以下、本発明の一実施形態に係る電動機について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る電動機10は、図1〜図3に示すように、この電動機10の回転軸線を中心に回転可能に設けられた略円環状の内周側回転子11と、この内周側回転子11に対してその径方向外側に同軸の回転軸線を中心に回転可能に設けられ、しかも回転軸線方向の位置を合わせて設けられた略円環状の外周側回転子12と、内周側回転子11および外周側回転子12を回転させる回転磁界を発生する複数相の図1に示す固定子巻線13aを有する固定子13と、内周側回転子11および外周側回転子12に接続されるとともに非圧縮性流体である作動油(流体)の油圧(流体圧)で内周側回転子11と外周側回転子12との間の相対的な位相を変更する回動機構(回動手段)14と、回動機構14への油圧を制御する図示略の油圧制御装置とを備えたブラシレスDCモータである。この電動機10は、例えばハイブリッド車両や電動車両等の車両に駆動源として搭載されることになり、その際に、その出力軸(回動軸)16はトランスミッション(図示略)の入力軸に接続され、電動機10の駆動力がトランスミッションを介して車両の駆動輪(図示略)に伝達されるようになっている。
なお、車両の減速時に駆動輪側から電動機10に駆動力が伝達されると、電動機10は発電機として機能していわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギー(回生エネルギー)として回収する。さらに、例えばハイブリッド車両においては、この電動機10の回転軸線が内燃機関(図示略)のクランクシャフトに連結されており、内燃機関の出力が電動機10に伝達された場合にも電動機10は発電機として機能して発電エネルギーを発生する。
内周側回転子11は、その回転軸線が電動機10の回転軸線と同軸となるように配置されるもので、図3に示すように、略筒状の内周側ロータ鉄心21を有しており、この内周側ロータ鉄心21には、その外周側の部分に周方向に所定の等ピッチで複数の内周側磁石装着部23,…,23が設けられている。また、内周側ロータ鉄心21の外周面21A上には、周方向で隣り合う内周側磁石装着部23,23のすべての間位置に、回転軸線に平行に伸びる凹溝21aが半径方向に凹むように形成されている。この内周側ロータ鉄心21は、例えば焼結等により形成される。
各内周側磁石装着部23,…,23は、内周側ロータ鉄心21を回転軸線に平行に貫通する磁石装着孔23aをそれぞれ備えている。磁石装着孔23aは、回転軸線に平行な方向に対する断面が略長方形状に形成されており、その円周方向の中央位置と回転軸線とを結んだ半径線に対し直交する。各磁石装着孔23a,…,23aには回転軸線に平行に伸びる略板状の永久磁石11aがそれぞれ装着されている。
磁石装着孔23a,…,23aにそれぞれ装着される永久磁石11aは、すべて厚さ方向(つまり各回転子11,12の径方向)に同様に磁化されており、すべての内周側磁石装着部23,…,23において、周方向で隣り合う内周側磁石装着部23,23同士は、一方に装着される永久磁石11aおよび他方に装着される永久磁石11aが、互いに磁化方向が異方向となるように設定される。すなわち外周側がN極とされた永久磁石11aが装着された内周側磁石装着部23には、外周側がS極とされた永久磁石11aが装着された内周側磁石装着部23が、凹溝21aを介して周方向で隣接するようになっている。
以上により、内周側回転子11は、周方向に沿って配置された複数の永久磁石11a,…,11aを具備している。
外周側回転子12も、回転軸線が電動機10の回転軸線と同軸となるように配置されるもので、略円筒状の外周側ロータ鉄心22を有しており、この外周側ロータ鉄心22には、その内周側の部分に周方向に所定の等ピッチで、上記した内周側磁石装着部23,…,23と同数の外周側磁石装着部24,…,24が設けられている。また、外周側ロータ鉄心22の外周面22A側には、周方向で隣り合う外周側磁石装着部24,24のすべての間位置に、円周方向に隣り合う一対のフラックスバリア形成穴22a,22aが回転軸線に平行に貫通形成されている。さらに、外周側ロータ鉄心22の各対のフラックスバリア形成穴22a,22aの間位置、つまり外周側磁石装着部24,…,24の隣り合うもの同士の各間位置には、それぞれネジ穴22bが軸線方向に沿って貫通形成されている。この外周側ロータ鉄心22も、例えば焼結等により形成される。
各外周側磁石装着部24,…,24は、回転軸線に平行に貫通する磁石装着孔24aをそれぞれ備えている。磁石装着孔24aは回転軸線に平行な方向に対する断面が略長方形状に形成されており、その円周方向の中央位置と回転軸線とを結んだ半径線に対し直交する。各磁石装着孔24a,…,24aには回転軸線に平行に伸びる略板状の永久磁石12aがそれぞれ装着されている。
