本発明は、帯電防止性ポリオレフィンフィルムに関し、特に安定した帯電防止性能を有する帯電防止性ポリオレフィンフィルムに関する。
ポリオレフィンフィルムは、その良好な加工適性や優れた機械強度、透明性、製袋性等の二次加工適性、防湿性等をはじめ安価なため、包装材料として広く使用されている。しかし、非常に静電気を帯びやすい特性も持ち合わせているため、埃等の付着、作業者への電撃、印刷時のインキの飛散等が問題となっている。
これらの問題を解決するための方法の一つとして、ポリオレフィンフィルムに適宜の低分子量界面活性剤を添加し、これらの界面活性剤をポリオレフィンフィルム表面にブリードさせることにより、当該フィルム表面に帯電防止性を付与する方法が用いられてきた。
しかしながら、このような移行型帯電防止剤は、主に次の(1)ないし(5)に示す問題点を有する。(1)フィルム表面へのブリード過多により外観不良(白化現象)が生じる。(2)低湿度下では帯電防止性不良となりやすい(湿度によって左右されやすい)。(3)製膜状態(条件)によってフィルム表面へのブリード量が変動しやすい(帯電防止性能が安定し難い)。(4)水・有機溶剤での払拭により帯電防止性の効果が減退する。(5)フィルム表面に存在する低分子量物により、インキ・コート等の転移性・接着性が阻害される。
上記の問題点を解決する手段として、前記低分子量界面活性剤に代えて高分子型帯電防止剤の検討が進められている。例えば、ポリプロピレン系樹脂と特定の芳香環含有ポリエーテルエステルアミドとポリアミド樹脂、さらに特定の変性低分子量ポリプロピレンの混合物からなる帯電防止性樹脂層をポリオレフィン系フィルムの表面に積層したポリオレフィンフィルムが提案されている(特許文献1参照)。
また、ポリオレフィン(a)のブロックと、体積固有抵抗率が1×105〜1×1011Ω・cmの親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(A)およびポリオレフィン樹脂(B)を必須成分とする帯電防止性樹脂組成物からなる厚みが0.1〜50μmの層(X)と、熱可塑性樹脂からなる基層(Y)とからなることを特徴とする多層フィルムも提案されている(特許文献2参照)。
さらに、ポリオレフィン(a)のブロックと、体積固有抵抗率が1×105〜1×1011Ω・cmのポリオキシエチレン鎖を有するポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマーからなる帯電防止剤(A)を形成し、当該帯電防止剤(A)よりなる分散相と熱可塑性樹脂からなる連続相とから構成され、前記分散相の数平均粒子径、数平均短径もしくは数平均厚みが0.01〜1μmである帯電防止剤樹脂組成物も提案されている(特許文献3参照)。
ところが、前記の特許文献1の帯電防止性樹脂層を用いたポリオレフィンフィルムにあっては、ポリオレフィン樹脂と帯電防止剤樹脂組成物との相溶性が不十分である。この結果、ポリオレフィン樹脂と溶融混練した帯電防止剤樹脂組成物とを積層したフィルムは、その加工時にロールの汚れ、外観不良、また成形条件による帯電防止性能の不安定化という本来の目的に相反する欠陥を内包していた。
同様に、前記特許文献2の帯電防止性樹脂層を用いたポリオレフィンフィルムにあっても、帯電防止剤とポリオレフィンとの相溶性と当該樹脂からなる帯電防止性樹脂組成物と製造条件の不一致により、外観不良、帯電防止性不良等が指摘される。
また、前記の特許文献3の帯電防止性樹脂組成物を用い、これをポリオレフィンフィルムに適用した場合、同一の原料構成とし、分散相の数平均粒子径、数平均短径もしくは数平均厚みを0.01〜1μmの範囲内に規定しても帯電防止性能のばらつきや外観不良を確認した。
そこで、発明者らは、特許文献3の帯電防止性樹脂組成物を利用したポリオレフィンフィルムの試作品について、帯電防止性能のばらつきを解明すべく透過型電子顕微鏡により縦断面を鋭意観察した。当該観察において、試作品毎の断面形状の相違が帯電防止性能に影響を与えていることを発明者らは見出した。すなわち、帯電防止性能の発現が思わしくない(表面固有抵抗率が高い)試作品ポリオレフィンフィルム90にあっては、図5の縦断面模式図に示すように、帯電防止層92内に不鮮明な縞模様が見られることを明らかにした。図5中、符号91は同ポリオレフィンフィルムの基材層である。
特開平11−170456号公報
特開2002−321314号公報
特開2004−217929号公報
前述のとおり、ポリオレフィンフィルムにおいて帯電防止性能の良好な発現と断面形状との間に密接な関連性が示唆される。その後、発明者らはさらに鋭意研究を重ねた結果、良好な帯電防止性能を有するポリオレフィンフィルムに共通する特性を見出すに至った。
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、特に低湿度下においても安定した帯電防止性を発揮し、かつ、水、有機溶剤による払拭後も帯電防止性の劣化も見られず、また加工時の発煙やロール汚れ等の加工上の問題を解消すると共に、使用する同一樹脂間および生産毎による帯電防止性能の発現にばらつきが無く、透明性に優れ、外観上の欠陥のない帯電防止性を有するポリオレフィンフィルムを提供するものである。
