JP4528903B2 - 植物含有有効成分のサイクロデキストリン包接物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物含有有効成分のサイクロデキストリン(以下、CDと称することがある。)包接物の製造方法に関し、詳しくは植物とデンプン(植物にデンプンが含まれている場合は不要)を原材料として利用し、植物に含まれる有効成分のCD包接物を効率よく製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より植物に含有する各種の有効成分は、生体調節機能に有効であることが良く知られており、これら成分は食品、化粧品、医薬品等に広く用いられている。
しかし、これら有効成分は脂溶性であるため、例えば食品に使用した場合、水分含有率が多い食品中では、安定性に欠ける性質があり、いずれもその使用形態に制約を受けているのが実状である。
【0003】
主要な食糧として世界で最も多く生産されている穀類の外皮部分(糠、ふすま等)には、ビタミンE類(トコフェロール類、トコトリエノール類)等脂溶性有効成分が多く含まれている。穀類に含まれている脂溶性ビタミンは、油と共に抽出されており、油状として利用されている。
上記課題を解消する方法として、特開平10−000170号公報には、CDにより包接した水難溶性の米ぬかエキスの製造法が提案されている。
【0004】
また、穀類から脂溶性ビタミンを抽出した残さには、穀類の主要成分であるデンプンが残る。そのデンプンの有効利用として、特開平06−253880号公報に、廉価な米ぬかや砕米を原料としてサイクロデキストリン合成酵素(以下、CGTaseと称することがある。)の働きによりCDを生産し、利用価値の高いタンパク濃縮米粉及びグルコースを副産物として得る方法が提案されている。
しかし、現在のCDの生産方法は、特に米デンプンの糊化温度が65℃と他のデンプンに比べ高いため、(a)デンプンに水を加えて65℃以上で加熱して糊化させる、(b)冷却する、(c)酵素を加えて適温で反応させる、(d)乾燥する、の4工程が必要となる。
さらに、脂溶性ビタミンを粉末化するためには、(1)有機溶媒による脂溶性ビタミンの抽出、(2)CD溶液と脂溶性ビタミンを攪拌する、(3)乾燥する、の3工程が必要である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、上記の従来技術によれば、植物有効成分のCD包接物を製造するためには、複雑な工程を経なければならない。
そこで、本発明の目的は、植物にCGTaseを反応させるという簡便な工程での植物有効成分のCD包接物を製造する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、目的とする植物含有有効成分のCD包接物は、図1に示すように、植物とデンプン(植物自体にデンプンが含まれている場合は不要。なお、デンプンとしては糊化デンプンが望ましい。)を原料としてエタノール存在下でデンプンをCGTaseと反応させることによりCDを製造し、同時にエタノールで抽出した植物含有有効成分をCDで包接することによって、植物含有有効成分のCD包接物を製造できることを見出した。かかる知見に基づいて本発明に到達した。
【0007】
請求項1記載の本発明は、1)脂溶性成分とデンプンとを含有する植物、又は、脂溶性成分を含有する植物及びデンプンの混合物、及び2)脂質可溶性溶媒、の混合物にCGTaseを加えて処理する脂溶性成分のCD包接物の製造方法であって、前記脂質可溶性溶媒が、濃度が5〜30%(容量)の脂質可溶性溶媒であり、前記処理が、40〜55℃あるいは50〜70℃で振盪しながら酵素反応させる処理であることを特徴とする脂溶性成分のサイクロデキストリン包接物の製造方法である。請求項2記載の本発明は、植物が、穀類、果物類又は野菜類である請求項1記載の脂溶性成分のCD包接物の製造方法である。請求項3記載の本発明は、植物が、粉末、粒状もしくは懸濁物である請求項1又は2に記載の脂溶性成分のCD包接物の製造方法である。請求項4記載の本発明は、CGTaseが、耐熱性のものであり、デンプン1g当たり0.1〜10THU用いる請求項1〜3のいずれかに記載の脂溶性成分のCD包接物の製造方法である。
【0008】
