従来からこの種の物理量センサとしては、半導体結晶に外力が加えられたときに抵抗値が変化するピエゾ抵抗をゲージ抵抗として用いた半導体圧力センサや半導体加速度センサなどが提供されている。
これに対して、近年、ナノテクノロジーの分野で注目されているカーボンナノチューブをゲージ抵抗として用いた物理量センサが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
ここにおいて、ゲージ抵抗としてカーボンナノチューブを用いた圧力センサは、例えば、図9に示す構成を有している。
図9に示す構成の圧力センサは、シリコン基板をマイクロマシンニング技術により加工して形成され一表面側にシリコン酸化膜からなる絶縁膜2を有するセンサ用構造体1と、センサ用構造体1の絶縁膜2上に配置されそれぞれ1本のカーボンナノチューブからなる2個のゲージ抵抗R1,R3および2個の基準抵抗R2,R4と、センサ用構造体1の他表面に固着されたガラス製の台座9とを備えている。
センサ用構造体1は、矩形枠状のフレーム部1aと、フレーム部1aの内側でフレーム部1aに連続一体に連結された薄肉のダイヤフラム部1bとで構成されている。すなわち、センサ用構造体1は、フレーム部1aの内側に位置し全周に亘ってフレーム部1aに支持されたダイヤフラム部1bが形成されており、ダイヤフラム部1bの厚み方向から圧力が加わるとダイヤフラム部が湾曲変形するようになっている。ここにおいて、ゲージ抵抗R1,R3は、ダイヤフラム部1bとフレーム部1aとに跨るように配置されており、基準抵抗R2,R4は、フレーム部1a上に配置されている。なお、センサ用構造体1は、アルカリ系溶液を用いた異方性エッチングにより上記シリコン基板の他表面に凹所1cを設けることにより形成されている。一方、台座9には、センサ用構造体1の凹所1cへ流体を導入するための導入孔9aが厚み方向に貫設されている。
また、上述の2個のゲージ抵抗R1,R3および2個の基準抵抗R2,R4は、センサ用構造体1の上記一表面側において絶縁膜2上に形成された複数の金属配線4などにより図10に示すブリッジ回路を構成するように接続される。
したがって、ブリッジ回路の対角位置の一方の端子間に適宜の検出用電源Eを接続するとともに対角位置の他方の端子Vo1,Vo2間の電圧を検出し、適宜の補正を加えれば、ダイヤフラム部1bに作用する圧力に比例する電圧を得ることができるのである。なお、上述の圧力センサでは、4つの金属配線4それぞれの一部が端子としてのパッドを構成している。
ところで、上述の各抵抗R1〜R4と各抵抗R1〜R4に電気的に接続される各金属配線4との間には、カーボンナノチューブを成長させるための触媒金属材料(例えば、鉄、ニッケル、コバルトなど)からなる電極5が介在しており、対となる電極5,5間に電圧を印加し且つセンサ用構造体1の上記一表面側に炭素を含む原料ガスを供給して対となる電極5,5間にカーボンナノチューブを成長させている。したがって、各抵抗R1〜R4それぞれを構成する各カーボンナノチューブは、対となる電極5,5間に介在している。
次に、ゲージ抵抗としてカーボンナノチューブを用いた加速度センサの一例について、図11を参照しながら説明する。
図11に示す構成の加速度センサは、シリコン基板をマイクロマシンニング加工して形成され一表面側にシリコン酸化膜からなる絶縁膜12を有するセンサ用構造体11と、センサ用構造体11の絶縁膜12上に配置されそれぞれ1本のカーボンナノチューブからなる2個のゲージ抵抗R11,R12および2個の基準抵抗R13,R14と、センサ用構造体11の他表面に固着されたガラス製のカバー19と、センサ用構造体11の一表面側に固着されたガラス製のカバー(図示せず)とを備えている。
センサ用構造体11は、矩形枠状のフレーム部11aを備え、フレーム部11aの内側にフレーム部11aから離間して配置された重り部11bの周囲の1辺がフレーム部11aよりも薄肉である2つの撓み部11cを介してフレーム部11aに連続一体に連結された構造を有している。すなわち、センサ用構造体11は、フレーム部11aの内側に位置し加速度に感応する重り部11bが2つの撓み部11cを介してフレーム部11aに支持されており、重り部11bの周囲には撓み部11cを除いてフレーム部11aとの間にスリット11dが形成されている。また、撓み部11cは重り部11bの1辺に沿う方向に離間して2箇所に形成されている。
