JP4539288B2 - 希土類焼結磁石 - Google Patents
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Description
そこで本発明は、応力付与に対する保護膜の剥離強度を確保することのできる希土類焼結磁石の提供を目的とする。また本発明は、そのような希土類焼結磁石の製造方法を提供することを目的とする。
この希土類焼結磁石において、保護膜の剥離強度の異方性は、希土類焼結磁石本体の表面粗さの異方性に基づくが、表面粗さの異方性に限らず、保護膜の形成方法によっても付与することができる可能性がある。
異方性化する処理としては、所定の一方向に沿って研磨を施す処理が最も簡易であり、例えばバーチカル研磨機により実行することができる。この所定方向に沿った研磨は、等法的(全方向)に研磨を施す場合に比べて、研磨コストが低減される。したがって、本発明によれば、応力付与に対する保護膜の剥離強度を確保することのできる希土類焼結磁石を低コストで提供することができる。
<希土類焼結磁石>
はじめに、本発明が対象とする希土類焼結磁石について説明する。
本発明は、R−T−B系焼結磁石に適用することが好ましい。R−T−B系焼結磁石は、耐食性が劣るために保護膜を形成することが必須といえるからである。このR−T−B系焼結磁石は、希土類元素(R)を25〜37wt%含有する。ここで、本発明におけるRはYを含む概念を有しており、したがってY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの1種又は2種以上から選択される。Rの量が25wt%未満であると、R−T−B系焼結磁石の主相となるR2T14B相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。一方、Rが37wt%を超えると主相であるR2T14B相の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。またRが酸素と反応し、含有する酸素量が増え、これに伴い保磁力発生に有効なRリッチ相が減少し、保磁力の低下を招く。したがって、Rの量は25〜37wt%とする。望ましいRの量は28〜35wt%、さらに望ましいRの量は29〜33wt%である。
本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、他の元素の含有を許容する。例えば、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。一方で、酸素、窒素、炭素等の不純物元素を極力低減することが望ましい。特に磁気特性を害する酸素は、その量を5000ppm以下、さらには3000ppm以下とすることが望ましい。酸素量が多いと非磁性成分である希土類酸化物相が増大して、磁気特性を低下させるからである。
R−Co系焼結磁石は、Rと、Fe、Ni、MnおよびCrから選ばれる1種以上の元素と、Coとを含有する。この場合、望ましくはさらにCuまたは、Nb、Zr、Ta、Hf、TiおよびVから選ばれる1種以上の元素を含有し、特に望ましくはCuと、Nb、Zr、Ta、Hf、TiおよびVから選ばれる1種以上の元素とを含有する。これらのうち特に、SmとCoとの金属間化合物、望ましくはSm2Co17金属間化合物を主相とし、粒界にはSmCo5系を主体とする副相が存在する。具体的組成は、製造方法や要求される磁気特性等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、R:20〜30wt%、特に22〜28wt%程度、Fe、Ni、MnおよびCrの1種以上:1〜35wt%程度、Nb、Zr、Ta、Hf、TiおよびVの1種以上:0〜6wt%、特に0.5〜4wt%程度、Cu:0〜10wt%、特に1〜10wt%程度、Co:残部の組成が望ましい。
以上、R−T−B系焼結磁石、R−Co系焼結磁石について言及したが、本発明は他の希土類焼結磁石への適用を妨げるものではない。
次に、本発明の最も特徴的な部分である表面粗さについて言及する。
本発明による希土類焼結磁石は、表面粗さに異方性を有する希土類焼結磁石本体の表面に保護膜が形成されている。
表面粗さに異方性を有するとは、所定方向に測定された表面粗さと、所定方向とは異なる方向に測定された表面粗さとに差異があることをいう。典型的には、図1に示すように、所定方向に測定された表面粗さRa1と、所定方向と直交する方向に測定された表面粗さRa2とに差異があるか否かで判断することができる。例えば、図1の白抜き矢印の方向にのみ、つまり一方向にのみ研磨を行った場合、一般的に、表面粗さRa1より表面粗さRa2が大きくなり、表面粗さに異方性を有することになる。もっとも、一方向のみに研磨する場合以外でも、表面粗さに異方性を付与することができる。この表面粗さの異方性は、研磨痕が当該研磨方向に沿って形成されていることによっても把握することができる。
