JP4526693B2 - ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜とこれを用いた通気性積層体およびフィルタユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」と略す)多孔質膜とこれを用いた通気性積層体およびフィルタユニットに関するものである。本発明は、特に、価粉体の回収や焼却炉の粉塵の捕集するバグフィルタや、半導体工業や薬品工業などのクリーンルームで使用されるエアフィルタに使用されるPTFE多孔質膜および通気性積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、有価粉塵の回収やバグフィルタを用いた焼却炉では、各種フェルトや織布がろ材として多く用いられている。しかし、このようなろ材は深層濾過により粉体・粉塵を捕集するため、払い落とし性が悪い。このため、圧力損失の上昇が速く、寿命が短くなるという問題がある。
【0003】
また、クリーンルームで使用されるエアフィルタ用ろ材としては、ガラス繊維にバインダーを加えて抄紙したものが多く用いられている。しかし、このようなろ材には、濾材中の付着小繊維の存在、加工による折曲げ時の自己発塵などの問題がある。また、ガラス繊維ろ材には、フッ酸などある種の化学薬品と接触すると劣化して発塵するという問題もある。さらに、バインダー成分から気体成分が発生し、半導体などの製造歩留を低下させるという問題も生じる。
【0004】
PTFEはクリーンな材料であり、耐薬品性にも優れている。そこで近年、PTFE延伸多孔質膜が、有価粉塵の回収や焼却炉用、さらにはクリーンルームで使用されるエアフィルタ用のろ材として使用されている。特開平5−202217公報に記載されているPTFE多孔質膜はその一例である。
【0005】
PTFE多孔質膜にはコシがないため、一般には他の通気性支持材により補強した積層体として使用される。この積層体は、縫製加工がなされてバグフィルタとなる。また、プリーツ加工したろ材に、ろ材間隔を一定に保つためのビードを塗布して乾燥させた後、枠付けしてエアフィルタユニットが作製される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
半導体製造のクリーンルームに用いられるエアフィルタにおいては、エアフィルタの風量分布が均一であることが求められる。風量分布が不均一になれば、クリーンルーム中の空気の流れが乱れ、空気が循環しない空気溜りが発生し、半導体の製造歩留低下の原因となるガス成分の濃度が上昇するという問題が生じる。
【0007】
通気性支持材の圧力損失はPTFE多孔質膜の圧力損失よりも低いため、ろ材の風量分布の均一性は、PTFE多孔質膜の圧力損失の均一性に依存している。PTFE多孔質膜の圧力損失の均一性を把握するためには、そのバラツキの度合いを評価することが必要となる。圧力損失の測定には、通常、直径110mmの面積が必要とされる。しかし、PTFE多孔質膜の圧力損失の均一性は、PTFE多孔質膜の微多孔構造、すなわち、延伸されたフィブリル(繊維)部およびノード(結節)部の分布や形状にも影響を受けるため、上記のように広い範囲を測定したのでは、バラツキ自体を正確に評価できない。
【0008】
このような事情もあって、従来は、風量分布を均一化できるPTFE多孔質膜については検討されてこなかった。そこで、本発明は、風量分布を均一化できるPTFE多孔質膜を提供することを目的とする。この風量分布の均一化は、圧力損失の均一化をもたらすので、エアフィルタのみならず、バグフィルタにおいても有意義である。バグフィルタにおいては、逆洗パルスエアーがかけられるが、圧力損失が均一であれば粉塵の払い落としも均一化され、その後の捕集の際に捕集ムラが生じにくい。このため、長期間の使用が可能となり、多孔質膜の交換頻度を少なくできる。本発明は、上記PTFE多孔質膜を用いた通気性積層体およびこれを用いたフィルタユニットを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究した結果、エアフィルタやバグフィルタに用いられるPTFE多孔質膜の微多孔構造の評価には、光学特性、特にヘイズ率が適していることを見出し、さらにヘイズ率を評価の尺度としてPTFE多孔質膜の微多孔構造の均一化を図り、本発明を完成させた。すなわち、本発明のPTFE多孔質膜は、測定領域の相違によるヘイズ率のバラツキが変動率により表示して20%以下であることを特徴とする。
【0010】
変動率は、測定値の平均値に対するその標準偏差の比により表される。n個のデータ(X1、X2・・・・Xn)の平均値をXm、標準偏差をSxとすると、変動率Vxは次式により算出できる。
【0011】
変動率[%];Vx=Sx/Xm×100
【0012】
また、ヘイズ率は、次式により表すことができる。
ヘイズ率[%];拡散透過光量/全透過光量×100
【0013】
データは、測定の対象とするPTFE多孔質膜において、互いに相違する少なくとも10の領域において測定すること(標本数n≧10)が好ましい。測定領域は、大きすぎるとバラツキが正確に評価できなくなり、小さすぎると測定自体が正確に行えないため、50〜500mm2程度とすることが好ましい。
【0014】