請求項5記載の本発明は、玄米、米糠及びエタノールを混合し、これにCGTaseを加えて50〜65℃で24〜48時間振盪しながら処理する請求項1〜4のいずれかに記載の脂溶性成分のビタミンE類のCD包接物の製造方法である。請求項6記載の本発明は、玄大麦、大麦ふすま及びエタノールを混合し、これにCGTaseを加えて50〜65℃で24〜48時間振盪しながら処理する請求項1〜4のいずれかに記載の脂溶性成分のビタミンE類のCD包接物の製造方法である。請求項7記載の本発明は、大豆、馬鈴薯デンプン及びエタノールを混合し、これにCGTaseを加えて50〜65℃で24〜48時間振盪しながら処理する請求項1〜4のいずれかに記載の脂溶性成分のイソフラボン類のCD包接物の製造方法である。請求項8記載の本発明は、ホウレンソウ、馬鈴薯デンプン及びエタノールを混合し、これにCGTaseを加えて50〜65℃で24〜48時間振盪しながら処理する請求項1〜4のいずれかに記載の脂溶性成分の脂溶性ビタミン類のCD包接物の製造方法である。請求項9記載の本発明は、ミカン皮、馬鈴薯デンプン及びエタノールを混合し、これにCGTaseを加えて50〜65℃で24〜48時間振盪しながら処理する請求項1〜4のいずれかに記載の脂溶性成分のβ−クリプトキサンチンのCD包接物の製造方法である。請求項10記載の本発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の方法で得られた、脂質可溶性溶媒によって抽出された植物含有有効成分を含有する抗酸化作用を有する脂溶性成分のCD包接物である。請求項11記載の本発明は、請求項10に記載の脂溶性成分のCD包接物を含有する食品である。請求項12記載の本発明は、請求項10に記載の脂溶性成分のCD包接物を含有する化粧品又は医薬品である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の対象とされる植物中に含まれる有効成分と当該成分を含む植物について示すと、ビタミンE類(米、麦、大豆、トウモロコシ)、ビタミンK類(大豆、サヤエンドウ、インゲン、米)等の穀類;リモイド(ユズ、温州ミカン、キンカン等の柑橘類)、β−クリプトキサンチン(柑橘類、アプリコット、モモ)、オーラブテン(グレープフルーツ)、レスペラトロール(ブドウ)、ビタミンE類(プルーン)、β−カロチン(プルーン、アプリコット、マンダリン、モモ)等の果物類やリコピン(トマト)、ビタミンA類(トマト、ブロッコリー、ニラ、ニンジン、ホウレンソウ)、ビタミンK類(トマト、ホウレンソウ、ブロッコリー、ピーマン、シュンギク、シソ、コマツナ、パセリ)、β−カロチン(ブロッコリー、カボチャ、ホウレンソウ、サツマイモ、ニンジン)、ビタミンE類(ブロッコリー、芽キャベツ、ホウレンソウ)、クロロフィル(ブロッコリー、ホウレンソウ)、カプサイシン(唐辛子)、サポニン イソチアネート(ダイコン)、テルピネオール(オレガノ)等の野菜類等各種の植物が利用できる。
これら植物は、その有効成分を溶媒で効率よく抽出させるため、粉末、粒状もしくは懸濁物の形態で用いることが好ましい。
本発明においては、上記植物の他にデンプンを原料として用いるが、デンプンの起源は問わず各種のものを任意に使用できるが、糊化デンプンが好ましい。
なお、米、麦等のように、デンプンを含有している植物を原料として用いる場合は、別途デンプンを加える必要はないか、又はその量を軽減できる。
【0010】
植物含有有効成分を抽出するための溶媒としては、当該有効成分を抽出することができる全ての溶媒が利用可能であるが、特に脂質可溶性溶媒が適当であり、エタノール、メタノール、アセトン、エーテル、ヘキサン等を好適に使用することができる。抽出溶媒としてエタノールを用いる場合を例として説明すると、エタノールの濃度は5〜30%(容量)、好ましくは20〜25%(容量)のものを用いる。
【0011】
CGTaseは、デンプンと反応してCDを合成する作用を有する。この酵素は主に微生物に由来するが、その起源は特に限定されない。市販されているCGTaseの他、CGTase生産微生物の培養物等を粗酵素として使用することができる。なお、糊化デンプンと反応させることを考慮すると、酵素は耐熱性のものが好ましい。
【0012】