なお、重り部11bは、例えば、シリコン基板においてスリット11dに対応する部位を他表面側からアルカリ系溶液を用いて異方性エッチングを行った後、スリット11dに対応する部位をシリコン基板の一表面側からエッチングすることで形成してある。また、センサ用構造体11の他表面側のカバー19におけるセンサ用構造体11との対向面には、重り部11bの揺動空間を確保するための凹所19bが形成されている。同様に、センサ用構造体11の一表面側のカバーにおけるセンサ用構造体11との対向面にも、重り部11bの揺動空間を確保するための凹所が形成されている。
また、上述の2個のゲージ抵抗R11,R12および2個の基準抵抗R13,R14は、センサ用構造体11の上記一表面側において絶縁膜12上に形成された金属配線14などによりブリッジ回路を構成するように接続される(なお、センサ用構造体11の厚み方向において重なる金属配線14,14間には図示しない層間絶縁膜を介在させてある)。
上述の加速度センサでは、センサ用構造体11の厚み方向の成分を含む外力(加速度)が重り部11bに作用すると、重り部11bの慣性によって重り部11bがフレーム部11aに対してセンサ用構造体11の厚み方向へ相対的に変位し、結果的に撓み部11cが撓んでゲージ抵抗R11,R12が変形し、ゲージ抵抗R11,R12の抵抗値が変化することになる。これに対して、フレーム部11aに重なるように配置されている基準抵抗R13,R14は、重り部11bが変位したとしても抵抗値が変化しない。
したがって、ゲージ抵抗R11,R12の抵抗値の変化を検出することにより、センサ用構造体11に作用した加速度を検出することができる。言い換えれば、ブリッジ回路の対角位置の一方の端子間に適宜の検出用電源を接続するとともに対角位置の他方の端子間の電圧を検出し、適宜の補正を加えれば、重り部11bに作用する加速度に比例する電圧を得ることができるのである。
なお、ゲージ抵抗R11,R12は、撓み部11cの延長方向を長手方向として配置されており、撓み部11cと同じように変形する。ここにおいて、上述の各抵抗R11〜R14と各抵抗R11〜R14に電気的に接続される各金属配線14との間には、カーボンナノチューブを成長させるための触媒金属材料(例えば、鉄、ニッケル、コバルトなど)からなる電極15が介在しており、対となる電極15,15間に電圧を印加し且つセンサ用構造体11の上記一表面側に炭素を含む原料ガスを供給して対となる電極15,15間にカーボンナノチューブを成長させている。したがって、各抵抗R11〜R14それぞれを構成する各カーボンナノチューブは、対となる電極15,15間に介在している。
特開2004−53424号公報
特開2004−163373号公報
ところで、上述のようにゲージ抵抗としてカーボンナノチューブを用いた物理量センサでは、ゲージ抵抗のゲージ率の向上による高感度化が期待されている。
しかしながら、本願発明者らが、図12の一点鎖線で示すように長さLが5μmのカーボンナノチューブCNTを実線で示すように曲げ角度βで曲げたときの曲げ角度βとゲージ率との関係について調べたところ、図13に示すように、曲げ角度βが172°〜179°の範囲ではゲージ率が120程度であり、シリコンのピエゾ抵抗について同様の関係について調べたところ、曲げ角度βによらずゲージ率が略120であるという知見が得られた。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、従来に比べて高感度化が可能な物理量センサを提供することにある。
