JP4530506B2 - 耐熱部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性と難燃性が要求される自動車のエンジン周辺やランプまわりの部品(以下「自動車用耐熱部品」と略すことがある。)、及び耐熱性と難燃性が要求される複写機、プリンター、ファクシミリなどに代表される事務機器の部品(以下「事務機器用耐熱部品」と略すことがある。)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車用耐熱部品は、自動車のエンジン周辺部位やランプまわりなどの部位に使用される。また事務機器用耐熱部品は、複写機、プリンター、ファクシミリなどの内部機構部品に使用される。これらの耐熱部品はともに製品の安全性、信頼性の観点から耐熱性及び難燃性が要求される。従って、耐熱性、難燃性のほかに、コスト、成形加工性などの性能を考慮し、その部品の材料には従来PETやPBTに代表される熱可塑性樹脂に難燃剤及び無機充填材が添加されたものが使用されていた。難燃剤に含まれるハロゲンやアンチモンなどが原因で、燃焼時に有毒ガスを発生するという環境上好ましくない問題があった。一方、無機充填材が添加されているため、軽量化されないという問題や、リサイクルするために、部品を粉砕後、押し出し機などを用い樹脂を再溶融化すると、無機充填材の形状やサイズが変化してしまい、リサイクル前並みの物性が発現できないなどの問題があった。よって、自動車用耐熱部品及び事務機器用耐熱部品の素材には、ハロゲン系難燃剤を含まず、環境上好ましく、かつリサイクルすることも可能で、かつ軽量で、かつ耐熱性と難燃性と流動性に優れる樹脂組成物が望まれていた。
【0003】
一般に、ポリフェニレンエーテルは耐熱性、耐熱水性、寸法安定性および機械的、電気的性質などの優れた性質を有する樹脂であるが、一方、その溶融粘度が高いために成形性が悪い、すなわち流動性が悪い、または耐薬品性が悪い、耐衝撃性が低い、等の欠点を有している。ポリフェニレンエーテルのこのような欠点を改良するためポリフェニレンエーテルと他の樹脂とのアロイ化が従来から行われてきた。
【0004】
例えば、ポリフェニレンエーテルにポリスチレンやハイインパクトポリスチレンなどをアロイ化することにより、流動性が改良されることが広く知られているが、難燃性や耐熱性が低下する、等の問題があった。
一方、例えば特開昭56−115357号公報に、液晶ポリエステルにポリフェニレンエーテルなどの重合体を配合し、ポリフェニレンエーテルの溶融加工性を改良することが提案されているが、十分とはいえない。また特開平2−97555号公報には、はんだ耐熱性を向上させる目的で液晶ポリエステルに各種のポリアリレンオキサイドを配合することが提案され、さらには特開平6−122762号公報には、アミン類で変性したポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルを配合することが提案されているが、いずれも耐衝撃性、剛性、流動性、難燃性、電気特性のバランスの観点においては十分とはいえない。
【0005】
また、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルをアロイ化する際に、有機シランカップリング剤を添加することが、特開平5−117505号公報、特開平9―111103号公報に提案されているが、流動性において十分とはいえない。また特開平5−86288号公報に強度、剛性のリサイクル保持性を高める方法が提案されているが、流動性において十分とはいえない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ハロゲン元素を含まず、環境上好ましく、リサイクル可能で、かつ軽量で、かつ耐熱性と難燃性と流動性に優れる樹脂組成物から得られる耐熱部品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意研究を重ねた結果、特定量のポリフェニレンエーテル系樹脂と特定量の液晶ポリエステルを配合することにより、ハロゲン元素を含まず、環境上好ましく、リサイクル可能で、かつ軽量で、かつ耐熱性と難燃性と流動性に優れる樹脂組成物から得られる耐熱部品が提供されることを見いだした。さらにポリフェニレンエーテル系樹脂のフェノール性水酸基の数を特定の範囲内に選択することにより、特に流動性が改良されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
1.(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂90〜99重量部と、
(B)液晶ポリエステル10〜1重量部とからなる樹脂組成物から成形することにより得られ、
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が、式(1)または式(2)で表されるフェノール性水酸基をフェニレンエーテルユニットの100個に対して1.50個以下含有する耐熱部品であって、比重が1.30以下、かつ該部品の最大厚みが0.5mm以上5mm以下であることを特徴とする耐熱部品、
