JP4499013B2 - 木質系繊維成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
従来、車両や建物、家具等の部材として用いられる木質系繊維成形体は、木質系繊維がフェノール樹脂やポリオレフィン系樹脂等のバインダーで結合されている成形体が用いられてきた。しかし、天然素材である木質系繊維は生分解性であるが、フェノール樹脂やポリオレフィン系樹脂等のバインダー樹脂が難分解性であるため、これらによって作製された木質系繊維成形体の生分解性は充分といえるものではなかった。そこで、これらの難分解性のバインダー樹脂に替えて、ポリ乳酸樹脂等の生分解性樹脂を使用する試みがなされており、例えば、特許文献1には、ケナフ繊維にバインダーとしてポリ乳酸樹脂の水分散体を付与し、得られた成形前材料を加熱圧縮して成形体を得る方法が開示されている。バインダー樹脂としてポリ乳酸等の生分解性樹脂を使用することにより、木質系繊維成形体の生分解性は著しく向上し、埋め立てやコンポスト化(堆肥化)によって分解処理することが可能となり、廃棄時の環境負荷の低減を図ることができる。
そこで本発明は、木質系繊維がポリ乳酸系脂肪族ポリエステルで結合された成形体の製造に関し、強度が高く、耐湿性に優れた木質系繊維成形体を得ることができる木質系繊維成形体の製造方法を提供することを目的とする。
第1の発明によれば、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステルの両方になじみのよい相溶性共重合体をマット体に付与して成形前材料を作成し、成形工程においてポリ乳酸系脂肪族ポリエステルが軟化状態または溶融状態となる温度で、成形前材料を加熱しながら加圧することにより、相溶性共重合体が、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステルとの間で双方に対してより強く結合し、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステルの結合強度を良好に増大させることができる。その結果、木質系繊維が均一かつ強力に結合し、強度が高く、耐湿性に優れた木質系繊維成形体を得ることができる。
また、第1の発明によれば、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステル繊維とからなるマット体を作成してから相溶性共重合体を付与するために、相溶性共重合体をマット体の内部に均一に浸透させることができる。そのため、相溶性共重合体を木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステル繊維に対して良好に接触させることができる。その結果、木質系繊維が均一かつ強力に結合し、強度が高く、耐湿性に優れた木質系繊維成形体を得ることができる。
第2の発明によれば、例えば、成形前材料を圧縮して体積の小さい形状に予備成形することにより、成形前材料の輸送、保管時の取り扱いを容易にし、より小さいスペースでたくさんの成形前材料を輸送、保管することができる。したがって、製造効率等の便宜を考慮して予備成形体を保管しておくことができるため、強度が高く、耐湿性に優れた木質系繊維成形体をより効率よく製造することができる。
第3の発明によれば、相溶性共重合体は、第1の重合性単量体に由来する親水基によって木質系繊維となじみ、第2の重合性単量体に由来するエポキシ基によってポリ乳酸系脂肪族ポリエステルとなじむ。したがって、成形工程において加熱されることにより、相溶性共重合体が木質系繊維と乳酸系脂肪族ポリエステルとの両者に良好に結合し、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステル間の結合強度を向上させる。また、同時に、相溶性共重合体がポリ乳酸系脂肪族ポリエステルに結合することにより、ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルの分子量が増大したり、三次元構造を形成したりする。そのため、成形体の強度が向上し、木質系繊維同士の結合強度を良好に増大させることができる。その結果、強度が高く、耐湿性に優れた木質系繊維成形体を得ることができる。
第4の発明によれば、第1の重合性単量体が親水基によって木質系繊維へ強く親和し、その結果、強度が高く、耐湿性に優れた木質系繊維成形体を得ることができる。
第5の発明によれば、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステルの両方に対する親和性が良好な重合性単量体を用いることにより、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステルの結合強度を向上させることができる。その結果、より強度が高く、耐湿性に優れた木質系繊維成形体を得ることができる。
