面図、図9は車輪ブレーキ所要液量特性図、図10はコンロッドスピード特性図、11はストロークシミュレータ特性図、図12は出力液圧特性図である。
先ず図1において、車両に取り付けられるブレーキ液圧発生装置10は、ドライバのブレーキ操作部材であるブレーキ操作子11に連結され、ストロークシミュレータ30と、正逆転自在なモータ120を備えるマスタ駆動ユニット90と、ブレーキ液を蓄えたマスタリザーバ12とを備えるタンデム型のマスタシリンダ60とで構成される。
ブレーキ操作子11の操作量はエンコーダやポテンショメータ等で構成するブレーキ操作量検出手段25にて検出され、電子制御装置13にデータを送信し、電子制御装置13はその検出値に応じた大きな回転力を正逆転自在のモータ120に付与するとともに、該モータ120の電流値およびマスタ駆動ユニット90に設けられエンコーダやポテンショメータ等で構成する出力検出手段95の値などを参照して電子制御装置13がマスタシリンダ60の目標発生液圧をフィードバック制御できるよう電気回路が配索される。
ブレーキ液圧発生装置10は、ブレーキ操作子11からの入力と、モータ120側からの入力とが、マスタシリンダ60への出力として変換される際、いずれか大きい方の入力を選択してマスタシリンダ60に伝達して液圧を出力可能に構成されており、該マスタシリンダ60には前部出力ポート16Fと後部出力ポート16Rとを備える。
マスタシリンダ60の前部出力ポート16Fと後部出力ポート16Rから出力される液圧は前部液圧路17Fと後部液圧路17Rにそれぞれ導かれる。前部液圧路17FはABS15を介して左前輪用車輪ブレーキBFLおよび右前輪用車輪ブレーキBFRに接続される。また後部液圧路17Rも、ABS15を介して左後輪用車輪ブレーキBRLおよび右後輪用車輪ブレーキBRRに接続される。
ABS15は、前部液圧路17Fを分岐して、左前輪用車輪ブレーキBFLおよび右前輪用車輪ブレーキBFR間に設けられる常開型電磁弁18,18と、常開型電磁弁18,18に並列に接続される一方向弁19,19と、減圧リザーバ21と、左前輪用車輪ブレーキBFLおよび右前輪用車輪ブレーキBFRと減圧リザーバ21間に設けられる常閉型電磁弁20,20と、減圧リザーバ21から前部液圧路17F側へブレーキ液を還流するABSモータ22に駆動されるABSポンプ23を備える。
さらにABS15は、後部液圧路17Rを分岐して、左後輪用車輪ブレーキBRLおよび右後輪用車輪ブレーキBRR間に設けられる常開型電磁弁18,18と、常開型電磁弁18,18に並列に接続される一方向弁19,19と、減圧リザーバ21と、左後輪用車輪ブレーキBRLおよび右後輪用車輪ブレーキBRRと減圧リザーバ21間に設けられる常閉型電磁弁20,20と、減圧リザーバ21から後部液圧路17R側へブレーキ液を還流するABSモータ22に駆動されるABSポンプ23を備える。
ABS15は電子制御装置13により制御され、各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRに対応した常開型電磁弁18を開くとともに常閉型電磁弁20を閉じる増圧モードと、常開型電磁弁18を閉じるとともに常閉型電磁弁20を開く減圧モードと、常開型電磁弁18および常閉型電磁弁20をともに閉じる保持モードとを切換えて制御し、これにより各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRのブレーキ液圧を状況に応じて最適に制御することができる。
このようにABS15は、各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRに供給される車輪ブレーキ液圧を個別に最適な値に制御可能な液圧制御手段としての機能を有している。
そして電子制御装置13は、ブレーキ液圧発生装置10のモータ120およびABS15を統合的に制御するものであり、ブレーキ操作子11の操作量に応じたブレーキ液圧発生装置10の増圧ブレーキ作動制御、アンチロックブレーキ制御、ブレーキ操作子11の操作有無にかかわらずブレーキ液圧発生装置10に自動的に液圧を発生させる自動ブレーキ制御、さらに自動ブレーキ制御からABS15を制御して個別の車輪ブレーキ液圧を最適に調整してのトラクションコントロールおよびビークルスタビリティコントロールなどを行うことができる。
さらに電子制御装置13は、図示せぬ車両動力源の電気回生制動装置との協調にも対応することが可能であり、前記電気回生制動装置の制動力をドライバの所望した車両制動力から差し引いた車輪ブレーキ制動力になるようにブレーキ液圧発生装置10に協調回生増圧ブレーキ制御を加えることもできるようになっている。
図2において、第1実施例の非作動初期位置となるブレーキ液圧発生装置10は、ストロークシミュレータ30と、マスタ駆動ユニット90と、マスタシリンダ60とを備え、ストロークシミュレータ30、マスタ駆動ユニット90、マスタシリンダ60はそれぞれ個別にサブアッセンブリとして構成され、各々は図示せぬボルトにて締結されユニット化される。
ストロークシミュレータ30は個別にサブアッセンブリされるものの、機能的には、ブレーキ操作子11の入力に対応してストロークを可変するストロークシミュレート機能と、マスタ駆動ユニット90にサブアッセンブリされる入力選択手段100へのブレーキ操作子11からの入力伝達部材30Bとしての機能と、後述する入力選択手段100の第1所定後退限102Kとしての機能とを兼ね備えるものである。
ストロークシミュレータ30には、シミュレータボディ31に内装されて弾性部材によりブレーキ操作子11の操作量の増大に応じて操作ストロークと操作反力を増大させるシミュレート手段30Aと、入力選択手段100に枢支連結する反力ピストン102の作用反力を支承する第1所定後退限102Kと、シミュレータ動作を適宜制限する遮断弁SSとを備える。
シミュレート手段30Aには液圧室37eを備え、該液圧室37eはシミュレータボディ31に穿設される連通穴31v,31hを経由しマスタ駆動ユニット90の右ケーシング92に穿設される連通穴92h,92v,92mを経由して、さらにマスタボディ61に穿設される連通穴61mを経由してマスタリザーバ12に連通する。
