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JP4551489B2 - 回折レンズの製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、回折レンズの製造方法、およびこれによって有利に製造される新規な構造の回折レンズに関するものである。
従来から、眼鏡やコンタクトレンズ、カメラのレンズやコンパクトディスク等の光ディスクのピックアップ用レンズ等のように、様々な分野で光学レンズが用いられている。そこにおいて、例えば老眼視用の眼鏡やコンタクトレンズ等において遠方視力と近方視力を両立するため等のように、複数の焦点(多焦点)を有するレンズが要求されることがある。
そのような多焦点レンズとして、例えば特許文献1等に開示されている如き、回折レンズが知られている。特許文献1に記載の回折レンズは、レンズ表面にレリーフをもった回折格子を備え、レリーフを通過する光の回折現象を利用して、0次光と回折一次光によって、2つの焦点を形成することが可能とされている。そして、例えばかかる回折レンズを老眼用の遠近両用レンズとして用いる場合には、0次光と回折一次光による焦点をそれぞれ遠方視用と近方視用に割り当てることによって、2つの焦点を得ることが出来るようにされている。
ところが、近年では、より多数の焦点を備えた光学レンズが要求されることがある。例えば遠近両用レンズは、前述のように遠方視用と近方視用にそれぞれ0次光と一次光を割り当てているが、その結果、0次光と一次光の間へのエネルギーの配分が困難となって、中間視のコントラストが低くなるという問題が、近年認識されつつある。
そこで、より多数の焦点の生成を可能とするために、例えば特許文献2には、レンズ径方向にそれぞれ異なるレリーフを備えた複数の領域を形成することによって、複数の焦点を備えた回折レンズが提案されている。しかし、特許文献2に記載の回折レンズでは、絞りや人眼における縮瞳等によって入射光線径が変化するような場合には、目的とする焦点効果が発揮されなくなるおそれがあった。特に眼科用レンズの場合には、仮に生理的な人眼の瞳孔径を考慮した設計であったとしても、瞳孔に対する所望の相対位置に回折レンズを安定させることが出来るとは限らず、目的とする焦点効果が発揮されなくなるおそれもあった。
米国特許第5121980号明細書 米国特許第7188949号明細書
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、絞りや偏心による影響を抑え、多焦点の何れの焦点効果もより安定的に得ることの出来る回折レンズの、新規な製造方法を提供することにある。
さらに、本発明は、そのような新規な製造方法によって有利に製造され得る、新規な構造の回折レンズを提供することをも、目的とする。
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
すなわち、回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法に関する本発明の第一の態様は、光学材料の表面に対して同心円状に延びるレリーフをもった回折格子を設けた回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法であって、前記レリーフとして、それぞれの回折一次光が互いに異なる焦点距離を与える複数種類のレリーフを採用すると共に、回折レンズの径方向の少なくとも一部の領域において少なくとも二種類のレリーフを重ねて設定し、且つ、それらの重ねて設定したレリーフにおける格子ピッチが最大のレリーフの各格子ピッチに対して、他のレリーフにおける格子ピッチが周期的に重なり合う同期構造を設定して、得られたレリーフを前記光学材料の表面に形成すると共に、
複数の前記レリーフは、一方の該レリーフのゾーン定数をA、他方の該レリーフのゾーン定数をa,一方の該レリーフのゾーン番号をM、他方の該レリーフのゾーン番号をm、一方の該レリーフの焦点距離/他方の該レリーフの焦点距離をNとして、下式:
A=(2(m−NM)+a)/N
を満足するように設定することを、特徴とする。
ここにおいて、ゾーン定数とは、所定ゾーン番号のゾーン半径を所定の値に設定するための定数であり、ゾーン半径は、ゾーン定数:aを用いて、下式:
ゾーン半径=√((2m+a)λf)
で表される。なお、λは設計波長、fは焦点距離を示す。また、ゾーン番号とは、ゾーン毎に割り振られた番号であり、中央を0としてゾーン方向外方に向けて1、2、3、…の順に割り振られる番号である。
本発明に従う製造方法によれば、少なくとも二種類のレリーフそれぞれの回折一次光によって、少なくとも2つの焦点を生成することが出来る。これにより、例えば光学材料として遠近両用の老視用コンタクトレンズ等を用いた場合には、屈折面による0次光を遠方視用焦点に設定すると共に、二種類のレリーフの一方の一次光を近方視用焦点に設定するのに加えて、残り一方の一次光を中間視用焦点に設定することが可能となる。これにより、遠方視および近方視に加え、その中間の中間視においても良好な回折強度を得ることが出来て、中間視においてもより良好な視界を得ることの出来るコンタクトレンズを提供することが可能となる。なお、本発明におけるレリーフとは起伏形状をいう。
そこにおいて、特に本製造方法によって製造された回折レンズによれば、複数種類のレリーフが重ねて設定されている。これにより、複数種類のレリーフが重ね合わされた領域の全体でそれぞれのレリーフによる回折一次光が生成されることから、例えば前記特許文献2のように、領域毎に異なるレリーフを設定した回折レンズとは異なり、絞り等による入射光線径の変化やレンズの偏心等に対して、特定領域の回折強度が相対的に変化することも抑えることが出来て、所望の光学特性をより安定的に得ることの出来る、従来に無い新しい光学特性を備えた回折レンズを得ることが出来る。
そして、特に本製造方法によれば、重ねて設定されたレリーフにおいて最大の格子ピッチを有するレリーフの各格子ピッチに対して、他のレリーフにおける格子ピッチが周期的に重なり合う同期構造が設定されており、換言すれば、最大の格子ピッチを有するレリーフの各ゾーン半径に対して、他のレリーフにおけるゾーン半径が周期的に重なり合う同期構造が設定されている。ここにおいて、格子ピッチとは、各レリーフの稜線と谷線の間の径方向幅寸法をいう。また、ゾーン半径とは、同心円状に延びる各レリーフの稜線と谷線の間のゾーンにおける、同心円の中心に対して外側に位置する稜線乃至は谷線の同心円の中心からの半径をいう。また、同心円状とは、光軸或いは偏倚軸を中心として円形やそれに近い楕円形などをもって環状に延びる複数条をいう。更にまた、本発明の請求項記載の「回折レンズの径方向」とは、光軸を中心とする径方向を言うものであり、レンズの幾何中心外に光軸を有する場合には、レンズ外周形状の径方向と必ずしも一致するものではない。これにより、それぞれのレリーフの回折一次光による回折強度のピークを何れも明確に生ぜしめることが出来て、多数の焦点をより確実に得ることが可能とされている。即ち、複数種類のレリーフを単に重ね合わせるのみでは、何れのレリーフによる回折強度のピークも明確に得ることが出来ず、意図しない次数光のピークの発生を引き起こすと共に、迷光等によるグレアの発生も大きくなる。これに対して、本製造方法によれば、異なる種類のレリーフの格子ピッチを同期させることによって、他のレリーフの回折一次光にも回折強度を有効に配分することが出来て、二次光等の必要の無い次数光の強度を低減することが可能となる。その結果、迷光等の光量を低減することが出来て、グレア等の低減も図られ得る。
なお、本発明における回折一次光とは、回折に伴う干渉光の一次のものであって、1波長分の位相差を生じる回折光である。即ち、光は、空気よりも高い屈折率の媒質内では速度が遅くなる。この作用を利用することで、同心円の中央側に稜線を有するレリーフの回折格子において、同心円の中央から周辺方向に向かって、隣り合うレリーフを通過する光が1波長ずつ遅れて重なることで得られる干渉光の一次のものが回折+1次光であり、反対に、同心円の外側に稜線を有する正負反転したレリーフの回折格子を用いた場合には、中央から周辺方向に向かって隣り合うレリーフを通過する光が1波長ずつ進んで重なることで得られる、レリーフ形状に関して反対側に発生する干渉光の一次のものが回折−1次光である。そして、本発明の請求項記載の「一次光」は、+1次光と−1次光の両者を含む絶対値としての一次光として理解されるものとする。
また、本発明において、複数種類のレリーフは、回折レンズの径方向の少なくとも一部の領域において重ねて設定されていれば良いのであって、必ずしもレンズ全面に亘って複数種類のレリーフが重ねて設定される必要は無い。従って、例えば、レンズ中央部分のみやレンズ径方向中間部分のみ等において、複数種類のレリーフを重ねて設定し、他の領域では一種類のレリーフのみを設定する等しても良い。