次に、本発明による脂溶性成分のCD包接物の製造方法について説明する。植物、必要に応じてのデンプンと脂質可溶性溶媒の混合物にCGTaseを加えて処理すると、デンプンとCGTaseの反応によってCDが生成し、さらにエタノール等の脂質可溶性溶媒によって抽出された植物含有有効成分である脂溶性成分は当該CDで包接される。
このように、本発明によれば、従来のような複雑な工程を必要としないで、簡便な方法で植物含有有効成分のCD包接物を製造することができる。
【0013】
本発明に用いる植物は、有効成分として脂溶性成分(ビタミンA、E、K等の脂溶性ビタミン類、イソフラボン類、β−クリプトキサンチン等)を含むものであればよく、上記した穀類、果物類、野菜類等を挙げることができる。所望により、請求項12に記載したように、脂溶性成分自体を原料として用いることもできる。
なお、エタノール等の脂質可溶性溶媒による有効成分の抽出処理を効果的に行うため、植物は粉末、粒状もしくは懸濁物として用いることが望ましい。
【0014】
また、CGTaseの使用量は、デンプン1g当たり0.1〜10THU(チルデン・ハドソン単位)が適当であるが、経済性等を考慮すると0.5〜1THUが好適である。
【0015】
植物、必要に応じてのデンプンと脂質可溶性溶媒の混合物にCGTaseを加えて行う反応条件は、通常の酵素を用いる場合は、40〜55℃、耐熱性酵素を用いる場合は、50〜70℃(好ましくは65℃)で12〜48時間、好ましくは24時間程振盪しながら反応させる。この反応により、植物中の有効成分である脂溶性成分は抽出され、デンプンと酵素の反応により生成したCDに包接される。
反応終了後、懸濁液を3000〜5000回転/分、好ましくは3500回転/分で1〜30分間、好ましくは5〜10分間遠心分離等の固−液分離操作を行って上澄み液を得る。これを、脂溶性成分のCD包接物として用いることができる。
しかし、乾燥物を得たい場合は、上澄み液をスプレイドライヤー等で150〜250℃の温度で乾燥することにより、脂溶性成分のCD包接物の乾燥粉末を得ることができる。
【0016】
本発明によって得られる脂溶性成分のCD包接物は水溶性であるため、利用できる範囲が広く、例えば食品、化粧品、医薬品等の分野において利用することができる。なお、食品、化粧品、医薬品等に色素や香料等の揮発性物質が含まれている場合、これらもCDに包接され、安定化することも期待できる。
【0017】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
玄米粉5g、米糠5gと高温耐性のCGTase(当該酵素生産菌を培養して調製)をデンプン1g当たり1THU加えたものに、所定濃度のエタノール溶液を加えて全量を100mlとし、これを65℃で24時間振盪しながら反応させた。
反応終了後、懸濁液を3500回転/分で10分間遠心分離して約80mlの上澄み液を得た。これを、噴霧時の温度200℃のスプレードライヤーで乾燥させ、米含有有効成分のCD包接物の乾燥粉末約2gを得た。この乾燥粉末は、水溶性であった。
【0018】
この反応によって生成したCD量を、以下の方法により、エタノールの濃度を基準として測定した。結果を第1表に示す。表から明らかなように、エタノール濃度が高くなるにしたがってCD量は減少しており、エタノール濃度が30%を超えると、CDは生成されない。
なお、CDの測定は以下の方法により行った。米含有有効成分のCD包接物0.1gを1mlの蒸留水で溶かし、測定試料とする。CD組成は、HPLCで測定した。測定条件は、カラム:Wakosil 5NH2 (φ4mm ×250mm 、和光純薬社製) 、移動層:水/アセトニトリル=40/60、流速:0.8ml/分、カラム温度:25℃、検出器:RID−6AV(島津製作所製)、ポンプ:LC6A(島津製作所製)である。
【0019】
【表1】
第1表
【0020】
次に、米含有有効成分のCD包接物にはトコフェロール、トコトリエノール等のビタミンE類が含まれていることが分かったので、これらを次の方法で測定した。米含有有効成分のCD包接物1gに100%エタノール溶液10ml、1%塩化ナトリウム溶液20ml、60%水酸化カリウム溶液10ml、3%ピロガロール溶液100mlを加え、70℃の恒温水槽中で30分間振盪して試料をケン化した。ケン化した試料に酢酸エチル/ヘキサン(1/9)溶液100mlを加えて5分間振盪、抽出した後、遠心分離(3000回転/分、5分間)して上澄みを回収した。この操作を2回繰り返した。