各磁石装着孔24a,…,24aにそれぞれ装着される永久磁石12aは、すべて厚さ方向(つまり各回転子11,12の径方向)に同様に磁化されており、すべての外周側磁石装着部24,…,24において、周方向で隣り合う外周側磁石装着部24,24同士は、一方に装着される永久磁石12aおよび他方に装着される永久磁石12aが、互いに磁化方向が異方向となるように設定される。すなわち外周側がN極とされた永久磁石12aが装着された外周側磁石装着部24には、外周側がS極とされた永久磁石12aが装着された外周側磁石装着部24が、一対のフラックスバリア形成穴22a,22aおよびネジ穴22bを介して周方向で隣接するようになっている。
以上により、外周側回転子12も、周方向に沿って配置された複数の永久磁石12a,…,12aを具備している。
そして、内周側回転子11の各内周側磁石装着部23,…,23と外周側回転子12の各外周側磁石装着部24,…,24とは、各回転子11,12の径方向で互いに対向配置可能となるように配置されている。この対向配置状態のとき、すべての永久磁石11aが、いずれか対応する永久磁石12aと一対一で回転方向の位相を合わせる状態となる。
これにより、内周側回転子11と外周側回転子12との回転軸線周りの相対位置に応じて、電動機10の状態を、内周側回転子11のすべての永久磁石11a,…,11aと外周側回転子12のすべての永久磁石12a,…,12aとにおいて、永久磁石11aと永久磁石12aとの異極の磁極同士が対向配置(つまり、永久磁石11aと永久磁石12aとが同極配置)されて界磁が最も強められる図3に示す強め界磁状態から、永久磁石11aと永久磁石12aとの同極の磁極同士が対向配置(つまり、永久磁石11aと永久磁石12aとが対極配置)されて界磁が最も弱められる図4に示す弱め界磁状態に亘る適宜の状態に設定可能とされている。
ここで、図1に示す固定子13は、外周側回転子12の外周部に対向配置される略円筒状に形成され、例えば車両のトランスミッションのハウジング(図示略)等に固定されている。
次に、上記のような内周側回転子11と外周側回転子12との相対的な位相変更を行う回動機構14について説明する。
本実施形態の回動機構14は、図1および図2に示すように、外周側回転子12の軸線方向両側に外周側回転子12の内側の空間を覆うように固定される円板状のドライブプレート(端板)30,31と、これらドライブプレート30,31で挟持されることで外周側回転子12の内側に一体に設けられるベーンロータ32とを有しており、これらと内周側回転子11の内周側の一部とで構成されている。ベーンロータ32は、例えば焼結等により形成される。
ドライブプレート30には、それぞれの外周側の部分に、軸線方向に貫通する複数(ネジ穴22bと同数)のボルト挿入穴30a,…,30aが、同一円周上で等間隔をあけるように形成されており、これらボルト挿入穴30a,…,30aよりも内側に、軸線方向に貫通する複数のボルト挿入穴30b,…,30bが、同一円周上で等間隔をあけるように形成され、さらに、ボルト挿入穴30b,…,30bの内側であるドライブプレート30の中心位置には軸線方向に貫通する嵌合穴30cが形成されている。
ドライブプレート31にも、同様に、それぞれの外周側の部分に、軸線方向に貫通する複数(ネジ穴22bと同数)のボルト挿入穴31a,…,31aが、同一円周上で等間隔をあけるように形成されており、これらボルト挿入穴31a,…,31aよりも内側に、軸線方向に貫通する複数のボルト挿入穴31b,…,31bが、同一円周上で等間隔をあけるように形成され、さらに、ボルト挿入穴31b,…,31bの内側であるドライブプレート31の中心位置には軸線方向に貫通する嵌合穴31cが形成されている。
図1に示すように、一方のドライブプレート30の軸線方向一側の面には、外周側のボルト挿入穴30a,…,30aの内側に、ドライブプレート30と同心の円環状をなす通路溝30dが形成されており、また、図3に示すようにこの通路溝30dの円周方向の等間隔位置から複数の通路溝30e,…,30eが軸心側に向けて均等長さ延出している。これら通路溝30e,…,30eは、図2に示すドライブプレート30の中心および各ボルト挿入穴30b,…,30bを通る四等分の半径線に対し平行をなして円周方向同側に所定量オフセットしている。さらに、ドライブプレート30の軸線方向一側の面には、図3に示すように通路溝30dの円周方向の等間隔位置から複数の通路溝(第2流体通路)30f,…,30fが、それぞれ半径方向外方に向けて放射状に外周面まで貫通している。なお、通路溝30e,…,30eと通路溝30f,…,30fとは円周方向における位相を異ならせている。