さらに、本発明における複数種類のレリーフとしては、少なくとも二種類であれば良いのであって、三種類以上のレリーフを重ねて設定することも、勿論可能である。
加えて、本発明における製造方法は、水晶体膿内に配設する無水晶体眼内レンズを除いて、各分野で用いられる回折レンズの製造方法として広く採用可能であり、例えば眼鏡やコンタクトレンズ、および虹彩と角膜の間に埋め込まれるフェイキックIOLや、虹彩と水晶体の間に埋め込まれるICL等の有水晶体眼内レンズ等の視力矯正用の眼科用レンズのみならず、眼科用検査装置や、カメラや光ディスクのピックアップ等の各種光学装置に用いられる光学レンズをも含む。更に、角膜も光学レンズの一種として捉えることが可能であり、例えばレーシックによる角膜表面の成形による手術方法に本製造方法を適用すること等も可能である。
従って、本発明における光学材料としては、樹脂やガラス、更には角膜等の透孔性材料が特に限定されることなく採用可能であり、レリーフの同期構造が形成される基準面の形状や材質等は特に限定されるものではない。例えば、かかる基準面は凸および凹を含む球面の他、非球面、シリンドリカル面、トーリック面などであっても良く、或いは平面であっても良い。特に、基準面が平面以外の場合には、光学的な屈折特性も、本発明の回折に加えて発揮されることとなる。
また、本態様によれば、他方のレリーフの格子ピッチに対して、一方のレリーフの格子ピッチが周期的に重なり合う同期構造を容易に設定することが出来る。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る回折レンズの製造方法において、前記光学材料が屈折面をもった光学レンズであり、該屈折面による0次光に対して、前記複数種類のレリーフによる何れの回折一次光の焦点距離とも異なる焦点距離を設定することを、特徴とする。
本態様によれば、少なくとも二種類のレリーフそれぞれの回折一次光による焦点と、屈折面による0次光の焦点によって、3つ以上の焦点を有する光学レンズを得ることが出来る。ここにおいて、複数のレリーフは、屈折面に形成されていても良いし、屈折面以外の面に形成されていても良い。従って、本態様は、一方が凹面や凸面の屈折面としての湾曲面で、他方が非屈折面としての平面とされた光学レンズに対して、その平面側にレリーフを形成する態様も含むものであるし、回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法に関する本発明の第三の態様として、前記第二の態様に係る回折レンズの製造方法において、前記レリーフを形成する前記光学材料の表面が、前記屈折面である態様も含むものである。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法に関する本発明の第四の態様は、前記第一又は第二の態様に係る回折レンズの製造方法において、前記レリーフを形成する前記光学材料の表面が、平面であることを、特徴とする。
本態様においては、レリーフが形成される光学材料の表面が、非屈折面の平面とされる。そこにおいて、本態様は、両面平面、即ち、両面非屈折面とされた光学レンズの表面にレリーフが形成された態様と、一方が屈折面で他方が平面の光学レンズの平面にレリーフが形成された態様の何れの態様も含む。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法に関する本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れか一つの態様に係る回折レンズの製造方法において、前記格子ピッチが最大のレリーフのレリーフ段差であって、前記複数のレリーフが重なった各レリーフ段差の大きさが、ゾーン方向で一定となるように形成することを、特徴とする。
ここにおいて、レリーフ段差とは、レリーフの各ゾーン半径位置における光軸方向寸法をいう。本態様によれば、格子ピッチが最大のレリーフのレリーフ段差をゾーン毎に設定することが不要とされて、レリーフ形状をより容易に設定することが出来る。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法に関する本発明の第六の態様は、前記第五の態様に係る回折レンズの製造方法において、前記複数のレリーフを重ねて設定した径方向の領域には、前記格子ピッチが最大のレリーフの各一つのゾーンにおいて、別の種類の前記レリーフが少なくとも二つのレリーフ段差をもって形成され、且つそれら少なくとも二つのレリーフ段差における前記ベース表面に対する高さがゾーン方向で次第に変化するように設定することを、特徴とする。
本態様によれば、別の種類のレリーフのレリーフ段差をより精度良く設定することが出来て、別の種類のレリーフによる回折強度のピークをより明瞭に生ぜしめることが出来る。なお、本態様において、レリーフ段差におけるベース表面に対する高さがゾーン方向で次第に変化するとは、ゾーン方向で次第に低くなる態様と、高くなる態様の何れをも含む。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法に関する本発明の第七の態様は、前記第五の態様に係る回折レンズの製造方法において、前記複数のレリーフを重ねて設定した径方向の領域には、前記格子ピッチが最大のレリーフの各一つのゾーンにおいて、別の種類の前記レリーフが少なくとも二つのレリーフ段差をもって形成され、且つそれら少なくとも二つのレリーフ段差における前記ベース表面に対する高さがゾーン方向で一定となるように設定することを、特徴とする。本態様によれば、別の種類のレリーフの形状をゾーン半径ごとに設定することが不要とされて、別の種類のレリーフ形状をより容易に設定することが出来る。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法に関する本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の何れか一つの態様に係る回折レンズの製造方法において、複数種類の前記レリーフが、何れも、鋭角の頂角をもった断面形状で周方向に延びる稜線と鋭角の夾角をもった断面形状で周方向に延びる谷線とを有していることを、特徴とする。
本態様によれば、複数種類のレリーフにおいて回折作用をそれぞれ有効に生ぜしめることが出来て、各種類のレリーフの回折一次光のピークをそれぞれ有効に生ぜしめることが出来る。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法に関する本発明の第の態様は、前記第一乃至第の何れか一つの態様に係る回折レンズの製造方法において、前記光学材料が屈折面をもった眼科用レンズであり、該屈折面による0次光を遠方視用焦点に設定する一方、一つの種類の前記レリーフによる回折一次光を近方視用焦点に設定すると共に、別の種類の前記レリーフによる回折一次光を中間視用焦点に設定することを、特徴とする。
本態様によれば、遠方視用焦点および近方視用焦点に加えて、中間視用焦点を備えた眼科用レンズを得ることが出来る。従って、老視矯正用の眼鏡レンズやコンタクトレンズとして、これまで回折型の眼科用レンズにおいて問題とされていた、中間視のコントラスト低下の問題も改善され得て、より良好な中間視を得ることが出来る。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法に関する本発明の第の態様は、前記第一乃至第の何れか一つの態様に係る回折レンズの製造方法において、前記光学材料が屈折面をもった眼科用レンズであり、該屈折面による0次光を近方視用焦点に設定する一方、一つの種類の前記レリーフによる回折一次光を遠方視用焦点に設定すると共に、別の種類の前記レリーフによる回折一次光を中間視用焦点に設定することを、特徴とする。
本態様においても、より良好な中間視を実現することの出来る眼科用レンズを得ることが出来る。なお、本態様においては、近方視用焦点および遠方視用焦点が何れも、対応するレリーフの−1次光となるが、前述のように、本発明における一次光は、−1次光を含む絶対値としての一次光として理解される。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法に関する本発明の第十一の態様は、前記第一乃至第の何れか一つの態様に係る回折レンズの製造方法において、前記光学材料が屈折面をもった眼科用レンズであり、該屈折面に対して複数種類の前記レリーフからなる回折格子を設定すると共に、該屈折面が凹形状とされており、少なくとも一種類の該レリーフが径方向断面においてゾーン間の傾斜方向をレリーフ段差の突出方向と同じレンズ軸方向外方に向かって設定することを、特徴とする。