本発明は、上記PTFE多孔質膜を用いた通気性積層体、さらにエアフィルタユニットまたはバグフィルタユニットも提供する。本発明の通気性積層体は、上記PTFE多孔質膜と通気性支持材とが、それぞれ少なくとも1層ずつ含まれていることを特徴とする。本発明のエアフィルタユニットまたはバグフィルタユニットは、上記通気性積層体を用いたことを特徴としており、例えば、連続したW字状にプリーツ加工された上記通気性積層体(ろ材)と、このろ材を支持する部材とを備えるものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
PTFE多孔質膜に入射した光の透過や散乱は、PTFE多孔質膜の微多孔構造、具体的には気孔率、フィブリル径、ノード面積などに影響される。また、PTFE多孔質膜の膜厚にも左右される。光の透過や散乱、特に透過光のヘイズ率は、PTFE多孔質膜の微多孔構造の変化に対して感度が高いため、風量分布の均一性の評価の基準として好適である。また、光学特性は、小さい照射面積により測定できるため、PTFE多孔質膜の微多孔構造の均一性の評価に適している。PTFE多孔質膜のヘイズ率の変動率は、20%以下、特に10)%以下が好適である。
【0016】
全光線透過率の測定値に関する変動率も20%以下であることが好ましいが、ヘイズ率がPTFE多孔質膜の微多孔構造に対してより感度が高いため、ここではヘイズ率を採用する。PTFE多孔質膜のヘイズ率の平均値は、特に制限されないが、ろ材として好ましい特性を実現するためには40%以上、特に50%以上であることが好ましい。ヘイズ率の平均値が40%未満となると、粒子の捕集性能が低下する場合がある。全光線透過率の平均値も40%以上、特に60%以上であることが好ましい。全光線透過率の平均値が40%未満となると、圧力損失が増大する場合がある。
【0017】
PTFE多孔質膜を製造する方法の一例を以下に説明する。まず、PTFEファインパウダーに液状潤滑剤を加えたペースト状の混和物を予備成形する。液状潤滑剤は、PTFEファインパウダーの表面を濡らすことができて、抽出や加熱により除去できるものであれば特に制限されず、例えば、流動パラフィン、ナフサ、ホワイトオイルなどの炭化水素を好適に使用できる。液状潤滑剤の添加量は、PTFEファインパウダー100重量部に対して5〜50重量部程度が適当である。上記予備成形は、液状潤滑剤が絞り出されない程度の圧力で行うことが好ましい。
【0018】
こうして得た予備成形体を、押出および/または圧延によってシート状に成形する。さらに、このシート状のPTFE成形体を一軸または二軸方向に延伸してPTFE多孔質シートを得る。なお、PTFE成形体の延伸は、液状潤滑剤を除去してから行うことが好ましい。
【0019】
均一な微多孔構造を有するPTFE多孔質膜を得るためには、予備成形体を押出および/または圧延する方向と直交する方向に、PTFE粒子の結着を強めることが好ましい。PTFE粒子の結着を強めるには、予備成形した後、押出および/または圧延を行い、次いで押出および/または圧延した方向と直交する方向に、PTFE成形体に圧縮応力を加えればよい。
【0020】
例えば、棒状に押出し、さらに押出方向に圧延したPTFE成形体を、押出方向と直交する方向、特に成形体の断面における長辺が圧縮される方向へとさらに圧延すると、PTFE粒子の結着が強くなる。圧縮応力は、液状潤滑剤を除去する前に加えることが好ましい。均一な微多孔構造が実現できれば、ヘイズ率の変動率も低下する。
【0021】
通気性支持材は、材質、構造、形態が特に限定されるものではないが、PTFE多孔質膜よりも孔径が大きく通気性に優れた材料、例えば、フェルト、不織布、織布およびメッシュ(網目状シート)から選ばれるいずれかが好適であり、強度、柔軟性、作業性などの点から不織布が特に好ましい。特に、通気性支持材としては、不織布を構成する一部または全部の繊維が芯鞘構造の複合繊維であり、芯成分が鞘成分より相対的に融点が高い合成繊維とすることが好ましい。通気性支持材の材料としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)など)、芳香族ポリアミドあるいはこれらの複合材を用いることができる。
【0022】
通気性支持材とPTFE多孔質膜との積層体(通気性積層体)を製造する方法は、特に限定されず、単に重ね合わせるだけでもよく、互いに接合してもよい。接合は、例えば接着剤ラミネート、熱ラミネートなどの方法により行うことができる。例えば、熱ラミネートにより積層する場合は、加熱により不織布など通気性支持材の一部を溶融させて接着すればよい。また、ホットメルトパウダーのような融着剤を介在させて接着してもよい。通気性積層体では、PTFE多孔質膜を連続して積層してもよい。PTFE多孔質膜同士も、単に重ね合わせるだけでもよいが、熱融着により、あるいはホットメルトパウダーなどを用いて接合しても構わない。PTFE多孔質膜は、成膜工程において圧着して積層してもよい。
【0023】
PTFE多孔質膜と通気性支持材とを積層した通気性積層体を図1〜図3に例示する。図1の形態では、通気性支持材としてフェルト2が用いられ、図2および図3の形態では、通気性支持材として不織布3が用いられている。図1および図2に示したように、1層のPTFE多孔質膜1を用いてもよく、図3に示したように、2層(またはそれ以上の層)のPTFE多孔質膜1を用いてもよい。
【0024】
各層の積層の順序および積層数は、図示した形態に限られない。また、通気性積層体には、用途に応じて、親水化処理、撥油処理、撥水処理を施してもよい。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0026】
(実施例1)