【0009】
2.耐熱部品が自動車用耐熱部品であることを特徴とする上記1に記載の耐熱部品、
3.耐熱部品が事務機器用耐熱部品であることを特徴とする上記1に記載の耐熱部品、を提供するものである。
【0010】
【化3】
【0011】
【化4】
【0012】
(R1、R4は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、アミノアルキル、炭化水素オキシを表わす。R2、R3は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニルを表わす。)
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明について具体的に説明する。
本発明の(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂とは、(式3)の繰り返し単位構造
【0014】
【化5】
【0015】
(R1、R4は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、アミノアルキル、炭化水素オキシを表わす。R2、R3は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニルを表わす。)からなり、還元粘度(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)が、0.15〜1.0dl/gの範囲にあるホモ重合体、及び/または共重合体である。好ましい還元粘度は、0.20〜0.70dl/gの範囲、最も好ましくは0.40〜0.60の範囲である。
【0016】
このポリフェニレンエーテル系樹脂の具体的な例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)、等が挙げられ、さらに、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のようなポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、さらにポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。
【0017】
本発明で使用する(A)ポリフェニレンエーテルの製造方法の例として、米国特許第3306874号明細書記載の第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合する方法がある。
米国特許第3306875号、同第3257357号および同第3257358号の明細書、特公昭52−17880号および特開昭50−51197号および同63−152628号の各公報等に記載された方法も(A)ポリフェニレンエーテルの製造方法として好ましい。
【0018】
本発明の(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、重合行程後のパウダーのまま用いてもよいし、押出機などを用いて、N2ガス雰囲気下あるいは非N2ガス雰囲気下、脱揮下あるいは非脱揮下にて溶融混練することによりペレット化して用いてもよい。
【0019】
本発明の(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、種々のジエノフィル化合物により官能化されたポリフェニレンエーテルも含まれる。種々のジエノフィル化合物には、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、フェニルマレイミド、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアリレート、メチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンなどの化合物が挙げられる。これらのジエノフィル化合物により官能化する方法として、ラジカル発生剤存在下あるいは非存在下で押出機などを用い、脱揮下あるいは非脱揮下にて溶融状態で官能化してもよい。あるいはラジカル発生剤存在下あるいは非存在下で、非溶融状態、すなわち室温以上、かつ融点以下の温度範囲にて官能化してもよい。この際、ポリフェニレンエーテルの融点は、示差熱走査型熱量計(DSC)の測定において、20℃/分で昇温するときに得られる温度−熱流量グラフで観測されるピークのピークトップ温度で定義され、ピークトップ温度が複数ある場合にはその内の最高の温度で定義される。
【0020】