図1に示すように、他方のドライブプレート31の軸線方向一側の面には、外周側のボルト挿入穴31a,…,31aの内側に、ドライブプレート31と同心で且つ通路溝30dと同径の円環状をなす通路溝31dが形成されており、また、図5に示すようにこの通路溝31dの円周方向の等間隔位置から複数の通路溝(第2流体通路)31e,…,31eが、それぞれ半径方向外方に向けて放射状に外周面まで貫通している。
ベーンロータ32は、円筒状のボス部35と、このボス部35の外周面における円周方向の等間隔位置から半径方向外側に延出する複数(上記したボルト挿入穴30b,31bと同数)の羽根部36,…,36とを有している。
ボス部35は、外周側にあって羽根部36,…,36と同じ軸線方向長さの挟持ベース部37と、この挟持ベース部37の内周側から軸線方向両側に突出する円筒状の一対の嵌合部38とを有する段差状をなしている。また、ボス部35の内径側には、その軸線方向中央部に図1に示す連結用スプライン35bが形成されており、軸線方向両側に、図3に示すように各羽根部36,…,36の位置の内周側から最も近い羽根部36の基端の回転方向における同じ一側にそれぞれ貫通する通路穴35c,…,35cと、各羽根部36,…,36の位置の内周側から最も近い羽根部36の基端の回転方向における同じ逆側にそれぞれ貫通する通路穴35d,…,35dとが、図1に示すように軸線方向の位置を異ならせて形成されている。
このベーンロータ32の内径側に、外周側回転子12の駆動力が伝達される出力軸16が取り付けられることになる。この出力軸16にはボス部35の連結用スプライン35bに結合される連結用スプライン16aと、連結用スプライン16aで結合された状態でボス部35のすべての通路穴35cを連通させる環状の連通溝16bと、同状態ですべての通路穴35dを連通させる環状の連通溝16cと、これら連通溝16b,16cのそれぞれの両外側位置に形成されたシール溝16d,…,16dとを有しており、これらのシール溝16d,…,16dにはベーンロータ32との隙間をシールする図示略のシールリングがそれぞれ配設される。また、この出力軸16には、その内部を通って連通溝16bに対し作動油を給排するための通路穴16eと、連通溝16cに対し作動油を給排するための通路穴16fとが形成されている。なお、この出力軸16には、ドライブプレート30,31よりも軸線方向外側に突出する両側部分に、例えば車両のトランスミッションのハウジングに保持される一対のベアリング42,42を嵌合させるベアリング嵌合部16gがそれぞれ形成されている。
各羽根部36,…36は、図3に示すように、略板状をなしており、中間位置に軸線方向に貫通するネジ穴36aがそれぞれ形成されている。また、各羽根部36,…36のそれぞれの外周面には、外周面から中心側に向けて凹むシール保持溝36dが軸線方向の全長に亘って形成されている。これらシール保持部36d,…,36dには、内周側回転子11との隙間をシールするスプリングシール44がそれぞれ配置される。各スプリングシール44,…,44は、図1に示すように外側に設けられて内周側回転子11に摺接するシール44aと、内側に設けられてシール44aを半径方向外方の内周側回転子11側に押圧するスプリング44bとで構成されている。
図3に示すように、内周側回転子11の内周側ロータ鉄心21は、上記した永久磁石11a,…,11aを装着して構成されるリング状のベース部46と、このベース部46の内周面における円周方向の等間隔位置から半径方向内側に突出する、羽根部36と同数の突出部47,…,47とを有している。各突出部47,…,47は、それぞれ、軸線方向視で先細の略二等辺三角形状をなしており、すべての突出部47,…,47において、円周方向に隣り合う突出部47,47同士の各間に上記したベーンロータ32の羽根部36を配置可能な凹部48が形成される。各突出部47,…,47には、それぞれの内端面に、外径側に向けて凹むシール保持溝47aが軸線方向の全長に亘って形成されている。これらシール保持部47a,…,47aには、ベーンロータ32のボス部35の外周面との隙間をシールするスプリングシール50がそれぞれ配置される。これらのスプリングシール50,…,50は、図1に示すように内周側に設けられてベーンロータ32のボス部35に摺接するシール50aと、外径側に設けられてシール50aをベーンロータ32側に押圧するシールスプリング50bとで構成されている。また、図3に示すように各突出部47,…,47の内周側回転子11の回転方向における同側の壁部47Aには、それぞれ、内周側回転子11の軸線方向における同じ一側の端縁部に半径方向に沿って延在する切欠部47bが形成されている。さらに、各突出部47,…,47の回転方向における逆側の壁部47Bには、それぞれ、内周側回転子11の軸線方向における上記とは逆側の端縁部に半径方向に沿って延在する図6にも示す切欠部47cが形成されている。
