JP4501331B2 - 二次電池及び過充電防止方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池及びそれを用いる電解質に関するものである。詳しくは、過充電状況下での安全性が向上した二次電池及びそれに用いられる電解質に関するものである。なお、本明細書において、電解質とは、二次電池の正極と負極との間に存在する電解液、半固体電解質、及び完全固体電解質をいう。
【0002】
【従来の技術】
二次電池は、一次電池とは異なり、工場出荷段階のみならず、様々な場面で電池を充電する必要がある。例えば、デジタルカメラや携帯電話等に使用される二次電池においては、二次電池が放電状態に近づくと、充電器に二次電池を設置し、充電している。充電器は、設置される電池の使用状態に応じて充電時の速度、電圧、パターン等を制御する必要があるが、充電器が故障したり、電池の種類を間違えて設置したりすると、二次電池は過充電状態に移行する。
【0003】
過充電状態とは、本来二次電池が上限とする電圧(上限電圧)を超えた電圧を有する状態である。過充電状態になると、リチウムイオンが過剰に引き抜かれることにより不安定化した正極の金属酸化物と電解液とが反応したり、負極上に析出したリチウム金属がデンドライト状(樹枝状)に発達して正極と短絡を起こしたりする。これらがガス発生や発熱の原因となり、電池の急激な内圧上昇による変形、熱暴走、破裂等を引き起こすことがある。
【0004】
過充電状態になったときに二次電池の安全性を向上させるため、電解液中に過充電防止剤を添加する方法が知られている。
特開平7−302614号公報、特開平9−50822号公報、特開平9−106835号公報、特許第2939496号公報、及び特許第2983205号公報には、電解液中に電池の上限電圧を超える酸化電位を有するビフェニル等の芳香族化合物を添加する方法が記載されている。これらの方法は、過充電状態になったときに、芳香族化合物が酸化重合して活物質表面にリチウムイオンの出入りを阻害する高抵抗性の被膜を形成することにより過充電の進行をくい止めるものである。
【0005】
また、特開2000−348759号公報、特開2000−348760号公報、特開2001−52739号公報、及び特開2001−52740号公報には、鎖状カーバメートを添加し、過充電状態になったときにガス化して電池の内圧を上昇させることにより電池の電流遮断弁を作動させる機械的過充電防止方法が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、過充電防止剤として芳香族化合物を使用する方法は、芳香族化合物の酸化反応によりガスが発生するため、安全性の点でさらに改良する必要がある。また、過充電防止効果を発現させるのに十分な量の芳香族化合物を用いると、高温保存時に電池特性が劣化することがある。
【0007】
また、機械的過充電防止方法は、電池に付加的な構造を持たせなければならないため、電池の設計上、種々の制約がある。
したがって、本発明は、上記の過充電防止方法とは異なる作用に基づいた、安全性が高く、付加的構造を必要としない過充電防止機能を備えた二次電池を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討したところ、過充電状態になると電解質中に固体塩を析出する性質を有する過充電防止剤を使用すると、過充電が防止できることを見出し、本発明を完成した。固体塩の析出が過充電を防止するのは、固体塩が正極表面を被覆したり、セパレーターを閉塞させて、電池の内部抵抗を増大させることによるものと考えられる。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、正極、負極及び電解質を有するリチウム二次電池であって、電解質中に、過充電状態になると正極から溶出した金属イオンと反応して固体塩を生じる過充電防止剤を、0.1重量%以上5重量%以下となるように含有し、かつ過充電状態になると酸化され、その生成物と前記過充電防止剤から固体塩を生成する反応の一部を構成する化合物であって、過充電領域において、水を生成する化合物、正極活物質の金属成分の溶出を促進する化合物、発熱して温度上昇をもたらす化合物の何れかの化合物よりなるトリガー物質を、0.25重量%以上5重量%以下となるように含有していることを特徴とする二次電池、及び、正極、負極及び電解質を有するリチウム二次電池の過充電防止方法であって、電解質中に、過充電状態になると正極から溶出した金属イオンと反応して固体塩を生じる過充電防止剤を、0.1重量%以上5重量%以下となるように含有させ、かつ過充電状態になると酸化され、その生成物と前記過充電防止剤から固体塩を生成する反応の一部を構成する化合物であって、過充電領域において、水を生成する化合物、正極活物質の金属成分の溶出を促進する化合物、発熱して温度上昇をもたらす化合物の何れかの化合物よりなるトリガー物質を、0.25重量%以上5重量%以下となるように含有させることを特徴とする過充電防止方法、に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る二次電池は、過充電状態になると電池内で固体塩を生じさせる性質を有する過充電防止剤を電解質中に含有するものである。この過充電防止剤は、過充電状態において固体塩を生じ、これがセパレーターを閉塞させたり、電極を被覆したりして、電池内部の抵抗を増大させることにより優れた過充電防止効果を奏する。
