JP4532061B2 - 波形整形器、光パルス発生装置および光再生システム - Google Patents
波形整形器、光パルス発生装置および光再生システム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、極短パルス幅のソリトン光を発生する技術に関し、特に、小型かつ構造が単純な波形整形器、光パルス発生装置および光再生システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネット等の爆発的な普及に伴い、光通信の分野において、信号伝送の高速化に対する要求が高まっている。信号伝送を高速化する手段の一つとして、高ビットレートの光信号、即ちパルス幅が数十〜数百fs程度となる信号光を供給可能な信号光源を使用することが挙げられる。しかし、光源に使用する半導体レーザ素子によって直接このような極短パルスの信号光を実現することは非常に困難であるため、現状では、半導体レーザ素子から出力された光をソリトン光に変換した後、パルス圧縮する光パルス発生装置によって、高ビットレートの光信号を実現している。
【0003】
半導体レーザ素子から出力された光をソリトン光に変換する手段として、ビート波を分散シフト化ファイバ(Dispersion Shifted Fiber)中を伝搬させることによってソリトン変換を行う波形整形器が知られている。例えば、周波数がわずかに相違する2つの光を合波して分散シフト化ファイバ中を8km〜20km程度伝搬させることによって、数ps程度のソリトン光を得ることができる。
【0004】
また、ソリトン光をパルス圧縮する手法の一つとしては、断熱ソリトン圧縮を利用した光パルス圧縮器が知られている。具体的には、長手方向に分散値が減少する光ファイバ(Dispersion-Decreasing Fiber:以下、「DDF」と称する)や、DDFに光増幅器であるEDFAを組み合わせた長尺エルビウム添加分散減少ファイバ増幅器(Dispersion-Decreasing Erbium Doped Fiber Amplifier:以下、「DD−EDFA」と称する)を用いて光パルス圧縮器を構成している。長手方向に分散値が減少する光ファイバ中においてソリトン光を伝送させることによって、断熱ソリトン圧縮が生じ、パルス幅を低減することが可能となる。
【0005】
しかし、断熱ソリトン圧縮を行うためには、入力光の波形および伝送させる光ファイバの分散値を精密に制御する必要があることから、上記構造の光パルス圧縮器の製造は一般に困難である。また、経年変化等によって入力光の波形が乱れたり、分散値のシフトが生じた場合には装置全体を交換する必要が生じるため、運用コストも増大する等の問題を有し、実用的ではない。
【0006】
これに対し、同じ断熱ソリトン圧縮を基本原理とし、ラマン増幅器を組み込んだ光パルス圧縮器が注目を集めている。ラマン増幅は、非線形光学効果である誘導ラマン散乱を利用して光増幅を行うため、EDFA等と異なり、励起光の強度および波長を変動させることによって増幅利得を調整することが可能である。従って、入力される光の波形および分散シフト化ファイバの分散値の変動を補償するよう増幅利得を制御することによって、容易に断熱ソリトン圧縮が可能となる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0007】
【非特許文献1】
ホール(R. C. Reeves-Hall) 他、「ラマン増幅器における断熱圧縮に基づいたピコ秒ソリトンパルス光源 (Picosecond soliton pulse-duration-selectable source based on adiabatic compression in Raman Amplifier)」 、エレクトロンレター(Electron. Lett.) 、2000年、第36巻,p.622−624
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ラマン増幅を組み込んで光パルス圧縮器を構成した場合、光パルス圧縮器が大型化するという問題を有する。ラマン増幅は、EDFAに比べて増幅効率が低く、十分な光増幅を行うためには通常、数十kmのファイバ長を有する分散シフト化ファイバ等が必要となり、装置を小型化することが困難となる。このことは波形整形器についても同様であって、従来の構造ではファイバ長が8km程度〜20km程度の分散シフト化ファイバが必要となり、小型化することが困難である。
【0009】
また、ラマン増幅は非線形光学効果の一種であるため、光ファイバに入力される信号光の強度を上げる必要がある。特に、ソリトン断熱圧縮を行う場合には高次分散による影響を排除するために、信号光を高強度化することは必須の要件となる。信号光源として広く用いられるDFB(Distributed Feedback)レーザ等は、一般に高出力化が困難であるため、光ファイバに入力する前に信号光を増幅する必要性が生じる。
【0010】
このため、ラマン増幅を組み込んだ光パルス圧縮器を構成するためには、さらに光増幅器としてEDFA等を組み込む必要があり、装置構成が煩雑化すると共に、さらに小型化が困難となるという問題を有する。
【0011】
また、仮にEDFAまたは高出力化が可能な光源を用いた場合であっても問題が生じる。一般に、ある閾値を超えた強度のレーザ光を伝搬させた場合、光ファイバ中において誘導ブリリュアン散乱(Stimulated Brillouin Scattering)による散乱光が発生するため、光ファイバに入力する光の強度を増加させても、光ファイバ中を伝搬して外部に出力される光の強度が飽和することが知られている。従って、従来の光ファイバを用いた場合には光ファイバ中における光強度も一定の制限を受けるため、ソリトン断熱圧縮を効率的に行うことは困難である。
