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JP4540554B2 - フッ素汚染土壌の処理方法 - Google Patents
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本発明は、フッ素化合物により汚染された土壌を物理化学的に浄化するフッ素汚染土壌の処理方法に関する。本発明に係るフッ素汚染土壌の処理方法は、たとえばフッ化水素酸等に汚染された土壌の浄化に好適に用いることができる。
フッ素は、例えば半導体工場の洗浄工程などでフッ化水素酸等として多用されている。このようなフッ素化合物は、時として、タンクの破損やタンクへの移し変え時の事故などにより地中に漏洩して土壌のフッ素汚染を引き起こすことがある。フッ素が多量に体内に取り込まれるとたんぱく質分解酵素や解糖系の酵素を不活化することに起因する急性毒性を示すばかりでなく、骨フッ素症や斑状歯等の障害を与えることも指摘されている。このため、土壌中のフッ素溶出濃度は環境基準値として0.8mg/L以下と規定されているが、現状では掘削を伴う土壌洗浄に頼るしか手段がなかった。しかしながら近年、フッ素汚染土壌の浄化方法として従来の水処理分野で応用されていた、フッ化物イオンと共にカルシウムイオン、リン酸イオンを共存させることによりフッ素イオンを溶解度の低いフルオロアパタイトとして土壌中に固定化し、溶出を防止する技術が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
特開2002−331272号公報 特開2004−305833号公報
上記手法においてカルシウムイオン源としては安価で溶解度の高い塩化カルシウムが多用されている。リン源としては溶解度の観点からはナトリウム塩を使用することが好ましい。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムが挙げられるが、リン酸三ナトリウムは水に溶解すると強アルカリ性を示すため、使用に注意が必要であり、また、塩化カルシウムとの反応後も土壌がアルカリ性を示し、フルオロアパタイトのフッ素がヒドロキシル基と置換してフッ素が溶出するため、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムが好適に使用される。しかしながら、リン源として弱アルカリ性物質であるリン酸水素二ナトリウムやリン酸二水素ナトリウムを使用した場合、反応式は以下のようになり、塩酸を生じるため、結果として土壌のpHが低下する。
10CaCl2+6Na2HPO4+2NaF →Ca10(PO4)6F2+14NaCl+6HCl
(リン酸水素二ナトリウム使用)
10CaCl2+6NaH2PO4+2NaF →Ca10(PO4)6F2+8NaCl+12HCl
(リン酸二水素ナトリウム使用)
上記のようにpHが低下して土壌が酸性化すると、植物の成長阻害、フルオロアパタイトからのフッ素の再溶出、土壌中重金属類の溶出等、好ましくない影響を及ぼす。また、カルシウム源として水酸化カルシウムを使用した場合には、リン酸塩や土壌中共存物質、土壌のpH緩衝能力等により非常にタイトな調整を行わないと処理後の土壌pHを中性付近に調整することは非常に困難となる。土壌中の構造は一様ではなく、薬剤の注入も必ずしも設定値通りに注入することは困難である。このため、特に土壌の掘削を伴わずに土壌中に薬剤を添加して混合する原位置浄化法においては実質上、これまでの手法においてはpHのコントロールを行うことが困難であった。
そこで本発明の課題は、上記のような現状に鑑み、土壌のpHを適切な値に保ちつつフッ素の溶出を防止することを可能とする、フッ素汚染土壌の処理方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために、フッ素で汚染された土壌中にカルシウム化合物およびリン酸化合物を添加して土壌中にリン酸イオンおよびカルシウムイオンを解離状態で存在させることにより、土壌中で速やかに水に不溶性のカルシウムフルオロアパタイトを形成させて土壌からのフッ素溶出濃度を低減させることが可能であることが報告されていることに着目し、本手法においてカルシウム源としては安価で溶解度の高い塩化カルシウムが好適に使用されるが、これと共に水に対して難溶解性のカルシウム化合物を添加し、反応により生成した塩酸をこの難溶解性のカルシウム化合物と反応させることによってpHを中性付近に維持することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るフッ素汚染土壌の処理方法は、カルシウム化合物およびリン酸化合物をフッ素を含有する土壌中に添加してフッ素イオンの溶出を防止するフッ素汚染土壌の処理方法であって、カルシウム化合物として塩化カルシウム炭酸カルシウム混合して添加した後に、リン酸化合物としてリン酸水素二ナトリウムもしくはリン酸二水素ナトリウムを添加することを特徴とする方法からなる。