【0011】
過充電状態において電解質中に固体塩を生成させる方法としては、電池内の温度上昇に伴い溶解度が減少して析出を起こす塩を過充電防止剤として用いる方法もあるが、正極から溶出する金属イオンと反応して固体塩を生成する物質を過充電防止剤として用いるのが好ましい。なぜならば、二次電池では、過充電状態になると正極から金属イオンが溶出しやすくなるからである。特に、リチウム二次電池の正極活物質として常用されるリチウムと遷移金属とを含有するリチウム遷移金属複合酸化物では、過充電状態になると正極から遷移金属イオンが溶出する。したがって、過充電防止剤としては、溶出する遷移金属イオンと反応して塩を生成するものが好ましい。なお、過充電防止剤としては、遷移金属イオンと直接反応するものであってもよく、また過充電防止剤の変化物と遷移金属イオンとが反応して塩を形成するものであってもよい。なお、過充電防止剤の変化物と遷移金属イオンとを反応させるには、過充電状態になると酸化され、その生成物と過充電防止剤との反応が過充電防止剤から固体塩を生成する反応の一部を構成する化合物を含有しておくのが好ましい(以下、このような化合物を含め、過充電状態で固体塩の生成を助長する化合物を「トリガー物質」という。)。
<過充電防止剤>
本発明に係る二次電池には、過充電防止剤として、過充電状態で金属イオン等と固体塩を生成するもの、又は過充電状態で化学変化を起こし金属イオン等と固体塩を生成する化合物に変化するものであって、生成した固体塩が電池内部の抵抗を増大させる性質を有するものを用いる。過充電防止剤は、電解質の調製が容易なことから、電解質に溶解するものが好ましい。
【0012】
過充電防止剤としては、例えば、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル、スルファミン酸、チオアセトアミド、ジメチルグリオキシム、8−キノリノール、1−ニトロソー2−ナフトール、炭酸リチウム、硫酸リチウム、炭酸カルシウム、硫酸マンガン、クロム酸ストロンチウム、硫酸銅、硫酸カルシウム等が挙げられる。このうち、ジカルボン酸エステル、特にシュウ酸ジメチル又はシュウ酸ジエチル等のシュウ酸ジアルキルエステルが好ましい。なお、過充電防止剤は複数種を併用してもよい。
【0013】
過充電防止剤は、電解質中に、通常0.1重量%以上5重量%以下となるように含有させる。0.1重量%未満では過充電防止剤として有効に作用しないことがあり、また、5重量%を超えると電池特性に悪影響を及ぼすことがある。過充電防止剤の下限としては0.25重量%以上、特に0.5重量%以上が好ましく、上限としては3重量%以下、特に2重量%以下が好ましい。
<トリガー物質>
トリガー物質としては、過充電領域において、水を生成する化合物、正極活物質の金属成分の溶出を促進する化合物、発熱して温度上昇をもたらす化合物などが挙げられる。このうち、過充電状態で水を生成する化合物が好ましい。
【0014】
トリガー物質の酸化電位は、使用する二次電池の上限電位以上であれば可能な限り小さい方が好ましいが、酸化電位が低いと過充電状態でなくとも反応しやすい傾向にあるので、この点を考慮してトリガー物質を選択するのが好ましい。
トリガー物質の具体的な酸化電位としては、例えばリチウム二次電池の場合、通常4.3〜4.9V程度である。4.3V未満では電池特性を劣化させることがあり、4.9Vを超えると過充電防止効果が小さくなる。トリガー物質の酸化電位の下限としては4.4V以上、特に4.5V以上が好ましく、上限としては4.7V以下が好ましい。
【0015】
なお、酸化電位は、サイクリックボルタンメトリー法によって測定することができる。すなわち、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比率7:3の混合溶媒にLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解して電解液を調製し、これにトリガー物質を0.15mmol/gとなるように溶解させる。これを底面部分のみが露出した1.6mmφの白金を作用極、リチウム金属を対極及び参照極とし、ガラスフィルターで作用極側と対極側とが区切られたH型セルに入れる。次いで、室温(25℃付近)で作用極の電位を酸化側(貴側に)に20mV/秒の掃引速度で掃引し、このとき0.5mA/cm2の電流密度が流れ出す電位を酸化開始電位とする。