【0012】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、小型かつ構造が単純な波形整形器、光パルス発生装置および光再生システムを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明にかかる波形整形器は、入力された光をソリトン光に変換する波形整形器において、高非線形光伝送路と、前記高非線形光伝送路よりも低い非線形係数を有し、かつ前記高非線形光伝送路と2次分散値の絶対値が相違する低非線形光伝送路とを複数配設した構造を有することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、高非線形光伝送路と低非線形光伝送路とを複数配設することとしたため、等価的に分散減少伝送路を実現することができ、かつ高非線形光伝送路を用いたことで全体として高い分散特性を有する波形整形器を実現することができる。
【0015】
また、この発明にかかる波形整形器は、上記の発明において、入力端からの距離がソリトン周期以下となる領域に光アイソレータをさらに備えたことを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、ソリトン周期以下となる距離に光アイソレータを配置することとしたため、波形整形器中における誘導ブリリュアン散乱の発生を抑制することができ、強度の高いソリトン光を出力することができる。
【0017】
また、この発明にかかる波形整形器は、上記の発明において、前記光アイソレータは、異なる光伝送路の接合部に配設されることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、光伝送路の接合部に光アイソレータを配設することとしたため、融着点数を減少させることが可能となり、光損失を低減した波形整形器を実現することができる。
【0019】
また、この発明にかかる波形整形器は、上記の発明において、前記光アイソレータは、前記高非線形光伝送路の前段に配設されることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、光アイソレータが高非線形光伝送路の前段に配設されることとしたため、誘導ブリリュアン散乱の発生をより効果的に抑制することができる。誘導ブリリュアン散乱は非線形光学効果の一種であることから、高非線形光伝送路において発生しやすい。そのため、高非線形光伝送路の前段に光りアイソレータを配設することによって誘導ブリリュアン散乱の発生をより効果的に抑制することができる。
【0021】
また、この発明にかかる光パルス発生装置は、非線形係数が3km-1・W-1以上の高非線形光伝送路を備え、入力された光をラマン増幅しつつ断熱ソリトン圧縮によってパルス幅を圧縮するパルス幅圧縮手段と、該パルス圧縮手段に対してラマン増幅のための励起光を供給する励起光源と、該励起光源を前記パルス幅圧縮手段と光結合するための光結合手段とを備えたことを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、高非線形光伝送路中を伝送する光に対してラマン増幅を行うこととしたため、高非線形光伝送路の伝送路長を短縮化できると共に、出力光のパルス幅をより圧縮することができる。
【0023】
また、この発明にかかる光パルス発生装置は、上記の発明において、前記パルス幅圧縮手段前段に配設され、この発明のいずれか一つに係る波形整形器と、該波形整形器前段に配設された発光手段とさらに備えたことを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる光パルス発生装置は、上記の発明において、前記パルス圧縮手段前段に配設された光増幅器をさらに備えたことを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる光パルス発生装置は、上記の発明において、前記パルス圧縮手段前段に配設された誘導ブリリュアン散乱抑制手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0026】
また、この発明にかかる光再生システムは、伝送される光の繰返し周波数を抽出するクロック抽出装置と、この発明に係る波形整形器もしくはこの発明に係る光パルス発生装置を備えた光クロックパルス列発生装置と、前記クロック抽出装置で抽出された周波数に基づいて、前記光クロックパルス列発生装置から出力される光を変調する光シャッター装置とを備えたことを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、光クロックパルス列発生装置として、本発明の光パルス発生装置を使用することとしたため、光パルスの強度揺らぎや時間揺らぎの少ない光クロックパルス列が得られる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明にかかる多波長光源および光通信システムの好適な実施の形態について説明する。図面の記載において、同一または類似部分には同一あるいは類似な符号を付している。また、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0029】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1にかかる波形整形器について説明する。実施の形態1にかかる波形整形器は、入力された光をソリトン光に変換するためのものである。図1(a)は、波形整形器の構造を示す模式図であり、図1(b)は、実施の形態1にかかる波形整形器の群速度分散Dの分布の一例を示すグラフである。
【0030】
本実施の形態1にかかる波形整形器は、図1(a)に示すように、非線形係数が例えば3km-1・W-1以上、好ましくは5.0km-1・km-1以上であって、例えば高非線形光ファイバ(High Non-Linear Fiber)によって形成される高非線形光伝送路1a、1b、1c、1d、1eと、非線形係数が例えば3km-1・W-1以下、好ましくは1km-1・W-1以下であって、例えば単一モード光ファイバ(Single Mode Fiber)によって形成される低非線形光伝送路2a、2b、2c、2d、2eとが交互に接続された構造を有する。なお、ここで高非線形光伝送路および低非線形光伝送路の個数については必ずしも5個である必要はなく、6個以上であっても良いし、4個以下であっても良い。
【0031】
