本発明第一の実施の形態によるコイル部品について図1〜図4を参照しながら説明する。以下に説明する本実施の形態に係るコイル部品は、いずれも具体的には高速作動信号インターフェースに用いられるコモンモードチョークコイルである。コイル部品1は、図1に示すようにドラムタイプの磁気コア2を備えており、その大きさは長辺方向で約2mm、幅方向で約1.2mmの大きさである。この磁気コア2はフェライト等の磁性粉体を圧縮、焼結等して成形されている。
磁気コア2は長手方向に直交する断面が略長方形の巻芯部3と、巻芯部3の長手方向両端に設けられ、略同一形状の一対の鍔部4、鍔部5より構成され、巻芯部3には2本の導線6、導線7が巻回されている。これら導線6、導線7は被覆導線である。図2に示すように、導線7は、銅線等の導体7Aに絶縁材料であるシリコーン変性エポキシ樹脂を含む混合樹脂の被覆7Bがされて構成されている。
導線6についても同様に、銅線等の図示せぬ導体に絶縁材料であるシリコーン変性エポキシ樹脂を含む混合樹脂の図示せぬ被覆がされて構成されている。導線6、導線7の直径はそれぞれ約20μm〜80μm程度であり、導線6、導線7の図示せぬ被覆、被覆7Bの半径方向の厚さは、例えば40μmの場合にはそれぞれ約2μm〜5μm程度であり、80μmの場合にはそれぞれ約6μm〜10μm程度である。被覆の厚みは耐圧、耐熱、磨耗等を考慮して設計される。但し、被覆が厚くなると比誘電率は高くなる。第一の実施の形態を含めて本実施の形態では、被覆の比誘電率はいずれも2.0〜3.0程度である。
導線6、導線7の図示せぬ被覆、被覆7Bを構成するシリコーン変性エポキシ樹脂を含む混合樹脂は、熱硬化性樹脂であり且つ半硬化状態となっている。熱硬化性樹脂には硬化剤が添加され、溶剤又は可塑剤を使用して適当な粘度のワニスとされる。適当な粘度とは、導線6、導線7の図示せぬ導体、導体7Aの表面に被着させ易い粘度ということである。
図示せぬ導体、導体7Aへの被着は、例えば、ワニスを溜めた容器の中に、導線6、導線7の図示せぬ導体、導体7Aとなる線材を通すことで行われる。ワニスを電線本体に被着させて線材を覆った後、加熱によって溶剤又は可塑剤を蒸発させながらワニス中のエポキシ樹脂の硬化反応を開始させる。加熱温度及び加熱時間を適宜設定することで、硬化反応は途中で停止し、いわゆる半硬化(Bステージとも呼ばれる)の状態となる。
ここで、半硬化とは、例えば日刊工業新聞社発行「プラスチック材料講座[1]エポキシ樹脂」300頁にも記載されているが、可溶、可融の状態の固体にまで反応させて反応を停止させることである。エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂では、重合反応とともに架橋反応が進行する架橋重合となるが、半硬化については、架橋反応が部分的に停止している状態(部分架橋)ということもできる。尚、本実施形態における「半硬化」は、後述のようにハンダ付け又は溶接時の熱で融解する可融性は有しているが、必ずしも「可溶」ではない。
また、導線6、導線7の図示せぬ被覆、被覆7Bを構成するシリコーン変性エポキシ樹脂を含む混合樹脂は、他の導電部、より具体的には、後述の端子電極8A、端子電極9A、端子電極8B、端子電極9Bへのハンダ付け又は溶接のための熱が加えられた際に、当該他の導電部に対して導線6、導線7の図示せぬ導体、導体7Aが短路可能となるよう融解する融点を有する。絶縁被覆電線たる導線のハンダ付けや溶接の温度は、一般的には150℃〜460℃である。従って、図示せぬ被覆、被覆7Bの融点はこの範囲の温度より低い温度となっている。尚、図示せぬ被覆、被覆7Bは、後述のように複数の材料から成るので、融点はいわゆる共融点である。また、この場合の融点は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接のための融解であるから、厳密な意味の融点より低い場合もあり得る。即ち、ある程度軟化した図示せぬ被覆、被覆7Bを例えばハンダごてでより分けて導線6、導線7の図示せぬ導体、導体7Aを露出できるようにできれば足りる場合もあり、この場合は厳密な意味の融点よりも低い場合もある。