これら複数の連通穴31v,31h,92h,92v,92m,61mは栓50,50およびシール部材49,49によってブレーキ液圧発生装置10の外部および内部へのブレーキ液のリークが無いようにして接続される。
図6を併せて参照し、シミュレータボディ31は異径段付の内径を形成し、小径内径部には前記シミュレート手段30Aがスリーブ37の内径部に子部品をカートリッジ様に小組して、該スリーブ37の外径軸後端外周角部はシミュレータボディ31の小径内径後部の周方向に形成する溝部に嵌着される係止リング43に当接し後退限を規制して内装される。
スリーブ37の外径軸後部にはシール部材38が装着されシミュレータボディ31の小径内径部に摺接する。
スリーブ37内径は異径段付の有底円筒状に形成し、該スリーブ37の大径内径部にストロークピストン35およびピストンガイド39を摺動可能に内装する。
ストロークピストン35は、首振り自在に装着されるシミュレータプッシュロッド33がヨーク32およびナット34に螺着され、ヨーク32はブレーキ操作子11に連結される(図1)。
ストロークピストン35の外径は、異径段付形状に形成して該ストロークピストン35大径軸後端外周角部がスリーブ37の大径内径後部の周方向に形成される溝部に嵌着される係止リング42に当接し後退限を規制される。
ストロークピストン35の大径軸中間部にはシール部材36が装着され、スリーブ37の大径内径円筒部に摺接する。
ストロークピストン35の小径軸外周には、ゴム等の弾性材料で形成される円筒形状のシミュレートラバー40がゆるい嵌め合いで挿入される。
ストロークピストン35の小径軸先端はピストンガイド39の有底円筒状の内径部を摺動可能に構成するが、ゆるい嵌め合いであり有底円筒部内が密封されることの無いよう充分なクリアランスがとられる。
ピストンガイド39の外径は異径段付形状に形成され、シミュレートばね41がピストンガイド39小径軸外周に案内されるようにしてスリーブ37の底部37cとピストンガイド39の段部39cとの間に張架され、ストロークピストン35の段部35aとピストンガイド39の後端39aに直列配置したシミュレートラバー40をゆるく予圧している。
このシミュレートばね41のセット荷重は、入力選択手段100に連結される反力ピストン102にかかる初動荷重よりも小さく、かつシミュレートラバー40よりも低いばね定数に設定される。
そしてスリーブ37の大径内径前端の段部37cとピストンガイド39の段部39cとの軸方向のクリアランスLS1(図6)を設定してシミュレートばね41とシミュレートラバー40との双方の荷重がバランスして張架される。
ピストンガイド39大径軸外周には軸方向に沿って溝形状の油路39bを複数形成してピストンガイド39の前方および後方のブレーキ液の流通を許容する。
反力ピストン102は、前部小径軸を入力選択手段100の浮動レバー101に枢支連結して、後部では外径を異径段付形状に形成し、大径軸中間部にはシール部材48を装着してシミュレータボディ31の大径内径部を摺動可能にするとともに、小径軸102bはストッパピストン44の内径に摺動可能に挿入される。
ストッパピストン44は、外周にブレーキ液の流通を許容すべく、外径軸がゆるいはめあいでシミュレータボディ31の大径内径部を摺動可能にするとともに、内径を異径段付形状に形成して小径のガイド部44cには反力ピストン102の小径軸102bが摺動可能にされている。
ストッパピストン44の軸後端は、複数の放射状スリット44bが形成され油路を確保して、シミュレート手段30Aの液圧室37eとマスタリザーバ12とのブレーキ液の流通ができるようになっている。
第1所定後退限102K(図2)は、反力ピストン102の段部102cがストッパピストン44の前端44dに当接して、ストッパピストン44の軸後端をシミュレータボディ31の環状段部に当接して、反力ピストン102の小径軸102bをストッパピストン44に摺動可能に貫通しながら、ストッパピストン44とともに反力ピストン102の後退限が規制されるようになっている。
なお、反力ピストン102の段部102cとストッパピストン44内径の段部44e間には戻しばね45が張架されるが、この戻しばね45のセット荷重はマスタシリンダ60の戻しばね66,76などの反力がかかる入力選択手段100の初動荷重(反力)よりも小さく、初期状態においては反力ピストン102の段部102cとストッパピストン44の前端44dは当接する設定となっている。
この戻しばね45は、反力ピストン102が前進した際に該反力ピストン102とストッパピストン44が所定量SSL離間して、後述する遮断弁SSを閉じるために機能する。
遮断弁SSは、反力ピストン102が、ストッパピストン44と離間しながら第1所定後退限102Kから所定量SSL前進したときに、前記液圧室37eとマスタリザーバ12への連通を遮断するものである。
遮断弁手段SSはスリーブ37の前方底部を貫通する複数の弁穴37aとストッパピストン44の後端44aに、ゴム材等からなり焼付け接着されるドーナツ状の弁座47とで構成される。
ストッパピストン44のガイド部44cに挿入された反力ピストン102の小径軸102bの後端102aは弁座47後端より突き出してスリーブ37の前端37dと密着しており、スリーブ37の弁穴37aとストッパピストン44の弁座47は所定量SSLのクリアランスを持ち離間してセットされ、シミュレート手段30Aに画成された液圧室37eはマスタリザーバ12に連通してブレーキ液を満たしながら大気圧に開放されている。
このように、直列に配置されたシミュレート手段30Aと、反力ピストン102とが、ブレーキ操作子11からの入力を入力選択手段100に伝達する入力伝達部材30Bとなる。
図2〜5を参照し、マスタシリンダ60は、入力選択手段100の浮動レバー101のマスタシリンダ出力点101cに垂直方向に首振り自在に連結されるマスタプッシュロッド104が、マスタシリンダ60の後部マスタピストン62を押動可能なように、マスタボディ61を左ケーシング91および右ケーシング92に連結する。
