JP4539866B2 - 転舵装置 - Google Patents
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Description
この転舵装置では、左右制動力差を推定し、その左右制動力差に起因するヨーモーメントを打ち消す方向に制動力差制御量を演算する。そして、制動力差制御量を転舵制御量に加算して車輪の転舵角を制御している。
また、特許文献2には、転舵アクチュエータが失陥した場合に、失陥していない残りの転舵アクチュエータを制御して、車両の偏向を修正する4輪独立転舵装置が提案されている。
この場合、転舵不能輪に所定のスリップ角が発生するように、転舵不能輪以外の転舵アクチュエータを駆動制御して車体にスリップ角を発生させる。
従って、制動時には、転舵不能輪を転舵制御できなくても、その車体スリップ角を維持したまま他の正常輪の転舵制御により転舵不能輪を含む左右前後輪にて車両に発生するヨーモーメントを抑え、かつ、大きな減速Gを得ることができる。
例えば、制動時に転舵不能輪も含めた左右前後輪で各車輪に発生するヨー方向分力を互いに打ち消しあい、かつ略最大の減速Gが得られるような左右前後輪毎の車両進行方向に対する最適角度を左右摩擦係数相違状態に応じて求め、転舵不能輪におけるこの最適角度が転舵不能輪の車輪スリップ角となるように正常な転舵アクチュエータを駆動制御して車体にスリップ角を与える。そして、実際の制動時には、正常輪をこの求められた最適向きに転舵する制動時転舵制御手段を備えるとよい。
この結果、μスプリット路を走行中に後輪の一方が転舵不能になっても、車両の挙動を安定させた状態で早く車両を停止させることができ安全性が向上する。
この上下一対のサスペンションアーム12a1,12b1,12c1,12d1は、それぞれその先端部に設けたボールジョイント13a,13b,13c,13dを介してナックル11a,11b,11c,11dを連結し、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrを鉛直軸回りに回転可能に支持する。
尚、サスペンションアーム12a1,12b1,12c1,12d1の下段アームと車体BDとの間には、図示しないが、路面から受ける衝撃を吸収し乗心地を高めるバネ装置と、バネ装置の上下振動に対して減衰力を発生させるショックアブソーバとを備える。
車輪舵角センサ42a,42b,42c,42d(以下、これらを総称するときは単に車輪舵角センサ42と呼ぶ)は、転舵アクチュエータ15a,15b,15c,15d(以下、これらを総称するときは単に転舵アクチュエータ15と呼ぶ)に組み込まれて、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの中立位置からの転舵角δfl,δfr,δrl,δrr(以下、これらを総称するときは単に転舵角δと呼ぶ)を検出する。
車輪速センサ47a,47b,47c,47dは、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrのそれぞれの回転速度を検出し車輪速信号ωfl,ωfr,ωrl,ωrrとして出力する。
まず、制動時に発生する車両のヨーモーメントについて説明する。
図2(a)は、右側接地路面が左側接地路面に比べて車輪Wとの摩擦係数μが大きい路面(以下、右高μスプリット路と呼ぶ)を走行中において、ブレーキ制動を加えたときの各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに働く力を表したものである。この図からわかるように、ブレーキ制動力が車輪に加わると、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrには後方への制動力だけでなく破線矢印に示すヨー方向分力Yfl,Yfr,Yrl,Yrrが働く。従って、右高μスプリット路においては、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに働くヨー方向分力Yfl,Yfr,Yrl,Yrrにより車両には右方向にヨーモーメント(車両重心を通る鉛直軸まわりの車両回転力)が生じる。