また、導線6、導線7の図示せぬ被覆、被覆7Bを構成するシリコーン変性エポキシ樹脂を含む混合樹脂は、熱硬化性樹脂が半硬化であるにも関わらず、タックフリー又は非融着状態となっている。タックフリーとは、「指触乾燥」とも呼ばれており、人の指で触ってもベトつかないことである。ベトつくとは、触った指に材料が付着するかどうかである。「非融着状態」とは、材料同士を接触させた際に融着してしまわない状態ということである。
また、導線6、導線7の図示せぬ被覆、被覆7Bを構成する混合樹脂は、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂とシリコーン樹脂との複合樹脂の形で与えられている。そして、この複合樹脂は、シリコーン変性エポキシ樹脂を含む。シリコーン変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の官能基にシリコーン樹脂を反応させて変性したエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂のシリコーン変性率は5〜30%程度である。これは、絶縁特性、耐熱性、可撓性(又は柔軟性)、導線6、導線7の図示せぬ導体、導体7Aへの被着性(造膜性)、比誘電率等を考慮して構成されたものである。
エポキシ樹脂は、半硬化状態での導線6、導線7の図示せぬ導体、導体7Aへの被着性の点では良好であり、絶縁特性や耐熱性の点でも優れているが、可撓性、特に本硬化後の可撓性の点で多少難がある。一方、シリコーン樹脂は、可撓性の点では問題はなく絶縁特性や耐熱性の点でも良好である。しかし、シリコーン樹脂のみで本実施形態のように半硬化状態の絶縁被覆を形成しようとすると、導線6、導線7の図示せぬ導体、導体7Aに充分に被着せず、当該図示せぬ導体、導体7Aの表面に上手く膜が造れないという問題がある。
そこで、本実施形態では、上述のようにエポキシ樹脂の一部又は全部をシリコーン樹脂で変性したシリコーン変性エポキシ樹脂として可撓性を確保しつつ、それらで構成された複合樹脂を半硬化させるようにしている。具体的には、シリコーン変性エポキシ樹脂が硬化剤により半硬化され、未変性のエポキシ樹脂が含まれている場合にはそれも硬化剤により半硬化される。
このことについては以下の説明においても同様であり、エポキシ樹脂の「半硬化」や「本硬化」というときには、未変性のエポキシ樹脂が含まれていなければ硬化するのはシリコーン変性エポキシ樹脂だけであるが、未変性のエポキシ樹脂が含まれていれば、シリコーン変性エポキシ樹脂と未変性のエポキシ樹脂とが硬化する。
複合樹脂の基材となるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、スピロ環式エポキシ樹脂等が使用できる。これらのエポキシ樹脂については、一種類単独で使用することもできるし、二種以上混合して使用することもできる。
エポキシ樹脂には、多くの場合硬化剤が添加されて硬化されるが、硬化剤としては有機ポリアミン(例えば脂肪族単純アミン等)や有機酸(例えば無水フタル酸等)が使用される。これらの硬化剤についても、一種類単独で使用することもできるし、二種以上混合して使用することもできる。
また、エポキシ樹脂硬化促進剤を使用する場合もあり得る。エポキシ樹脂硬化促進剤は、特に限定されず、使用するエポキシ樹脂により適宜選択される。例えば、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−メチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール系硬化剤促進剤や、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドアジド、メラミン等の硬化促進剤が使用できる。これらの硬化促進剤についても、一種類単独で使用することもできるし、二種以上混合して使用することもできる。
また、シリコーン樹脂としては、アミノ基、水酸基、カルボキシル基等の官能基を持つ反応性シリコーン樹脂が使用できる。これらのシリコーン樹脂についても、一種類単独で使用することもできるし、二種以上混合して使用することもできる。
シリコーン変性エポキシ樹脂は、シリコーン樹脂とエポキシ樹脂とを混合して所定の高温に所定時間加熱することで得られる。本実施形態では、特に、平均分子量を官能基で割ったエポキシ樹脂の化学当量をxとし、シリコーン樹脂の化学当量をyとしたとき、シリコーン樹脂に対するエポキシ樹脂の重量比がx/yを越える値で混合されて得られたものを使用している。
