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JP4534065B2 - 家蚕緑色繭を利用した紫外線遮蔽剤及び蛍光発色剤 - Google Patents
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本発明は、紫外線遮蔽機能および蛍光発色機能を有する素材に関し、家蚕緑色繭が生産する物質を利用することにより、安価に安全に紫外線の全波長を強力に遮蔽する素材および紫外線照射により蛍光発色機能有する素材に関する。
農家などが飼育する家蚕の繭または糸は、従来、絹糸の内部のフィブロインのみが着物や洋装の織物として利用され、その外層部を構成するセリシン等は、取り除かれて破棄されているのが現状である。
一方、近年、野蚕と呼ばれる天然産の蚕について、野蚕が生産する繭から紫外線を遮蔽する機能が見い出され、これを利用した技術が幾つか提案されている。
例えば、野蚕糸を粉砕、微粒子化したUVカット素材(特許文献1)、野蚕糸を粉砕、微粒子化したものに天然染料を加えたUVカット素材(特許文献2)絹粉末にフェノール化合物を結合させた紫外線吸収剤(特許文献3)等である。
しかし、上記各技術には、紫外線遮蔽能が認められるものの、地上に最も多く照射される315nm以上の領域の紫外線に対する遮蔽効果は未だ充分なものではない。
即ち、紫外線には、(a)380〜315nm領域(UV−A)で、大気圏でほとんど吸収されず地表への照射量が最も多く、大量に浴びると遺伝子が傷つけられたり、シワやタルミ等の皮膚の老化を引き起こす性格のもの、(b)315〜280nm領域(UV−B)で、ある程度大気圏で吸収されるが、その一部が地上に到達する性格のもの、(c)280〜10nm領域(UV−C)で、最もエネルギーが高いが、酸素やオゾン層で強い吸収を受け、地上には到達しないが性格のものがあるが、上記蚕に見出された紫外線の遮断能は、主にUV−B及びUV−Cに強い機能を発揮するもので、最も地上に多く照射され、我々の肌や健康に悪影響を与えるUV−Aに関する遮蔽能は不充分なものでしかなかった。
更に一方、上記の如く紫外線照射に対し紫外線を遮蔽する素材の研究は行われていたが、紫外線遮蔽と同時に有害な紫外線をより安全な可視光線に変換し蛍光発色する機能を生かした素材の利用開発はされていなかった。
特開平11−181399号公報 特開平2000−143472公報 特開平2002−338942号公報
そこで、本発明者らは、家蚕の高付加価値化を研究するなかで、家蚕のうち緑色繭を生産する蚕品種の繭からフィブロインを取り除いた成分において、特に上記紫外線UV―Aを含めた紫外線全般に渡って遮蔽する優れた能力を有することを見いだし、且つ、それが紫外線を有用な蛍光色に変換させる能力にも優れることを見いだし、本発明を完成させたものである。
上記課題を解決するため、本発明紫外線遮蔽剤は、農家などが飼育する家蚕のうち緑色繭を対象とし、該緑色繭からフィブロインを取り除いた成分を液体又は粉末化して成る特に315nm以上の紫外線を遮蔽する能力に優れることを特徴とする。
又、請求項2に記載される蛍光発色剤は、農家などが飼育する家蚕の緑色繭を対象とし、該緑色繭からフィブロインを取り除いた成分を液体又は粉末化して成る、紫外線を照射すると可視光線に蛍光することを特徴とする。
本発明は、従来技術が不充分であったUV−A領域における遮蔽効果をほぼ完全に満たすことができ、その際、従来利用価値が見出されず大量廃棄処理されていた家蚕緑色繭からのフィブロイン除去成分を利用するので経済的であり、且つ、野蚕と異なり家蚕を用いることから大量生産が可能で、安定供給が確保できる。
又、紫外線を照射すると、それがより安全な可視光線に変換し蛍光発色する効果を発揮する。
本発明の紫外線遮蔽剤は、家蚕の緑色繭を対象とする。
これを詳述すると、先ず絹糸として利用される絹糸虫は、昆虫分類学上鱗翅目に属する昆虫で、家蚕とは屋内でクワを餌に飼育されることから家蚕と呼ばれるが、カイコガ科に属する日本種、中国種、欧州種その他の総称をいい、大きさ、食べ物、吐く糸の性質の異なるヤママユガ科に属する野蚕とは区別される。
この家蚕にあって、繭の色により区別すると、有色繭には黄繭、紅繭、緑繭等があり、この有色繭のなかで、機能性色素のフラボノイドを含む緑色を呈する繭を緑色繭と本発明では定義する。
そして、本発明者らは、高品質な繭を考究するなかで緑色繭に以下の如き特異的な性能を見いだした。