図1(b)に示すように、高非線形光伝送路1a〜1eは、2次分散値β2の絶対値が4.0以上の等しい値を有し、それぞれの伝送路長La〜LeがLa>Lb>Lc>Ldとなるよう構成されている。例えば、La=100m、Lb=50m、Lc=25m等というように、長手方向に進むに従って伝送路長が短くなる。
【0032】
本実施の形態1にかかる波形整形器は、高非線形光伝送路1a〜1eの伝送路長を長手方向に減少させることによって、等価的に分散減少ファイバを実現している。具体的には、高非線形光伝送路1aと低非線形光伝送路2a、高非線形光伝送路1bと低非線形光伝送路2b等を対としてとらえ、各対における群速度分散D(=(−2πc/λ2)β2)の値の平均値を考えた場合、高非線形光伝送路と低非線形光伝送路との対における2次分散値の絶対値は長手方向に減少しているとみなすことができる。このため、本実施の形態1にかかる波形整形器に光を入力した場合、波形整形器中を伝搬するに従ってソリトン断熱圧縮が行われ、出力される光はソリトン光となる。
【0033】
高非線形光伝送路1a〜1eは、非線形係数が例えば3km-1・W-1以上、好ましくは5km-1・W-1と高い値を備えた光伝送路によって形成されているために、分散性を高くすることが可能である。一般に、ソリトン断熱圧縮を行うためには、光伝送路中における非線形性と分散性とが釣り合っている必要がある。従って、従来のように低非線形性光伝送路のみで構成した場合に2次分散値を低く抑制する必要があることと異なり、本実施の形態1にかかる波形整形器では、非線形係数の増大に対応して分散性、具体的には2次分散値の絶対値を増加させることが可能となる。
【0034】
このため、本実施の形態1にかかる波形整形器では、2次分散値の絶対値を増加させることが可能であり、かつ2次分散値の絶対値の高い高非線形光伝送路1a〜1eを用いることで光伝送路の伝送長を短縮化することが可能となる。理論上入力光をソリトン光に整形するために最低限必要となる伝送路長であるソリトン周期は、一般に2次分散値の絶対値に対応して決定され、2次分散値の絶対値が増大するとともにソリトン周期は短くなることが知られている。本実施の形態1にかかる波形整形器では、高非線形光伝送路1a〜1eを使用しているため、2次分散値の絶対値を大きくすることが可能となり、この結果、波形整形器全体における伝送路長が短い、小型の波形整形器を実現することができる。
【0035】
具体的に、100mWのピークパワーを有する3psパルスを入力した場合における波形整形器の構造の一例について以下に説明する。高非線形光伝送路1a〜1eとして非線形係数が15km-1・W-1である高非線形光ファイバを使用し、低非線形伝送路2a〜2eとして単一モード光ファイバを使用した。これらを用いて最適化を行った結果、波形整形器の特性は次のようになる。すなわち、非線形長が0.67km、分散距離が0.14km、2次分散値の絶対値の平均値が4.3ps2/kmであって、ソリトン周期が0.25kmである。このため、波形整形器全体の伝送路長は0.25km〜0.67km程度と、従来の8km〜20km程度と比較して格段に短くすることができ、小型の波形整形器を実現することができる。
【0036】
図2は、かかる構造の波形整形器を使用した場合の自己相関波形の変化について示すグラフである。図2上段は、波形整形器に入力させる入力光の自己相関波形を示し、図2下段は、波形整形器から出力される出力光の自己相関波形を示す。図2下段のグラフに示すように、伝送路長が短いにもかかわらず、上記構造の波形整形器によって十分なソリトン光が得られている。
【0037】
次に、本実施の形態1にかかる波形整形器の利点について説明する。本実施の形態1にかかる波形整形器は、全体の伝送路長を短くすることによって、全体を小型化することが可能であるとともに、他の利点も有する。まず、伝送路長を短くすることによって、光損失による強度の低下を抑制することが可能となる。光伝送路として一般に使用される光ファイバは低損失であるものの、数kmに渡って光を伝搬した場合、光ファイバ中における光損失を無視することはできない。しかし、本実施の形態1にかかる波形整形器では、入力光の伝搬距離を0.25km〜0.67km程度に抑制することができるため、光損失を実用上問題とならない程度に抑制することができる。
【0038】
また、入力光の伝搬距離を短くすることによって、その他の非線形効果、例えば誘導ブリリュアン効果の発生を従来よりも抑制することができる。誘導ブリリュアン効果の発生を抑制することで出力されるソリトン光の強度の飽和を避けることが可能となり、高い強度のソリトン光を出力することが可能となる。
【0039】
また、本実施の形態1にかかる波形整形器では、高非線形光伝送路と低非線形伝送路とを組み合わせた構造とすることで、副次的な利点も有する。高非線形光伝送路として一般に使用される高非線形光ファイバは、現時点では分散制御を精密に行うことが容易ではなく、単独で分散減少伝送路を構成することは困難である。しかし、本実施の形態1にかかる波形整形器は、高非線形光伝送路の伝送路長を制御することによって等価的に分散減少伝送路を実現しているため、高非線形光ファイバを用いたにも関わらず精密な分散制御を行うことが可能となると期待される。すなわち、所望の分散特性が得られない場合であっても、伝送路長を調整することで等価的に分散制御を行うことが可能となるという利点を有する。
【0040】
(変形例)
次に、本実施の形態1にかかる波形整形器の変形例について説明する。変形例にかかる波形整形器は、非線形係数が例えば3km-1・W-1以上、好ましくは5km-1・W-1以上であって、2次分散値の絶対値が互いに相違する複数の高非線形光伝送路を組み合わせた構造を有する。
【0041】
図3は、変形例にかかる波形整形器の分散Dの分布の一例を示すグラフである。図3に示すように、変形例にかかる波形整形器は、長手方向に進むに従って2次分散値の絶対値が減少するように高非線形光伝送路が順次接続された構造を有する。かかる構造によって波形整形器を構成した場合であっても、等価的に分散減少伝送路を実現することが可能である。また、高非線形光伝送路を用いることによって、図1(a)に示す構造の波形整形器と同様に伝送路長を短くすることができる。
