JP4547840B2 - 永久磁石およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、R(Rは、希土類元素の少なくとも1種である)、T(Tは、Fe、またはFeおよびCoである)およびBを含有するR2T14B系の希土類焼結磁石と、その製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
高性能を有する希土類金属磁石としては、粉末冶金法によるSm−Co系磁石でエネルギー積32MGOeのものが量産されている。しかし、このものは、Sm、Coの原料価格が高いという欠点を有する。希土類元素の中では原子量の小さい元素、例えば、CeやPr、Ndは、Smよりも豊富にあり価格が安い。また、FeはCoに比べ安価である。
【0003】
そこで、近年Nd2Fe14B磁石等のR2Fe14B磁石が開発され、特開昭59−46008号公報には焼結磁石が開示されている。焼結法による磁石では、従来のSm−Co系の粉末冶金プロセス(溶解→鋳造→インゴット粗粉砕→微粉砕→プレス→焼結→磁石)を適用でき、また、高い磁気特性を得ることも容易である。R−Fe−B磁石を焼結法により製造する場合、通常、製造される磁石と同一組成のR2Fe14B合金の原料粉末を成形し、焼結する。
【0004】
R2Fe14B焼結磁石において高保磁力を得るためには、例えば特公平7−78269号公報に記載されているように、正方晶の金属間化合物からなる主相同士が、非磁性Rリッチ相により互いに隔離された構造となっている必要がある。ここで非磁性Rリッチ相とは、R含有量が80%以上である非磁性相である。
【0005】
R2Fe14B磁石の特性、特に残留磁束密度および保磁力は、密度や結晶粒径によっても変化するが、Rの種類および含有量に最も影響される。例えば、Rの主成分がNdやPr等の軽希土類元素である場合、高飽和磁化の(Nd,Pr)2Fe14B相が主体となるため、高い残留磁束密度が得られる。しかし、(Nd,Pr)2Fe14B相だけでは高保磁力が得られない。一方、NdやPrの一部をDyやTb等の重希土類元素で置換すると、異方性磁界HAの大きい(Dy,Tb)2Fe14B相が出現する。異方性磁界HAが大きいと磁化反転しにくいので、重希土類元素の添加により保磁力が向上する。
【0006】
例えば、特公平5−31807号公報では、R(Rは軽希土類元素の少なくとも1種)、BおよびL(Lは、Yを含む重希土類元素およびAl、チタン、V、Nb、Moの少なくとも1種)を含有し、残部がM(Mは、FeまたはFeとCoとの混合物)よりなる異方性焼結磁石であって、元素LがR2M14B母相粒内の粒界近傍に偏在している希土類永久磁石を提案している。
【0007】
また、特開平7−122413号公報では、R2T14B結晶粒(Rは希土類元素の少なくとも1種、Tは遷移金属の少なくとも1種)を主体とする主相と、Rリッチ相とを主構成相とする希土類永久磁石であって、R2T14B結晶粒内で重希土類元素が少なくとも3ヶ所高濃度に分布する希土類永久磁石を提案している。
【0008】
また、特開平4−155902号公報では、結晶粒の結晶粒界近傍において、結晶粒中央部よりもTb+Dyの濃度を高くしたR2T14B磁石が記載されている。なお、Tは、Fe、またはFeおよびCoである。同公報では、少なくともRf(RfはNdおよび/またはPr)、TおよびBを主成分とする基本組成合金粉末と、Ra(RaはDyおよび/またはTb)および/またはRa化合物を主成分とする添加粉末との混合物を、成形、焼結することにより製造される。
【0009】
しかし、Dy2Fe14BおよびTb2Fe14Bは飽和磁束密度が低いため、重希土類元素の添加量を増加させるにつれて残留磁束密度が低下してしまう。したがって、磁石として使用するために十分な残留磁束密度を確保するためには、重希土類元素の含有量を著しく多くするわけにはいかず、その結果、保磁力の向上には限界があった。
【0010】
