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JP4517675B2 - 鞄地 - Google Patents
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JP4517675B2 - 鞄地 - Google Patents

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Description

本発明は、環境負荷の少ない生分解性のポリ乳酸繊維からなる鞄地に関するものである。更に詳しくは、中空率の高いポリ乳酸フィラメントからなり、生分解性と共に、軽量性と嵩高性に優れ高級感があり、かつ耐久性に係る強度、耐摩耗性等が著しく改善された鞄地に関するものである。
ポリ乳酸繊維は、生分解性を有し、かつ非石油系原料から得られる繊維であるため、土中で自然分解させたり、コンポスト化分解が可能であり、しかも分解しても有害物質を生成しないことから、環境負荷の小さい繊維として注目され、広く用途開発が進められている。
例えば、水切りゴミ袋やティーバッグ、および土嚢袋や育苗マット等は、ポリ乳酸繊維の生分解性をそのまま活かせる用途として実用化が進んでいる。しかし、その他の用途、特に資材用途の大部分は、製品使用後の廃棄に関しては、環境負荷が少ないことをメリットとして活かせるものの、製品使用中は既存の資材用繊維が有している機能、例えば、強度、強靱性、弾性率、耐熱性等の初期特性や、耐摩耗性、耐ヘタリ性、耐疲労性等の耐久特性について、遜色ないレベルであることが求められている。従って、ポリ乳酸繊維の資材用途開発にあたっては、既存繊維と比較して、ポリ乳酸繊維の物性が劣る部分の改善に主に注力されてきた。ポリ乳酸繊維は、生分解性以外の機能については、既存繊維のレベルに達しないものが殆どであり、その結果、用途開発が進んでいなかったというのが実状である。
そこで、本発明者らは、むしろポリ乳酸繊維の生分解性以外の特徴を活かした新製品の開発に取り組むことを試みた。すなわち、ポリ乳酸ポリマーの特徴、ポテンシャルを十分活かした新規製糸技術を開発することにより、既存繊維では達成できなかった高機能のポリ乳酸繊維製品を開発しようと取り組んできた。
ポリ乳酸繊維の製造においては、ポリマーが高分子量であり、従って紡糸時のポリマーは高い溶融粘度を有し、かつ比較的低い融点の割には高いガラス転移温度を有すること等の特徴を有する結果、例えば、ポリ乳酸ポリマーを用いて異型断面繊維を製糸すると、変形度の高い断面の繊維が得られることが知られている。しかしながら、既存繊維よりも変形度の高すぎる異型断面繊維は、風合いが粗硬であったり、耐摩耗性や耐ヘタリ性が劣る等の欠点があり、これまではむしろ従来の繊維の特性に合わせようとして改良が進められてた。
しかるに本発明者らは、上記変形度の高い異型断面繊維が得やすいというポリ乳酸ポリマーの特徴を活かし、従来にない高中空率の中空ポリ乳酸繊維を得る製糸技術を開発したのである。そして、必要に応じ、更に中空ポリ乳酸繊維の軽量性および嵩高性を活かすため捲縮加工糸となし、該中空ポリ乳酸繊維を用いて鞄地とすることにより、従来存在しなかった軽量で嵩高性に優れた高級感のある鞄地を得るに至ったのである。
本発明のポリ乳酸繊維からなる鞄地に関し、従来技術として、特許文献1〜4がある。
特許文献1には、「良好な物理特性を有しながらソフトな風合いを有すると共に、生分解性を有するポリエステル中入れ綿」が開示されているが、その風合いとは中入れ綿用途に合わせたものであり、鞄地として適切なものではない。
特許文献2には、「バルキー性と摩耗耐久性にすぐれ、かつ良好なカバーリング性によって軽量化を可能としたカーペットを与え得る脂肪族ポリエステル糸、およびこの脂肪族ポリエステル糸をフェースヤーンとして用いてなるカーペット」が開示されているが、該特許文献に記載された発明は、カーペット用途に限定した脂肪族ポリエステル糸に関するものであり、また、その中空率は実質的に高々9%(実施例2および実施例3:Y型中空)や10%(実施例1:Y型中空、実施例4:田型中空)のものしか得られていない。本発明は、ポリ乳酸マルチフィラメントからなる鞄地に関するものであり、更には該特許文献技術より高中空率のポリ乳酸マルチフィラメントからなる鞄地に関する技術であり、全く相違する。
特許文献3には、「生分解性を有し、かつ紡出糸条の冷却性および機械的性能に優れ、また熱接着性を有する長繊維が開示されているが、該特許文献に記載された発明における長繊維は、実質的にはポリブチレンサクシネートであって、生分解性という点では本発明と共通であるものの、ポリマー構造の異なる素材に関する技術であり、鞄地に適切なっものではない。
特許文献4には、「恒久的な柔軟性と防水性とが確保され、且つ汚れのつきにくいリサイクル可能な鞄地およびそれを利用した鞄」として、「ポリエステル繊維からなる基布の少なくとも片側に、ポリエステル系エラストマーを被覆した鞄地。」が開示されているが、該特許文献に記載された発明は、ポリエチレンテレフタレートからなる中空繊維を用いた鞄地に関するものであるため、生分解性を有さないばかりか、鞄地として嵩高性や高級感は不充分であった。
特開2000−234252号公報 特開2002−227036号公報 特開平8−158154号公報 特開2000−17578号公報
本発明は、環境負荷の少ない生分解性のポリ乳酸繊維からなる鞄地であって、特に中空率の高いポリ乳酸フィラメントからなり、生分解性と共に、軽量性と嵩高性に優れ高級感があり、かつ耐久性に係る強度、耐摩耗性等が著しく改善された鞄地を提供することにある。
本発明の課題は、以下の手段によって達成できる。
(1)11〜70%の中空率を有し、強度が4.2〜9cN/dtexであるポリ乳酸マルチフィラメントからなることを特徴とする鞄地。
(2)ポリ乳酸マルチフィラメントの中空部が、溶融紡糸工程において形成されたものであることを特徴とする前記(1)に記載の鞄地。
(3)ポリ乳酸マルチフィラメントが捲縮糸または原着糸であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の鞄地。
(4)ポリ乳酸マルチフィラメントが脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを、フィラメント全体に対して0.1〜5重量%含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の鞄地。
)ポリ乳酸マルチフィラメントの単繊維繊度が1〜25dtex、総繊度が15〜2500dtexであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の鞄地。
)目付が100〜2000g/m2、見かけ密度が0.4〜1.0g/cm3の織編物であることを特徴とする前記(1)〜()のいずれか1項に記載の鞄地。
)前記(1)〜()のいずれか1項に記載の鞄地を用いてなる鞄。
本発明によれば、環境負荷の少ない生分解性のポリ乳酸繊維からなる鞄地であって、特に中空率の高いポリ乳酸フィラメントからなり、生分解性と共に、軽量性と嵩高性に優れ高級感があり、かつ耐久性に係る強度、耐摩耗性等が著しく改善された鞄地を得ることができる。