上記の各部品を組み立てる場合を図1を参照しつつ説明すると、例えば、一方のドライブプレート30を外周側回転子12に、通路溝30d、通路溝30e,…,30eおよび通路溝30f,…,30fを対向させつつ合わせた状態で、このドライブプレート30の各ボルト挿入穴30a,…,30aにそれぞれボルト52を挿入し、各ボルト52,…,52をそれぞれ外周側回転子12のネジ穴22bに螺合させる。また、このドライブプレート30にベーンロータ32を、その一方の嵌合部38を嵌合穴30cに嵌合させることにより合わせた状態で、このドライブプレート30の各ボルト挿入穴30b,…,30bにボルト54をそれぞれ挿入し、各ボルト54,…,54をそれぞれベーンロータ32の羽根部36のネジ穴36aに螺合させる。この状態でドライブプレート30のすべての通路溝30e,…,30eは、図3に示すようにベーンロータ32の羽根部36,…,36の対応するものの先端部の円周方向同側に隣接する。そして、ベーンロータ32の各羽根部36,…,36にそれぞれスプリングシール44を取り付けた状態で、各羽根部36,…,36をそれぞれ一対一で対応する凹部48に入れるようにして、内周側回転子11を、スプリングシール50,…,50を取り付けた状態で挿入する。
そして、他方のドライブプレート31を、通路溝31dおよび通路溝31e,…,31eを内周側回転子11および外周側回転子12に対向させつつ、ベーンロータ32の他方の嵌合部38を嵌合穴31cに嵌合させることにより反対側から合わせ、このドライブプレート31の各ボルト挿入穴31a,…,31aにそれぞれボルト52を挿入し、各ボルト52,…,52をそれぞれ外周側回転子12のネジ穴22bに螺合させる。また、このドライブプレート31の各ボルト挿入穴31b,…,31bにボルト54をそれぞれ挿入し、各ボルト54,…,54をそれぞれベーンロータ32の羽根部36のネジ穴36aに螺合させる。
なお、このとき、ドライブプレート30の通路溝30f,…,30fと、ドライブプレート31の通路溝31e,…,31eとは、図3および図5に示すように円周方向に位相を異ならせることになる。しかも、これら通路溝30f,…,30fおよび通路溝31e,…,31eは、いずれも外周側回転子12の永久磁石12aの位置を通ることになる。さらに、円環状の通路溝30d,…,30dおよび通路溝31d,…,31dは、内周側回転子11の永久磁石11a,…,11aおよび凹溝21a,…,21aの位置を通ることになり、通路溝30e,…,30eは、内周側回転子11の凹部48まで延在する。ここで、羽根部36,…,36をドライブプレート30,31に固定するボルト54,…,54は、外周側回転子12をドライブプレート30,31に固定するボルト52,…,52よりも本数は少なく、かつサイズは大きいものが用いられている。
その後、出力軸16がベーンロータ32の内側に嵌合され、その際に、連結スプライン16aおよび連結スプライン35bが結合される。その結果、出力軸16がベーンロータ32に一体に固定された状態となる。勿論、上記の組み立て手順は一例であり、上記とは異なる手順で組み立てることも可能である。
以上によって、内周側回転子11が、外周側回転子12の内側且つベーンロータ32の外側であってドライブプレート30,31の間の図3に示す空間58に設けられることになる。さらに、内周側回転子11の凹部48,…,48それぞれに一枚ずつベーンロータ32の羽根部36が配置される。また、ベーンロータ32にスプライン結合される出力軸16は、外周側回転子12、ドライブプレート30,31およびベーンロータ32と一体回転可能となり、具体的には一体に固定される。
ここで、外周側回転子12の永久磁石12a,…,12aと内周側回転子11の永久磁石11a,…,11aとが異極同士を対向させる強め界磁状態のとき、図3および図5に示すようにすべての羽根車36,…,36がそれぞれ対応する凹部48内で回転方向における同じ一側に隣り合う突出部47に当接することになり、当接する突出部47との間に第1圧力室56を形成するとともに、それぞれが回転方向における同じ逆側に隣り合う突出部47との間に第1圧力室56よりも広い第2圧力室57を形成することになる(言い換えれば、凹部48,…,48および凹部48,…,48に収容される羽根車36,…,36で第1圧力室56,…,56および第2圧力室57,…,57が形成される)。その結果、これらの第1圧力室56,…,56および第2圧力室57,…,57は、内周側回転子11の内側に画成される。そして、各第1圧力室56,…,56にベーンロータ32の各通路穴35c,…,35cが一対一で開口するように設けられ、各第2圧力室57,…,57にベーンロータ32の各通路穴35d,…,35dが一対一で開口するように設けられている。このとき、内周側回転子11がベーンロータ32の通路穴35c,…,35c側に最大限回動することになるが、切欠部47b,…,47bがあることで通路穴35c,…,35cは内周側回転子11によって閉塞されることはない。その結果、通路穴35c,…,35cは常時第1圧力室56,…,56に開口する。