【0042】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる波形整形器について説明する。図4は、実施の形態2にかかる波形整形器の構造を示す模式図である。実施の形態2にかかる波形整形器は、誘導ブリリュアン散乱の発生を抑制するため、実施の形態1にかかる波形整形器に光アイソレータを配置したものである。以下、本実施の形態2にかかる波形整形器について、図4を参照して説明する。
【0043】
実施の形態2にかかる波形整形器は、図4に示すように、非線形係数が5.0km-1・km-1であって、例えば高非線形光ファイバによって形成される高非線形光伝送路1a、1b、1c、1d、1eと、非線形係数が1km-1・W-1以下であって、例えば単一モード光ファイバによって形成される低非線形光伝送路2a、2b、2c、2d、2eとが交互に接続された構造を有する。また、本実施の形態2にかかる波形整形器は、入力端4からの距離がソリトン周期よりも短くなる位置に光アイソレータ3a、3bが配置された構造を有する。具体的には、低非線形光伝送路2aと高非線形光伝送路1bとの間に光アイソレータ3aが挿入され、低非線形光伝送路2bと高非線形光伝送路1cとの間に光アイソレータ3bが挿入されている。なお、高非線形光伝送路1a〜1e並びに低非線形光伝送路2a〜2eは、実施の形態1と同様の構造を有するため、ここでの説明は省略する。
【0044】
光アイソレータ3a、3bは、波形整形器内部における誘導ブリリュアン散乱の発生を抑制するためのものである。光アイソレータ3a、3bは、長手方向に伝送する光を透過する一方、戻り光を遮蔽する機能を有し、例えば、屈折率に異方性を有する複屈折結晶、波長板、ファラデー回転子等を組み合わせて形成される。
【0045】
次に、光アイソレータ3a、3bが入力端4からの距離がソリトン周期よりも短い位置に配置される理由について説明する。本願発明者等は、光アイソレータが配置される位置と誘導ブリリュアン散乱が発生する入力光の強度(以下、「SBS閾値強度」と称する)との相関関係について測定し、光アイソレータを配置する位置の最適化を行っている。
【0046】
まず、本実施の形態2にかかる波形整形器を高非線形光伝送路1a〜1eと、低非線形光伝送路2a〜2eとを交互に組み合わせた構造のみによって構成し、光アイソレータを配置しない場合について説明する。光アイソレータを配置しない構成の場合、SBS閾値強度は50mW程度となり、入力光の強度が50mW以上となった場合には誘導ブリリュアン散乱による戻り光の強度が急激に増加し、波形整形器から出力される光の強度は飽和することが確認された。また、光アイソレータを低非線形光伝送路2dと高非線形光伝送路1eとの間に配置して測定したところ、光アイソレータを配置しない場合と同様に、SBS閾値強度は50mWであった。波形整形器をさらに長尺化し、入力端4からさらに遠い位置に光アイソレータを配置した場合もSBS閾値強度は50mW程度となり、光アイソレータを挿入することによるSBS閾値強度の改善はみられなかった。
【0047】
一方、光アイソレータを低非線形光伝送路2cと高非線形光伝送路1dとの間に配置した構成の場合、SBS閾値強度は75mW程度にまで改善され、光アイソレータを挿入することによるSBS閾値強度が改善されることが明らかとなった。さらに測定した結果、光アイソレータを低非線形光伝送路2bと高非線形光伝送路1cとの間に配置した場合のSBS閾値強度は100mW、低非線形光伝送路2aと高非線形光伝送路1bとの間に配置した場合には150mWとなった。かかる測定結果から、入力端4からの距離が一定値以下となる位置に光りアイソレータを配置した場合には、SBS閾値強度が一定の改善がみられることが示された。
【0048】
これらの測定結果からSBS閾値強度の改善がみられる光アイソレータの挿入位置について検討したところ、入力端4からの距離がソリトン周期よりも短い位置に光アイソレータを配置することが有効であることが明らかになった。すでに説明したように、ソリトン周期は入力光がソリトン光に変換されるまでに必要とする伝送路長に対応する値である。すなわち、誘導ブリリュアン散乱は入力光がソリトン光に変換される途上において主に発生し、入力端4からの距離がソリトン周期よりも短くなる位置に光アイソレータを配置することによって誘導ブリリュアン散乱の発生を抑制できる。一方、入力光がソリトン光に変換された後は、誘導ブリリュアン散乱の発生はほとんど無く、ソリトン周期よりも遠方に光アイソレータを配置してもSBS閾値強度の改善はほとんどみられることはない。
【0049】
従って、本実施の形態2にかかる波形整形器では、入力端4からの距離がソリトン周期よりも短くなる位置に光アイソレータ3a、3bを配置することによってSBS閾値強度を改善し、光強度の大きいソリトン光を出力可能な構造としている。
【0050】
図5(a)〜図5(d)は、光アイソレータを配置することによるSBS閾値強度の改善の程度を説明するためのグラフである。具体的には、図5(a)は比較のため光アイソレータを配置しない波形整形器における戻り光の強度について示し、図5(b)〜図5(d)は、光アイソレータ3aのみを配置した場合、光アイソレータ3bのみを配置した場合および光アイソレータ3a、3bを配置した場合の戻り光の強度についてそれぞれ示す。
【0051】
図5(a)のグラフから明らかなように、光アイソレータを配置しない場合には入力光の強度が50mW以上の領域で誘導ブリリュアン散乱に起因した戻り光の強度が急激に増加、すなわちSBS閾値強度が50mWとなる。一方、図5(b)〜図5(d)に示すように、光アイソレータを配置することによってSBS閾値強度は著しく改善され、特に、光アイソレータ3a、3bの双方を配置した場合にはSBS閾値強度は200mW以上にまで改善される。図5(d)のグラフからも明らかなように、誘導ブリリュアン散乱の発生を効果的に抑制するためには入力端4からの距離がソリトン周期よりも短くなる領域に光アイソレータを複数配置した構造とすることも有効であり好ましい。
【0052】