本発明の(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂の分子量は、数平均分子量で1,000〜100,000が好ましい。さらに好ましい範囲は、約6,000〜60,000である。特にエンジニアリング樹脂の用途として好ましいのは、約10,000〜30,000のものである。なお、本発明の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンの検量線を用いて求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。本発明の(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂の分子量が1,000より小さいと、十分な耐衝撃性が得られず、100,000より多いと、十分な流動性が得られにくい。
また、本発明の(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、式(1)または式(2)で表されるフェノール性水酸基をフェニレンエーテルユニットの100個に対して1.50個以下含有するものが好ましい。
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
【0023】
(R1、R4は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、アミノアルキル、炭化水素オキシを表わす。R2、R3は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニルを表わす。)
このフェノール性水酸基は、EHUD SH CHORI等の方法(ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマーズ・サイエンス;アプライド・ポリマー・シンポジウム、34、103〜117頁、(1978)に記載)に従って定量される。すなわち(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂を正確に秤量し(W(mg))、25mlの塩化メチレンに溶解し、10重量%濃度のテトラエチルアンモニウムヒドロキサイドのエタノール溶液を20μlを加え、UV分光光度計(日立(株)社製、U−3210)を用いて、318nmの吸光度(Abs)を測定し、次の式に基づいて算出できる。
【0024】
n(OH)=63.9×(Abs)/(W)
(ただし、n(OH):フェニレンエーテルユニットの100個に対してのフェノール性水酸基の個数)
このフェノール性水酸基は、フェニレンエーテルユニットの100個に対して1.50個以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.25以下であり、もっとも好ましくは1.20以下である。その下限は特になく、少なければ少ないほど、流動性の観点で好ましい。
【0025】
また、本発明の(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、本発明の特徴と効果を損なわない範囲内にて、必要に応じて芳香族ビニル系重合体を含んでいてもよい。芳香族ビニル系重合体として、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体などが挙げられる。
【0026】
本発明の(B)液晶ポリエステルは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルで、公知のものを使用できる。例えば、p−ヒドロキシ安息香酸およびポリエチレンテレフタレートを主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸、ならびに4,4′−ジヒドロキシビフェニルおよびテレフタル酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステルなどが挙げられ、特に制限はない。本発明で使用される(B)液晶ポリエステルとしては、下記構造単位(イ)、(ロ)、および必要に応じて(ハ)および/または(ニ)からなるものが好ましく用いられる。
【0027】
【化8】
【0028】
【化9】
【0029】
【化10】
【0030】
【化11】
【0031】
ここで、構造単位(イ)、(ロ)はそれぞれ、p−ヒドロキシ安息香酸から生成したポリエステルの構造単位と、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸から生成した構造単位である。構造単位(イ)、(ロ)を使用することにより、優れた耐熱性、流動性や剛性などの機械的特性のバランスに優れた本発明の熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。上記構造単位(ハ)、(ニ)中のXは、下記(式4)よりそれぞれ任意に1種あるいは2種以上選択することができる。
【0032】
【化12】
【0033】