また、従来のR2T14B磁石では、結晶粒を包囲する前記非磁性Rリッチ相の存在が必須であるが、この相は腐食しやすく、腐食すると脆化し、また、体積膨脹が生じる。したがって、この相が腐食すると、結晶粒が腐食していなくても、結晶粒(主相)が脱落してしまう。そのため、従来のR2T14B磁石には、ニッケルめっき膜や樹脂膜などを保護膜として設けることが必須であった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような事情からなされたものであり、著しく高い保磁力と十分に高い残留磁束密度とを有し、しかも耐食性に優れたR2Fe14B系永久磁石およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、下記(1)〜(6)の本発明により達成される。
(1)R(Rは、希土類元素の少なくとも1種である)、T(Tは、Fe、またはFeおよびCoである)およびBを主成分とする永久磁石であって、RH(RHは重希土類元素の少なくとも1種である)およびRL(RLは軽希土類元素の少なくとも1種である)を含有し、実質的にRL2T14B金属間化合物からなる主相が、実質的にRH2T14B金属間化合物からなる隔離相によって包囲されることによって、隣り合う主相同士が互いに実質的に隔離されており、隔離相中における原子比R L /R H が0.05以下であり、かつ、RH2T14Bの融点を低下させる低融点化元素MLが含有される永久磁石。
(2)R2T14BよりR含有量の多い非磁性Rリッチ相が存在しないか、前記非磁性Rリッチ相によって前記主相が包囲されていない上記(1)の永久磁石。
(3)前記主相に対する前記隔離相の体積比が0.01〜0.1である上記(1)または(2)の永久磁石。
(4)質量百分率で表した元素含有量が、
23≦R≦40、
0.8≦B≦1.5、
0.5≦ML≦10、
残部T
である上記(1)〜(3)のいずれかの永久磁石。
(5)モル比RH/RLが0.01〜0.15である上記(1)〜(4)のいずれかの永久磁石。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかの永久磁石を製造する方法であって、RL2T14B金属間化合物を含む主相用粉末と、RH、TおよびBを含有する隔離相用粉末と、前記低融点化元素MLとを含有する原料粉末を成形し、1000℃以下の温度で焼結する工程を有する永久磁石の製造方法。
【0013】
【作用および効果】
本発明の永久磁石は、従来のR2T14B焼結磁石と同様に、主相としてR2T14B相を有する。しかし、本発明の磁石は、従来のR2T14B焼結磁石において保磁力発現に必須であった前記非磁性Rリッチ相に替えて、実質的にRH2Fe14B相からなる隔離相を有する。
【0014】
なお、例えば前記特公平5−31807の図1および図2に示されるように、従来のR2T14B焼結磁石であっても、非磁性Rリッチ相が結晶粒界の一部だけに存在するように見えることもある。しかし、このような磁石であっても、例えば透過型電子顕微鏡により観察すると、主相が薄いRリッチ相によって包囲されていることが確認できる。このように従来のR2T14B焼結磁石では、Rリッチ相によって包囲されていない限り、磁石として実用可能な保磁力は得られない。
【0015】
従来、DyやTbなどの重希土類元素を添加したR2T14B焼結磁石は知られている。重希土類元素を含有する磁石を通常の方法で製造した場合、結晶粒内において重希土類元素はほぼ均一に分散していることが一般的である。また、前記特開平4−155902号公報に記載されているように、Nd2T14B粉末と重希土類元素を主成分とする粉末とを混合して焼結した場合、結晶粒内において重希土類元素の濃度分布が形成される。
【0016】
これに対し本発明の磁石では、軽希土類元素を含有するために残留磁束密度が極めて高くなっているRL2Fe14B相を主相とし、この主相が、前記隔離相によって包囲された構造をもつ。隔離相を構成するRH2Fe14Bは、異方性磁界HAがNd2Fe14Bのそれの約3倍であり、かつ磁化が小さい。そのため、逆磁区発生の核を生成するために必要な臨界磁場が大きい。異方性磁場が大きい隔離相において逆磁区を発生させるためには、大きな逆磁場が必要となる。また、主相は異方性磁場が小さいため、主相では逆磁区が発生しやすいが、主相は異方性磁場の大きい隔離相により包囲されている。そのため、主相で発生した逆磁区は、著しく大きな逆磁場を印加しないと隔離相を越えることができない。したがって、本発明の磁石では磁化反転が極めて生じにくい。その結果、本発明の磁石では、結晶粒内において重希土類元素が均一に分布している従来の磁石はもちろん、結晶粒内において重希土類元素の濃度分布を設けただけの従来の磁石に比べても、保磁力HcJが著しく高くなる。