本発明鞄地は、特に軽量性と嵩高性に優れたキャリーバッグ、旅行用鞄、婦人用鞄、小物用鞄、ボストンバッグ、学生鞄、手提げ鞄、ショルダーバッグ、スーツケース、リュックサック、ナップサック等の鞄類に好適に用いることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の鞄地に用いられるポリ乳酸フィラメントはポリ乳酸ポリマーからなるものである。本発明においてポリ乳酸ポリマーとは、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものを言い、ポリマー内の乳酸のL体比率あるいはD体比率は95%以上であると、融点が高く好ましい。L体比率あるいはD体比率は、より好ましくは98.5%以上である。また、L体比率95%以上のポリ乳酸とD体比率95%以上のポリ乳酸を70/30〜30/70の比率でブレンドしたものは融点がさらに向上するため好ましい。ポリ乳酸ポリマーの分子量は、重量平均分子量で5万〜50万であると、力学特性と成形性のバランスが良く好ましい。また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合していても良く、また、ポリ乳酸以外のポリマーや粒子、艶消し剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、消臭剤、抗菌剤、抗酸化剤、耐熱剤、耐光剤、紫外線吸収剤、着色顔料等の添加物を必要に応じて含有させても良い。ポリ乳酸以外のポリマーとして、例えば、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、およびポリエチレンサクシネートのような脂肪族ポリエステルポリマーを可塑剤として用いることもできる。
しかし、本発明の鞄地に用いられるポリ乳酸フィラメントは、生分解性および非石油系原料であるという特徴を活かし、廃棄しても環境負荷の小さい製品として用いるため、石油系ポリマーのブレンド、該成分の共重合等は極力避け、また各種添加剤も、重金属化合物や環境ホルモン物質は勿論、現時点でその懸念が予想される化合物の一切を用いないことがより好ましい。
本発明の鞄地に用いられるポリ乳酸フィラメント、フィラメントの断面の中空率が11〜70%の高中空率を有する中空フィラメントである。中空率は、好ましくは21〜60%、より好ましくは31〜50%である。中空率は繊維フィラメントの断面において、中空部分が占める面積の割合である。11%未満では従来のポリ乳酸繊維と大差なく、本発明の軽量性および嵩高性等の特徴が十分得られない。70%を超える中空率は、通常の溶融紡糸法では得ることが困難であり、また、仮に得ることができたとしても、製品使用時に中空が潰れることによって、本発明の軽量性および嵩高性等の特徴が十分得られない。
本発明の鞄地に用いられるポリ乳酸フィラメントの中空部は、フィラメントの断面に中空部を1個以上有する。中空部が1個の場合は高中空率が得易く、2個以上の場合は、中空部がつぶれにくいという特徴を有するので、用途に合わせて選ぶことが必要である。高中空率と中空の潰れにくさのバランスの良いのは中空部が2〜4の中空断面であり、特に3つの中空断面糸が好ましい。また、繊維断面の外形は、丸型の他、三葉型や四角型以上の多葉型やその他の異型でも良い。
本発明における中空ポリ乳酸フィラメントは、溶融紡糸工程で中空部が形成されたものであることが好ましい。溶融紡糸工程での中空部の形成は、溶融紡糸口金の各フィラメント毎に微少間隔をもって穿孔したスリットから、溶融ポリマーを紡出し、冷却固化する迄に、各口金孔のスリットから紡出されるポリマーを溶融接着させることによって行われる。この溶融接着法は効率的な方法であり、低コストで製造できることから中空フィラメントの製造法として一般的に採用される。本方法によれば、本発明における中空ポリ乳酸フラメントの多様な断面形状を得ることが可能である。
別の方法として、芯部に可溶性ポリマー、鞘部にポリ乳酸ポリマーを用いて芯鞘複合繊維を製糸し、該複合繊維の芯部を溶剤で溶解除去する方法がある。この方法は、前記方法に比較して高中空率が得やすいが、芯部ポリマーと溶剤の選択、および芯部ポリマーの溶解工程が必要なことから、製造コストが高くなるという欠点がある。
本発明における中空ポリ乳酸フィラメントは、鞄地としたときの高級感からマルチフィラメントである。しかしながら、該中空ポリ乳酸フィラメントを更に捲縮糸に加工して用いることにより、一層軽量で嵩高性に優れた高級感ある鞄地を得ることができる。捲縮糸は通常の仮撚法、スタッフィング法、エアジェット法等で代表されるような捲縮加工によって製造することができ、鞄地の用途に応じて加工法を選択することができる。仮撚法やスタッフィング法を用いた場合は伸縮性と嵩高性が、またエアジェット法を用いた場合は嵩高で非伸縮性の捲縮糸を得ることができる。捲縮加工時に一部中空部が潰れることもあるが、鞄地とした時に、捲縮の発現による嵩高性の増加と中空部の潰れによる中空率の低下を考慮し、最も軽量化に効果的な条件を選ぶことが好ましい。
また、本発明の鞄地に用いられるポリ乳酸マルチフィラメントは原着糸として用いることが好ましい。一般にポリ乳酸繊維は、染色時に加水分解が起こり、ポリマーの分子量が低下して強度が低下することが知られている。従って、それを避けるために染色工程を適用しない原着のポリ乳酸マルチフィラメントを得て、本発明の鞄地とすることが好ましい。
本発明にかかる原着のポリ乳酸フィラメントに用いる着色剤は、ポリ乳酸繊維に適切な特定の無機、有機顔料および染料である。具体的には、鉛、クロムおよびカドミウムを除く酸化物系無機顔料、フェロシアン化物無機顔料、珪酸塩無機顔料、炭酸塩無機顔料、燐酸塩無機顔料、カーボンブラック、アルミニウム粉、ブロンズ粉およびチタン粉末被覆雲母等の無機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、イソイントセリノン系有機顔料等の有機顔料、および複素環系染料、ヘリノン系染料、ペリレン系染料およびチオインジオ系染料等から選ばれた2種以上を組み合わせたものである。例えば、無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタン・コバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−鉄系ブラック等の酸化物、紺青のようなフェロシアン化物、郡青のような珪酸塩、炭酸カルシウムのような炭酸塩、マンガンバイオレットのような燐酸塩、カーボンブラック、アルミニウム粉やブロンズ粉、およびチタン粉末被覆雲母等が用いられ、鉛、クロムおよびカドミウム等の重金属を含む無機顔料は用いない。有機顔料としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーンおよび臭素化銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系、ペリレンスカーレット、ペリレンレァ、ペリレンマルーン等のペリレン系、イソインドリノン系等が用いられる。また、染料としては、アンスラキノン系、例えば、Solvent R.50、Solvent R.111、Solvent B.94、Solvent V.50、Solvent G.3、複素環系、例えば、Solvent Y.33、Solvent Y.111、Solvent Y.54、ヘリノン系、例えば、Solvent O.60、Solvent R.135、Solvent R.179、ペリレン系、例えば、Solvent G.5、チオインジオ系、例えばVat R. 1が用いられる。
