以下、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細を説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、第1導電性高分子膜と第2導電性高分子膜との互いに対向する一方の端部同士が保持される第1リンク部材と、
上記第1導電性高分子膜と上記第2導電性高分子膜との他方の端部がそれぞれ保持される第1固定枠と、
第3導電性高分子膜と第4導電性高分子膜との互いに対向する一方の端部同士が保持される第2リンク部材と、
上記第3導電性高分子膜と上記第4導電性高分子膜との他方の端部がそれぞれ保持される第2固定枠と、
上記第1導電性高分子膜と上記第3導電性高分子膜との間に配置された第1電解質托体層と、
上記第2導電性高分子膜と上記第4導電性高分子膜との間に配置された第2電解質托体層とを備えて、
上記第1導電性高分子膜と上記第3導電性高分子膜とが上記第1電解質托体層を介して接続されるとともに、上記第2導電性高分子膜と上記第4導電性高分子膜とが上記第2電解質托体層を介して接続されるように、上記第1固定枠と上記第2固定枠を隣接させて配置し、
上記第1リンク部材が上記第2リンク部材と接続されて構成され、
上記第1導電性高分子膜と上記第3導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により上記第1導電性高分子膜と上記第3導電性高分子膜の一方が膨張し、他方が収縮し、上記第2導電性高分子膜と上記第4導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により上記第2導電性高分子膜と上記第4導電性高分子膜の一方が収縮し、他方が膨張するよう構成し、
上記第1固定枠における収縮変位と上記第2固定枠における収縮変位との和が、上記第1リンク部材と上記第2リンク部材の接続により、上記第1固定枠と上記第2固定枠との相対的な変位となることを特徴とする平板積層型導電性高分子アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、収縮方向及び伸長方向の双方向において剛性及び駆動力を有し、電解質托体層を介して収縮及び伸長する導電性高分子膜が面で対向する構成により、省エネ、省スペースな効率的な駆動が可能な平板積層型導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
本発明の第2態様によれば、上記第1リンク部材は、上記第1及び第2導電性高分子膜のそれぞれの端部を保持しかつ電気的に絶縁し、上記第2リンク部材は、上記第3及び第4導電性高分子膜のそれぞれの端部を保持しかつ電気的に絶縁している第1の態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、各々の導電性高分子膜に適切な電圧を印加することが可能で応力又は変位量を適切にコントロールすることができ、収縮方向及び伸長方向の双方向において剛性及び駆動力を有し、電解質托体層を介して収縮及び伸長する導電性高分子膜が面で対向する構成により、省エネ、省スペースな効率的な駆動が可能な平板積層型導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
本発明の第3態様によれば、上記第1導電性高分子膜と上記第3導電性高分子膜の間に与える電位差と、上記第2導電性高分子膜と上記第4導電性高分子膜の間に与える電位差とを、酸化還元反応による上記第1〜上記第4導電性高分子膜の膨張と収縮の変位が等しくなるよう印加したことを特徴とする第1〜2のいずれか1つの態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、各々の導電性高分子膜に適切な電圧を印加することで、アクチュエータとしての剛性を維持しつつ、応力又は変位量を適切にコントロールすることができる平板積層型導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
本発明の第4態様によれば、上記第1及び第2の導電性高分子膜を同じ長さでかつ同じ材料で構成し、上記第3及び第4の導電性高分子膜を同じ長さでかつ同じ材料で構成している第3の態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、導電性高分子膜に印加する電圧をほぼ一定にすることでき、アクチュエータとしての剛性を維持しつつ、応力又は変位量のコントロールを簡素化することができる平板積層型導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
本発明の第5態様によれば、第1〜4のいずれか1つの態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータを複数備え、各々を上記電解質托体層を介して接続し、上記導電性高分子膜の間に電位差を与えることによる酸化還元反応により、隣接する導電性高分子膜の一方が膨張し、他方が収縮するように構成された平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置を提供する。
このような構成によれば、収縮方向及び伸長方向の双方向において剛性及び駆動力を有し、高密度な積層により変位を拡大、或いは、応力を拡大できるもので、電解質托体層を介して収縮及び伸長する導電性高分子膜が面で対向する構成により、省エネ、省スペースな効率的な駆動が可能な平板積層型導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
本発明の第6態様によれば、第1〜4のいずれか1つの態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータを複数接続する際に、上記固定枠を互いに連結することで構成した第5の態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置を提供する。
このような構成によれば、高密度な積層により変位を拡大できるもので、電解質托体層を介して収縮及び伸長する導電性高分子膜が面で対向する構成により、省エネ、省スペースな効率的な駆動が可能な平板積層型導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
本発明の第7態様によれば、第1〜4のいずれか1つの態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータを複数接続する際に、上記リンク部材を互いに連結することで構成した第5の態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置を提供する。
このような構成によれば、高密度な積層により応力を拡大できるもので、電解質托体層を介して収縮及び伸長する導電性高分子膜が面で対向する構成により、省エネ、省スペースな効率的な駆動が可能な平板積層型導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
本発明の第8態様によれば、第1〜4のいずれか1つの態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータを少なくとも3個接続する際に、一つおきの上記固定枠に備えた導電性高分子膜同士を概直線的に連結して荷電する構成とした第5の態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置を提供する。
このような構成によれば、積層により複雑化する配線に関して、駆動時の変位に依存せず、概直接的な配線による簡易な構成と製造プロセスを実現できる平板積層型導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
本発明の第9態様によれば、上記第1及び第4導電性高分子膜を一枚の導電性高分子膜で構成し、上記第3及び第2導電性高分子膜を別の一枚の導電性高分子膜で構成し、上記第1リンク部材と上記第2リンク部材とが一体に接続されて1つの絶縁性のリンク部材で構成し、上記絶縁性のリンク部材により、上記一枚の導電性高分子膜と上記別の一枚の導電性高分子膜とが中心部で互いに交差しかつ互いに接触しないように保持している、第1又は2の態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータを提供する。
このような構成によれば、印加電圧の極性の異なる導電性高分子膜間での絶縁性能の向上と、印加電圧の極性が同じ導電性高分子膜同士を一体化したことによる配線の簡易化を実現、リンク部材における接続時の屈曲部分での集中応力を回避して、導電性高分子膜の切断等のトラブルを回避できる構成が可能な平板積層型導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
本発明の第10態様によれば、上記第1リンク部材と上記第2リンク部材は、同一部材、又は、異なる部材でかつ互いに連結された部材より構成されている第1〜7のいずれか1つの態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置を提供する。
本発明の第11態様によれば、第1〜4のいずれか1つの態様に記載の導電性高分子アクチュエータを複数接続する際に、隣接する上記複数の導電性高分子アクチュエータの上記固定枠と上記固定枠との間にスペーサを備える第5の態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置を提供する。
このような構成によれば、スペーサにより上記固定枠と上記固定枠とが互いに円滑に摺動することができる。
本発明の第12態様によれば、第5〜11のいずれか1つの態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置を屈曲可能な指の駆動源として配置したロボットハンドを提供する。
本発明の第13態様によれば、第5〜11のいずれか1つの態様に記載の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置により可動レンズをレンズフレームに対して移動させるメガネを提供する。
本発明の第14の態様によれば、
平板積層型導電性高分子アクチュエータの作動方法であり、
上記導電性高分子アクチュエータは、
第1導電性高分子膜と第2導電性高分子膜との互いに対向する一方の端部同士が保持される第1リンク部材と、
上記第1導電性高分子膜と上記第2導電性高分子膜との他方の端部がそれぞれ保持される第1固定枠と、
第3導電性高分子膜と第4導電性高分子膜との互いに対向する一方の端部同士が保持される第2リンク部材と、
上記第3導電性高分子膜と上記第4導電性高分子膜との他方の端部がそれぞれ保持される第2固定枠と、
上記第1導電性高分子膜と上記第3導電性高分子膜との間に配置された第1電解質托体層と、
上記第2導電性高分子膜と上記第4導電性高分子膜との間に配置された第2電解質托体層とを備え、
上記第1導電性高分子膜と上記第3導電性高分子膜とが上記第1電解質托体層を介して接続されるとともに、上記第2導電性高分子膜と上記第4導電性高分子膜とが上記第2電解質托体層を介して接続されるように、上記第1固定枠と上記第2固定枠を隣接させて配置し、
上記第1リンク部材が上記第2リンク部材と接続されて構成される導電性高分子アクチュエータであって、
上記第1導電性高分子膜と上記第3導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により上記第1導電性高分子膜と上記第3導電性高分子膜の一方が膨張し、他方が収縮し、上記第2導電性高分子膜と上記第4導電性高分子膜の間に電位差を与えることにより、酸化還元反応により上記第2導電性高分子膜と上記第4導電性高分子膜の一方が収縮し、他方が膨張して、