【0017】
また、従来のR2T14B焼結磁石では、非磁性Rリッチ相の腐食による結晶粒の脱落を防ぐために、ニッケルめっき膜や樹脂膜などの保護膜を設けることが必須であった。これに対し本発明の磁石が有する前記隔離相は、非磁性Rリッチ相に比べ耐食性が極めて良好である。そのため本発明の磁石では、従来よりも性能の低い保護膜でもよく、また、要求される耐食性能がそれほど高くない場合には、保護膜を設けずに使用することも可能である。そのため、製造コストを低減できる。
【0018】
本発明の磁石は、原料粉末を成形して焼結することにより製造される。本発明では隔離相を形成するために、隔離相を構成するRH2Fe14B金属間化合物の融点を低下させる低融点化元素MLを、原料粉末中に含有させる。これにより、融点の比較的高いRH2Fe14Bが、焼結温度を比較的低くしても液相化しやすくなる。この原料粉末を従来より低温で焼結することにより、焼結時の元素拡散が抑えられるので、隔離相によって主相同士が互いに隔離された組織構造を実現できる。
【0019】
上記低融点化元素MLは非磁性成分であるため、残留磁束密度を低下させる。しかし本発明の磁石は、従来の磁石と異なり、残留磁束密度を低下させる非磁性Rリッチ相を含有しないため、低融点化元素MLを含有するにもかかわらず、従来の磁石と同等の残留磁束密度が得られる。したがって、本発明の磁石では、極めて高い保磁力と十分な残留磁束密度とが実現する。具体的には、固有保磁力HcJを1600kA/m以上にすることができ、かつ、残留磁束密度を1.2T以上にすることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
永久磁石
本発明の永久磁石は、R、TおよびBを主成分とする。元素Rは、希土類元素の少なくとも1種である。本発明において希土類元素とは、Yおよびランタノイドである。また、上記元素Tは、Fe、またはFeおよびCoである。
【0022】
本発明の磁石は、 RH(RHは重希土類元素の少なくとも1種である)およびRL(RLは軽希土類元素の少なくとも1種である)を含有する。軽希土類元素にはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Euが包含され、重希土類元素にはGd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYが包含される。
【0023】
本発明の磁石では、実質的にRL2T14B金属間化合物からなる主相が、実質的にRH2T14B金属間化合物からなる隔離相によって包囲され、この隔離相により主相同士が互いに実質的に隔離された構造をもつ。これにより、高保磁力かつ高残留磁束密度が実現する。保磁力および残留磁束密度をより高くするためには、RLとしてNdおよび/またはPrを選択することが好ましく、また、RHとしてTb、DyおよびHoの少なくとも1種を選択することが好ましい。
【0024】
なお、本明細書において「実質的にRL2T14B金属間化合物からなる主相」とは、主相中における原子比RH/RLが、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.01以下であることを意味する。磁石中における元素分布は、例えばEPMA(電子線プローブマイクロアナリシス)により測定することができる。また、「実質的にRH2T14B金属間化合物からなる隔離相」とは、隔離相中における原子比RL/RHが、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.01以下であることを意味する。
【0025】
また、本発明では、透過型電子顕微鏡で結晶粒界付近を観察したとき、任意の視野のいずれにおいても、連続した隔離相が主相を切れ目なく包囲していることが最も好ましい。ただし、観察する視野の数を100としたとき、隣り合う2つの結晶粒の間で隔離相が途切れている視野の数が5以下であれば、「隔離相により主相同士が互いに実質的に隔離されている」といえ、本発明の効果は十分に実現する。なお、この場合、観察する視野の大きさは、結晶粒径より狭い範囲とする。
