JP4520066B2 - 抗酸化剤及びフラボノイド化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、高い抗酸化性を有するフラボノイド化合物を含有する抗酸化剤及びフラボノイド化合物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ヘスペレチンの配糖体であるヘスペリジンは、オレンジやレモン等の柑橘類、特に未熟果の果皮に多く含まれるフラボノイドであり、ビタミンPとして知られている。このヘスペリジンは、抗アレルギー作用、抗ウィルス作用、毛細血管強化作用等の生理活性を有することが知られており、健康食品等に添加して利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記ヘスペリジンは、極めて低い抗酸化作用を発揮するに止まっており、抗酸化剤としての利用は全く行われていなかった。
【0004】
この発明は、前記ヘスペリジンのさらなる利用拡大を目指した鋭意研究の結果なされたものである。その目的とするところは、高い抗酸化作用を発揮することができるように構成されたフラボノイド化合物を含有する抗酸化剤及びフラボノイド化合物の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の抗酸化剤は、下記化2で示される構造を有するフラボノイド化合物を含有することを特徴とするものである。
【0006】
【化2】
請求項2に記載の発明の抗酸化剤は、請求項1に記載の発明において、前記フラボノイド化合物は、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)を用いて、ヘスペリジンを微生物発酵処理することによって得られることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に記載の発明のフラボノイド化合物の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の抗酸化剤に含有されるフラボノイド化合物を製造するフラボノイド化合物の製造方法であって、ヘスペリジンを請求項1に記載のフラボノイド化合物を製造する能力を有するアスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)とを含む培地を振盪培養し、前記アスペルギルス・サイトイの栄養菌糸にヘスペリジンからヘスペレチンを微生物変換させる菌糸培養工程を行った後、前記アスペルギルス・サイトイの栄養菌糸から胞子形成を進行させつつ、前記培地中のヘスペレチンからフラボノイド化合物を微生物変換させる胞子形成工程を行うように構成し、前記菌糸培養工程に先立って、前記アスペルギルス・サイトイを含む培地を振盪培養する予備培養工程を行うように構成したことを特徴とするものである。
【0009】
なお、前記菌糸培養工程後の胞子形成工程は、そのまま振盪培養しても、静置培養に切り替えてもどちらでもよい。但し、静置培養する場合には、培地の深さを浅くして培地の体積に対する表面積の割合(比表面積)を大きくすることにより、培地全体を好気的条件に保ち、アスペルギルス・サイトイによる微生物変換効率を高めるように構成するのが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
実施形態のフラボノイド化合物は、下記化3で示される構造を有している。
【0012】
【化3】
このフラボノイド化合物は、化学式がC16H14O7で、分子量が約319のフラボノイド化合物(3',5,7,8-tetrahydroxy-4'-methoxyflavanone 又は 2,3-dihydro-5,7,8-trihydroxy-2-(3-hydroxy-4-methoxyphenyl)-4H-1-benzopyran-4-one)である。このフラボノイド化合物は、上記化3で示される構造より、ヘスペレチン(hesperetin;3',5,7-trihydroxy-4'-methoxyflavanone;C16H14O6)の8位に水酸基を備えた有機化合物、いわゆる8−ヒドロキシヘスペレチン(8-hydroxyhesperetin)である。
【0013】
この8−ヒドロキシヘスペレチンは、メタノール、エタノール及びジメチルスルフォキシド(DMSO)に可溶で、若干溶解性は悪いが水にも可溶である。さらに、前記ヘスペレチンには抗酸化作用がほとんど見られないのに対し、この8−ヒドロキシヘスペレチンはα−トコフェロール(ビタミンE)と同等の極めて高い抗酸化作用を発揮することができる。そして、この高い抗酸化作用を利用して、例えば食品や飲料等に添加して健康増進活性を有する健康食品や健康ドリンク等に利用することができる。このとき、8−ヒドロキシヘスペレチンは、生体内で活性酸素を消去して過酸化脂質の生成を抑制し、酸化ストレスに起因する癌、動脈硬化、糖尿病の合併症等の生活習慣病の予防に役立つ。