構造式(ハ)において好ましいのは、エチレングリコール、ハイドロキノン、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールAのそれぞれから生成した構造単位であり、さらに好ましいのは、エチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンのそれぞれから生成した構造単位であり、特に好ましいのは、エチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニルのそれぞれから生成した構造単位である。構造式(ニ)において好ましいのは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ジカルボキシナフタレンのそれぞれから生成した構造単位であり、さらに好ましいのは、テレフタル酸、イソフタル酸のそれぞれから生成した構造単位である。
【0034】
構造式(ハ)および構造式(ニ)は、上記に挙げた構造単位を少なくとも1種あるいは2種以上を併用することができる。具体的には、2種以上併用する場合として、構造式(ハ)においては、1)エチレングリコールから生成した構造単位/ハイドロキノンから生成した構造単位、2)エチレングリコールから生成した構造単位/4,4′−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、3)ハイドロキノンから生成した構造単位/4,4′−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、などを挙げることができる。
【0035】
また、構造式(ニ)においては、1)テレフタル酸から生成した構造単位/イソフタル酸から生成した構造単位、2)テレフタル酸から生成した構造単位/2,6−ジカルボキシナフタレンから生成した構造単位、などを挙げることができる。ここでテレフタル酸の量は2成分中、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。テレフタル酸の量を2成分中40重量%以上とすることにより、比較的に流動性、耐熱性が良好な樹脂組成物となる。液晶ポリエステル(B)成分中の構造単位(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の使用量の割合は特に限定されない。ただし、構造単位(ハ)と(ニ)は基本的にほぼ等モル量となる。
【0036】
また、構造単位(ハ)、(ニ)からなる構造単位(ホ)を、(B)成分中の構造単位として使用することもできる。具体的には、1)エチレングリコールとテレフタル酸から生成した構造単位、2)ハイドロキノンとテレフタル酸から生成した構造単位、3)4,4′−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸から生成した構造単位、4)4,4′−ジヒドロキシビフェニルとイソフタル酸から生成した構造単位、5)ビスフェノールAとテレフタル酸から生成した構造単位、などを挙げることができる。
【0037】
【化13】
【0038】
本発明の(B)液晶ポリエステル成分には、必要に応じて本発明の特徴と効果を損なわない程度の少量の範囲で、他の芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸から生成する構造単位を導入することができる。本発明の(B)成分の溶融時での液晶状態を示し始める温度(以下「液晶開始温度」という)は、好ましくは150〜350℃、さらに好ましくは180〜320℃である。液晶開始温度をこの範囲にすることは、得られる樹脂組成物を好ましい耐熱性と成形加工性バランスの良いものとし得る。
【0039】
本発明の(B)液晶ポリエステル成分の25℃、1MHzにおける誘電正接(tanδ)は、好ましくは0.03以下であり、さらに好ましくは0.025以下である。この誘電正接の値が小さければ小さいほど、誘電損失は小さくなり、発生する電気的ノイズが抑制され好ましい。特に25℃、高周波数領域下、すなわち1〜10GHz領域において、誘電正接(tanδ)は、好ましくは0.03以下であり、さらに好ましくは0.025以下である。
【0040】
本発明の(B)液晶ポリエステル成分の見かけの溶融粘度(液晶開始温度+30℃、かつずり速度100/秒)は、好ましくは100〜30,000ポイズ、さらに好ましくは100〜20,000ポイズ、特に好ましくは100〜10,000ポイズである。見かけの溶融粘度をこの範囲にすることは、得られる組成物の流動性を好ましいものとし得る。本発明の(B)成分の溶融状態(液晶状態)における熱伝導率は、好ましくは0.1〜2.0W/mK、さらに好ましくは0.2〜1.5W/mK、特に好ましくは0.3〜1.0W/mKである。溶融状態(液晶状態)での熱伝導率をこの範囲にすることにより、得られる組成物の射出成形サイクルを比較的短縮化することができる。
【0041】