【0026】
上記構造を実現するために、本発明の磁石には、RH2T14B金属間化合物の融点を低下させる機能をもち、かつ、自身が比較的低融点である低融点化元素MLが含有される。元素MLがRH2T14Bの融点を低下させるとは、RH2T14Bを構成する元素の一部、特に元素Tの一部を元素MLが置換することにより、置換後のRH2T14Bの融点が下がることを意味する。低融点化元素MLとしては、好ましくはAl、Ga、Ag、In、Bi、Sn、Pb、Zn、Li、SbおよびSiの少なくとも1種であり、より好ましくはAl、Ga、Ag、In、BiおよびSnの少なくとも1種であり、さらに好ましくはAl、Ga、BiおよびSnの少なくとも1種である。
【0027】
磁石中において、元素MLは均一に分布していてもよく、隔離相または主相に偏って分布していてもよいが、均一に分布するか、隔離相に偏って分布していることが好ましく、特に、隔離相に偏って分布していることが好ましい。
【0028】
従来のR2T14B磁石において高保磁力を実現するためには、非磁性Rリッチ相により主相同士が実質的に隔離されていることが必須であった。これに対し本発明の磁石では、非磁性Rリッチ相に替え、磁石として機能とする上記隔離相で主相同士を隔離する構造とすることにより、高保磁力かつ高残留磁束密度を実現する。本発明の磁石では、非磁性Rリッチ相が存在しないことが最も好ましいが、結晶粒界の一部(三重点など)にだけ存在するなど、主相を包囲するものでなければ、非磁性Rリッチ相が存在してもよい。なお、本発明の磁石に含有されることのある非磁性Rリッチ相とは、R2T14BよりR含有量の多い非磁性相であり、通常、R含有量が80質量%以上である相を意味する。
【0029】
主相に対する隔離相の体積比は、好ましくは0.01〜0.15、より好ましくは0.025〜0.08である。また、隔離相の最小厚さは、好ましくは0.01〜2μm、より好ましくは0.05〜1μmである。前記体積比が小さすぎたり隔離相が薄すぎたりすると、隔離相による主相の隔離が不十分となりやすく、高保磁力が得られにくい。一方、前記体積比が大きすぎたり隔離相が厚すぎたりすると、隔離相より高い磁化をもつ主相の比率が低くなるため、高残留磁束密度が得られにくくなる。隔離相の最小厚さは、透過型電子顕微鏡により測定することができる。
【0030】
主相は、従来のR2T14B系焼結磁石の結晶粒と同様に正方晶系であり、その平均径(平均結晶粒径)は、通常、1〜80μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜20μmである。
【0031】
磁石中における元素含有量(質量百分率)は、好ましくは
23≦R≦40、
0.8≦B≦1.5、
0.3≦ML≦10、
残部T
であり、より好ましくは
28≦R≦32、
0.8≦B≦1.2、
0.5≦ML≦5、
残部T
である。元素R中におけるモル比RH/RLは、前記した主相に対する隔離相の体積比に応じ、好ましくは0.01〜0.15、より好ましくは0.025〜0.08とされる。
【0032】
R含有量が少なすぎると、遊離α−Fe相が生成するため、保磁力が低くなる。一方、R含有量が多すぎると、非磁性Rリッチ相が多くなるため、残留磁束密度が低くなる。T含有量が少なすぎると残留磁束密度が低くなり、多すぎると保磁力が低くなる。B含有量が少なすぎると、R2T17化合物等の菱面体晶構造をもつ異方性の低い相が生成するために保磁力が低くなり、多すぎるとBリッチな非磁性相が多くなるため残留磁束密度が低くなる。ML含有量が少なすぎると、融点低下によるRH2T14Bの液相化が困難となるため、隔離相によって主相同士が隔離された構造とすることが困難となる。
【0033】
Feの一部をCoで置換することにより、磁気特性を損うことなく温度特性を改善することができる。この場合、T中におけるCoのモル比が50%を超えると磁気特性が劣化するため、T中におけるCoのモル比は50%以下、特に20%以下であることが好ましい。
【0034】