マスタシリンダ60は、タンデム型のものであり、前部出力ポート16Fに液圧を発生させる前部マスタピストン71と、後部出力ポート16Rに液圧を発生させる後部マスタピストン62と、後部マスタピストン押動部材であるマスタプッシュロッド104とを備える。
マスタボディ61は、有底円筒状のシリンダ内にて前部および後部マスタピストン71,62が摺動自在に嵌合する。
マスタボディ61の上部には、前部および後部マスタピストン71,62により画成される液室へのブレーキ液の補給が可能なように、合成樹脂から成るマスタリザーバ12(図1参照)が取り付けられブレーキ液を満たしている。
前部マスタピストン71の軸方向中間部およびマスタボディ61内径間にブレーキ液を補給すべく、常時通じて前部マスタピストン71の軸方向中間部に開口する補給ポートFSPがマスタボディ61に穿設される。
前部マスタピストン71の前部には、前部出力ポート16Fに液圧を発生させるべく、マスタボディ61のシリンダ内面に摺接するカップ72が装着される。また前部マスタピストン71の後方側には後部出力ポート16Rに発生した液圧を受圧すべく、マスタボディ61のシリンダ内面に摺接するカップ73が装着される。
前部マスタピストン71には、戻しばね76の付勢力により前部マスタピストン71が後退限位置に戻ったときに前部出力ポート16Fとマスタリザーバ12を連通させる中心型のリリーフ弁74が設けられる。このリリーフ弁74は、前部マスタピストン71の前端部に同軸に装着され、前部マスタピストン71が後退限にあるときにはリリーフ弁74を弁ばね75のばね付勢力に抗して前進位置に保持し開弁して、前部マスタピストン71の前進時には弁ばね75によるリリーフ弁74の後退動作すなわち閉弁動作を許容するようにして両端がマスタボディ61に固定的に支持される開弁棒77とで開閉可能に構成される。
開弁棒77は、その両端をマスタボディ61で支持されて前部マスタピストン71の長穴71a内に挿通されており(図5)、リリーフ弁74の後端が開弁棒77に当接される。
リリーフ弁74は、前部マスタピストン71が後退限にあるときには開弁棒77でリリーフ弁74が押圧されることにより開弁し、前部出力ポート16Fとマスタリザーバ12を連通させて前部マスタピストン71前方液圧室にブレーキ液を補給可能とする。また前部マスタピストン71が後退限から前進すると、開弁棒77が前部マスタピストン71に対して後方に相対移動することにより、リリーフ弁74が閉弁して前部出力ポート16Fへの圧力発生が可能になる。
後部マスタピストン62は異径段付軸にして、大径軸はマスタボディ61のシリンダ内径に、小径軸はマスタボディ61の後端部にシール部材69を備えて嵌着されるガイド67の内径にそれぞれ摺動自在に嵌合される。
ガイド67の前端にはマスタピストン62の環状段付部が当接し、またガイド67の後端はマスタボディ61の後端溝部に嵌着されるストッパ70に当接して、ガイド67とともに後部マスタピストン62の後退限が決められている。
そして後部マスタピストン62は、前方外周に後方からのみブレーキ液の流通を許容してマスタボディ61内径に摺接するカップ63を備え、後部マスタピストン62の後方小径軸はガイド67内周に装着されたカップ68に摺接する。
またマスタボディ61には、後部マスタピストン62の後退限位置にあるときはマスタリザーバ12と後部出力ポート16Rを連通して、後部マスタピストン62の前進位置ではカップ63の通過によりマスタリザーバ12と後部出力ポート16Rの連通が遮断され閉弁するリリーフポートRPと、マスタリザーバ12からカップ63とカップ68間に常時ブレーキ液の補給をおこなう補給ポートRSPとが穿設される。
前部および後部マスタピストン71,62の最大間隔を規制すべく、前部マスタピストン71後端に当接するリテーナ65と後部マスタピストン62間に縮設される戻しバネ66のセット長を、後部マスタピストン62に螺着されるリテーナガイド64が規制するようになっている。
前部マスタピストン71の戻しバネ76より後部マスタピストン62の戻しバネ66のセット荷重の方が大きく設定されており、後部マスタピストン62の後退限では前部および後部マスタピストン71,62の最大間隔をおいた位置で前部マスタピストン71の後退限も設定される。
このように構成されたマスタシリンダ60では、浮動レバー101のマスタシリンダ出力点101cに連結されるマスタプッシュロッド104の押動により、後部マスタピストン62と前部マスタピストン71が同時に前進を開始して後部マスタピストン62の戻しバネ66より小さなセット荷重に設定される前部マスタピストン71の戻しバネ76をたわませる。
そして前部マスタピストン71ではリリーフ弁74が、また後部マスタピストン62ではリリーフポートRPがほぼ同時に閉弁動作をおこなう。
前記閉弁動作後は、後部マスタピストン62と前部マスタピストン71の前進および後退に応じた液圧を後部出力ポート16Rおよび前部出力ポート16Fに発生させることができる。
後部マスタピストン62と前部マスタピストン71が後退限に戻ると前部マスタピストン71ではリリーフ弁74が、また後部マスタピストン62ではリリーフポートRPが開弁して後部出力ポート16Rおよび前部出力ポート16Fはマスタリザーバ12に連通して大気圧開放状態となる。
図2〜4を参照し、マスタ駆動ユニット90は、モータ120と、該モータ120の回動をクランク機構にて直動に変換するモータ直動手段110と、入力選択手段100とにより構成される。
入力選択手段100は、ブレーキ操作子11からの入力伝達部材30Bでもある反力ピストン102の前部と浮動レバー101の中間部との連結点であるブレーキ操作子入力点101aを支点として、浮動レバー101が垂直方向に揺動自在に枢支連結されている。
そして、浮動レバー101の一端部であるモータ直動手段入力点101bには、モータ直動手段110に構成されるクランク機構のコンロッド103が垂直方向に首振り自在に枢支連結される。