上記第1リンク部材と上記第2リンク部材の接続により、上記第1固定枠における収縮変位と上記第2固定枠における収縮変位との和を、上記第1固定枠と上記第2固定枠との相対的な変位にする平板積層型導電性高分子アクチュエータの作動方法を提供する。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1A〜図3Cは、本発明にかかる第1実施形態の平板積層型導電性高分子アクチュエータ及びその作動方法の一例を示した図である。この第1実施形態の平板積層型導電性高分子アクチュエータ40の全体構造は図2Aの斜視図である。導電性高分子アクチュエータ40は、それを構成する部品としてのアクチュエータユニットを、複数個例えば2個、積層し、かつ、その間に電解質托体層(例えば、第1電解質托体層と第2電解質托体層)6を挟み込んで構成している。すなわち、具体的には、第1アクチュエータユニット40Aを2個積層し(別の図1Aの第1アクチュエータユニット40Aは、後述するように、第2アクチュエータユニット40Bと称しており、図では、アクチュエータユニット40Aとアクチュエータユニット40Bとを積層し)、かつ、その間に電解質托体層6を挟み込んで導電性高分子アクチュエータ40を構成している。
図1Aは、上記第1アクチュエータユニット40Aの斜視図である。図1Bは、図1Aの第1アクチュエータユニット40Aを側面から示したB−B線の断面図である。図1Cは、図1Aの第1アクチュエータユニット40Aを側面から示したC−C線の断面側面図である。
図1Aにおいて、2a、2bは酸化還元反応に伴って膨張収縮変形する導電性高分子製の矩形、例えば長方形の伸縮体で、膜状の導電性高分子膜(例えば、上記第1導電性高分子膜と第2導電性高分子膜)である。導電性高分子膜2a、2bをそれぞれ構成する導電性高分子としては、ポリピロール、若しくは、ポリアニリン等が利用可能であるが、ポリピロールは変位量が大きい点で望ましい。また、導電性高分子膜2a、2bの厚みはそれぞれ5μmから30μm程度であるのが望ましい。材質にも大きく依存するが、導電性高分子膜2a、2bの厚みは、5μmより薄いと強度的に弱く、30μmより厚いと内部までイオンの出入りが困難となるため発生変位が小さくなり、同時に動作速度も低下するため、適切ではない。第1実施形態の1つの実例では、厚さ15μm、長さ25mm、幅5mmの導電性高分子膜2a、2bを使用している。
図1Bは、図1Aに示した平板積層型導電性高分子アクチュエータ40の第1アクチュエータユニット40Aに関して、導電性高分子膜2a、2bに垂直な長手方向沿いの図1AのB−B線の断面図である。導電性高分子膜2a、2bは直方体の板状でかつ電気的に絶縁体のリンク部材(例えば、第1リンク部材)1を介して互いに接続され、各々の端部は四角形の絶縁性の固定枠(例えば、上記第1固定枠)3aの図1Aの上下の端部にそれぞれ固定して保持されている。ここでは、一例として、固定枠を絶縁性としたが、これに限られるものではなく、固定枠が非絶縁体である場合には、電極又は導電性高分子膜、特に電解質托体層と固定枠との間に絶縁部材を配置すればよい。よって、導電性高分子膜2a、2bは、図1A及び図1Bに示すように、固定枠3a内で張力で緊張状態に保持されている。そのため、導電性高分子膜2a、2bは座屈することなく、また導電性高分子膜2a、2bの長手方向に対して垂直な方向(導電性高分子膜2a、2bの厚み方向)からの外力Fに対しても、導電性高分子膜2a、2bの張力により一定に保持されている。なお、固定枠3aの長手方向沿いの側部の表面には、四角柱の棒状のスペーサ3bを有している。スペーサ3bには、例えば、摩擦抵抗の少なく、耐腐食性の高い材料として、テフロン(登録商標)を使用して構成することが望ましい。このように、摩擦抵抗の少ない材料をスペーサ3bに使用することにより、スペーサ3bが、その対向して接触する部材との接触面が滑りやすく構成している。スペーサ3bは、製作の簡易化のために絶縁体を使用するのが好ましい。もし、スペーサ3bが非絶縁体である場合には、電極又は導電性高分子膜、特に電解質托体層とスペーサ3bとの間に絶縁部材が必要となる。
図1Dは、図1Aの平板積層型導電性高分子アクチュエータの第1アクチュエータユニット40Aと比して、スペーサ3bが無いアクチュエータユニット40Bを示した斜視図である。図1Eは、図1Dの第2アクチュエータユニット40Bを側面から示したE−E線の断面図である。第1アクチュエータユニット40Aと第2アクチュエータユニット40Bとは、スペーサ3bを除くと、全く同一形状及び同一構造である。
この第1実施形態における平板積層型導電性高分子アクチュエータ40は、基本的には、図1Aの第1アクチュエータユニット40Aを2個用意し、図1Aの第1アクチュエータユニット40Aの表面側に、別の図1Aの第1アクチュエータユニット40A(以下、第2アクチュエータユニット40Bと称する。)の表面側を重ね合わせることにより、スペーサ3b,3b同士が摺動可能に接触しながら、積層されて構成するようにしている。
なお、以下の説明においては、第1アクチュエータユニット40Aと第2アクチュエータユニット40Bとの動作を区別して説明するために、以下のように、対応関係がある。第2アクチュエータユニット40Bの導電性高分子膜2a、2bは導電性高分子膜4b,4a(例えば、上記第3導電性高分子膜と第4導電性高分子膜)として図示している。また、固定枠3aは固定枠(例えば、上記第2固定枠)5aとして図示している。また、スペーサ3bはスペーサ5bとして図示している。また、リンク部材1は2つの第1アクチュエータユニット40Aと第2アクチュエータユニット40Bとで共有するため、そのままリンク部材1として図示している。図2Aのリンク部材1(例えば、第1リンク部材と第2リンク部材とが一体に接続されて構成されたリンク部材)は、図1Aのリンク部材1と同じものである。その一端部(図2Aでは奥側の端部)が第1アクチュエータユニット40Aの導電性高分子膜2a、2bとに接続される一方、その他端部(図2Aでは手前側の端部)が第2アクチュエータユニット40Bの導電性高分子膜4b,4aとに接続されるように構成されている。導電性高分子膜4b,4aと固定枠5aとスペーサ5bとは、単に参照符号を変えただけであり、その基本的な構造又は材料又は機能などは、第1アクチュエータユニット40Aのそれぞれの部材と同一のものである。
図2Aは、第1アクチュエータユニット40Aと第2アクチュエータユニット40Bとで構成される上記第1実施形態の平板積層型導電性高分子アクチュエータ40の外観を示した斜視図である。図2Bは導電性高分子アクチュエータ40の導電性高分子膜2a,2b,4b,4aの長手方向沿いのB−B線の断面図である。図2Cは導電性高分子膜2a,2b,4b,4aの長手方向沿いのC−C線の断面図である。
図2Aでは、図1Aに示したリンク部材1(例えば第2リンク部材)を介して、導電性高分子膜4aと4bとが互いに接続されるように構成している。さらに、図2Bに示したように、リンク部材1の上側では、ゲル状のイオン液体である電解質托体層6を、導電性高分子膜2aと導電性高分子膜4bに接するように設置している。また、リンク部材1の下側では、同様に、ゲル状のイオン液体である電解質托体層6を、導電性高分子膜2bと導電性高分子膜4aに接するように設置している。それぞれの電解質托体層6の厚みは5μmから50μm程度が望ましい。電解質托体層6の厚みが5μmより厚いと導電性高分子膜を密に配置することができない。逆に、電解質托体層6の厚みが50μmより薄過ぎると、電解質托体層6中に含まれるイオンが少なくなり、駆動力又は変位量が低下する。ここで、電解質托体層6はゲル状であるので、接する導電性高分子膜2a,4b,2b,4aとはそれぞれ接合しておらず、スライドすることが可能となっている。第1実施形態では、1つの具体例として、厚さ30μmの電解質托体層6を使用している。なお、図2Cに示すように、固定枠3aのスペーサ3bと同様に、固定枠5aには両側に四角柱の棒状スペーサ5bを有しており、固定枠3aと固定枠5aの間は、スペーサ3bとスペーサ5bとによって、電解質托体層6の厚さに相当する間隙で維持される構成となっている。つまり、スペーサ3b,5bのそれぞれの高さは電解質托体層6の厚さの約半分である。また、固定枠3aに固定されたスペーサ3bと、固定枠5aに固定されたスペーサ5bとが、互いに摺動自在に接触している。
図2Bに示すように、固定枠3aと固定枠5はリンク部材1で拘束されているが、導電性高分子膜2a,4b,2b,4aの伸縮方向に自由にそれぞれ移動できる構成である点が特徴である。
図2Dは、図2Aの平板積層型導電性高分子アクチュエータと比して、スペーサ3bとスペーサ5bが無い平板積層型導電性高分子アクチュエータ40Sを示した斜視図である。図2Eは、図2Dの平板積層型導電性高分子アクチュエータ40Sを側面から示したE−E線の断面図である。このような構成では、スペーサ3b、5bが無いため、電解質托体層6の厚さに相当する分は、固定枠3a、5aの厚みを大きくして、固定枠3aと5aとが摺動自在に直接接触することで対応することになる。この場合には、構造が簡単になるメリットがある。しかしながら、固定枠3a、5a自身を摩擦係数の低い材料で構成する必要があり、後述するような固定枠3a、5a同士を滑ることなく連結して固定するとき、テフロン(登録商標)等の摩擦係数の小さい材料では、樹脂系の接着剤を使用すると接合し難い傾向が有るため、小さな開口等を設けてボルト締めのような形式で固定する必要が生じる場合がある。以降は、構造が簡単になるメリットの大きさを優先して、スペーサ3b、5bが無い場合にて説明する。
図3Aは、本発明にかかる第1実施形態の平板積層型導電性高分子アクチュエータとその導電性高分子アクチュエータへ電圧を印加する一例を示した配線図である。図3Bは、図3Aの導電性高分子アクチュエータにおいて、スイッチをオンした際の電圧と変位の方向を示した図である。図3Cは、図3Aの導電性高分子アクチュエータにおいて、図3Bの電圧の印加方向とは逆方向に電圧を印加した場合の図である。電圧制御回路を内蔵した電源回路54は、スイッチ52を介して、一方の電極を導電性高分子膜2b及び4bに、片方の電極を導電性高分子膜2a及び4aにそれぞれ接続している。以下、導電性高分子膜2a,4b,2b,4aの駆動に関して、ここでは、陽イオンの出入りに起因するものとして説明することとする。なお、導電性高分子膜2a,4b,2b,4aが伸縮する要因として、陰イオンの出入り、陽イオンの出入り、高分子構造の変化等があるが、ポリピロール等の材料では陽イオンの出入りが主たる変形メカニズムと言われている。このメカニズムについては、使用する導電性高分子又はイオン液体の種類に依存する。
図3Bに示すように、電解質托体層6とのイオン交換による導電性高分子膜2a,4b,2b,4aの伸縮によって、リンク部材1を駆動することが可能となる。導電性高分子膜2aと2b及び導電性高分子膜4bと4aは各々、伸長と収縮を交互に行い、常に変位量が等しくなるように設定することで、与圧を必要とせず、座屈することなく、リンク部材1を往復の双方向で剛性と駆動力を発生させることが可能となっている。ここで、導電性高分子膜2aと2bの変位量及び導電性高分子膜4bと4aの変位量が、それぞれ、常に等しくなるように設定する方法としては、導電性高分子膜2aと2bの間及び導電性高分子膜4bと4aの間にそれぞれ与える電位差を、酸化還元反応による導電性高分子膜2aと2b及び導電性高分子膜4bと4aのそれぞれの膨張と収縮の変位が等しくなるよう印加するのが有効である。或いは、上記方法としては、導電性高分子膜2aと2b及び導電性高分子膜4bと4aを同じ長さ、同じ材料で構成し、導電性高分子膜2aと2bの間及び導電性高分子膜4bと4aの間にそれぞれ与える電圧の絶対値を同等にすることが有効である。なお、導電性高分子膜2aと2b及び4bと4aのそれぞれの特性の差異又は寸法が異なる場合には、各導電性高分子膜2aと2b及び4bと4aに与える電圧の大きさ又は時間変化を最適に制御することで同様な効果を得ることは可能である。