すなわち、本発明は、基層用ポリオレフィン樹脂(D)からなる基材層(11)に帯電防止樹脂組成物(C)からなる帯電防止層(20)を積層した帯電防止性ポリオレフィンフィルム(10)であって、前記帯電防止樹脂組成物(C)は、親水性ポリマー(a)と変性ポリオレフィン(b)との共重合体からなる体積固有抵抗率が1×105〜1×1011Ω・cmである永久帯電防止剤(A)と、表層用ポリオレフィン樹脂(B)とを含み、前記基層用ポリオレフィン樹脂(D)の融点は、前記表層用ポリオレフィン樹脂(B)の融点よりも2℃以上高い融点であり、前記基層用ポリオレフィン樹脂(D)の融点±3℃以内であり、かつ、前記表層用ポリオレフィン樹脂(B)の融点よりも高い温度とする延伸温度において、前記基層用ポリオレフィン樹脂(D)からなる基材層(11)の最外層に、前記帯電防止樹脂組成物(C)に含有される前記永久帯電防止剤(A)及び前記表層用ポリオレフィン樹脂(B)が共に半溶融状態もしくは溶融状態で延伸することによって、前記帯電防止樹脂組成物(C)からなる帯電防止層(20)の前記永久帯電防止剤(A)と前記表層用ポリオレフィン樹脂(B)との存在状態が、前記表層用ポリオレフィン樹脂(B)を海部分(21)とし、前記永久帯電防止剤(A)を粒形状の島部分(22)とする海島状の相分離構造を成し、前記永久帯電防止剤(A)からなる粒形状の島部分の垂直方向における平均粒径が0.01〜0.5μmであり、かつ、前記島部分の垂直方向における最大粒径が1μm以下であり、前記永久帯電防止剤(A)からなる粒形状の島部分同士の最短隣接距離の平均値が0.2μm以下であり、かつ、前記島部分同士の最短隣接距離の最大値が0.5μm以下であり、前記帯電防止層(20)の面方向に対する垂直断面の単位面積(Su)における前記永久帯電防止剤(A)からなる粒形状の島部分の総和の面積(S n )の面積分率(SR)が0.1以上であることを特徴とする帯電防止性ポリオレフィンフィルムに係る。
請求項1の発明に係る帯電防止性ポリオレフィンフィルムによると、帯電防止樹脂組成物(C)は、親水性ポリマー(a)と変性ポリオレフィン(b)との共重合体からなる体積固有抵抗率が1×105〜1×1011Ω・cmである永久帯電防止剤(A)と、表層用ポリオレフィン樹脂(B)とを含み、基層用ポリオレフィン樹脂(D)の融点は、表層用ポリオレフィン樹脂(B)の融点よりも2℃以上高い融点であり、前記基層用ポリオレフィン樹脂(D)の融点±3℃以内であり、かつ、前記表層用ポリオレフィン樹脂(B)の融点よりも高い温度とする延伸温度において、前記基層用ポリオレフィン樹脂(D)からなる基材層(11)の最外層に、前記帯電防止樹脂組成物(C)に含有される前記永久帯電防止剤(A)及び前記表層用ポリオレフィン樹脂(B)が共に半溶融状態もしくは溶融状態で延伸することによって、前記帯電防止樹脂組成物(C)からなる帯電防止層(20)の前記永久帯電防止剤(A)と前記表層用ポリオレフィン樹脂(B)との存在状態が、前記表層用ポリオレフィン樹脂(B)を海部分(21)とし、前記永久帯電防止剤(A)を粒形状の島部分(22)とする海島状の相分離構造を成し、前記永久帯電防止剤(A)からなる粒形状の島部分の垂直方向における平均粒径が0.01〜0.5μmであり、かつ、前記島部分の垂直方向における最大粒径が1μm以下であり、前記永久帯電防止剤(A)からなる粒形状の島部分同士の最短隣接距離の平均値が0.2μm以下であり、かつ、前記島部分同士の最短隣接距離の最大値が0.5μm以下であり、前記帯電防止層(20)の面方向に対する垂直断面の単位面積(Su)における前記永久帯電防止剤(A)からなる粒形状の島部分の総和の面積(S n )の面積分率(SR)が0.1以上であるため、各フィルム間の帯電防止性能のばらつきが解消される。さらに、透明性に優れ、従前のフィルムにみられる外観上の欠陥が改善される。加えて、水性インキによる印刷に関しても好適な性状が示される。
併せて、低湿度下においても安定した帯電防止性を発揮し、かつ、水、有機溶剤による払拭後も帯電防止性の劣化も見られない等の各フィルム間におけるさらなる安定した帯電防止性を発揮することができる。
以下添付の図面に従って本発明を説明する。図1は本発明の帯電防止性ポリオレフィンフィルムの縦断面模式図、図2は図1の島部分毎の粒径に着目した縦断面模式図、図3は図1の島部分毎の距離に着目した縦断面模式図、図4は図1の島部分毎の面積に着目した縦断面模式図である。いずれの図においても、縦断面とは、帯電防止性ポリオレフィンフィルムの面方向に対して垂直に切断した切断面である。
図1に示し、請求項1の発明に規定するとおり、帯電防止性ポリオレフィンフィルム10の基本構造は、基材層11の表面(基材層の最外層)に帯電防止層20が積層され、少なくとも一方向に延伸(一軸延伸)、あるいは二軸延伸されることにより得られたフィルムである。後述するが、図中の符号21は海部分、22は島部分である。