【0016】
トリガー物質としては、ビフェニル化合物、シクロヘキシルベンゼン化合物、ジベンゾフラン化合物、ターフェニル化合物、ジフェニルエーテル化合物等の芳香族化合物;3−メチル−2−オキサゾリドン、3−エチル−2−オキサゾリドン、3−イソプロピル−2−オキサゾリドン、3−(tert−ブチル)−2−オキサゾリドン等の環状カーバメート化合物;カンフェン、ピネン、カンファー、ボルナン、フェンチャン、テトラエトキシメタン等の脂環式炭化水素及びオルトギ酸トリメチル等のオルトエステルなどが挙げられる。これらは複数種を併用してもよい。これらのうち、芳香族化合物、特に下記一般式(1)で表される芳香族化合物が好ましい。
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、R1〜R6はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基、アルコキシ基若しくはアリールオキシ基を表す。また、R1とR2とが結合して置換基を有していてもよいフェニレンオキシ基、エチレンオキシ基、トリメチレンオキシ基、プロペニレンオキシ基又はビニレンオキシ基を形成してもよい。)
トリガー物質は、電解質中に通常0.25重量%以上5重量%以下となるように含有しているのが好ましい。0.25重量%未満では有効に作用せず、5重量%を超えると電池特性に悪影響を及ぼすことがある。下限としては0.5重量%以上が好ましく、上限としては3重量%以下、特に2重量%以下が好ましい。
【0019】
正極活物質としてリチウム・遷移金属酸化物、過充電防止剤としてジカルボン酸エステル類、トリガー物質として芳香族化合物を用いた場合、トリガー物質の存在下に過充電状態で固体塩が生成する理由は以下のように考えられる。すなわち、過充電状態になると芳香族化合物の酸化重合反応により水が生成し、ジカルボン酸エステルが加水分解されジカルボン酸が生成する。生成したジカルボン酸と遷移金属イオンとは難溶性の塩を生成し、これが電解液から析出して、セパレーターを閉塞させたり電極を覆うことにより、電池内の抵抗を増大させて過充電を防止する。
【0020】
本発明に係る二次電池では、上記のようにして過充電を防止することにより、芳香族化合物から発生するガスで電池が破裂したり、正極で生成する電子導電性の皮膜が負極又は負極上に析出した金属リチウムと短絡に至るというような現象を回避することができる。
<電解質>
本発明に係る二次電池では、電解質として、リチウム塩と非水系溶媒とを含有する電解液、電解液を高分子化合物で固形化した半固体状電解質、及びリチウム塩と高分子化合物とを有する完全固体電解質等が挙げられる。このうち、リチウム塩等の電解質塩と非水溶媒とを含有するものが好ましい。
【0021】
電解液に使用する溶媒としては、炭酸エステル、エーテル及びラクトンよりなる群から選ばれる非水系溶媒を主体とするものが好ましい。
炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネート等の環状炭酸エステル;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネート等の鎖状炭酸エステルなどが挙げられる。
【0022】
エーテルとしては、ジメトキシエタン及びジエトキシエタン等が挙げられる。
ラクトンとしては、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
非水系溶媒としては、炭酸エステルを含有するもの、特に環状炭酸エステル又はラクトン類等の高誘電率溶媒と、鎖状炭酸エステルの低粘度溶媒との混合溶媒が好ましい。
【0023】
電解質塩としてはリチウム塩が好ましい。リチウム塩としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、LiCl、LiBr、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3及びLiN(SO3CF3)2等が挙げられる。これらの複数種を併用してもよい。これらのうち、LiBF4又はLiPF6が好ましい。
【0024】
リチウム塩は、電解液中に、通常0.5mol/L以上1.5mol/L以下となるように含有させる。0.5mol/L未満でも1.5mol/Lを超えても伝導度が低下し、電池特性に悪影響を与えることがある。下限としては0.75mol/L以上、上限として1.25mol/L以下が好ましい。
電解質中には、必要に応じてさらに他の成分を含有させることができる。他の成分としては、電池の活物質表面に被膜(SEI)を形成するための添加剤等が挙げられる。SEIを形成するための添加剤としては、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート等が挙げられる。炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネートを使用すると、負極上に良好な皮膜を形成する等の作用があるため、過充電防止剤を負極の影響から保護する効果が考えられることから、一層優れた過充電防止効果が得られるほか、電池の保存安定性やサイクル特性などの他特性も向上させることができる。