該コンロッド103は、クランク軸111の外周近傍のコンロッド大端部103aに連結して垂直方向に首振り自在に枢支連結される。
一方、浮動レバー101の他端部であるマスタシリンダ出力点101cは、マスタシリンダ60のマスタプッシュロッド104を垂直方向に首振り自在に枢支連結して、浮動レバー101に発生する力をマスタシリンダ60に伝達可能に構成する。
図7、図8を併せて参照し、このようなマスタ駆動ユニット90ではモータ直動手段110のクランク軸111の両端を軸受96,96がクランク軸111を回動可能に軸支して、軸受96,96は左ケーシング91および右ケーシング92に挟支される。
モータ120は、本体を左ケーシング91および右ケーシング92に連結し、前方よりモータ軸120bを筐体内に突き出すようにされている。
モータ120とモータ直動手段110との動力伝達手段は、モータ駆動側をウォーム歯車、モータ被動側をウォームホイール歯車とする歯車対で構成されている。
クランク軸111の外周部にはウォームホイール歯車111hが形成されており、該ウォームホイール歯車111hはモータ120のモータ軸120bに形成されたウォーム歯車120wに噛合される。
モータ120は、電子制御装置13により、正逆転自在に回動方向を制御されるものであり、モータ120の回転方向にともないウォーム歯車120wからウォームホイール歯車111hに動力が伝達されるクランク軸111の回転方向も正逆転自在に制御される。
ところで、一般的にウォーム歯車からウォームホイール歯車への動力伝達効率は高いものの、逆にウォームホイール歯車からウォーム歯車への動力伝達効率は低いことが知られており、この実施例においてもクランク軸111のウォームホイール歯車111hからモータ120のウォーム歯車120wへの動力伝達の逆効率はきわめて小さく設定されている。
この低逆効率の効果により、モータ120に大きな動力を付与してクランク軸111に大きな回転力を伝達した状態で、該クランク軸111の回転位置を保持しようとする場合においても、モータ120には小さな回転力を付与するのみでよく、モータ120にかかる電力消費をきわめて小さく抑えることが可能になる。
そして、クランク軸111の回転角を検出すべく、右ケーシング92に本体を固定された出力検出手段95の検出軸95dがクランク軸111右端より軸方向に挿入されている。
該出力検出手段95にて検出された回転角値は電子制御装置13に送られ、該電子制御装置13にて制御されるモータ120の目標回転量(マスタシリンダ60の目標発生液圧)に対して、別途サンプリングされているモータ電流値などと併せ補正制御をおこなえるようにフィードバックされる。
図8はモータ直動手段110および入力選択手段100の正面要部断面を展開したものであり、クランク軸111の外周近傍にコンロッド103に形成されるすりわり部をピン111Pにてコンロッド103を枢支連結してコンロッド大端部103aを構成する。
浮動レバー101は、中央のすりわり部にピン101aPにて反力ピストン102を枢支連結してブレーキ操作子入力点101aを構成する。
浮動レバー101の一端側のすりわり部には、ピン101bPにてコンロッド103のコンロッド小端部を枢支連結してモータ直動手段入力点101bを構成する。
さらに、浮動レバー101の他端ではピン101cPがマスタプッシュロッド104の後端に形成されるすりわり部を枢支連結してマスタシリンダ出力点101cを構成する。
図2の非作動初期位置を参照して、モータ直動手段110および入力選択手段100では、クランク軸111左側方に設けられるストッパ片111Kと、左ケーシング92に突設するストッパ受け部91Kとが当接してクランク軸111の逆転を規制して、該クランク軸111に連結したコンロッド103と浮動レバー101との連結点であるモータ直動手段入力点101bの非作動初期位置よりの後退を規制する第2所定後退限103Kを構成している。
そして、マスタシリンダ60の戻しばね76,66の付勢力がマスタシリンダ出力点にかかることにより、後退限にあるモータ直動手段入力点101bを支点とした浮動レバー101の図2における時計回りの回動力により、ブレーキ操作子11からの入力伝達部材30Bを構成する反力ピストン102はストッパピストン44とともに第1所定後退限102Kに当接して、反力ピストン102と浮動レバー101との連結点であるブレーキ操作子入力点101aの非作動初期位置よりの後退を規制している。
また、マスタシリンダ60の戻しばね76,66の付勢力により浮動レバー101を介して反力ピストン102を第1所定後退限102Kに付勢しているマスタプッシュロッド104の後端は、凸部104Kにわずかな隙間をあけて位置している。
このような入力選択手段100では、ブレーキ操作子入力点101aの入力によるモータ直動手段入力点101bを第2所定後退限103Kに押圧する力より、モータ直動手段入力点101bを第2所定後退限103Kから前進させる力のほうが大きなときには、ブレーキ操作子入力点101aを第1所定後退限102Kに押圧拘束して、ブレーキ操作子入力点101aを支点とした浮動レバー101の回動により、マスタシリンダ60の昇圧が可能になる。
逆に、モータ直動手段入力点101bの入力によるブレーキ操作子入力点101aを第1所定後退限102Kに押圧する力より、ブレーキ操作子入力点101aを第1所定後退限102Kから前進させる力のほうが大きなときには、モータ直動手段入力点101bを第2所定後退限103Kに押圧拘束して、モータ直動手段入力点101bを支点とした浮動レバー101の回動により、マスタシリンダ60の昇圧が可能になる。
言い換えると、入力選択手段100は3点イコライザ構造であり、一点を拘束するため、浮動レバー101は両端にかかるモーメントを等価にするため、揺動あるいは揺動しながら浮動をおこなうものである。
このような入力選択手段100のいわゆるハイセレによる浮動レバー101の回動により、モータ直動手段入力点101bあるいはブレーキ操作子入力点101aの入力を、浮動レバー101に枢支連結するマスタピストン押動部材であるマスタプッシュロッド104を介してマスタシリンダ60に出力伝達することができることになる。