図3Bにおいて、電源回路54から、導電性高分子膜2b及び4bにマイナスの電位が掛かり、導電性高分子膜2a及び4aにはプラス電位が掛かっている。このとき、陽イオンが、負電極側の導電性高分子膜2b及び4bに引き寄せられて、導電性高分子膜2b及び4bの内部に入り込む。この過程に伴って、導電性高分子膜2b及び4bはそれぞれ長手方向に伸長する。一方、導電性高分子膜2a及び4aは正電極側なので、導電性高分子膜2a及び4aの内部の陽イオンは電解質托体層6中に移動するため、導電性高分子膜2a及び4aはそれぞれ長手方向に収縮する。ここで、前述した図1Bの場合と同様に、導電性高分子膜2aと2b及び導電性高分子膜4aと4bは、伸長と収縮による変位量が等しくなるようにそれぞれ設定しておく。その結果、リンク部材1を中心として、固定枠3a及び5は、相対的に導電性高分子膜の伸縮方向に変位する。図3Aの固定枠3a及び5の初期位置と比較して、仮にリンク部材1を固定しているとすると、図3Bでは、一つの導電性高分子膜の変位量だけ固定枠3aは初期位置より下方に移動するとともに、一つの導電性高分子膜の変位量だけ固定枠5は初期位置より上方に移動することになる。よって、固定枠3a及び5の相対的な変位量は、一つの導電性高分子膜の変位量の約2倍である。なお、駆動力に関しては、一つの導電性高分子膜の駆動力の約1倍、つまり同等である。また、固体枠3と5による伸長に対する応力として、圧縮方向の外力に対しては収縮している導電性高分子膜2aと4aにより剛性を有し、引張方向の外力に対しては伸長している導電性高分子膜4aと4bにより剛性を維持されることが特徴である。
図3Cでは、逆に、電源回路54から、導電性高分子膜2b及び4bにプラスの電位が、導電性高分子膜2a及び4aにはマイナス電位が掛かっており、変位方向は図3Bとは逆になる。すなわち、図3Aの固定枠3a及び5の初期位置と比較して、仮にリンク部材1を固定しているとすると、図3Cでは、一つの導電性高分子膜の変位量だけ固定枠3aは初期位置より上方に移動するとともに、一つの導電性高分子膜の変位量だけ固定枠5は初期位置より下方に移動することになる。なお、変位量と駆動力、そして剛性に関しては、それぞれ、図3Bと同じである。
特に、第1実施形態の平板積層型導電性高分子アクチュエータでは、電解質托体層6を介して収縮及び伸長する導電性高分子膜2aと4b及び導電性高分子膜2bと4aが、それぞれ、面で対向する構成となっていることも特徴であり、さらに伸長と収縮を繰り返して駆動力を発生する場合には、面で対向する導電性高分子膜2aと4b及び2bと4aがいわゆるコンデンサにおけるチャージと同様に、お互いの導電性高分子膜2aと4b及び2bと4aの内部に残留するイオンの往復が発生して、電源回路54からの電気エネルギの消耗を最小限に抑えるとも言われている。従って、このような配置構成は、省スペースであると同時に、省エネで効率的な駆動が可能な最良の構成とも言える点が、特徴である。
以上のように、第1実施形態によれば、収縮方向及び伸長方向の双方向において剛性及び駆動力を有し、電解質托体層6を介して収縮及び伸長する導電性高分子膜2aと4b及び2bと4aが面で対向する構成により、省エネ、省スペースな効率的な駆動が可能な平板積層型導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
(第2実施形態)
図4A〜図4Eは、本発明にかかる第2実施形態の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置41の一例として断面図を示している。なお、前述した第1実施形態と同様な機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図4Fについては後述する。
図4Aには、前述の図2Bで示した平板積層型導電性高分子アクチュエータ40を、電解質托体層7をそれぞれ介して並列に積層し、隣接する高分子アクチュエータ40の一方側の隣接する固定枠3aと5とを固定する電気的に絶縁体の固定枠連結部材8により固定枠を連結している。その際に、各々の導電性高分子膜への電極配線の図は、図3Aと同様であるため省略しているが、第1実施形態と同様に、面で対向すること、及び、隣り合う導電性高分子膜の電極が必ず逆になるように配置していることが特徴である。固定枠連結部材8は、棒状部材であって、隣接する高分子アクチュエータ40の一方側の隣接する固定枠3aと5とを固定する機能を有するものであれば、任意の部材でよい。
図4Bでは、各導電性高分子膜への電圧を印加し、各導電性高分子膜の伸長と収縮、各導電性高分子膜の変位をそれぞれ示している。図4Cは、図4Bの逆電位である。いずれの場合も、前述の第1実施形態の平板積層型導電性高分子アクチュエータと同様に、収縮方向及び伸長方向の双方向において剛性及び駆動力を有し、電解質托体層6と7を介して収縮及び伸長する導電性高分子膜が面で対向する構成により、省エネ、省スペースな効率的な駆動が可能となっている。
なお、図4A〜図4Cにおいて、電解質托体層7は、電解質托体層6と比して、厚さが大きいように描画されているが、この限りではない。前述のように電解質托体層6と同様に電解質托体層7の厚みは5μmから50μm程度が望ましく、電解質托体層7の厚みが50μmより厚いと導電性高分子膜を密に配置することができない。逆に、電解質托体層7の厚みが5μmより薄過ぎると、電解質托体層7中に含まれるイオンが少なくなり、駆動力又は変位量が低下する。
第2実施形態の1つの具体的な例では、厚さ15μmの導電性高分子膜2a,2b,4b,4aを使用し、厚さ30μmの電解質托体層6と厚さ50μmの電解質托体層7を使用している。本来、製造上の部品の共通化の観点では、電解質托体層7も電解質托体層6と同じ厚さにすべきである。しかし、ここでは、固定枠連結部材8により固定枠5aが片支持(例えば、図4Aの固定枠5aの下側のみを固定枠連結部材8で支持する状態)となり、固定枠連結部材8のない固定枠5a側(例えば、固定枠連結部材8で支持されていない、図4Aの固定枠5aの上側)の不安定性が高くなり、隣接する固定枠5a同士が駆動中に微小距離だけ分離する可能性も有るので、電解質托体層7は、電解質托体層6の厚みと比べて少し厚さの大きいものを使用して、間隙の拡大に柔軟性を設けている(微小距離だけ分離しても許容できるようにしている)。
なお、図4Bに示したように両端の固定枠(図4Bの左端の固定枠3aと右端の固定枠5a)から得られる変位量は、一つの導電性高分子膜の変位量δに対して、収縮する導電性高分子膜の数だけ倍増するのである。図4B及び図4Cの場合には、収縮する導電性高分子膜が8枚あるため、8倍の変位量(8×δ)である。なお、駆動力に関しては、一つの導電性高分子膜の駆動力の約1倍、つまり同等である。
なお、両端の固定枠(図4Bの左端の固定枠3aと右端の固定枠5a)からの駆動力又は変位量を利用するだけではなく、中間の複数の固定枠の駆動力又は変位量を利用するアクチュエータ又はアクチュエータ装置の場合には、各導電性高分子膜の種類若しくは寸法、各導電性高分子膜へ印加する電位、又は、電解質托体層の種類若しくは量等を、任意に変えて設定することで実現できる。
図4Dには、ケーシング50内に設けた平板積層型導電性高分子アクチュエータ40として、片側のリンク部材1から駆動力又は変位量を取り出す構成の一例を示している。すなわち、ケーシング50内に、図4Aの第2実施形態の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置41を配置するとともに、一方の端部(例えば図4Dの左端)の高分子アクチュエータ40のリンク部材1をケーシング50に固定具50aで固定する一方、他方の端部(例えば図4Dの右端)の高分子アクチュエータ40のリンク部材1に出力部材50bを連結している。出力部材50bは、ケーシング50の開口部50cで自在に移動可能となっている。よって、図4Aの第2実施形態の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置41において、他方の端部(例えば図4Dの右端)の高分子アクチュエータ40のリンク部材1に連結された出力部材50bから、平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置41の駆動力又は変位量を取り出すことができるようにしている。
また、図4Eには、上記片側のリンク部材1に加えて、中間の固定枠5a(例えば、図4Eの左から4個目の固定枠5a)から駆動力又は変位量を取り出す構成の一例を示している。すなわち、図4Dの構成に加えて、図4Eの左から4個目の固定枠5aに、ケーシング50を移動自在に貫通する棒状の連結部材50dを固定し、連結部材50dは、固定枠5aと一体的に長手方向沿いにケーシング50に対して移動することにより、平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置41の駆動力又は変位量を取り出すことができるようにしている。この連結部材50dで取り出される駆動力又は変位量は、図4Dの上記出力部材50bから取り出される変位量は半分程度であるが、駆動力は同じである。
また、図4Fには、中間の固定枠5a(例えば、図4Eの左から4個目の固定枠5a)のみから駆動力又は変位量を取り出す構成の一例を示している。すなわち、他方の端部(例えば図4Dの右端)の高分子アクチュエータ40のリンク部材1もケーシング50に固定具50aで固定している。この場合には、連結部材50dのみがケーシング50に対して移動して、平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置41の駆動力又は変位量を取り出すことができるようにしている。なお、後述するように、この図4Fは、図4Bと図4Cの電圧印加のパターンを組み合わせた場合の電圧印加方法を示しており、図4Dの出力部材50bから取り出される中央での駆動の変位量は図4Eの場合と同じでも、図4Dの出力部材50bから取り出される駆動力を、図4Eの場合と比して、2倍にすることができる。
これらいずれの場合についても、本発明に含まれる。
以上のように、収縮方向及び伸長方向の双方向において剛性及び駆動力を有し、高密度な積層により変位を拡大できるもので、電解質托体層6,7を介して収縮及び伸長する導電性高分子膜2a,2b,4b,4aが面で対向する構成により、省エネ、省スペースな効率的な駆動が可能な平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置41を得ることができる。
(第3実施形態)