エポキシ樹脂とシリコーン樹脂がそれぞれ二つの官能基を有する場合、エポキシ樹脂の平均分子量もシリコーン樹脂の平均分子量もともに1000であったと仮定すると、エポキシ樹脂の化学当量X=500、シリコーン樹脂の化学当量y=500となり、シリコーン樹脂に対するエポキシ樹脂の重量比がx/y=1より大きい値で混合される。
このような重量比で混合して充分に加熱にして完全に反応させると、原理的には、シリコーン樹脂の官能基にすべてエポキシ樹脂が反応し、未反応のシリコーン樹脂は無くなる。未反応のシリコーン樹脂が多く残留すると、導線6、導線7の図示せぬ導体、導体7Aへの被着性が悪化する問題があるが、本実施形態ではこのような問題はない。
尚、平均分子量には、数平均分子量、重量平均分子量、粘度平均分子量、z平均分子量(超遠心法により求めた平均分子量)があるが、いずれでも良い。また、平均分子量の測定は、沸点上昇法、氷点降下法、浸透圧法、末端基法、光散乱法、超遠心法、粘度法のいずれでも良い。導線6、導線7の図示せぬ被覆、被覆7Bを、上述のようなシリコーン変性エポキシ樹脂を含む混合樹脂とし、エポキシ樹脂のシリコーン変性率を5〜30%とすることにより、比誘電率を2.0〜3.0程度とすることができる。このため、コモンモードチョークコイルの共振周波数を高く延ばすことができ、コモンモードチョークコイルを高周波数領域で使用することができる。
巻芯部3は、図3に示すように、略直方体であり、頂面3Aと、頂面3Aの下面である下面3Cと、頂面3Aと下面3Cとの間の面である側面3B及び側面3Dとを有している。
鍔部4は、略直方体であり、頂面4Aと、頂面4Aに連なると共に、巻芯部3との連結面である内側面4Fと、内側面4Fに対向する表側面4Eと、頂面4Aと対向する下面4Cと、頂面4Aと内側面4Fと下面4Cと表側面4Eとに囲まれる側面4D及び側面4Bとにより構成される。
鍔部4には、頂面4A、表側面4E及び下面4Cに跨って、頂面4A、表側面4E及び下面4Cと、側面4Bとの接続位置の近傍側端部に端子電極8Aが設けられ、同じく頂面4A、表側面4E及び下面4Cに跨って、頂面4A、表側面4E及び下面4Cと、側面4Dとの接続位置の近傍に端子電極9Aが設けられている。これら端子電極8A及び端子電極9Aは、鍔部4の表面にメッキにより形成されている。
鍔部5も、鍔部4と同様に頂面5A、内側面5F、側面5D、表側面5E、側面5B及び下面5Cとにより構成され、それぞれ端子電極8B及び端子電極9Bを備えている。
導線6及び導線7は、図4に示すように、巻芯部3と鍔部4との結合部付近より引き出されて、内側面4Fに沿って頂面4A方向に配線されており、頂面4Aと内側面4Fとの交差個所で頂面4Aに沿うように折り曲げられている。図1に示すように、頂面4A上では、導線6、導線7がそれぞれ端子電極8A、端子電極9Aに熱圧着により継線されている。また鍔部5においても同様に頂面5A上で導線6及び導線7が端子電極8B、端子電極9Bにそれぞれ熱圧着により継線されている。
以下、コモンモードチョークコイルの製造方法たる上記構成のコイル部品1についての製造方法について説明する。先ず図3に示すように、磁気コア2の鍔部4及び鍔部5にそれぞれ端子電極8A、端子電極9A及び端子電極8B、端子電極9Bをメッキにより形成する。
次に、絶縁被覆電線製造工程を行う。絶縁被覆電線製造工程では、上述の複合樹脂を得るため、所定のエポキシ樹脂とシリコーン樹脂とエポキシ樹脂硬化剤とを所定の比率で混合し、溶剤を適宜使用して所定の粘度とする。これを所定温度に所定時間加熱し、エポキシ樹脂にシリコーン樹脂を反応させてシリコーン変性エポキシ樹脂を生成する。生成された樹脂は、エポキシ樹脂のシリコーン変性率が5〜30%の複合樹脂である。得られた複合樹脂を、必要に応じて溶剤に溶解させて所定の粘度としてワニスを得る。
次に、得られたワニスを溜めた容器の中に導線6、導線7の図示せぬ導体、導体7Aとなる線材を通して、ワニスを当該線材に被着させる。被着後にワニスを加熱し、溶剤を揮発させるとともに硬化反応を開始させる。加熱温度及び加熱時間を制御して硬化反応を途中で停止させ、エポキシ樹脂を半硬化状態とする。