本態様は、例えばコンタクトレンズに有利に用いられる。即ち、屈折面としてコンタクトレンズの角膜と対向せしめられる凹形状とされたレンズ後面を用い、かかるレンズ後面にレリーフが形成される。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法に関する本発明の第十二の態様は、前記第一乃至第十一の何れか一つの態様に係る回折レンズの製造方法において、複数の前記レリーフは、レリーフ段差の高さ寸法をD、設計波長をλ、前記光学材料の屈折率をNlens、周囲媒質屈折率をNmed として、下式:
D≦λ/(Nlens−Nmed
を満足するように設定されていることを、特徴とする。
本態様によれば、レリーフ段差は最大1波長分に相当し、0次光と1次光との光の配分をより有効に確保することが出来る。従って、本態様は、前記第三の態様のように、レリーフ形状が屈折面に形成された態様と組み合わせて、好適に用いられる。このようにすれば、二次光等の必要のない次数光の強度を低減でき、0次光と1次光の焦点効果をより有効に確保することが出来る。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)に関する本発明の第一の態様は、光学材料の表面に対して同心円状に延びるレリーフをもった回折格子が設けられた回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)であって、回折レンズの径方向の少なくとも一部の領域において、それぞれの回折一次光が互いに異なる焦点距離を与える少なくとも二種類のレリーフが重ねて設定されており、且つ、それらの重ねて設定されたレリーフにおける格子ピッチが最大のレリーフの各格子ピッチに対して、他のレリーフにおける格子ピッチが周期的に重なり合う周期構造を有していると共に、
複数の前記レリーフが、一方の該レリーフのゾーン定数をA、他方の該レリーフのゾーン定数をa,一方の該レリーフのゾーン番号をM、他方の該レリーフのゾーン番号をm、一方の該レリーフの焦点距離/他方の該レリーフの焦点距離をNとして、下式:
A=(2(m−NM)+a)/N
を満足するように形成されていることを、特徴とする。
ここにおいて、ゾーン定数とは、所定ゾーン番号のゾーン半径を所定の値に設定するための定数であり、ゾーン半径は、ゾーン定数:aを用いて、下式:
ゾーン半径=√((2m+a)λf)
で表される。なお、λは設計波長、fは焦点距離を示す。また、ゾーン番号とは、ゾーン毎に割り振られた番号であり、中央を0としてゾーン方向外方に向けて1、2、3、…の順に割り振られる番号である。
本態様における回折レンズによれば、少なくとも二種類のレリーフそれぞれの回折一次光によって、少なくとも2つの焦点を生成することが出来る。これにより、例えば光学材料として遠近両用の老視用コンタクトレンズ等を用いた場合には、屈折面による0次光によって遠方視用焦点を得ると共に、二種類のレリーフの一方の一次光によって近方視用焦点を得るのに加えて、残り一方の一次光によって中間視用焦点を得ることが可能となる。これにより、遠方視および近方視に加え、その中間の中間視においても良好な回折強度を得ることが出来て、中間視においてもより良好な視界を得ることの出来るコンタクトレンズを提供することが可能となる。なお、本発明におけるレリーフとは起伏形状をいう。
そこにおいて、特に本態様における回折レンズによれば、複数種類のレリーフが重ねて設定されている。これにより、複数種類のレリーフが重ね合わされた領域の全体でそれぞれのレリーフによる回折一次光が生成されることから、例えば前記特許文献2のように、領域毎に異なるレリーフを設定した回折レンズとは異なり、絞り等による入射光線径の変化やレンズの偏心等に対して、特定領域の回折強度が相対的に変化することも抑えることが出来て、所望の光学特性をより安定的に得ることの出来る、従来に無い新しい光学特性を備えた回折レンズを得ることが出来る。
そして、特に本態様においては、重ねて設定されたレリーフにおいて最大の格子ピッチを有するレリーフの各格子ピッチに対して、他のレリーフにおける格子ピッチが周期的に重なり合う同期構造を備えており、換言すれば、最大の格子ピッチを有するレリーフの各ゾーン半径に対して、他のレリーフにおけるゾーン半径が周期的に重なり合う同期構造を有している。なお、同心円状とは、光軸或いは偏倚軸を中心として円形やそれに近い楕円形などをもって環状に延びる複数条をいう。そして、本発明の請求項記載の「回折レンズの径方向」とは、光軸を中心とする径方向を言うものであり、レンズの幾何中心外に光軸を有する場合には、レンズ外周形状の径方向と必ずしも一致するものではない。これにより、それぞれのレリーフの回折一次光による回折強度のピークを何れも明確に生ぜしめることが出来て、多数の焦点をより確実に得ることが可能とされている。即ち、複数種類のレリーフを単に重ね合わせるのみでは、何れのレリーフによる回折強度のピークも明確に得ることが出来ず、意図しない次数光のピークの発生を引き起こすと共に、迷光等によるグレアの発生も大きくなる。これに対して、本態様における回折レンズによれば、異なる種類のレリーフの格子ピッチが同期されていることによって、他のレリーフの回折一次光にも回折強度を有効に配分することが出来て、二次光等の必要の無い次数光の強度を低減することが可能となる。その結果、迷光等の光量を低減することが出来て、グレア等の低減も図られ得る。
また、本態様において、複数種類のレリーフは、回折レンズの径方向の少なくとも一部の領域において重ねて設定されていれば良いのであって、必ずしもレンズ全面に亘って複数種類のレリーフが重ねて設定されている必要は無い。従って、例えば、レンズ中央部分のみやレンズ径方向中間部分のみ等において、複数種類のレリーフが重ねて設定されており、他の領域では一種類のレリーフのみが設定される等しても良い。
さらに、本態様における複数種類のレリーフとしては、少なくとも二種類であれば良いのであって、三種類以上のレリーフを重ねて設定することも、勿論可能である。
加えて、本態様における回折レンズは、水晶体膿内に配設する無水晶体眼内レンズを除いて、各分野で用いられる回折レンズとして広く採用可能であり、例えば眼鏡やコンタクトレンズ、および虹彩と角膜の間に埋め込まれるフェイキックIOLや、虹彩と水晶体の間に埋め込まれるICL等の有水晶体眼内レンズ等の視力矯正用の眼科用レンズのみならず、眼科用検査装置や、カメラや光ディスクのピックアップ等の各種光学装置に用いられる光学レンズをも含む。
従って、本態様における光学材料としては、樹脂やガラス等の透孔性材料が特に限定されることなく採用可能であり、レリーフの同期構造が形成される基準面の形状や材質等は特に限定されるものではない。例えば、かかる基準面は凸および凹を含む球面の他、非球面、シリンドリカル面、トーリック面などであっても良く、或いは平面であっても良い。特に、基準面が平面以外の場合には、光学的な屈折特性も、本態様の回折に加えて発揮されることとなる。
また、本態様によれば、他方のレリーフの格子ピッチに対して、一方のレリーフの格子ピッチが周期的に重なり合う同期構造が設定される。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る回折レンズにおいて、前記光学材料が屈折面をもった光学レンズであり、該屈折面による0次光に対して、前記複数種類のレリーフによる何れの回折一次光の焦点距離とも異なる焦点距離が設定されていることを、特徴とする。
本態様によれば、少なくとも二種類のレリーフそれぞれの回折一次光による焦点と、屈折面による0次光の焦点によって、3つ以上の焦点を有する光学レンズを得ることが出来る。ここにおいて、複数のレリーフは、屈折面に形成されていても良いし、屈折面以外の面に形成されていても良い。従って、本態様は、一方が凹面や凸面の屈折面としての湾曲面で、他方が非屈折面としての平面とされた光学レンズに対して、その平面側にレリーフが形成された態様も含むものであるし、回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)に関する本発明の第三の態様として、前記第二の態様に係る回折レンズにおいて、前記レリーフが形成される前記光学材料の表面が、前記屈折面である態様も含むものである。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)に関する本発明の第四の態様は、前記第一又は第二の態様に係る回折レンズにおいて、前記レリーフが形成される前記光学材料の表面が、平面であることを、特徴とする。