逆に、外周側回転子12の永久磁石12a,…,12aと内周側回転子11の永久磁石11a,…,11aとが同極同士を対向させる弱め界磁状態のとき、図4に示すように、すべての羽根車36,…,36がそれぞれ対応する凹部48内で回転方向における同じ上記逆側に隣り合う突出部47に当接して第2圧力室57を縮小することになり、それぞれが回転方向における同じ上記一側に隣り合う突出部47との間の第1圧力室56を拡大することになる。このとき、内周側回転子11がベーンロータ32の通路穴35d,…,35d側に最大限回動することになるが、図6に示すように、切欠部47c,…,47cがあることで通路穴35d,…,35dは内周側回転子11によって閉塞されることがなく、その上、ドライブプレート30の通路溝30e,…,30eも内周側回転子11によって閉塞されることがない。その結果、通路穴35d,…,35dおよび通路溝30e,…,30eは常時第2圧力室57,…,57に開口する。つまり、切欠部47c,…,47cは、通路溝30e,…,30eを常時第2圧力室57,…,57に開口可能とする。
ここで、外周側回転子12および内周側回転子11は、永久磁石12a,…,12aおよび永久磁石11a,…,11aが互いに異なる極性で対向し吸引し合う図3および図5に示す強め界磁の位置を、第1圧力室56,…,56および第2圧力室57,…,57が実質的に作動油圧を受けないときの原点位置に設定している。なお、第1圧力室56,…,56および第2圧力室57,…,57は作動油圧を受けない状態でも作動油で満たされている。そして、この原点位置にある状態から、切欠部47b,…,47bで常時開口する各通路穴35c,…,35cを介して各第1圧力室56,…,56に作動油を導入する(つまり第1圧力室56,…,56に作動油圧を導入する)と同時に各第2圧力室57,…,57から各通路穴35d,…,35dを介して作動油を排出させると、外周側回転子12および内周側回転子11は、磁力に反して相対回転し、図4に示す弱め界磁状態となる。逆に、切欠部47c,…,47cで常時開口する各通路穴35d,…,35dを介して各第2圧力室57,…,57に作動油を導入すると同時に各第1圧力室56,…,56から各通路穴35c,…,35cを介して作動油を排出させると、外周側回転子12および内周側回転子11は、原点位置に戻って強め界磁状態となるが、このときは、外周側回転子12の永久磁石12a,…,12aと内周側回転子11の永久磁石11a,…,11aとが磁力で吸引し合うことになるため、各第2圧力室57,…,57に導入する作動油の圧力は、弱め界磁状態に位相変更する場合に必要な圧力よりも低くて済み、場合によっては油圧を導入しなくても作動油の給排のみで済む。ここで、上記したベーンロータ32と第1圧力室56,…,56および第2圧力室57,…,57とで、外部から供給される作動油の圧力を受けて回動するアクチュエータ部61を構成している。なお、アクチュエータ部61は、内周側回転子11および外周側回転子12のいずれか一方に第1圧力室56,…,56および第2圧力室57,…,57が設けられ、内周側回転子11および外周側回転子12のいずれか他方にベーンロータ32が設けられていれば良い。
ここで、作動油が非圧縮性であることから、上記のような強め界磁状態および弱め界磁状態の両限界端への位相の変更は勿論、これら両限界端の間の中間位置であっても、図示略の油圧制御装置が、例えば、図示略の開閉弁の遮断ですべての第1圧力室56,…,56および第2圧力室57,…,57からの作動油の給排を停止させることで、外周側回転子12および内周側回転子11はその時点での位相関係を維持することになり、任意の界磁状態で位相変更を停止させることができる。
上記した強め界磁状態から弱め界磁状態までのいずれの位置にあっても、一方のドライブプレート30に形成された通路溝30e,…,30eが第2圧力室57,…,57に連通しているため、遠心力で作動油が通路溝30e,…,30eから通路溝30dに流れ、一部が通路溝30d内で円周方向に適宜移動して、連通溝30f,…,30fから外に排出されることになる。また、通路溝30dの作動油の一部が内周側回転子11の凹溝21a,…,21aと、内周側回転子11および外周側回転子12間のギャップ62を介して他方のドライブプレート31に形成された通路溝31dに流れることになり、通路溝31d内で円周方向に適宜移動して、連通溝31e,…,31eから外に排出されることになる。