JP4500975B2 - 作用物質を適用するための血管内インプラント及び作用物質を注入するためのマイクロデバイスの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、請求項1記載の血管の中膜内へ作用物質を適用するための血管内インプラント並びに請求項20及び21記載のこの種のインプラントの2つの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
西ヨーロッパ及び北アメリカで最も頻発する死因の一つが冠状心臓疾患である。新しい認識によると、特に炎症プロセスが動脈硬化症を進行させる要因である。このプロセスは恐らく低密度リポタンパク質(LDL粒子)の血管壁の内膜中への堆積が増加することにより引き起こされる。内膜中へ進入した後、このLDL粒子は酸化剤により化学的に変性される。この変性されたLDL粒子は内部血管壁を覆う内皮細胞を促して免疫システムを活性化させる。その結果、内膜中へ単球が進入し、成熟してマクロファージになる。同様に出現するT細胞との相互作用で、炎症メディエータ、たとえば免疫伝達物質及び増殖作用物質を放出し、マクロファージは変性されたLDL粒子を捕食する。T−細胞から形成される脂質変性(Lipidlaesionen)及びLDL粒子で満たされたマクロファージ(これはその外観に基づき泡沫細胞と呼ばれる)は動脈硬化性プラークの早期形である。内膜中での炎症反応は、該当する炎症メディエータによって、血管壁の、さらに外側にある中膜の平滑筋細胞を内皮細胞の下側まで移動させる。この平滑筋細胞はそこで増殖しかつ繊維タンパク質のコラーゲンからなる繊維状のカバー層が形成され、このコラーゲンはその下にある泡沫細胞からなる脂質コアと血管との境界をなしている血管壁内でのこの広範囲な構造的変化をまとめてプラークと呼ばれる。
【0003】
この動脈硬化性プラークはまず最初に血管方向へ比較的わずかに膨張する、それというのもこの血管は補償的に拡張できるためである。しかしながら時間と共に血管の狭窄(Stenose)が生じ、身体的負荷の際にこの第1の徴候が生じる。この狭窄した動脈は、扶養する組織に血液を良好に供給するためには十分に広くない。心臓動脈に該当する場合には患者は頻繁に胸骨背後に圧迫感及び狭窄感を訴える(狭心症)。他の動脈の場合には、痛みの伴う痙攣が狭窄のために頻繁に引き起こされる。
【0004】
この狭窄は最終的に血管を完全に閉鎖しかねない(心筋梗塞、卒中発作)。しかしながら新規の研究によるとプラーク形成だけの要因でこの場合の約15%でこのような閉鎖が起きるだけである。むしろ、泡沫細胞からの特定の炎症メディエータによって、コラーゲンからなる繊維状のカバー層が徐々に分解することが決定的な付加要因であると考えられる。この繊維状のカバー層が破綻すると、脂質コアが直接血液と接触しかねない。この炎症反応の結果、同時に血液凝固カスケードの極めて有力なトリガーである組織因子(TF、tissue factor)が泡沫細胞中で産生されるため、形成された血栓が血管を急速に完全に(急性梗塞)又は部分的に(不安定狭心症)閉鎖しかねない。
【0005】
20年以上も前から、手術によらない狭窄の治療方法が確立されており、この場合に特にバルーン拡張(PTCA、Perkutane Transluminale Coronare Angioplastie)により血管を再拡張させる。血管の拡張と共に血管壁内にあまり問題とはならない損傷(裂け目、剥離)が生じるが、この場合の約1/3に細胞増殖が引き起こされることにより異常増殖(Proliferation)が生じ、これは最終的に新たな血管の狭窄(再狭窄)を引き起こす。この拡張は狭窄の生理的原因並びに血管壁中での変化を除去していない。再狭窄の別の原因は拡張された血管の弾性である。バルーンを取り除いた後に血管は過度に収縮するため、血管断面は減少する(閉塞、いわゆる不利な再形成)。後者の作用はステントを設置することによってのみ回避することができる。ステントの使用によって、最適な血管断面は達成できるが、一般にステントの使用は小さな損傷を引き起こし、この損傷が増殖を誘導し、それによって最終的に再狭窄を引き起こしかねない。
【0006】
一方で、細胞生物学的メカニズム及び狭窄及び再狭窄を引き起こす因子について広範囲に知られてきた。この再狭窄は、今まで述べられていたように、動脈硬化性プラークを拡張することによる局所的損傷に関する血管壁の反応として生じる。複雑な作用メカニズムによって、中膜及び外膜の平滑筋細胞の内腔に向かう移行及び増殖が誘導される(新内膜過形成)。多様な成長因子の影響下で、平滑筋細胞はマトリックスタンパク質(エラスチン、コラーゲン、プロテオグリカン)からなるカバー層を形成し、この制御されない成長が徐々に内腔を狭めてしまいかねない。系統的薬物療法の適用は、特にカルシウムアンタゴニスト、ACE−阻害剤、抗凝血剤、抗集合剤、魚油、増殖抑制物質及びセロトニンアンタゴニストの経口投与が考えられるが、今までに再狭窄率の明らかな減少は達成されていなかった。