図2〜図3を併せて参照し、クランク軸111の全作動角設定は、コンロッド103が初期位置から図2において2点鎖線で示すコンロッド103の上死点111TDCに推移するまでであり、上死点111TDCでは図3に示すようにマスタシリンダ60の前部および後部マスタピストン71,62のフルストローク近傍に設定して全作動角θCとなるようにされている。
そして、クランク軸111のコンロッド大端部103aの非作動初期位置は、上死点111TDCにおけるコンロッド大端部103aの位置に対して90〜100度逆転した位置に設定されている。
よって、モータ直動手段110を構成するクランク機構のコンロッド大端部103aの全作動角θCは、90〜100度に設定されている。
図9の車輪ブレーキ所要液量特性図を参照して、マスタシリンダ60に接続される車輪ブレーキ(BFL,BFR,BRL,BRR)の所要液量特性は、車輪ブレーキ(BFL,BFR,BRL,BRR)に備わるブレーキシューあるいはブレーキパッドとブレーキドラムあるいはブレーキローターとのすき間(遊び)がある低圧領域が最も液量を必要として、液圧の上昇にともないブレーキシューあるいはブレーキパッドの圧縮ひずみがサーチュレートするに従い液量も減少してゆくことが知られている。
よって、油圧(反力)が小さく遊びの大きな低圧領域では、クランク軸111の必要トルクは小さくともよいものの、コンロッド103には高いストロークスピードを発生することが求められる。
さらに、マスタシリンダ60でも後部マスタピストン62のカップ63がリリーフポートRPを通過するまでの距離、およびリリーフ弁74が前部マスタピストン71に着座するまでの距離である無効ストロークを持っており、初動位置ではやはり、クランク軸111の必要トルクは小さくともよいものの、コンロッド103には大きなストロークスピードを発生することが求められる。
また逆に、車輪ブレーキ(BFL,BFR,BRL,BRR)の高圧領域においては、クランク軸111回転角に対するコンロッド103のストロークスピードは比較的低くともよいものの、クランク軸111には大きなトルクが要求される。
図10のコンロッドスピード特性図を参照して、破線で囲む領域をクランク全作動角θCと設定したモータ直動手段110では、初期位置からの初動ではクランク軸111の回転角に対するコンロッド103のストロークスピードは高く、上死点111TDCに推移するに従いクランク軸111の回転角に対するコンロッド103のストロークスピードがサインカーブで徐変して減少していくことになる。
そして、初期位置を上死点前90〜100度に設定されたモータ直動手段110の初動においては、コンロッド103が最高速近傍より作動することになり、モータ120の電気的時定数および機械的時定数の存在によるモータ回転立ち上がり遅れを補って、マスタシリンダ60の無効ストローク距離を素早く通過するとともに車輪ブレーキ(BFL,BFR,BRL,BRR)遊び領域のブレーキ液充填速度を高めることができる。
また、車輪ブレーキ(BFL,BFR,BRL,BRR)の所要液量が小さいものの液圧負荷の大きな高圧領域に推移するにしたがい、コンロッド103のスピードが徐変減少して、マスタシリンダ60の後部および前部マスタピストン62,71のフルストローク近傍では、モータ直動手段110のクランク角も上死点近傍になり、クランク軸111のモーメントが減少し、クランク軸111およびモータ120にはほとんど負荷がかからないことになる。
図3のブレーキ液圧発生装置10の増圧ブレーキ作動制御においては、入力選択手段100がモータ直動手段入力点101bの入力を選択してマスタシリンダ60に出力するようにモータ120の動力を制御する。
ブレーキ操作子入力点101aの入力によるモータ直動手段入力点101bを第2所定後退限103Kに押圧する力より、モータ直動手段入力点101bを第2所定後退限103Kから前進させる力のほうが大きくなるようにモータ120が制御されており、ブレーキ操作子入力点101aを第1所定後退限102Kに押圧拘束して、ブレーキ操作子入力点101aを支点とした浮動レバー101の回動により、マスタシリンダ60の昇圧がおこなわれている。
図3では、マスタシリンダ60の後部マスタピストン62および前部マスタピストン71がフルストロークの状態にあり、高圧になったマスタシリンダ60の液圧反力はマスタプッシュロッド104、浮動レバー101を介しコンロッド103にかかっている。
このとき、前述したようにコンロッド103は図2における上死点111TDCの位置にあるため、マスタシリンダ60の高い液圧反力はクランク軸111にはモーメントとして作用していないものの、ブレーキ操作子入力点101aを第1所定後退限102Kに押圧拘束する力は前記液圧反力に比例して高まっているため、ブレーキ操作子11への強い操作力が加わった場合においても、ブレーキ操作子入力点101aが第1所定後退限102Kから前進することはない。
ここで、コンロッド103の押動力をFp、ブレーキ操作子入力点101a〜モータ直動手段入力点101bの距離をL1、ブレーキ操作子入力点101a〜マスタシリンダ出力点101cの距離をL2としたとき、マスタシリンダ60のピストン押動力Fcは、
Fc=Fp×L1/L2
となる。
そして、第1所定後退限102Kに反力ピストン102が付与する作用反力はおよそ、Fp+Fcということになる。
ここで、ドライバがブレーキ操作子11を操作して電子制御装置13によりブレーキ液圧発生装置10が増圧ブレーキ作動したときのストロークシミュレータ30の作動を説明する。
図6を併せて参照し、反力ピストン102がストッパピストン44とともに第1所定後退限102Kに押し付けられた状態では、反力ピストン102の後端102aはスリーブ37の前端37dと当接して、該スリーブ37を初期位置に保持しているため、ストッパピストン44の弁座47とスリーブ37の弁穴37aは所定量SSL離間し、遮断弁SSを開放状態にして液圧室37eのマスタリザーバ12(図1)とのブレーキ液の流通を許容している。