また、保磁力の向上、生産性の向上、低コスト化を目的として、C、P、S、Ti、V、Cr、Mn、Bi、Nb、Ta、Mo、W、Ge、Zr、Ni、Si、Hf、Cu等から選択される元素の1種以上を添加してもよい。磁石中におけるこれらの元素の合計含有量は、3質量%以下であることが好ましい。これらの元素の合計含有量が多すぎると、残留磁束密度が低くなる。
【0035】
製造方法
本発明の磁石は、以下に説明する方法により製造することが好ましい。
【0036】
この方法では、主相用粉末および隔離相用粉末を含有する原料粉末を成形し、焼結することにより永久磁石を得る。この原料粉末は、さらに、前記低融点化元素MLを含有する。主相用粉末は、RL2Fe14B金属間化合物を含む。一方、隔離相用粉末は、RH、TおよびBを含有するが、RH2Fe14B金属間化合物を含んでいてもいなくてもよい。原料粉末中における元素MLの存在形態は特に限定されず、以下に説明するいずれの形態であってもよい。
【0037】
元素MLは、主相用粉末および/または隔離相用粉末に含有させてもよい。元素MLは隔離相用粉末の融点を低下させるために用いるので、元素MLは隔離相用粉末に含有させることが好ましい。
【0038】
また、元素MLを含有する粉末を、前記原料粉末中に独立して存在させてもよい。元素MLを含有する粉末としては、元素MLからなる粉末であってもよく、元素MLを含有する合金からなる粉末であってもよく、これらから選択される2種以上の粉末の混合物であってもよい。元素MLを含む合金としては、R−ML合金およびT−ML合金の少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0039】
また、主相用粉末を構成する合金粒子の表面および/または隔離相用粉末を構成する合金粒子の表面に、ML含有金属(元素MLからなる金属または元素MLを含有する合金)を被着させてもよい。ML含有金属を前記合金粒子表面に被着させるには、蒸着法などの気相形成法または機械的歪力を加える方法が利用できる。
【0040】
機械的歪力を加える方法では、ML含有金属からなる粒子と前記合金粒子との混合物に対し、金属ボールやセラミックスボールなどの粉砕媒体により機械的歪力を加える。用いるML含有金属の展延性が低い場合、ML含有金属からなる粒子は、粒子形状を保った状態で前記合金粒子表面に固定される。また、ML含有金属の展延性が高い場合には、ML含有金属は展延されて前記合金粒子表面の少なくとも一部を被覆することになる。
【0041】
なお、元素MLは隔離相用粉末の融点を低下させるために用いるので、ML含有金属は、隔離相用粉末を構成する合金粒子の表面に被着させることが好ましい。
【0042】
上記各方法のなかでは、元素MLを隔離相用粉末に含有させる方法、および、展延性の高いML含有金属を、隔離用粉末構成粒子の表面に機械的歪力を用いて被着させる方法が好ましい。元素MLを隔離相用粉末に含有させてある場合、焼結時に隔離相用粉末が比較的低温で容易に液相化し、焼結反応が進行する。一方、隔離相用粉末を構成する合金粒子の表面にML含有金属を被着させた場合、焼結時にML含有金属が溶融して隔離相用粉末と反応し、隔離相用粉末を低融点化する。その結果、隔離相用粉末が比較的低温で容易に液相化し、焼結反応が進行する。
【0043】
隔離相用粉末としては、R2T14B(原子比)を中心とする組成の粉末(以下、R2T14B粉末ということがある)だけを用いてもよいが、相異なる組成の2種以上の粉末を用いてもよい。例えば、主相用粉末および隔離相用粉末に加え、元素MLを含有する粉末を用いる場合には、隔離相用粉末として、
(1)R2T14B粉末とR−B合金粉末との組み合わせ、
(2)R2T14B粉末とR−B合金粉末とT−B合金粉末との組み合わせ、
(3)R−B合金粉末とT−B合金粉末との組み合わせ
を用いることが好ましい。
【0044】