例えば、図3(a)に示すように、右高μスプリット路を走行中に、右後輪Wrrが転舵不能となり車体前後方向に対して内向き(トーイン)にロックしてしまった場合には、転舵不能輪Wrrに内向きの力が発生して車両にヨーモーメントが発生する。そこで、左後輪転舵アクチュエータ15cを駆動制御して左後輪Wrlも内側に転舵することで、左後輪Wrlに内向きの力を発生させて、転舵不能輪Wrrの内向きの力を相殺し車両のヨーモーメントを消して車体スリップ角を0にすることができる。
しかしながら、このように車体スリップ角を0にしたまま、正常である3車輪Wfl,Wfr,Wrlを使って各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに発生するヨー方向分力Yfl,Yfr,Yrl,Yrrが互いに打ち消しあうように転舵制御した場合、減速Gを大きくすることができない。なぜなら、本来転舵不能輪Wrrで発生させるヨー方向打消し分力Yrrを正常輪Wfl,Wfr,Wrl側にて補うようにしなければならないからである。
つまり、転舵不能輪Wrrを摩擦係数(μl,μr)に応じた最適舵角に制御する代わりに、転舵不能輪Wrrが車両進行方向に対して最適車輪スリップ角α*が得られるように正常輪Wfl,Wfr,Wrlの転舵角δfl,δfr,δrlを制御して車体BDの向きを調整するのである。
車両進行方向に対する右方向の車体スリップ角βは、車輪舵角センサ42dにより検出される転舵不能輪Wrrの左向きの転舵角δK(以下、故障舵角δKと呼ぶ)と、転舵不能輪Wrrの車両進行方向に対する外向きの最適車輪スリップ角α*との和により求められる。
β=δK+α*
このマップから分かるように、転舵不能輪側の摩擦係数が左右反対輪側の摩擦係数よりも大きく、しかも摩擦係数の相違度が大きいほど、最適車輪スリップ角α*は車両進行方向に対して大きく外側に向けて設定され、逆に、転舵不能輪側の摩擦係数が左右反対輪側の摩擦係数よりも小さく、しかも摩擦係数の相違度が大きいほど、最適車輪スリップ角α*は車両進行方向に対して大きく内側に向けて設定される。
そして、図3(c)に示すように、算出された車体スリップ角βにて車両走行を行う。つまり、ブレーキ制動に備えて、転舵不能輪Wrrの方向を、制動時に4輪Wにてヨーモーメントを打ち消す方向に前もって向けておく。この場合、左右前輪Wfl,Wfrは、車体スリップ角βと等しい角度の転舵角δfl,δfrで左方向に転舵される。
従って、正常である3輪Wfl,Wfr,Wrlだけでなく転舵不能輪Wrrをも有効に利用して、車両のヨーモーメントを消すとともに大きな減速Gを発生させることが可能となる。この結果、制動時に車両の挙動を安定させることができると共に、早く車両を停止させることができ、安全性が向上する。
図4(a)は、右高μスプリット走行中に右後輪Wrrが大きくトーアウトしてロックしたときの各車輪Wの状態を表す。
この場合、転舵不能輪Wrrの左右反対輪となる左後輪Wrlを転舵アクチュエータ15cによりトーアウトにして車体スリップ角を0にするが、転舵不能輪Wrrのトーアウト角が大きいため、左右の摩擦係数の相違度が大きい場合には左後輪Wrlの操舵制御でも補正しきれない。従って、自然に転舵不能輪Wrrのスリップ角が小さくなる方向に車体BDが傾く。
この場合、車両進行方向に対して、車体BDは左向きに、転舵不能輪Wrrは外側に向けられる。そして、車両進行方向に対する左方向の車体スリップ角βは、転舵不能輪Wrrの右向きの故障転舵角δKと、転舵不能輪Wrrの車両進行方向に対する外向きの最適車輪スリップ角α*との差により求められる。
β=δK−α*
従って、図4(c)に示すように、ブレーキ制動時に各車輪Wを摩擦係数(μl,μr)に応じた最適転舵角に調整したときに、転舵不能輪Wrrを転舵できなくても、転舵不能輪Wrrを含む4輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrにより各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに発生するヨー方向分力Yfl,Yfr,Yrl,Yrrが互いに打ち消され、かつ4輪にて最も大きな減速Gが得られる。この結果、制動時における車両挙動の安定性と良好な減速性能とを両立することができ安全性が向上する。
図5(a)は、右高μスプリット走行中に左後輪Wrlがトーアウトしてロックしたときの各車輪Wの状態を表す。