【0007】
再狭窄の薬物治療もしくは薬物予防における基本的問題は、作用物質の部分的に著しい副作用の点である。この副作用を、特に相応してわずかな投与量でできる限り局所的に限定した適用により回避することが試みられた。いわゆるローカルドラックデリバリー(LDD)の構想は、1種又は数種の作用物質を発症箇所に直接及びこのエリアに限定して放出することである。このために、血管内インプラントの血管壁に向かう側の表面、つまり特にステントの表面が、活性被覆を備えている。治療作用物質の形の被覆の活性成分は、インプラントの表面に直接結合されているか又は適当な薬剤担持剤中に埋め込まれていてもよい。後者の場合に作用物質は拡散により及び場合により生分解可能な担体が徐々に分解することにより放出される。
【0008】
US 6287628では、作用物質をインプラントの表面に直接設けるのではなく、作用物質貯蔵部の形で提供するインプラント及びその製造方法が提案されている。この作用物質貯蔵部はインプラント本体内のキャビティとして取り付けられかつインプラントの外側に配置されている。それにより、持続的血流による作用物質の過剰な流出を抑制する。
【0009】
さらに、US 6254632はインプラント表面の平面から突出しかつ、特に作用物質の準備のために使用される構造を開示している。このクレーター状構造は血管壁での物質の直接的な放出を支援する。この構造の形状及び特に高さ(この記載によると10〜80μmの範囲内にある)は、この構造が血管壁内へ侵入するのではなく、血管壁をせいぜい変形させるように考慮されている。
【0010】
全ての公知の解決策の場合に、インプラントの表面が血管壁の内膜に直接接している。放出された作用物質は従ってまずこの境界層を拡散により通過しなければならない。作用物質の拡散は、もちろん一般に存在するプラーク、カルシウム沈着又は厚くなった血管壁層によって妨げられてしまう。冠状疾患の場合には、内膜の壁厚が明らかに厚くなっており、150μmの幅を上回ることもあるという研究がなされている。さらに、作用物質が血管壁内へ侵入しなくなるまで、大量の作用物質が持続的に血管内に流れる内腔流によって引き込まれる。特定の薬物治療作用物質(たとえば遺伝子治療)のために、できる限り迅速にかつ高い濃度で血管壁の平滑筋細胞に又はその付近(中膜領域)に達する必要がある。
【0011】
【特許文献1】
US 6287628
【特許文献2】
US 6254632
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の根底をなす課題は、先行技術の前記の欠点を克服しかつ局所的に限定された領域で最小量の作用物質の適用が可能である、特に血管壁の中膜内へ直接適用が可能である血管内インプラントを提供することであった。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記の課題は、請求項1の特徴部に記載された、血管の中膜内へ作用物質を適用するための血管内インプラント及び請求項20及び21記載のそれに属する製造方法により解決される。インプラントの本発明による基体は、少なくとも部分的に血管壁に向かう表面で作用物質の適用のための多数のマイクロデバイスを有している。各マイクロデバイスは、
少なくとも1つのマイクロカニューレと、
少なくとも1つのマイクロカニューレと結合している少なくとも1つの作用物質貯蔵部とを有し、前記のマイクロカニューレはインプラントを血管壁に平らに当接させた場合に血管の中膜内へ侵入する程度にインプラント表面の平面から突出している。
【0014】
前記したインプラントの本発明による構造によって、作用物質は特異的作用箇所、つまり中膜に直接溶出する。それに伴って、適用される作用物質量は著しく低減できるため、LDDインプラントの製造コストを明らかに低減できかつ局所的でない副作用は十分に排除できる。
【0015】