【0025】
炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート及びビニルエチレンカーボネート等のオレフィン性二重結合を有するもの;フェニルエチレンカーボネート及びカテコールカーボネート等のベンゼン環を有するものなどが挙げられる。このうち、ビニレンカーボネート又はビニルエチレンカーボネートが好ましい。
<リチウム二次電池>
本発明に係る二次電池としては、リチウム二次電池等が挙げられる。
【0026】
二次電池は、正極、負極及び前記電解質を含有する。
正極の活物質としては、高起電力を発生することができるリチウム・遷移金属複合酸化物が好ましい。
リチウム・遷移金属複合酸化物としては、LiCoO2等のリチウムコバルト複合酸化物、LiNiO2等のリチウムニッケル酸化物、LiMn2O4等のリチウムマンガン酸化物などが挙げられる。これらは併用してもよい。このうち、リチウム並びにコバルト及び/又はニッケルを含有するものが好ましい。リチウム・遷移金属複合酸化物は、主体となる遷移金属元素の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga及びZrよりなる群から選ばれる他の金属種で置き換えることにより安定化させるのが好ましい。
【0027】
負極の活物質としては、リチウムを吸蔵及び放出し得る物質であれば任意のものを用いることができる。このうち、炭素質物が好ましい。
炭素質物としては、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物、人造黒鉛及び天然黒鉛等が挙げられる。このうち、種々の原料から得た易黒鉛性ピッチの高温熱処理によって製造された人造黒鉛若しくは黒鉛化メソフェーズ小球体、黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維等の他の人造黒鉛若しくは精製天然黒鉛、又はこれらの黒鉛にピッチを含む種々の表面処理を施したものが好ましい。これらの炭素質物は、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が0.335〜0.34nm、特に0.335〜0.337nmであるものが好ましい。灰分は通常1重量%以下である。0.5重量%以下、特に0.1重量%以下であるものが好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)は、通常30nm以上である。50nm以上、特に100nm以上であるのが好ましい。
【0028】
これらの炭素質物にリチウムを吸蔵・放出可能な他の活物質をさらに混合することもできる。他のリチウムを吸蔵・放出可能な活物質としては、酸化錫、酸化珪素等の金属酸化物材料、並びにリチウム金属及び種々のリチウム合金が挙げられる。これらの負極材料は複数種を併用してもよい。
電極に用いる結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブダジエンゴム等が挙げられる。
【0029】
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ及びカゼイン等が挙げられる。
電極中には、銅及びニッケル等の金属材料、並びにグラファイト及びカーボンブラック等の炭素材料等の導電材を含有させてもよい。正極は、導電材を含有させるのが好ましい。
【0030】
電極は、常法により製造すればよい。例えば、活物質に、結着剤、増粘剤、導電材、及び溶媒等を加えてスラリー状とし、集電体の基板に塗布し、乾燥する方法が挙げられる。また、活物質をそのままロール成形してシート電極としたり、圧縮成形によりペレット電極とすることもできる。
負極集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス等の金属又は合金などが挙げられ、このうち銅が好ましい。正極集電体としては、アルミニウム、チタン、タンタル等の金属又は合金等が挙げられ、このうちアルミニウム又はその合金が好ましい。
【0031】
電池は、通常正極と負極の間にセパレーターが介装される。セパレーターの材質や形状は、任意である。ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等が、電解液に安定で、しかも保液性に優れているので好ましい。