つまり、これら通路溝30e,…,30e、通路溝30d、通路溝30f,…,30f、凹溝21a,…,21a、通路溝31dおよび連通溝31e,…,31eが、アクチュエータ部61と、内周側回転子11および外周側回転子12の間のギャップ62とを連通させる流体通路63を形成している。この流体通路63は、通路溝30f,…,30fおよび通路溝31e,…,30eにおいて、ギャップ62から外周側回転子12の端面にも延びている。また、流体通路63のうち一方のドライブプレート30に設けられた一部を構成する通路溝30f,…,30fと、他方のドライブプレート31に設けられた一部を構成する通路溝31e,…,31eとが互いに円周方向に位相を異ならせている。
以上により、上記したベーンロータ32は、外周側回転子12に対して一体に固定されて一体回転可能となり、内周側回転子11の内側に配置されることになる。しかも、ベーンロータ32は、外周側回転子12および内周側回転子11の軸線方向の両端面を覆うように外周側回転子12に固定されたドライブプレート30,31を介して外周側回転子12に一体に固定され、外周側回転子12の駆動力を出力する出力軸16にも一体に設けられている。また、内周側回転子11の凹部48がベーンロータ32とで第1圧力室56および第2圧力室57を画成する。さらに、これら第1圧力室56および第2圧力室57への作動油の給排つまり作動油圧の導入制御で、内周側回転子11に対するベーンロータ32の相対的な位相を変更し、その結果、内周側回転子11と外周側回転子12との間の相対的な位相を変更することになる。ここで、内周側回転子11と外周側回転子12との間の相対的な位相は、少なくとも電気角の180°だけ進角側または遅角側に変化可能となり、電動機10の状態は、内周側回転子11の永久磁石11aと外周側回転子12の永久磁石12aとの同極の磁極同士が対向配置される弱め界磁状態と、内周側回転子11の永久磁石11aと外周側回転子12の永久磁石12aとの異極の磁極同士が対向配置される強め界磁状態との間の適宜の状態に設定可能となる。
加えて、外周側回転子12の駆動力を出力軸16に伝達するドライブプレート30,31が外周側回転子12およびベーンロータ32の軸線方向両端面にそれぞれ固定されることで形成されるこれら外周側回転子12、ベーンロータ32および両ドライブプレート30,31の間の図3等に示す空間58に、内周側回転子11が、周方向に回転可能に配置されている。なお、内周側回転子11は、スプリングシール44,…,44およびスプリングシール50,…,50のみによって空間58内にフローティング状態で回転自在に設けられている(つまり、ドライブプレート30,31および出力軸16には固定されていない)。
なお、例えば図7(a)に示すように内周側回転子11の永久磁石11aと外周側回転子12の永久磁石12aとが同極配置とされる強め界磁状態と、例えば図7(b)に示すように内周側回転子11の永久磁石11aと外周側回転子12の永久磁石12aとが対極配置とされる弱め界磁状態とにおいては、例えば図8に示すように、誘起電圧の大きさが変化することから、電動機10の状態を強め界磁状態と弱め界磁状態との間で変化させることにより誘起電圧定数Keが変更されることになる。
この誘起電圧定数Keは、例えば各回転子11,12の回転により固定子巻線13aの巻線端に誘起される誘起電圧の回転数比であって、さらに、極対数pと、モータ外径Rと、モータ積厚Lと、磁束密度Bと、ターン数Tとの積により、Ke=8×p×R×L×B×T×πとして記述可能である。これにより、電動機10の状態を強め界磁状態と弱め界磁状態との間で変化させることにより、内周側回転子11の永久磁石11aと外周側回転子12の永久磁石12aとによる界磁磁束の磁束密度Bの大きさが変化し、誘起電圧定数Keが変更されることになる。
ここで、例えば図9(a)に示すように、電動機10のトルクは誘起電圧定数Keと固定子巻線13aに通電される電流との積に比例(トルク∝(Ke×電流))する。
また、例えば図9(b)に示すように、電動機10の界磁弱め損失は誘起電圧定数Keと回転数との積に比例(界磁弱め損失∝(Ke×回転数))することから、電動機10の許容回転数は誘起電圧定数Keと回転数との積の逆数に比例(許容回転数∝(1/(Ke×回転数)))する。
つまり、例えば図10に示すように、誘起電圧定数Keが相対的に大きい電動機10では、運転可能な回転数は相対的に低下するものの、相対的に大きなトルクを出力可能となり、一方、誘起電圧定数Keが相対的に小さい電動機10では、出力可能なトルクは相対的に低下するものの、相対的に高い回転数まで運転可能となり、誘起電圧定数Keに応じてトルクおよび回転数に対する運転可能領域が変化する。