次に、高強度の光を入力した場合に本実施の形態2にかかる波形整形器によって得られる出力光の光特性について測定を行った。図6(a)は、出力光の自己相関波形を示すグラフであり、上段が光アイソレータを備えない波形整形器に関し、下段が本実施の形態2にかかる波形整形器に関するものである。また、図6(b)は、出力光のスペクトル波形を示すグラフであり、上段が光アイソレータを備えない波形整形器に関し、下段が本実施の形態2にかかる波形整形器に関する。
【0053】
高強度の光を入力した場合、光アイソレータを有さない波形整形器では誘導ブリリュアン散乱が発生することによって光伝送路中における光強度の値が制限される。従って、伝搬中の光強度の値は一定の値に制限され、十分な強度を得られないことからソリトン変換が満足に行われず、図6(a)の上段および図6(b)の上段に示すようなグラフとなる。
【0054】
一方、本実施の形態2にかかる波形整形器は、光アイソレータを配置することによって伝搬中における誘導ブリリュアン散乱の発生を抑制することができる。そのため、ソリトン圧縮現象が生じ、所望のピコ秒ソリトンパルス列が得られていることが図6(a)の下段および図6(b)の下段のようなグラフを得ることができる
【0055】
なお、光アイソレータ3aまたは光アイソレータ3bは、高非線形光伝送路もしくは低非線形光伝送路の途上に配置する構造としてもよいが、異なる光伝送路の接合部に配置することが好ましい。接合部に配置することで波形整形器の製造行程の煩雑化を避けられるだけでなく、例えば、異なる光伝送路の端部をそれぞれ両端ピグテイルとした光アイソレータを形成することによって、異なる光伝送路間の融着点数を減少させることが可能となる。光伝送路間の融着部分においては一定の光損失が発生することから、本実施の形態2にかかる波形整形器は、融着点数を減少させることによって波形整形器中における光損失を低減できるという利点を有する。
【0056】
また、図4に示すように波形整形器が高非線形光伝送路と低非線形光伝送路との組み合わせによって形成される場合には、光アイソレータを高非線形光伝送路の前段に配置することが好ましい。誘導ブリリュアン散乱は非線形光学効果の一種であるため、非線形係数の高い高非線形光伝送路中において特に発生しやすい。従って、高非線形光伝送路の前段にアイソレータを設けることによって、高非線形光伝送路中で発生した戻り光を遮蔽することによってより効果的に誘導ブリリュアン散乱の発生を抑制できる。
【0057】
なお、実施の形態1の変形例にかかる波形整形器に光アイソレータを挿入した構造も誘導ブリリュアン散乱の抑制には効果的である。この場合であっても、入力端からの距離がソリトン周期よりも短い領域に光アイソレータを配置することで、SBS閾値強度を改善することができ、高い光強度を有するソリトン光を出力することが可能となる。
【0058】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる光パルス発生装置について説明する。図7は、本実施の形態3にかかる光パルス発生装置の構造を示す模式図である。光パルス発生装置の構造は、ソリトン光源6と、光パルス圧縮器7とに大別される。ソリトン光源6は、光パルス圧縮器7に対してソリトン光を供給するためのものであり、光パルス圧縮器7は、入力されたソリトン光に対してソリトン断熱圧縮を施してパルス幅を圧縮するためのものである。
【0059】
ソリトン光源6は、例えばビート光を出力する発光部8と、発光部8から出力された光をソリトン光に整形する波形整形器9とを備える。また、光パルス圧縮器7は、外部から光を入力するための入力端10と、入力端10に接続されたパルス圧縮伝送路11と、出力端12とを備える。また、パルス圧縮伝送路11と出力端12との間には合波器13が配設され、合波器13には励起光源14が接続され、パルス圧縮伝送路11に対して励起光を供給可能な構造を有する。
【0060】
まず、ソリトン光源6について説明する。ソリトン光源6を構成する発光部8は、本実施の形態3ではビート光を出力するものを用いる。具体的には、発光部8は、周波数f0のレーザ光を出力する半導体レーザ素子15と、周波数f0+Δfのレーザ光を出力する半導体レーザ素子16と、半導体レーザ素子15、16から出力されるレーザ光を合波するための合波器17とを備えた構造を有する。周波数f0、f0+Δfのレーザ光を合波することにより、発光部8は、繰り返し周期Δfのビート波を出力する機能を有する。
【0061】
また、ソリトン光源6を構成する波形整形器9は、任意の構造のものを用いることが可能であるが、実施の形態1または2に記載された波形整形器を用いることが好ましい。実施の形態1または2にかかる波形整形器を用いることによって、装置が小型で、高い出力のソリトン光を供給することが可能となるためである。
【0062】
次に、光パルス圧縮器7の構造について説明する。まず、パルス圧縮伝送路11は、異常分散、すなわち正の分散値をする光ファイバによって形成される。また、パルス圧縮伝送路11は、非線形係数γが例えば3km-1・W-1以上、好ましくは5.0km-1W-1以上、より好ましくは15km-1W-1の値を有する。以下では、パルス圧縮伝送路11として非線形係数γが15km-1W-1となるものについて説明を行う。
【0063】
励起光源14は、パルス圧縮伝送路11に対して励起光を供給するためのものである。具体的には、励起光源14は、例えば半導体レーザ素子によって構成され、所定の波長のレーザ光をパルス圧縮伝送路11に対して出力する機能を有する。なお、本実施の形態3では励起光の進行方向と増幅される光の進行方向とが反対方向となるいわゆる後方励起方式によってラマン増幅を行う構造を有することとする。ただし、励起光と増幅される光の進行方向が同一となる前方励起方式を採用しても良く、前方励起方式と後方励起方式を組み合わせた双方向励起方式を採用しても良い。
【0064】
また、励起光源14から出力される光は、増幅される光の波長に対して100nm程度短波長側にシフトした波長を有するものとする。ラマン増幅においては、励起光の波長に対して100nm程度長波長側にシフトした波長において増幅利得のピークが得られるためである。
【0065】