当該線材は、送り出しリールから送り出され、ワニス中に浸けられて絶縁被覆の被着が行われた後に、巻き取りリールに巻き取られることによりワニスから引き上げられる。この引き上げの過程で、加熱が行われる。加熱は、例えば熱処理炉等により約80℃で30分程度加熱されることにより行われる。この加熱を第一の加熱処理工程とし、第一の加熱処理工程により、導線6、導線7の図示せぬ被覆、被覆7Bは半硬化状態となる。
線材の引き上げ速度、加熱温度等を適宜制御することにより半硬化状態が達成される。この他、熱風加熱ヒータやランプ、レーザによる輻射加熱、心線の通電発熱による加熱、高周波誘導加熱等の方法が採用できる。以上が絶縁被覆電線製造工程である。
次に、導線6及び導線7を略平行にして、巻芯部3の頂面3A、側面3B、下面3C及び側面3Dの面及びそれぞれの面より構成される角部にそって巻回する(図3、図4)。導線6及び導線7を巻芯部3に巻回し、導線6及び導線7の一端側を鍔部4の内側面4Fに沿わせて配線した後で、導線6の一端を頂面4A上に形成された端子電極8A上に配置し、導線7の一端を頂面4A上に形成された端子電極9A上に配置する(図4)。同様に導線6及び導線7の他端をそれぞれ頂面5A上の端子電極8B上及び端子電極9B上に配置する(図4)。
導線6及び導線7をそれぞれ端子電極8A、端子電極9A上に配置した後に、図示せぬ圧着素子を端子電極8A、端子電極9Aに押し付けて300℃〜400℃の熱を掛けて導線6及び導線7を熱圧着処理し、継線を行う。以上の継線工程が終了すると、コイル部品1は完成体として一応形状化される(図1)。
しかし、未だ巻芯部分の被覆6B及び被覆7Bは半硬化状態であるため、高温耐久性などで劣る部分がある。そこで第二の加熱処理工程として導線6及び導線7を含むコイル部品1全体を約180℃で40分程度加熱硬化させる。これにより被覆6B及び被覆7Bは本硬化状態となり、樹脂が完全に硬化して保護被覆としての性能を発揮する他に高融点で耐熱性に優れた状態になる。
次に、上述の実施の形態によるコモンモードチョークコイルを製造し効果を確認するための試験を行った。試験に用いたコモンモードチョークコイルの導線の被覆については、以下の通りである。
エポキシ樹脂として、平均分子量が900程度のビスフェノール型A型エポキシ樹脂を使用する。例えば、以下の化学式1で示されるジャパンエポキシレジン株式会社製のエビコート1001が使用される。
また、シリコーン樹脂として、例えば、以下の化学式2で示される、チッソ株式会社製FM−3311(平均分子量1000)が使用される。
また、エポキシ樹脂硬化材としては、フォルムアルデヒド縮合系のアセチル化変性物が使用される。例えば、以下の化学式3で示される、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエビキュアDC808が使用される。
上記エポキシ樹脂とシリコーン樹脂と硬化剤とを混合し、80℃で3時間加熱して第一の加熱処理工程を行うと、エポキシ樹脂にシリコーン樹脂が反応してシリコーン変性エポキシ樹脂が生成され、複合樹脂が得られる。そして、溶剤としてトルエンを使用して適度な粘度とすることでワニスが得られる。ワニスを得るまでの材料の使用比率(重量%)について一例を示すと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂35.7%、シリコーン樹脂8.9%、アセチル化変性物(硬化剤)5.4%、溶剤(トルエン)50%である。
このように調製したワニスを前述したように電線本体に被着させ、200〜290℃の温度で5〜20秒ほど加熱した。この加熱により、溶剤を揮発させるとともにエポキシ樹脂(未変性のエポキシ樹脂及びシリコーン変性エポキシ樹脂)を半硬化状態とした。このようにして、直径70μmの銅製の裸電線である線材上に厚さ5μmの絶縁被覆を形成した。この絶縁被覆の比誘電率は2.6程度である。このようにして製造された導線を用いて、試験に用いるための上述の実施の形態のコモンモードチョークコイル(本発明品)を製造した。
また、比較材として、ポリウレタン樹脂の絶縁材料で被覆された導線を用いて、子もーモードチョークコイルを製造したもの(比較品)を用いた。この絶縁被覆の比誘電率は3.5〜4.0程度である。