請求項1の発明は、検出対象の物理量をゲージ抵抗のひずみによる抵抗値の変化として検出する物理量センサであって、ゲージ抵抗が、センサ用構造体の一表面側において突設した対となる支持台部間に架設されたカーボンナノチューブからなり、センサ用構造体の前記一表面側に、センサ用構造体に力が働いていない状態でゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブの中間部を押圧し当該カーボンナノチューブの中間部を折曲させるバイアス部を備えることを特徴とする。
この発明によれば、センサ用構造体に力が働いていない状態でゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブの中間部を折曲させるバイアス部を備えているので、センサ用構造体に力が働いていない状態でゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブが折曲されていない従来の物理量センサと比較して、ゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブのゲージ率を高めることが可能となり、従来に比べて高感度化を図ることが可能となる。また、ゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブが支持台部間に架設されているので、当該カーボンナノチューブの中間部をバイアス部により折曲させやすく、当該カーボンナノチューブのゲージ率を高めることができる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、ゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブは、対となる支持台部それぞれに積層された触媒金属部間に成長されたものであり、支持台部は、シリコンにより形成されてなることを特徴とする。
この発明によれば、支持台部の融点がゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブの形成工程におけるプロセス温度よりも高くなるので、カーボンナノチューブの形成工程で支持台部が熱劣化するのを防止することができる。
請求項3の発明は、請求項1の発明において、支持台部は、導電性を有し、ゲージ抵抗の電極を兼ねてなることを特徴とする。
この発明によれば、支持台部とは別にゲージ抵抗の電極を設ける場合に比べて製造プロセスの簡略化を図れ、低コスト化を図れる。
請求項4の発明は、請求項3の発明において、ゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブは、対となる支持台部それぞれに積層された触媒金属部間に成長されたものであり、支持台部は、多結晶シリコン層からなることを特徴とする。
この発明によれば、支持台部の融点がゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブの形成工程におけるプロセス温度よりも高くなるので、ゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブの形成工程で支持台部が熱劣化するのを防止することができる。
請求項5の発明は、請求項3の発明において、支持台部は、金属層からなることを特徴とする。
この発明によれば、請求項4の発明に比べてゲージ抵抗の電極の低抵抗化を図れる。
請求項6の発明は、請求項3の発明において、ゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブは、対となる支持台部それぞれに積層された触媒金属部間に成長されたものであり、支持台部は、シリコン層と当該シリコン層に積層された高融点金属層とで構成されてなることを特徴とする。
この発明によれば、支持台部の融点がゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブの形成工程におけるプロセス温度よりも高くなるので、ゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブの形成工程で支持台部が熱劣化するのを防止することができ、また、請求項4の発明に比べてゲージ抵抗の電極の低抵抗化を図れる。