このように大気圧開放状態にある液圧室37e内ではシミュレート手段30Aのストロークピストン35およびピストンガイド39の摺動が許容されている。
先ず、ブレーキ操作子11の作動初期では、ストロークシミュレータ30のシミュレートばね41のセット荷重が、マスタシリンダ60の反力がかかる入力選択手段100の初動荷重よりも小さく設定されているため、反力ピストン102の前進が始まる前にピストンガイド39がストロークを始める。
そして、いち早くブレーキ操作量検出手段25が、ブレーキ操作子11の操作量を検出して、該検出値を電子制御装置13に送る。
続いて、電子制御装置13はブレーキ操作量検出手段25の検出値に対応し、モータ120に大きな動力を供給してマスタシリンダ60に高い油圧を発生させ、その反力を第1所定後退限102Kに押圧拘束されている反力ピストン102に加算する。
第1所定後退限102Kが作用反力を支承して後退限に押圧される反力ピストン102によりストロークを規制されたスリーブ37内径では、シミュレートばね41およびシミュレートラバー40のたわみに伴いストロークピストン35の摺動を許容してブレーキ操作子11のストロークシミュレート操作がおこなわれる。
図11のストロークシミュレータ特性を参照して、ストロークシミュレータ30の遮断弁手段SSが開放されている状態ではブレーキ操作子11の入力の増加にともなって該ブレーキ操作子11のストロークがC0−C1−C2−C3の線図に変化する。
先ずブレーキ操作子11の入力を加えていくと、ストロークシミュレータ30のスリーブ37内に張架されるシミュレートばね41のセット荷重を超えてC0のポイントとなりストロークが立ち上がる。
このC0のポイント近傍では既にブレーキ操作量検出手段25の検出値に対応したモータ120の回動により増圧油圧反力が第1所定後退限102Kに支承されている。
さらにブレーキ操作子11の入力を加えていくと、シミュレートばね41と直列に張架されて予圧を与えられていたシミュレートラバー40のセット荷重をこえて、シミュレートばね41とシミュレートラバー40との両者が同時にたわみはじめるC1のポイントとなる。
さらに入力が加わり、シミュレートばね41とシミュレートラバー40との複合ばね定数にてストロークが増加していくとスリーブ37の段部37bにピストンガイド39の段部39cが当接して(図6でのLS1がゼロ)ピストンガイド39のストロークが規制されるC2ポイントになる。
C2ポイントからフルストロークC3ポイントはシミュレートラバー40の単独のばね定数でストロークが増加してゆき、該シミュレートラバー40のゴム特性により非線形の線図となる。
そしてブレーキ操作子11の入力減少にともない、C3−C2−C1−C0の線図を下まわるヒステリシスを持ってC3−C0のように非線形をもってブレーキ操作子11のストロークも減少する。
さて、図3においてはブレーキ操作子11の操作にともなうマスタシリンダ60の増圧ブレーキ作動として図示説明したが、自動ブレーキ作動にあたってはブレーキ操作子11の操作有無に関係なくマスタシリンダ60に適正な油圧を発生させることが可能になっており、モータ120からモータ直動手段110および入力選択手段100を介してのマスタシリンダ60への作用力伝達は、増圧ブレーキ作動および自動ブレーキ作動とも同様である。
図4の車両の電源が立ち上がっていないなどの場合におけるブレーキ液圧発生装置10の非増圧ブレーキ作動にあっては、初期位置状態においてモータ120およびモータ直動手段110に増圧制御がされずに第1所定後退限102Kにはマスタシリンダ60の初動反力が入力選択手段100を介してかかっている。
ストロークシミュレータ30ではブレーキ操作子11の入力がおこなわれると、ストロークピストン35がシミュレートラバー40とピストンガイド39とともに、セット荷重の低いシミュレートばね41のみをたわませてストロークしてゆき、スリーブ37の段部37bにピストンガイド39の段部39cが当接する。
そして、前記段部37bと39cが当接する過程で、ブレーキ操作子11から反力ピストン102にかかる入力荷重が、マスタシリンダ60の初動反力が入力選択手段100経由で反力ピストンにかかっている反力を超える。
そしてモータ直動手段入力点101bを支点とした浮動レバー101の回動(図4での反時計回り)が開始されると、ストッパピストン44を一旦取り残して反力ピストン102とスリーブ37が所定量SSL前進すると、反力ピストン102とストッパピストン44間に張架される戻しばね45の付勢力により、前記ストッパピストン44に備える弁座47とスリーブ37の弁穴37aは密着、遮断弁SSは閉弁し、液圧室37eとマスタリザーバ12の連通は遮断される。
遮断弁SSが閉弁した液圧室37eでは、非圧縮性流体であるブレーキ液を油密(オイルロック)になるため、スリーブ37内径でのストロークピストン35のストロークを制限することが可能になる。
このとき、液圧室37eは圧力が高まるが、遮断弁手段SSの弁穴37aを小径とするため、該弁穴37aと弁座47を離間させようとする力より戻しばね45の付勢力が勝り、遮断弁手段SSは開弁しない設定とされている。
そしてスリーブ37の前端37dでストッパピストン44および反力ピストン102を押動して入力選択手段100にブレーキ操作子11の入力を伝達し、入力選択手段100はモータ直動手段入力点101bを支点とした浮動レバー101の回動により、マスタシリンダ60の昇圧をおこなうものである。
よって、ストロークシミュレータ30に備わる遮断弁SS閉弁後のブレーキ操作子11のストロークは、前記シミュレート動作の制限により、マスタシリンダ60の昇圧操作のみに消費されることになる。
なお万が一、遮断弁SSがリークなどの不具合をおこした場合においても、マスタシリンダ60に充分な昇圧をさせることができるように、スリーブ37内でのストロークピストン35のフルストローク量を設定している。
入力選択手段100では、モータ直動手段入力点101bの入力によるブレーキ操作子入力点101aを第1所定後退限102Kに押圧する力は無く、ブレーキ操作子入力点101aを第1所定後退限102Kから前進させる力のほうが当然大きなため、モータ直動手段入力点101bを第2所定後退限103Kに押圧拘束して、モータ直動手段入力点101bを支点とした浮動レバー101の回動により、マスタシリンダ60の昇圧をおこなう。