本発明における原着のポリ乳酸フィラメントに用いられる着色剤は、上記無機顔料、有機顔料および染料から選ばれた1種または2種以上を組み合わせて用いる。
該着色剤の添加濃度は、ポリマー重量当たり100〜30000ppm、好ましくは500〜10000ppmである。また、着色剤は通常用いられる分散剤と併用して用いることもできる。
次に、本発明の鞄地に用いられるポリ乳酸フィラメントは、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを繊維全体に対して0.1〜5重量%含有することが好ましい。脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを含有するポリ乳酸フィラメントは、前記従来にない高中空率と高強度を兼備すると共に、耐摩耗性や耐屈曲疲労性等の耐久性に優れるという特徴を付加することができる。更に、繊維の表面がしっとりとした触感となり、かつ透明感と深みのある色調を有する等の特徴も得られる。
本発明における脂肪酸ビスアミドとは、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、芳香族系ビスアミド等の1分子中にアミド結合を2つ有する化合物を指し、例えば、メチレンビスカプリル酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスイソステアリン酸アミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、p−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’−ジステアリルテレフタル酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等である。
また、本発明でいうアルキル置換型の脂肪酸モノアミドとは、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置き換えた構造の化合物を指し、例えば、N−ラウリルラウリン酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ベヘニルベヘニン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等が挙げられる。該アルキル基は、その構造中にヒドロキシル基等の置換基が導入されていても良く、例えば、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミド、N−ステアリル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイル12ヒドロキシステアリン酸アミド等も本発明のアルキル置換型の脂肪酸モノアミドに含む。
本発明で好ましく用いられるのは脂肪酸ビスアミドやアルキル置換型の脂肪酸モノアミドであるが、これらの化合物は、通常の脂肪酸モノアミドに比べてアミドの反応性が低く、溶融成形時においてポリ乳酸との反応が起こりにくい。また、高分子量のものが多いため、一般に耐熱性が良く、昇華しにくいという特徴がある。特に、脂肪酸ビスアミドは、アミドの反応性がさらに低いためポリ乳酸と反応しにくく、また、高分子量であるため耐熱性が良く、昇華しにくいことから、より好ましく用いることができる。
本発明の鞄地に用いられるポリ乳酸フィラメントは、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドが繊維全体に対して0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%含有する。0.1重量%未満では耐摩耗性や耐屈曲疲労性等の耐久性が十分に得られず、一方、5重量%を超えると、またポリ乳酸マルチフィラメントの強度が低下し、また製糸工程で糸切れが多発し、生産収率が低下するため好ましくない。
上記脂肪酸アミドは単一で添加しても良いし、また複数の成分を混合して用いても良い。混合して用いる場合も、その混合物全体として0.1〜5重量%含有させれば良い。
本発明の鞄地に好ましく用いられるポリ乳酸マルチフィラメントは、強度が4.2〜9cN/dtex、好ましくは4.2〜8cN/dtex、より好ましくは5〜8cN/dtexである。3cN/dtex未満では鞄地としての強度が不足することがある。一方、強度は高いほど好ましいが、9cN/dtexを超えるものを工業的に生産することは現時点では困難である。
本発明の鞄地に好ましく用いられるポリ乳酸マルチフィラメントは、単繊維繊度が1〜25dtexであることが好ましい。本発明の鞄地に好ましく用いられるポリ乳酸マルチフィラメントにおいて、単繊維繊度が1dtex未満では耐摩耗性が十分でなかったり、鞄地のハリ・腰が十分でないことがある。一方、単繊維繊度が25dtexを越えると、鞄地の表面が粗硬となり、高級感が十分得られないことがある。
また、総繊度は15〜2500dtexであることが好ましい。15dtex未満では鞄地としての厚みが十分でなく、かつ強度も不足する。一方、2500dtexを超えると厚い鞄地となり、通常の鞄地として使いこなすことが困難である。
本発明のポリ乳酸フィラメントからなる鞄地は、織編物の基布特にマルチフィラメントの織編物からなる。織編物とすることにより軽量性、嵩高性、高級感、機械的強度や耐久性等を満足する本発明の鞄地が得られる。基布が織編物以外、例えば不織布からなる場合は、軽量性や嵩高性は満足するものの、高級感にやや劣り、強度や耐摩耗性等も不十分な場合があるので、好ましくは織編物である。
本発明のポリ乳酸フィラメントからなる鞄地は、最も重要な特性である軽量性を満足させるため、目付は100〜2000g/m2であることが好ましい。好ましくは、150〜1000g/m2、更に好ましくは、200〜450g/m2である。100g/m2以上で有れば嵩高性が良好であり、高級感を十分に有すると共に、鞄地としての強度や耐久性が十分に得られる。一方、2000g/m2であれば、軽量性を活かした鞄地となる。
本発明のポリ乳酸フィラメントからなる鞄地の特徴である軽量性および主に嵩高性によって醸し出される高級感は、鞄地の見かけ密度が0.4〜1.0g/cm3と低密度であることによって特徴づけられる。好ましくは、0.5〜0.8g/cm3である。見かけ密度は低いほど軽量で嵩高性に優れた鞄地が得られるが同時に強度および耐久性が低下するので、本発明においては0.4以上の目付とすることにより嵩高性や強度および耐久性等が十分な鞄地とすることができる。一方、見かけ密度を1.0g/cm3以下とすれば、従来の鞄地と比べ顕著に軽量な鞄地とすることができる。鞄地の見かけ密度を0.4〜1.0g/cm3とするには、軽量性や嵩高性を有する中空ポリ乳酸繊維、特に中空ポリ乳酸捲縮糸を用いることが好ましい。即ち、本発明において、中空率11〜70%の中空ポリ乳酸繊維を用いた場合には、中実のポリ乳酸繊維(密度1.27g/cm3)に対し、見かけ密度は0.38〜1.13g/cm3と軽量である。さらに、中空率が31%ともなれば見かけ密度は0.88g/cm3となり、水に浮くことは勿論、汎用の樹脂からなる繊維で最も軽量とされるポリプロピレン繊維よりも軽量となる。また、見かけ体積は1.12〜3.33倍となるため、嵩高性を大きくすることができる。