第6の発明によれば、成形工程で、水分を含む木質系繊維を加熱および加圧することにより水分が蒸発し、木質系繊維の主成分であるセルロースの結晶化が進行し、木質系繊維の強度を向上させるとともに、水分を吸収しにくくすることができる。その結果、より強度が高く、より耐湿性に優れた木質系繊維成形体を得ることができる。
ケナフ由来の繊維は、セルロース含有量が高く、長繊維で強度が高いのが特徴である。したがって、第7の発明によれば、より強度が高く、耐湿性に優れた木質系繊維成形体が得られる。
ポリ乳酸は、原料である乳酸を植物から採取することができ、植物が地球温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収するので、環境にやさしい材料である。したがって、第8の発明によれば、強度が高く、耐湿性に優れるだけでなく、地球環境への負荷の少ない木質系繊維成形体を得ることができる。
木質系繊維は、木質系材料から採取することができる繊維質材料のことである。この木質系繊維は、例えば、木本類、草木類等の木質系材料を解繊処理することによって得ることができる。木質系材料の具体例としては、例えば、ケナフ、サイザル、ジュート、ラミー、バガス等が挙げられる。とりわけ、ケナフの靭皮より得られる木質系繊維は、繊維の骨格であり主成分であるセルロースの含有量が高く、長繊維で高強度である。したがって、ケナフの靭皮繊維を用いれば、強度の高い木質系繊維成形体を得ることができる。また、ケナフは1年性植物で成長が早く、短期間に大量栽培が可能であり、二酸化炭素の吸収能も高いため、環境保全の見地においても極めて好適な木質系材料である。
元来、木質系繊維は、主成分であるセルロースがたくさんの水酸基を有しており、極性が大きい、すなわち親水性の表面を有する。このため、木質系繊維は、同様に極性が大きい親水性の表面を有する材料との相性が良い。一方、ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルは、アルキル鎖とアルコキシカルボニル鎖を主たる構成基とするポリマーであり、親油性が大きい。このため、極性の大きい木質系繊維との相性、すなわちなじみは良好でなく、極性がより小さい表面を有する材料との相性が良い。
相溶性共重合体は、重合性二重結合を有する単量体の公知の重合方法を用いることができ、ラジカル重合反応または付加重合反応により作成することができるため、詳細な説明は省略する。
相溶性共重合体の分子量は特に限定されないが、5000以上100000以下が好ましく、より好ましくは10000〜30000である。分子量が5000未満の場合、ブリードし成形後の外観不良が起こりやすい。また、分子量が100000を超える場合、相溶化の作用が低下し曲げ物性が低下しやすい。また、分子量が10000〜30000である相溶性共重合体は、ブリードしにくく相溶性が良いため、より好ましい。
マット体作成工程では、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステル繊維とを混合してマット体を作成する。この「マット体」とは、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステル繊維とが混合してまとまったもの全般を指している。この「マット体」は、例えば、以下の方法によって作成することができる。
マット体の作成方法の一つ目の例は、まず、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステル繊維とを混合して積層体(ウェブ)を作成する。積層体を作成するためには、カード法、フリース法、エアーレイ法などの公知の積層化手法を用いることができる。つぎに、ニードルパンチングなどの公知の交絡手法を用いることによって、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステル繊維とを交絡させる。これにより、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステル繊維とが均一でかつ密度が高く交絡したマット体を作成することが可能である。
二つ目の例は、木質系繊維の解繊処理時等に、その木質系繊維に対してポリ乳酸系脂肪族ポリエステル繊維を少しずつ投入する。これにより、木質系繊維に対してポリ乳酸系脂肪族ポリエステル繊維を均一に混合することができる。次に、これらの繊維をニードルパンチング等によって交絡させたり、型に詰めてひとまとまりの形を保持しうるように圧縮することによって、マット体を作成することが可能である。
成形前材料作成工程では、マット体に対して相溶性共重合体を付与する。相溶性共重合体は、そのままの状態でマット体に付与しても良いが、水や有機溶媒に溶解あるいは分散させた状態で付与することが好ましい。相溶性共重合体が付与された後のマット体のことを、本明細書では「成形前材料」と称する。