このため、例えば図11(a)に示す実施例のように、電動機10の回転数が増大することに伴い誘起電圧定数Keが低下傾向に変化(例えば、順次、A、B(<A)、C(<B)へと変化)するように設定することにより、誘起電圧定数Keを変化させない場合(例えば、第1〜第3比較例)に比べて、トルクおよび回転数に対する運転可能領域が拡大する。
また、電動機10の出力は、誘起電圧定数Keと固定子巻線13aに通電される電流と回転数との積から界磁弱め損失および他の損失を減算して得た値に比例(出力∝(Ke×電流×回転数−界磁弱め損失−他の損失))する。つまり、例えば図11(b)に示すように、誘起電圧定数Keが相対的に大きい電動機10では、運転可能な回転数は相対的に低下するものの、相対的に低い回転数領域での出力が増大し、一方、誘起電圧定数Keが相対的に小さい電動機10では、相対的に低い回転数領域での出力が低下するものの、相対的に高い回転数まで運転可能になると共に相対的に高い回転数での出力が増大し、誘起電圧定数Keに応じて出力および回転数に対する運転可能領域が変化する。このため、電動機10の回転数が増大することに伴い誘起電圧定数Keが低下傾向に変化(例えば、順次、A、B(<A)、C(<B)へと変化)するように設定することにより、誘起電圧定数Keを変化させない場合(例えば、第1〜第3比較例)に比べて、出力および回転数に対する運転可能領域が拡大する。
また、電動機10の効率は、固定子巻線13aに対する入力電力から銅損および界磁弱め損失および他の損失を減算して得た値を入力電力で除算して得た値に比例(効率∝((入力電力−銅損−界磁弱め損失−他の損失)/入力電力))する。
このため、相対的に低い回転数領域から中回転数領域においては、相対的に大きな誘起電圧定数Keを選択することにより、所望のトルクを出力させるために必要とされる電流が低減し、銅損が低減する。
そして、中回転数領域から相対的に高い回転数領域においては、相対的に小さな誘起電圧定数Keを選択することにより、界磁弱め電流が低減し、界磁弱め損失が低減する。
これにより、例えば図12(a)に示す実施例のように、電動機10の回転数が増大することに伴い誘起電圧定数Keが低下傾向に変化するように設定することにより、誘起電圧定数Keを変化させない場合(例えば、図12(b)に示す第2比較例)に比べて、回転数および回転数に対する運転可能領域が拡大すると共に、電動機10の効率が所定効率以上となる高効率領域Eが拡大し、さらに、到達可能な最高効率の値が増大する。
上述したように、第1実施形態によれば、先ず、内周側回転子11および外周側回転子12には周方向に沿って永久磁石11aおよび永久磁石12aが配置されることにより、例えば外周側回転子12の永久磁石12aによる界磁磁束が固定子巻線13aを鎖交する鎖交磁束量を、内周側回転子11の永久磁石11aによる界磁磁束によって効率よく増大あるいは低減させることができる。そして、界磁強め状態では、電動機10のトルク定数(つまり、トルク/相電流)を相対的に高い値に設定することができ、電動機運転時の電流損失を低減すること無しに、または、固定子巻線13aへの通電を制御するインバータの出力電流の最大値を変更すること無しに、電動機10が出力する最大トルク値を増大させることができる。
しかも、回動機構14は、外周側回転子12に対して一体回転可能に設けられたベーンロータ32と内周側回転子11とで内周側回転子11の内側に画成された第1圧力室56,…,56および第2圧力室57,…,57に作動油を給排することによって、内周側回転子11と外周側回転子12との間の相対的な位相を変更するものであるベーンアクチュエータを有するため、電動機10が複雑化することを抑制しつつ、容易かつ適切に、しかも所望のタイミングで誘起電圧定数を可変とすることができ、その結果、運転可能な回転数範囲およびトルク範囲を拡大し、運転効率を向上させると共に高効率での運転可能範囲を拡大することが可能となる。
さらに、第1圧力室56,…,56および第2圧力室57,…,57への作動油の供給量を制御することで内周側回転子11と外周側回転子12との間の相対的な位相を界磁弱め状態と界磁強め状態との間の電気角180°の範囲内で無段階に変更することができる。
加えて、第1圧力室56,…,56および第2圧力室57,…,57を内周側回転子11の内側に画成するため、電動機10の特に軸線方向の厚さの増大を抑えることができ、小型化が図れる。
さらに、ベーンロータ32に形成された通路穴35c,…,35cおよび通路穴35d,…,35dを介して第1圧力室56,…,56および第2圧力室57,…,57へ作動油を供給するため、別途配管を設ける場合と比較して小型化および低コスト化が図れる。