請求項7の発明は、請求項1の発明において、ゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブは、対となる支持台部それぞれに積層された触媒金属部間に成長されたものであり、支持台部は、二酸化シリコン若しくは窒化シリコンにより形成されてなることを特徴とする。
この発明によれば、ゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブの形成時に触媒金属部がシリサイド化して抵抗が増大するのを防止することができる。また、支持台部の形成工程とは別に支持台部と触媒金属部との間に介在して触媒金属部のシリサイド化を防止するバリア層を形成する場合に比べて、製造プロセスの簡略化を図れる。
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7の発明において、センサ用構造体の前記一表面側に固着されるカバーを備え、バイアス部は、カバーにおけるセンサ用構造体との対向面から突設されてなることを特徴とする。
この発明によれば、センサ用構造体の前記一表面側にカバーを固着することによって、ゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブの中間部をバイアス部により折曲させることができる。
請求項1の発明では、センサ用構造体に力が働いていない状態でゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブが折曲されていない従来の物理量センサと比較して、ゲージ抵抗を構成するカーボンナノチューブのゲージ率を高めることが可能となり、従来に比べて高感度化を図ることが可能となるという効果がある。
本実施形態では、検出対象の物理量をゲージ抵抗のひずみによる抵抗値の変化として検出する物理量センサの一例として例示する圧力センサについて、図1〜図3を参照しながら説明する。
本実施形態の圧力センサは、半導体基板であるシリコン基板(以下、第1のシリコン基板と称す)をマイクロマシンニング技術により加工して形成され一表面側にシリコン酸化膜からなる絶縁膜2を有するセンサ用構造体1と、センサ用構造体1の上記一表面側に配置されそれぞれカーボンナノチューブCNTからなる2個のゲージ抵抗R1,R3および2個の基準抵抗R2,R4と、センサ用構造体1とは別のシリコン基板(以下、第2のシリコン基板と称す)をマイクロマシンニング技術により加工して形成されセンサ用構造体1の上記一表面側に固着されたカバー7とを備えている。なお、各抵抗R1〜R4それぞれを構成するカーボンナノチューブCNTの本数は特に限定するものではなく、1本でも複数本でもよい。また、カバー7は、第2のシリコン基板に限らず、ガラス基板により形成してもよい。
センサ用構造体1は、矩形枠状のフレーム部1aと、フレーム部1aの内側でフレーム部1aに連続一体に連結された薄肉のダイヤフラム部1bとで構成されている。すなわち、センサ用構造体1は、フレーム部1aの内側に位置し全周に亘ってフレーム部1aに支持されたダイヤフラム部1bが形成されており、ダイヤフラム部1bの厚み方向から圧力が加わるとダイヤフラム部1bが撓んで湾曲変形するようになっている。ここにおいて、ゲージ抵抗R1,R3は、センサ用構造体1の上記一表面側でダイヤフラム部1bの周部に対応する部位においてダイヤフラム部1bとフレーム部1aとの境界に直交する方向を長手方向として配設されており、基準抵抗R2,R4は、センサ用構造体1の上記一表面側でフレーム部1aに対応する部位においてダイヤフラム部1bとフレーム部1aとの境界に直交する方向を長手方向として配設されている。すなわち、ゲージ抵抗R1,R3は、ダイヤフラム部1bの湾曲変形に伴う抵抗値の変化量が大きくなるようにダイヤフラム部1bの外周(ダイヤフラム部1bとフレーム部1aとの境界)を構成する4辺のうちの2辺それぞれに略直交する方向に配設され、基準抵抗R2,R4はダイヤフラム部1bが湾曲変形しても抵抗値が変化しないようにフレーム部1aに対応する部位に配設されている。