電池の形状は任意であり、シート電極及びセパレーターをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレーターを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレーターを積層したコインタイプ等が挙げられる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
(正極の作成)
コバルト酸リチウム(LiCoO2)90重量部、アセチレンブラック5重量部、及びポリフッ化ビニリデン5重量部を、N−メチルピロリドン溶媒中で混合し、スラリー化した。これを20μmのアルミ箔の片面に塗布し乾燥し、さらにプレス機で圧延したものを直径12mmの打ち抜きポンチで打ち抜いて正極とした。
(負極の作成)
黒鉛(面間隔0.336nm)95重量部、ポリフッ化ビニリデン5重量部を、N−メチルピロリドン溶媒中で混合し、スラリー化した。これを20μm厚さの銅箔の片面に塗布し乾燥し、さらにプレス機で圧延したものを直径12mmで打ち抜いて負極とした。
(電池の組立)
アルゴン雰囲気のドライボックス内で、CR2032型コインセルを使用して、リチウム二次電池を作製した。すなわち、正極缶の上に正極を置き、その上にセパレーターとして25μmの多孔性ポリエチレンフィルムを置き、ポリプロピレン製ガスケットで押さえた。さらに負極、厚み調整用のスペーサーの順に置いた後、電解液を加え電池内に十分しみこませ、負極缶を載せて電池を封口した。なお、以下の例では、電池の容量を充電上限4.2V、放電下限3.0Vで約4.0mAhになるように設計した。
【0033】
正極活物質重量W(c)と負極活物質重量W(a)の比率は、電池の通常使用上限電圧において、正極から放出されるリチウムイオンが、対向する負極上でリチウム金属の析出を起こさない範囲が好ましい。したがって、負極と正極との容量比Rqが1.1≦Rq≦1.2となるように重量を決定した。なお、容量比Rqは、Q(a)×W(a)/{Q(c)×W(c)}で求めた。ここで、電池の初期充電条件に対応する条件下での、正極活物質の重量当たりの電気容量をQ(c)mAh/g、リチウム金属が析出せずにリチウムを最大限に吸蔵しうる負極活物質の重量当たりの電気容量をQ(a)mAh/gとした。Q(c)及びQ(a)は、正極又は負極を作用極に、対極にリチウム金属を用い、上記電池を組み立てる際と同じ電解液中でセパレーターを介して試験セルを組んで測定した。すなわち、目的とする電池系の初期充電条件に対応する正極の上限電位又は負極の下限電位まで、可能な限り低い電流密度で、正極が充電(正極からのリチウムイオンの放出)できる容量、負極が放電(負極へのリチウムイオンの吸蔵)できる容量として求めた。
(電池の評価)
電池評価は(1)初期充放電(容量確認)、次いで(2)満充電操作、さらに(3)過充電試験の順に行った。
【0034】
初期充放電(容量確認)は、1C(4.0mA)、4.2V上限の定電流定電圧法により充電した。充電のカットは、電流値が0.05mAに到達した時点とした。放電は0.2Cで3.0Vまで定電流で行った。
満充電操作は、4.2V上限の定電流定電圧法(0.05mAカット)により充電した。
【0035】
過充電試験は、1Cで4.99Vカット又は3hrカット(どちらか先に到達した方でカット)とした。
過充電防止効果の優劣は、過充電領域における電圧曲線挙動及び見かけの過充電電流量を確認することによって行った。
(実施例1)
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比3:7の混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lとなるように溶解させ、次いでシュウ酸ジエチル及びジベンゾフランをそれぞれ2重量%となるように溶解させ、電解液とした。
【0036】
この電解液を用いて、上述の方法によりリチウム二次電池を作製し、評価を行った。
過充電時の電圧は速やかに上昇し、過充電は安定した状態で防止された。また、過充電後の電池を解体してセパレーター上及び電極上に析出した化合物をICP、イオンクロマトグラフィー、ESCAにより分析したところ、析出物中にシュウ酸コバルトを確認した。以上の結果を表−1に示す。
(実施例2)
実施例1において、シュウ酸ジエチル及びジベンゾフランの他にさらにビニレンカーボネートを2重量%となるように添加したこと以外は実施例1と同様にして、リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表−1に示す。なお、実施例1と同様の方法により、析出物中にシュウ酸コバルトを確認した。
(比較例1)
実施例1において、シュウ酸ジエチル及びジベンゾフランを加えなかったこと以外は実施例1と同様にして、リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表−1に示す。
(比較例2)