つぎに、本実施の形態3にかかる光パルス圧縮器の動作について説明する。まず、外部から所定の条件を満たすソリトン光が入力端10を介してパルス圧縮伝送路11に入力される。ここで、一例として、本実施の形態3にかかる光パルス圧縮器に入力されるソリトン光は、基本ソリトン条件を満たすものとする。入力されたソリトン光は、パルス圧縮伝送路11中において断熱ソリトン圧縮され、パルス圧縮された光が出力端12から外部に出力される。
【0066】
パルス圧縮伝送路11中におけるソリトン断熱圧縮について、以下に詳細に説明する。基本ソリトン条件を満たすソリトン光は、本実施の形態3にかかる光パルス圧縮器に入力された後も、パルス圧縮伝送路11中を伝搬中に渡って基本ソリトン条件、すなわちソリトン次数が1となる条件を保持しようとする性質を有する。ソリトン次数Nは、以下の(1)式によって与えられる。
N=(γPT2/|β2|)1/2 ・・・(1)
ここで、γはパルス圧縮伝送路11の非線形係数であり、β2はパルス圧縮伝送路11の2次分散値である。また、Pはパルス圧縮伝送路11中におけるソリトン光のピーク強度、Tはパルス圧縮伝送路11中におけるソリトン光のパルス幅である。
【0067】
パルス圧縮伝送路11中を伝搬するソリトン光は、ソリトン次数を1に保持する性質を有するため、パルス圧縮伝送路11中全般に渡って(1)式における左辺の値が1となる。また、パルス圧縮伝送路11中では、励起光源14によって励起光が供給されることでラマン増幅が生じ、伝搬するソリトン光のピーク強度Pは増大する。
【0068】
従って、(1)式の右辺ではソリトン光が伝搬するに従ってPの値が増大する。これに対して、基本ソリトン条件を維持するため、パルス圧縮伝送路11中の伝搬中においてはN=1が維持され、かつ非線形係数γは特に変動しない。従って、(1)式の等号を維持するために、伝搬するソリトン光のパルス幅Tが減少することとなり、パルス幅Tの圧縮が行われることとなる。
【0069】
本実施の形態3にかかる光パルス圧縮器は、高い非線形係数γを有することから、入力されたソリトン光に対して、短いファイバ長で効率良くラマン増幅を行うことができる。ラマン増幅は、非線形光学効果の一種であることから、非線形係数γの値が大きいほど単位ファイバ長あたりの増幅効率を高めることが可能となる。
【0070】
このため、所定のピーク強度Pを得るために必要なファイバ長を短くすることが可能となり、光パルス圧縮に使用するパルス圧縮伝送路11のファイバ長は2km程度と、非常に短くすることができる。このことは光パルス圧縮器の小型化の観点からは非常に重要な利点であって、パルス圧縮伝送路11を使用することによって小型の光パルス圧縮器を実現できるという利点を有する。具体的には、従来の光パルス圧縮器と比べてパルス圧縮伝送路11を1/10程度の伝送路長とすることが可能であり、小型の光パルス圧縮器によってパルス発生装置を構成することができる。
【0071】
また、光パルス圧縮器7によれば、所定の2次分散値β2の絶対値に対して、入力されるソリトン光の強度を従来よりも低減することが可能である。図8は、2次分散値β2の絶対値に対して基本ソリトン励起に必要な入力光の強度の依存性を示すグラフである。図8において、曲線l1は従来の光パルス圧縮器について示し、曲線l2は、本実施の形態3における光パルス圧縮器7について示す。
【0072】
図8からも明らかなように、例えば|β2|=1ps2/kmの場合において、従来は入力光が150mW程度の強度を必要としていたのに対し、本実施の形態3における光パルス圧縮器7は、20mW程度の強度の光を入力することによってパルス圧縮を行うことができる。半導体レーザ素子を光源とした場合20mW程度の出力であれば低い注入電流で容易に実現できるため、本実施の形態3にかかる光パルス発生装置では、光増幅器を省略することが可能であると共に、低消費電力の光パルス発生装置を実現することができる。
【0073】
また、本実施の形態3における光パルス圧縮器7は、高い非線形係数γを有するために、従来の光パルス圧縮器よりも2次分散値β2の値が大きな光ファイバを用いることが可能である。上記したように、入力されるソリトン光は、基本ソリトン条件、具体的には(1)式においてN=1を満たすことが好ましい。従って、非線形係数γの値が小さい場合、2次分散値β2の値を大きくするためには、入力されるソリトン光が高い強度が必要となることから、一般に2次分散値β2の値は低く抑える必要があった。本実施の形態3にかかる光パルス圧縮器では、非線形係数γが高い値を有することから、これに対応して2次分散値β2も高い値に設定しても入力されるソリトン光の強度を高くする必要はなく、低強度の入力光によって高効率のパルス圧縮を行うことが可能である。
【0074】
パルス圧縮伝送路11において、2次分散値β2の値を高くすることによる利点について説明する。断熱ソリトン圧縮によるパルス幅の圧縮は、基本的には上記した(1)式に従って行われるが、実際には高次の分散値によってパルス幅の圧縮は制限されることが知られている。具体的には、3次分散値β3、4次分散値β4等が2次分散値β2と比較して所定以上の値を有する場合、ソリトン光のパルス幅の圧縮を効率的に行うことができなくなる。本実施の形態3のように、2次分散値β2の値が高くなるパルス圧縮伝送路11を用いた場合には、相対的に高次の分散値の値は低下することから、ソリトン光のパルス圧縮を行う際に高次分散値の影響を排除することが可能となる。さらに、パルス圧縮伝送路11は3次分散値β3の値を従来よりも低くすることが可能であって、例えばβ3の値を従来の1/3程度である0.03ps3/km程度とすることができる。このことによって、出力光のパルス幅をより小さい値にまで圧縮することが可能となる。
【0075】
図9は、パルス圧縮伝送路11に入力する光の強度と圧縮パルス幅の限界との関係を示すグラフである。ここで、曲線l3は、本実施の形態3にかかる光パルス圧縮器について示す曲線であり、曲線l4は、比較のため従来の分散シフト化ファイバを用いた光パルス圧縮器について示す曲線である。曲線l3と曲線l4との比較から明らかなように、本実施の形態3にかかる光パルス圧縮器は、同一の入力光強度に対してより狭い範囲にまでパルス圧縮を行うことが可能である。具体的には、従来の分散シフト化ファイバを用いた場合には10mW程度の入力光強度の場合には数ps程度であっても圧縮することが困難であるのに対して、本実施の形態3にかかる光パルス圧縮器では、200fs程度にまでパルス幅を圧縮することができる。