ここにおいて、センサ用構造体1は、例えばKOH(水酸化カリウム)、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)などのアルカリ系溶液などを用いた異方性エッチングによって第1のシリコン基板の裏面(センサ用構造体1の他表面)に凹所1cを設け、第1のシリコン基板の表面に絶縁膜2を設けることにより形成されている。
なお、センサ用構造体1の基礎となる半導体基板としての第1のシリコン基板の代わりに、厚み方向の中間に埋込酸化膜(シリコン酸化膜)からなる絶縁層が形成された所謂SOI基板(表面側のシリコン層と裏面側のシリコン基板との間に上記絶縁層が介在した基板)を採用すれば、裏面側からのエッチング時に上記絶縁層をエッチングストッパ層として利用することで、ダイヤフラム部1bの厚さ寸法を高精度に管理することが可能となって、歩留まりの向上が図れ、結果的に低コスト化を図れる。
また、上述の2個のゲージ抵抗R1,R3および2個の基準抵抗R2,R4は、センサ用構造体1の上記一表面側において絶縁膜2上に形成された複数(例えば、4つ)の金属配線(図示せず)などにより上述の図10に示すブリッジ回路を構成するように接続される。
したがって、ブリッジ回路の対角位置の一方の端子間に適宜の検出用電源Eを接続するとともに対角位置の他方の端子Vo1,Vo2間の電圧を検出し、適宜の補正を加えれば、ダイヤフラム部1bに作用する圧力に比例する電圧を得ることができるのである。なお、本実施形態の圧力センサにおいても、4つの金属配線それぞれの一部が端子としてのパッドを構成している。
ところで、各抵抗R1〜R4は、センサ用構造体1の上記一表面側において突設した対となる支持台部3,3間に架設されたカーボンナノチューブにより構成されている。すなわち、センサ用構造体1には、対となる支持台部3,3が4箇所に設けられている。また、各支持台部3には、カーボンナノチューブを成長させるための触媒金属材料(例えば、Fe、Ni、Coなど)からなる触媒金属部6(図1(d)参照)が積層されている。
各支持台部3の平面形状は対となる支持台部3,3の並設方向に交差する方向を長手方向とする細長の長方形状であって、対となる支持台部3,3間の距離は略一定となっており、触媒金属部6,6の平面形状も支持台部3,3と同様の形状となっている。したがって、対となる触媒金属部6,6間に適宜の電圧を印加し且つセンサ用構造体1の上記一表面側に炭素を含む原料ガス(例えば、炭化水素を含むC2H2ガス、C2H4ガス、CH4ガスなど)を供給してCVD法によって対となる触媒金属部6,6間にカーボンナノチューブを成長させることができ、対となる支持台部3,3上の触媒金属部6,6間に架設されるカーボンナノチューブCNTは直線状に成長する。
ここにおいて、各支持台部3は導電性材料により形成されており、各抵抗R1〜R4の電極を兼ねているので、支持台部3とは別に各抵抗R1〜R4の電極を設ける場合に比べて製造プロセスの簡略化を図れ、低コスト化を図れる。また、各支持台部3それぞれにより構成される各電極と電気的に接続された金属配線(図示せず)を各抵抗R1〜R4の形成前にセンサ用構造体1の絶縁膜2上に形成しておけば、カーボンナノチューブCNTの形成工程において、対となる触媒金属部6,6間に電圧を印加するにあたって、対となる触媒金属部6,6にそれぞれ電極を兼ねる支持台部3,3を介して電気的に接続された金属配線間に電圧を印加すればよい。ただし、金属配線の形成工程は、必ずしもカーボンナノチューブCNTの形成工程の前に行う必要はなく、カーボンナノチューブCNTの形成工程の後で行うようにしてもよい。