本発明による有利な実施態様によると、マイクロカニューレはインプラントの表面から100〜400μm突出する。このマイクロカニューレが内膜を貫通するが、それより深くにある組織領域、つまり外膜には達しないことが保証される。冠血管内に使用する場合に、血管組織の解剖学的特異性に基づき、150〜300μm、特に180〜250μmの長さのマイクロカニューレが有利である、それというのもたいていの場合にマイクロカニューレの最適な侵入深さが提供されるためである。血管壁の厚さは、それぞれの場合にもちろん明らかに変動することがある、それというのも疾患による要因の他に血管壁幅の個体差があるためである。一方で、内膜の厚さを測定できる診断システム(たとえば血管内超音波)も開発されたため、治療にあたる医師は十分な寸法のマイクロカニューレ長さを有するインプラントの選択のために付加的な診断機器を用意する。
【0016】
このマイクロデバイスは、一方ではインプラントの基体に組み込まれた構成要素であり、つまり適当な加工工程によってこの基体から成形することができる。
他方では、このマイクロデバイスは基体上に設置された構造体として実現することもできる(ハイブリッド技術)。
【0017】
第1の場合には、インプラントの血管壁に向かう表面の材料を部分的に取り去ることにより、インプラントの金属基体内にキャビティを設けるようにしてこのインプラントを製造するのが有利である。これは、たとえば定評のあるレーザー加工法プロセスを用いて行われ、このレーザー加工法はステント構造を切り出す場合でも使用される。数マイクロメーターの深さのキャビティを引き続く加工プロセスで絶縁材料で覆い、この場合にキャビティを取り囲む周囲を軽度に覆うように材料を設置する。それにより、絶縁材料で覆われていない表面領域では電解研磨によって基体の材料が除去され、所望のマイクロカニューレがキャビティ表面上に徐々に形成される。電解研磨の完了後に、絶縁材料を適当な溶剤で除去する。従って、この方法は公知の加工工程を変更しているだけであり、存在する経験則を使用できる。
【0018】
この微細装置をハイブリット技術でインプラントの表面上に独立した構造として実現すべき場合に、ポリマー析出及び焼結のための周知のラピッドプロトタイピング法を使用できる。たとえば光を作用させるマイクロステレオグラフィーによりモノマーからポリマーへの連結を誘導することができる。レーザースキャナーユニットは液状モノマーの表面上の規定された面をハッチング状に照射し、こうして所定の侵入深さで作成すべきモデルの層を硬化させる。z軸方向への調節ユニットは、基材を1層づつ徐々に所定の層厚だけ降下させるかもしくはレーザーフォーカスを上昇させる。次の加工工程でモノマーは予め製造した固体の層上で照射によってポリマーにされ、この加工工程は所望の構造が得られるまで繰り返される。この積層形成により残留するモノマー残分は適当な溶剤により除去される。このプロセスは、複雑な制御メカニズムによって監視され、予め常用のプログラムを用いてたとえばCADモデルとして製造された微細構造をマイクロメータの寸法で製造する。ラピッドプロトタイピング法により製造されたマイクロデバイスは、いずれの場合でも作用物質貯蔵部を有し、少なくとも1つのマイクロカニューレと接続している。
【0019】
本発明の実施態様において、少なくとも1種の貯蔵された作用物質の放出挙動を、少なくとも1種の作用物質がまずはじめに血管の中膜へマイクロカニューレが侵入した後に放出するように規定する。それにより制御されない放出は回避され、作用物質の全用量をさらに減少できる。このマイクロデバイスはまず作用物質を作用物質貯蔵部の形で生分解可能な材料からなるカバー層によって閉鎖することができ、このカバー層は中膜内へ侵入した後に完全に分解される。さらに、少なくとも1種の作用物質は生分解可能な薬剤担持剤中に埋め込まれていることも考えられる。この実施態様でも担持剤の分解挙動によって作用物質の放出挙動が影響される。もちろん、2つの解決策を相互に組み合わせることもでき、つまり適当なカバー層及び薬剤担持剤によって本発明による範囲内で放出を制御する。
【0020】
さらに、数種の作用物質を作用物質貯蔵部中に準備し、この放出を段階的に行うのも有利である。これは、たとえば、異種の作用物質を有する生分解可能な薬剤担持剤の複数の層を積層させて作用物質貯蔵部内へ導入することにより行うことができる。外側から内側へ向かって、これらの層は順々に分解され、それに従って異種の作用物質が順々に放出される。1つ又は複数の分離層(この場合も生分解性材料からなる)を作用物質貯蔵部内へ導入することも考えられる。この分離層は、異種の作用物質を隔てるために利用され、かつ順々に分解される。この種の時間的に段階付けられた進行によって、再狭窄の原因となるメカニズムに有効に影響を及ぼすことができる。たとえば増殖抑制物質により再狭窄の初期のメカニズムに目標を定めて対抗でき、後の時点で抗炎症性物質及び類似の物質の適用により細胞の移行を抑制することができる。
【0021】