図5Aは、本発明の第3実施形態における平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置42の一例を示すゼロ電位状態(初期状態)の図であって、図2Bと同様な切断線での断面図である。図5Aの平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置42では、前述の図4Aで示した平板積層型導電性高分子アクチュエータ40と異なり、電荷を加えた状態で固定枠間の変位がゼロとなるように、積層する際のリンク部材1に対して、予め変位δ1を与えておくように連結することが可能でかつ電気的に導通可能な非絶縁体の変形リンク部材9を使用している。図4Aで示した第2実施形態の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置41の4個の平板積層型導電性高分子アクチュエータ40のそれぞれでは、直方体の板状のリンク部材1の一端部で導電性高分子膜2aと2bに接続されるとともに、他端部で導電性高分子膜4bと4aに接続されている。これに対して、この第3実施形態の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置42の4個の平板積層型導電性高分子アクチュエータのそれぞれが、平板積層型導電性高分子アクチュエータ40と異なる点は、第1のアクチュエータユニット42Aの導電性高分子膜2aと2bは例えば直方体の棒状の絶縁性のリンク部材1aを介して互いに接続されるとともに、第2のアクチュエータユニット42Bの導電性高分子膜4bと4aは例えば直方体の棒状のリンク部材1aを介して互いに接続されおり、リンク部材1aが2個あることと、これらの隣接する2個のリンク部材1a同士を変形リンク部材9で、予め、図5Aに示すように、位置を上下に変位δ1だけずらせた状態で連結していることである。第1のアクチュエータユニット42Aと第2のアクチュエータユニット42Bとは、第1実施形態の第1アクチュエータユニット40Aと第2アクチュエータユニット40Bと同様に電解質托体層6を挟持している。また、第1のアクチュエータユニット42Aと第2のアクチュエータユニット42Bとで構成される1つのアクチュエータを4個並列配置するときに、それぞれの間に、第2実施形態と同様に電解質托体層7を挟持している。
より具体的には、変形リンク部材9は、例えば直方体の棒状の部材より構成されている。このような変形リンク部材9の下端の左側の側面に、図5Aの左端のリンク部材1aを固定するとともに、変形リンク部材9の上端の右側の側面に、図5Aの左端から2番目のリンク部材1aを固定するようにしている。なお、リンク部材1aも、リンク部材1と同様に、絶縁体が好ましい。
前述の図4A〜図4Cでは、印加する電圧の正負によって、電位がゼロのときと比べて、一方の固定枠3aに対する他端の固定枠5aは、両方向に大きく変位する。しかし、利用する場合によっては、正負の印加によっても、固定枠3a,5aの変位は一方向だけの方が望ましいケースも考えられる。
そこで、上記した図5Aのような構造を使用することによって、図5Bに示すように、ある電位が加わった際に固定枠3a,5aには大きな変位が生じるが、図5Bとは逆電荷の場合には、図5Cのように固定枠3a,5a間の変位がゼロとなるように構成可能である。
なお、前述の第2実施形態と全く同様に、この第3実施形態においても、収縮方向及び伸長方向の双方向において剛性及び駆動力を有し、高密度な積層において、一方向にのみ変位を拡大でき、電解質托体層6,7を介して収縮及び伸長する導電性高分子膜2a,3b,4b,4aが面で対向する構成により、省エネ、省スペースな効率的な駆動が可能な平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置を得ることができる。この第3実施形態にかかる平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置を搭載するスペースによっては、或いは、両端の固定枠3a,5aから導出する駆動変位が初期は同じ位置(図5C参照)で、駆動時に大きく変位量が取る(図5BC参照)必要がある(図5C参照)ケースなどでは非常に有効である。
(第4実施形態)
図6Aは、本発明の第4実施形態における平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置43の一例を示すゼロ電位状態(初期状態)の図であって、図2Bと同様な切断線での断面図である。図6Aには、前述の図2Bで示した平板積層型導電性高分子アクチュエータを、電解質托体層7を介して並列に積層する際に、図4A、図5Aとは異なり、例えば直方体の棒状でかつ電気的に絶縁体のリンク部材連結部材10により、隣接するリンク部材1同士を互いに連結している。このような連結構造の一例としては、リンク部材連結部材10とリンク部材1とのいずれか一方に係合凸部、他方に係合凹部を設けて、係合凸部を係合凹部に係合させることにより着脱可能に連結させるような構造がよい。なお、複数のリンク部材連結部材10と複数のリンク部材1を、棒状の単一の部材で構成することも可能である。
前述の第2実施形態及び第3実施形態では、主に、導電性高分子アクチュエータの積層により、変位量の増加を図っている。第4実施形態では、導電性高分子アクチュエータを積層することにより、応力の増加を図っている点が特徴である。なお、従来では、バイモルフ型のアクチュエータを複数並べることしか、積層する方法に相当するだけの応力の拡大手段はなく、特に、特許文献1の構成では、積層が困難であった。
図6B及び図6Cに示すように、電極の正負に応じて固定枠3a,5aが変位する。ただし、固定枠3a,5aの変位量は、隣接するリンク部材1同士をリンク部材連結部材10により互いに連結しているため、一つの導電性高分子膜の変位量と同等である。しかし、駆動力に関しては、収縮する導電性高分子膜の数だけ倍増するのである。図6B及び図6Cの場合には、4つの固定枠3a,5a(収縮する4つの導電性高分子膜)の駆動力の合計として、1つの固定枠(収縮する1つの導電性高分子膜)の駆動力の8倍である。
以上のように、収縮方向及び伸長方向の双方向において剛性及び駆動力を有し、高密度な積層により応力を拡大できるもので、電解質托体層6,7を介して収縮及び伸長する導電性高分子膜2a,2b,4b,4aが面で対向する構成により、省エネ、省スペースな効率的な駆動が可能な平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置43を得ることができる。特に、変位量の拡大は必要ではないが、大きな応力が必要となるようなケースでは、非常に効果的な構成である。
(変形例)
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
また、上記種々の実施形態において、以下のような場合にも、本発明の同様な効果を得られる。
図4A〜図6Cにおいて、各々の導電性高分子膜2a,2b,4b,4aへ印加する電圧は同等なように示してあるが、この限りではない。例えば、必要な応力、或いは、必要な変位量に応じて、電圧を掛ける導電性高分子膜を選択するか、又は、電圧の極性又は大きさを導電性高分子膜毎に適切に調整することも有効な方法である。
また、図4Fには、図4Bと図4Cの電圧印加のパターンを組み合わせた場合を示しているが、両端のリンク部材1をケーシング50に固定具50aでそれぞれ固定することにより、中央での駆動の変位量は同じでも、駆動の応力を、図4Eと比して2倍にする構成も一例として可能である。ケーシング50は、絶縁性でも、導電性も良い。
ただし、後述するような図7A及び図7Bに示した配線の場合は、電圧を掛ける導電性高分子膜を選択することは困難なため、配線を変更することが必要である。
また、図4Fの中央部の電解質托体層は、両側の導電性高分子膜の電圧の極性が同じなため、十分には機能しない。しかしながら、いずれの場合も、電圧を印加するスピードに応じて、応力、或いは、変位量の変化をコントロールできる。
また、図4A〜図6Cにおいて、すべての面で対向する、或いは、隣り合う導電性高分子膜の電極が必ず逆になるように配置しているが、必要に応じて、その限りではない。しかし、隣り合う導電性高分子膜の電極が必ず逆になるような配置以外の配置の場合には、省エネ、省スペースな効率的な駆動というメリットは減少する。
また、図4Aと図5Aに示した変位拡大のための構成と、図6Aに示した応力拡大のための構成は、固定枠連結部材8でアクチュエータを積層するか、リンク部材連結部材10でアクチュエータを連結するかの差異であり、これらは共存可能である。例えば、図6Dのように、図4Bの構成のパターンと図6Bの構成のパターンとを組み合わせた場合を示しているが、収縮する導電性高分子膜の1枚分と比して、駆動の応力は3倍に、変位量は6倍にする構成も一例として可能である。なお、図6Dにおける構成では、リンク部材連結部材10の代用として、第2実施形態の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置41の下方に位置しかつ図示しているようにケーシング50と固定枠3aを固定するケーシング固定部材51にて導電性高分子アクチュエータ装置41を相互に連結することで、リンク部材連結部材10の機能を代用することが可能である。ケーシング固定部材51は、絶縁性でも、導電性も良い。この場合には、ケーシング固定部材51は、棒状の部材より構成し、両端を固定具50eでケーシング50にそれぞれ固定するとともに、各導電性高分子アクチュエータ装置41の図6Dの左端の固定枠3aと固定的に連結されている。各導電性高分子アクチュエータ装置41の他の固定枠5a,3bはケーシング固定部材51に固定されていないので、自由に移動可能となっている。一方、各導電性高分子アクチュエータ装置41の上方には、出力軸部材50gを配置している。出力軸部材50gは、絶縁性でも、導電性も良い。出力軸部材50gは、棒状の部材より構成し、ケーシング50の開口部50fにおいて、図6Dの上下方向に移動自在に配置されている。出力軸部材50gは、各導電性高分子アクチュエータ装置41の図6Dの右端の固定枠5aと固定的に連結されて、各導電性高分子アクチュエータ装置41からの駆動力と変位量を取り出せるようにしている。また、各導電性高分子アクチュエータ装置41の左端のリンク部材1同士をリンク部材連結部材10でそれぞれ固定的に連結している。
いずれの場合にも、リンク部材連結部材10もケーシング固定部材51も、導電性高分子膜2a,2b,4b,4aとの衝突を避けるため、構成上は、固定枠3a、5aの外側に配置する必要がある。また、図6Dにおいて、導電性高分子膜2a,2b,4b,4aの長手方向より、それらの厚さ方向が強調された(それらの長手方向よりも、それらの厚さ方向を大きく拡大して描いた)図になっているが、実際には、それらの厚さ方向は、アクチュエータを積層した結果でも、例えば約1mm弱の大きさに過ぎず、長手方向は例えば約5mm強の大きさである。つまり、適用分野に応じて必要となる駆動力及び必要となる変位量に応じて、アクチュエータを適切に組み合わせるように積層することで、自由に最適な平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置を構成可能であることも大きなメリットである。
また、図7Aに示すように、隣接するアクチュエータの隣接する固定枠5a,3a同士を固定枠連結部材8で連結する場合(図4A参照)、及び図7Bに示すように、リンク部材1をリンク部材連結部材10で互いに連結する場合(図6A参照)のそれぞれにおいて、配線を概直線状の電極で構成することが可能である。これらのアクチュエータでは、伸長する導電性高分子膜と収縮する導電性高分子膜とが交互に配置されているため、一見、電極の配線は困難になると思われる。しかしながら、駆動時の固定枠3a,5aの配列から判断して、図7A及び図7Bのように、概直線状の電極が使用できるメリット、特に製造プロセスにおいては、非常に大きな簡素化が図れる点が有効である。