本態様においては、レリーフが形成される光学材料の表面が、非屈折面の平面とされる。そこにおいて、本態様は、両面平面、即ち、両面非屈折面とされた光学レンズの表面にレリーフが形成された態様と、一方が屈折面で他方が平面の光学レンズの平面にレリーフが形成された態様の何れの態様も含む。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)に関する本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れか一つの態様に係る回折レンズにおいて、前記格子ピッチが最大のレリーフのレリーフ段差であって、前記複数のレリーフが重なった各レリーフ段差の大きさが、ゾーン方向で一定とされていることを、特徴とする。
ここにおいて、レリーフ段差とは、レリーフの各ゾーン半径位置における光軸方向寸法をいう。本態様によれば、格子ピッチが最大のレリーフのレリーフ段差をゾーン毎に設定することが不要とされて、レリーフ形状をより容易に設定することが可能となり、製造もより容易となる。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)に関する本発明の第六の態様は、前記第五の態様に係る回折レンズにおいて、前記複数のレリーフを重ねて設定した径方向の領域には、前記格子ピッチが最大のレリーフの各一つのゾーンにおいて、別の種類の前記レリーフが少なくとも二つのレリーフ段差をもって形成され、且つそれら少なくとも二つのレリーフ段差における前記ベース表面に対する高さがゾーン方向で次第に変化していることを、特徴とする。
本態様によれば、別の種類のレリーフのレリーフ段差がより精度良く設定されて、別の種類のレリーフによる回折強度のピークをより明瞭に生ぜしめることが出来る。なお、本態様において、レリーフ段差におけるベース表面に対する高さがゾーン方向で次第に変化するとは、ゾーン方向で次第に低くなる態様と、高くなる態様の何れをも含む。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)に関する本発明の第七の態様は、前記第五の態様に係る回折レンズにおいて、前記複数のレリーフを重ねて設定した径方向の領域には、前記格子ピッチが最大のレリーフの各一つのゾーンにおいて、別の種類の前記レリーフが少なくとも二つのレリーフ段差をもって形成され、且つそれら少なくとも二つのレリーフ段差における前記ベース表面に対する高さがゾーン方向で一定とされていることを、特徴とする。本態様によれば、別の種類のレリーフの形状をゾーン半径ごとに設定することが不要とされて、別の種類のレリーフ形状をより容易に形成することが出来る。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)に関する本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の何れか一つの態様に係る回折レンズにおいて、複数種類の前記レリーフが、何れも、鋭角の頂角をもった断面形状で周方向に延びる稜線と鋭角の夾角をもった断面形状で周方向に延びる谷線とを有していることを、特徴とする。
本態様によれば、複数種類のレリーフにおいて回折作用をそれぞれ有効に生ぜしめることが出来て、各種類のレリーフの回折一次光のピークをそれぞれ有効に生ぜしめることが出来る。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)に関する本発明の第九の態様は、前記第一乃至第八の何れか一つの態様に係る回折レンズにおいて、前記光学材料が屈折面をもった眼科用レンズであり、該屈折面による0次光が遠方視用焦点に設定されている一方、一つの種類の前記レリーフによる回折一次光が近方視用焦点に設定されていると共に、別の種類の前記レリーフによる回折一次光が中間視用焦点に設定されていることを、特徴とする。
本態様によれば、遠方視用焦点および近方視用焦点に加えて、中間視用焦点を得ることが出来る。従って、老視矯正用の眼鏡レンズやコンタクトレンズとして、これまで回折型の眼科用レンズにおいて問題とされていた、中間視のコントラスト低下の問題も改善され得て、より良好な中間視を得ることが出来る。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)に関する本発明の第十の態様は、前記第一乃至第八の何れか一つの態様に係る回折レンズにおいて、前記光学材料が屈折面をもった眼科用レンズであり、該屈折面による0次光が近方視用焦点に設定されている一方、一つの種類の前記レリーフによる回折一次光が遠方視用焦点に設定されていると共に、別の種類の前記レリーフによる回折一次光が中間視用焦点に設定されていることを、特徴とする。
本態様においても、より良好な中間視を実現することの出来る眼科用レンズを得ることが出来る。なお、本態様においては、近方視用焦点および遠方視用焦点が何れも、対応するレリーフの−1次光となるが、前述のように、本発明における一次光は、−1次光を含む絶対値としての一次光として理解される。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)に関する本発明の第十一の態様は、前記第一乃至第十の何れか一つの態様に係る回折レンズにおいて、前記光学材料が屈折面をもった眼科用レンズであり、該屈折面に対して複数種類の前記レリーフからなる回折格子が形成されていると共に、該屈折面が凹形状とされており、少なくとも一種類の該レリーフが径方向断面においてゾーン間の傾斜方向をレリーフ段差の突出方向と同じレンズ軸方向外方に向かって形成されていることを、特徴とする。
本態様は、例えばコンタクトレンズに有利に用いられる。即ち、屈折面としてコンタクトレンズの角膜と対向せしめられる凹形状とされたレンズ後面を用い、かかるレンズ後面にレリーフが形成される。
回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)に関する本発明の第十二の態様は、前記第一乃至第十一の何れか一つの態様に係る回折レンズにおいて、複数の前記レリーフが、レリーフ段差の高さ寸法をD、設計波長をλ、前記光学材料の屈折率をNlens、周囲媒質屈折率をNmed として、下式:
D≦λ/(Nlens−Nmed
を満足するように形成されていることを、特徴とする。
本態様によれば、レリーフ段差は最大1波長分に相当し、0次光と1次光との光の配分をより有効に確保することが出来る。従って、本態様は、前記第三の態様のように、レリーフ形状が屈折面に形成された態様と組み合わせて、好適に用いられる。このようにすれば、二次光等の必要のない次数光の強度を低減でき、0次光と1次光の焦点効果をより有効に確保することが出来る。
本発明の第一の実施形態としての回折レンズを示す正面モデル図。 同回折レンズの側面モデル図。 図2における領域Aの拡大モデル図。 図1に示した回折レンズに形成されたレリーフ形状を説明するための断面モデル図。 同レリーフ形状を構成する近方視レリーフの形状を説明するための断面モデル図。 同レリーフ形状を構成する中間視レリーフの形状を説明するための断面モデル図。 同レリーフ形状における回折強度のシミュレーション結果を示すグラフ。 同レリーフ形状の設計方法を説明するための説明図。 同レリーフ形状を構成する近方視レリーフのレリーフプロファイル。 同レリーフ形状を構成する中間視レリーフのレリーフプロファイル。 同レリーフ形状のレリーフプロファイル。 本発明の第二の実施形態としてのレリーフ形状を示すレリーフプロファイル。 同レリーフ形状における回折強度のシミュレーション結果を示すグラフ。 本発明の第三の実施形態としてのレリーフ形状を示すレリーフプロファイル。 同レリーフ形状における回折強度のシミュレーション結果を示すグラフ。 本発明の第四の実施形態としてのレリーフ形状を示すレリーフプロファイル。 同レリーフ形状における回折強度のシミュレーション結果を示すグラフ。 本発明の第五の実施形態としてのレリーフ形状を示すレリーフプロファイル。 同レリーフ形状における回折強度のシミュレーション結果を示すグラフ。 本発明の異なる態様としての回折レンズを示す断面モデル図。 本発明の更に異なる態様としての回折レンズを示す断面モデル図。 従来構造に従うレリーフ形状を示すレリーフプロファイル。 同レリーフ形状における回折強度のシミュレーション結果を示すグラフ。 本発明に従う構造とされたレリーフ形状および従来技術に従う構造とされたレリーフ形状についての回折強度のシミュレーション結果。 比較例2としてのレリーフ形状を構成する近方視レリーフのレリーフプロファイル。 比較例2としてのレリーフ形状を構成する中間視レリーフのレリーフプロファイル。 比較例2としてのレリーフ形状を示すレリーフプロファイル。 同レリーフ形状における回折強度のシミュレーション結果を示すグラフ。
10 コンタクトレンズ
22 レンズ中心軸
24 後面光学部
26 前面光学部
28 回折格子
30 レリーフ
36 稜線
38 谷線