また、塩化カルシウム炭酸カルシウムを混合スラリーとして土壌に供給することもできる。
本発明に係るフッ素汚染土壌の処理方法によれば、カルシウム化合物およびリン酸化合物を添加するに際し、カルシウム化合物として溶解性のカルシウム化合物と難溶解性のカルシウム化合物を組み合わせて添加することにより、反応により生成した塩酸を難溶解性のカルシウム化合物と反応させることによってpHを中性付近に維持することが可能となり、土壌の酸性化に伴う問題を回避しつつ、汚染土壌を適切に浄化することができる。
このような本発明に係る方法は、土木用重機を使用することにより原位置での施工が可能であるため、既存の方法と比較してもコスト的に優位である。
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明での浄化対象とする土壌は、フッ素化合物により汚染された土壌、底質等であり、本願ではこれらを総称してフッ素汚染土壌と呼ぶ。以下に、フッ化水素により汚染された土壌の浄化を例にとって詳細に説明する。
本発明においては、例えば、フッ素に汚染された土壌部位を特定した後、浄化対象範囲を決定する。次に、処理対象となる土壌に対して、水に対して溶解性のカルシウム塩としての塩化カルシウムおよび難溶解性のカルシウム塩としての炭酸カルシウムを同時に添加する。また固体、スラリーによる添加が考えられ、いずれの方法によっても土壌中への添加が可能であるが、特に土壌の掘削を伴ず、地中混練機等を用いて原位置での施工を行う場合にはそれぞれのカルシウム塩を混合し、スラリーとして注入する方法が好適に採用される。
このとき、溶解性のカルシウム塩とし塩化カルシウム使用、難溶解性のカルシウム塩とし炭酸カルシウム使用る。カルシウム塩のそれぞれの添加量は、土壌中のフッ素濃度によって決定すればよいが、一般的には塩化カルシウムとしては土壌1tあたり1〜350kg (より望ましくは5〜200kg-Ca塩/t−土壌)、炭酸カルシウムとしては土壌1tあたり1〜200kg (より望ましくは5〜100kg-Ca塩/t−土壌)の範囲で添加が行われる。カルシウム塩の混合を行った後、リン酸塩の添加を行うが、ここでは中性付近のリン酸塩としてリン酸水素二ナトリウムもしくはリン酸二水素ナトリウム使用る。これらのリン酸塩固体、水溶液、スラリー等により土壌中に供給することが可能であるが、リン酸塩は比較的溶解度が高く、また、スラリーにすることが比較的困難であるため、水溶液として添加することが簡便である。リン酸塩添加量もカルシウム塩添加量と同様に土壌中のフッ素濃度により決定されるが、おおむね土壌1tあたりリン酸塩として0.5〜100kg(より望ましくは2〜50kg)の範囲で添加される。
上記化合物の混合方法に特に限定はないが、掘削した場合には二本以上の軸を有した混合機もしくはハンマークラッシャータイプの混合機が好適に使用できる。また、本発明においては上記化合物を混合するだけで浄化が可能であるため、掘削を行わず原位置で混合を行うことがコストおよび浄化期間短縮の面で特に有効である。混合機としては一般的な土壌改良用の重機を使用することができる。
このようにしてカルシウム化合物およびリン酸化合物を土壌中に添加すると、可溶性のフッ素イオンと反応し、難溶性のカルシウムフルオロアパタイトCa10(PO4)6F2 を土壌中で形成する。したがって、カルシウム化合物の添加量は土壌中のフッ素含有量もしくは溶出量によって決定され、通常はカルシウムイオンとしてフッ素溶出モル濃度の10倍〜1000倍の間となるように添加される。また、リン酸化合物添加量も同様にフッ素含有量もしくは溶出量によって決定され、通常はリン酸イオンとしてフッ素溶出モル濃度の5倍〜500倍の間となるように添加される。土壌中に添加されたカルシウムイオンおよびリン酸イオンは土壌中のフッ素イオンと反応してフルオロアパタイトを形成するほか、過剰に添加された分についてはカルシウムヒドロキシアパタイトやリン酸カルシウムを形成して不溶化するが、リン酸のモル比が高い場合にはリン酸が遊離状態で存在し、容易に地下水中に溶け込み、富栄養化等の原因となるため、リン酸イオン2に対してカルシウムを3以上添加することが特に望ましい。また、これらの添加量は土壌中に予めカルシウム化合物もしくはリン酸化合物が存在する場合にはこれらの濃度を加味して決定することができる。