エバポレータ(40℃、100回転/分)で溶媒を留去した後、試料をヘキサン3mlで溶解してHPLC分析試料とした。HPLC分析条件は、カラム:Wakosil 5SIL (φ4mm ×250mm 、和光純薬社製) 、移動層:ヘキサン/ジイソプロピルエーテル=9/1、流速:1ml/分、カラム温度:30℃、UV検出波長(295nm)、UV検出器:SPD−6AV(島津製作所製)、HPLCポンプ:LC6A(島津製作所製)である。エタノールの濃度別に測定した結果を第2表に示す。
【0021】
【表2】
第2表
表中、ビタミンE類の含有量の単位はμg/gである。
【0022】
第2表から明らかなように、トコフェロールやトコトリエノールの含有量は、エタノール濃度が高くなるにしたがい増加する傾向にあることが分かる。
第1表の結果と併せて考えると、本発明のCD包接物の製造方法においては、エタノール濃度を適切な範囲に調整することが重要であり、5〜30%が好適であることが明らかとなった。
【0023】
また、得られたCD包接物について、抗酸化能を安定なラジカルであるジフェニルピクリルヒドラジル(以下、DDPHと称することがある。)を消去する能力により求めた。すなわち、米含有有効成分のCD包接物1gを80%エタノール溶液8mlで振盪抽出(試験管ミキサーで1分間振盪)した後、含浸分離(3000回転/分、5分間)して上澄みを回収しする操作を2回繰り返した。上澄みを集め、全容を25mlとし抽出試料とした。この試料2mlに蒸留水1.2mlと50%エタノール溶液0.8mlを加え、この測定用試料(0〜300μl)を200μM DDPH300μlと反応させ、520nmの吸光度を測定し、試料無添加の吸光度を100%として試料のDDPH消去能を算出した。
また、対象として従来より抗酸化剤として用いられているビタミンC、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(以下、BHTと称することがある。)及びt−ブチルヒドロキシアニソール(以下、BHAと称することがある。)についても、同様に抗酸化能について測定した。図2は、DDPHを25%消去するのに必要な抗酸化剤の量(mg)を示したものである。
【0024】
図2から分かるように、CD包接物はBHTと同程度の抗酸化能を有している。また、DDPHを25%消去するのに必要な量は、製造時に添加するエタノールの濃度が高くなるほど少なくなることが明らかとなった。
【0025】
実施例2
玄六条大麦粉5g、ふすま5gと耐熱性CGTase(バチルス属KF9−10菌産生酵素)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を第3表及び第4表に示す。図3は、DDPHを25%消去するのに必要な抗酸化剤の量(mg)を示したものである。
【0026】
【表3】
第3表
【0027】
【表4】
第4表
表中、ビタミンE類の含有量の単位はμg/gである。
【0028】
第3表に示すように、エタノール濃度が高くなるにしたがって、CD含有量が減少することが明らかとなった。特に、エタノール濃度が30%を超えると、CDが生成されないため、エタノールの濃度を適正な範囲に調整して用いることが重要であることが分かった。
また、第4表に示すように、得られたCD包接物に包接されている玄六条大麦含有有効成分はビタミンE類であった。ビタミンE類としては、トコフェロール及びトコトリエノールが含まれており、エタノール濃度が高くなるにつれて、包接されるビタミンE類の含有量が増加した。
以上のことから、本発明のCD包接物の製造方法においては、エタノール濃度を適切な範囲に調整することが重要であり、エタノール濃度を5〜30%とすべきであることが明らかとなった。
【0029】
溶解試験の結果、ビタミンE類のCD包接物は水溶性を示した。
また、ビタミンEのCD包接物は抗酸化能を有し、DDPHを25%消去するために必要な量は、製造時に添加するエタノールの濃度が高くなるほど少なくなることが明らかとなった。
図3から明らかなように、ビタミンEのCD包接物のうち、特に20%エタノール溶液を用いて得られたCD包接物は、従来より抗酸化剤として用いられているビタミンCやBHAの抗酸化能に匹敵する抗酸化能を有していた。
【0030】
実施例3