本発明における(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂の配合量は、30〜99重量部で、好ましくは35〜98重量部で、さらに好ましくは40〜95重量部である。この配合量が99重量部より多いと、流動性が大きく低下してしまう。この配合量が30重量部より少ないと、比重が大きくなってしまい、軽量化には好ましくない。
本発明における(B)液晶ポリエステルの配合量は、70〜1重量部で、好ましくは65〜2重量部で、さらに好ましくは60〜5重量部である。この配合量が70重量部より多いと、比重が大きくなり軽量化には好ましくなく、コスト高を招く。この配合量が1重量部より少ないと、十分な流動性が得られない。
【0042】
本発明の耐熱部品の例として、自動車用耐熱部品と事務機器用耐熱部品がある。以下、これらの部品について説明する。自動車用耐熱部品は、自動車のエンジン周辺部位やランプまわりなどの部位に使用される部品である。自動車のエンジン及びランプは使用されていると発熱し熱源部となり、150℃以上に到達することがある。継続的に使用する場合によっては170℃以上に到達することがある。さらに該耐熱部品は、熱源部と該耐熱部品の間の最短距離が0.2mm以上50mm以下、好ましくは0.3mm以上30mm以下、さらに好ましくは0.5mm以上10mm以下の範囲にある部位に用いられるものである。例えば、該耐熱部品は、自動車のランプ部品、ランプエクステンション、ランプリフレクターなどとして用いられる。
【0043】
事務機器用耐熱部品は、複写機、プリンター、ファクシミリなどの内部機構部品に使用される部品である。特に複写機やプリンターなどのトナー定着機ローラー部は150℃以上にも到達し、さらには170℃以上、200℃程度に達する場合もあり、熱源部となる。該耐熱部品は、熱源部と該耐熱部品の間の最短距離が0.2mm以上50mm以下、好ましくは0.3mm以上30mm以下、さらに好ましくは0.5mm以上10mm以下の範囲にある部位に用いられるものである。例えば該耐熱部品は、この定着機ローラー部のカバーとして用いられる。
【0044】
また本発明の耐熱部品の比重は、1.30以下が好ましく、さらに1.26以下が好ましい。1.30より大きいと軽量化の観点から好ましくない。
さらに本発明の耐熱部品の形状は、目的にかなう形状であれば、特に制限はないが、例えば、円盤状、ドーナツ状、円錐状、リング状、箱状、またはそれらの複合された形状などが挙げられる。従って耐熱部品の形状は複雑であってもよいが、厚みが薄いことが好ましい。肉薄部の成形のほうが、本発明の樹脂組成物においては流動性効果がより発揮されるからである。具体的には、これら耐熱部品の厚みは、その厚みのうち最大厚みは、好ましくは0.5mm以上5mm以下であり、より好ましくは0.6mm以上4mm以下であり、さらにより好ましくは1mm以上3.5mm以下である。その最大厚みが0.5mmより小さいと機械強度上好ましくなく、5mmより大きいと本発明の樹脂組成物の流動性効果が低下する。
【0045】
本発明では、上記の成分の他に、本発明の特徴および効果を損なわない範囲で必要に応じて他の附加的成分、例えば、酸化防止剤、難燃剤(有機リン酸エステル系化合物、無機リン系化合物、シリコン系化合物、ホスファゼン系化合物など)、エラストマー(エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/ メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物)、可塑剤(オイル、低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類、等)、難燃助剤、耐候(光)性改良剤、ポリオレフィン用造核剤、スリップ剤、各種着色剤、離型剤等を添加してもかまわない。
【0046】
本発明の樹脂組成物は種々の方法で製造することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練方法が挙げられるが、中でも二軸押出機を用いた溶融混練方法が最も好ましい。この際の溶融混練温度は、特に限定されるものではないが、通常150〜350℃の中から任意に選ぶことができる。
このようにして得られる本発明の樹脂組成物は、従来より公知の種々の方法、例えば、射出成形、押出成形、中空成形により、本発明の耐熱部品として成形できる。
【0047】
前述したように、本発明において、特定量の(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂と特定量の(B)液晶ポリエステルを配合することにより、ハロゲン元素を含まず、環境上好ましく、リサイクル可能で、かつ軽量で、かつ耐熱性と難燃性と流動性に優れる樹脂組成物から得られる耐熱部品が提供されることを見いだした。さらに(A)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂が、式(1)または式(2)で表されるフェノール性水酸基をフェニレンエーテルユニットの100個に対して1.50個以下含有し、数平均分子量が1,000〜100,000、好ましくは10,000〜30,000の範囲にある場合に、特に流動性の効果が発現されることが判明した。