また、固定枠3a,5aの代わりに、図8Aのように、両端固定枠11とフレキシブル固定枠12で構成するようにしてもよい。すなわち、可撓性材料より構成された四角形枠体のフレキシブル固定枠12の図8Aの上下端部に剛体の固定枠11を固定して構成されており、フレキシブル固定枠12が可撓性を有することにより、自在にねじり可能とするように構成している。このような構成の場合には、導電性高分子膜2a,2b,4b,4aの座屈を防止するために導電性高分子膜2a,2b,4b,4aの伸縮方向のみ両端固定枠11とフレキシブル固定枠12で規定しており、図8Bに示すように、ねじり方向はフリーであっても良い。その結果、図8Cに示したように、図8Aの平板積層型導電性高分子アクチュエータの基本的な構成から、さらに、図8Aの平板積層型導電性高分子アクチュエータを2個積層して形成した平板積層型導電性高分子アクチュエータの構成も含めて、紐状に柔らかく、ねじりに対応できるアクチュエータとして構成することができる。その結果、曲面形状の物体に沿ってアクチュエータを設置する場合、或いは、アクチュエータの導電性高分子膜の面に対して垂直な方向からの外力が加えられる場合などには、上記した構成のアクチュエータは、非常に効果がある。例えば、アクチュエータを人工筋肉として人工骨の周辺に沿って設置する際に、図8Aの上記平板積層型導電性高分子アクチュエータならば、複雑な配置が容易であり、かつ、人工筋肉として外力に対しても柔軟な特性を有することで、人の筋肉に近くなる。また、ここで導電性高分子膜2a,2b,4b,4aと接する両端固定枠11が導電性であり、それ以外のフレキシブル固定枠12が絶縁体から構成する場合には、前述までは各々の導電性高分子膜に配線する必要があったが、固定枠の導電性の有る部分(両端固定枠11)での配線が可能となり、より製造が簡単、確実になる。また、駆動による配線部分への信頼性も向上する。なお、この場合にも、図2A、図2B、図2Cの場合と異なり、スペーサ3b、5bの構成が複雑となるため、図8Cにおけるフレキシブル固定枠12同士が、隣接して接することを前提に構成している。図8Dにおいて、図8CのD−D線の断面図を示しているが、図8Dに破線Bで表現したように、フレキシブル固定枠12同士が隣接して接している必要がある。なお、固定枠3a,5aにおいても、上下端部を導体で構成し、上下端部を連結する上下方向沿いの柱部などの他の枠体部を絶縁体で構成しても、上記したような利点を得ることができる。
また、図9に示すように、第1〜第4導電性高分子膜2a,2b,4b,4aに加えて、第5及び第6導電性高分子膜2c,2dと、第3リンク部材として絶縁性の連続リンク部材13を設けることで、第1と第2導電性高分子膜2aと2bとに一端部(例えば図9の左端部)が接続されるとともに第3と第4導電性高分子膜4bと4aとに他端部(例えば図9の右端部)が接続された第1リンク部材1(図3Bを参照)と、第3と第4導電性高分子膜4bと4aとに一端部(例えば図9の左端部)が接続されるとともに第5と第6導電性高分子膜2cと2dとに他端部(例えば図9の右端部)が接続された第2リンク部材1(図3Cにおいて、第1と第2導電性高分子膜2aと2bを第3と第4導電性高分子膜4bと4aと読替えるとともに、第3と第4導電性高分子膜4bと4aを第5と第6導電性高分子膜2cと2dと読替えた状態を参照。)とに対して働くトルクを抑制することも可能である。すなわち、連続リンク部材13がなければ、図3Bに示すように第1と第4導電性高分子膜2a,4aは収縮し第2と第3導電性高分子膜2b,4bは伸張するので、第1と第2導電性高分子膜2a,2bと第3と第4導電性高分子膜4b,4aとの間にまたがって設けられた第1リンク部材1は反時計方向に回転するようなトルクを発生する。一方、連続リンク部材13がなければ、第4と第6導電性高分子膜4a,2cは収縮し第3と第5導電性高分子膜4b,2dは伸張するので、第3と第4導電性高分子膜4b,4aと第5と第6導電性高分子膜2c,2dとの間にまたがって設けられた第2リンク部材1は時計方向に回転するようなトルクを発生する。そこで、連続リンク部材13により、第1リンク部材1と第2リンク部材1とを連結すれば、トルクがお互いに打ち消し合って、トルクを抑制することが可能となる。なお、第5及び第6導電性高分子膜2c,2dはそれぞれ導電性高分子膜2a,2bと同様なものである。例えば、図3Bにおいて、応力を発生するアクチュエータとして機能する際には、第1リンク部材1と第2リンク部材1には導電性高分子膜の面に平行な方向において、逆方向の応力が働くことになる。そこで、図9のように、第1リンク部材1と第2リンク部材1に接続しかつ第3リンク部材として機能する連続リンク部材13を設けることにより、連続リンク部材13へのトルクは発生しない構成が実現できる。このような構成は、応力を増強させるケースでは、非常に有効となる。
また、図10には、前述した第1及び第2リンク部材1に発生するトルク、又は、導電性高分子膜2a,2b,4b,4aの長手方向に対して垂直な方向からの外力に対して、第1及び第2リンク部材1の導電性高分子膜2a,2b,4b,4aの長手方向に対して垂直な方向への動きを制限するための構成を示している。すなわち、この構成においては、ロッド15を第1固定枠3a或いは第2固定枠5aに対して長手方向沿いに配置するとともにロッド15の両端部が第1固定枠3a或いは第2固定枠5aの上下両端部に固定的に支持し、さらに、第1リンク部材1或いは第2リンク部材1がロッド15に対して移動自在となるように第1リンク部材1或いは第2リンク部材1に開口1Aを設けてこの開口1Aにロッド15を貫通させるようにしている。このように構成することにより、第1固定枠3a或いは第2固定枠5aに対して、ロッド15の長手方向に沿った方向にのみ第1及び第2リンク部材1が移動するように構成としている。このような構成は、前述した図8Aから図8Dに示した構成におけるフレキシブル固定枠12に相当する役割を、導電性高分子膜2a,2b,4b,4aに対しても機能することが可能となる。つまり、リンク部材1の導電性高分子膜2a,2b,4b,4aの厚さ方向への動きによって、隣接する導電性高分子膜2a,4b同士又は隣接する導電性高分子膜2b,4a同士が接触することを防ぐ効果があり、電気的なショートを防止して、安定した駆動を保障することに有効である。
また、図11には、図4A、図5A、そして図6Aと異なり、導電性高分子膜2a,2b,4b,4aの面に沿った方向に、複数のアクチュエータを積層する構成の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置40Tを示している。すなわち、図2D及び図2Eの平板積層型導電性高分子アクチュエータ40Sを長手方向沿いに積層して配置し、上側の平板積層型導電性高分子アクチュエータ40Sの下端の固定枠3aと下側の平板積層型導電性高分子アクチュエータ40Sの上端の固定枠3aとを絶縁性の固定枠連結部材16で連結するとともに、上側の平板積層型導電性高分子アクチュエータ40Sの下端の固定枠5aと下側の平板積層型導電性高分子アクチュエータ40Sの上端の固定枠5aとを固定枠連結部材16で連結するように構成している。固定枠連結部材16は、例えば直方体の棒状部材などで構成している。単膜の導電性高分子において、製造可能な大きさに制限がある場合、或いは、導電性高分子膜2a,2b,4b,4aの長手方向に対して垂直な方向からの外力への弾性を適切に設ける必要が有る場合などには、上記した図11の構成の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置40Tは有効な構成である。勿論、図11の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置40Tの構成は、図4A〜図6Dと同様に導電性高分子膜2a,2b,4b,4aの面に対して垂直な方向に、さらに別の図11の構成の平板積層型導電性高分子アクチュエータ装置40Tを積層することも同時に可能な構成である。つまり、導電性高分子アクチュエータ装置40Tとして、長い寸法ではなく、短い単膜を大量に製造して利用することにより、製造上の効率化を図ることができ、或いは、導電性高分子膜2a,2b,4b,4aへの外力を分散させることができて、製品としての頑強性を高める効果がある。
なお、導電性高分子膜2a,2b,4b,4aは電圧印加により伸縮する特性があるが逆に、伸縮させると発電することも知られている。そこで、図4A〜図6Dに示したような積層したアクチュエータの固定枠3a,5bを、複雑な形状を有する面に接触させて固定枠3a,5bが上記複雑な形状を有する面に沿って位置するように、上記積層したアクチュエータを上記複雑な形状を有する面に押し付けるようにする。その結果の上記積層したアクチュエータの発電による電圧分布から、複雑な形状を電子情報として取り出すことが可能で、形状センサとしての使途も有効である。勿論、図1Aのような平板積層型導電性高分子アクチュエータの半分のアクチュエータユニット40Aのような構成であっても、第1リンク部材1の位置をセンシングすることにも利用でき、従来の与圧が不要な、一次元方向の双方向での位置センサとしての使途となることも有効である。
なお、導電性高分子膜2a,2b,4b,4aの間に図示する電解質托体層6,7としては、ゲル状のイオン液体を示すが、導電性高分子膜2a,2b,4b,4aとは接するのみで、導電性高分子膜2a,2b,4b,4aの伸縮に応じて変形、或いは、スライドするものとする。また、ゲル状でなくても、イオン液体の中に平板積層型導電性アクチュエータ全体を浸すような構成でも、同様な効果は得られる。
なお、第1及び第2固定枠3a,5aは、ゲル状のイオン液体と一体化した構成とすることも可能である。ゲル状イオン液体自身は変形し易いが、その中に、背骨のように、固定枠に相当する支持体を設けることができる。この場合、平板積層型導電性アクチュエータの構成部品を減少させることが可能となり、製造プロセス含めて簡素化が可能となる。
なお、以上の説明では、特許文献1とは逆に、導電性高分子膜に陽イオンが挿入されて導電性高分子膜が伸長し、逆に陰イオンが導電性高分子膜から離脱して導電性高分子膜が収縮することを前提にしている。しかしながら、導電性高分子膜の種類又はイオン液体の種類又は組み合わせによっては、特許文献1と同様に陽イオンではなく、陰イオンにより同様な現象が発生することがある。この場合も、本発明により、同様な効果が得られる。
(第5実施形態)
図15A〜図15Nに、本発明の第5実施形態にかかる平板積層型導電性高分子アクチュエータ及びその変形例をそれぞれ示す。 図15A〜図15Nでは、第7導電性高分子膜2abは、図2、図3等で示した第1導電性高分子膜2aと第4導電性高分子膜4aとを、一枚の導電性高分子膜で構成したものである。言い換えれば、第1導電性高分子膜2aと第4導電性高分子膜4aとを連結した長さにほぼ等しい長さの長尺な一枚の導電性高分子膜を第7導電性高分子膜2abとして用意し、その長尺な一枚の導電性高分子膜(第7導電性高分子膜2ab)の中央部よりも一方の側を第1導電性高分子膜2aとし、他方の側を第4導電性高分子膜4aとして機能させるものである。第8導電性高分子膜4abは、第2導電性高分子膜2bと第3導電性高分子膜4bを一枚の導電性高分子膜で構成したものである。言い換えれば、第2導電性高分子膜2bと第3導電性高分子膜4bとを連結した長さにほぼ等しい長さの長尺な別の一枚の導電性高分子膜を第8導電性高分子膜4abとして用意し、その長尺な別の一枚の導電性高分子膜(第8導電性高分子膜4ab)の中央部よりも一方の側を第2導電性高分子膜2bとし、他方の側を第3導電性高分子膜4bとして機能させるものである。図15Aに示すように、第7導電性高分子膜2ab及び第8導電性高分子膜4abのそれぞれには、中央部に、一方の側縁から幅方向に切り込まれた切欠2h,4hを備えている。
また、絶縁性の第4リンク部材1rは、三角柱形状の構造体1cを2個、中央部で互いに連結したような形状で、三角柱形状の構造体1c,1c間の対向する一対の切欠1h,1hを中央部に有して大略H字状に構成されている。