この場合、転舵不能輪Wrlの左右反対輪となる右後輪Wrrを転舵アクチュエータ15dによりトーアウトにすることで車体スリップ角を0にすることができる。
しかしながら、図5(b)に示すように、制動時には、転舵不能輪Wrlで反時計回りのヨー方向分力Yrlを発生させにくく、車両のヨーイングを防止するためには、他の3輪Wfl,Wfr,Wrrにて車両のヨーモーメントが打ち消されるように転舵角を調整する必要がある。
従って、他の3輪Wfl,Wfr,Wrrが転舵不能輪Wrlのヨー方向分力の不足分を補う分だけ減速方向分力(実線矢印の後ろ向き成分)が少なくなり減速Gが小さくなってしまう。
この場合、車両進行方向に対して、車体BDは右向きに、転舵不能輪Wrrは内側に向けられる。そして、車両進行方向に対する右方向の車体スリップ角βは、転舵不能輪Wrlの左向きの故障転舵角δKと、転舵不能輪Wrlの車両進行方向に対する内向きの最適車輪スリップ角α*との和により求められる。
β=δK+α*
この場合、左右前輪Wfl,Wfrは、車体スリップ角βと等しい角度の転舵角δfl,δfrで左方向に転舵される。
従って、ブレーキ制動時には、図5(d)に示すように、各車輪Wを摩擦係数(μl,μr)に応じた最適転舵角に調整するが、転舵不能輪Wrlを転舵できなくても、転舵不能輪Wrlを含む4輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrにより各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに発生するヨー方向分力Yfl,Yfr,Yrl,Yrrが互いに打ち消され、かつ4輪にて最も大きな減速Gが得られる。この結果、制動時における車両挙動の安定性と良好な減速性能とを両立することができ安全性が向上する。
路面と車輪との間の摩擦係数を検出(推定も含む)する技術としては、種々知られている。
例えば、制動力を付与したときの車輪のスリップ状態から路面摩擦係数を求める手法(特開2001−315633)や、自動ブレーキ制動時における車輪速の時間変化から路面摩擦係数を求める手法(特開2001−354129)など挙げられる。従って、こうした技術を用いて左側輪と右側輪とで路面摩擦係数を別々に求めることで、左右の摩擦係数の相違状態を検知することができる。
他にも、4輪における路面摩擦係数を高精度に推定するものとして、4輪に設けた車輪速センサから出力された各車輪の車輪速信号ωに基づいて車輪速振動Δωを求め、この車輪速振動Δωから路面μ勾配と車輪の振動レベルとを演算し、演算された路面μ勾配と車輪の振動レベルとに基づいて各車輪と路面との間の路面摩擦係数を推定する路面摩擦係数決定装置が知られている(特開2002−274356)。
また、μスプリット路を検出する技術として、4輪の車輪速を個別に検出する手段と、各車輪のスリップ状態が基準状態を超えたことを検出するスリップ検出手段とを備え、スリップ状態の検出された車輪の順序が左前輪と左後輪(又は右前輪と右後輪)が1番目と2番目であり、かつ、左右前輪の速度差および左右後輪の速度差が設定値以上のときに、μスプリット路を走行中であると判断するものも知られている(特開平5−178181)。
本実施形態においては、こうした技術のいずれを用いてもよく、要求精度に応じて選択すればよい。また、これらの技術に限定するものでもない。
図6は、転舵制御装置40が実行する後輪故障時転舵制御ルーチンを表すもので、転舵制御装置40の図示しない記憶素子内に制御プログラムとして記憶される。
この後輪故障時転舵制御ルーチンは、イグニッションオン操作により起動し所定の短い周期で繰り返し実行される。
ステップS12において、転舵不能状態が検出されなければ、本制御ルーチンを一旦終了する。
本制御ルーチンは、繰り返し実行され、ステップS12においての判断が「YES」、つまり後輪の片側一方が転舵不能となったと判断した場合には、その処理をステップS13に進める。
以下、転舵不能になった車輪を転舵不能輪WKと呼び、その転舵不能輪WKの左右反対側の車輪を左右反対輪W0と呼ぶ。
この場合、ステップS13では、こうした演算処理をこの時点で行うわけではなく、予めブレーキ制動が働いた都度、摩擦係数(μl,μr)を算出して更新記憶するようにし、この記憶した最新の摩擦係数(μl,μr)データを読み出すようにする。