帯電防止性ポリオレフィンフィルム10において、好適な帯電防止性能を発揮する帯電防止層20は、帯電防止樹脂組成物(C)より形成される。この帯電防止樹脂組成物(C)は、親水性ポリマー(a)と変性ポリオレフィン(b)との共重合体からなる永久帯電防止剤(A)と、表層用ポリオレフィン樹脂(B)との溶融混練等によって得られる。一方、基材層11は基層用ポリオレフィン樹脂(D)より得られる。
帯電防止性ポリオレフィンフィルム10の主要な構成は、以下の概要として示すことができる。{本発明の帯電防止性ポリオレフィンフィルム10=帯電防止層20(帯電防止樹脂組成物(C))+基材層11(基層用ポリオレフィン樹脂(D))}、{帯電防止樹脂組成物(C)=永久帯電防止剤(A)+表層用ポリオレフィン樹脂(B)}、{永久帯電防止剤(A)=親水性ポリマー(a)+変性ポリオレフィン(b)}とする関係である。
これより、帯電防止性ポリオレフィンフィルムの各組成成分について述べる。永久帯電防止剤(A)を組成する親水性ポリマー(a)は、一般にポリエーテルと称されるものが好ましく、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルウレタン、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド及びこれらの変性物等が挙げられる。
同永久帯電防止剤(A)を組成する変性ポリオレフィン(b)は、適宜のポリオレフィンにおいて、その変性基としてカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基等が導入され、これらを少なくとも片末端に含有したポリオレフィンである。好ましくは、カルボキシル基変性ポリオレフィンが挙げられる。
前出の親水性ポリマー(a)と変性ポリオレフィン(b)は、好適に共重合されることにより永久帯電防止剤(A)が組成される。この永久帯電防止剤(A)は、1×105〜1×1011Ω・cmの体積固有抵抗率とすることにより、好適な表面固有抵抗率を有する帯電防止樹脂組成物(C)が得られる。
そこで、永久帯電防止剤(A)においては相溶性、延転性、帯電防止性能等から酸変性ポリオレフィンポリエーテルブロックポリマーが好適である。この酸変性ポリオレフィンポリエーテルブロックポリマーとしては、例えば、三洋化成工業株式会社製:ペレスタットOP300(体積固有抵抗率:2×107Ω・cm)や東邦化学工業株式会社製:アンステックスFT−P348(体積固有抵抗率:8×108Ω・cm)等が選択される。また、前記酸変性ポリオレフィンポリエーテルブロックポリマーにあっては、酸変性ポリエチレンポリエーテルブロックポリマーも挙げられる。
前記の永久帯電防止剤(A)の190℃、21.18NにおけるMFR(JIS−K6922−1に準拠)は、樹脂物性、加工適性等の観点より1〜50g/10分、さらには2〜20g/10分であることが好ましく、同MFRを満たす樹脂が選択される。併せて、前記の永久帯電防止剤(A)の融点は、樹脂物性、加工適性等の観点より、100〜170℃であることが好ましく、同融点を満たす樹脂が選択される。
表層用ポリオレフィン樹脂(B)としては、エチレン、ポリプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンの単独重合体、上記α−オレフィン同士の共重合体、及びこれらの混合物等が挙げられる。上記α−オレフィンと共重合可能なα−オレフィン以外の単量体としては、酢酸ビニル、マレイン酸、ビニルアルコール、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。この表層用ポリオレフィン樹脂(B)は、異なる樹脂同士を組み合わせもしくは混合したものでも良い。
前記の表層用ポリオレフィン樹脂(B)の230℃、21.18NにおけるMFR(JIS−K−7210に準拠)は、樹脂物性、加工適性等が考慮され、好ましくは1〜50g/10分、さらに好ましくは2〜20g/10分である樹脂より選択される。
また、本発明のポリオレフィンフィルム10の基材層11となる基層用ポリオレフィン樹脂(D)は、前記の表層用ポリオレフィン樹脂(B)と同様の樹脂組成物から選択される。この基層用ポリオレフィン樹脂(D)は、単一系樹脂または異なる樹脂同士を混合した混合系樹脂による単層体としても、同一もしくは異なる樹脂同士を組み合わせもしくは混合して積層した積層体とすることもできる。なお、基層用ポリオレフィン樹脂(D)として使用される樹脂の融点は、概ね150℃以上であることが望ましい。延伸時を含め、以降の処理の加工性が勘案されるためである。
帯電防止樹脂組成物(C)を構成する永久帯電防止剤(A)と表層用ポリオレフィン樹脂(B)との組成上の重量比は、後述する実施例から明らかなように、(A):(B)=5:95〜50:50の範囲内であることが好ましい。永久帯電防止剤(A)が5重量部以下の場合、十分な帯電防止性能が発揮されない。また、永久帯電防止剤(A)が50重量部以上の場合、表層用ポリオレフィン樹脂(B)との相溶性低下による外観不良、もしくは諸物性に支障を来すおそれがある。