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1に、本発明における回折レンズに係る、第一の実施形態としてのコンタクトレンズ10の正面図をモデル的に示すと共に、図2に、同コンタクトレンズ10の側面図をモデル的に示す。なお、図1および図2においては、理解を容易とするために、後述するレリーフ30の大きさを誇張して図示している。
コンタクトレンズ10は、全体として略球状の凹面形状を有するレンズ後面12と、全体として略球状の凸面形状を有するレンズ前面14をもって形成されており、全体として略球殻形状とされている。また、コンタクトレンズ10の中央部分は、正面視で円形の光学部16とされており、この光学部16により装用者に対して所定の視力矯正効果が発揮されるようになっている。更にまた、光学部16の周囲に位置するコンタクトレンズ10の外周部分は、正面視で円環帯形状の周辺部18とされており、この周辺部18により装用者の角膜上の所定位置にコンタクトレンズ10が安定保持されるようになっている。また、周辺部18の外周縁部は、レンズ内外面をつなぐエッジ部20とされている。更に、特に本実施形態では、コンタクトレンズ10の光学部16と周辺部18を含む全体が、光学的および幾何学的に、コンタクトレンズ10の幾何中心軸としてのレンズ中心軸22を回転中心軸とする回転体形状とされている。
そして、かかるコンタクトレンズ10においては、光学部16のレンズ後面12が後面光学部24とされると共に、光学部16のレンズ前面14が前面光学部26とされている。後面光学部24は、装着される角膜の表面に対して装用状態下で略相似形となるように、レンズ中心軸22上でレンズ後方に曲率中心が設定されて、適当な曲率半径をもった凹形の縦断面形状を有するベースカーブ面を構成している。一方、前面光学部26は、上述の如く設定されたベースカーブ面と協働して目的とするレンズ度数などの光学特性を与える湾曲凸面形状を有している。
なお、本実施形態に係るコンタクトレンズ10は、ソフトコンタクトレンズやハードコンタクトレンズ、ディスポーザブルタイプのコンタクトレンズ等の各種のコンタクトレンズに対して適用可能である。また、コンタクトレンズ10を構成する光学材料としては、光透過性等の光学特性を備えた各種の重合性モノマーからなる樹脂材料等が好適に採用され、具体的には、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)やポリメチルメタクリレート(PMMA)、酢酸酪酸セルロース(CAB),シリコーン共重合体、フルオロシリコーンアクリレート、フルオロカーボン重合体、シリコーンゴム等が例示される。
以上から明らかなように、本実施形態においては、後面光学部24および前面光学部26が屈折面とされており、これら後面光学部24および前面光学部26を備えた光学レンズとしてのコンタクトレンズ10が光学材料とされている。そして、これら後面光学部24と前面光学部26による0次光に対して所定の焦点距離が設定されている。
そして、図3に、図2における領域Aの拡大図をモデル的に示すように、特に本実施形態における後面光学部24には、回折格子28が形成されている。回折格子28は、レンズ中心軸22を中心として同心円状に、レンズ周方向に連続して延びる起伏形状であるレリーフ30を含んで構成されている。
図4に、レリーフ30の径方向断面形状をモデル的に示す。特に本実施形態におけるレリーフ30は、図5に径方向断面形状をモデル的に示す近方視レリーフ32と、図6に径方向断面形状をモデル的に示す中間視レリーフ34が重ね合わされて形成されている。なお、これら図4乃至図6は、各レリーフ30、32,34それぞれにおいて、後面光学部24のベースカーブ面を直線:BCとした場合におけるベースカーブ面からの高さ寸法のレンズ径方向での変化を示したレリーフプロファイルである。
これら近方視レリーフ32および中間視レリーフ34は、それぞれ、レンズ中心軸22を中心として同心円状に延びると共に、コンタクトレンズ10の外方(図4乃至6中、上方)に向けて突出する稜線36と、コンタクトレンズ10の内方(図4乃至6中、下方)に向けて突出する谷線38を有する起伏形状とされている。
なお、以下の説明において、格子ピッチとは、稜線36と谷線38の間の径方向幅寸法をいう。また、ゾーンとは、稜線36と谷線38の間をいい、各ゾーンには、中央のゾーンを0として、ゾーン方向外方に向けて1,2,3、…のゾーン番号が割り振られる。また、ゾーン半径とは、各ゾーンの外周半径、換言すれば、各ゾーンにおいて同心円の中心(本実施形態においては、レンズ中心軸22)に対して外側に位置する稜線36又は谷線38の同心円の中心からの半径をいう。従って、格子ピッチは各ゾーンの径方向幅寸法であり、所定ゾーンの格子ピッチは、該ゾーンのゾーン半径と、該ゾーンよりもゾーン番号が1小さいゾーンのゾーン半径との差となる。また、レリーフ段差とは、ゾーン半径位置における稜線36と谷線38の光軸方向での離隔距離をいう。
特に本実施形態においては、稜線36は鋭角の頂角をもった断面形状でコンタクトレンズ10の周方向に延びると共に、谷線38は、鋭角の挟角をもった断面形状でコンタクトレンズ10の周方向に延びる形状とされている。そして、これら近方視レリーフ32および中間視レリーフ34は、それぞれ、レンズ径方向で隣り合う稜線36と谷線38において、稜線36がレンズ中心軸22から遠方に位置せしめられて、各ゾーンにおいて、レンズ中心軸22に対する近方側に比して遠方側が後面光学部24から突出せしめられた起伏形状とされている。
これら近方視レリーフ32および中間視レリーフ34は、それぞれの回折一次光が互いに異なる焦点距離を与えるように設定されており、本実施形態においては、近方視レリーフ32に+2.00Dの屈折力が与えられて、近方視レリーフ32による回折一次光が近方視用焦点に設定される一方、中間視レリーフ34に+1.00Dの屈折力が与えられて、中間視レリーフ34による回折一次光が中間視用焦点に設定されている。更に、後面光学部24および前面光学部26による0次光の焦点距離は、これら近方視レリーフ32および中間視レリーフ34何れの回折一次光の焦点距離とも異ならされており、後面光学部24および前面光学部26による0次光が、遠方視用焦点に設定されている。
そして、これら近方視レリーフ32と中間視レリーフ34が重ね合わされることによって、レリーフ30が形成されている。そこにおいて、中間視レリーフ34の格子ピッチは、近方視レリーフ32の格子ピッチよりも大きくされており、中間視レリーフ34の各ゾーンの格子ピッチに対して、近方視レリーフ32のゾーンの格子ピッチが周期的に重なり合う同期構造が設定されている。これにより、近方視レリーフ32における各ゾーンのゾーン半径は、中間視レリーフ34における各ゾーンのゾーン半径と周期的に重ね合わされている。特に本実施形態においては、中間視レリーフ34の1つのゾーンにおいて、近方視レリーフ32のレリーフ段差が1つ形成されており、中間視レリーフ34の1つのゾーンにおいて、近方視レリーフ32の2つのゾーンが形成されている。即ち、近方視レリーフ32のゾーンの2つに一つの割合で、中間視レリーフ34の各ゾーンが重なり合うようにされている。
さらに、これら近方視レリーフ32および中間視レリーフ34は、中間視レリーフ34のゾーン定数をA、近方視レリーフ32のゾーン定数をa, 中間視レリーフ34のゾーン番号をM、近方視レリーフ32のゾーン番号をm、中間視レリーフ34の焦点距離/近方視レリーフ32の焦点距離をNとして、下式:
A=(2(m−NM)+a)/N
を満足するように設定されている。これにより、近方視レリーフ32と中間視レリーフ34とが周期的に重なり合う同期構造が設定されている。ここにおいて、ゾーン定数A、aとは、所定のゾーン番号のゾーン半径を所定の値に設定するための定数であり、ゾーン半径は、ゾーン定数:aを用いて、下式:
ゾーン半径=√((2m+a)λf)
で表される。なお、λは設計波長、fは焦点距離である。
更にまた、これら近方視レリーフ32および中間視レリーフ34は、それぞれ、レリーフ段差の高さ寸法をD、設計波長をλ、レンズ材料の屈折率をnlens、周囲媒質屈折率をnmed として、下式:
D≦λ/(Nlens−Nmed
を満足するように設定されている。これにより、近方視レリーフ32および中間視レリーフ34のそれぞれにおいて、0次光と1次光との光の配分をより有効に確保することが可能とされている。そして、レリーフ30のレリーフ段差は、近方視レリーフ32と中間視レリーフ34が重なり合う位置においては、これら両レリーフ32,34のレリーフ段差が合成されたものとなる。更に、特に本実施形態においては、近方視レリーフ32と重ね合わされた中間視レリーフ34の各レリーフ段差の大きさが、ゾーン方向(図4中、左右方向)で一定とされている。