【0014】
この8−ヒドロキシヘスペレチンは、ヘスペリジン(hesperidin)をアスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)にて微生物発酵処理することによって得られる。すなわち、この8−ヒドロキシヘスペレチンは、ヘスペレチンとルチノース(L−ラムノシル−D−グルコース)との配糖体であるヘスペリジン(ビタミンP)を含有する培地中でアスペルギルス・サイトイを培養し、そのアスペルギルス・サイトイにヘスペリジンを微生物変換させることにより、その培養上澄み液中に生成される。なお、このときの培養条件としては、アスペルギルス・サイトイの生育及び前記微生物変換を良好に行うために、20〜40℃の培養温度、好気的条件であるのが好ましい。
【0015】
前記培地としては、ポテトデキストロース含有培地やツァペック培地等の糸状菌用培地又はオカラ等の有機物を含有する種々の液体培地が好適に使用される。さらに、ヘスペリジンから8−ヒドロキシヘスペレチンを微生物変換させる目的以外の発酵を阻害するように、必要最小限の栄養素を含有する最小培地であるのが好ましく、例えばアルコール発酵しないように単糖類及び二糖類が培地中に含まれないようにするのが好ましい。また、前記培地は、培養開始時点では、アスペルギルス・サイトイの生育を良好にするために、pH3〜7の範囲内であるのが好ましい。
【0016】
さらに、培地中にヘスペリジンを添加する際には、培地中におけるヘスペリジンの溶解性を高める目的で、低濃度の有機溶媒が含有されるのが好ましい。前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、DMSO等が挙げられるが、ヘスペリジンの溶解性を高めることができるため、DMSOが最も好適に使用される。なお、この培地中のDMSOの含有量としては、好ましくは0.01〜5容量%、より好ましくは0.01〜1容量%である。この培地中のDMSOの含有量が0.01容量%未満の場合には、培地中に充分な量のヘスペリジンを溶解させることができない。逆に5容量%を越える場合には、アスペルギルス・サイトイの生育が著しく阻害される。
【0017】
一方、培地中に添加されるヘスペリジンの含有量としては、多量の8−ヒドロキシヘスペレチンを効率よく得るために、その溶解限界としての飽和濃度まで含有させるのが好ましい。なお、前記飽和濃度は、前記DMSO等の有機溶媒の含有量と深く関連しているが、およそ0.3重量%以下である。また、培養開始時に培地中に添加されるアスペルギルス・サイトイの濃度としては、多量の8−ヒドロキシヘスペレチンを短期間で効率よく得るために、2×106個/mL(cfu/mL)以上であるのが好ましい。
【0018】
さらに、このアスペルギルス・サイトイによる微生物変換効率を高めるために、前記培地中でアスペルギルス・サイトイの栄養菌糸を振盪培養する菌糸培養工程を行った後、その栄養菌糸から胞子形成を進行させる胞子形成工程を行うように構成するのが好ましい。
【0019】
なお、前記菌糸培養工程に先立って、アスペルギルス・サイトイが栄養菌糸を充分に形成できるようにするために、菌体のみを含有する培地を予備的に振盪培養(以下、予備培養工程と記載する)するように構成するのが好ましい。この予備培養工程は、ヘスペリジンの溶解性を高めるために培地中に同時に添加される有機溶媒によるアスペルギルス・サイトイの培養初期段階(増殖初期段階)での生育阻害を回避することにより、ヘスペリジンの微生物変換効率を高めるために行われる。この目安としてアスペルギルス・サイトイの栄養菌糸が培養液面の1/2程度占めるぐらい予備培養すると良い。
【0020】
菌糸培養工程は、培地中にヘスペリジンを添加してからの工程であり、ヘスペリジンを含有する培地中で好気的条件を保ちつつアスペルギルス・サイトイを振盪培養することによって、アスペルギルス・サイトイの栄養菌糸にヘスペリジンを微生物変換させる工程である。この工程において、アスペルギルス・サイトイの栄養菌糸は、ヘスペリジンを構成するヘスペレチンとルチノースとの結合を切断してヘスペレチンを生成するグリコシダーゼ反応を極めて効率的に行う。前記振盪培養における振盪速度としては、50〜200rpm/分の範囲内であるのが好ましい。この振盪速度が50rpm/分未満の場合には、アスペルギルス・サイトイを含有した培地全体が好気的でないため、菌糸の増殖が充分にできない。逆に振盪速度が200rpm/分を越える場合には、培地の揺れが激しく、菌糸形成が充分にできない。
【0021】