PTFEファインパウダー80重量部に液状潤滑剤(流動パラフィン)20重量部を加えたペースト状の混和物を予備成形し、ペースト押出により丸棒状に成形した。次に、この成形体を断面の直径が80%に減少するように押出方向と同一方向に圧延した。さらに、この成形体の断面の長辺方向が圧縮されるように押出方向と直交する方向に圧延してシート状成形体(厚さ0.3mm)を得た。液状潤滑剤をトリクレンで抽出除去した後、シートの長さ方向および幅方向に各20倍延伸してPTFE多孔質膜(厚さ:0.012mm、平均孔径:1.1μm)を得た。
【0027】
(実施例2)
実施例1と同様にして予備成形し、ペースト押出により成形した丸棒状の成形体を、断面の直径が60%に減少するように押出方向と同一方向に圧延した。さらに、この成形体の断面の長辺方向が圧縮されるように押出方向と直交する方向に圧延してシート状成形体(厚さ:0.3mm)を得た。液状潤滑剤を除去した後、シートの長さ方向および幅方向に各20倍延伸してPTFE多孔質膜(厚さ:0.014mm、平均孔径:1.0μm)を得た。
【0028】
(実施例3)
実施例2と同様にしてシート状成形体(厚さ:0.3mm)を得た。液状潤滑剤を除去した後、シートの長さ方向(押出方向と同一方向)に10倍、幅方向(押出方向と直交する方向)に20倍延伸したPTFE多孔質膜(厚さ:0.018mm、平均孔径:0.8μm)を得た。
【0029】
(比較例)
実施例1と同様にして予備成形し、ペースト押出により成形した丸棒状の成形体を、押出方向と同一方向に圧延してシート状成形体(厚さ:0.3mm)を得た。液状潤滑剤を除去した後、シートの長さ方向および幅方向に各20倍延伸してPTFE多孔質膜(厚さ:0.015mm、平均孔径:1.2μm)を得た.
【0030】
実施例および比較例の各多孔質膜から、幅方向に略等間隔で14片の標本をサンプリングした。なお、各標本の大きさは、縦横とも5cmとした。各標本について全光線透過率およびヘイズを測定した。測定には、日本電色工業製(株)製濁度計NDH−1001DPを使用した。なお、測定面積は、約95mm2であった。表1に、全光線透過率およびヘイズの平均値、標準偏差および変動率を示す。
【0031】
【0032】
実施例2でサンプリングした標本と、比較例1でサンプリングした標本とを走査型電子顕微鏡により観察したところ、実施例2は比較例1よりも押出方向と直交する方向の粒子間結着が強いため、フィブリルの数が多く、ノードの大きさも均一であった。このようにPTFE多孔質膜の微多孔構造のバラツキが、ヘイズ率の変動率に影響していることが確認できた。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、微多孔構造を均一化したPTFE多孔質膜を提供できる。このPTFE多孔質膜を用いることにより、フィルタユニットにおける風量分布の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の通気性積層体の一形態を示す断面図である。
【図2】 本発明の通気性積層体の別の一形態を示す断面図である。
【図3】 本発明の通気性積層体のまた別の一形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 PTFE多孔膜質
2 フェルト
3 不織布
Claims (5)
- ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の複数の測定領域について、下記式1で表されるヘイズ率をそれぞれ測定し、前記複数の測定領域におけるヘイズ率のバラツキが下記式2で表される変動率が20%以下である場合は良と、20%を越える場合は否として、前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の良否を判断する工程を含む、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の評価方法。
(式1)ヘイズ率[%]=拡散透過光量/全透過光量×100
(式2)変動率[%]Vx=Sx/Xm×100
ただし、Xmは、前記複数の測定領域におけるヘイズ率の平均値であり、Sxは、前記複数の測定領域におけるヘイズ率の標準偏差である。 - 前記複数の測定領域におけるヘイズ率の平均値が、40%以上である請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の評価方法。
- 請求項1又は2に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の評価方法を用いてポリテトラフルオロエチレン多孔質膜を評価する工程を含む、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の評価方法を用いてポリテトラフルオロエチレン多孔質膜を評価する工程と、
前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の良否を判断する工程において良と判断された前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と通気性支持材とを、少なくとも1層ずつ積層する工程とを含む、通気性積層体の製造方法。 - 請求項4に記載の通気性積層体の製造方法にて製造された通気性積層体に、前記通気性積層体を支持する部材を取付ける工程を含むフィルタユニットの製造方法。
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