即ち、細繊度繭、黄色繭、緑色繭、太繊度繭等に着目し、その性能を検討するうち、各繭に紫外線を照射したところ、緑色繭に他に見られない非常に強い蛍光色の発色を観察することができた。
この事実に着目し、各繭の紫外線照射に対する透過強度の測定試験を行った。
それが図1に示す如き試験である。
先ず、供試材料として、緑色繭「PCG×PNG」(以下試料上では緑繭という)、黄色繭「鐘光×黄玉」(以下試料上では黄繭という)、極細繭「はくぎん」(以下試料上では極細という)、太繊度繭「TNK.F×SP7.8」(以下試料上では太繊度という)、普通繭「錦秋×鐘和」(以下試料上では対照という)の繭層及びセリシン水溶液を選定した。
そして、上記供試材料の繭に対して以下の透過性調査を行った。 各品種の繭片(外層及び内層)を20×20×0.5mmに調整し、光源の波長に対する透過強度を光スペクトラムアナライザ(安藤電気製:AQ‐6315B、測定範囲:350〜750nm)で測定した。なお、光源は紫外線A、B及びCランプを用い、繭片を供しない場合(Blank)と比較した。
その結果、紫外線A光源に対する外層の透過強度(▽印、最大値)はBlank(−44dBm)>太繊度(−53dBm)≧対照(−55dBm)≧極細(−57dBm)>黄繭(−62dBm)>緑繭(−72dBm)の順となった。Blankと対照の差が11dBに対し、緑繭は28dB程度と透過強度が大きく減衰し、最も高い遮蔽効果を示した。また、紫外線A光源に対する内層の透過強度(▽印、最大値)はBlank(−44dBm)>太繊度(−54dBm)>対照(−58dBm)>黄繭(−63dBm)>極細(−67dBm)>緑繭(−73dBm)の順となった。
即ち、緑色繭は、対照とした普通繭に対しては100倍、黄色繭に対しても10倍以上と透過強度が減衰しており、これは頗る優れた紫外線遮蔽能が発揮されていることを示している。
この観察及び試験結果に基づいて考究し、本発明者らは、緑色繭のうち、繭成分のうち繊維成分となるフィブロインを取り除いた成分として主にセリシンと呼ばれる蛋白質の貢献に注目した。
そこで、繭成分のうち繊維成分となるフィブロインを取り除いた成分を検討することとして、下記の試験を行った。
先ず、セリシンの化学的性質が損なわれていない分離法として、精製水に触媒として微量の食塩を添加した水溶液を電気分解したイオン水により加水分解することにより、セリシンおよびフラボノイド等を含んだフィブロイン除去成分を分離した。
但し、繭糸からのセリシン分離は、例えば、熱水、アルカリ剤の水溶液、界面活性剤および酵素等を用い行うことが可能である。
次いで、上記成分の透過試験を行った。
試料は図1での試料と同様とし、各試料が含む溶質を一定濃度(0.5wt.%)に調整した。これらの試料に関する紫外線遮蔽の程度を比較するために分光光度計(日立製:U-3210、測定範囲:200〜340nm)を用いて透過量を測定し、そのデータを図2に示し、折れ線グラフを図3に示す。なお、試料の作製に用いた電気分解水による影響についても評価を行うために加水分解に用いた電気分解水についても透過量を測定したが、これは図2中では標準液と記してある。
その結果、310nm以上において太繊度、対照、極細、黄繭等が紫外線を透過し、特に340nmにおいては他種が30%以上の透過率を示すのに対し、野蚕及び緑色繭は5%以下の透過率を示した。
更に、この野蚕及び緑色繭の両者の透過率を比較するに、340nmにおいて、野蚕が4.28%であるのに対し緑色繭は0.73%という透過率を示している。野蚕及び緑色繭の透過率は、共に30%以上となる他種と比較すると優れた透過率を示しているが、なお緑色繭にあっては、4.28%である野蚕に対して、これを3.55%上回る0.73%の透過率の向上を示している。これは、5%以下の優れた透過率を示す野蚕に対して、そこから更に3%を上回る透過率を導いたもので、改善の困難となる高い遮蔽率領域(低透磁率領域)において、更なる改良を進めた点が注目される。
この結果、緑色繭は、UV−A領域においてもほぼ完全に紫外線を遮蔽するという特異的な性能が見出され、同時に、290nm以下のUV−C領域、及び290〜315nmのUV−B領域でも高い遮蔽能が確認され、即ち、緑色繭にあっては、UV−C〜UV−Aの全ての波長領域において、安定して紫外線を遮蔽するという従来にない効果が確認された。