これら近方視レリーフ32と遠方視レリーフ34が重ね合わされて形成されたレリーフ30が後面光学部24のベースカーブ面に形成されることによって、回折格子28が形成されている。そこにおいて、後面光学部24は、湾曲凹状のベースカーブ面とされていることから、本実施形態におけるレリーフ30は、図3に示したように、ゾーン間の傾斜方向が、レリーフ段差の突出方向と同じレンズ軸方向外方(図3中、右方向)に向かって設定されている。
このような構造とされたコンタクトレンズ10によれば、後面光学部24および前面光学部26の0次光によって遠方視用焦点を与えると共に、近方視レリーフ32の回折一次光によって近方視用焦点を与えるのに加えて、中間視レリーフ34の回折一次光によって、中間視用焦点を与えることが出来る。これにより、遠近に加えて中間視の焦点を得ることが可能となり、中間視においても十分な光量を得ることが出来て、より明瞭なコントラストを得ることが出来る。
なお、図7に、実施例として、本実施形態に従うレリーフ形状によって得られる光軸上の回折強度について、計算機上でシミュレートした結果を示す。図7から明らかなように、本実施例によれば、屈折面としての後面光学部24および前面光学部26の0次光による遠方視用焦点と、近方視レリーフ32の回折一次光による近方視用焦点の間に、中間視レリーフ34の回折一次光による中間視用焦点のピークが発生することが確認出来る。そして、これら遠方視、近方視、および中間視の何れにおいてもピークが明瞭に生ぜしめられることも確認出来る。
そして、特に本実施形態においては、レリーフ30は、近方視レリーフ32と中間視レリーフ34が重ね合わされて形成されていることから、それぞれの回折一次光が、レリーフ30の全体で生成される。これにより、縮瞳等による入射光線径の変化やコンタクトレンズ10の偏心等に対して、特定領域の回折強度が相対的に変化することも抑えることが出来て、所望の光学特性をより安定的に得ることが出来る。
加えて、特に本実施形態においては、レリーフ30において、近方視レリーフ32と中間視レリーフ34が、互いの格子ピッチが周期的に重なり合う同期構造をもって形成されている。これにより、近方視レリーフ32および中間視レリーフ34それぞれの回折一次光によるピークを何れも明確に得ることが出来ると共に、迷光等の光量を低減して、グレア等の低減も図られる。
次に、上述の如きコンタクトレンズ10を製造するに際して有利に用いられる回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法について、図8を参照しつつ説明する。
先ず、屈折面として、0次光が遠方視用焦点を生成する後面光学部24および前面光学部26の形状を設計する。そこにおいて、後面光学部24および前面光学部26による0次光の焦点距離は、近方視レリーフ32および中間視レリーフ34の何れの一次光による焦点距離とも異なる焦点距離に設定される。かかる後面光学部24および前面光学部26の設計は、従来公知の方法が適宜に採用可能である。
次に、近方視レリーフ32として、パワー=+2.00Dのレリーフ形状を設計する。レリーフ段差の計算式は、一般に、下式:
レリーフ段差=p/( nlens−nmed )・・・(1)
で表される。なお、pは位相差、nlensはレンズ材料の屈折率、nmed は周囲媒質屈折率である。
そこにおいて、レリーフ段差は、遠方視を生成する0次光への配分も考慮して、1波長以下、より好適には、半波長以下の位相差とすることが望ましい。そこで、λを設計波長として、例えばp=λ/3、nlens=1.500、nmed =1.336、λ=500nmとすると、
レリーフ段差=(0.0005/3)/(1.500−1.336)
=0.001016260163・・・
となる。
次に、回折レンズの用途に応じて、例えば回折レンズが本実施形態の如きコンタクトレンズの場合には、瞳孔径やゾーンピッチを考慮して、中央ゾーン(ゾーン番号=0)のゾーン半径を決定する。例えば、瞳孔径に比して十分小さい、中央ゾーン径=0.2mmに設定する。中央ゾーン径を任意の値に設定した回折の公式は、一般式である次式:
ゾーン半径=√2mλf・・・(2)
を、下式:
ゾーン半径=√((2m+a)λf)・・・(3)
と変形することで与えられる。ここにおいて、mはゾーン番号、λは設計波長、fは焦点距離(f=1000/パワー)、aはゾーン定数である。
従って、中央ゾーンの半径を0.2mmとして設定すると、ゾーン定数aは、
0.2=√((2×0+a)0.0005×500)
a=0.16
となり、中央ゾーンの半径を0.2mmに設定したゾーン半径の計算式は、
ゾーン半径=√((2m+0.16)λf))・・・(4)
で与えられる。
(3)式から明らかなように、ゾーン定数aは2増加する毎に一つのゾーン番号の増加に相当する。従って、中央のレリーフ高さは、
中央レリーフ高さ=レリーフ段差−(レリーフ段差×(a/2))
=0.00093495935・・・
となる。そして、レリーフ段差の中間点は、仮想的なベースカーブとの交点であることから、ベースカーブの頂点を原点座標とすると、中央頂点Y座標は、
中央頂点Y座標=中央レリーフ高さ−(レリーフ段差/2)
=0.00093495935−(0.001016260163/2)
=0.0004268292685・・・
となる。
以上により、幾何学的な関係から、近方視レリーフ32の回折面の曲率や、中心位置等の形状パラメータおよびレリーフプロファイルを得ることが出来る。表1に、近方視レリーフ32の形状パラメータを示すと共に、図9に、近方視レリーフ32のレリーフプロファイルを示す。
次に、中間視レリーフ34として、パワー=+1.00Dのレリーフ形状を設計する。中間視レリーフ34は、上記手順により決定した近方視レリーフ32に同期しつつ、近方視レリーフ32とは異なる焦点距離を持つ1次光を設計する必要がある。
先ず、中間視レリーフ34のゾーン半径の計算式を、下式:
ゾーン半径=√((2M+A)λ(Nf))・・・(5)
と定義する。なお、Mはゾーン番号、Aはゾーン定数、Nは中間視レリーフの焦点距離と近方視レリーフの焦点距離の比であって、中間視レリーフの焦点距離/近方視レリーフの焦点距離である。
そして、近方視レリーフ32と中間視レリーフ34を同期させるため、近方視レリーフ32の任意のゾーンと中間視レリーフ34の任意のゾーンが一致するとした場合、(3)式と(5)式より、下式:
√((2m+a)λf)=√((2M+A)λ(Nf))
が得られ、これを変形して、下式:
A=(2(m−MN)+a)/N・・・(6)
但し、A>0
が得られる。
(6)式より、例えば、近方視レリーフ32のゾーン番号1のゾーンと中間視レリーフ34のゾーン番号0のゾーンが同期するとした場合、ゾーン定数Aは、
A=(2(1−0×2)+0.16)/2
=1.08
となり、近方視レリーフ32のゾーン半径と同期した中間視レリーフ34のゾーン半径は、下式:
ゾーン半径=√((2M+1.08)λ(Nf))・・・(7)
で表される。
そして、前記近方視レリーフ32と同様にして、中央レリーフ高さや中央頂点Y座標を決定することが出来、幾何学的な関係から、近方視レリーフ32と同期する、中間視レリーフ34の回折面の曲率や、中心位置等の形状パラメータおよびレリーフプロファイルを得ることが出来る。表2に、中間視レリーフ34の形状パラメータを示すと共に、図10に、中間視レリーフ34のレリーフプロファイルを示す。
続いて、近方視レリーフ32のレリーフプロファイルと、中間視レリーフ34のレリーフプロファイルを合算することによって、近方視レリーフ32と中間視レリーフ34が周期的に重なり合う、同期構造を有するレリーフ30のレリーフプロファイルが完成する。表3に、レリーフ30の形状パラメータを示すと共に、図11に、レリーフ30のレリーフプロファイルを示す。
そして、得られたレリーフプロファイルに従って、レリーフ30を後面光学部24に形成する。レリーフ30の後面光学部24への形成は、型成形のみならず、レーザー加工やエッチング、切削等の機械加工等が適宜に採用され得る。このようにして、上記実施形態としてのコンタクトレンズ10を得ることが出来る。
以上、本発明の一実施形態および製造方法について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。以下に、本発明において好適に採用され得るその他の態様を幾つか示すが、本発明が以下の態様に限定されることを示すものではないことが理解されるべきである。なお、以下の説明において、前述の実施形態と実質的に同様の部材および部位については、前述の実施形態と同様の符号を付することによって、詳細な説明を省略する。