続いて、推定した摩擦係数(μl,μr)に基づいて、車両がμスプリット路を走行中であるか否かを判断する(S14)。例えば、左車輪Wfl,Wrl側の摩擦係数μlと右車輪Wfr,Wrr側の摩擦係数μrとの差(|μl−μr|)あるいは比(μl/μrまたはμr/μl)が基準値以上か否かにより判断する。
一方、ステップS14において、μスプリット路であると判断した場合には、次に、最適車体スリップ角βを算出する(S16)。
この場合、種々のパターンの摩擦係数(μl,μr)における4輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの最適転舵角δfl*,δfr*,δrl*,δrr*を予め収束計算により求めておき、その結果を算出マップとして転舵制御装置40内の記憶素子に記憶しておいて、走行中には算出マップを参照して各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの最適転舵角δfl*,δfr*,δrl*,δrr*を算出するようにしてもよい。
そして、最適車体スリップ角βは、車輪舵角センサ42により検出される転舵不能輪WKの故障舵角δKと、転舵不能輪WKの車両進行方向に対する最適車輪スリップ角α*との加減算により求められる。
ステップS16の算出処理が終了すると、次に、その算出された最適車体スリップ角βとなるように他の3輪Wを転舵する。図3(c)、図4(b)、図5(c)は、その状態を表す一例である。
ブレーキ制動が働かない間は、上述した処理を繰り返す。そして、ブレーキ制動が働くと(S18:YES)、例えば、図3(d)、図4(c)、図5(d)に示すように、転舵アクチュエータ15を駆動して正常輪Wを最適転舵角に転舵する。つまり、ステップS16にて最適車体スリップ角βを求める過程で算出した各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの最適転舵角δfl*,δfr*,δrl*,δrr*を目標転舵角として転舵アクチュエータ15を駆動制御する。
この結果、制動時における車両挙動の安定性と良好な減速性能とを両立することができ安全性が向上する。
例えば、本実施形態における後輪故障時転舵制御ルーチンにおいては、ヨー方向分力だけでなく横方向分力も合計が0となるように目標車体スリップ角βを求めているが、横方向分力については省略した形態を採用してもよく、また、必ずしも分力の合計を0にする必要もなく、車両のヨーイングを発生させない程度で大きな減速Gが得られる目標車体スリップ角βを算出してもよい。
Claims (2)
- 前後左右輪の転舵角を独立して調整する転舵アクチュエータと、
上記転舵アクチュエータを駆動制御する転舵制御手段と
を備えた転舵装置において、
後輪の左右いずれか一方が転舵不能となる転舵異常を検出する転舵異常検出手段と、
左側輪と右側輪とにおける接地路面との間の摩擦係数の相違状態を検出する左右摩擦係数相違状態検出手段と、
上記転舵異常検出手段により上記後輪の左右いずれか一方の転舵異常が検出されたとき、上記左右摩擦係数相違状態検出手段により左側輪と右側輪とにおける接地路面との間の摩擦係数が相違していると判断された場合には、転舵不能となっている車輪以外の上記転舵アクチュエータを駆動制御して、上記転舵不能となった車輪が車両進行方向に対して所定の車輪スリップ角が得られるように車体にスリップ角を与える異常時転舵制御手段と
を備えたことを特徴とする転舵装置。 - 上記異常時転舵制御手段は、
上記転舵不能となった車輪の目標車輪スリップ角を、上記転舵不能輪の接地路面との摩擦係数がその左右反対側輪の接地路面との摩擦係数に対して大きい場合には、その相違度合が大きいほど車両進行方向よりも外側に向けて設定し、上記転舵不能輪の接地路面との摩擦係数がその左右反対側輪の接地路面との摩擦係数に対して小さい場合には、その相違度合が大きいほど車両進行方向よりも内側に向けて設定する目標車輪スリップ角設定手段と、
上記転舵不能輪の転舵角を検出する転舵角検出手段と
を備え、上記目標車輪スリップ角設定手段により設定された目標車輪スリップ角と、上記舵角検出手段により検出された転舵不能輪の転舵角とに基づいて車体スリップ角を決定することを特徴とする請求項1記載の転舵装置。
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