更に、本発明において中空ポリ乳酸捲縮糸を用いた場合には、捲縮による嵩高性が付加され、また編地とした場合には更に嵩高性となるので、極めて軽量で嵩高性のある鞄地が得られる。
また、本発明におけるポリ乳酸マルチフィラメントからなる鞄地が高級感を醸し出すのは、上記軽量性や嵩高性に加え、本発明にかかるポリ乳酸マルチフィラメンが前記脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを含有することにより、深みのある真珠様光沢としっとりとした風合いが得られることによると考えられる。
本発明のポリ乳酸マルチフィラメントからなる鞄地は、特に軽量性と嵩高性に優れたキャリーバッグ、旅行用鞄、婦人用鞄、小物用鞄、ボストンバッグ、学生鞄、手提げ鞄、ショルダーバッグ、スーツケース、リュックサック、ナップサック等の鞄類に好適に用いることができる。
次に、本発明鞄地用のポリ乳酸フィラメントの製造方法についてマルチフィラメントを例にとって詳細に説明する。
本発明におけるポリ乳酸マルチフィラメントは、溶融紡糸法にて製造されるが、特に、中空ポリ乳酸マルチフィラメントの場合には、溶融紡糸工程において、紡糸口金面より0〜15cmを上端とし、その上端から5〜100cmの範囲を加熱筒および/または断熱筒で囲むことによって、紡出糸条を160〜280℃の高温雰囲気にさらすことが好ましい。
上記ポリ乳酸マルチフィラメントの製造プロセスを詳述するため、典型的な直接紡糸延伸装置の一例を図1に示した。
まず、本発明においてポリ乳酸マルチフィラメントの原料となるポリ乳酸ポリマーは、公知の方法を用いて合成できるが、ポリ乳酸自体の色調が良好で、しかもラクチド等の残存オリゴマーやモノマーを減じるようにすることが好ましい。具体的手法は例えば特表平7−504939号公報記載のように、金属不活性化剤や酸化防止剤等を使用したり、重合温度の低温化、触媒添加率の抑制を行うことが好ましい。また、ポリマーを減圧処理したり、クロロホルム等で抽出することにより、残存オリゴマー、モノマー量を大幅に低減することもできる。
本発明におけるポリ乳酸マルチフィラメントの製造に用いるポリ乳酸は、相対粘度が好ましくは2.5〜5、より好ましくは、3.5〜4.5の範囲の高粘度ポリマーを用いる。相対粘度が2.5未満のポリマーを用いた場合は、本発明の高強度で耐摩耗性に優れたポリ乳酸マルチフィラメントを安定して得ることができないことがある。一方、相対粘度が5を超える高粘度のポリマーを用いると、安定した製糸が困難であり、均一性に優れたポリ乳酸マルチフィラメントが得られないことがある。ポリ乳酸ポリマーは、ポリマー中の水分が0.1重量%以下として溶融紡糸に供するため、通常80〜130℃で5時間以上乾燥して水分を除去する。
本発明におけるポリ乳酸マルチフィラメントに脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤を含有させる方法は、特に限定されないが、例えば以下の方法を採用することができる。まず、混練工程として、ポリ乳酸と脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤を乾燥した後、窒素シールされた混練用エクストルーダに供給して混練チップを作製する。次に、この混練チップをエクストルーダに供することによって溶融紡糸を行う。混練工程では、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤を高比率で含有した混練チップを作製し(マスターチップ化)、これを紡糸機に供する際に脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤が所望の含有量になるように通常のポリ乳酸チップをブレンドして希釈する方法を用いることができる。また、溶融紡糸工程では、エクストルーダとパックの間、またはパック内に静止混練器を設置することにより、ポリ乳酸と脂肪酸アミドや原着糸用着色剤をさらに微細に混練させることも可能である。脂肪酸アミドや原着糸用着色剤の凝集や、繊維表面へのブリードアウトはガイド類やローラーの汚れによる操業性の低下を引き起こしたり、繊維製品の物性斑や染色斑を引き起こすため、混練工程や溶融紡糸工程では、脂肪酸アミドや原着糸用着色剤をポリ乳酸に微分散させることが好ましい。
また、混練と溶融紡糸を同一工程で行っても良く、例えば次のような方法を用いることもできる。第1の方法は、ポリ乳酸と脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤を乾燥した後、窒素でシールされたエクストルーダに供給し、エクストルーダにより混練されたポリ乳酸と脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤の混練ポリマー融液を、静止混練器によりさらに微細に混練し、吐出孔から吐出し溶融紡糸する方法である。また、第2の方法は、ポリ乳酸と脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミド、および/または原着糸用着色剤を別々に溶融し、融液を静止混練器により微細に混練し、吐出孔から吐出し溶融紡糸する方法である。
脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドは、ブレンドポリマーの全量に対して、好ましくは0.1〜5重量%含有させる。該脂肪酸アミドの含有量を0.1重量%未満では、繊維の表面摩擦係数を低減することができず、製織や製編工程での工程通過性を向上させることができにくくなる。また、該脂肪酸アミドの含有量が5重量%を超えると、混練や紡糸の際に、過剰の脂肪酸アミドが溶融ポリマーからブリードアウトし、これが昇華或いは分解して発煙を引き起こすといった作業環境の悪化や、過剰の脂肪酸アミドの昇華物あるいは分解物によって押し出し混練機や溶融紡糸機が汚れる等の操業性の低下を防ぐことができなくなる。また、該脂肪酸アミドの含有量が5重量%を超えると、紡糸工程で、脂肪酸アミドの溶融ポリマーからのブリードアウトが抑制されず、それによって、吐出孔からのポリマーの吐出が不安定となり、均一な物性の繊維が得られにくくなる。該脂肪酸アミドの含有量は、好ましくは0.5〜3重量%である。なお、本発明では、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを用いるが、これらは従来技術の脂肪酸モノアミドに比べて、昇華しにくく、また耐熱性に優れるため、好ましい滑剤である。特に、脂肪酸ビスアミドは、アミドの反応性がさらに低いためポリ乳酸と反応しにくく、また、高分子量であるため耐熱性が良く、昇華しにくいことから好ましく用いることができる。
また、原着糸用着色剤は、ブレンドポリマーの全量に対して、好ましくは100〜30000ppm、より好ましくは500〜10000ppm含有させれば良い。原着糸用着色剤の含有量を100ppm以上とすることで、斑が無く、且つ所望の色に着色された繊維を製造することができる。また、30000ppm以下とすることで、着色剤の凝集によって生じる溶融紡糸・延伸、或いは製織、製編工程での糸切れによる工程不安定化を回避することができる。また、着色剤の凝集を抑制するために、着色剤を通常用いられる分散剤と併用して用いることもできる。