【0048】
【化14】
【0049】
【化15】
【0050】
その理由については必ずしも明らかではないが、以下のように考えることができる。(A)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂のフェノール性水酸基が多いと、特に式(2)の構造が多いと、ポリフェニレンエーテル分子鎖自身のリニア性が低下し、分岐成分、ゲル化成分の割合が増大し、ポリフェニレンエーテル系樹脂自身の流動性を低下させるものと思われる。また、(A)成分のフェノール性水酸基が多いと(B)成分の液晶ポリエステルの末端基であるカルボキシル基との相互作用が強められ、その結果、得られる成形体のモルフォロジーとして、ドメインの分散性が向上し、むしろ(B)成分のフィブリル化あるいは配向性による流動性付与効果が失われるものと考えられる。
本発明を以下、実施例に基づいて説明する。但し本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
【製造例1】
ポリフェニレンエーテル(PPE−1)の製造例
2,6−ジメチルフェノールを酸化重合して得た還元粘度0.42のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。数平均分子量は17,300、フェニレンエーテルユニットの100個に対してのフェノール性水酸基の個数は、0.58個であった。
【0052】
【製造例2】
非溶融状態下で官能化されたポリフェニレンエーテル(PPE−2)の製造例
2,6−ジメチルフェノールを酸化重合して得た還元粘度0.44のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(以下(a−1)と略す。)を原料として用いる。またこのパウダーは、走査型熱量計(DSC)の測定を行い、20℃/分で昇温するときに得られる温度−熱流量グラフのピークトップ温度を融点とした時に、単一のピークを示し、その融点は250℃であった。
【0053】
ポリフェニレンエーテル(a−1)10kgとジエノフィル化合物として無水マレイン酸(以下(b−1)と略す。)0.05kgとを内部の温度を測定する温度計、オイルジャケット、攪拌機付きのガス注入口がついたオートクレーブ中に入れた。室温にて、ガス注入口を通して、内部を10mmHgまで減圧にした後に、大気圧の窒素を導入し、内部を窒素置換した。
この操作を三回繰り返し、オートクレーブを密封した。減圧・窒素置換時に、系外に出る(a−1)、(b−1)を捕集したところ、系外に出た(a−1)、(b−1)は、それぞれ、0.1kg、及び、0.008kgであった。
【0054】
オイルジャケットに200℃に設定したオイルを循環し、攪拌機を作動し、1時間攪拌を継続した。オイル循環を止め、内温が室温になるまで放置した後、オートクレーブを開放し、パウダー状の内容物(c−1)を採取した。内容物(c−1)は溶融物を混入しておらず、内容物(c−1)の質量は、10.0kgであった。
【0055】
内容物(c−1)を50リットルのアセトンで洗浄しフィルターを用いて濾別した。この操作を5回繰り返し、洗浄された洗浄物1(d−1)及び、濾液1(e−1)を得た。ガスクロマトグラム分析した結果、濾液1(e−1)中に含まれる無水マレイン酸(b−1)は、0.005kgであった。洗浄物1(d−1)を乾燥した乾燥物1(f−1)から20g分取したものを、ソックスレー抽出器を用いて40mlのアセトンで環留抽出した。熱アセトンで洗浄された洗浄物2(g−1)及び、抽出液(h−1)を得た。ガスクロマトグラム分析した結果、抽出液(h−1)中に無水マレイン酸(b−1)は含まれなかった。
【0056】
乾燥物1(f−1)1gを内側からポリテトラフロロエチレンシート、アルミシート、鉄板の順に重ねたものの間にはさみ、280℃に温度設定したプレス成形機を用い、10MPaで圧縮成形しフィルム(i−1)を得た。同様の操作で、ポリフェニレンエーテル(a−1)から、フィルム(a−1)を得た。得られたフィルム(i−1)について、日本分光社製FT/IR−420型フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、赤外分光測定を行ったところ、(i−1)に対する測定では、1790cm-1に、ポリフェニレンエーテルに付加したマレイン酸由来のピークが観測され、無水マレイン酸(b−1)の付加量は0.3重量部であることが確認された。
この乾燥物1(f−1)を官能化されたポリフェニレンエーテル(PPE−2)として、実施例に供した。数平均分子量は18,000、フェニレンエーテルユニットの100個に対してのフェノール性水酸基の個数は、0.40個であった。
【0057】
【製造例3】
溶融状態下で官能化されたポリフェニレンエーテル(PPE−3)の製造例