主相用粉末および隔離相用粉末は、従来のR2T14B磁石を製造する際に用いる焼結対象の原料粉末と同様にして製造すればよい。すなわち、これらの粉末は、ストリップキャスト法や鋳型鋳造法により製造した合金を粉砕することにより得ることができる。粉砕方法は特に限定されないが、通常、ディスクミル等により10〜100μm程度の粒径まで粗粉砕し、次いで、ジェットミル等により0.5〜10μm程度の粒径まで微粉砕すればよい。なお、水素吸蔵粉砕を行うこともできる。水素吸蔵粉砕では、合金ストリップや30mm角程度まで粗粉砕した合金インゴットに対し、水素吸蔵と水素放出とを少なくとも1回行うことにより脆化させ、次いで、上記した機械的な粗粉砕および微粉砕を行う。なお、原料粉末は、主相用合金および隔離相用合金のそれぞれについて微粉砕粉を製造し、これらを混合することにより得てもよく、各合金の粗粉砕粉を混合し、混合物を微粉砕することにより得てもよい。
【0045】
主相用粉末の組成および隔離相用粉末の組成は、焼結後の全体組成が前記した好ましい範囲内となるように、また、主相用粉末ではR2T14B金属間化合物が形成可能となるように、適宜設定すればよいが、好ましくはどちらの粉末も
23≦R≦40、
0.8≦B≦1.5、
残部T
とする。ただし、主相用合金では、Rリッチ相の生成を抑制するためにR含有量を比較的少なくすることがより好ましく、具体的には、
28≦R≦32、
0.8≦B≦1.2、
1≦ML≦5、
残部T
とすることが望ましい。一方、粒界相用合金では、融点を低くするためにR含有量を比較的多くすることがより好ましく、具体的には
28≦R≦35、
0.8≦B≦1.2、
1≦ML≦5、
残部T
とすることが望ましい。なお、主相用粉末および/または隔離相用粉末にMLを含有させる場合は、元素Tを置換する形でMLを添加すればよい。また、主相用粉末では元素Rの全量を元素RLとし、隔離相用粉末では元素Rの全量を元素RHとすることが好ましい。
【0046】
次に、原料粉末を成形する。成形は磁場中にて行う。磁場強度は800kA/m以上、成形圧力は50〜500MPa程度であることが好ましい。
【0047】
成形後、焼結する。焼結温度(安定温度)は、1000℃以下、好ましくは900〜980℃とする。安定温度とは、昇温過程と降温過程とに挟まれた安定温度域における温度である。安定温度に保持する時間は、好ましくは0.1〜100時間、より好ましくは20〜80時間とする。このように本発明では、焼結工程において、従来よりも低温かつ長時間の加熱を行うことを特徴とする。焼結温度が低すぎたり焼結時間が短すぎたりすると、隔離相用粉末が液相化しにくくなるので、焼結が十分に進まず、残留磁束密度および保磁力のいずれもが低くなりやすい。一方、焼結温度が高すぎたり焼結時間が長すぎたりすると、元素拡散が進む結果、隔離相としての機能および主相としての機能が低くなってしまう。
【0048】
焼結後、時効処理を施すことが好ましい。時効処理は、好ましくは450℃以上焼結温度以下の温度、より好ましくは550〜950℃で、0.1〜100時間加熱することにより行う。時効処理により保磁力がさらに向上する。なお、時効処理は、多段階の熱処理から構成してもよい。例えば2段の熱処理からなる時効処理では、1段目の熱処理を700℃以上焼結温度未満の温度で0.1〜50時間行い、2段目の熱処理を500〜700℃で0.1〜100時間行うことが好ましい。
【0049】
なお、粉砕、混合、成形、焼結および時効処理の各工程は、Arガス、N2ガス等の非酸化性ガス雰囲気中または真空中で行なわれることが好ましい。
【0050】
本発明の磁石の用途は特に限定されず、本発明の磁石は、例えばモータやスピーカなど各種機器に適用可能である。
【0051】
【実施例】
サンプル No. 1
以下の手順で、主相用粉末を製造した。まず、
Nd:29質量%、
B:1.05質量%、
Fe:残部
および微量の不可避的不純物からなる合金ストリップを、ストリップキャスト法により製造した。この合金ストリップは、厚さが0.3〜0.6mmであり、柱状のR2T14B金属間化合物結晶を含むものであった。X線回折による分析では、他の相に由来する回折線は認められず、また、EPMAによる観察では、少量の非磁性Rリッチ相が認められた。
【0052】
この合金ストリップに室温付近で水素を吸蔵させ、昇温して脱水素化することにより合金ストリップを脆化した後、350μmのオープニングの篩を通過する寸法までディスクミルにより粗粉砕した。次いで、窒素ガスを利用したジェットミルにより平均粒径が5μmとなるまで微粉砕して、主相用粉末を得た。
【0053】