以下に、本発明方法を用いて行った実施例を示す。なお、この実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1、2、比較例1〜3
フッ素模擬汚染土壌を処理した。模擬汚染土壌としては、市販の川砂と粘土を混合して作製した人工土壌に対してNaFをフッ素として100mg/kgとなるように添加、混合して約1週間保存したものをフッ素の模擬汚染土壌として使用した。フッ素の固定化については、比較例1(純水添加)以外、上記の模擬汚染土壌200gに対して下記所定量のCaCl2およびCaCO3を用いて作製したスラリーと、NaH2PO4を添加してよく混合した水溶液とを使用した。
試験条件は以下の通りである。
1:フッ素汚染土壌200gに対して純水40mL添加(比較例1)
2:フッ素汚染土壌200gに対してスラリー状にしたCaCl2(CaCl2として5.8g)を添加後直ちにNaH2PO4溶液(NaH2PO4として2.25g)を添加し一晩静置(比較例2)
3:フッ素汚染土壌200gに対してスラリー状にしたCaCO3(CaCO3として1.0g)を混合した後、NaH2PO4溶液(NaH2PO4として2.25g)を添加して一晩静置(比較例3)
4:フッ素汚染土壌200gに対してNaH2PO4溶液(NaH2PO4として2.25g)を混合した後、スラリー状にしたCaCl2(CaCl2として5.8g)およびCaCO3(CaCO3として1.0g)を混合したものを添加して一晩静置(参考例1)
5:フッ素汚染土壌200gに対してスラリー状にしたCaCl2(CaCl2として5.8g)およびCaCO3(CaCO3として1.0g)を混合したものを添加後、NaH2PO4溶液(NaH2PO4として2.25g)を添加し一晩静置(実施例2)
<溶出試験>
検液は、環境庁告示第46号(平成3年)に示された方法に従い、土壌を純水中に重量比で10%となるように添加し、6時間振とうして溶出させたのち、上澄み液を径45μmのメンブレンフィルターで濾過して作製した。また、フッ素濃度はJIS K0102(1998)に記載のランタン−アリザリンコンプレキソン吸光光度法により測定した。試験結果を表1に示す。
Figure 0004540554
表1に示すように、カルシウム化合物およびリン化合物を添加していない比較例1に対して、溶解性カルシウム化合物およびリン酸化合物を添加した比較例2、参考例1および実施例2においてはフッ素溶出量の環境基準値である0.8mgF/L以下までの処理が可能であった。しかしながら、比較例2においてはpHの低下が確認され、土壌のpH緩衝能力の低下および土壌中の重金属溶出の促進等、環境負荷を増大させる恐れがあることが想定された。また、リンの溶出量も増大しており、地下水中の富栄養化を引き起こす可能性がある。一方、難溶解性のカルシウム化合物のみを使用した比較例3に関してはフッ素の溶出濃度が高く、環境基準値までの処理は困難であり、未反応のリン酸塩も残存していることが確認された。溶解性カルシウム化合物および難溶解性カルシウム化合物を添加した参考例1および実施例2についてはフッ素溶出濃度も低く、pHも中性付近に適切に調整されていることが分かった。参考例1においてはリンの溶出濃度が若干高く、実施例2のようにカルシウム化合物を予め混合した後にリン酸化合物を添加することがより望ましいことを確認した。
このように、フッ素汚染土壌に対してカルシウム化合物およびリン酸化合物を適切に添加、混合することによりフッ素の溶出を抑制することが可能であった。

Claims (3)

  1. カルシウム化合物およびリン酸化合物をフッ素を含有する土壌中に添加してカルシウムフルオロアパタイトを形成させることによりフッ素イオンの溶出を防止するフッ素汚染土壌の処理方法であって、カルシウム化合物として塩化カルシウム炭酸カルシウム混合して添加した後に、リン酸化合物としてリン酸水素二ナトリウムもしくはリン酸二水素ナトリウムを添加することを特徴とするフッ素汚染土壌の処理方法。
  2. 前記カルシウム化合物および前記リン酸化合物を、前記土壌中に原位置で添加する、請求項1に記載のフッ素汚染土壌の処理方法。
  3. 前記塩化カルシウムと前記炭酸カルシウムを、水とのスラリーの状態で混合して添加する、請求項1または2に記載のフッ素汚染土壌の処理方法。
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