なお、Ra1、Ra2は、0.2〜5.0μmの範囲とする。
本発明の希土類焼結磁石は、以上のような表面粗さ状態を有する希土類焼結磁石本体の表面に保護膜が形成されている。
本発明で用いる保護膜は特に限定されないが、特に電解めっきによる保護膜を用いるのが好ましい。電解めっきの材質としては、Ni、Ni−P、Cu、Zn、Cr、Sn、Alのいずれかを用いることができるし、他の材質を用いることもできるが、Niが最も好ましい。また、これらの材質を複層として被覆することもできる。電解めっきによる保護膜は本発明の典型的な形態であるが、他の手法による保護膜を設けることもできる。他の手法による保護膜としては、無電解めっき、クロメート処理をはじめとする化成処理及び樹脂塗装膜のいずれか又は組み合せが実用的である。保護膜の厚さは、希土類焼結磁石本体のサイズ、要求される耐食性のレベル等によって変動させる必要があるが、1〜100μmの範囲で適宜設定すればよい。望ましい保護膜の厚さは1〜50μmである。
以下、本発明によるR−T−B系焼結磁石の好適な製造方法について工程順に説明する。
原料合金は、真空又は不活性ガス、望ましくはAr雰囲気中でストリップキャスト法、その他公知の溶解法により作製することができる。ストリップキャスト法は、Arガス雰囲気などの非酸化性雰囲気中で溶解して得た原料金属の溶湯を回転するロールの表面に噴出させる。ロールで急冷された溶湯は、薄板または薄片(鱗片)状に急冷凝固される。この急冷凝固された合金は、結晶粒径が1〜50μmの均質な組織を有している。原料合金は、ストリップキャスト法に限らず、高周波誘導溶解等の溶解法によって得ることができる。なお、溶解後の偏析を防止するため、例えば水冷銅板に傾注して凝固させることができる。また、還元拡散法によって得られた合金を原料合金として用いることもできる。
R−T−B系焼結磁石を得る場合、R2T14B結晶粒を主体とする合金(低R合金)と、低R合金よりRを多く含む合金(高R合金)とを用いる所謂混合法を本発明に適用することもできる。
磁場中成形における成形圧力は0.3〜3ton/cm2(30〜300MPa)の範囲とすればよい。成形圧力は成形開始から終了まで一定であってもよく、漸増または漸減してもよく、あるいは不規則変化してもよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足してハンドリングに問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、通常、50〜60%である。
印加する磁場は、12〜20kOe(960〜1600kA/m)程度とすればよい。印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状の磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場を併用することもできる。
焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。この工程は、保磁力を制御する重要な工程である。時効処理を2段に分けて行なう場合には、800℃近傍、600℃近傍での所定時間の保持が有効である。800℃近傍での熱処理を焼結後に行なうと、保磁力が増大するため、混合法においては特に有効である。また、600℃近傍の熱処理で保磁力が大きく増加するため、時効処理を1段で行なう場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。
Niの電解めっきに用いるめっき浴としては、塩化ニッケルを含有しないワット浴(すなわち、硫酸ニッケルおよびほう酸を主成分とする)、スルファミン酸浴、ほうフッ化浴、臭化ニッケル浴などが挙げられる。ただし、この場合、陽極の溶解が少なくなるため、ニッケルイオンを浴に補充することが好ましい。ニッケルイオンは、硫酸ニッケルあるいは臭化ニッケルの溶液として補充するのが好ましい。
次いで、室温にて原料合金に水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気中で600℃×1時間の脱水素を行う水素粉砕処理を行った。