2,6−ジメチルフェノールを酸化重合して得た還元粘度0.41のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(以下(a−2)と略す。)を原料として用いる。ポリフェニレンエーテル(a−2)100重量部に対して、1重量部のジエノフィル化合物として無水マレイン酸(b−1)と0.3重量部の2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパ−オキシ)ヘキサンを300℃に設定した2軸押出機で脱気を行いながら、溶融混練することによって反応を行い、得られたペレットを粉砕し、アセトンにて洗浄操作を実施することによって溶融状態下で官能化されたポリフェニレンエーテル(PPE−3)を得た。無水マレイン酸(b−1)の付加量は0.4重量部であることが確認された。数平均分子量は18,700、フェニレンエーテルユニットの100個に対してのフェノール性水酸基の個数は、0.31個であった。
【0058】
【製造例4】
液晶ポリエステル(LCP−1)の製造例
窒素雰囲気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、無水酢酸を仕込み、加熱溶融し、重縮合することにより、以下の理論構造式を有する液晶ポリエステル(LCP−1)を得た。なお、組成の成分比はモル比を表す。
【0059】
【化16】
【0060】
【製造例5】
液晶ポリエステル(LCP−2)の製造例
窒素雰囲気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、ポリエチレンテレフタレート、無水酢酸を仕込み、加熱溶融し、重縮合することにより、以下の理論構造式を有する液晶ポリエステル(LCP−2)を得た。なお組成の成分比はモル比を表す。
【0061】
【化17】
【0062】
各樹脂組成物の成形と物性評価を、以下の方法に従って実施した。
(1)成形
得られたペレットを、シリンダー温度330/330/320/310℃、射速85%、金型温度90℃に設定した射出成形機[IS−80EPN:東芝機械(株)社製]を用いて成形を行った。ただし、実施例6については、得られたペレットを、シリンダー温度275/275/265/255℃、射速60%、金型温度70℃に設定した射出成形機[TI50G2:東洋機械金属(株)社製]を用いて成形を行った。
(2)比重
厚み3.2mm×長さ127mm×幅12.7mmのASTMタンザク試験片に成形し、その一部を切り出し、電子比重計(ED−120T、ミラージュ貿易(株))を用いて、23℃における比重を測定した。
【0063】
(3)耐熱性
(3−1)HDT
厚み3.2mm×長さ127mm×幅12.7mmのASTMタンザク試験片に成形した。得られた成形片を用いて、1.82MPa荷重下での加熱変形温度を測定した。
(3−2)ヒートサグ1
上記(3−1)と同様の試験片を用い、長さ方向の片端から27mm部分を鋼板で上下方向から挟み込んで固定し、試験片の長さ方向100mm部分が水平につき出るようにした。これを150℃に設定したオーブン中に4時間設置した。その後固定板ごと取り出し、室温まで放冷した後、非固定側端部のたわみ量を測定した。
(3−3)ヒートサグ2
オーブンの設定温度を170℃としたこと以外は、上記(3−2)と同様に実施した。
【0064】
(4)難燃性
(4−1)燃焼時間
厚み1.6mm×長さ127mm×幅12.7mmのASTMタンザク試験片に成形し、UL−94に準拠し燃焼試験を実施した。10秒間の接炎後、炎を離してから炎が消えるまでの燃焼時間をt1(秒)とし、再び10秒間の接炎後、炎を離してから炎が消えるまでの燃焼時間をt2(秒)とし、t1とt2の平均燃焼時間をT(秒)とし、以下の判定基準で評価した。
○:平均燃焼時間(T)が10秒未満。
×:平均燃焼時間(T)が10秒以上。
××:燃焼中、滴下があるもの。
【0065】
(4−2)ハロゲンガス
燃焼時のハロゲンガス発生の有無を以下の方法にて評価した。上記(4−1)と同様の試験片の一部を用い、燃焼法による元素分析を実施し、以下の判断基準で評価した。
○:ハロゲン元素の検出値が1%未満。
×:ハロゲン元素の検出値が1%以上。
【0066】
(5)流動性
得られたペレットを、上記(1)の成形条件にて、厚さ1.6mmのASTMタンザク試験片を成形するに際し、1mmショートするときのゲージ圧力を測定した。この圧力をSSP(kg/cm2)(「Short Shot Pressure」を略した。)とし、この値が小さいほど流動性に優れる。
【0067】
【実施例1〜5】
ポリフェニレンエーテル(PPE−1、PPE−2、またはPPE−3)と液晶ポリエステル(LCP−1、またはLCP−2)を表1に示す割合で、250〜310℃に設定したベントポート付き二軸押出機(ZSK−25;WERNER&PFLEIDERER社製)を用いて溶融混練し、ペレットとして得た。このペレットを用い、上に示した方法により成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0068】