本発明におけるポリ乳酸マルチフィラメントを溶融紡糸・延伸して製造するに際して、紡糸温度は、190〜260℃、好ましくは200〜240℃である。
また、中空ポリ乳酸マルチフィラメント用口金は、例えば、丸型一中空断面糸の場合には、図2に示した口金孔を有する口金を用いることによって達せられる。この場合には、高中空率の観点から、スリット幅/スリット直径の比は小さいものが好ましく、好ましくは0.05〜0.40、より好ましくは0.05〜0.25が良い。スリット幅/スリット直径の比が0.05未満であると中空率が高くなり過ぎて、延伸工程や製織、製編工程で中空が潰れる場合があり好ましくない。また、0.40を超えると十分な中空率とならないため本発明の効果が得られず好ましくない。スリット幅は、好ましくは0.1〜0.6mm、より好ましくは0.2〜0.5mm、スリット直径は好ましくは0.5〜4.0mm、より好ましくは1.0〜3.0mmとすれば良い。さらに、前述の通りポリ乳酸はそのポリマー気質により変形度が高いため、スリットから吐出されたポリマーは熱緩和が少なくそのままの形状を保とうとする傾向にある。このことから、スリット数が2や3の場合には、丸形中空を取りにくく、高中空率を達成できないことがある。従って、好ましいスリット数は4以上、或いは1(C型孔)である。スリット数が10以上では、口金設計が煩雑となり、工業的観点から現実的でない。
口金孔の形状は、図2に示したものに限定されず、ポリ乳酸ポリマーの溶融粘度、紡糸温度、口金下の徐冷条件および冷却固化条件を考慮し、目的とする中空率が得られるよう設計したものを用いれば良い。例えば、Y型中空断面糸、田型中空断面糸の場合には、それぞれ図3、4のような口金設計にすれば良い。
本発明における中空ポリ乳酸マルチフィラメントの製造方法においては、紡糸口金面より0〜15cmを上端とし、その上端から5〜100cmの範囲を加熱筒および/または断熱筒で囲むことによって、紡出糸条を160〜280℃の高温雰囲気にさらすことが好ましく用いられる。発明者らは、下記の通りの観点から、該工程が高強度と高中空率を兼備したポリ乳酸マルチフィラメントを製造するに際し、必要不可欠であると考える。
一般に、溶融紡糸によって中空繊維を製造するにあたり、結晶性高分子を使用した場合には、紡糸口金孔より紡出された中空の糸条は、分子鎖の熱緩和によって徐々に中空部が埋まってしまうことが知られている。よって、高い中空率を得ようとすると、直ちに冷風を吹きつけて急冷固化することが必要である。しかしながら、紡出糸条を急冷すると溶融状態から固化するまでの領域が狭くなり、その狭い領域で紡糸張力を受け持つため、糸条の細化変形が急激に起こる。その結果、分子鎖が高度に配向し、未延伸糸は配向・結晶化の進んだものしか得られない。このような未延伸糸の場合、高倍率延伸ができず、高配向で高強度の延伸糸は得られない。また、口金直下での急激な冷却は、冷却の不均一を生じる原因ともなり、これによっても高倍率延伸による高強度化が困難となる。従って、高中空率と高強度を兼備するポリ乳酸マルチフィラメントは通常のポリ乳酸の製造方法では到底得ることができないものであった。しかるに、本発明における中空ポリ乳酸マルチフィラメントは、紡糸口金の直下を前記の通り高温雰囲気に保ち、紡出糸条を通過させることによって、糸条は徐々に冷却されるため分子鎖の急激な配向は起こらず、低配向の未延伸糸が得られ、その結果高倍率延伸ができ、高強度繊維が得られる。本発明のポリ乳酸マルチフィラメントは、かかる口金直下に徐冷ゾーンを設けて徐々に冷却しても、十分中空率が保持できることが特徴である。ポリ乳酸ポリマーが比較的高重合度で、本発明の紡糸温度では高溶融粘度であること、および紡糸温度と融点との差(約20〜90℃)が比較的大きいこと、および融点が低いにも拘わらずガラス転移温度が比較的高く、比較的繊維構造が固定され易いこと等、ポリ乳酸ポリマーの特徴を活かして紡糸条件を設定することによって達成されるものと考える。
中空ポリ乳酸マルチフィラメントは非常に軽量であるため、中空でない通常のポリ乳酸マルチフィラメントに比べると、紡糸工程において外気の影響を受けやすく、特に口金直下から冷却固化されるまでの紡出糸条の走行性が不安定である。そして、これによって糸揺れや糸切れが発生し、得られる繊維に物性斑が生じたり、操業性が悪くなることがある。しかるに、紡出糸条の走行安定性を保つために、紡出糸条をある一方向からではなく、周囲全体から均一に、また最適化された温度と速度の冷却風で冷却するという観点から、紡出糸条に対して、環状型吹き出しタイプの空冷装置にて10〜50℃の冷却風を風速10〜50m/分で吹き付けることによって、冷却固化させることが好ましい。
冷却固化された未延伸フィラメントは、次いで油剤が付与される。油剤は、平滑剤を主成分とし、界面活性剤、制電剤、極圧剤成分等を含むが、ポリ乳酸繊維に活性な成分を除いた油剤組成とすることが必要である。好ましい油剤組成は、例えば、平滑剤としてアルキルエーテルエステル、界面活性剤として高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、極圧剤として有機ホスフェート塩等を鉱物油で希釈した非水系油剤である。
油剤を付与された未延伸フィラメント糸条は、引き取りロール(1FR)に捲回して引き取る。引き取りロールの速度、即ち紡糸速度は好ましくは300〜3000m/分である。300m/分未満の紡糸速度でも本発明ポリ乳酸マルチフィラメントの物性は得られるが、生産効率が低いため、工業的には採用し難い。一方、3000m/分を超える紡糸速度では、本発明における高強度のポリ乳酸マルチフィラメントは安定して得られない。
上記紡糸速度で引き取られた未延伸糸は一旦巻き取られることなく連続して延伸する。引き取りロール(1FR)と同様に、2個のロールを1ユニットとするネルソン型ロールを、給糸ロール(2FR)、第1延伸ロール(1DR)、第2延伸ロール(2DR)、第3延伸ロール(3DR)および弛緩ロール(RR)と並べて配置し、順次糸条を捲回して延伸熱処理を行う。通常、1FRと2FR間では、好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1〜5%程度のストレッチを行い糸条を集束させる。1FRは好ましくは50〜80℃、より好ましくは55〜70℃に加熱して、引き取り糸条を予熱して次の延伸工程に送る。1DRと2DR間で1段目の延伸を行うが、この時ドローポイント、即ちネッキングポイントは1DRのロール上で、ロールから離れる直前数cm以内に安定して位置するように、2FRと1DRの温度および1段めの延伸倍率を設定する。但しこれらの条件は、未延伸糸の配向の程度を考慮して変化させる必要がある。通常、2FRの温度は好ましくは60〜120℃、より好ましくは90〜110℃とし、1DRの温度を好ましくは90〜130℃、より好ましくは100〜120℃とし、かつ1段目の延伸倍率を、総合延伸倍率の好ましくは10〜70%、より好ましくは20〜50%に設定する。上記条件の範囲でドローポイントが2FRのロール上出口近傍に位置するように設定する。更に、ドローポイントを2FRのロール上出口に位置するように設定するためには該ロールは摩擦の低い梨地ロールであることが好ましい。