上述の各支持台部3は、導電性を付与したシリコン層(例えば、不純物をドーピングすることにより導電性を付与した低抵抗の単結晶シリコン層、不純物をドーピングすることにより導電性を付与した低抵抗の多結晶シリコン層など)3aと高融点金属(例えば、W、Ti、Mo、Pt、Crなど)からなる高融点金属層3bとの積層構造を有しており、比較的高温のプロセスであるカーボンナノチューブCNTの形成工程におけるプロセス温度(例えば、500〜1000℃程度)に比べて、シリコン層3aおよび高融点金属層3bそれぞれの融点が高いので、カーボンナノチューブCNTの形成工程での各支持台部3の熱劣化を防止することができる。また、導電性を付与したシリコン層3aと触媒金属部6との間には高融点金属層3bが介在しているので、カーボンナノチューブCNTの形成工程で触媒金属部6がシリサイド化してコンタクト抵抗が増大するのを防止することができる。なお、各支持台部3は、上述のような導電性を付与したシリコン層3aと高融点金属層3bとの積層構造に限らず、導電性を付与した低抵抗の多結晶シリコン層の単層構造や高融点金属などからなる金属層の単層構造により構成してもよい。ここで、各支持台部3を導電性を付与した多結晶シリコン層の単層構造により構成した場合にも、各支持台部3の融点がカーボンナノチューブCNTの形成工程におけるプロセス温度よりも高くなるので、各支持台部3の熱劣化を防止することができる。また、各支持台部3を高融点金属からなる金属層により構成した場合にも、各支持台部3の融点がカーボンナノチューブCNTの形成工程におけるプロセス温度よりも高くなるので、各支持台部3の熱劣化を防止することができ、しかも、多結晶シリコン層により構成する場合に比べて、電極の低抵抗化を図れる。
また、各支持台部3としては、例えば、図4(c)に示すように、シリコン層3cとシリコン層3c上のシリコン酸化膜3dとの積層構造を採用してもよく、このような積層構造を採用した場合にも支持台部3の融点がカーボンナノチューブCNTの形成工程におけるプロセス温度よりも高くなるので、カーボンナノチューブCNTの形成工程で支持台部3が熱劣化するのを防止することができる。
ここで、支持台部3の熱劣化を防止するだけであれば支持台部3はシリコンにより形成すればよい(つまり、シリコン層3cのみにより構成すればよい)が、シリコン層3cと触媒金属部6との間にシリコン酸化膜3dを介在させることにより、支持台部3上の触媒金属部6のシリサイド化を防止することができる。
各支持台部3をシリコン層3cとシリコン層3c上のシリコン酸化膜3dとにより構成する場合には、センサ用構造体1の基礎となる半導体基板として図4(a)に示すように厚み方向の中間にシリコン酸化膜からなる絶縁膜2を有するSOI基板100を用意し、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術を利用して図4(b)に示すようにSOI基板100の一表面側のシリコン層100cをパターニングすることによって各支持台部3それぞれの一部を構成する複数のシリコン層3cを形成してから、図4(c)に示すように各シリコン層3cそれぞれの表面側にシリコン酸化膜3dを形成すればよい。
また、各支持台部3は、例えば、図5(c)に示すようにセンサ用構造体1の基礎となるシリコン基板の一表面側の一部をLOCOS(Local Oxidation Of Silicon)法により選択的に酸化することによって形成されたシリコン酸化膜2cのうち絶縁膜2よりも突出した部分により構成し(つまり、各支持台部3を二酸化シリコンにより形成し)、各支持台部3に触媒金属部6を積層してもよい。図5(c)に示す構造を得るには、センサ用構造体1の第1のシリコン基板上の絶縁膜2上にシリコン窒化膜8をCVD法などによって成膜し、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術を利用してシリコン窒化膜8のうち支持台部3の形成予定領域に重なる部位を除去することにより図5(a)に示す構造を得てから、LOCOS法により上記第1のシリコン基板を選択的に酸化することによって上記シリコン酸化膜2cを形成することで図5(b)に示す構造を得て、その後、シリコン窒化膜8を除去してから、上記シリコン酸化膜2cの一部からなる支持台部3上に触媒金属部6を形成することで図5(c)に示す構造を得ればよい。上述のように、支持台部3を二酸化シリコンにより形成すれば、支持台部3の形成工程とは別に支持台部3と触媒金属部6との間に介在して触媒金属部5のシリサイド化を防止するバリア層を形成する場合に比べて、製造プロセスの簡略化を図れる。なお、支持台部3を二酸化シリコンで形成する代わりに窒化シリコンにより形成してもよく、支持台部3を窒化シリコンにより形成した場合にも、支持台部3の形成工程とは別に支持台部3と触媒金属部6との間に上記バリア層を形成する場合に比べて、製造プロセスの簡略化を図れる。