なおこのとき、培地中に添加されるヘスペリジンの含有量は、前記溶解限界を超えて添加されても構わない。このとき、ヘスペリジン添加時点では溶解されずに培養容器の底部に沈澱していたヘスペリジンが振盪による撹拌作用により適宜培地中に溶解されて微生物発酵に利用され得る。さらに、培地中に溶解限界を超えてヘスペリジンを含有させた場合には、養容器底部のヘスペリジンの沈澱を防ぐ目的で、50rpm/分程度で沈澱が消失するまで振盪培養するように構成するのが好ましく、その結果としてより多くのヘスペレチンを生成させることができる。
【0022】
胞子形成工程は、培地中に充分な量のヘスペレチンが生成された後に行われ、前記菌糸培養工程後の培地をそのまま培地交換せずに静置培養又は振盪培養することによって、アスペルギルス・サイトイの栄養菌糸に胞子形成を進行させながら微生物変換を行わせる工程である。なお、菌糸培養工程から胞子形成工程に移行するタイミングとしては、菌糸培養工程の終了時期に、培地の表面(液面)にアスペルギルス・サイトイの栄養菌糸が密に存在するのが目視にて確認可能となることから、それを指標にして容易に把握することができる。
【0023】
この工程において、アスペルギルス・サイトイの栄養菌糸は、胞子形成を進行させながら、ヘスペレチンの8位に水酸基を付加させるヒドロキシラーゼ反応を行って8−ヒドロキシヘスペレチンを極めて効率的に生成させる。この8−ヒドロキシヘスペレチンの生成反応は、培養容器内における胞子形成過程の中期から後期にかけて最も効率的に行われ、胞子形成が完了した段階における生成効率はさほど高くはない。このため、無駄に浪費される時間を減らすために、培養容器の液面全体が胞子で完全に被覆される直前に培養を停止し、生成された8−ヒドロキシヘスペレチンを抽出するとよい。
【0024】
また、この胞子形成工程において静置培養を行う場合には、振盪時の物理的刺激による胞子形成の抑制効果を容易に解消することができる。なお、この静置培養時には、培地の深さを浅くして培地の体積に対する表面積の割合(比表面積)を大きくすることにより、培地全体を好気的条件に保ち、アスペルギルス・サイトイの活動を活発化させてその微生物変換効率を高めるように構成するのが好ましい。一方、胞子形成工程において振盪培養を行う場合には、培地の深さを適度に深くしても好気的条件を保つことが容易であることから、一度の培養操作により多量の8−ヒドロキシヘスペレチンを生成させることが可能となる。
【0025】
最後に、上記培養上澄み液又は前記胞子形成工程後の培地から8−ヒドロキシヘスペレチンを抽出して精製する。このとき、前記培地をアスペルギルス・サイトイの細胞膜が破壊されない程度に遠心分離(3000rpm程度)して上澄み画分を得、その上澄み画分を疎水性カラムによる逆相液体クロマトグラフィーにより精製するとよい。なお、前記遠心分離後の沈澱画分にも比較的多量の8−ヒドロキシヘスペレチンが含まれていることから、その沈澱画分にメタノールやエタノール等の有機溶媒を加えて充分に洗浄しながら抽出した後、その抽出液を逆相液体クロマトグラフィーにて精製するように構成するとよい。
【0026】
上記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態のフラボノイド化合物(8−ヒドロキシヘスペレチン)は、上記化3で示される構造を有し、抗酸化性を有するフラボノイド化合物である。この8−ヒドロキシヘスペレチンは、ヘスペレチンの8位に水酸基が付加された構造を有することによって、ヘスペリジン及びヘスペレチンと比べて著しく高い抗酸化作用を発揮することができる。このため、生体内で活性酸素を消去して過酸化脂質の生成を抑制し、酸化ストレスに起因する癌、動脈硬化、糖尿病の合併症等の生活習慣病の予防に役立てることができる。
【0027】
・ 実施形態のフラボノイド化合物(8−ヒドロキシヘスペレチン)は、ヘスペリジンをアスペルギルス・サイトイにて微生物発酵処理することにより、前記ヘスペリジンを微生物変換して抗酸化性が増強されたフラボノイド化合物を生成させることによって製造される。このため、高い抗酸化作用を発揮する8−ヒドロキシヘスペレチンを容易に製造することができる。さらに、原料として柑橘類に含有されている天然成分であるヘスペリジンを用いるとともに、焼酎等の酒類の醸造に利用されるアスペルギルス・サイトイが用いられていることから、人体への摂取においてもほとんど問題がない。
【0028】
加えて、前記微生物発酵処理において、ヘスペリジンとアスペルギルス・サイトイとを含む培地を振盪培養する菌糸培養工程を行った後に胞子形成工程を行うように構成することによって、非常に簡単な作業工程で、8−ヒドロキシヘスペレチンを極めて効率的に製造することが可能となる。また、前記菌糸培養工程に先立って、予備培養工程を行うことによって、アスペルギルス・サイトイの培養初期における生育阻害を回避して、ヘスペリジンの微生物変換効率を容易に高めることが可能である。
【0029】
【実施例】
以下、前記実施形態を具体化した実施例及び比較例について説明する。
<ヘスペリジン変換物の製造>