また、以下の手順で隔離相用粉末を製造した。まず、
Dy:32.5質量%、
B:1.13質量%、
Co:3質量%、
Fe:残部
および微量の不可避的不純物からなる合金ストリップを、ストリップキャスト法により製造した。この合金ストリップは、厚さが0.3〜0.6mmであり、柱状のR2T14B金属間化合物結晶を含むものであった。X線回折による分析では、他の相に由来する回折線は認められなかった。この合金ストリップを用い、主相用粉末製造の際と同様にして粉砕することにより、平均粒径3.5μmの隔離相用粉末を得た。
【0054】
この隔離相用粉末を、雰囲気制御が可能なロータリーキルンに投入し、ロータリーキルン内にAl蒸気を導入することにより、隔離相用粉末を構成する合金粒子の表面にAl膜を形成した。合金粒子表面に被着したAlの量は、隔離相用粉末に対し10質量%であった。なお、このAlは、本発明における低融点化元素MLとして機能する。
【0055】
次いで、主相用粉末/Alが被着した隔離相用粉末=9/1(質量比)となるように両粉末をVミキサーにより混合し、原料粉末を得た。この原料粉末を、1.2Tの磁場中で、磁場の向きと直交する方向に196MPaの圧力を加えて成形した。得られた成形体を、1気圧未満のArガス雰囲気中において980℃に29時間保持することにより焼結した。得られた焼結体を450℃で12時間時効処理して、焼結磁石サンプルNo.1を得た。
【0056】
サンプルNo.1の組成は、
Nd:26.1質量%、
Dy:3.0質量%、
B:1.05質量%、
Co:0.27質量%、
Al:0.91質量%、
Fe:残部
であり、さらに微量の不可避的不純物を含むものである。サンプルNo.1の断面を、EPMA、微小領域のX線回折および透過型電子顕微鏡により調べた。その結果、結晶粒(主相)と粒界相(隔離相)とが存在し、主相はNd2T14B金属間化合物から実質的に構成され、隔離相はDy2T14B金属間化合物から実質的に構成され、結晶粒界の三重点にわずかな量の非磁性Rリッチ相が存在し、Alが主相よりも隔離相に高濃度で分布する組織構造をもつことがわかった。また、平均結晶粒径は11μmであり、隔離相の最小厚さは0.12μmであり、主相に対する隔離相の体積比は0.07であった。また、透過型電子顕微鏡の100視野中、隣り合う2つの結晶粒の間で隔離相が途切れている視野は、3であった。
【0057】
サンプル No. 2
サンプルNo.1の製造に用いた隔離相用粉末と平均粒径1μmのAl粉末とを、直径5mmのステンレススチール製ボールと共にバレル加工機中に投入し、Ar雰囲気中で振動を加えた。これにより、隔離相用粉末を構成する合金粒子の表面に、Al粒子を被着させた。合金粒子表面に被着したAl量は、隔離相用粉末に対し10.5質量%であった。
【0058】
このようにしてAlを被着させた隔離相用粉末を用いたほかはサンプルNo.1と同様にして、焼結磁石サンプルNo.2を得た。サンプルNo.2の断面をサンプルNo.1と同様にして調べたところ、サンプルNo.1と同様な組織構造であった。また、平均結晶粒径は8μmであり、隔離相の最小厚さは0.08μmであり、主相に対する隔離相の体積比は0.07であった。また、透過型電子顕微鏡の100視野中、隣り合う2つの結晶粒の間で隔離相が途切れている視野は、4であった。
【0059】
サンプル No. 3
Dy:30質量%、
B:1.13質量%、
Co:3質量%、
Al:10質量%、
Fe:残部
および微量の不可避的不純物からなる合金ストリップを、ストリップキャスト法により製造した。この合金ストリップは、厚さが0.3〜0.6mmであり、柱状のR2T14B金属間化合物結晶を含むものであった。X線回折による分析では、他の相に由来する回折線は認められなかった。なお、Alは、R2T14B金属間化合物結晶のFeサイトを置換していると考えられる。この合金ストリップを、サンプルNo.1の主相用粉末製造の際と同様にして粉砕することにより、平均粒径3.6μmの隔離相用粉末を得た。
【0060】
この隔離相用粉末とサンプルNo.1の製造に用いた主相用粉末とを、主相用粉末/隔離相用粉末=9/1(質量比)となるようにVミキサーにより混合し、原料粉末を得た。この原料粉末を用いたほかはサンプルNo.1と同様にして、焼結磁石サンプルNo.3を得た。