次に、センサ用構造体1の上記一表面側に固着されるカバー7について説明する。
上述のカバー7は、矩形板状であって、センサ用構造体1との対向面に、センサ用構造体1のダイヤフラム部1bの変位空間を確保するための凹所7aが形成されており、周部が全周にわたってセンサ用構造体1に固着されている。ここで、カバー7とセンサ用構造体1とは陽極接合により固着されている。なお、カバー7は、センサ用構造体1の上記一表面側の上記各パッドを露出させることができるように、センサ用構造体1よりも図1(a)における左右方向の寸法を短く設定してある。
ここに、カバー7における凹所7aの内底面には、センサ用構造体1に力(本実施形態では、圧力)が働いていない状態でゲージ抵抗R1,R3を構成する各カーボンナノチューブCNTそれぞれの中間部を押圧し当該各カーボンナノチューブCNTの中間部を折曲させる突起状の2つのバイアス部7bが突設されている。すなわち、本実施形態では、センサ用構造体1に上記力が働いていない状態でゲージ抵抗R1,R3を構成する各カーボンナノチューブCNTそれぞれの中間部がバイアス部7bにより押圧されて折曲されるように、ゲージ抵抗R1,R3を構成する各カーボンナノチューブCNTの位置とバイアス部7bとの相対的な位置関係を設定してある。より具体的には、バイアス部7bの先端面とカバー7におけるセンサ用構造体1との接合面とを同一平面上に揃えて、センサ用構造体1に上記力が働いていない状態でゲージ抵抗R1,R3を構成する各カーボンナノチューブCNTそれぞれの中間部がバイアス部7bにより押圧されて折曲されるように対となる支持台部3,3の絶縁膜2からの突出高さを設定してある。なお、バイアス部7bは、カバー7の厚み方向に直交する断面が細長の長方形状であって、凹所7aの内底面から離れるにつれて断面積が徐々に小さくなる形状に形成されており、図1(d)に示すように、バイアス部7bの先端部と対となる支持台部3,3との間に隙間が形成されるようになっている。
しかして、本実施形態では、センサ用構造体1に力が働いていない状態でゲージ抵抗R1,R3を構成するカーボンナノチューブCNTの中間部を折曲させるバイアス部7b,7bを備えているので、センサ用構造体1に力が働いていない状態でゲージ抵抗R1,R3を構成するカーボンナノチューブCNTが折曲されていない従来の圧力センサと比較して、ゲージ抵抗R1,R3を構成するカーボンナノチューブCNTのゲージ率を高めることが可能となり、従来に比べて高感度化を図ることが可能となる。また、ゲージ抵抗R1,R3を構成するカーボンナノチューブCNTが対となる支持台部3,3間に架設されているので、当該カーボンナノチューブCNTの中間部をバイアス部7bにより折曲させやすく、当該カーボンナノチューブCNTのゲージ率を高めることができる。
ところで、センサ用構造体1において絶縁膜2から突出する支持台部3,3を設けずに、図7(a)に示すように絶縁膜2に凹溝2bを設けて、センサ用構造体1のダイヤフラム部1bに圧力が加えられていない状態でバイアス部7bの先端面をカーボンナノチューブCNTの中間部に当接させるように構成することが考えられ、この図7(a)の構成では、センサ用構造体1のダイヤフラム部1bに図7(a)の下方から圧力が加えられると、ダイヤフラム部1bが図7(b)中に二点鎖線で示すように湾曲変形する一方で、カーボンナノチューブCNTの中間部がバイアス部7bによってダイヤフラム部1bの変位方向とは反対側に凸となるV字状の形状に折曲され凹溝2bの内側に入り込む。しかしながら、上述のようにバイアス部7bを一体に備えたカバー7は周部がセンサ用構造体1のフレーム1aに陽極接合などにより固着されるので、センサ用構造体1を多数形成したウェハおよびカバー7を多数形成したウェハそれぞれの反りや、絶縁膜2の厚みのばらつきなどに起因して、センサ用構造体1の厚み方向におけるカーボンナノチューブCNTとバイアス部7bとの相対的な位置が互いに離れる向きにずれた場合には、センサ用構造体1に圧力が作用してもバイアス部7bによりカーボンナノチューブCNTの中間部が押圧されなくなってしまうことが考えられる。