大豆5g、糊化馬鈴薯デンプン5gとCGTase(商品名:コンチザイム、天野製薬社製)をデンプン1g当たり1THU加えたものに、5〜50%エタノール溶液を加えて全量を100mlとし、50℃で24時間振盪しながら反応させた。
反応終了後、得られた懸濁液を、3500回転/分で10分遠心分離し、約80mlの上澄み液を得た。これを、噴霧時温度200℃のスプレードライヤーで乾燥して、CD包接物の乾燥粉末約2gを得た。
この乾燥粉末について、実施例1と同様に、生成したCD含量及び溶解試験を行った。CD含量の測定結果を第5表に示す。
【0031】
【表5】
第5表
【0032】
第5表に示すとおり、エタノール濃度が高くなるにつれて、生成されるCD含有量が減少することが明らかとなった。すなわち、エタノール濃度が30%を超えると、CDが生成されないため、エタノールの濃度を適正な範囲に調整することが重要であることが示された。
【0033】
得られたCD包接物に包接されている大豆含有有効成分はイソフラボンであった。CD包接物中のイソフラボン含有量は、次の方法で測定した。
大豆CD包接物10gに80%メタノール100mlを加えて溶解したものをHPLC分析用試料とした。HPLC分析条件は次の通りである。カラム:LiChrospher 100 RP-18 (φ4mm ×250mm 、メルク社製) 、移動層:2%酢酸酢酸を含む25%メタノール溶液のメタノール濃度を40分で80%まで増加させる。流速:1ml/分、カラム温度:30℃、UV検出波長(350nm)、UV検出器:SPD−6AV(島津製作所製)、HPLCポンプ:LC6A(島津製作所製)。
イソフラボン含量の測定結果を第6表に示す。
【0034】
【表6】
第6表
【0035】
第6表に示すように、イソフラボンのCD包接物としては、ダイジン、ダイゼイン、ゲニスチン、ゲニステインが含まれており、エタノール濃度が高くなるにつれて、包接されるイソフラボンの含有量が増加した。
以上のことから、本発明のCD包接物の製造方法においては、エタノール濃度を適切な範囲に調整することが重要であり、具体的なエタノール濃度は5〜30%とすべきことが明らかとなった。
【0036】
実施例4
温州みかん乾燥皮粉末5g、糊化馬鈴薯デンプン5g及びCGTase(実施例1と同じ)をデンプン1g当たり1THU加えたものに、所定濃度のエタノール溶液を加えて全量を100mlとしたこと以外は、実施例3と同様に行い、約80mlの上澄み液を得た。これを実施例3と同様にして乾燥し、CD包接物の乾燥粉末約2gを得た。
得られたCD包接物には、みかん含有の有効成分であるβ−クリプトキサンチンが含まれており、該包接物は水溶性であり、かつ抗酸化作用を示した。
β−クリプトキサンチンの含量を以下の方法で測定した。得られた結果を第7表に示す。
【0037】
温州みかん含有有効成分のCD包接物1gに100%エタノール溶液10ml、1%塩化ナトリウム溶液20ml、60%水酸化カリウム溶液10ml、3%ピロガロール溶液100mlを加え、70℃恒温槽中で30分間振盪して試料をケン化した。この試料に酢酸エチル/ヘキサン(1/9)溶液100mlを加え5分間振盪抽出した後、遠心分離(3000回転/分、5分間)して上澄みを回収した。この操作を2回繰り返した後、エバポレータ(40℃、100回転/分)で溶媒を留去し、次いで試料をヘキサン3mlで溶解してHPLC分析試料とした。HPLC分析条件は次の通りである。
カラム:Wakosil II 5 C 18 AR(φ4mm ×250mm: 和光純薬社製) 、移動層:アセトニトリル/メタノール/酢酸エチル(88/10/2)、流速:2ml/分、カラム温度:30℃、UV検出波長(436nm)、UV検出器:SPD−6AV(島津製作所製)、HPLCポンプ:LC6A(島津製作所製)
【0038】
【表7】
第7表
【0039】
実施例5
乾燥ホウレンソウ粉末5g、糊化糯米デンプン5g及びCGTase(実施例1と同じもの)をデンプン1g当たり0.5THU加えたものに、所定濃度のエタノール溶液を加えて全量を100mlとし、50℃で48時間振盪しながら反応させた。
反応終了後、懸濁液を3500回転/分で10分間遠心分離し、約80mlの上澄み液を得た。これを、噴霧時温度200℃のスプレードライヤーで乾燥したところ、CD包接物の乾燥粉末約2gが得られた。