【0061】
サンプルNo.3の組成は、
Nd:26.1質量%、
Dy:3.0質量%、
B:1.06質量%、
Co:0.3質量%、
Al:1.0質量%、
Fe:残部
であり、さらに微量の不可避的不純物を含むものである。サンプルNo.3の断面をサンプルNo.1と同様にして調べたところ、サンプルNo.1と同様な組織構造であった。また、平均結晶粒径は11μmであり、隔離相の最小厚さは0.14μmであり、主相に対する隔離相の体積比は0.09であった。また、透過型電子顕微鏡の100視野中、隣り合う2つの結晶粒の間で隔離相が途切れている視野は、2であった。
【0062】
サンプル No. 4(比較)
Nd:29.8質量%、
Dy:2.8質量%、
B:1.06質量%、
Fe:残部
からなる合金ストリップを、ストリップキャスト法により製造した。この合金ストリップは、厚さが0.3〜0.6mmであり、柱状のR2T14B金属間化合物結晶を含むものであった。X線回折による分析では、他の相に由来する回折線は認められず、また、EPMAによる観察では、非磁性Rリッチ相が認められた。この合金ストリップを、サンプルNo.1の主相用粉末製造の際と同様にして粉砕することにより、平均粒径5.5μmの原料粉末を得た。
【0063】
次いで、この原料粉末を、サンプルNo.1製造の際と同条件で磁場中成形した。得られた成形体を、1気圧未満のArガス雰囲気中において、1050℃に4時間保持することにより焼結した。得られた焼結体に450℃で12時間時効処理を施して、焼結磁石サンプルNo.4を得た。
【0064】
サンプルNo.4の断面をサンプルNo.1と同様にして調べたところ、R2T14Bからなる主相が非磁性Rリッチ相により包囲され、主相同士が非磁性Rリッチ相により隔離された構造であった。
【0065】
評価
上記各サンプルについて、室温において保磁力HcJおよび残留磁束密度Brを測定した。また、80℃−90%RHの恒温・恒湿条件下で保存し、発錆するまでの時間を調べた。これらの結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1から、本発明の効果が明らかである。すなわち、サンプルNo.1〜3は、サンプルNo.4に比べ、重希土類元素の含有量が同等であるにもかかわらず、保磁力HcJが著しく高くなっており、また、耐食性も極めて良好となっている。しかも、残留磁束密度Brはほとんど劣らない。
Claims (7)
- R(Rは、希土類元素の少なくとも1種である)、T(Tは、Fe、またはFeおよびCoである)およびBを主成分とする永久磁石であって、
RH(RHは重希土類元素の少なくとも1種である)およびRL(RLは軽希土類元素の少なくとも1種である)を含有し、実質的にRL2T14B金属間化合物からなる主相が、実質的にRH2T14B金属間化合物からなる隔離相によって包囲されることによって、隣り合う主相同士が互いに実質的に隔離されており、前記隔離相中における原子比R L /R H が0.05以下であり、
かつ、RH2T14Bの融点を低下させる低融点化元素MLが含有される永久磁石。 - 前記主相中における原子比R H /R L が0.05以下である、請求項1に記載の永久磁石。
- R2T14BよりR含有量の多い非磁性Rリッチ相が存在しないか、前記非磁性Rリッチ相によって前記主相が包囲されていない請求項1又は2に記載の永久磁石。
- 前記主相に対する前記隔離相の体積比が0.01〜0.1である請求項1〜3いずれか一項に記載の永久磁石。
- 質量百分率で表した元素含有量が、23≦R≦40、0.8≦B≦1.5、0.5≦ML≦10、残部Tである請求項1〜4のいずれか一項に記載の永久磁石。
- モル比RH/RLが0.01〜0.15である請求項1〜5のいずれか一項に記載の永久磁石。
- 請求項1〜6のいずれか一項の永久磁石を製造する方法であって、
RL2T14B金属間化合物を含む主相用粉末と、RH、TおよびBを含有する隔離相用粉末と、前記低融点化元素MLとを含有する原料粉末を成形し、1000℃以下の温度で焼結する工程を有する永久磁石の製造方法。
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