ポテトデキストロース−ブロス培地(DIFCO社製)を複数個の三角フラスコ(容積500mL)に100mLずつ分取し、オートクレーブ滅菌(121℃、15分間)を行った。冷却した後に、2×108個/mL以上の濃度に調製したアスペルギルス・サイトイの胞子懸濁液を1.0mLずつ各フラスコに接種し、30℃の恒温室(大気と同じ成分の好気的条件)内において100rpm/分で振盪培養を行いながら栄養菌糸を育成させた。なお、前記アスペルギルス・サイトイは、(財)応用微生物学研究奨励会(通称IAM)より分譲を受けたアスペルギルス・サイトイ菌株(IAM No.2210)が用いられた。
【0030】
10日間振盪培養を行って栄養菌糸を充分に生育させた後、オートクレーブ滅菌(105℃、5分間)した10重量%のヘスペリジン(SIGMA社製)DMSO希釈液を5mLずつ加え、引続き同好気的条件下で振盪培養を行なって、栄養菌糸からの胞子形成を進行させた。なお、このときの胞子形成の様子を経時的にモニタリングしたところ、ヘスペリジンを投入しておよそ1週間経過後から胞子の形成が始まり、3週間後には培地の液面全体で胞子の形成が認められたことが分かった。
【0031】
本実験では、胞子形成が完全に終了する前でヘスペリジン投入後から2週間経過した時点、すなわち胞子形成の中期から後期と思われる時期のサンプルを採取した。そして、この採取されたサンプルを遠心分離(3000rpm、15分間)して不純物を沈澱除去した後、その上澄み液を分析用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(島津製作所製のLC10A、カラムはYMC社製のA303)にて分析し、フラボノイド組成の変化を調べた。その結果、フラボノイド組成物全体に占めるヘスペリジン変換物のピークの割合はおよそ8.3%であることが分かった。
【0032】
最後に、前記ヘスペリジン変換物を含有することが確認されたHPLC用サンプルの残りをエバポレーターにて濃縮した後、分取用HPLC(島津製作所製のLC8A、カラムはYMC社製のR353−151A、SH343−5)にて分画し、ヘスペリジン変換物の単離精製を行った。
【0033】
<構造決定>
上記<ヘスペリジン変換物の製造>で得られたヘスペリジン変換物の構造決定を行った。1H NMR及び13C NMRスペクトルは、内部標準としてDMSO−d6に溶解させたテトラメチルシラン(Tetramethylsilane;TMS)を用いてJEOL JNM−EX−400 NMR装置(1H NMRは400MHz、13C NMRは100MHz)で分析した。また、質量スペクトル(FAB-MS)は、JEOL JMS−DX−705Lで測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
その結果、前記ヘスペリジン変換物は、上記化3で示される構造を有する8−ヒドロキシヘスペレチンであることが確認された。
【0036】
<抗酸化活性の測定1>
上記<ヘスペリジン変換物の製造>で得られた8−ヒドロキシヘスペレチン(8OH−HE)と、対照試料としてヘスペリジン(HE)について、DPPHを用いたラジカル捕捉能測定法による抗酸化活性の測定を行った。なお、このラジカル捕捉能測定法は、Yamaguchi,et.al.,Biosci.Biotechnol.Biochem.,62,1201-1204,1998に記載の方法に従って行われた。
【0037】
すなわち、まず、0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.4)800μLに、エタノールに溶解させた各試料溶液200μLを混合させた後、さらにエタノールに溶解させた500μMのDPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)を1mL加えて各反応液を調製し、充分に混合させた後に室温、暗所で20分間反応させた。次に、マイクロシリンジを用いて各反応液20μLを前記分析用HPLC(LC−10A)に注入して分析し、DPPHのピーク面積を測定した。なお、前記試料溶液としては、終濃度が0.1μM、1μM及び10μMとなるように調製された各3種類の濃度の8OH−HEとHEとが使用された。また、HPLC分析条件としては、内径4.6mmで長さが150mmのオクチル(Octyl)カラム(YMC社製)、溶出溶媒が蒸留水/メタノール=30/70、流速は1mL/分、検出波長は517nmとした。
【0038】
さらに、コントロールとして前記試料溶液の代わりにエタノールのみの溶液200μLを使用して同様にHPLC分析してコントロールのDPPHのピーク面積を測定し、下記数1に示される算出式を用いて各試料のラジカル捕捉能(%)を求めた。なお、このラジカル補足能は、数値が高いほど抗酸化活性が高いことを示している。結果を図1に示す。
【0039】
【数1】