試験では、上述のようにして製造したコモンモードチョークコイルを用いて、共振周波数を100MHzとしたときの導線間の容量と、3dB減衰したときのカットオフ周波数とを測定した。結果は、図5、図6のグラフ、及び表1に示されるとおりである。図5では、各周波数において全体的に容量(pF)の値が低いグラフの方が本発明品であり、容量の値が高いグラフの方が比較品である。また図6では、各減衰量(dB)において全体的に周波数の値の高いグラフの方が本発明品であり、周波数の値の小さいグラフの方が比較品である。
図5のグラフに示されるように、導線間の容量Cpは、本発明品の方が比較品よりも小さい値になっており概して結果は良好である。共振周波数が100MHzのところに着目すると、表1に示されるように、比較品では1.94pFと大きな値となっているの対して、本発明品では1.52pFと小さくなっている。このため、導線の間隔にばらつきが生じていても、導線間の容量Cpのばらつきを小さく抑えられることがわかる。
また、図6のグラフ及び表1に示されるように、3dB減衰したときのカットオフ周波数は、比較品では1.44GHzと低い値となっているのに対して、本発明品では1.85GHzと高い値となっている。従って、共振周波数が高く延びており、高周波特性が良好であることがわかる。
上述の第一の実施の形態の変更例として、図7に示すように、コイル部品1の両端の鍔部4及び鍔部5に跨って板状コア10を取り付けた形態としても良い。この形態にすることにより、コイル部品全体としてのインダクタンス値を増加させることが可能となる。板状コア10は、接着剤により鍔部4及び鍔部5に接合される。この接着剤として熱硬化型の接着剤を使用する。
具体的には導線6及び導線7を継線した後に、板状コア10を接着剤で鍔部4及び鍔部5に仮接着する。コイル部品1は継線後に第二の加熱処理工程に入るが、この時に板状コア10も同時に加熱され、板状コア10と鍔部4及び鍔部5との間の接着剤が硬化して板状コア10がコイル部品1と一体化される。即ち、第一の実施の形態の変更例では、板状コア10を接合する工程を特に設けることなく、第二の加熱処理工程により同時に板状コア10の接合することが可能であり、特に工数を増加させることなくコイル部品全体としての性能を増すことが可能となる。
尚、第一の実施の形態では、磁気コア2としてフェライトコアを使用したが、これに限らず、特に高周波特性を必要とするコイル部品であるならば例えばセラミックコアを用いても良い。
次に第二の実施の形態として、継線時にレーザ溶接を用いたコイル部品について図8〜図11を参照しながら説明する。図10に示すコイル部品11は、第一の実施の形態に係るコイル部品1と略同一の形態をとり、図8に示すように、巻芯部13とその両端に設けられた鍔部14、鍔部15から構成されるコア12に端子電極である金属端子18が設けられている。そして、図11に示すように、巻芯部13(図8)に巻回された導線16及び導線17がそれぞれ金属端子18に溶接されて継線されている。導線16、導線17は、第一の実施の形態と同様に、シリコーン変成エポキシ樹脂を含む混合樹脂による被覆がされた被覆導線である。
鍔部14は、図8に示すように第一の実施の形態と同様に頂面14A、下面14C、巻芯部13との連結面である内側面14F、内側面14Fに対向する表側面14E、及び側面14B、側面14Dから構成されており、鍔部15も同様に構成されている。内側面14Fの側面14B側と側面14D側との端部には、図9に示すように、その巻芯部13の軸方向の厚さが薄くなっている段部14f(図9)が形成されている。
また、鍔部14の頂面14Aから下面14Cまで連なる溝で形成される凹部19が、金属端子の抜けを防止する抜け止め部として鍔部14の表側面14Eの両端にそれぞれ形成されている(図9)。この凹部19は、鍔部15の側面15Eにも同様に形成されている。尚、コイル部品11はその大きさが、長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2mmである。
端子電極となる金属端子18は、燐青銅、真鍮等の銅合金であって、略コ字形状に折り曲げ成形されており、図9のように、側面部18A、上面部18B、底面部18C及び上下の折り返し部18Dを有している。また、側面部18Aの内面には前記コア側抜け止め部19に係合する金具側抜け止め部として内面側に突出した凸部18Eが形成されている。さらに、前記上面部18Bには逆L字状折り曲げ部分からなる継線部20が一体に折り曲げ形成されている。