【比較例1】
LCP―1、5重量部を使用しないこと以外は、実施例1と同様に実施し、ペレットを得た。
上記(1)の成形条件では、成形機の限界ゲージ圧131(kg/cm2)にしてもショートし、成形できなかったので、金型温度を140℃に設定して、成形加工し、物性評価を実施し、その結果を表1に示した。
【0069】
【比較例6】
ベントポート付き二軸押出機(ZSK−25;WERNER&PFLEIDERER社製)の設定温度を250〜275℃にしたこと以外は実施例1〜5と同様に実施し、ペレットを得た。このペレットを用い、上に示した方法により成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0070】
【比較例2〜4】
非強化高耐熱変性PPE(ザイロンX9102、旭化成工業(株)社製)または強化高耐熱変性PPE(ザイロンX2231、旭化成工業(株)社製)または強化難燃PET(ライナイトFR543、デュポン社製)をペレットとして用い、上に示した方法により成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0071】
【比較例5】
ポリフェニレンエーテル(PPE−1)とポリスチレン(A&M社製、ポリスチレン685、表中「GPS」と略す。)を表1に示す割合にしたこと以外は実施例1〜5と同様に実施し、ペレットを得た。このペレットを用い、上に示した方法により成形加工し物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0072】
【表1】
【0073】
【比較例7】
ポリフェニレンエーテル(2,6−ジメチルフェノールを酸化重合して得た還元粘度0.42のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)で、数平均分子量は17,800、フェニレンエーテルユニットの100個に対してのフェノール性水酸基の個数は、1.56個であった。)を95重量部、LCP−1を5重量部配合し、実施例1と同様にペレットを得た。
このペレットを用い、実施例1と同様の成形条件にて流動性を評価したところ、SSPは、101(kg/cm2)となった。このことから、ポリフェニレンエーテルの分子量は同程度であっても、ポリフェニレンエーテル中のフェノール性水酸基の数が多いと、流動性が大きく低下することがわかる。
【0074】
比較例の中で無機充填剤が添加されているもの(強化品)においては、前述したように、リサイクルするために部品を粉砕後、押し出し機などを用い樹脂を再溶融化すると、無機充填材の形状やサイズが変化してしまい、リサイクル前並みの物性が発現できないという問題がある。それに対し、本発明では、液晶ポリエステルが有機充填剤的役割をはたすので、リサイクルが可能である。
表1からわかるように、特定量のポリフェニレンエーテル系樹脂と特定量の液晶ポリエステルを配合することにより、ハロゲン元素を含まず、環境上好ましく、リサイクル可能で、かつ軽量で、かつ耐熱性と難燃性と流動性に優れる樹脂組成物から得られる耐熱部品が提供されることが判明した。さらにポリフェニレンエーテル系樹脂のフェノール性水酸基の数及び分子量を特定範囲内に選択することにより、特に流動性が改良されることがわかる。
【0075】
【発明の効果】
本発明により、ハロゲン元素を含まず、環境上好ましく、リサイクル可能で、かつ軽量で、かつ耐熱性と難燃性と流動性に優れる樹脂組成物から得られ、150℃以上に達する熱源部に近接した部位に使用可能な耐熱部品を提供することが可能となった。
Claims (3)
- (A)ポリフェニレンエーテル系樹脂90〜99重量部と、
(B)液晶ポリエステル10〜1重量部とからなる樹脂組成物から成形することにより得られ、
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が、式(1)または式(2)で表されるフェノール性水酸基をフェニレンエーテルユニットの100個に対して1.50個以下含有する耐熱部品であって、比重が1.30以下、かつ該部品の最大厚みが0.5mm以上5mm以下であることを特徴とする耐熱部品。
(R1、R4は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、アミノアルキル、炭化水素オキシを表わす。R2、R3は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニルを表わす。) - 耐熱部品が自動車用耐熱部品であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱部品。
- 耐熱部品が事務機器用耐熱部品であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱部品。
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