具体的に、ベーンロータ32の羽根部36,…,36と内周側回転子11の凹部48,…,48とで画成された第1圧力室56,…,56に作動油を供給しつつ第2圧力室57,…,57から作動油を排出させると、第1圧力室56,…,56が拡大する方向に内周側回転子11とベーンロータ32との間の相対的な位相を変更することになり、その結果、内周側回転子11と、ベーンロータ32に一体に設けられた外周側回転子12との間の相対的な位相を変更することになり、弱め界磁状態となる。一方、逆に、第2圧力室57,…,57に作動油を供給しつつ第1圧力室56,…,56から作動油を排出させると、第2圧力室57,…,57が拡大する方向に内周側回転子11とベーンロータ32との間の相対的な位相を変更することになり、その結果、内周側回転子11と外周側回転子12との間の相対的な位相を変更することになって、強め界磁状態となる。このように回動機構14としてベーンロータ32と第1圧力室56および第2圧力室57とを有する簡素なベーンアクチュエータ機構を用いるため、電動機10が複雑化することを確実に抑制しつつ、容易かつ適切に、しかも所望のタイミングで誘起電圧定数を可変とすることができる。
加えて、ベーンロータ32が軸線方向の端面を覆うように外周側回転子12に固定されたドライブプレート30,31を介して外周側回転子12に一体に設けられ、しかも、外周側回転子12の駆動力を出力する出力軸16にも一体に設けられているため、外周側回転子12の回転を直結で出力軸16に伝達することができる一方、第1圧力室56,…,56および第2圧力室57,…,57へ導入される作動油の圧力は、内周側回転子11とベーンロータ32との間の相対的な位相、つまり内周側回転子11と外周側回転子12との間の相対的な位相の変更のために主として用いられる。したがって、作動油で発生させる必要がある圧力を低く抑えることができる。
さらに、第1圧力室56,…,56および第2圧力室57,…,57が内周側回転子11に画成されるため、第1圧力室56,…,56および第2圧力室57,…,57の作動油がハウジング33を介して内周側回転子11の内周側の熱を奪い、これを冷却することになる。
加えて、アクチュエータ部61と、内周側回転子11および外周側回転子12の間のギャップ62とを連通させる流体通路63を備えているため、アクチュエータ部61を作動させるための作動油で内周側回転子11および外周側回転子12の熱を奪ってこれらを冷却することができる。具体的に、第2圧力室57,…,57の作動油は、外周側回転子12および内周側回転子11の回転による遠心力で外側に移動しようとすることになり、ドライブプレート30の通路溝30e,…,30eを通って円環状の通路溝30dに至り、その一部が通路溝30dを通って内周側回転子の外周側かつ軸線方向一側の熱を奪い、その後、放射状の通路溝30f,…,30fを通り外周側回転子の軸線方向一側熱を奪って、外に排出される。また、通路溝30dに至った作動油は、その一部が凹溝21a,…,21aと、内周側回転子11および外周側回転子12間のギャップとを通って、内周側回転子11の外周側および外周側回転子12の内周側から熱を奪いつつ、他方のドライブプレート31の円環状の通路溝31dに至り、通路溝31dを通って内周側回転子11の外周側かつ軸線方向逆側の熱を奪い、放射状の通路溝31e,…,31eを通って、外周側回転子12の軸線方向逆側の熱を奪って、外に排出される。さらに、排出された作動油は遠心力で固定子13の主に固定子巻線13aにかかって固定子13から熱を奪うことになる。なお、場合によっては、ドライブプレート30,31のいずれか一方にのみ流体通路63を形成しても良い(つまり、ドライブプレート30,31の少なくともいずれか一方に流体通路63を形成すれば良い)。
しかも、流体通路63に連通する第2圧力室57,…,57の壁部47B,…,47Bにベーンロータ32の相対位置に拘わらずに通路穴35d,…,35dおよび通路溝30e,…,30eを第2圧力室57,…,57に常時開口可能とする切欠部47c,…,47cが形成されているため、流体通路63に常時流体を流すことができ、良好に冷却することができる。
さらに、内周側回転子11の軸線方向の両端面を覆うようにベーンロータ32および外周側回転子12と一体に固定される一対のドライブプレート30,31に流体通路63が形成されているため、別途配管を設ける場合と比較して小型化および低コスト化が図れる。
加えて、流体通路63は、一方のドライブプレート30に設けられた通路溝30f,…,30fおよび他方のドライブプレート31に設けられた通路溝31e,…,31eが互いに円周方向に位相を異ならせているため、外周側回転子12を平均的に冷却することができる。
なお、回動機構は、流体で作動して、少なくとも内周側回転子11および外周側回転子12のいずれか一方を回転軸線周りに回動させることによって内周側回転子11と外周側回転子12との間の相対的な位相を変更可能なものであれば他の種々のものを適用できる。