相溶性共重合体は、マット体に付与するときの作業性等を考慮して、水あるいは有機溶媒に溶解あるいは分散させて、濃度、粘度等を適宜調整して使用することが可能である。
相溶性共重合体は、噴霧、浸漬、塗工など、いかなる方法でマット体に付与してもよいが、マット体に対して均一に付与するためには、相溶性共重合体をスプレーなどを用いて噴霧によって付与するのが好ましい。
すなわち、ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルに相溶性共重合体を均一に添加するための方法としては、例えば、ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルを繊維化する前の段階で、ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルに相溶性共重合体をあらかじめ添加しておく方法などが考えられる。しかし、この場合、ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルを繊維化するために加熱した段階で、ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルの分子量が増大して粘度が上昇し、紡糸の際に樹脂が細孔に詰まって糸が切れたり、紡糸速度が低下したりする等の不具合が生ずる場合があるという問題がある。そこで、本発明においては、ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルを繊維化し、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステル繊維とを混合してマット体を作成し、このマット体に対して相溶性共重合体を付与している。この方法によれば、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステル繊維との間隙に相溶性共重合体が保持されるために、相溶性共重合体が両繊維に対してまんべんなく接触する。その結果、成形工程において成形前材料を加熱した段階で、相溶性共重合体の作用によって、木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステルとの結合強度が高まるという効果が得られる。
成形工程では、上述の工程で得られた成形前材料を、ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルが軟化状態または溶融状態となる温度に加熱し、公知の方法で加圧成形する。加圧成形のためには、公知のプレス機等を用いることができる。これにより、ボード状などの所望の形状に成形された木質系繊維成形体を得ることができる。
本発明に係る木質系繊維成形体の製造方法では、成形前材料作成工程と成形工程との間に、予備成形工程を実施することもできる。この予備成形工程では、成形前材料をプレス機等を用いて加圧することによって、この成形前材料を圧縮する。これにより、成形前材料の体積(かさ)を減らすことができる。
予備成形工程を実施することによって、成形前材料の体積を減少させることができる。これにより、成形前材料の輸送や保管が容易になる。この場合、成形前材料を作成する工程までをある場所で実施し、成形前材料を加圧して成形する工程は別の場所で実施する、という製造工程の分担が可能になる。例えば、成形前材料を作成する工程までは海外で実施し、その成形前材料を船積みで輸入して、最終的に木質系繊維成形体を成形する工程は国内で実施する、という生産方式の実現が可能になる。これにより、木質系繊維成形体を高効率で大量に生産することが可能になる。
なお、予備成形工程では、成形前材料を加熱しながら加圧してもよい。この場合、予備成形時の加熱温度は、ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルが溶融する温度であることが好ましい。
(実施例1)
木質系繊維としてケナフの靭皮から採取した繊維を準備し、ポリ乳酸系ポリエステルとしてポリ乳酸(L体95%以上)を準備した。ポリ乳酸(L体95%以上)を公知の紡糸法によって繊維化し、ケナフ繊維:ポリ乳酸繊維が70:30の重量比になるように混合、積層し、マット体を作成した。
これとは別に、第1の重合性単量体をメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとし、第2の重合性単量体をグリシジル(メタ)アクリレートとする重合性共重合体(以下、共重合体Aという。)の1.5重量%の水溶液を調製した。
マット体に対してこの水溶液を、ポリ乳酸繊維に対する共重合体Aの割合が5.0重量%になるようにスプレーにて付与し、成形前材料を作成した。
作成した成形前材料を、プレス面を230℃に加熱したプレス型の間に挟み、圧力24kgf/cm2、内部温度210℃になるまで加熱しながら加圧し、厚さ2.5mmの予備成形体を作成した。