水素粉砕処理が施された合金に、粉砕性の向上並びに成形時の配向性の向上に寄与する潤滑剤を0.05〜0.1%混合した。潤滑剤の混合は、例えばナウターミキサー等により5〜30分間ほど行う程度でよい。その後、ジェットミルを用いて平均粒径が5.0μmの微粉砕粉末を得た。
研磨後に表面粗さを測定した。測定には触針式の表面粗さ計を用い、JIS−B0601に示される算術平均粗さRaを求めた。
表面粗さの測定は以下のように行った(図2参照)。はじめに、所定方向について表面粗さを測定した。次いで、焼結体を10°回転し、再び表面粗さを測定した。この操作を繰り返し、180°の範囲について測定し、1つの焼結体について複数の表面粗さを測定した。なお、10°はあくまで一例であって、10°未満あるいは10°超で行っても構わない。以上の測定結果について、最もRaが小さい方向をxとし、xと直交する方向yとする。また、x方向及びy方向における表面粗さRaをRa−x及びRa−yとする。
Niめっき形成後に、x方向およびy方向について剥離強度を測定した。それぞれの剥離強度をSxおよびSyとする。なお、剥離強度はJIS−H8504に記載された方法に準じて測定した。以上の結果を表1に示す。
また、以上の試料について塩水噴霧試験により耐食性を評価した。塩水噴霧試験は、35℃の5%NaCl水溶液中に240時間浸漬する条件で行ったが、全ての試料について発錆等の異常は観察されなかった。
表1に示すように、試料a−1、b−1、c−1及びd−1のRa−y/Ra−x及びS−yを比較すると、Ra−y/Ra−xが大きくなるにしたがって、Syが大きくなることがわかる。同様に、試料a−2、b−2、c−2及びd−2、a−3、b−3、c−3及びd−3、a−4、b−4、c−4及びd−4のRa−y/Ra−x及びS−yを比較すると、Ra−y/Ra−xが大きくなるにしたがって、S−yが大きくなることがわかる。このように、表面粗さRaに異方性があると、その異方性の程度に応じて剥離強度が変化した。
前述した圧入されるタイプの希土類焼結磁石は圧入時にその方向に応力が付与される。このとき保護膜が剥離することは好ましくない。また、接着剤などで接着された磁石などは、その使用環境にもよるが、ある方向にだけ応力が付与されることがほとんどである。その応力は装置の回転力であったり重力であったり様々である。そのような場合にも、保護膜の剥離強度はある方向にだけ十分に高ければよい。
Claims (8)
- 表面粗さに異方性を有する希土類焼結磁石本体と、
前記希土類焼結磁石本体の表面に形成された保護膜と、
を備え、
前記希土類焼結磁石本体の表面の所定方向の表面粗さRa(算術平均粗さ)をRa1、
前記所定方向と直交する方向の表面粗さRa(算術平均粗さ)をRa2とすると、
Ra2≧1.1×Ra1の異方性を有し、
Ra1、Ra2は、0.2〜5.0μmの範囲であることを特徴とする希土類焼結磁石。 - Ra2≧1.2×Ra1の異方性を有することを特徴とする請求項1に記載の希土類焼結磁石。
- 表面粗さRaの中で最も小さい表面粗さRaの方向をx方向とし、この方向と直交する方向をyとし、x方向の表面粗さRaをRa−x、y方向の表面粗さRaをRa−yとすると、
Ra−y≧1.4×Ra−xの異方性を有することを特徴とする請求項1に記載の希土類焼結磁石。 - 前記希土類焼結磁石本体の表面は、所定の一方向に沿った研削痕が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の希土類焼結磁石。
- 前記保護膜の剥離強度が、前記所定方向と直交する方向とで異方性を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の希土類焼結磁石。
- 希土類焼結磁石本体と、
前記希土類焼結磁石本体の表面に形成された保護膜と、を備え、
前記保護膜の剥離強度に異方性を有し、
前記希土類焼結磁石本体の表面の所定方向に沿った前記保護膜の剥離強度をS1、
前記所定方向と直交する方向に沿った前記保護膜の剥離強度をS2とすると、
前記保護膜は、S2≧1.1×S1の剥離強度の異方性を有することを特徴とする希土類焼結磁石。 - 前記保護膜の剥離強度の異方性は、前記希土類焼結磁石本体の表面粗さの異方性に基づくことを特徴とする請求項6に記載の希土類焼結磁石。
- 前記希土類焼結磁石本体の表面の前記所定方向の表面粗さRa(算術平均粗さ)をRa1、
前記所定方向と直交する方向の表面粗さRa(算術平均粗さ)をRa2とすると、
前記希土類焼結磁石本体の表面がRa2≧1.1×Ra1の異方性を有する請求項6又は7に記載の希土類焼結磁石。
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