2段目の延伸は1DRと2DR間で行うが、2DRは好ましくは110〜150℃、より好ましくは115〜145℃である。2段延伸の場合は総合延伸倍率に対し、1段目の延伸倍率の残りの延伸をこの間で行う。3段延伸の場合は、残りの延伸倍率を2段に分けて行う。3段延伸を行う場合の3DRの温度は好ましくは120〜150℃、より好ましくは125〜145℃である。2段延伸または3段延伸を終った糸条はRRとの間で好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1〜7%の弛緩処理を行い、熱延伸によって生じた歪みを取るだけで無く、延伸によって達成された高配向構造を固定したり、非晶領域の配向を緩和させ熱収縮率を下げたりすることができる。RRは無加熱ロールまたは、150℃以下に加熱したロールを用いる。通常、熱延伸時に加熱された糸条の持ち込む熱によって、RRは加熱の有無にかかわらず90〜150℃の温度となる。
また、本発明におけるポリ乳酸マルチフィラメントの製造方法において、延伸段数は好ましくは2〜5段、より好ましくは3〜5段の多段延伸とすることがよい。延伸段数が1段の場合には高倍率に延伸することができないため、高強度の繊維が得られにくい。また、延伸段数が5段以上となる場合には設備の大型化や製造工程が複雑化するため好ましくない。また、本発明において、トータル延伸倍率は紡糸速度にもよるが、2〜10倍であることが好ましい。延伸倍率が2倍未満であると、所望の強度が得られず、また、10倍を超えると、糸切れが多発し工程通過性が悪くなるため好ましくない。
捲縮加工を施す場合は、上記製糸工程とは別工程で行っても良いし、連続して行っても良い。連続して行う場合は、製糸速度に合わせた高速の捲縮加工が必要なことから、可能な加工法は限定され、スタッフィング法が一般に採用される。
該製糸工程に直結したスタッフィング法の一例を挙げると以下の通りである。
前記ポリ乳酸マルチフィラントの製糸工程において、熱延伸が終了した糸条は連続して捲縮加工工程に送られ、加熱流体捲縮付与装置に導入して捲縮が付与される。加熱流体捲縮付与装置は加熱高圧流体を糸条に噴射して単糸をランダムに交絡させ、3次元ループやタルミを形成させる加熱流体噴射ノズル装置、上記捲縮糸を更に加熱流体の下に圧縮熱処理を行うための圧縮熱処理装置、および捲縮加工された糸条を加熱と共に噴き出させ、該糸条を冷却するための回転移送装置からなる。加熱流体は過熱蒸気または加熱空気を用いる。加熱流体の温度は130〜200℃が好ましく、加熱流体の乾き度、圧力、流量、および処理するポリ乳酸繊維の繊度、処理速度等に応じて適切な条件を選択する。また、圧縮熱処理装置は薄いリングを一定の間隙を持たせて積層した環状の装置であり、リング間の間隙より流体は吸引される。該圧縮熱処理装置内の糸条は折り畳まれ、積層されながら一定時間滞留して熱処理された後、回転移送装置上へ噴出される。回転移送装置上に噴出された捲縮糸条はプラグ状であるが、回転移送装置表面のパンチング孔で吸引されされながら移送される。
次に、回転移送装置上の捲縮糸条は該装置上から順次引き取られ、回転速度の異なる2対のネルソンタイプロールまたはセバレート型ロールに捲回されて捲縮を解きほぐされる。この間のストレッチは3〜10%で行い、糸条の温度が40〜60℃で行う。3%未満では捲縮が完全に解れないことがあり、一方、10%を越えると捲縮が潜在化し過ぎ、嵩高性が得にくくなる。通常、この時のストレッチ張力を張力計で連続して測定し、常時モニタリングして品質管理を行う。このストレッチ張力は前記捲縮加工プロセスにおける捲縮加工前の原糸の特性、捲縮処理条件および捲縮を解きほぐす条件等と密接に関係し、本発明に係る捲縮糸の特性、特に捲縮伸長率や捲縮潜在化率に影響を与え、結果として本発明効果である捲縮糸の嵩高性、耐ヘタリ性や耐摩耗性等の耐久性の改善にかかわっている。好ましいストレッチ張力は、例えば、6%伸長した時のストレッチ張力が0.05〜0.2cN/dtexであり、更に好ましくは0.08〜0.15cN/dtexである。
次に該捲縮糸には交絡ノズルを通して交絡処理をする。該交絡ノズルは通常2〜6孔を備え、走行捲縮糸条に対し略直角方向から0.1〜0.6Paの高圧空気を噴射させて交絡処理する。交絡数および交絡の強さは、交絡ノズルの性能、高圧圧空の圧力および流量、走行糸条の繊度および張力等によって変化するが、交絡数および交絡の強さが前記本発明で特定した範囲となるよう交絡条件を設定して製造する。
一方、捲縮加工処理を別工程で行う場合は、特に加工法に制約はなく、本発明の鞄地用として適切なポリ乳酸捲縮糸が得られる加工法を採用すれば良い。すなわち、仮撚加工、スタッフィング法、エアジェット法等いずれでも良く、嵩高性と伸縮性、嵩高性で非伸縮性等、それぞれ特徴のある捲縮糸特性が得られる方法を採用すれば良い。スタッフィング法の場合は、上記連続捲縮加工プロセスに準じて行うことができる。
かくして、本発明の鞄地に用いられるポリ乳酸マルチフィラメントが得られる。
次に、本発明の鞄地の製造について説明する。
本発明の鞄地は、上記ポリ乳酸フィラメント、特にポリ乳酸マルチフィラメントを用いた織編物の基布であることが好ましい。織編物の基布は従来公知の方法で作製することができる。例えば、織物の形態としては、特に限定されないが、平織り、綾織り、サテン織り、絡み織り等、従来公知の形態を適宜採用できる。また、編物の形態としては、特に限定されないが、丸編み、横編み、トリコット編み、ラッセル編み等、従来公知の形態を適宜採用できる。この時、用途によっても異なるが、鞄地の目付が100〜2000g/m2、見かけ密度が0.4〜1.0g/cm3となるように、織り密度や編み密度を設定すれば良い。その後、得られた鞄地に対して、必要に応じてコーティングやラミネート、ディッピング等の加工を施す。これらの加工についても、従来公知の方法が採用でき、使用する樹脂も用途や要求特性に応じて適宜採用できる。例えば、撥水性を付与するには、塩化ビニルやエチレンビニルアルコール(EVA)、ポリウレタンを、また、完全生分解型の鞄地としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、およびポリエチレンサクシネートのような生分解性樹脂を好適に用いることができる。
本発明の鞄は上記鞄地を用いて作製したものであり、軽量性かつ高級感を有する鞄とすることができる。なお、本発明の鞄地の生分解性という特性を活かすためには、鞄地の他の材料、例えば裏地、縫い糸、取っ手、ファスナー等の全ての構成要素を生分解性の材料で構成することが好ましい。なかでも縫い糸は廃棄時の完全分離が困難なことから、生分解性ポリマの縫い糸、例えばポリ乳酸の縫い糸を用いることは好ましい実施形態である。
鞄としては、キャリーバッグ、旅行用鞄、婦人用鞄、小物用鞄、ボストンバッグ、学生鞄、手提げ鞄、ショルダーバッグ、スーツケース、リュックサック、ナップサック、スポーツバッグ、ゴルフバッグ、各種のポーチ等が挙げられる。
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。なお、本文および実施例中に記述した特性の定義およびの測定方法は以下の通りである。
A.相対粘度
0.5gのサンプルに対し25mLのクロロホルムを加え、5時間かけて攪拌してポリマーを溶解させた後、クロロホルムを加えて50mLに希釈した。希釈溶液を試験温度30℃でSchott AVS500auto viscometerを用いて測定し、下記式に基づいて相対粘度ηrを求めた。測定は3回行い、その平均値とした。