マイクロデバイスの外側にあるインプラントの表面の領域は生分解可能な材料からなる層で覆われているのが有利である。つまり、この種の生物学的活性表面は再狭窄率を明らかに低下させることが明らかになった。有利な材料は、ヒアルロン酸ポリマー、ポリラクチド及びヘパリンである。
【0022】
この層が周辺方向に向かってマイクロデバイスのマイクロカニューレの先端部で同一平面をなすように終端を有するか又はこの層が完全に覆っている(カバーリングしている)場合、この構造はまず一方で体内へ導入する際に機械的損傷から保護されており、他方で血管壁内へのマイクロカニューレの導入を時間的に制御する。層が徐々に分解されることにより、マイクロカニューレはゆっくりと内膜を通過して中膜へ侵入する。このゆっくりとした侵入は、再狭窄プロセスの出発点になり得る血管壁の損傷を抑制する。作用物質の早期放出を抑制するために、貯蔵された作用物質の放出挙動を生分解性の薬剤担持剤の選択もしくはカバー層の選択によって適当に調節しなければならない。マイクロデバイスの外側にある領域の表面を被覆するために適しているのはヒアルロン酸である。ヒアルロン酸の分解挙動は、所望の方法で適切な架橋によって規定することができる。従って、この材料はカバー層及び薬剤担持剤としても適している。架橋したヒアルロン酸被覆の製造及び分解挙動の影響は、原則として先行技術から公知であり、一般に担持剤の重合度及び/又は架橋度の上昇と共に分解時間は上昇する。埋め込まれた作用物質に対して行われる溶出特性は、拡散挙動の他に、重合度及び架橋度に依存する。一般に、溶出は分解時間の向上と共に長くなる。
【0023】
さらに、このインプラントはステント、特に冠血管ステントであり、というのはその埋込の際にまさに再狭窄の危険性が大きいためである。このステントは有利に自己拡張性構造を有し、この構造はマイクロカニューレが血管壁内へ徐々に侵入することを支援する。これは、マイクロデバイスが前記したように保護層(カバーリング)で覆われている場合に特に有利である。もちろんマイクロカニューレの導入をバルーン拡張により達成することも可能でもある。
【0024】
本発明の他の実施態様の場合には、インプラント、特にステントの基体が生分解性マグネシウム合金から成形されている。このインプラントの完全な分解は、再狭窄を場合により引き起こす因子を長期にわたり取り除く。さらに本発明の有利な実施態様は、引用形式請求項に記載された特徴から得られる。
【0025】
本発明を次に実施例及び複数の図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
図1は、マイクロデバイスの範囲内のかつ血管壁へ導入した後の血管内インプラントの図式的断面図を示す。
【0027】
図2〜5は作用物質が4種の実施態様に応じて製造されたマイクロデバイスの図式的断面図を示す。
【0028】
図6は、マイクロデバイスを取り囲む周囲の付加的被覆を備えたマイクロデバイスを示す。
【0029】
図7は、保護層(カバーリング)としてマイクロデバイスを取り囲む周囲の付加的被覆を備えたマイクロデバイスを示す。
【0030】
図8a〜8dは第1の実施態様によるマイクロデバイスの製造プロセスを示す図である。
【0031】
図9は、第2の実施態様によるマイクロデバイスの製造を実施することができるラピッドプロトタイピング法の基本装置を示す。
【0032】
図10a〜10bは、インプラント表面上にラピッドプロトタイピング法により製造した2つのマイクロデバイスを表す図を示す。
【0033】
【実施例】
図1は、マイクロデバイス10の範囲内の血管内インプラントの断面を図式的に示し、このマイクロデバイスは既に筋性の動脈の血管壁12内へ押し込まれている。血管内インプラントは特にステントである。このステントは、生体適合性材料、たとえばニチノール、医療用鋼、タンタル、白金−インジウム合金、金などから形成される。生分解性のマグネシウム合金を使用することも考えられる。このステントのデザイン及び寸法は広範囲に変更可能に設計することができる。このデザイン及び寸法は外面上でマイクロデバイス10の配置もしくは導入が可能でなければならない。
【0034】
動脈の血管壁12は主要な組織学的教示によれば3層に構成されている。血管壁12の内部に設けられた内皮細胞14に後続して、いわゆる内膜16の領域が延在し、この内膜は基底膜16と内側の弾性膜20により区切られている。この内膜16に引き続き、中膜22があり、この中膜は筋性の動脈の場合に複数の筋繊維芽細胞24、つまり平滑筋細胞から形成されている。外側の弾性膜26によって中膜22と区切られた外膜28が後続する。外膜28中には神経繊維束30、線維芽細胞32及び血管34が存在する。
【0035】