【0076】
また、100fsまでパルス幅を圧縮する場合、従来は250mW程度の入力光強度が必要であったのに対し、本実施の形態3における光パルス圧縮器では、非線形係数γ=15km-1・W-1、3次分散値β3=0.1ps3/kmの場合は46mWで足り、γ=15km-1/W-1、β3=0.03ps3/kmの場合は15mWで足りる。さらに、γ=25km-1・W-1、β3=0.03ps3/kmの場合には入力光の強度を8.3mWであっても100fsのパルス幅を実現することができる。
【0077】
なお、パルス圧縮伝送路11は、従来の分散シフト化ファイバと比較して高次の分散値を低い値とすることが可能である。例えば、3次分散値β3の値について、分散シフト化ファイバでは0.1ps3/km程度が一般的なのに対して、パルス圧縮伝送路11では、0.03ps3/km程度にまで3次分散値を低減することが可能である。3次分散値等の値を低減することが可能であることから、パルス圧縮伝送路11では、高次の分散値に対して2次分散値の値を相対的に高めることが可能となる。例えば、パルス圧縮伝送路11の3次分散値が0.03ps3/kmの場合には、100fs程度にまでパルス幅を圧縮する場合に必要な2次分散値は、従来の分散シフト化ファイバでは2ps2/km程度必要となるのに対して、本実施の形態3にかかる光パルス圧縮器では、0.6ps2/km程度でも十分となる。
【0078】
(変形例)
次に、実施の形態3にかかる光パルス発生装置の変形例について説明する。図10は、変形例にかかる光パルス発生装置の構造を示す模式図である。変形例においては、ソリトン光源6と光パルス圧縮器7との間に誘導ブリリュウアン散乱の発生を抑制するSBS発生抑制部20と、光増幅器21とを配置した構造を有する。ここで、SBS発生抑制部20は、従来用いられて来たものを用いても良いが、実施の形態2と同様に光伝送路中に光アイソレータを配置する構造としても良い。また、SBS発生抑制部20および光増幅器21のいずれか一方のみを配置する構造としても良い。
【0079】
以上、本発明を実施の形態1〜3に渡って説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるのではなく、当業者であれば様々な変形例、実施例に想到することが可能である。例えば、実施の形態1および実施の形態2において、入力端4の前段にもう一対の高非線形光伝送路および低非線形伝送路を配設する構造としても良い。ここで、前段に配設する高非線形光伝送路の伝送路長を高非線形光伝送路1aよりも短くすることで、より効率的にソリトン変換を行うことが可能となる。
【0080】
また、実施の形態3では波形整形器9と光パルス圧縮器7とを別個配置する構造としたが、これらを一体的に形成することとしても良い。光パルス圧縮器7を構成するパルス圧縮伝送路11は、高い非線形係数を有することからビート光に対してソリトン断熱圧縮を行うことが可能であるため、例えばパルス圧縮伝送路11の伝送路長を増大させることによって波形整形器9と光パルス圧縮器7とを一体的に形成することができる。
【0081】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。実施の形態4にかかる光再生システムは、実施の形態1もしくは2にかかる波形整形器、または実施の形態3にかかる光パルス発生装置を利用したものである。図11は、実施の形態4にかかる光再生システムの構造を示す模式図である。以下、図11を参照して、上述した波形整形器を用いた光再生システムについて説明する。
【0082】
図11に示す光再生システム100は、増幅装置102と、合波器103と、クロック抽出装置104と、実施の形態1または2にかかる波形整形器(図1、図4参照)を備えた光パルス発生装置もしくは実施の形態3にかかる光パルス発生装置(図7、図10を参照)から構成される光クロックパルス列発生装置106と、光シャッター装置108とを含む。増幅装置102は、減衰した信号光を増幅するもので、例えばエルビウム添加ファイバ型増幅器、ラマン増幅器、半導体増幅器、パラメトリック増幅器等をあげることができる。
【0083】
クロック抽出装置104は、信号光パルスの繰返し周波数を抽出するもので、図示しないが、例えば、受光素子、電気的クロック抽出回路、半導体レーザから構成される電子回路を基本とする装置を含んで形成される。この他にも、増幅装置、非線形光学媒質、光フィルタから構成される全光型クロック抽出装置もあげられる。ここで、非線形光学媒質とは、例えば高非線形ファイバおよび半導体素子があげられる。
【0084】
光クロックパルス列発生装置106は信号光パルス繰り返し周波数を有する光クロックパルス列を発生されるもので、上述した波形整形器(図1、図4を参照)を備えた光パルス発生装置もしくは光パルス発生装置(図7、図10を参照)を利用する。構成、機能等については既に述べたため、ここでの説明は省略する。
【0085】
光シャッター装置108は、合波器103で分波された信号光によって光クロックパルス列発生装置106の出力光を光変調する装置である。
【0086】
実施の形態4にかかる光再生システム100では、伝送されてきた信号光を、まず増幅装置102によって増幅し、増幅された信号光を合波器103によって分岐し、一方の信号光はそのまま伝播されて光シャッター装置108に入射される。他方の信号光は、クロック抽出装置104に入射される。クロック抽出装置104の出力電気信号によって制御される光クロックパルス列発生装置106の出力光は光シャッター装置108に入射される。光シャッター装置108において、合波器103から伝播された信号光で光クロックパルス列を光変調されることによって、信号光タイミングが再生される。
【0087】