ηr=t/t0
t:溶液の流下秒数
0:溶媒(クロロホルムのみ)の流下秒数
B.繊度
JIS L1090に準じて測定した。
C.強度、伸度
JIS L1013に準じて測定した。オリエンテック社製テンシロン引張り試験機を用い、試長250mm、引張速度300mm/minの条件で強力を測定した。強度は強力を測定した試料の総繊度で除した値である。
D.乾熱収縮率
JIS L1013に準じて、120℃で測定した。同一試料から3検体採取して測定し、その平均値を求めた。
E.中空率
単糸断面を切断して、光学顕微鏡で100倍の拡大写真を撮り、中空部を含む単糸全体の断面積Sと中空部の断面積Tを求め、下記式にて算出した。同一試料5検体の平均値をその試料の中空率とした。
中空率(%)=100×T/S
F.生分解性
鞄地から縦200mm×横200mmの試験片を切り出し、この試験片を温度58℃、水分率65重量%に保たれたコンポストに投入し、1ヶ月後に取り出してその状態を観察した。
○:分解が進行しており、穴の空いた箇所が多く存在する。
×:投入前と殆ど変わりない。
G.見かけ密度
鞄地の目付(g/m2)及び厚さ(mm)を測定し、下記式にて算出した。厚さは5箇所の平均値を用いた。
見かけ密度(g/cm3)=(目付/厚さ)×10-3
H.軽量性
10人の試験者が、縦2m×横2mの鞄地を8つ折りにした状態で両手で持ち上げ、次の指標で官能評価した。
◎:鞄地の厚みからは想像がつかない程に非常に軽い
○:鞄地の厚みに反して非常に軽い。
△:鞄地の厚みに反してまずまず軽い。
×:鞄地の厚みから想像できる通りの重さ。
I.嵩高性
10人の試験者が、縦2m×横2mの鞄地を8つ折りにした状態で利き手で触り、次の指標で官能評価した。
◎:非常に厚みが感じられ、嵩高性に極めて優れる。
○:厚みが感じられ、嵩高性は良好。
△:厚みがやや不足しており、嵩高性はまずまず。
×:厚みが不足しており、あまり嵩高くない。
J.耐摩耗性
鞄地から直径120mmの試験片を切り出し、ASTM D1175に規定されるテーバー摩耗試験機に取り付け、摩耗輪CS#10、荷重500gとして、500回転摩耗を行った。その後、この試験片の表面摩耗状態を観察し、次の指標で耐摩耗性を評価した。
◎:全く摩耗していない。
○:殆ど摩耗していない。
△:少し摩耗している。
×:かなり摩耗している。
K.高級感
10人の試験者が、縦2m×横2mの鞄地を8つ折りにした状態で利き手で触り、次の指標で官能評価した。
◎:ソフトでしなやかであり、且つ弾力感があり、肌触りが極めて良好。
○:ソフトでしなやかであり、肌触りが良好
△:ソフトであるが、しなやかさがやや不足しており、肌触りはまずまず良好
×:ソフト感、しなやかさ共に不足している。
[製造例1](ポリ乳酸の製造)
光学純度99.5%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)存在させてチッソ雰囲気下180℃で200分間重合を行いポリ乳酸P1を得た。得られたポリ乳酸の相対粘度は4.0であった。
[製造例2](EBAを5重量%含有したポリ乳酸の製造)
P1とエチレンビスステアリン酸アミド(EBA)[日本油脂社製「アルフローH−50S」]を乾燥した後、P1:EBA=95:5(重量比)となるようにEBAを計量して連続的にP1に添加しながらシリンダー温度200℃の2軸混練押し出し機に供することで、EBAを5重量%含有したポリ乳酸P2を得た。
[製造例3](SAを5重量%含有したポリ乳酸の製造)
EBAをモノアミドのステアリン酸アミド(SA)[日本油脂社製「アルフローS−10」]に変える以外は製造例2と同様にして、SAを5重量%含有したポリ乳酸P3を得た。
[製造例4](着色剤を15重量%含有したポリ乳酸の製造)
P1:着色剤(カーボンブラック)=85:15(重量比)として、製造例2と同様にして、着色剤を15重量%含有したポリ乳酸P4を得た。
実施例1
真空下100℃×12時間乾燥したP1をホッパー(1)に仕込み、このチップをエクストルーダー(2)で220℃で溶融した後、220℃に加熱されたスピンブロック(3)に設置された紡糸パック(4)に溶融ポリマーを導き、スリット幅(18)0.35mm、スリット直径(19)1.8mm、スリット数4の細孔を48ホ−ル有する口金(5)から紡出した。
口金の直下は、口金面より5cmを上端とし、その上端から30cmの加熱筒(6)とその下に20cmの断熱筒(7)を取り付け、口金直下温度(口金面から20cm下、加熱筒中央部の空気層温度)が230℃となるように加熱筒を加熱した。
断熱筒の直下には環状吹き出し型チムニー(8)を取付け、糸条に30℃の冷風を30m/分の速度で吹き付け冷却固化した後、油剤を付与した。油剤は、イソC24アルコール/チオジプロピオン酸エステル(40重量%)、C11〜15アルコールAOA/チオジプロピオン酸エステル(30重量%)、トリメチロールプロパンAOAジステアレート(10重量%)、C8アルコールAOA(10重量%)、硬化ヒマシ油(7重量%)、ステアリルアミンEO15(3重量%)を鉱物油で20重量%に希釈した非水系油剤を用いた。
給油装置(9)にて油剤を付与された未延伸糸条は、500m/分の速度で回転する引き取りロ−ル(1FR)(10)に捲回して引取った。次いで、引取り糸条は一旦巻き取ることなく連続して該引取りロ−ルと給糸ロ−ル(2FR)(11)との間で1.5%のストレッチをかけた後、引き続いて3段熱延伸を行った後、1.5%の弛緩を与えてから巻き取った。1FRは60℃、、2FRは100℃、第1延伸ロ−ル(1DR)(12)は115℃、第2延伸ロール(2DR)(13)は140℃、第3延伸ロール(3DR)(14)は140℃とし、弛緩ロ−ル(RR)(15)は非加熱とした。
なお、弛緩ロールと巻き取り機(17)の間には交絡ノズル(16)を取り付け、0.2MPaの圧空を噴射することによって繊維に交絡を付与した。1段目の延伸倍率は、総合延伸倍率の34%、2段目、3段目の延伸倍率はともに33%に設定して、トータル延伸倍率7倍として延伸した(図1,2参照)。かくして、丸型中空断面を有する470dtex−48filのポリ乳酸繊維を得た。得られた繊維は、中空率41%と高中空であり、また、強度5.1cN/dtex、伸度30.0%、乾熱収縮率6.8%と良好な糸物性を示した。
この繊維を用いて、織密度:経70×緯70本/インチで平織りの鞄地を作った。得られた鞄地は、生分解性が極めて良好であった。また、目付け265g/m2、見かけ密度0.71g/cm3であり、軽量性と嵩高性に優れたものであった。
実施例2、3
スリット幅、スリット直径を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸繊維及び鞄地を得た。実施例2の繊維は中空率28%、実施例3の繊維は中空率18%と実施例1に比べるとやや低かったが、軽量性、嵩高性はまずまず優れたものであった。
比較例1
加熱筒の温度を下げて、口金直下温度を100℃に変更し、また、延伸倍率を4.5倍に変更したこと以外は実施例2と同様にして、ポリ乳酸繊維及び鞄地を得た。得られた繊維は、強度は2.7cN/dtexとやや低いものの、中空率36%と高中空であり、また鞄地は軽量性と嵩高性に優れていた。なお、延伸倍率を5倍以上にすると、毛羽や糸切れが発生し、工程通過性が悪くなった。