所望な位置でのバルーン拡張によるか又はステントの固定の場合によるような、血管壁12の損傷時には、再狭窄の原因となるメカニズムが発症されかねない。再狭窄の原因となるプロセスに関して、特に中膜22及び外膜28が、炎症メディエーターの放出による増殖のイニシエーターとして又は心内膜増殖時の細胞移行の原因箇所として関与しており、この場合に筋繊維芽細胞24は血管に向かう内膜16の領域内で繊維状のカバー層を形成する。再狭窄に対する有効な対処は特にこの領域内で行わなければならない。
【0036】
この目的で、ステントはマイクロデバイス10を有しており、このマイクロデバイスは内膜16を通過して中膜22に達し、そこでなお詳細に説明するように治療用作用物質を放出できる。このマイクロデバイス10は作用物質貯蔵部36と少なくとも1つの結合するマイクロカニューレ38とからなる。この2つの構成要素はここに示されたように相互に移行することができる。実際に作用箇所、つまり内膜22に達するためには、マクロカニューレ38は、血管壁12に向かう側のステントの表面40から100〜400μm突出している。心臓内使用のために、150〜300μm、特に180〜250μmのマイクロカニューレ長さが有効である、それというのも90%をはるかに上回り望ましい位置につけるためである。この長さは、場合により内膜16内に存在するプラークを突き通すことができるように設計されなければならない。このマイクロカニューレ38の直径は約20〜200μmである。
【0037】
ステント上のマイクロデバイス10の数及び位置はそれぞれの必要性に合わせることができ、主に溶出すべき作用物質の量、及び特にステントデザインに依存する。一般にマイクロデバイス10は、作用物質の均一な投与を保証するために、表面40上でできる限り大面積の均質な分布を達成すべきである。中膜22中での拡散の進行が比較的ゆっくりと行われるため、マイクロデバイス10の数はステントの周囲面で1cm2あたり約2〜20個の範囲にあるのが好ましい。
【0038】
作用物質貯蔵部36及びマイクロカニューレ38はこの実施例において完全にステントの基体42中に組み込まれている。マイクロデバイス10をハイブリット技術で基体42から区分した構造としても実現することも考えられる。実際に製造することができる2つの方法をさらになお詳細に説明する。
【0039】
マイクロデバイス10の作用物質貯蔵部36中へ作用物質を導入し、ここでは層44によって表示する。生分解性材料からなるカバー層46により作用物質貯蔵部38をまず最初に封入する。カバー層46の分解挙動は、内膜22内へ完全に導入された後に作用物質の放出を初めて行うことができるように規定する。ステントの表面40はさらに同様に生分解可能な付加的層48で被覆されており、この付加的層の機能はさらに下記に詳細に説明する。
【0040】
図2からは、所望のように作用物質の放出挙動に影響を及ぼすことができるような第1の実施態様が推知できる。このために、作用物質貯蔵部36中へ調剤学的に有利な適用形の作用物質を導入する。引き続き、作用物質貯蔵部36は生物学的に吸収可能なカバー層46により閉鎖されている。
【0041】
複数の作用物質を相互に連続して放出すべき場合には、図3に示されているように、カバー層46の他にさらに他の分離層50が作用物質貯蔵部36中に存在することができる。分離層50は作用物質36の容量を2つの領域52、54に区分し、それぞれ作用物質が調剤学的に所望の適用形の形で準備される。
【0042】
図4は、放出の問題を解決するためのさらにもう一つの実施態様を示す。この作用物質を適当な薬剤担持剤中に埋め込み、均質で、生物学的に吸収可能な層56として作用物質貯蔵部36中に導入する。この生物学的に吸収可能な層56が徐々に分解することにより作用物質が徐々に放出される。
【0043】
他の実施態様によると、場合により異種の作用物質を有する生物学的に吸収可能な薬剤支持体からなる複数の層を作用物質貯蔵部36中に導入することもできる。図5中ではたとえば2種のこれらの層58及び60が示されている。層58は後の時点で初めて中膜22内へ適用すべき作用物質を含有し、上方の層60はできる限り早い時点で再狭窄を引き起こすメカニズムを阻害する作用物質を含有する。この意味で、たとえば炎症メディエーターの放出を抑制する第1の作用物質は層60内へ導入され、細胞の移行に影響を及ぼす第2の作用物質は層58内へ導入される。各層が異なる含有量の作用物質もしくは作用物質組み合わせを有する複数の層を導入することにより使用される作用物質又は作用物質の組み合わせの一時的投与を規定することも考えられる。同様に、作用物質貯蔵部中の各層の分解挙動の変化は一時的投与に影響を与えるために利用できる。
【0044】