この非増圧ブレーキ作動において、ブレーキ操作子11の入力による反力ピストン102の押動力をFm、ブレーキ操作子入力点101a〜モータ直動手段入力点101bの距離をL1、モータ直動手段入力点101b〜マスタシリンダ出力点101cの距離をL3としたとき、マスタシリンダ60のピストン押動力Fcは、
Fc=Fm×L1/L3
となる。
さて、図12では出力液圧特性を示し、実線で示すK0〜K1〜K2〜K3〜K8はブレーキ操作子11の操作量(入力)に対応してドライバの所望する制動力になるようブレーキ液圧発生装置10の発生する車輪ブレーキ液圧を増圧ブレーキ作動制御の液圧線図である。
破線で示すK0〜K4〜K5〜K6は車両に備わって図示せぬ電気回生制動装置に協調して、ドライバの所望する制動力から回生制動力分を差し引いた車輪ブレーキ液圧となるようブレーキ液圧発生装置10が増圧制御される協調回生ブレーキ作動制御の液圧線図である。
一点鎖線で示すK7〜K8はモータ120およびモータ直動手段110の増圧ブレーキ作用がなく、ブレーキ操作子11の入力のみで反力ピストン102および入力選択手段100を介し、マスタシリンダ60の後部マスタピストン62および前部マスタピストン71を押動前進させての非増圧ブレーキ作動の液圧線図である。
ドライバの所望する制動力になるよう車輪ブレーキ液圧を増圧する増圧ブレーキ作動制御では、ブレーキ操作子11が操作されるとブレーキ操作量検出手段25が操作量を検出、電子制御装置13がモータ120およびモータ直動手段110を正転側に回動制御してマスタシリンダ60の増圧を開始するK0ポイントになる。
K0〜K1では、いわゆる液圧ジャンピングがおこなわれ車輪および駆動系の慣性力を打ち消すべく、一気に所定圧力まで車輪ブレーキ液圧を上げる。
K1〜K2ではブレーキ操作子11の操作量に対して比例的に出力液圧を上げて、K2ポイントではモータ120の正転を一旦停止して増圧制御を止めるが、該圧力は車輪ブレーキがロックする(実際にはロックの手前でABSが作動)のに充分な余裕を持って設定されている。
さらにブレーキ操作子11の入力を上げると、モータ120およびモータ直動手段110により付与される反力ピストン102の推力より、ブレーキ操作子11による該反力ピストン102の推力のほうが強くなり、該反力ピストン102の第1所定後退限102Kからの離間前進移動により、入力選択手段100のモータ直動手段入力点101bを支点とする浮動レバー101の回動にてマスタシリンダ60が非増圧ブレーキ作動の液圧線図K7〜K8に沿って昇圧を再開するK3ポイントとなる。
このとき、先に説明したウォーム歯車とウォームホイール歯車の低逆効率の効果により、モータ直動手段入力点101bを第2所定後退限まで時間を遅延させながら後退させてからモータ直動手段入力点101bが支点となり、ブレーキ操作子入力点101aを力点として、マスタシリンダ出力点101cを作用点として、マスタシリンダを再昇圧する。
協調回生ブレーキ作動制御では、K7〜K8の線図より下まわるようにモータ120およびモータ直動手段110を増圧制御すると反力ピストン102が前進するおそれがありブレーキ操作子11の操作フィーリングを損なうため、K0〜K4まで通常増圧制御よりも低くジャンピングしたのちにK7〜K8線と略平行にオフセットさせて昇圧しK4〜K5線図となる。
K5〜K6では、通常の増圧線図K1〜K2と略平行にオフセットして昇圧させることにより、K4〜K5〜K6〜K2〜K1〜K4で囲まれる領域を回生ブレーキの回生制動力として電力の回生をおこなうことができる。
なお、回生電力の供給が必要なくなった場合には通常の増圧ブレーキ作動線図K0〜K1〜K2〜K3に垂直移動して車輪ブレーキ液圧を増強すればよいことになる。
また、協調回生ブレーキ作動中においても、ストロークシミュレータ30の遮断弁SSは開弁しているため、ブレーキ操作子11の入力に対するブレーキ操作子11のストロークは図11に示すような特性になるが、協調回生制御で車輪ブレーキ液圧は減少されるものの、この減少分と等しく電気回生制動力が発生するため、車両の制動力合計は通常の増圧ブレーキ作動と同等であり、ブレーキ操作子11のストローク量と発生制動力の関係に違和感は生じないものとなっている。
図13は本発明の第2実施例を示すものであり、ブレーキ液圧発生装置210は前記第1実施例に対し、マスタ駆動ユニット290の構成が異なり、第1実施例と作用が同じで形状も略同一とする部品には同一の符号を付すとともに説明を省略する。
第2実施例のマスタ駆動ユニット290では第1実施例に対し、入力選択手段100の入出力点が異なり、浮動レバー101の一端部のモータ直動手段入力点101bにはコンロッド103を第1実施例とは向きを逆に連結し、そして浮動レバー101の他端部に移動したブレーキ操作子入力点101aにはブレーキ操作子11からの入力が伝達される反力ピストン102が、浮動レバー101の中間部に移動したマスタシリンダ出力点101cにはマスタシリンダ60を押動するマスタプッシュロッド104が連結される。
第2実施例の増圧ブレーキ作動についても、基本的に第1実施例と同一であり、ブレーキ操作子11の操作量に連動してモータ120を制御してクランク軸111を図13では反時計回りに回動させ、浮動レバー101がブレーキ操作子入力点101aを支点として時計回りに回動、マスタシリンダ出力点101cに連結するマスタプッシュロッド104を押動してマスタシリンダ60の増圧作用を得るものである。
非増圧ブレーキ作動においても第1実施例と基本的に同一であり、モータ120の駆動力がないクランク軸111は逆転を制限されてコンロッド103の後退を制限し、浮動レバー101はモータ直動手段入力点101bを支点として、反力ピストン102の前進による反時計回りの回動により、マスタシリンダ出力点101cに連結するマスタプッシュロッド104を押動してマスタシリンダ60の昇圧をおこなうものである。