斯くして得られたフィブロインを除去した水溶液は、そのまま溶液として利用が可能であり、同時に、乾燥することで粉末化も可能である。主な乾燥方法には自然乾燥、熱(風)乾燥および凍結乾燥等があるが、熱(風)乾燥すると分解変質変色がおき易いので、真空凍結乾燥(例:共和真空株式会社製RLE)することにより凍結された試料から水分だけを取り除くことができ、安定した粉末が得られる。
当該分離成分がなぜ上記の如くUV−A領域においても高い紫外線遮蔽能を維持するのかは、未だ不明である。
しかし、以下のアミノ酸組成調査の事実等から以下の如きに、本発明者らは推察している。
先ず、セリシン水溶液2.5gを秤量、同量の濃塩酸を加え、窒素置換後加水分解炉(110℃)で24時間加水分解を行い減圧乾固により塩酸除去し、0.02N塩酸で10mlに希釈定容したものを試験液とし高速アミノ酸分析計(日立製:L-8500)で測定した。その結果を示したのが図4及び図5である。
この結果を野蚕のアミノ酸組成と比較すると、セリン、スレオニン、バリン、グリシン、アラニン・・等でその組成比率を大きく異にしている。
又、フラボノイドは、植物の黄色に寄与するフラバン誘導体の総称であり、緑色繭に含まれるフラボノイドの種類は特定されていないが、上記アミノ酸組成を備えたタンパク質とフラボノイド及びその他の物質との相乗効果で、UV−A領域(UV−B領域、UV−C領域も含めて)に特異的に強い吸収効果が発揮されるものと推察される。
そして、このUV−A領域における高い紫外線遮蔽能は、皮膚ガンへの予防効果等が期待される。
即ち、紫外線と皮膚ガンとの間には、高い因果関係が確認されており、このなかで波長の長い紫外線は皮膚の深部にまで達し易い性向を示し、メラニン色素の色素沈着を起こす恐れがある。又、ガンに限らず、紫外線を繰り返し浴びていると真皮内の繊維質にダメージが与えられ、老化の原因となる。しかし、本発明においては、この長波長側のUV−A領域において強い遮蔽効果が確認され、当然にUV−B、C領域においても強い遮蔽効果があるから、紫外線全般にわたって強い遮蔽効果を発揮し、皮膚ガンや老化等の予防が期待され得る。
一方、上記特性に加えて、紫外線を可視光線に光変換する蛍光発色物質としての特性を本発明は備える。
つまり、上記緑色繭片に紫外線を照射すると、可視光線の領域において強い蛍光発色が観察された。
図1の510〜670nm(ピーク540〜550nm)の領域で緑色2に高い隆起が観察され、350〜380nmの紫外線領域で緑色2が低いピークであることと対比すると、緑色2では紫外線で吸収された波が可視光に変換されて、一段と強い蛍光色を発光するものと推察される。
従って、この特性に着目すると、上記緑色繭は、紫外線を照射した際に、蛍光色を発光する物質として捉えられ、これを利用して蛍光発色物質としての応用及び用途が可能となる。
本実施の形態に係る製品は、皮膚外用剤、化粧品などとして従来になく強力な紫外線遮蔽効果を発揮することが可能であり、液体のまま利用する製品には溶液のまま製品に適用することもできる。又、一度粉末などの固体にすると水に難溶性を示すため、ファンデーションなどのように難溶性の製品にはこの形態でも活用することができ、用途は広い。
また、皮膚に対する親和性が高いタンパク質などの物質が多く含まれており、皮膚などへの使用にも適し、例えば、ハゲ予防、ハゲの皮膚の保護、ひげ剃り後の皮膚の手入れなどにも利用できる。又、遮蔽能力が高いことから、医療用の創傷被覆素材としても有効である。
一方、蛍光発色物質としての用途には、管理用のスタンプ・タグ,光る花,消化器内物質移行実験用マーカー,鑑識用素材,装飾性の高い下着類,ウエディングドレス,ブーケ,結婚式等会場装飾素材,紙幣、チケット,入場者の識別,ネオン街の看板等を挙げることができる。
紫外線A照射による繭片の透過スペクトル図。 紫外線の各波長に対する透過率のデータ。 紫外線の各波長に対する透過率図。 アミノ酸組成表。 アミノ酸組成の棒グラフ。

Claims (2)

  1. 農家などが飼育する家蚕のうちの緑色繭を対象とし、該緑色繭からフィブロインを取り除いた成分を液体又は粉末化して成る特に315nm以上の紫外線を遮蔽する能力に優れる紫外線遮蔽剤。
  2. 農家などが飼育する家蚕のうちの緑色繭を対象とし、該緑色繭からフィブロインを取り除いた成分を液体又は粉末化して成る、紫外線を照射すると可視光線に蛍光する蛍光発色剤。
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