図6中では、マイクロデバイス10中に作用物質を準備したさらに他の形状を図示しており、この場合、ステントの表面40は生物学的に吸収可能な材料からなる付加的層62で被覆されている。この付加的層62は炎症プロセスの抑制に利用され、図7に示したように、この付加的層62はマイクロカニューレ38の上端部64と同一平面で接続しているか又は全体のマイクロデバイス10が完全に遮閉される。それにより、ステントの埋込の際にマイクロデバイス10によって血管壁12を損傷しないかもしくはマイクロデバイス10は機械的に損傷されない(保護的カバーリング)ことが達成される。
【0045】
付加的層62が徐々に分解されると共に、マイクロカニューレ38が内膜16を貫通して中膜22内にまで侵入する。この進行はステントの自己拡張する構造により支持することができる。たとえばこのために記憶合金、たとえばニチノールを使用することができる。しかしながら、所定の間隔でバルーンカテーテルを用いた手動の拡張も考えられる。作用物質の早期放出を抑制するために、カバー層46のデグラデーション挙動は、添加物層62が完全に分解された後に初めてこのカバー層46の分解が完了し、それによりほとんどの場合にマイクロカニューレ38はその作用箇所、つまり血管壁12の中膜に到達されるように調節する。
【0046】
前記のカバー層、分離層、付加的層及び薬剤担持剤のための生物学的に吸収可能な材料として、特にポリカプロラクトン(PCL)、ポリ−D,L−乳酸(DL−PLA)、ポリ−L−乳酸(L−PLA)、ポリヒドロキシブチレート、ポリジオキサノン、グリコール性ポリラクチド、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、及びこれらのコポリマー、ポリホスホエステル、ポリアミノ酸、ポリトリメチレンカーボネート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、ヘパリン、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、コラーゲン、アルギネート、キトサン及び架橋したヒアルロン酸が適している。
【0047】
中膜22内へ直接適用する作用物質は、特に抗血管形成、抗炎症性及び抗増殖性の治療作用のある物質である。この抗血管形成物質は、たとえばレチノン酸及びその誘導体、スラミン、金属プロテイナーゼ−1−及び金属プロテイナーゼ−2−インヒビタ、エポチロン、コルヒチン、ビンブラスチン及びパクリタクセルを含む。抗炎症性物質は、たとえばサリチレート、フェノプロフェン、ケトプロフェン、トルメチン、コルチソン、デキサメタソン、シクロスポリン、アザチジン、ラパマイシン、タクロリムス、エベロリムス及びジフェニルイミダゾールを含む。抗増殖性の治療作用物質として、特にアンチエストロゲン及びホルモン(エストラジオール、タモキシフェン、テストラクトン等)及び細胞毒性剤(ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、コルヒチンなど)が挙げられる。
【0048】
図8a〜8dは、所定の加工工程によりマイクロデバイス10が作成されるステントの、図式的な部分断面図である。ステントの金属基体42のここの構造部材は、レーザー切断によって作成される。たとえば1000nmの加工範囲内及び約3〜5Wの出力を有するレーザが適しており、このパルス長さは百分の一ミリ秒より短い範囲内で変化することができ、μm2より小さい範囲内でフォーカス可能である。ウェブ等の切断の前、切断の間又は切断に続いて、基体42の表面40内へキャビティを適切な部分的なレーザーアブレーションによって彫り込むことができる(図8a)。部分的レーザーアブレーションの間のレーザーの作業パラメータはレーザ切断の間の作用パラメータに対して変化することは自明である。有利に出力、パルス時間及び/又は相互作用時間は低減されている。キャビティの深さはこの場合少なくともマイクロカニューレの所望の長さに相当し、つまり少なくとも100μmである。同様に作成されたキャビティの直径によりマイクロカニューレの直径が設定される(これは通常20〜200μmである。
【0049】
引き続く方法工程(図8b)の場合には、このキャビティ及び軽度にオーバーラップするキャビティを取り囲む周辺部を絶縁材料66で遮閉する。材料66としてたとえば塗料、ワックス等が挙げられ、これはエマルション又は溶液として適当なスプレー技術によって塗布される。引き続く電解研磨によって、基体42が取り去られ、その際、絶縁材料66で遮閉された基体42の表面40の領域が残留し、徐々にマイクロカニューレが形成される(図8c)。この電解研磨もステントの製造において通常使用されている、それというのも明らかに平滑な表面が再狭窄率をさらに低減するためである。最後に、絶縁材料66を適当な溶剤でさらに除去する(図8d)。