先ず、図12に、本発明の第二の実施形態としてのレリーフ50をレリーフプロファイルとして示す。本実施形態においては、近方視レリーフとしてパワー=+3.0D、中間視レリーフとしてパワー=+1.0Dの2つのレリーフが周期的に重なり合う同期構造が設定されている。なお、本実施形態におけるレリーフプロファイルは、後面光学部のベースカーブ曲率半径=8.000mm、後面光学部のパワー=+5.0D、レンズ材料屈折率=1.500、周囲媒質屈折率=1.336、設計波長=500nm、近方視レリーフのゾーン定数:a=1の条件下で得たものである。なお、格子ピッチは、近方視レリーフに比して、中間視レリーフの方が大きい。
特に本実施形態においては、中間視レリーフの各1つのゾーンに対して、近方視レリーフが2つのレリーフ段差をもって、3つのゾーンで形成されており、換言すれば、近方視レリーフのゾーン半径の3つに1つの割合で、中間視レリーフのゾーン半径が近方視レリーフのゾーン半径と一致せしめられている。そして、近方視レリーフが重ね合わされた中間視レリーフの各ゾーンにおいて、中間視レリーフのレリーフ段差間に位置せしめられた近方視レリーフのレリーフ段差における仮想ベースカーブ面に対する高さが、ゾーン方向(図12中、左右方向)で次第に変化せしめられており、本実施形態においては、ゾーン方向で中央から離隔するにつれて次第に高くなるようにされている。なお、このようなレリーフ50も、前記第一の実施形態と同様の製造方法に従って形成することが可能である。
なお、図13に、本実施形態におけるレリーフ50によって得られる光軸上の回折強度について、前記第一の実施形態と同様に計算機上でシミュレートした結果を示す。図13から明らかなように、本実施形態においても、屈折面の0次光による遠方視用焦点と、近方視レリーフの回折一次光による近方視用焦点との間に、中間視レリーフの回折一次光による中間視用焦点のピークが発生すると共に、これら遠方視、近方視、および中間視の何れにおいても明瞭なピークが生ぜしめられることが確認された。
さらに、特に本実施形態においては、中間視レリーフの回折二次光が発生する。このように、レリーフ50の設計パラメータを変更することによって、複数の中間視を生成することも可能である。また、回折のピーク強度や焦点位置は、例えば同期構造を有するレリーフ50に対して、更に周期的に重なり合うレリーフを加える等することで様々な態様が設定可能である。
次に、図14に、本発明の第三の実施形態としてのレリーフ60をレリーフプロファイルとして示す。本実施形態においては、近方視レリーフとしてパワー=+3.0D、中間視レリーフとしてパワー=+1.0Dの2つのレリーフが周期的に重なり合う同期構造が設定されている。なお、格子ピッチは、近方視レリーフに比して、中間視レリーフの方が大きい。
本実施形態においては、中間視レリーフの各1つのゾーンに対して、近方視レリーフが2つのレリーフ段差をもって、3つのゾーンで形成されており、換言すれば、近方視レリーフのゾーン半径の3つに1つの割合で、中間視レリーフのゾーン半径が近方視レリーフのゾーン半径と一致するようにされている。そして、近方視レリーフが重ね合わされた中間視レリーフの各ゾーンにおいて、中間視レリーフのレリーフ段差間に位置せしめられた近方視レリーフのレリーフ段差における仮想ベースカーブ面に対する高さが、ゾーン方向(図14中、左右方向)で略一定とされている。
このようなレリーフ60は、前記第一および第二の実施形態に比して、より簡易な方法で製造することが出来る。即ち、互いに重ね合わされる複数のレリーフの重なり合いの周期に基づいて、格子ピッチが小さい方のレリーフにおいて、格子ピッチが大きい方のレリーフが重なり合うレリーフ段差を大きくすることによって、同期構造を有するレリーフを簡易に得ることが出来る。例えば、本実施形態における近方視レリーフと中間視レリーフのパワーは前記第二の実施形態と等しいが、第二の実施形態(図12参照)から明らかなように、中間視レリーフは近方視レリーフに対して3回に1回の割合で同期する。従って、前記製造方法に従って近方視レリーフ形状を設計した後には、前記製造方法のように中間視レリーフ形状を厳密に設計せずとも、得られた近方視レリーフ形状に対して3回に1回の割合で、レリーフ段差を大きくすることによって、第二の実施形態に近いレリーフ形状を簡易に得ることが出来る。
なお、図15に、本実施形態におけるレリーフ60によって得られる光軸上の回折強度について、前記第一の実施形態と同様に計算機上でシミュレートした結果を示す。図15から明らかなように、前記第二の実施形態(図13参照)に比して中間視の回折強度はやや低下するものの、本実施形態によれば、簡易な製造方法で、中間視用焦点のピークを生ぜしめ、前記第二の実施形態に近い効果が得られることが確認された。
次に、図16に、本発明の第四の実施形態としてのレリーフ70をレリーフプロファイルとして示す。本実施形態においては、遠方視レリーフとしてパワー=+2.0D、中間視レリーフとしてパワー=+1.0Dの2つのレリーフが周期的に重なり合う同期構造が設定されている。なお、格子ピッチは、遠方視レリーフに比して、中間視レリーフの方が大きい。
図16から明らかなように、本実施形態におけるレリーフ70は、前記第一の実施形態におけるレリーフ30(図11参照)のレリーフ高さが正負反転せしめられたものであり、各ゾーンにおいて、稜線36が谷線38よりも中央側に位置せしめられている。本実施形態によれば、屈折面の0次光が近方視用焦点に設定されると共に、遠方視レリーフの回折−1次光が遠方視用焦点に設定される一方、中間視レリーフの回折−1次光が中間視用焦点に設定される。そして、前述のように、本発明における回折一次光は、−1次光を含む絶対値としての一次光として理解される。
なお、図17に、本実施形態におけるレリーフ70によって得られる光軸上の回折強度について、前記第一の実施形態と同様に計算機上でシミュレートした結果を示す。図17から明らかなように、本実施形態によれば、屈折面の0次光による近方視用焦点に加えて、遠方視レリーフの回折−1次光による遠方視用焦点のピークが発生すると共に、これら近方視用焦点と遠方視用焦点の間に、中間視レリーフの回折−1次光による中間視用焦点のピークが発生する。そして、本実施形態においても、これら遠方視、近方視、および中間視の何れにおいても明瞭なピークが生ぜしめられることが確認された。
次に、図18に、本発明の第五の実施形態としてのレリーフ80をレリーフプロファイルとして示す。本実施形態においては、近方視レリーフとしてパワー=+3.0D、中間視レリーフとしてパワー=+1.0Dの2つのレリーフが周期的に重なり合う同期構造が設定されている。なお、格子ピッチは、近方視レリーフに比して、中間視レリーフの方が大きい。
本実施形態におけるレリーフ80は、前記第二の実施形態としてのレリーフ50(図12参照)に近い形状とされており、特に本実施形態においては、前記第二の実施形態としてのレリーフ50に対して、近方視レリーフのレリーフ成分のみが中央から外方に向けて0から次第に増加せしめられている。このようにすれば、近方視の回折強度を低減することが出来る。
なお、図19に、本実施形態におけるレリーフ80によって得られる光軸上の回折強度について、前記第一の実施形態と同様に計算機上でシミュレートした結果を示す。図19から明らかなように、本実施形態によれば、前記第二の実施形態(図13参照)に比して、近方視焦点における回折強度のピークが低減されることが確認できる。
なお、前記各実施形態においては、複数のレリーフが周期的に重なり合う同期構造を有する回折格子がコンタクトレンズにおける後面光学部に形成されていたが、かかる回折格子は、回折レンズの径方向の少なくとも一部に形成されていれば良いのであって、例えば後面光学部の径方向中間部分のみに形成されて、他の領域では一種類のレリーフだけが形成されている等しても良い。例えば、前記第一の実施形態としてのコンタクトレンズ10に形成されたレリーフ30においては、同期構造が設定された回折格子を、後面光学部と周辺部を含むレンズ全面に形成する等しても良い。更にまた、かかる同期構造を有する回折格子を、前面光学部に形成することも、勿論可能である。
加えて、同期構造を有する回折格子が形成される光学材料表面は、屈折面に限定されない。例えば、図20にモデル的に示す、本発明の異なる態様としての回折レンズ100のように、両表面が平面102、104とされた光学材料106の一方の平面102に回折格子28を形成しても良いし、或いは、図21にモデル的に示す、本発明の更に異なる態様としての回折レンズ110のように、一方の表面が平面112とされて、他方の表面が屈折面としての湾曲面114とされた光学材料116の平面112に回折格子28を形成する等しても良い。
更にまた、収差軽減等の目的のために、例えば特開2001−42112号公報等に記載のように、分散が異なる二つの材質からなる積層面に、本発明にかかる回折格子を形成することも可能である。