帯電防止樹脂組成物(C)を調製するにあたり、含有される永久帯電防止剤(A)と表層用ポリオレフィン樹脂(B)との混練について説明する。永久帯電防止剤(A)と表層用ポリオレフィン樹脂(B)は、上記所定の配合比率の重量部ずつ、公知の混合機(タンブラー,ヘンシェルミキサー等)にてドライブレンドされ、一軸押出機、二軸押出機、加圧ニーダー等の混練機により溶融混練される。この混練機において、永久帯電防止剤(A)をより微分散可能とするため、二軸押出機が好ましく利用される。
帯電防止性ポリオレフィンフィルム10の製造にあたり、フィルムの延伸にはテンター法、チューブラー法、ロール延伸法等が用いられる。二軸延伸方法として、例えば、Tダイより帯電防止樹脂組成物(C)からなる帯電防止層20と、基層用ポリオレフィン樹脂(D)からなる基材層11は、共押出しによりシート状物に作製される。このシート状物をロールの周速差により縦方向に延伸し、続いてテンターにより横方向に延伸(逐時延伸)される。またはテンターにより縦横を同時に延伸(同時延伸)される。むろん、これらの延伸方法に限られるものではなく、作業性、樹脂特性に応じて好適に延伸方法、延伸装置は選択される。
帯電防止性ポリオレフィンフィルムの製造条件については、前記の製造手法に依存するものではある。ただし、請求項1の発明に規定するとおり、基層用ポリオレフィン樹脂(D)にあっては、表層用ポリオレフィン樹脂(B)よりも高融点の樹脂種が選択される。基層用ポリオレフィン樹脂(D)および表層用ポリオレフィン樹脂(B)の融点は主に示差走査熱量計により計測される。表層用または基層用として複数種の樹脂を混合して用いる場合、混合後の樹脂の融点を当該混合樹脂の融点とする。特に融点が2点以上存在する場合、これらの中で最も高い融点を当該混合樹脂の融点とする。また、複数の樹脂を積層した場合、最も高融点の樹脂の融点とする。なお、樹脂の融点は、前記とおり示差走査熱量計による実測の他、計算により求められることもある。
基層用ポリオレフィン樹脂(D)と表層用ポリオレフィン樹脂(B)との互いの融点の差を利用することにより、延伸時に延伸装置から加えられる熱量が均一であったとしても、基材層11の樹脂と帯電防止層20の樹脂の溶融状態は異なる。とりわけ、基層用ポリオレフィン樹脂(D)側が高融点であるため、表層用ポリオレフィン樹脂(B)は基層側よりも素早く溶融化する。従って、基層用ポリオレフィン樹脂(D)からなる基材層11の最外層に、帯電防止樹脂組成物(C)に含有される永久帯電防止剤(A)及び表層用ポリオレフィン樹脂(B)は、共に半溶融状態もしくは溶融状態となって延伸可能となる。
つまり、完全に混ざり合わない帯電防止樹脂組成物(C)(帯電防止層20)に含まれる永久帯電防止剤(A)と表層用ポリオレフィン樹脂(B)が共に半溶融状態もしくは溶融状態になることによって、あたかも水と油の混合液を攪拌した時のように、添加量の少ない方(この場合は永久帯電防止剤(A))が表面張力的に最も安定した状態、すなわち粒形状を成して帯電防止層20内に存在し、そのまま製膜成形後、冷却固化するものと考えられる。
後述する実施例からも明らかなように、好適な帯電防止性能を発現するフィルムにおいて、帯電防止層20内における永久帯電防止剤(A)と表層用ポリオレフィン樹脂(B)との不均質な存在状態は、特に図1の縦断面図に示すように、表層用ポリオレフィン樹脂(B)を海部分21とし、永久帯電防止剤(A)を粒形状の島部分22とする各組成の区別がほぼ可能な海島状の相分離構造である。この海島状の相分離構造とは、図示のとおり、永久帯電防止剤(A)の粒形状が、‘海’に浮かぶ‘島々’のように表層用ポリオレフィン樹脂(B)の背景中に散在している様子である。
既に述べたとおり、基層用ポリオレフィン樹脂(D)と表層用ポリオレフィン樹脂(B)との互いの融点の差を利用することにより、ポリオレフィンフィルムとして良好な延転性が確保される。併せて、永久帯電防止剤(A)は、帯電防止層内に海島状として良好に分散される。ここで表層用ポリオレフィン樹脂(B)並びに基層用ポリオレフィン樹脂(D)を例示すると、住友化学株式会社製エクセレン SP89E3、日本ポリプロ株式会社製ノバテックPP FX4E、同社製ノバテックPP FG3DE、同社製ノバテックPP CF1199、同社製ノバテックPP FL1105C、三井化学株式会社製三井ポリプロ F103等が挙げられる。
帯電防止性フィルムの帯電防止層20における海島状の相分離構造について、発明者らは、永久帯電防止剤(A)からなる粒形状の島部分22に着目してさらに解析を続けた。その結果、図2に示すように、帯電防止層20における永久帯電防止剤(A)からなる粒形状の島部分22の垂直方向における平均粒径DVは、0.01〜0.5μmが好ましく、さらには0.05〜0.15μmの範囲であることが好適と考えられる。
島部分の垂直方向の平均粒径DVが0.01μm未満の場合、当該島部分が微分散して表層用ポリオレフィン樹脂(B)と相溶性が増すことにより、帯電防止性不良が発生しやすくなる。一方、当該島部分の垂直方向の平均粒径DVが0.5μmを超える場合、その平均粒径の大きさにより、帯電防止性及び外観不良が発生しやすくなる。併せて、永久帯電防止剤(A)からなる粒形状の島部分22の最大粒径DMは、1μm以下が好ましく、さらには0.5μm以下が好適とされる。島部分の最大粒径が1μmを超える場合、外観不良(いわゆる、フィッシュアイ・ボイド等)が発生しやすくなるためである。