実施例4、5
重量比でP1:P2=4:1となるようにチップブレンド(EBA1重量%)、または、重量比でP1:P2=1:4となるようにチップブレンド(EBAは4重量%)したこと以外は実施例1と同様にして、ポリ乳酸繊維及び鞄地を得た。得られた繊維は高強度且つ高中空率で、さらに鞄地の耐摩耗性は実施例1の鞄地より優れたものであった。
実施例
実施例で得られた鞄地に次の条件で染色加工を施した。染色加工後の鞄地の一部から繊維を解き、強度を測定したところ、4.0cN/dtexと染色加工前(5.0cN/dtex)に比べて強度低下が認められたが、耐摩耗性については、良好な結果であった。
<染色加工条件>
・染料:Dianix Navy Blue ERFS 200(2%owf)
・助剤:pH調整剤(0.2g/l)
・温度×時間:110℃×40分
実施例
重量比でP1:P2:P4=4:1:0.1となるようにチップブレンド(EBA1重量%、着色剤0.3重量%)したこと以外は実施例1と同様にして、ポリ乳酸繊維及び鞄地を得た。得られた繊維は高強度且つ高中空率で、鞄地は生分解性、軽量性、嵩高性に非常に優れたものであった。また、耐摩耗性も良好であった。
実施例
スリット幅、スリット直径を変更したこと以外は、実施例と同様にして、ポリ乳酸繊維及び鞄地を得た。得られた繊維は中空率17%と実施例に比べるとやや低く、鞄地の軽量性と嵩高性はまずまずの結果であった。
実施例
重量比でP1:P4=1:0.02となるようにチップブレンド(着色剤0.3重量%)したこと以外は実施例1と同様にして、ポリ乳酸繊維を得た。得られた繊維は高強度且つ高中空率、さらに均一に黒色着色されたものであった。
比較例2
重量比でP1:P3=4:1となるようにチップブレンド(SA1重量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリ乳酸繊維及び鞄地を得た。得られた繊維は強度がやや低いものの高中空率の繊維であった。この低強度化は、脂肪酸モノアミドであるステアリン酸アミドによるポリ乳酸の分子量低下に起因するものと示唆される。
実施例10
実施例1で得られたポリ乳酸繊維をそのまま連続して捲縮予熱ロール温度130℃にて予熱後、捲縮加工装置にて200℃での加熱圧空処理を行い、捲縮を付与した。次いで、捲縮がへたらない程度に引き伸ばし、最後に0.07cN/dtex程度の巻取張力で巻き取ることにより、ポリ乳酸捲縮糸を得た。また、この捲縮糸を用いて実施例1と同様にして鞄地を得た。得られた鞄地は、軽量性と嵩高性に非常に優れたものであり、高級感に溢れていた。
実施例11
実施例で得られたポリ乳酸繊維をそのまま連続して捲縮予熱ロール温度130℃にて予熱後、捲縮加工装置にて200℃での加熱圧空処理を行い、捲縮を付与した。次いで、捲縮がへたらない程度に引き伸ばし、最後に0.07cN/dtex程度の巻取張力で巻き取ることにより、ポリ乳酸捲縮糸を得た。また、この捲縮糸を用いて実施例1と同様にして鞄地を得た。得られた鞄地は、軽量性と嵩高性に非常に優れたものであり、高級感に溢れていた。また、耐摩耗性も優れるものであった。
比較例
中実断面用の細孔(孔径0.6mm)を48ホール有する口金を用いたこと以外は実施例1と同様にして、丸型中実断面の470dtex−48filのポリ乳酸繊維及び鞄地を得た。得られた鞄地は、生分解性は良好であったが、軽量性と嵩高性は、実施例1の鞄地に劣るものであった。
比較例
スリット幅、スリット直径を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸繊維及び鞄地を得た。得られた繊維は、中空率が6%と低いため、鞄地の軽量性と嵩高性はあまり向上しなかった。
比較例
口金直下温度を300℃に変更したこと以外は実施例3と同様にして、ポリ乳酸繊維及び鞄地を得た。得られた繊維は、中空率が9%と低いため、鞄地の軽量性と嵩高性は、実施例1の鞄地に劣るものであった。
比較例
吐出量を変更したこと以外は比較例と同様にして、800dtex−48filのポリ乳酸繊維及び鞄地を得た。なお、この繊維の単糸断面積は、光学顕微鏡で確認したところ、実施例1の繊維の中空を含む単糸全体の断面積Sとほぼ同じであった。得られた鞄地の軽量性と嵩高性は、実施例1の鞄地に劣るものであった。
比較例
ε−カプロラクタムを常法によって重合し、相対粘度が3.2のナイロン6ポリマーを製造した。(ただし、この相対粘度は、試料0.5重量%の濃硫酸(98.0%)溶液をオストワルド粘度計にて25℃で測定した。)このポリマーを用い、常法によって、丸型中実断面の470dtex−48filのナイロン6繊維を得た。またこの繊維を用いて、実施例1と同様にして鞄地を得た。得られた鞄地は、生分解性がなく、環境対応素材とは到底言えるものではなかった。
Figure 0004517675
この図は、本発明のポリ乳酸繊維を製造する直接紡糸延伸装置を示す概略図である。 この図は、本発明のポリ乳酸繊維を製造する際の口金孔の形状を示す概略断面図である。 この図は、本発明のポリ乳酸繊維を製造する際の口金孔の形状を示す概略断面図である。 この図は、本発明のポリ乳酸繊維を製造する際の口金孔の形状を示す概略断面図である。
符号の説明
1:ホッパー
2:押出混練機(エクストルーダー)
3:スピンブロック
4:紡糸パック
5:口金
6:加熱筒
7:断熱筒
8:チムニー
9:給油装置(オイリングローラー)
10:引き取りロール(1FR)
11:給糸ロール(2FR)
12:第1延伸ロール(1DR)
13:第2延伸ロール(2DR)
14:第3延伸ロール(3DR)
15:弛緩ロール(RR)
16:交絡ノズル
17:巻き取り機
18:スリット幅
19:スリット直径

Claims (7)

  1. 11〜70%の中空率を有し、強度が4.2〜9cN/dtexであるポリ乳酸マルチフィラメントからなることを特徴とする鞄地。
  2. ポリ乳酸マルチフィラメントの中空部が、溶融紡糸工程において形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の鞄地。
  3. ポリ乳酸マルチフィラメントが捲縮糸または原着糸であることを特徴とする請求項1または2に記載の鞄地。
  4. ポリ乳酸マルチフィラメントが脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを、フィラメント全体に対して0.1〜5重量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鞄地。
  5. ポリ乳酸マルチフィラメントの単繊維繊度が1〜25dtex、総繊度が15〜2500dtexであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鞄地。
  6. 目付が100〜2000g/m2、見かけ密度が0.4〜1.0g/cm3の織編物であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の鞄地。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の鞄地を用いてなる鞄。
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