これに対して、本実施形態の圧力センサでは、センサ用構造体1の上記一表面側に対となる支持台部3,3を突設し、センサ用構造体1に圧力が働いていない状態でカーボンナノチューブCNTの中間部がバイアス部7bにより押圧されて折曲されるように対となる支持台部3,3の突出高さを設定してあるので、センサ用構造体1に圧力が働いていない状態でも確実にゲージ抵抗R1,R3を構成するカーボンナノチューブCNTの中間部を折曲させることができ、圧力が働いたときのゲージ抵抗R1,R3のゲージ率が高くなるから、従来の圧力センサと比較して、ゲージ抵抗R1,R3を構成するカーボンナノチューブCNTのゲージ率を高めることが可能となり、従来に比べて高感度化を図ることが可能となる。なお、基準抵抗R2,R4を構成するカーボンナノチューブCNTについては、対となる支持台部3,3間に架設する必要はなく、絶縁膜2上に対となる触媒金属部6,6を形成して、対となる触媒金属部6,6間に成長させるようにしてもよい。
本実施形態では、センサ用構造体1に圧力が働いていない状態でゲージ抵抗R1,R3を構成するカーボンナノチューブCNTの中間部をバイアス部7bが押圧して中間部を図1(d)に示すように折曲させているが、図6に示すようにカーボンナノチューブCNTの曲げ角度βを172°とするように、支持台部3,3の突出高さを設定しておけば、センサ用構造体1に圧力が作用したときに圧力が小さくてもゲージ抵抗R1,R3を構成するカーボンナノチューブCNTの曲げ角度が172°よりも小さくなってゲージ率が高くなるので、より高感度化を図ることができる。ここで、カーボンナノチューブCNTにおいてバイアス部7bにより押圧される位置は当該カーボンナノチューブCNTの長手方向の中間部であればいずれの位置でもよい。なお、ゲージ抵抗R1,R3を構成するカーボンナノチューブCNTのひずみを大きくしてゲージ率を高くするには長手方向の略中央位置を押圧することが望ましい。また、ゲージ抵抗R1,R3を構成するカーボンナノチューブCNTそれぞれについて中間部を押圧して折曲させるバイアス部7bの数は1つに限らず、複数でもよい(ゲージ抵抗R1,R3を構成するカーボンナノチューブCNTそれぞれに対してバイアス部7bを複数設ける場合には、対となる支持台部3,3の並設方向に複数のバイアス部7bを並設すればよい)。
ところで、本実施形態では、センサ用構造体1が圧力センサ用の構造体を構成しており、センサ用構造体1のダイヤフラム部1bにおける周部にゲージ抵抗R1,R3を配設してあるが、圧力によるダイヤフラム部1bの変位量の大きな中央部にゲージ抵抗R1,R3を配設すれば、圧力によるダイヤフラム部1bの変位量の小さな周部にゲージ抵抗R1,R3を配設している場合と同じ感度であれば、ダイヤフラム部1bの厚みを厚くすることができ、センサ用構造体1の機械的強度を高めることができる。
なお、上述の実施形態では、物理量センサの一例として圧力センサについて例示したが、本願発明の技術思想は、圧力センサに限らず、例えば、ゲージ抵抗を利用した他の物理量センサ(例えば、加速度センサ、ジャイロセンサなど)にも適用することができ、一例として、加速度センサに適用する場合には、例えば、図11に示した従来例と同様の加速度センサにおいてゲージ抵抗R11,R12を構成するカーボンナノチューブCNTを、図8に示すように、センサ用構造体11の一表面側において突設した対となる支持台部3,3間に架設し(図8ではゲージ抵抗R12のみ表れている)、センサ用構造体11の上記一表面側に固着するカバー7に、凹所7aの内底面から突出する上述のバイアス部7bを設ければよい。