粒形状の島部分の垂直方向における平均粒径DVとは、各島部分の垂直方向における粒径Dv1,Dv2,..,Dvnの平均値、つまり、DV=(Dv1+Dv2+..+Dvn)/nとして示さる。島部分の最大粒径DMとは、各島部分の垂直方向における粒径Dv1,Dv2,..,Dvnのうち、最も大きい値が該当する。
続いて、図3に示すとおり、帯電防止層20における永久帯電防止剤(A)からなる粒形状の島部分22同士の最短隣接距離の平均値LSは、0.2μm以下であり、より好ましくは0.1μm以下とされる。島部分同士の最短隣接距離の平均値が0.2μmを超える場合、帯電防止性不良が顕著となりやすい。併せて、粒形状の島部分22同士の最短隣接距離の最大値LMは、0.5μm以下であり、より好ましくは0.3μm以下とされる。島部分同士の最短隣接距離の最大値が0.5μmを超える場合、帯電防止性不良が顕著となりやすいためである。
島部分同士の最短隣接距離の平均値LSとは、ある帯電防止層内に複数個(n個)の島部分が存在すると仮定した場合、そのうちの1個の島部分を基準となる島部分1とし、当該島部分1と最も隣接する島部分との隣接距離(最短隣接距離)をLs1とし、基準となる島部分を順に島部分2、島部分3,...島部分nと変えながら同様の作業を繰り返す。各最短隣接距離をLs2、Ls3...Lsnとした際のこれらの平均値を指す。すなわち、LS=(Ls1+Ls2+Ls3+..+Lsn)/nとして求められる。また、島部分同士の最短隣接距離の最大値LMとは、前記の各島部分の最短隣接距離Ls1,Ls2,Ls3,..,Lsnにおける最大値が該当する。
また、図4に示すとおり、帯電防止層20の面方向に対して垂直断面において、永久帯電防止剤(A)からなる粒形状の島部分22の垂直断面での面積分率SRは、0.1以上とされ、特に0.2以上が好ましいとされる。この面積分率SRが0.1未満の場合、帯電防止性不良となりがちである。
前記の面積分率SRとは、帯電防止層の垂直断面における単位面積に存在する島部分の面積の割合である。つまり、ある帯電防止層の単位面積Su内に複数個(n個)の島部分が存在すると仮定した場合、その島部分1の面積はS1、島部分2の面積はS2、島部分3の面積はS3、...島部分nの面積はSnとして示される。これらの島部分の総和を単位面積で徐した値が面積分率SRとなる。すなわち、SR=(S1+S2+S3+..+Sn)/Suとして求められる。
図2ないし図4を用いて詳述した永久帯電防止剤(A)からなる粒径状の島部分の垂直方向における平均粒径、最大粒径、島部分同士の最短隣接距離の平均値及び最大値、島部分の面積は、透過電子顕微鏡(TEM)により形態観察される。そして、撮影した電子顕微鏡写真は適宜の画像解析装置に取り込まれ、公知の画像解析手法に基づき、任意個数の島部分の粒径が測定され、垂直方向の平均粒径が算出される。同様に最短隣接距離の平均値及び最大値が算出される。また、帯電防止層20の単位面積、並びに各々の島部分の面積が計測され、面積分率も算出される。
詳述の帯電防止樹脂組成物(C)からなる帯電防止層20は、基層用ポリオレフィン樹脂(D)からなる基材層11の最外層の両面に積層されていても良く、あるいは基材層11の最外層の一面側のみへの積層としても良い。このように、帯電防止層20の積層面を制御することにより、製造上の効率、使用目的に応じた帯電防止性能を具備する帯電防止性ポリオレフィンフィルムの提供が可能となる。なお、基材層11の両面に帯電防止層20を積層させる場合、それぞれの面の帯電防止層20を同一とすることも、互いに異ならせることも可能である。
基材層11の層厚は用途等により種々選択されるものの、10〜100μmとされ、これに積層されている帯電防止層20の層厚は、0.5μm以上が好ましく、特に1μm以上が好ましい。十分な帯電防止性の発現を勘案すると前記の層厚が好適である。
本発明の帯電防止性ポリオレフィンフィルムには、発明の目的を損なわない範囲において、酸化防止剤、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤をはじめ、通常のポリオレフィンフィルムに用いられる各種添加剤、充填剤を付加成分として適宜添加することができる。また、さらなる帯電防止性能の向上を目的として、アルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物からなる金属塩が添加されることもある。
さらに、本発明の帯電防止性ポリオレフィンフィルムによると、特に表面処理の有無による帯電防止性能の変動は見られない。従って、この帯電防止性ポリオレフィンフィルムに印刷を行う場合、印刷に先立ち、当該フィルム表面に対しコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理等を用いてフィルム表面の活性化処理を行うことにより、インキのなじみや接着性を向上させることができる。このため、上記のいずれかの方法でフィルム表面の活性化処理を行うことが望ましい。