このCD包接物は水溶性であった。また、CD含量並びにCD包接物について含有成分を分析した。その結果、脂溶性ビタミン類が含まれていることを確認した。なお、CD含量及び脂溶性ビタミンであるα−トコフェロール含有量については、実施例1と同様に測定した。また、ビタミンK含有量は、以下の方法で測定した。測定結果を第8表及び第9表に示す。
【0040】
ホウレンソウ含有有効成分のCD包接物1gにヘキサン6mlを加えて5分間振盪後、遠心分離(3000回転/分、5分間)して上澄みを回収した。この操作を2回繰り返した後、エバポレータ(40℃、100回転/分)で溶媒を留去し、次いで試料をエタノール200μlで溶解し、HPLC分析試料とした。HPLC分析条件は次の通りである。
カラム:Mightsil RP-18(φ4.6mm ×150mm: 関東化学社製) 、 移動層:アセトニトリル/メタノール(60/4 0)、流速:1ml/分、カラム温度:40℃、UV検出波長(280nm)、UV検出器:SPD−6AV(島津製作所製)、HPLCポンプ:LC6A(島津製作所製)
【0041】
【表8】
第8表
【0042】
【表9】
第9表
【0043】
第8表に示すように、エタノール濃度が高くなるにつれて、生成されるCD含量が減少することが明らかとなった。すなわち、エタノール濃度が30%を超えると、CDが生成されない。それ故、目的とするCD包接物を効果的に得るためには、エタノールの濃度を適正な範囲に調整することが重要である。
また、第9表に示すように、ホウレンソウ含有有効成分CD包接物には、α−トコフェロールやビタミンK等の脂溶性ビタミンが含まれており、これらの含有量はエタノール濃度が高くなるにしたがって増加した。
【0044】
実施例6
α−トコフェロール(和光純薬社製)0.1gと糊化馬鈴薯デンプン5g及びCGTase(商品名:コンチザイム、天野製薬社製)をデンプン1g当たり1THU加えたものに20%エタノール溶液を加えて全量を100mlとした混合物を65℃で24時間振盪しながら反応させた。
反応終了後、懸濁液を3500回転/分で10分間遠心分離して約80mlの上澄み液を得た。これを、噴霧時の温度200℃のスプレードライヤーで乾燥させ、有効成分のCD包接物の乾燥粉末約2gを得た。この乾燥粉末は、水溶性であった。
得られたCD包接物中のα−トコフェロール含量を、実施例1と同様の方法により測定した。結果を第10表に示す。
【0045】
比較例1
α−トコフェロール(和光純薬社製)0.1gとCD(商品名:デキシパール100、横浜国際バイオ研究所製)2gに水を加えて全量100mlとした混合物について、実施例6と同様に反応させてCD包接物の乾燥粉末約2gを得た・得られたCD包接物中のα−トコフェロール含量を、実施例1と同様の方法で測定した。結果を第10表に示す。
【0046】
比較例2
α−トコフェロール(和光純薬社製)0.1gとCD(商品名:デキシパール100、横浜国際バイオ研究所製)2gに20%エタノール溶液を加えて全量100mlとした混合物について、実施例6と同様に反応させてCD包接物の乾燥粉末約2gを得た。
得られたCD包接物中のα−トコフェロール含量を、実施例1と同様の方法で測定した。結果を第10表に示す。
【0047】
比較例3
α−トコフェロール(和光純薬社製)0.1gと糊化馬鈴薯デンプン5g及びCGTase(商品名:コンチザイム、天野製薬社製)をデンプン1g当たり1THU加えたものに水を加えて全量を100mlとした混合物について、実施例6と同様に反応させてCD包接物の乾燥粉末約2gを得た。
得られたCD包接物中のα−トコフェロール含量を、実施例1と同様の方法で測定した。結果を第10表に示す。
【0048】
【表10】
第10表
表中、α−トコフェロールの含有量の単位はmg/gである。
【0049】
第10表から明らかなように、実施例6で得られたCD包接物に包接されているα−トコフェロールの含有量が最も高値を示した。したがって、植物含有有効成分の代わりに脂溶性成分自体を用いても同様に、CD包接物を製造できることが明らかとなった。