【0050】
マイクロデバイス10をステントの基体42中に完全に組み込む代わりに、前記されているように、ハイブリッド技術でインプラントの表面40上に別個の構造として設置することもできる。この種の微細構造に対して、マイクロリソグラフィー工程をベースとするラピッドプロトタイピング法が開発された(たとえばTOENSHOFF, H.K.; KOERBER, K.; BEIL, A.: Micro-rapid prototyping - a new machine system enabling micro-stereolithography and laser sinterng processes. In: Proc. of MICRO. tec 2000, Vol. 2, 25.-27. Sept. 2000, Hanover. - ISBN 3-8007-2579-7, page 37 - 42参照)。この場合、適当な樹脂をできる限り細くフォーカスされたレーザー光により照射された範囲内で重合させる。ポリマーの使用の他に焼結材料を使用することもできる。図9は、ラピッドプロトタイピング法に適したマイクロステレオリソグラフィー装置68の簡略化された原理的な構造を示す。
【0051】
マイクロ装置10は1層ずつ重合によって基体42の表面40からら出発して構築される。レーザー源70はパルスレーザー源として用いられる。スキャナユニット72を介して、生じたレーザー光を、アクチュエータ76を介して可動に支承されている強くフォーカスする光学系74中にインプットされる。基体42の表面40は数マイクロメータの薄い液状のモノマー層78で覆われる。このレーザー光を、液状モノマー中の表面40上の定義された面をハッチング状に照射し、こうして所定の侵入深さでフォーカス領域内で製造すべきモデルの層を硬化させる。このアクチュエータ76は基体もしくはレーザーフォーカスを1層ごとに定義された層厚だけ、通常はマイクロメータステップで降下もしくは上昇させる。次の加工工程でモノマーは予め製造した固体の層上で照射(1光子プロセスもしくは多光子プロセスにより)によって重合させ、この加工工程は所望の構造が得られるまで繰り返される。この積層形成により残留するモノマー残分は適当な溶剤により除去される。複雑な制御(同様に図示されていない)はスキャナーユニット72を介した製造を監視する。この制御はたとえばCADフォーマットで作成されたモデルを用いて光学系74の動作進行、レーザー源70の強度及びパルス時間及び昇降装置の動作を調整する。ここに示した種類のマイクロリソグラフィー装置68は既に先行技術から十分に公知であるため、詳細に記載しない。
【0052】
ラピッドプロトタイピング法によって最初に作成されたマイクロデバイス10は図10aに示されている。このマイクロデバイス10は管状のマイクロカニューレ38を備え、このマイクロカニューレは円筒状の作用物質貯蔵部36上に設置されている。この構造の全体の高さは約200μmである。マイクロデバイス10の2つの主要構成要素は、図10bに示したように境界なく相互に移行することもできる。この管状のマイクロデバイス10は基体42の表面40から約150μm上方へ突き出す。この製造のために生体適合ポリマーを使用するのが有利である。
【0053】
準備されたマイクロデバイス10中に作用物質を導入することは、たとえば、ステント表面40を適当な溶剤中の作用物質の溶液でぬらし、その際にこの溶液もマイクロデバイス10内へ導入される。乾燥後にマイクロデバイス10の外側の領域の作用物質を吹き飛ばす。このために、数kPaの送風出力の空気ノズルを90゜の角度で、数センチメートルの間隔で設置することもできる。同様に、カバー層、分離層及び薬剤担持剤のためのポリマーの塗布の際にも行うこともできる。最後に、表面40を、保護する付加的な層で、たとえばディップ又はスプレー法で被覆する(保護カバーリングする)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マイクロデバイスの範囲内のかつ血管壁へ導入した後の血管内インプラントの図式的断面図
【図2】1つの実施態様に応じて製造されたマイクロデバイスの図式的断面図
【図3】1つの実施態様に応じて製造されたマイクロデバイスの図式的断面図
【図4】1つの実施態様に応じて製造されたマイクロデバイスの図式的断面図
【図5】1つの実施態様に応じて製造されたマイクロデバイスの図式的断面図
【図6】マイクロデバイスを取り囲む周囲の付加的被覆を備えたマイクロデバイスを示す図