継線部20は導線16及び導線17の挿入の便宜のために、鍔部14の先端方向に向いて開いている。この継線部20は、先端方向の反対向きに開いていてもよい。このような金属端子18は、鍔部14に、その側方である側面14B及び側面14D側より挿入され、嵌合装着される(図9)。
この場合に、金具側抜け止め部としての凸部18Eがコア側抜け止め部としての凹部19に嵌り込み、折り返し部18Dが段部21を押圧した状態となって、図8のように金属端子18は鍔部14に取り付けられる。段部21を鍔部14に形成したことで、折り返し部18Dが巻芯部13へ突出しないようにして巻芯部13への巻回作業の妨げにならないようにしている。
以下、コモンモードチョークコイルの製造方法たる上記構成のコイル部品11についての製造方法について説明する。先ず、図8及び図9に示すように、コア12の鍔部14、鍔部15に端子電極となる金属端子18を取り付ける。この金属端子18の取付時には、コア側及び金具側に抜け止め部を形成したことにより接着剤は使用せず、凸部18Eと凹部19との嵌合により金属端子18を鍔部14、鍔部15に固定する。
次にコア12の巻芯部13に導線16、導線17を巻回する(図10)。この際に導線16、導線17は、第一の実施の形態と同様に第一の加熱処理工程として、予め熱処理炉等により約80℃で30分程度加熱され、被覆が半硬化状態となっている。この巻回時の工程については第一の実施の形態と同様であるため詳細は省略する。
巻芯部13に導線16、導線17が巻回された後に導線16、導線17の一端側が鍔部14の内側面14F及び頂面14Aに沿って配線され、その一端が金属端子18の継線部20に配置される。そしてこの継線部20をかしめることにより導線16、導線17がそれぞれ金属端子18に固定される。その後、継線部20と導線16、導線17とをレーザ溶接またはアーク溶接で溶融し、導線16、導線17と金属端子18とを電気的、機械的に一体とする。
この際に、レーザ光で溶接すると共に、導線16、導線17の被覆を溶解する。導線16、導線17の被覆は半硬化状態であるため融点が低い状態であり、レーザ光の熱で被覆を炭化させることなく導線16、導線17の被覆を溶解することが可能である。更に、継線部20で導線16、導線17が固定されており、溶接時に導線16、導線17がそのレーザ光の衝撃により暴れることが無く、位置ずれ等を起こさず好適に溶接することができる。
鍔部15でも同様に導線16、導線17を金属端子18に継線し、図11に示すようにコイル部品11を形状化する。その後に第一の実施の形態と同様に、第二の加熱処理工程として導線16及び導線17を含むコイル部品11全体を約180℃で40分程度加熱硬化させ、被覆を本硬化状態としてコイル部品11が完成する。
第一の実施の形態では熱圧着により継線を行ったが、第二の実施の形態に示すように、レーザを用いて継線を行う際にも、被覆を半硬化状態にすることにより、被覆を剥離処理することなく好適に継線することが可能となる。
次に第三の実施の形態として、ドラム型コアを用いたコイル部品であってモールド樹脂成形されたコイル部品について図12〜図16を参照して説明する。第3の実施の形態に係るコイル部品31は、図16に示すように、外観はモールド樹脂44により略直方体に形成されており、その直方体の両端に回路実装時の端子電極となるリード端子42、43が配置されている。
コイル部品31を構成するコア32は、図12に示すように、略円柱状の巻芯部33の両端に略円板状の鍔部34、鍔部35が設けられて構成されている。この鍔部34の巻芯部33と接合する面の反対面には、メッキ若しくはスパッタにより電極部34A、34Bが形成されており、鍔部35にも同様の電極部が形成されている。電極部34A、34Bと電気的に接続されるリード端子42、43は、図13及び図14に示すように、コイル部品31製造時のコア32等を支えるリードフレーム41の一部が延出されて形成されており、その先端は略直角に折り曲げられてコア保持部42A、43Aが形成されている。
図13及び図14に示すように、巻芯部33に交互に巻回される導線36、37は、第一の実施の形態と同様にシリコーン変成エポキシ樹脂を含む複合樹脂による被覆がされた被覆導線であり、巻芯部33から、鍔部34外周に沿ってリード端子42、43が当接する電極部34A、34B位置まで配線されている。また、鍔部35の電極部も同様に導線36が配線されている。