第4リンク部材1rは、一方の切欠1h(例えば、図15Aの左側の切欠1h)に第7導電性高分子膜2abの切欠2hを挿入して組み合わせるとともに(図15B参照)、他方の切欠1h(例えば、図15Aの右側の切欠1h)に第8導電性高分子膜4abの切欠4hを挿入して組み合わせて(図15C参照)、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとが互いに接触しないように保持し(図15D参照)、電圧制御回路を内蔵した電源回路54は、スイッチ52を介して、一方の電極を第7導電性高分子膜2abに、片方の電極を第8導電性高分子膜4abにそれぞれ接続して構成している。絶縁性の三角柱形状の構造体1cで、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとが互いに接近する図15Dの上下の部分で、互いに接触するのを確実に防止できるようにしている。
また、これとは別に、第5実施形態の変形例にかかる第6リンク部材1tとして、図15E及び図15Fに示すように、第4リンク部材1rにさらに第5リンク部材(固定リンク部材)1sを組み合わせて、2個のリンク部材で構成することもできる。この場合は、絶縁性の第5リンク部材1sを、長さの異なる2個の三角柱形状の構造体1kを一方の端部で互いに連結しかつ他方の端部から切り込まれた切欠1jを有して大略U字状に構成している。このような第5リンク部材1sの切欠1jを、図15Dの状態で第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとが接触する可能性のある部分に挿入して、絶縁性の三角柱形状の構造体1kで、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとが接触するのを確実に防止できるようにしている。このようにすれば、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとが、2個の絶縁性の三角柱形状の構造体1cと2個の絶縁性の三角柱形状の構造体1kとで、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとが交差する部分で、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとが接触するのを確実に防止することができる。
この第5実施形態では、リンク部材を、1個の絶縁リンク部材1rのみ(図15A〜図15D)で構成するか、又は、第5実施形態の変形例として、絶縁性の第4リンク部材1r及び第5リンク部材(固定リンク部材)1s(図15E及び図15F)との2個のリンク部材で構成するようにしている。
絶縁性の第4及び第5リンク部材1r,1sのそれぞれは、テフロン(登録商標)又はチーク材等からなる固体の部品である。第4リンク部材1rと第5リンク部材1sは共に、前述したように、概略三角柱の形状をした2つの部材1c,1kを、前者は中央付近で、後者は端部で互いに接続した形状をなしている。
図15A〜図15Dには、印加電圧の極性の異なる第7及び第8導電性高分子膜2ab,4ab間での絶縁性能の向上と、印加電圧の極性が同じ導電性高分子膜2a,2b及び4a,4b同士を一体化したことによる配線の簡易化を実現する例を示している。
第7及び第8導電性高分子膜2ab及び4abには、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとが交差する部分において、電気的なショートを避けるための切り欠き形状2h,4hがそれぞれ設けられている。図15Aにおいて、実線で切り欠いて示した部分が、この切り欠き形状である。
図15Bの中央の図のように、第4リンク部材1rを介して第7及び第8導電性高分子膜2ab及び4abが互いに交差するように接続される場合には、絶縁性の第4リンク部材1rの2つの切り欠き部分(凹部)1hを活用して、第7及び第8導電性高分子膜2abと4abを組み合わせるようにしている。 ここで、絶縁の第4リンク部材1rは、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとそれぞれ接触する部分(例えば、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとが交差する部分、そして、絶縁性の第4リンク部材1rと第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとがそれぞれ接触している部分の端部に位置して、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとのそれぞれの曲がりが直線的に移行する部分)は、曲面形状をなしている。すなわち、各三角柱形状の構造体1cの角部は、全て湾曲した、なだらかな形状となっており、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとの伸縮時の応力による第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとへの屈曲部分での集中応力を回避して、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abの切断等のトラブルを回避できる構成としている。
次に、図15Dを用いて、配線を簡易できることを説明する。前述の図3Aに示した場合と比較して、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとの2つの端部に両極を接続するだけで、配線が構築できる。よって、アクチュエータとしての製造工数の大幅な削減が可能である。なお、図15Dにおいては、配線図の明確化のために、固定枠等の部材は省略して図示している。
また、第5実施形態の変形例によれば、第5リンク部材1sにより、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとを固定する点が増えることにより、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとの位置ずれを防止することができる。特に、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとが緩んだ際にも、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとが交差する部分が互いに分離することがないように、第4リンク部材1rに対して第5リンク部材1sを取り付けることにより、第5リンク部材1sが、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとを第4リンク部材1rに対して押さえつける役割(固定させる機能)を果たすことができる。
図15E及び図15Fにおいては、上記したように、絶縁性の第4リンク部材1rに加えて、固定リンク部材としての第5リンク部材1sを備えており、絶縁性の第4リンク部材1rと第7及び第8導電性高分子膜2ab及び4abを外側から固定するようにした構成が示されている。元来、この第5実施形態にかかるアクチュエータでは、第7及び第8導電性高分子膜2ab及び4abは、第7導電性高分子膜2abを構成する第1導電性高分子膜2aと第2導電性高分子膜2bが、また、第8導電性高分子膜4abを構成する第4導電性高分子膜4aと第3導電性高分子膜4bとに対して、図2Aで示した固定枠3a、5aにより、テンションが常に作用した状態で維持されている。しかし、アクチュエータに外力又は振動が加わった際には、いずれかの又は全ての導電性高分子膜2ab,4abのテンションが緩む場合も想定される。このような場合に、第5リンク部材1sを配置しておれば、第5リンク部材1sにより、第7及び第8導電性高分子膜2ab及び4abが絶縁性の第4リンク部材1rから離脱しないように、第7及び第8導電性高分子膜2ab及び4abを確実に保持することができる。
ここで、図15H及び図15Iにおいて、第7及び第8導電性高分子膜2ab及び4abと絶縁性第4リンク部材1rに関する寸法的な構成について説明する。第7及び第8導電性高分子膜2ab及び4abに関して、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abとは対称に配置されている場合を想定し、図15Hには、代表例として第7導電性高分子膜2abのみを記載している。第7及び第8導電性高分子膜2ab及び4abが交差するときに互いに絶縁すること、つまり、第7及び第8導電性高分子膜2abと4abとの接触を回避することが重要であり、そのためには、第7及び第8導電性高分子膜2abと4abにそれぞれ切欠2h,4hが必要で、各切欠2h,4hの幅はΔW、各奥行きは第7及び第8導電性高分子膜2ab,4abの幅方向の中心位置からΔHだけ中心軸を超えて、各々設けている。また、絶縁性の第4リンク部材1rにおいては、第7及び第8導電性高分子膜2abと4abとの接触を回避すべく、2つの三角柱形状の構造体1cの連結部分にΔAのギャップを設けた、くびれ部分1eを有する。第7及び第8導電性高分子膜2ab,4abにおいて、ΔW/2は、通常の工業製造物の寸法誤差を考慮して、200μm以上が必要である。一例として、ΔWを0.5mmとして試作したところ、絶縁性能には問題が無かった。一方、絶縁性の第4リンク部材1rでは、くびれ部分1eの幅ΔAは、強度的な観点から、1mm以上が望ましい。上記試作でも1mmで作製したが、第7及び第8導電性高分子膜2abと4abとの伸縮による応力では、第7及び第8導電性高分子膜2abと4abとが破壊したりする問題は発生しなかった。そして、第7及び第8導電性高分子膜2abと4abとにおける、ΔHは、上述のΔAに依存して寸法が決定され、ΔH=ΔA/2+200μmが望ましい。ΔHは700μmで試作しても、第7及び第8導電性高分子膜2abと4abの動き、又は、面の対向が不十分になることは少なく、たとえ不十分となっても、電解質托体層内のイオンの移動には影響が小さいことが予想される。ここで、ΔHが例え700μmであっても、第7及び第8導電性高分子膜2abと4abの両方が700μm分ずつだけ位置がずれた場合には、計1400μmだけ対向する面が減少することになる。電解質托体層の厚みは30〜50μmで、第7及び第8導電性高分子膜2abと4abの幅は5mmであるため、28%程度の面が対向しない計算になる。しかしながら、実際には、以下の2つの理由で、第7及び第8導電性高分子膜2abと4abの動きに影響が無いと予想される。すなわち、1つ目の理由としては、第7及び第8導電性高分子膜2abと4abは、共に、固定枠で両端が固定されており、固定枠自体が面で対向する位置にて動作可能な構成としており、実際に導電性高分子膜に駆動時に応力が掛かった際に、リンク部材でのΔHのずれは自動的に修正され、面で対向する位置に修復されたものと考えられる。2つ目の理由としては、電解質托体層が第7及び第8導電性高分子膜2abと4abの全面に接触しており、対面していない部分が残っていたとしても、その電解質托体層内のイオンにも電圧が印加されてイオンが移動し、第7及び第8導電性高分子膜2abと4abの動きに対する影響が非常に小さくなるためと予想される。
なお、図15A〜図15Fにおいて、第7及び第8導電性高分子膜2ab及び4abは、X字形状に、両端部が少し離れたように図示されているが、これは、組立又は配線を明示するためのもので、固定枠3a、5aにより完成した時点では、第7及び第8導電性高分子膜2ab及び4abは電解質托体層6を挟んで、概略平行な位置となる。すなわち、一例して、図15Gに示した通りである。
なお、固定枠3a、5aに設定するように組み立てた様子を図15Jに示すと同時に、図15Jには、絶縁体のリンク部材連結部材10aも図示している。絶縁性の第5リンク部材1sに係合凹部1uを設け、リンク部材連結部材10aには、係合凹部1uが係合する係合凸部10uを両端部に設けている。図6Aと同様に、後述の図15Lのように、隣接するアクチュエータにおいて、リンク部材連結部材10aの一方の端部の係合凸部10uを一方のアクチュエータの第5リンク部材1sの係合凹部1uに係合するとともに、リンク部材連結部材10aの他方の端部の係合凸部10uを他方のアクチュエータの第5リンク部材1sの係合凹部1uに係合するように構成する。この結果、リンク部材連結部材10aにより、隣接するアクチュエータにおいて、所定間隔をあけて、互いに連結配置することが可能となっている。このように、リンク部材連結部材10aは、先のリンク部材連結部材10と同様に、隣接する導電性高分子膜同士の接触を防止する機能を有している。