【図7】保護層としてマイクロデバイスを取り囲む周囲の付加的被覆を備えたマイクロデバイスを示す図
【図8】a〜dは第1の実施態様によるマイクロデバイスの製造プロセスを示す図
【図9】第2の実施態様によるマイクロデバイスの製造を実施することができるラピッドプロトタイピング法の基本装置を示す図
【図10】a〜bは、インプラント表面上にラピッドプロトタイピング法により製造した2つのマイクロデバイスを表す図
【符号の説明】
10 マイクロデバイス、 12 血管壁、 22 中膜、 38 マイクロカニューレ、 40 表面、 42 基体
Claims (14)
- 血管の中膜(22)内へ作用物質を適用するための血管内インプラントであって、このインプラントは、血管壁に向かう側のインプラントの表面(40)に少なくとも部分的に、作用物質を適用するための多数のマイクロデバイス(10)を備えた基体(42)を有し、その際、各マイクロデバイス(10)は
インプラントを血管壁(12)に平らに装着する際に血管の中膜(22)内にまで侵入する程度にインプラントの表面から突出する少なくとも1つのマイクロカニューレ(38)と、
少なくとも1つのマイクロカニューレ(38)と結合している少なくとも1つの作用物質貯蔵部(36)を有し、
マイクロデバイス(10)が少なくとも1種の作用物質を作用物質貯蔵部(36)中へ導入後に生分解性材料からなるカバー層(46)で閉鎖されていて、
生分解性材料からなる1つ又は複数の分離層(50)が存在しており、この層は順々に分解されかつ異種の作用物質を相互に区分していて、
複数の作用物質が、作用物質の段階的放出が行われるように作用物質貯蔵部(36)内に導入されていて、マイクロカニューレ(38)が血管の中膜(22)内へ侵入後に初めて少なくとも1種の作用物質が放出される、血管内インプラント。 - マイクロカニューレ(38)が100〜400μmの長さを有する、請求項1記載のインプラント。
- マイクロカニューレ(38)が150〜300μmの長さを有する、請求項2記載のインプラント。
- マイクロカニューレ(38)が180〜250μmの長さを有する、請求項3記載のインプラント。
- マイクロカニューレ(38)が20〜200μmの直径を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のインプラント。
- マイクロデバイス(10)はインプラントの基体(42)の構成要素である、請求項1から5までのいずれか1項記載のインプラント。
- マイクロデバイス(10)がインプラントの基体(42)上にハイブリッド技術で設置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のインプラント。
- マイクロデバイス(10)の外側の、インプラントの表面(40)の領域が、生分解性材料からなる層(62)で被覆されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のインプラント。
- 層(62)が周囲方向に向かってマイクロデバイス(10)のマイクロカニューレ(38)の先端部(64)で同一平面をなすように終端を有するか又はマイクロ装置(10)を完全に覆い、かつ層(62)の分解挙動が作用物質の放出挙動と調整されており、作用物質の放出が層(62)の完全な分解後に初めて開始される、請求項8記載のインプラント。
- インプラント中に自己拡張性構造が存在し、この構造はマイクロカニューレ(38)を血管壁(12)内へ徐々に侵入させることを支援する、請求項9記載のインプラント。
- 層(62)は、カバー層(46)とは異なる分解挙動を示すヒアルロン酸ポリマーである、請求項8から10までのいずれか1項記載のインプラント。
- インプラントがステント、特に冠血管ステントである、請求項1から11までのいずれか1項記載のインプラント。
- ステントの基体(42)が少なくとも部分的に生分解性材料、特にマグネシウム合金から形成されている、請求項12記載のインプラント。
- 血管の中膜(22)内へ作用物質を注入するためのマイクロデバイス(10)の製造方法において、医学的な金属製インプラントに関して
a) 血管壁に向かうインプラントの表面(40)上に、部分的に材料を除去することにより、特にレーザアブレーションによりキャビティを作成し、
b) このキャビティ及びキャビティを取り囲む周囲を絶縁材料(66)で覆い、
c) 絶縁材料(66)で覆われていない、表面(40)の領域の材料除去を電解研磨により行い、
d) 絶縁材料(66)を適当な溶剤で除去する、マイクロデバイス(10)の製造方法。
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