図14は本発明の第3実施例を示すものであり、ブレーキ液圧発生装置310は前記第1実施例に対し、マスタ駆動ユニット390の構成が異なり、第1実施例と作用が同じで形状も略同一とする部品には同一の符号を付すとともに説明を省略する。
第3実施例のマスタ駆動ユニット390では第1実施例に対し、入力選択手段100の入出力点が異なり、浮動レバー101の一端部に移動したブレーキ操作子入力点101aにはブレーキ操作子11からの入力が伝達される反力ピストン102が、そして浮動レバー101の中間部に移動したモータ直動手段入力点101bにはコンロッド103を連結し、浮動レバー101の他端部のマスタシリンダ出力点101cにはマスタシリンダ60を押動するマスタプッシュロッド104が第1実施例とは向きを逆に連結される。
第3実施例の増圧ブレーキ作動についても、基本的に第1実施例と同一であり、ブレーキ操作子11の操作量に連動してモータ120を制御してクランク軸111を図14では反時計回りに回動させ、浮動レバー101がブレーキ操作子入力点101aを支点として時計回りに回動、マスタシリンダ出力点101cに連結するマスタプッシュロッド104を押動してマスタシリンダ60の増圧作用を得るものである。
非増圧ブレーキ作動においても第1実施例と基本的に同一であり、モータ120の駆動力がないクランク軸111は逆転を制限されてコンロッド103の後退を制限し、浮動レバー101はモータ直動手段入力点101bを支点として反力ピストン102の前進による時計回りの回動により、マスタシリンダ出力点101cに連結するマスタプッシュロッド104を押動してマスタシリンダ60の昇圧をおこなうものである。
図15は本発明の第4実施例を示すものであり、ブレーキ液圧発生装置410は前記第1実施例に対し、マスタ駆動ユニット490の構成が異なり、第1実施例と作用が同じで形状も略同一とする部品には同一の符号を付すとともに説明を省略する。
第4実施例のマスタ駆動ユニット490では第1実施例に対し、入力選択手段100に枢支連結する増力レバー406が追加され、該増力レバー406は右ケーシング92に突設されるボス部に設けられる増力レバー支点406aに垂直方向に回動自在にされ、該増力レバー406中間部の増力レバー作用点406cは浮動レバー101のブレーキ操作子入力点101aに連結される。
そして、増力レバー406下方では反力ピストン102と連結され、増力レバー406の長穴406dで反力ピストン102の直動を増力レバー406の回動に変換できるようにして増力レバー力点406bが構成されている。
第4実施例の増圧ブレーキ作動についても、基本的に第1実施例と同一であり、ブレーキ操作子11の操作量に連動してモータ120を制御してクランク軸111を図15では時計回りに回動させ、浮動レバー101がブレーキ操作子入力点101aを支点として反時計回りに回動、マスタシリンダ出力点101cに連結するマスタプッシュロッド104を押動してマスタシリンダ60の増圧作用を得るものである。
このとき、第4実施例では浮動レバー101のブレーキ操作子入力点101aに発生するマスタシリンダ60の発生油圧反力は増力レバー406を介して反力ピストン102に伝達される。
非増圧ブレーキ作動においても第1実施例と基本的に同一であり、モータ120の駆動力がないクランク軸111は逆転を制限されてコンロッド103の後退を制限し、反力ピストン102の前進は増力レバー406の時計回りの回動とともにブレーキ操作子入力点101aに伝達され、浮動レバー101はモータ直動手段入力点101bを支点とした反時計回りの回動をすることにより、マスタシリンダ出力点101cに連結するマスタプッシュロッド104を押動してマスタシリンダ60の昇圧をおこなうものである。
ここで、反力ピストン102の押動力をFm、ブレーキ操作子入力点101a〜モータ直動手段入力点101bの距離をL1、モータ直動手段入力点101b〜マスタシリンダ出力点101cの距離をL3、増力レバー支点406a〜増力レバー力点406bの距離をL4、増力レバー支点406a〜増力レバー作用点406cの距離をL5としたとき、マスタシリンダ60のピストン押動力Fcは、
Fc=Fm×L4/L5×L1/L3
となる。
本実施例4では、L4/L5×L1/L3≒1に設定しているため、Fc≒Fmとなり、反力ピストン102の押動力とマスタプッシュロッド104の押動力が略同一となり、第1実施例に対してマスタシリンダ60の内径やブレーキ操作子11のレバー比を変更することなく、非増圧作動時のマスタシリンダ60の昇圧を高めることができるようになっている。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
たとえば、上記実施例では請求項1にかかる説明としてマスタ駆動ユニットのモータ直動手段をクランク機構としているが、偏心カム、ボールねじ、ラック&ピニオンなどの直動機構を用いてモータと入力選択手段とを連結することも可能である。
上記実施例では浮動レバーの中間部と一端部との距離と、中間部から他端部との距離がほぼ等しく図示されているが、このレバー比はモータおよびモータ直動手段、ブレーキ操作子のてこ比などの仕様にあわせ、浮動レバーの中間部と一端部との距離と、中間部から他端部との距離とを不等長に設変を加えることも無論可能である。
上記実施例では足動操作されるブレーキ操作子(ペダル)の形態にて説明したが、自動二輪車や四輪バギー等のバーハンドル車両の手動ブレーキレバーブレーキシステムへの適用も可能である。
上記実施例ではタンデム型のマスタシリンダを備える車両用ブレーキ装置について説明したが、単一のマスタピストンがマスタボディに摺動可能に収容されるシングルマスタシリンダを備える車両用ブレーキ装置に本発明を適用することも可能である。
なお上記実施例では、前進、後退、正転、逆転などの用語を用いて作動を説明したが、これは車両の進行方向に対応する方向性ではなく、マスタシリンダが昇圧作用する場合において前進や正転などを用い、マスタシリンダの降圧作用する場合に後退や逆転などを用いて表現するものである。