実施例1において、ジベンゾフランのみを2重量%となるように添加したこと以外は実施例1と同様にして、リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表−1に示す。なお、過充電時に短絡によると思われる電圧振動が観測され、なかなかカットオフ電圧に至らず、見かけの過充電電流量は大きくなった。
(比較例3)
実施例1において、シュウ酸ジエチルに代えてビニレンカーボネートを2重量%となるように添加したこと以外は実施例1と同様にして、リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表−1に示す。なお、過充電時に短絡によると思われる電圧振動が観測され、なかなかカットオフ電圧に至らず、見かけの過充電電流量は大きくなった。
【0037】
【表1】
【0038】
表−1より、シュウ酸ジエチルを添加することによって、過充電時に塩が析出し、過充電状態での安全性が向上することが分かる。
なお、実施例で作製したリチウム二次電池と比較例で作製したリチウム二次電池とでは、初期放電容量、5サイクル後の容量維持率等の電池特性に大きな差は見られなかった。
【0039】
【発明の効果】
本発明に係る二次電池は、従来の方法とは全く異なる方法により、過充電時の安全性を向上させたものである。
Claims (15)
- 正極、負極及び電解質を有するリチウム二次電池であって、電解質中に、過充電状態になると正極から溶出した金属イオンと反応して固体塩を生じる過充電防止剤を、0.1重量%以上5重量%以下となるように含有し、かつ過充電状態になると酸化され、その生成物と前記過充電防止剤から固体塩を生成する反応の一部を構成する化合物であって、過充電領域において、水を生成する化合物、正極活物質の金属成分の溶出を促進する化合物、発熱して温度上昇をもたらす化合物の何れかの化合物よりなるトリガー物質を、0.25重量%以上5重量%以下となるように含有していることを特徴とするリチウム二次電池。
- 正極が、リチウム・遷移金属複合酸化物を含有し、かつ過充電状態になると電解質中に金属イオンを溶出するものであることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
- 過充電防止剤が、ジカルボン酸エステルであることを特徴とする請求項1又は2記載の二次電池。
- 固体塩が、正極から溶出した金属イオンと、過充電防止剤又はその変化物とから生じたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の二次電池。
- トリガー物質の酸化電位が、4.3V以上4.9V以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の二次電池。
- トリガー物質が、芳香族化合物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の二次電池。
- 正極、負極及び電解質を有するリチウム二次電池の過充電防止方法であって、電解質中に、過充電状態になると正極から溶出した金属イオンと反応して固体塩を生じる過充電防止剤を、0.1重量%以上5重量%以下となるように含有させ、かつ過充電状態になると酸化され、その生成物と前記過充電防止剤から固体塩を生成する反応の一部を構成する化合物であって、過充電領域において、水を生成する化合物、正極活物質の金属成分の溶出を促進する化合物、発熱して温度上昇をもたらす化合物の何れかの化合物よりなるトリガー物質を、0.25重量%以上5重量%以下となるように含有させることを特徴とする過充電防止方法。
- 正極が、リチウム・遷移金属複合酸化物を含有し、かつ過充電状態になると電解質中に金属イオンを溶出するものであることを特徴とする請求項8記載の方法。
- 過充電防止剤が、ジカルボン酸エステルであることを特徴とする請求項8又は9記載の方法。
- 固体塩が、正極から溶出した金属イオンと、過充電防止剤又はその変化物とから生じるものであることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の方法。
- トリガー物質の酸化電位が、4.3V以上4.9V以下であることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載の方法。
- トリガー物質が、芳香族化合物であることを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載の方法。
- 正極、負極及び電解質を有するリチウム二次電池の過充電防止方法であって、電解質中に、シュウ酸ジアルキルエステルを0.1重量%以上5重量%以下となるように含有させ、かつ酸化電位が4.3V以上4.9V以下の芳香族化合物を0.25重量%以上5重量%以下となるように含有させることにより、過充電状態になると電解質中に固体塩を生じさせることを特徴とする過充電防止方法。
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