帯電防止層20を積層した表面に対し活性化処理が行われた帯電防止性ポリオレフィンフィルムは、帯電防止層20の最外面に水性インキで印刷される。水性インキ印刷であればインキの種類や印刷方法は特に限定されない。水性インキの溶剤として水が用いられる他、アルコール類、好ましくはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等の低級アルコールを併用しても良く、これらに特に制限はない。
また着色剤として一般的な無機及び有機顔料が使用でき、例えば溶解性及び不溶解性アゾ系、フタロシアニン系、ナフトール系等の有機顔料や酸化チタン、炭酸カルシウム、弁柄、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。また水性インキの樹脂バインダーとしては、水溶性または水分散性の樹脂であるスチレン−アクリル酸系、スチレン−マレイン酸系などのアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン変性樹脂などで安定な水性インキを製造できるものであれば良く、単独または併用して用いることができる。その他の添加剤としてワックス類、消泡剤、分散剤等を使用しても良い。また印刷時のインキの粘度調整として水/アルコール類を併用した希釈剤を使用しても良い。印刷方法としては主に、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
このようにして得られた本発明の帯電防止性ポリオレフィンフィルムは、単独では包装用資材、マスキング用資材、電子部品用の包装材料、テープ用材料、さらに、紙、不織布、セロハン等と張り合わせて使用することも可能である。加えて、他の可塑性樹脂成形品にラベルとして張り合わせて用いることもできる。
[帯電防止剤樹脂組成物の調製]
帯電防止剤樹脂組成物の調製にあたり、以下に示す永久帯電防止剤(表1)及びポリオレフィン樹脂(表2)を用いた。表中、A−1,A−2は酸変性ポリプロピレンポリエーテル共重合体系永久帯電防止剤、A−3はポリエーテルエステルアミド系永久帯電防止剤、A−4は低分子量型帯電防止剤、B−1〜B−6はポリオレフィン樹脂である。表中のポリオレフィン樹脂は、基材層あるいは帯電防止層の双方に用いられることがある。そのため、帯電防止層に用いられ場合には(B)を付し、基材層に用いられ場合には(D)を付し、便宜上、互いを区別する。なお、前記のA−1,A−2は、親水性ポリマー(a)と変性ポリオレフィン(b)との共重合体からなり体積固有抵抗率が1×105〜1×1011Ω・cmであることを満たす永久帯電防止剤(A)に相当する。また、表中の特注品とは、委託製造品である。
実施例1では、永久帯電防止剤(A−1)とポリオレフィン樹脂(B−1)とを重量比で(A−1):(B−1)=10:90の配合比率を満たすようにタンブラー(タンブルミキサー)によりドライブレンドした。続いて、二軸押出機で溶融混練後、ストランド状に押し出し、冷却後、任意の大きさにカットしてペレタイズ化し、実施例1の帯電防止樹脂組成物とした。
[帯電防止性ポリオレフィンフィルムの試作]
上記の帯電防止樹脂組成物を帯電防止層とし、ポリオレフィン樹脂(D−5)を基材層としてTダイより共押出しして、シート化した。これをテンター法二軸延伸機(三菱重工業株式会社製)により、延伸温度158℃条件のもとで延伸し、基材層と、その一面側に帯電防止層を形成する帯電防止性ポリオレフィンフィルムを得た(実施例1)。この帯電防止性ポリオレフィンフィルムの基材層の厚さは20μm、帯電防止層の厚さは1μmとして成形した。さらに、当該帯電防止性ポリオレフィンフィルムの帯電防止層の表面に、ぬれ試験(JIS−K−6768に準拠)の指数が40mN/mとなるようにコロナ放電処理(8.0W・min/m2)を行った。
実施例2ないし10、併せて比較例1ないし4の帯電防止性ポリオレフィンフィルムは、実施例1と同様の手法、装置に基づく。以下の表3(実施例)及び表4(比較例)に示す樹脂の種類及び配合比率に準じ、永久帯電防止剤(A−1〜A−3)と、表層用ポリオレフィン樹脂(B−2〜B−6)とを組み合わせ、実施例2ないし10及び比較例1ないし4の帯電防止樹脂組成物を調製した。続いて各々の帯電防止樹脂組成物と表記の基層用ポリオレフィン樹脂(D)より、帯電防止性ポリオレフィンフィルムを得た(実施例2ないし10及び比較例1ないし4)。これら実施例及び比較例の帯電防止性ポリオレフィンフィルムにおいても基材層の厚さは20μm、帯電防止層の厚さは1μmとして成形した(ただし、実施例9を参考例とする。)。
比較例5はポリオレフィン樹脂(B−5)に低分子量型帯電防止剤(A−4)を1.0重量%ドライブレンドして実施例1と同様にペレタイズ化し、帯電防止剤樹脂組成物を得た。次いでこの帯電防止剤樹脂組成物をTダイにより押し出し、厚さ20μmのポリオレフィンフィルムとした。なお、いずれの実施例、比較例とも前出の実施例1と同様の条件のコロナ放電処理を行った。