図1の結果より、発酵処理によりHEから生成された8OH−HEは、親水性溶媒中で、HEよりも著しく高い抗酸化活性を発揮することが分かった。
【0040】
<抗酸化活性の測定2>
上記<ヘスペリジン変換物の製造>で得られた8−ヒドロキシヘスペレチン(8OH−HE)と、対照試料としてヘスペリジン(HE)と、高い抗酸化活性を有するα−トコフェロール(Toc)について、リノール酸メチルを用いたHPLC分析法による抗酸化活性の測定を行った。なお、このリノール酸メチルを用いたHPLC分析法は、Terao J,et.al.,Lipids,21(4),255-260,1986に記載の方法に従って行われた。
【0041】
すなわち、まず、内径14mmの小型試験管に、リノール酸メチル89mg(100μL)を精秤した後、エタノールに溶解させた各試料溶液100μLを加えた各混合液を調製し、充分に混合させた。なお、前記各混合液中の試料の終濃度は100μMである。次に、これら混合液を減圧デシケーター中で真空ポンプを用いて減圧乾燥させて溶媒を完全に除いた後、40℃の暗所に18時間静置した。その後、0.08%BHT/ヘキサン溶液(5.0mL)を加えた。そして、リノール酸メチルにより生成した13−ヒドロペルオキシドと9−ヒドロペルオキシドのHPLCピーク面積の総和を求めた。
【0042】
さらに、コントロールとして前記試料溶液の代わりにエタノールのみの溶液100μLを使用して同様にHPLC分析してコントロールのHPLCピーク面積の総和を測定し、下記数2に示される算出式を用いて各試料の脂質過酸化度(%)を求めた。なお、この脂質過酸化度は、数値が低いほど抗酸化活性が高いことを示している。結果を図2に示す。
【0043】
【数2】
図2の結果より、発酵処理によりHEから生成された8OH−HEは、疎水性溶媒中で、HEよりも著しく高い抗酸化活性を発揮することが分かった。さらに、この8OH−HEは、極めて高い抗酸化性を有することが知られているα−トコフェロールとほぼ同等の抗酸化活性を発揮することも分かった。
【0044】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記微生物発酵処理を0.01〜5容量%のジメチルスルフォキシドを含有する培地中で行うことを特徴とする前記フラボノイド化合物の製造方法。このように構成した場合、アスペルギルス・サイトイの生育阻害を低減させつつ、比較的多量のヘスペリジンを培地中に溶解させて、その微生物変換効率を容易に高めることができる。
【0045】
・ さらに前記微生物発酵処理後の培養上澄み液を、疎水性カラムを用いた逆相液体クロマトグラフィーにより精製することを特徴とする前記フラボノイド化合物の製造方法。このように構成した場合、極めて容易にフラボノイド化合物を単離することができる。
【0046】
・ 上記化1で示される構造を有し、抗酸化性を有することを特徴とする抗酸化物質。このように構成した場合、高い抗酸化作用を発揮することができる。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、次のような効果を奏する。
請求項1及び請求項2に記載の発明の抗酸化剤によれば、高い抗酸化作用を発揮することができる。
【0048】
請求項3に記載の発明のフラボノイド化合物の製造方法によれば、高い抗酸化作用を発揮することができるフラボノイド化合物を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の抗酸化活性の測定1の試験結果を示すグラフ。
【図2】 実施例の抗酸化活性の測定2の試験結果を示すグラフ。
Claims (3)
- 前記フラボノイド化合物は、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)を用いて、ヘスペリジンを微生物発酵処理することによって得られることを特徴とする請求項1に記載の抗酸化剤。
- 請求項1又は請求項2に記載の抗酸化剤に含有されるフラボノイド化合物を製造するフラボノイド化合物の製造方法であって、
ヘスペリジンを請求項1に記載のフラボノイド化合物を製造する能力を有するアスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)とを含む培地を振盪培養し、前記アスペルギルス・サイトイの栄養菌糸にヘスペリジンからヘスペレチンを微生物変換させる菌糸培養工程を行った後、
前記アスペルギルス・サイトイの栄養菌糸から胞子形成を進行させつつ、前記培地中のヘスペレチンからフラボノイド化合物を微生物変換させる胞子形成工程を行うように構成し、
前記菌糸培養工程に先立って、前記アスペルギルス・サイトイを含む培地を振盪培養する予備培養工程を行うように構成したことを特徴とするフラボノイド化合物の製造方法。
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