このように、光クロックパルス列発生装置106として、本発明の光パルス発生装置を使用すると、光パルスの強度揺らぎや時間揺らぎの少ない光クロックパルス列が得られる。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、高非線形光伝送路と低非線形光伝送路とを複数配設し、高非線形光伝送路と低非線形光伝送路の2次分散値の絶対値を互いに相違させることとしたため、等価的に分散減少伝送路を実現することができ、かつ高非線形光伝送路を用いたことで全体として高い分散特性を有する波形整形器を実現することができるという効果を奏する。
【0089】
また、この発明によれば、ソリトン周期以下となる距離に光アイソレータを配置することとしたため、波形整形器中における誘導ブリリュアン散乱の発生を抑制することができ、強度の高いソリトン光を出力することができるという効果を奏する。
【0090】
また、この発明によれば、光伝送路の接合部に光アイソレータを配設することとしたため、融着点数を減少させることが可能となり、光損失を低減した波形整形器を実現することができるという効果を奏する。
【0091】
また、この発明によれば、光アイソレータが高非線形光伝送路の前段に配設されることとしたため、誘導ブリリュアン散乱の発生をより効果的に抑制することができる。誘導ブリリュアン散乱は非線形光学効果の一種であることから、高非線形光伝送路において発生しやすい。そのため、高非線形光伝送路の前段に光りアイソレータを配設することによって誘導ブリリュアン散乱の発生をより効果的に抑制することができるという効果を奏する。
【0092】
また、この発明によれば、高非線形光伝送路中を伝送する光に対してラマン増幅を行うこととしたため、高非線形光伝送路の伝送路長を短縮化できると共に、出力光のパルス幅をより圧縮することができるという効果を奏する。
【0093】
また、この発明によれば、光再生システムを形成する光クロックパルス列発生装置として、上記の波形整形器および/または光パルス発生装置を使用する構成としたため、光パルスの強度揺らぎや時間揺らぎの少ない光クロックパルス列が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、実施の形態1にかかる波形整形器の構造を示す模式図であり、(b)は、実施の形態1にかかる波形整形器の群速度分散の分布の一例を示すグラフである。
【図2】実施の形態1にかかる波形整形器によってソリトン変換を行った場合の入力光と出力光の自己相関関係の変化について説明するためのグラフである。
【図3】実施の形態1の変形例にかかる波形整形器における群速度分散の分布の一例を示すグラフである。
【図4】実施の形態2にかかる波形整形器の構造を示す模式図である。
【図5】(a)〜(d)は、アイソレータの有無および配置する位置による戻り光の強度の変化について説明するためのグラフである。
【図6】(a)は出力光の自己相関関係を示すグラフであり、(b)は、出力光のスペクトル波形を示すグラフである。
【図7】実施の形態3にかかる光パルス発生装置の構造を示す模式図である。
【図8】2次分散値の絶対値に対して基本ソリトン励起に必要な入力光の強度の依存性を示すグラフである。
【図9】パルス圧縮伝送路に入力する光の強度と圧縮パルス幅の限界値との関係を示すグラフである。
【図10】実施の形態3の変形例にかかる光パルス発生装置の構造を示す模式図である。
【図11】本発明の波形整形器を配置させた光再生システムの一構成例を示す図である。
【符号の説明】
1a〜1e 高非線形光伝送路
2a〜2e 低非線形伝送路
3a、3b 光アイソレータ
4 入力端
6 ソリトン光源
7 光パルス圧縮器
8 発光部
9 波形整形器
10 入力端
11 パルス圧縮伝送路
12 出力端
13 合波器
14 励起光源
15 半導体レーザ素子
16 半導体レーザ素子
17 合波器
20 発生抑制部
21 光増幅器
100 光再生システム
102 増幅装置
103 カプラー
104 クロック抽出装置
106 クロック再生装置
108 光シャッター装置
Claims (7)
- 入力された光をソリトン光に変換する波形整形器において、
高非線形光伝送路と、
前記高非線形光伝送路よりも低い非線形係数を有する低非線形光伝送路と、を複数配設し、かつ、入力端からの距離がソリトン周期以下となる領域であって、前記高非線形光伝送路と前記低非線形光伝送路との接合部に光アイソレータを配設した構造を有し、前記各高非線形光伝送路は、互いに略同一である3km-1・W-1以上の非線形係数を有し、かつ前記低非線形光伝送路より2次分散値の絶対値が高くなっているとともに、長手方向に進むに従って伝送路長が短くなっていることを特徴とする波形整形器。 - 前記光アイソレータは、前記高非線形光伝送路の前段に配設されることを特徴とする請求項1に記載の波形整形器。
- 非線形係数が3km-1・W-1以上の高非線形光伝送路を備え、入力された光をラマン増幅しつつ断熱ソリトン圧縮によってパルス幅を圧縮するパルス幅圧縮手段と、
該パルス圧縮手段に対してラマン増幅のための励起光を供給する励起光源と、
該励起光源を前記パルス幅圧縮手段と光結合するための光結合手段と、
前記パルス幅圧縮手段前段に配設された、請求項1または2に記載の波形整形器と、
を備えたことを特徴とする光パルス発生装置。 - 前記波形整形器前段に配設された発光手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の光パルス発生装置。
- 前記パルス圧縮手段前段に配設された光増幅器をさらに備えたことを特徴とする請求項3または4に記載の光パルス発生装置。
- 前記パルス圧縮手段前段に配設された誘導ブリリュアン散乱抑制手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一つに記載の光パルス発生装置。
- 伝送される光の繰返し周波数を抽出するクロック抽出装置と、
請求項1または2に記載の波形整形器もしくは請求項3〜6のいずれか一つに記載の光パルス発生装置を備えた光クロックパルス列発生装置と、
前記クロック抽出装置で抽出された周波数に基づいて、前記光クロックパルス列発生装置から出力される光を変調する光シャッター装置と、
を備えたことを特徴とする光再生システム。
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