下記の表3及び表4において、各樹脂の融点は、示差走査熱量計(セイコーインスツルメント株式会社製「DSC6200」)を用い測定した。ここで、実施例6の表層用ポリオレフィン樹脂(B)の融点は、樹脂B−3及びB−6をいったん溶融混練した後に前記の示差走査熱量計により計測して得た値(156℃)である。得られた各樹脂の融点より、基層用ポリオレフィン樹脂(D)と表層用ポリオレフィン樹脂(B)との融点差((D)−(B)融点差(℃))を求めた。
各試料の帯電防止性ポリオレフィンフィルム(実施例1ないし10及び比較例1ないし5)について、その製膜状況を明示すると共に、透過電子顕微鏡(TEM)を用いた画像解析による帯電防止層内の永久帯電防止剤(島部分)の分散状態、垂直方向の平均粒径、最短隣接距離の平均値及び最大値、面積分率に加え、当該フィルムの外観、表面固有抵抗率、水性インキ印刷特性を評価した。併せて各試料についての全体的な総合評価を行った。以下に評価、測定方法の詳細を示す。
[製膜状況]
発煙については、製膜機の押出機部分、テンター出口部分、排気口からの発煙状態を目視により観察した。評価にあたり、発煙無しを“○”、多少発煙ありを“△”、製膜機周辺まで煙で白く曇るものを“×”とした。
ロール汚れについては、帯電防止樹脂組成物が接するロール(特に延伸ロール)を目視により確認し、ロールへの付着物の有無を評価した。評価にあたり、汚れ無しを“○”、製膜し始めて10分以上12時間以内で付着物が生じたものを“△”、製膜し始めて10分以内で付着物が生じたものを“×”とした。
透過電子顕微鏡によるフィルム断面の形態観察に際し、帯電防止性ポリオレフィンフィルムをエポキシ樹脂に包埋処理し、ウルトラミクロトームを用い、フィルム面方向に対する垂直断面を超薄切片として切り出した。海島部分の観察を容易にするため、染色剤として四酸化ルテニウムを用いて染色処理を行い、透過電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JEM−1010」)にて観察した。観察時の倍率は20,000倍と100,000倍とした。
撮影した電子顕微鏡写真を画像解析装置(日本アビオニクス株式会社製「SPICCA」)に取り込み、任意個数の島部分の粒径を測定し、垂直方向の平均粒径を算出した。同様に最大粒径、最短隣接平均距離、最大距離も算出した。また、帯電防止層の単位面積、並びに各々の島部分の面積を計測し、面積分率も算出した。
存在状態は、撮影した画像より目視にて行った。永久帯電防止剤が海島状の相分離構造を形成している場合、“海島状”とし、永久帯電防止剤の存在が海島状の相分離構造を形成していないもしくは不鮮明である場合、“縞状”とした(図5参照)。また、存在状態の把握が不可能であるものについては、“視認不能”とした。
平均粒径は、電子顕微鏡写真を前記の画像解析装置に取り込み、任意数の島部分の垂直方向における粒径を測定し、その平均を算出した。
最大粒径は、島部分の垂直方向における粒径の測定値にて最大値を選択した。
最短隣接距離及びその平均値は、前記の画像解析装置に取り込んだ画像上において、ある島部分と当該島部分と隣接する多数の島部分との距離を計測した。それらの距離の最小値を最短隣接距離とした。同様の計測を他の島部分についても行い、最短隣接距離を計測した。そこで、これらの最短隣接距離より平均値を算出した。
最大値は、前記の最短隣接距離の計測において、最大となる距離を選択した。
面積分率は、前記の画像解析装置に取り込んだ画像上において、任意の帯電防止層断面の全体面積に含まれる島部分の面積の総和をとする場合、面積分率=(島部分の面積の総和)/(帯電防止層の断面面積)として算出した。
[フィルムの外観]
ヘーズの測定は、JIS−K−7105に準拠し、デジタル濁度計(日本電色工業株式会社製「NDH−20D」)を使用して実施例及び比較例の帯電防止性ポリオレフィンフィルム1枚当たりのヘーズを測定した。単位は(%)である。
LSIの測定は、視覚透明度試験機(株式会社東洋精機製作所製)を使用して帯電防止性ポリオレフィンフィルム1枚当たりの透明度を測定した。単位は(%)である。ちなみに、LSIは視感とヘーズとの不一致について改善した指標である。LS値とは、狭い角度の拡散透過光を示し、ヘーズに比べ、より人間の目で感じる曇り度合いに近い値を示す。
外観不良は、実施例及び比較例の帯電防止性ポリオレフィンフィルムにおいて帯電防止剤樹脂組成物が積層された面(フィルムの最外面)を目視にて観察した。表面全体にわたり凹凸もなく透明な試料は“○”とし、表面全体にわたり白濁、または表面粗れ等の目視にて外観不良と感ずる状態の試料は“×”とした。
[表面固有抵抗率]
表面固有抵抗率は、JIS−K−6911に準拠し、高抵抗−抵抗率計(三菱油化株式会社製「MCP−HT260」)を用い、次に示す条件下において表面固有抵抗率(Ω)を測定した。
製膜直後の測定とは、前出のテンター法二軸延伸機から製膜された各試料(実施例及び比較例)のフィルムについて、23℃,50%RH(以下、表記の湿度は相対湿度である。)の雰囲気下で帯電防止剤樹脂組成物が積層された面の表面固有抵抗率を測定したものである。