これらのリンク部材連結部材10aにおいて工夫した技術的なポイントは、
(1)本来、交差して接触回避が困難な第7及び第8導電性高分子膜2ab,4abにおける絶縁機能と固定機能との両方を、第4リンク部材1r、又は、第4リンク部材1r及び第5リンク部材1sのような簡単な部材で実現できること、
(2)絶縁性の第4リンク部材1rとリンク部材連結部材10aとの接続も容易に可能な形状であること、
(3)第7及び第8導電性高分子膜2ab及び4abの切欠2h,4hは、例えばプレス加工又はレーザー加工で簡単に加工成形できること、
(4)絶縁性の第4リンク部材1rには、電解質托体層6、7を形成しているゲル状のイオン液体に対して耐腐食性の機能を有する材料として、テフロン(登録商標)等を選定すること、
が重要である。
なお、図15K、図15L、図15Mについては、上記の構成及びその構成における動作を示しており、先の実施形態における図3A,図3B,図3Cと同様な断面図である。すなわち、図15Kは、本発明にかかる第5実施形態の変形例にかかる平板積層型導電性高分子アクチュエータとその導電性高分子アクチュエータへ電圧を印加する一例を示した配線図である。図15Lは、図15Kの導電性高分子アクチュエータにおいて、スイッチ52をオンした際の電圧と変位の方向を示した図である。図15Mは、図15Kの導電性高分子アクチュエータにおいて、図15Lの電圧の印加方向とは逆方向に電圧を印加した場合の図である。電圧制御回路を内蔵した電源回路54は、スイッチ52を介して、一方の電極を導電性高分子膜2abに、片方の電極を導電性高分子膜4abにそれぞれ接続している。
以上のように本第5実施形態により、印加電圧の極性の異なる導電性高分子膜2ab,4ab間での絶縁性能の向上と、印加電圧の極性が同じ導電性高分子膜同士を一体化したことによる配線の簡易化を実現、リンク部材1r,1sにおける接続時の屈曲部分での集中応力を回避して、第7導電性高分子膜2abと第8導電性高分子膜4abの切断等のトラブルを回避できる構成としている点が特徴である。
なお、第4リンク部材1rの三角柱形状の構造体1c及び第5リンク部材1sの三角柱形状の構造体1kは、それぞれ、三角柱の形状で構成されているが、これに限られるものではなく、同様な絶縁性機能を有するものならば、任意の形状でもよい。
(応用例)
また、本発明の上記平板積層型導電性高分子アクチュエータ(アクチュエータ装置)をロボットハンド100のアクチュエータに適用することができる。
図12Aは、特許第3723818号における図3Aを引用したロボットハンド90の斜視図である。駆動源となるアクチュエータ3−1,3−2,3−3が記載されているが、これらのアクチュエータ3−1,3−2,3−3の部品として、本発明の上記平板積層型導電性高分子アクチュエータ(アクチュエータ装置)の一例として、前述の図6Aから図6Dで示したような構成、特に図6Dの組み合わせを基本的な構成として使用することにより、導電性高分子膜の単膜では実現が困難な、大きな応力を提供することが、省スペース状態で、実現可能である。
具体的には、図12B及び図12Cに示した平面型多関節駆動機構のようにアクチュエータ(本発明の上記平板積層型導電性高分子アクチュエータ(アクチュエータ装置))3−1,3−2が伸縮することにより、ロボットハンド90の指100を曲げたり伸ばしたり可能となる。この構成において、後述するように平板積層型導電性高分子アクチュエータ3−1,3−2として応力又は変位量の増加が必要である。が、さらにここでは、複数の骨材1、例えば、3個の長方形板状の骨材1−1,1−2,1−3と、1つの長尺な長方形板状の連結部材2を有しており、その厚さ方向のトルクにより、指100を屈曲させている。
より詳細な説明として、図12Dに示したように、図12B及び図12Cの平面型多関節駆動機構をモデル化して実寸を記入している。この図12Dのモデルにおいて、実際の設計数値の一例について説明する。このロボットハンド90により、軽重量物として1kgfの物体を把持するとする、と仮定する。この際に必要な把持力は、ロボットハンド90の指100の表面(カバー)90aの素材にも依存するが、約200grと想定する。その結果、指100の先端部分に作用する荷重と指100の支点との間の距離が50mmであるのに対して、指100の厚み方向の支点間の距離が2.5mmである。このことから、平面型多関節駆動機構における変位拡大率は、(50mm/2.5mm)=20倍とみなせる。よって、応力は20分の1になるため、把持力200gfを出力するには、アクチュエータ3−2からは、4kgfの応力が必要となる。逆に、把持するための必要変位量を1関節当たり10mm程度と仮定し、アクチュエータ3−2の変位量は20分の1の0.5mmだけでよい。
一方、平板積層型導電性高分子アクチュエータとしては、一例として、図6Dの構成を用いることができる。ただし、把持に必要な応力と変位量のために、図6Dにおいては図2Dの平板積層型導電性高分子アクチュエータを3個使用して図4Aのような構成(図4Aでは図2Dの平板積層型導電性高分子アクチュエータを4個使用している図であるが、その図から、図2Dの平板積層型導電性高分子アクチュエータを1個だけ取り去った構成)とし、その図4Aのような構成を3組、使用して図6Dの構成にすることで、変位量を6倍にするとともに応力を3倍にしている。これに対して、図12Dにおいては、図2Dの平板積層型導電性高分子アクチュエータを5個使用して図4Aのような構成(図4Aでは図2Dの平板積層型導電性高分子アクチュエータを4個使用している図であるが、その図に、さらに図2Dの平板積層型導電性高分子アクチュエータを1個追加した構成)とし、その図4Aのような構成を100組、使用して図6Dの構成にすることで、変位量は10倍の0.5mm、応力は100倍の4kgrに設計することができる。なお、ここで、一例として、導電性高分子膜の応力としては、導電性高分子膜の幅が5mmのときに約20grが得られるとする。よって、今回の図12Aの構成では、導電性高分子膜の幅が2倍の10mmを使用すると、その応力は約40grとし、さらに電圧印加時の導電性高分子膜の発生変位は約0.2%とし、図2Dの構成において、導電性高分子膜の長さが25mmの場合には、導電性高分子膜の変位量δは約50μmとなり、つまり、図2Dの平板積層型導電性高分子アクチュエータが一組で、その変位量としては2δの0.1mm(=2×50μm)が得られることになる。
以上の一例において、使用される平板積層型導電性高分子アクチュエータの概略寸法は、幅は10mm、長さは約50mm強であるが、厚さは10mm程度となる。人の手の指のサイズと比べて、少し長い指になるが、太さは等しいサイズで実現できることが分かる。
さらに、図12Aの構成において、指100は2本が対向して合計4本の指100の構成としているが、これに限られずに、人間の手の指のように、親指と概略対向して4本の指が並んでおり、親指としては、変位は小さいが応力が必要となり、親指と概略対向する残りの4本としては、変位量は大きい場合が考えられる。このような構成では、親指に応力重視の平板積層型導電性高分子アクチュエータを使用し、他の4本の指は、応力は4分の一で良いので変位量を4倍にして、手として全体をバランスさせることも考えられる。その場合にも、親指に概略対向する他の4本すべてが必ずしも同時に動作する必要性もなく、電圧制御により、人差し指から小指に向けて順に電圧を印加することも可能である。さらに、各々の指においても関節があり、根元から順に先端を変位させることなども容易に実現可能である。
なお、親指等で指の幅に余裕があり、かつ非常に大きな応力が必要な場合には、平板積層型導電性高分子アクチュエータを、単純に導電性高分子膜の幅の方向に並列に設置することで、応力は設置数に応じ比例して増大できることは言うまでもない。
また、前述の特性に加えて、静音、軽量、省電力であることから、ウェアラブル機器に必要なアクチュエータとしても有用であり、例えば、図13Aに示したような遠近可変メガネ、又は、デジタルカメラ等のシャッター又はレンズの駆動メカ機構としても好適なものである。図13Aには、示すように、特開平6−3630号公報における図9を引用したものであるが、この公報に開示の発明の場合には、新しい遠近両用の老眼鏡として、いわゆる遠近焦点可変メガネについて開示されている。このような構成では、眼鏡枠210及び固定レンズ211に対して、焦点可変のための可動レンズ209の移動は、手動(手でノブ215をスライド操作すること)が前提である。
これに対して、本発明では、レンズを移動させるために本発明の上記平板積層型導電性高分子アクチュエータ(アクチュエータ装置)を用いることができる。例えば、図13Bに示したように、左右両側のメガネフレーム部分(テンプル)80a,80bに設けたコントローラ17a,17b内に、上記平板積層型導電性高分子アクチュエータ(アクチュエータ装置)とその制御回路、小型バッテリィ、及びタッチスイッチを備える。コントローラ17a,17bの各々から導出しているレンズ駆動ロッド18a,18bは、その基端が上記平板積層型導電性高分子アクチュエータ(アクチュエータ装置)に連結され、先端が左右両側のメガネフレームのリム82a,82bにそれぞれスライド可能に支持された可動レンズ81a,81b(例えば、図13Aの可動レンズ209に相当。)に連結されている。左右両側のメガネフレームのリム82a,82bには、固定レンズ83a,83b(例えば、図13Aの固定レンズ211に相当。)が固定されている。左右両側のメガネフレームのリム82a,82b及び固定レンズ83a,83bに対して、可動レンズ81a,81bは、それぞれ、光軸方向沿いに移動可能に支持されている(例えば、図13Aのようにスライド可能な構造で支持されている)。このような構造によって、左右のコントローラ17a,17bのタッチスイッチをそれぞれオンすることにより、小型バッテリィから制御回路を介して上記平板積層型導電性高分子アクチュエータ(アクチュエータ装置)に電位が印加されて、レンズ駆動ロッド18a,18bが出入りし、所定の焦点位置にスムーズにレンズ81a,81bをそれぞれ移動させることが可能となり、遠近自動焦点メガネを実現できるのである。この場合にも、導電性高分子膜の単膜では実現が困難な、収縮方向及び伸長方向の双方向において、大きな変位量を出すことができ、剛性及び駆動力を有するアクチュエータ(アクチュエータ装置)が実現可能である。この部品として本発明の平板積層型導電性高分子アクチュエータ(アクチュエータ装置)として、特に前述の図4Aから図4Cで示したような構成で使用することで、導電性高分子膜の単膜では実現が困難な、大きな変位量を提供することが省スペースで実現可能である。
ここで、凹レンズと凸レンズの組み合わせによる、遠近焦点可変の原理について述べる。一般的に、焦点距離f1とf2のレンズの組み合わせによる合成焦点距離Fは、レンズ間の距離Δを用いて、次式により求まる。1/F=1/f1+1/f2+Δ/(f1・f2)。そこで、同じ焦点距離fの凸レンズ(+f)と凹レンズ(−f)の合成焦点距離Fは、次式により求まる。1/F=1/f−1/f+Δ/(f・f)。つまり、F=f2/Δ。凸レンズと凹レンズが重なった状態、すなわち、Δ=0の場合には、合成焦点距離Fは無限となり、裸眼の状況となる。そして、徐々に、連続的にレンズ間の距離Δを大きくしていくことにより、ズームレンズとして機能して、距離Δを制御することにより、必要なズーミング設定が可能である。上式から、大きな焦点距離fの凹凸レンズのみの組み合わせにより、小さな距離Δによって、大きな可変焦点Fが得られることが分かる。特に、可変できる焦点Fが、レンズ間の距離Δの一次関数である点が有用で、焦点可変がリニアとなるため制御が簡素化できる。