以下、コモンモードチョークコイルの製造方法たる上記構成のコイル部品31についての製造方法について説明する。先ず、図12に示すように、コア32の鍔部34に電極部34A、34Bを形成し、鍔部35にも同様の電極部を形成する。その後に第一の熱処理工程により熱処理された導線36、37を巻芯部33に巻回する。第3の実施の形態に係る巻芯部33は円柱形状であり、かつ導線36、37の被覆も第一の熱処理工程により予め熱処理炉等により約80℃で30分程度加熱されて、半硬化状態となり柔軟性を備えた状態になっているため、導線36、37の巻回時にはストレス無く巻回することができる。
巻芯部33に導線36、37が巻回された後に、導線36、37はその一端側が鍔部34に沿って電極部34A、34Bまで配線され、同様に他端側が鍔部35に沿って鍔部35の電極部まで配線される。リードフレーム41は、プレス加工等により予め略H型に切り抜かれており、略H型に切り抜かれたうちの両端の突出片部分がリード端子42、43となり、その先端が折り曲げられてコア32を保持するコア保持部42A、43Aとされる。
このコア保持部42A、43Aとコア保持部42A、43Aとの間に導線36、37が巻回されたコア32が配置されて保持される。この時に鍔部34側に配線された導線36、37の一端は、コア保持部42Aと電極部34Aとの間、コア保持部43Aと電極部34Bとの間にそれぞれ配置され、同様に鍔部35側に配線された導線36、37の他端はコア保持部42A、43Aと鍔部35側の電極部との間にそれぞれ配置される(図14)。
その後に、コア保持部42Aと導線36とが半田付けされ、コア保持部43Aと導線37とが半田付けされる(図15)。この時に導線36、37の被覆は半田付けの熱により融解し、導体部分が露出するため、被覆の剥離処理を行うことなく半田付けすることが可能となっている。また、この半田付けの際には、コア保持部42A、43Aと導線36、37とがそれぞれ半田付けされると共に、コア保持部42Aと電極部34Aとが半田付けされ、コア保持部43Aと電極部34Bとが半田付けされる。鍔部35に形成された電極部と導線36、37とについても、同様に半田付けされる。
リードフレーム41にコア32及び導線36、37が半田付けされた後に、第二の熱処理工程として、リードフレーム41及びコア32と一体に導線36、37が約180℃で40分程度加熱され導線36、37の被覆を本硬化状態とする。しかる後にコア32、導線36、37及びリード端子42、43を含んだ一体がモールド樹脂44に覆われる(図16)。この場合においても、導線36、37は、本硬化状態の被覆で覆われている。
またモールド樹脂44によりコア32等が一体として覆われることにより、コイル部品31全体としての外因に対する保護性能が増し、より安定動作を備えたコイル部品とすることが可能となる。このモールド樹脂43でコア32が覆われて略長方形に成型された後、リード端子42、43がリードフレーム41より切り離され、その切り離された先端部分が処理され、図16に示すようにコイル部品31が完成する。
次に第四の実施の形態として略円形のトロイダルコアを樹脂ケースに内蔵した形状のコイル部品について図17〜図20を参照しながら説明する。図20に示すコイル部品51は、図17に示すように、樹脂ケース53の中に略輪状のトロイダルコア52が挿入されている。このトロイダルコア52には、導線56及び導線57が平行して二本同時に巻かれたバイファイラ巻きにより巻回されており、図18に示すように、導線56及び導線57の一端側と他端側とは、それぞれトロイダルコア52の四方に略放射状に延出されている。これら導線56及び導線57は、第一の実施の形態と同様にシリコーン変成エポキシ樹脂を含む複合樹脂による被覆がされた被覆導線である。
樹脂ケース53は、図17に示すように、略正方形で中央に略円形の開口が形成された板状のベース54と、ベース54の開口部分縁からベース54の法線方向一面側へ延出された略筒状の壁と壁の一方を覆う蓋とより構成される円筒部55とより構成される。この円筒部55内に形成される空間内にトロイダルコア52がベース54の他面側から挿入されて保持される。
ベース54の四隅には、ベース54の他面側から一面側に貫通する孔54aが形成されており、この孔54aに端子電極となる略L字形状の金属端子58がベース54の他面から一面に向けて挿入され、その挿入された先端部分がベース54の一面から突出して継線部58Aを形成する(図19)。また金属端子58の他面側に位置する部分は、コイル部品51を回路上に実装する際の、回路と接合される部分となる。