また、比較例3は、得られたCD包接物に包接されているα−トコフェロールの含有量は実施例6よりも少ないものの、有効成分であるα−トコフェロールの所定量が包接されていた。したがって、脂質可溶性溶媒の代わりに水を用いた場合においても、当該有効成分のCD包接物を製造できることが示唆された。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、エタノール溶液の存在下で原料のデンプンから生成したCDを含む糖類が、エタノールによって抽出された植物含有有効成分を包接したCD包接物を簡便、かつ効率よく製造することが可能となった。しかも、有効成分として抽出される脂溶性成分はCDに包接されることで水溶性を示す。
そのため、得られた植物含有有効成分CD包接物は、食品、化粧品、医薬品等幅広い水溶性製品に容易に添加し、利用することが可能となった。
【0051】
さらに、本発明の植物含有有効成分CD包接体は、CDを含有しているため、このものを添加した食品、化粧品、医薬品に含まれる色素や香料等揮発性物質が包接され、これら物質を安定化させることも期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の植物含有有効成分CD包接体の製造工程の1態様を示す。
【図2】 米由来脂溶性ビタミン水溶性粉末の抗酸化能を示す。
【図3】 六条大麦由来脂溶性ビタミン水溶性粉末の抗酸化能を示す。
【符号の説明】
横軸の0〜30%の数値はエタノール濃度を、記号は市販抗酸化剤を示し、BHTは2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、BHAはt−ブチルヒドロキシアニソール、V.C.はビタミンCを示す。
Claims (12)
- 1)脂溶性成分とデンプンとを含有する植物、又は、脂溶性成分を含有する植物及びデンプンの混合物、及び2)脂質可溶性溶媒、の混合物にサイクロデキストリン合成酵素を加えて処理する脂溶性成分のサイクロデキストリン包接物の製造方法であって、
前記脂質可溶性溶媒が、濃度が5〜30%(容量)の脂質可溶性溶媒であり、前記処理が、40〜55℃あるいは50〜70℃で振盪しながら酵素反応させる処理であることを特徴とする脂溶性成分のサイクロデキストリン包接物の製造方法。 - 植物が、穀類、果物類又は野菜類である請求項1記載の脂溶性成分のサイクロデキストリン包接物の製造方法。
- 植物が、粉末、粒状もしくは懸濁物である請求項1又は2に記載の脂溶性成分のサイクロデキストリン包接物の製造方法。
- サイクロデキストリン合成酵素が、耐熱性のものであり、デンプン1g当たり0.1〜10THU用いる請求項1〜3のいずれかに記載の脂溶性成分のサイクロデキストリン包接物の製造方法。
- 玄米、米糠及びエタノールを混合し、これにサイクロデキストリン合成酵素を加えて50〜65℃で24〜48時間振盪しながら処理する請求項1〜4のいずれかに記載の脂溶性成分のビタミンE類のサイクロデキストリン包接物の製造方法。
- 玄大麦、大麦ふすま及びエタノールを混合し、これにサイクロデキストリン合成酵素を加えて50〜65℃で24〜48時間振盪しながら処理する請求項1〜4のいずれかに記載の脂溶性成分のビタミンE類のサイクロデキストリン包接物の製造方法。
- 大豆、馬鈴薯デンプン及びエタノールを混合し、これにサイクロデキストリン合成酵素を加えて50〜65℃で24〜48時間振盪しながら処理する請求項1〜4のいずれかに記載の脂溶性成分のイソフラボン類のサイクロデキストリン包接物の製造方法。
- ホウレンソウ、馬鈴薯デンプン及びエタノールを混合し、これにサイクロデキストリン合成酵素を加えて50〜65℃で24〜48時間振盪しながら処理する請求項1〜4のいずれかに記載の脂溶性成分の脂溶性ビタミン類のサイクロデキストリン包接物の製造方法。
- ミカン皮、馬鈴薯デンプン及びエタノールを混合し、これにサイクロデキストリン合成酵素を加えて50〜65℃で24〜48時間振盪しながら処理する請求項1〜4のいずれかに記載の脂溶性成分のβ−クリプトキサンチンのサイクロデキストリン包接物の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の方法で得られた、脂質可溶性溶媒によって抽出された植物含有有効成分を含有する抗酸化作用を有する脂溶性成分のサイクロデキストリン包接物。
- 請求項10に記載の脂溶性成分のサイクロデキストリン包接物を含有する食品。
- 請求項10に記載の脂溶性成分のサイクロデキストリン包接物を含有する化粧品又は医薬品。
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