具体的には、図13Cには、市販品でも入手可能なレンズ仕様の一例を載せている。それぞれの片面が平面である凸レンズLAと凹レンズLBが共に同じ焦点距離50mmを有しており、かつ、外径と曲率半径もそれぞれ同じものを選択している。その結果、凸レンズLAの曲率を有する面(図13Cの左側の曲面)と凹レンズLBの曲率を有する面(図13Cの右側の曲面)とを重ね合わせると、凸レンズLAと凹レンズLAの外側両面が平面のガラス円筒状になり、屈折歪もなく、裸眼と同じ状況を作ることができる。ただし、凹レンズLBと凸レンズLAの厚みは、各々、6.66mmと2.34mmであるため、その際の円筒の厚みは9mmとなる。ここで、合成焦点距離Fを、老眼鏡として度数で2程度まで可変するものを製作するため、凹レンズLBと凸レンズLAsの間の距離Δは、上式から5mmとなる。度数は、焦点距離の逆数である。その結果、図13Cの凹レンズLBと凸レンズLAを使用する場合には、図13Bにおいてコントローラ17a,17bから導出しているレンズ駆動ロッド18a,18bの変位量は、5mm必要となる。また、凹レンズLBと凸レンズLAを保持するための応力としては、ガラスレンズの場合で2枚で15gr程度となる。なお、プラスチックレンズ、或いは、フレネルレンズを使用する場合には、必要応力は、15grより小さくて良い。
前述のロボットハンドの場合と異なり、平板積層型導電性高分子アクチュエータの設計としては、図2Dの平板積層型導電性高分子アクチュエータとして、幅5mmの導電性高分子膜を用いて、応力としては20grが得られるので、レンズの重さに対しては十分な応力である。また、前述のように、図2Dの構成において、導電性高分子膜の長さが25mmの場合には、導電性高分子膜の変位量δは約50μmとなり、つまり、固定枠3a,5aの長手方向が約50mm相当の図2Dの平板積層型導電性高分子アクチュエータが一組で、変位量は2δの0.1mm(=2×50μm)である。そこで、図13Bの遠近自動焦点メガネを度数2まで可変に実現するには、前述のように変位量として5mm必要なため、図2Dの平板積層型導電性高分子アクチュエータを図4Aの組み合わせとして50組が必要である。従って、積層方向の厚さは、約5mmとなる。また、平板積層型導電性高分子アクチュエータのみの重さも約2gr以下となり、その他の制御回路、小型バッテリィ、及びタッチスイッチを含めても、レンズフレーム部分(テンプル)に設置しても気にならない大きさと重さである。必要に応じて、小型バッテリィ、或いは、制御回路まで含めて、メガネフレーム部分(テンプル)から分離して胸ポケット等への携帯型にすることも可能である。
特に、従来の小型のアクチュエータとして圧電素子又はステッピングモータと比して、本発明の上記平板積層型導電性高分子アクチュエータは、静音化が図れるのも大きな特徴である。メガネフレームのように最も聴覚又は触覚として敏感な位置にて使用する家電機器としては、静音化は重要なメリットと言える。
また、この図13Bの上記実施形態では、左右のレンズを個別に制御を行っているが、これは実際の老眼のニーズとして左右の必要度数が異なるケースが多いことに起因している。
また、上述の説明では、度数はゼロから2に可変する場合に、変位量が5mmとなることを示したが、焦点可変がレンズ間の距離Δに対してリニアとなるため、例えば、度数を1だけ変化するのみの場合には、変位量は5mmの半分の2.5mmでよい点も特徴的である。導電性高分子膜の変位量は、電圧に対してノンリニアであり、ヒステリシスを有するのであるが、レンズ駆動ロッド18a,18bにおける変位量はリニアで良い点が、制御全体を簡素化するのに貢献している。なお、老眼鏡として、度数は3〜4程度までが必要限界であり、40歳半ばから50歳代での多くのユーザでは、遠中近(遠距離用、中距離用、近距離用)として度数はゼロ、1、2と言った3段階あれば有用なケースが多い。勿論、度数が3以上の場合にも、レンズの焦点距離をより短いものを選択する、或いは、レンズ駆動ロッド18a,18bの変位量を大きくすることで、対応可能である。
また、特開平6−3630号公報の場合には手動であったが、本発明のように電気制御することが可能となるので、メガネフレームに距離センサを搭載して、ユーザが見ている対象の置かれた距離を距離センサで自動的に測定し、距離センサで測定された情報を基にコントローラ17a,17bでレンズ駆動ロッド18a,18bを駆動制御して、メガネの度数も自動的に可変することも有益であり、実現可能である。ただし、この際には、可動レンズを可変する速度が大き過ぎたり、逆に、可動レンズを可変する速度が小さ過ぎると、不快感につながるので、適切な変位量への可変速度を制御する必要がある。
なお、前述の図12Aのロボットハンドの場合には把持する方向に応力が必要で、逆の方向には大きな応力は特には必要ではなかったが、図13Bの遠近自動焦点メガネの場合には、変位の双方向にて応力は必要である点でも、本発明に係る平板積層型導電性高分子アクチュエータの効果があることは特筆すべきである。
今後、ウェアラブル機器の場合には、静音、軽量、省電力が最重要なファクタであるため、従来の圧電素子又は空圧のアクチュエータでは困難であったが、ウェアラブル機器は、本発明のアクチュエータ(アクチュエータ装置)の最適な利用対象である。
将来的には、ロボットハンド又は遠近自動焦点メガネが家庭用品として大きく普及すると予想され、その際に柔らかい機器であることも重要なファクタである。導電性高分子膜自身が有する弾性体としての特性により、ロボットハンドの人との衝突、又は、遠近自動焦点メガネのレンズへの衝撃を吸収することも大切である。その観点からも、家電機器のアクチュエータとしても本発明は最適な利用対象である。
また、一例として、図2Aのリンク部材1では、第1リンク部材と第2リンク部材とが同一部材で一体に構成された1つのリンク部材として説明したが、上記第1リンク部材と上記第2リンク部材は、同一部材ではなく、異なる部材でそれぞれ構成しかつ互いに連結されて1つの部材となるように構成してもよい。
なお、以上の説明では、特許文献1に開示された導電性高分子を用いたアクチュエータの動作原理に従い、導電性高分子膜に陰イオンが挿入されて伸長し、逆に陰イオンが離脱して収縮することを前提にしているが、導電性高分子膜の種類又はイオン液体の種類又は組み合わせによっては、陰イオンではなく陽イオンにより同様な現象が発生することがある。この場合も、本発明により、同様な効果が得られる。
なお、分子構造レベルでの構成も、同様に可能である。印刷と類似したプロセスにより、平板積層型導電性高分子膜の形成は容易である。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形又は修正は明白である。そのような変形又は修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
(本発明と先行文献との差異)
図14A〜図14Eに、特開平3−243174号公報及び特開昭63−289975号公報の開示されている構成を示す。図14F及び図14Gには、本発明の第1実施形態にかかる平板積層型導電性高分子アクチュエータに、先行文献における構成を適応した一例として断面図を示している。
以下、特開平3−243174号公報及び特開昭63−289975号公報に開示された構成を説明すると共に、本発明との差異、及び本発明の効果を述べる。
図14A及び図14Bに、特開平3−243174号公報に開示された構成を示す。図14A及び図14Bでは、伸長板291と収縮板292とが交互に配置されている。伸長板291は、Tb,Dy,Ho,Er,Tm等の希土類と、Fe,Co等の磁性体との合金、すなわち磁気の発生に従い伸長する超磁歪合金でそれぞれ構成されており、ソレノイド293が通電されたとき、伸長板291は長さ方向に生じる磁場により伸長される。収縮板292は、磁気の発生に従い収縮するSmとFeの合金やNi等の超磁歪合金でそれぞれ構成されており、ソレノイド293が通電されたとき、収縮板292は長さ方向に生じる磁場により収縮される。以下、その作用について、説明する。
伸長板291が伸長し、伸長板291の上端位置が上昇する。その上昇に伴い、上方に移動した収縮板292が収縮する。これにより、収縮板292の下端位置が、伸長板291の伸長量と収縮板292の収縮量と加算した量だけ上昇する。よって、交互に配置された伸長板291と収縮板292とが、伸長と収縮することにより、全体的に上昇していく。なお、この場合に、伸長板291と収縮板292のそれぞれは平板状の部材である。
図14C〜図14Eには、特開昭63−289975号公報に開示された構成を示す。環状の接合部材325a,325b,325c,325d,325e,325fにより接続された、直径が異なる管状の固体素子(圧電積層体)302a,302b,302c,302d,302e,302fは、個々の固体素子302a,302b,302c,302d,302e,302fの伸縮を積算して拡大することができ、弁のハウジング303と管状の弁体304間の変位量として外部への応力となる。この固体素子302a,302b,302c,302d,302e,302fの特徴は、断面平面が図14Dに示すように円環形状をしていることである。
次に、図14F及び図14Gには、本発明の図4A及び図4Bに示した構成にやや類似した構成であって、特開平3−243174号公報及び特開昭63−289975号公報に開示された構成に基づき容易に想到できる構成、及び、その構成による動作について、仮想的に考察した図である。具体的には、本発明の図4A及び図4Bに示した構成の、リンク部材1が配置されている位置よりも、一方向、例えば、図4Aの下側の構成のみを抽出して構成したアクチュエータの断面図を図14F及び図14Gに示している。図14F及び図14Gにおいて、101は連結部材、102bと104aは導電性高分子膜、106及び107は電解質托体層、108は連結部材である。
本発明で対象としている導電性高分子膜は、その収縮する方向には膜のテンションで応力を出すことができる。しかしながら、一般に、導電性高分子膜は、伸長した場合に、容易に座屈してしまう性質がある。図14Gに、その様子を図示している。収縮する導電性高分子膜104aは引っ張り応力を発揮することができるが、逆に、伸長しようとする導電性高分子膜102bの押圧力を利用しようとすると、導電性高分子膜102bが座屈してしまうことになる。したがって、図14Fの構成では、導電性高分子膜104a,102bを積層しているにも係わらず、アクチュエータ全体の変位量を拡大する効果は全く得られないことになる。
なお、図14C〜図14Eに示した特開昭63−289975号公報では、固体素子302a,302b,302c,302d,302e,302fは管状の部材のため、座屈には比較的強い特性がある。同様に、管状の導電性高分子膜と置き換えたとしても、座屈を抑制する効果は少し期待できるが、実用的ではない。具体的には、円環状であるため、積層数に直径上の制限がある。つまり、座屈を抑制するためには、アクチュエータが大きくなってしまうために、実用的ではない。また、対面する導電性高分子膜の面積が半径方向で異なるため、制御する上でも課題が多い。
本発明者らは、特開平3−243174号公報及び特開昭63−289975号公報では開示されていない、伸長及び収縮する材料に導電性高分子膜を用いた場合に、発生する課題の、伸長した導電性高分子膜が座屈するということを見出した。そして、ホ発明の上記第1〜5の実施形態に示すように、リンク部材と固定枠とを用いた構成とすることによって、導電性高分子膜を利用したアクチュエータの変位を確実に拡大、又は、応力を確実に拡大することができる。