予備成形体を、230℃に加熱したオーブン内で170秒間加熱し、内部温度を210℃にまで上昇させて、この予備成形体をプレス型の間に挟み、圧力36kgf/cm2で60秒間圧縮し、木質系繊維成形体を作成した。
前記実施例1で使用したポリ乳酸(L体95%以上)を公知の紡糸法によって繊維化し、ケナフ繊維:ポリ乳酸繊維が70:30の重量比になるように混合、積層し、マット体を作成した。
これとは別に、共重合体Aを1.5重量%と、ポリイミド化合物である「カルボジライトE−04」(日清紡株式会社製)を0.3重量%含有する水溶液を調製した。
マット体に対してこの水溶液を、ポリ乳酸繊維に対する共重合体Aの割合が5.0重量%、ポリ乳酸繊維に対するカルボジライトE−04の割合が1.0重量%になるようにスプレーにて付与し、成形前材料を作成した。
作成した成形前材料を、プレス面を230℃に加熱したプレス型の間に挟み、圧力24kgf/cm2、内部温度210℃になるまで加熱しながら加圧し、厚さ2.5mmの予備成形体を作成した。
予備成形体を、230℃に加熱したオーブン内で170秒間加熱し、内部温度を210℃にまで上昇させて、この予備成形体をプレス型の間に挟み、圧力36kgf/cm2で60秒間圧縮し、木質系繊維成形体を作成した。
実施例1と同様の方法を用いて、木質系繊維成形体を作成した。
ただし、マット体に対して共重合体Aの水溶液を付与しないで作成した。また、ポリ乳酸繊維には、ポリイミド化合物である「カルボジライトHMV−8CA」(日清紡株式会社製)を1.0重量%添加したものを使用した。
比較例1と同様の方法を用いて、木質系繊維成形体を作成した。
ただし、マット体は、ケナフ繊維とポリ乳酸繊維を50:50の重量比で混合したものを使用した。
まず、作成した実施例1,2及び比較例1,2の各試料の板厚、曲げ強さおよび試料中のポリ乳酸樹脂の重量平均分子量を測定した。板厚、曲げ強さは、幅50mm、長さ150mmの長方形の試験片から測定した。曲げ強さは、試験片を、支点間距離L=100mmとなるように2つの支点で支持し、両支点の間の中心位置に速度50mm/分の荷重を加え、試験片が破断する直前の最大荷重Pを測定した。なお、2つの支点および荷重作用点の曲率半径は3.2mmとした。曲げ強さは、以下の式により算出した。
曲げ強さ(MPa)=3PL/2Wt2
ただし、P:最大荷重
L:支点間距離
W:試験片の幅(50mm)
t:試験片の厚み(2.3mm)
曲げ強度保持率(%)=(δ´/δ)×100
ただし、δ :暴露前の曲げ強度
δ´:暴露後の曲げ強度
板厚膨張率(%)=(T´−T)/T×100
ただし、T :暴露前の試験片の厚み
T´:暴露後の試験片の厚み
Claims (8)
- 木質系繊維成形体の製造方法であって、
木質系繊維とポリ乳酸系脂肪族ポリエステル繊維を混合してマット体を作成するマット体作成工程と、
前記マット体に相溶性共重合体を付与して成形前材料を作成する成形前材料作成工程と、
前記ポリ乳酸系脂肪族ポリエステル繊維が軟化状態または溶融状態となる温度で前記成形前材料を加熱し加圧して所定形状に成形する成形工程とを含むことを特徴とする木質系繊維成形体の製造方法。 - 前記成形前材料作成工程と前記成形工程の間に、前記成形前材料を予備成形する予備成形工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の木質系繊維成形体の製造方法。
- 前記相溶性共重合体は、第1の重合性単量体と第2の重合性単量体を重合して得られる共重合体を含み、
前記第1の重合性単量体は、重合性二重結合部分と親水基を有し、
前記第2の重合性単量体は、重合性二重結合部分とエポキシ基を有する、請求項1または請求項2に記載の木質系繊維成形体の製造方法。 - 前記第1の重合性単量体は親水基としてポリアルキレンオキシド鎖を有する、請求項3に記載の木質系繊維成形体の製造方法。
- 前記第1の重合性単量体をメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとし、前記第2の重合性単量体をグリシジル(メタ)アクリレートとする請求項3または請求項4に記載の木質系繊維成形体の製造方法。
- 前記成形前材料作成工程では、前記マット体に前記相溶性共重合体を水溶液の状態で付与する、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の木質系繊維成形体の製造方法。
- 前記木質系繊維がケナフ由来の繊維である、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の木質系繊維成形体の製造方法。
- 前記ポリ乳酸系脂肪族ポリエステル繊維が、ポリ乳酸からなる繊維である、請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の木質系繊維成形体の製造方法。
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