このベース54の側面で四隅に形成された孔54aの近傍には、図17に示すように、ベース54の一面から他面まで連なる溝54bが形成されている。この溝54bには、トロイダルコア52が樹脂ケース53に挿入された状態で、導線56及び導線57の一端側及び他端側をベース54の一面側に設けられた継線部58Aに継線するために配線する箇所となる(図19)。
以下、コモンモードチョークコイルの製造方法たる上記構成のコイル部品51についての製造方法について説明する。先ず、トロイダルコア52に導線56及び導線57をバイファイラ巻きにより巻回する。この時に導線56及び導線57は、予め第一の加熱処理工程として熱処理炉等により約80℃で30分程度加熱処理され、被覆が半硬化状態になっている。
次に、トロイダルコア52に導線56及び導線57を巻回した後にその一端側及び他端側をトロイダルコア52の略四方に向けて延出した状態にする。この状態で、図17に示すように、樹脂ケース53のベース54に形成された開口部よりトロイダルコア52を樹脂ケース53の円筒部55内に挿入する。この時に、ベース54の四隅に形成された孔54aに金属端子58を挿入する。
トロイダルコア52を円筒部55内に挿入した後に、導線56及び導線57の一端側及び他端側を溝54b内を通しベース54の他面側まで配線する(図18、図19)。そして図19に示すようにベース54より突出している継線部58Aに巻き付ける。この時に巻き付けた箇所は被覆を剥離処理等する必要はない。
継線部58Aに導線56及び導線57を巻き付けた後に、図20に示すように、半田付け若しくは溶接により継線を行う。この時に導線56及び導線57の被覆は半硬化状態であるため融点が低く、継線時の熱により融解する。導線56及び導線57の継線が終わった後に、第二の熱処理工程として、樹脂ケース53及びトロイダルコア52と一体に導線56及び導線57が約180℃で40分程度加熱され、導線56及び導線57の被覆を本硬化状態として被覆の耐熱性や強度特性等を向上させ、コイル部品51が完成される。
次に第五の実施の形態によるコイル部品について図21に基づき説明する。第五の実施の形態によるコイル部品60は、導線63、64が巻回されたドラムタイプコア61からなるコイル本体と、当該コイル本体を収容するコイル本体収容部62Aを有するリングコア62とを備える。コイル本体収容部62Aには略円柱形状をした凹部62aが形成されており、凹部62a内にコイル本体が同軸的に配置されて収納されている。
リングコア62は4つの端子電極となる金属端子65〜68を備えており、ドラムタイプコア61の図示せぬ巻芯部に巻回されている導線63、64の一端、他端は、4つの端子電極となる金属端子65〜68にそれぞれ一つずつ継線されている。導線63、64の被覆は、上述の実施の形態による導線の被覆と同様に、シリコーン変性エポキシ樹脂を含む複合樹脂からなる。
コモンモードチョークコイルの製造方法たるコイル部品60の製造方法では、導線63、64が巻回された状態のドラムタイプコア61が、コイル本体収容部62Aの凹部62aに収容され、導線63、64の一端、他端が4つの端子電極となる金属端子65〜68にそれぞれ一つずつ継線された後に、導線63、64が巻回されたドラムタイプコア61からなるコイル本体と、リングコア62とが一体となっている状態で約180℃で40分程度加熱される。このことにより、導線63、64の被覆を本硬化状態として被覆の耐熱性や強度特性等を向上させ、コイル部品60が完成される。
上述の形態における第一の熱処理工程では、約80℃で30分程度加熱処理されているが、これに限らず、例えば加熱処理を約500℃で5秒程度としても良い。また、第二の熱処理工程では、約180℃で40分程度加熱処理されているが、これに限らず、例えば加熱処理を150℃〜200℃で10分〜120分程度としても良い。
また、上述の形態においては、シリコーン変性エポキシ樹脂を含む導線の被覆は、コモンモードチョークコイルを構成する磁気コア等に導線が巻回される前の時点においては半硬化状態であり、巻回された後に本硬化状態とされたが、磁気コア等に導線が巻回される前から本硬化状態とされていてもよい。