1日放置後の測定とは、各試料のフィルムを35℃,60%RHの雰囲気下で24時間エージングした後、23℃,50%RH雰囲気下にて測定したものである。
水洗後の測定においては、各試料のフィルムの帯電防止剤樹脂組成物が積層された面(帯電防止層)に対し、食器用中性洗剤(ライオン株式会社製「ママレモン」)を染み込ませた市販のナイロンスポンジを用いて20回こするように洗い、蒸留水で十分にすすいだ。その後80℃、3時間乾燥した後、23℃,50%RH雰囲気下にて24時間静置後、23℃,50%RH雰囲気下にて測定した。
溶剤拭後の測定においては、各試料のフィルムの帯電防止剤樹脂組成物が積層された面(帯電防止層)に対し、トルエンを染み込ませた不織布を用いて20回こするように拭き取り、23℃,50%RH雰囲気下にて自然乾燥後、同雰囲気下にて測定した。
加えて、各試料のフィルムを35℃,60%RHの雰囲気下で24時間エージングした後、23℃,15%RH雰囲気下における測定も行った。
[水性インキ印刷適性]
水性インキに東洋インキ製造株式会社製「JW224アクワエコール墨」を用い、これを専用の希釈溶剤により希釈し、固形分濃度30重量%、アルコール分濃度10%に調製した。得られた水性インキを各試料(実施例1ないし10、比較例1ないし5)の帯電防止剤樹脂組成物が積層された面にグラビア印刷機により印刷した。
このようにして水性インキ印刷が行われた実施例と比較例のフィルムの表面を光学顕微鏡により観察(倍率75倍)し、各試料のインキ転移状態及びインキのはじき具合を評価した。評価にあたり、インクのはじきが全く見られず、網点の再現性が良好であるものを“○”とした。細かいはじきが多数見られ、網点の抜けが見られるものを“△”とした。大きなはじきが全体に見られ、網点自体がほとんど存在しないものを“×”とした。
[総合評価]
総合評価は、列記の評価項目、指標を全体的に勘案し、帯電防止性ポリオレフィンフィルムとしての適性を評価した。いずれにおいても優良なフィルムを“◎”とした。良品のフィルムを“○”とした。性能上問題があり使用に適さないフィルムを“×”とした。
[結果・考察]
これまでに詳述した評価、測定の結果から、実施例1ないし10のポリオレフィンフィルムは良好な帯電防止性能を有している。とりわけ実施例1ないし8のポリオレフィンフィルムは他の指標も総じて優れている。一方、比較例1ないし5のポリオレフィンフィルムにあっては、所望の帯電防止性能が得られず、他の指標にも問題を有する。比較例1ないし3にあっては、帯電防止層を構成する表層用ポリオレフィン樹脂(B)に対する延伸温度不足による永久帯電防止剤(A)の存在状態が細かい縞状であり、帯電防止性不良および外観不良を引き起こしている。比較例4にあっては、表層用ポリオレフィン樹脂中における存在状態が海島状の相分離構造であるものの相溶性に欠ける。このため、存在粒径も大きく帯電防止剤脱落によるロール汚れが酷く製膜上の問題がある。また、帯電防止性能も不安定である。比較例5にあっては、低分子型界面活性剤特有の製膜上の問題が見られ、帯電防止性能も不安定である。
この知見から、永久帯電防止剤(A)は、親水性ポリマー(a)と変性ポリオレフィン(b)との共重合体(繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー)であることが必須条件であり、かつ、永久帯電防止剤(A)の存在量と共に、帯電防止層内に永久帯電防止剤(A)が海島状の相分離構造を成すことが不可欠であると予想される。
すなわち、基材層に用いる基層用ポリオレフィン樹脂(D)の融点を帯電防止層に用いる表層用ポリオレフィン樹脂(B)の融点より高い樹脂を使用することによって、永久帯電防止剤(A)と表層用ポリオレフィン樹脂(B)のみを共に半溶融状態もしくは溶融状態、すなわち完全には混ざり合わない半液状とすることが可能となった。そこで、あたかも水と油の混合液を攪拌した時のように、添加量の少ない方(この場合、永久帯電防止剤(A))が表面張力的に最も安定した状態として粒形状を形成し、そのまま製膜成形後、冷却固化することにより、帯電防止層における永久帯電防止剤(A)と表層用ポリオレフィン樹脂(B)の存在状態が容易に海島状の相分離構造を形成したものと発明者らは推定する。
なお、帯電防止層における永久帯電防止剤(A)と表層用ポリオレフィン樹脂(B)の存在状態が海島状の相分離構造であることと、フィルムとして良好な帯電防止性能を発揮(表面固有抵抗率の減少)することの関係は、必ずしも解明されたわけではない。発明者らは、当該関係について、帯電防止層における永久帯電防止剤(A)の偏在が導電性に影響を与えている可能性を推測している。
本発明の帯電防止性ポリオレフィンフィルムの縦断面模式図である。
図1の島部分毎の粒径に着目した縦断面模式図である。
図1の島部分毎の距離に着目した縦断面模式図である。
図1の島部分毎の面積に着目した縦断面模式図である。
従来の帯電防止性フィルムを表す縦断面模式図である。
10 帯電防止性ポリオレフィンフィルム
11 基材層
20 帯電防止層
21 海部分
22 島部分