また、前記各実施形態においては、回折レンズとしてコンタクトレンズを例示したが、本発明における回折レンズは、例えば眼鏡や、フェイキックIOLおよびICL等の有水晶体眼内レンズ等の視力矯正用の眼科用レンズに加えて、眼科用検査装置や、カメラや光ディスクのピックアップ等の各種光学装置に用いられる光学レンズ等として採用可能である。従って、本発明における光学材料としては、樹脂やガラス等、光透過性を有する部材が適宜に採用可能である。
更には、角膜も光学レンズの一種として捉えることが可能であり、本発明における製造方法を、例えばレーシックによる角膜表面の成形による手術方法に適用すること等も可能である。即ち、前述の如き製造方法に従って、同期構造を有するレリーフ形状を設定した後に、設定したレリーフ形状をレーザー加工等によって角膜に付与することも可能である。
なお、前記第一の実施形態に従う実施例(図7参照)に対する比較例1として、従来構造に従う2焦点レンズのレリーフ形状によって得られる回折強度について実施例と同様に計算機上でシミュレートした。表4に、比較例1の形状パラメータを示すと共に、図22に、比較例1のレリーフプロファイルを示す。比較例1のレリーフ形状としては、近方視用の+2.00Dの屈折力を有する形状を設定した。かかるシミュレート結果を、図23に示す。公知のように、従来構造に従う比較例1においては、実施例と異なり、屈折面の0次光と、近方視レリーフの回折一次光とによる2つのピークのみ生ぜしめられることが確認出来る。
更に、シミュレート結果の信頼性を高めるために、波動光学設計・解析ソフトウェア(LightTrans社製の商品名:Virtual Lab)を用いて、実施例に従うレリーフ形状と、比較例1に従うレリーフ形状について、回折強度のピークの生成を検証した。かかる検証結果を、実施例について図24(a)に、比較例1について図24(b)に示す。図24から明らかなように、本シミュレートにおいても、本発明に従う構造とされた実施例によれば、従来構造とは異なり、遠方視焦点と近方視焦点の間に中間視焦点の強いピークが発生することが確認出来た。
また、比較例2として、近方視レリーフと中間視レリーフを同期させることなく単に重ね合わせた、非同期構造のレリーフ形状を有するコンタクトレンズを用意した。比較例2は、パワー=+5.0D、ベースカーブの曲率半径=8.000mm、レンズ材料屈折率=1.500、周囲媒質屈折率=1.336、設計波長=500nmとして、パワー=+4.00Dの近方視レリーフおよびパワー=+2.00Dの中間視レリーフを、何れのゾーン定数も1に設定して、互いに同期しない形状で重ね合わせてレリーフ形状を設定した。図25に近方視レリーフを、図26に中間視レリーフのレリーフプロファイルを示す。そして、図27に、これら近方視レリーフと中間視レリーフが互いに同期することなく重ね合わされた、比較例2としてのレリーフプロファイルを示すと共に、図28に、かかる比較例2のレリーフ形状によって得られる回折強度のシミュレート結果を示す。図28から明らかなように、複数のレリーフ形状を単に重ね合わせた比較例2においては、屈折面による0次光、近方視レリーフによる回折一次光、中間視レリーフによる回折一次光の何れも明瞭なピークの発生が認められず、意図しない次数光の発生も引き起こすことが確認された。これにより、複数のレリーフが互いに周期的に重なり合う同期構造を設定する本発明の有用性が明らかとされた。

Claims (24)

  1. 光学材料の表面に対して同心円状に延びるレリーフをもった回折格子を設けた回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)の製造方法であって、
    前記レリーフとして、それぞれの回折一次光が互いに異なる焦点距離を与える複数種類のレリーフを採用すると共に、回折レンズの径方向の少なくとも一部の領域において少なくとも二種類のレリーフを重ねて設定し、且つ、それらの重ねて設定したレリーフにおける格子ピッチが最大のレリーフの各格子ピッチに対して、他のレリーフにおける格子ピッチが周期的に重なり合う同期構造を設定して、得られたレリーフを前記光学材料の表面に形成すると共に、
    複数の前記レリーフは、一方の該レリーフのゾーン定数をA、他方の該レリーフのゾーン定数をa,一方の該レリーフのゾーン番号をM、他方の該レリーフのゾーン番号をm、一方の該レリーフの焦点距離/他方の該レリーフの焦点距離をNとして、下式:
    A=(2(m−NM)+a)/N
    を満足するように設定することを特徴とする回折レンズの製造方法。
  2. 前記光学材料が屈折面をもった光学レンズであり、該屈折面による0次光に対して、前記複数種類のレリーフによる何れの回折一次光の焦点距離とも異なる焦点距離を設定する請求項1に記載の回折レンズの製造方法。
  3. 前記レリーフを形成する前記光学材料の表面が、前記屈折面である請求項2に記載の回折レンズの製造方法。
  4. 前記レリーフを形成する前記光学材料の表面が、平面である請求項1又は2に記載の回折レンズの製造方法。
  5. 前記格子ピッチが最大のレリーフのレリーフ段差であって、前記複数のレリーフが重なった各レリーフ段差の大きさが、ゾーン方向で一定となるように形成する請求項1乃至4の何れか一項に記載の回折レンズの製造方法。
  6. 前記複数のレリーフを重ねて設定した径方向の領域には、前記格子ピッチが最大のレリーフの各一つのゾーンにおいて、別の種類の前記レリーフが少なくとも二つのレリーフ段差をもって形成され、且つそれら少なくとも二つのレリーフ段差における前記ベース表面に対する高さがゾーン方向で次第に変化するように設定する請求項5に記載の回折レンズの製造方法。
  7. 前記複数のレリーフを重ねて設定した径方向の領域には、前記格子ピッチが最大のレリーフの各一つのゾーンにおいて、別の種類の前記レリーフが少なくとも二つのレリーフ段差をもって形成され、且つそれら少なくとも二つのレリーフ段差における前記ベース表面に対する高さがゾーン方向で一定となるように設定する請求項5に記載の回折レンズの製造方法。
  8. 複数種類の前記レリーフが、何れも、鋭角の頂角をもった断面形状で周方向に延びる稜線と鋭角の夾角をもった断面形状で周方向に延びる谷線とを有している請求項1乃至7の何れか一項に記載の回折レンズの製造方法。
  9. 前記光学材料が屈折面をもった眼科用レンズであり、該屈折面による0次光を遠方視用焦点に設定する一方、一つの種類の前記レリーフによる回折一次光を近方視用焦点に設定すると共に、別の種類の前記レリーフによる回折一次光を中間視用焦点に設定する請求項1乃至の何れか一項に記載の回折レンズの製造方法。
  10. 前記光学材料が屈折面をもった眼科用レンズであり、該屈折面による0次光を近方視用焦点に設定する一方、一つの種類の前記レリーフによる回折一次光を遠方視用焦点に設定すると共に、別の種類の前記レリーフによる回折一次光を中間視用焦点に設定する請求項1乃至の何れか一項に記載の回折レンズの製造方法。
  11. 前記光学材料が屈折面をもった眼科用レンズであり、該屈折面に対して複数種類の前記レリーフからなる回折格子を設定すると共に、該屈折面が凹形状とされており、少なくとも一種類の該レリーフが径方向断面においてゾーン間の傾斜方向をレリーフ段差の突出方向と同じレンズ軸方向外方に向かって設定する請求項1乃至10の何れか一項に記載の回折レンズの製造方法。
  12. 複数の前記レリーフは、レリーフ段差の高さ寸法をD、設計波長をλ、前記光学材料の屈折率をNlens、周囲媒質屈折率をNmed として、下式:
    D≦λ/(Nlens−Nmed
    を満足するように設定されている請求項1乃至11の何れか一項に記載の回折レンズの製造方法。
  13. 光学材料の表面に対して同心円状に延びるレリーフをもった回折格子が設けられた回折レンズ(無水晶体眼内レンズを除く)であって、
    回折レンズの径方向の少なくとも一部の領域において、それぞれの回折一次光が互いに異なる焦点距離を与える少なくとも二種類のレリーフが重ねて設定されており、且つ、それらの重ねて設定されたレリーフにおける格子ピッチが最大のレリーフの各格子ピッチに対して、他のレリーフにおける格子ピッチが周期的に重なり合う周期構造を有していると共に、
    複数の前記レリーフが、一方の該レリーフのゾーン定数をA、他方の該レリーフのゾーン定数をa,一方の該レリーフのゾーン番号をM、他方の該レリーフのゾーン番号をm、一方の該レリーフの焦点距離/他方の該レリーフの焦点距離をNとして、下式:
    A=(2(m−NM)+a)/N
    を満足するように形成されていることを特徴とする回折レンズ。
  14. 前記光学材料が屈折面をもった光学レンズであり、該屈折面による0次光に対して、前記複数種類のレリーフによる何れの回折一次光の焦点距離とも異なる焦点距離が設定されている請求項13に記載の回折レンズ。
  15. 前記レリーフが形成される前記光学材料の表面が、前記屈折面である請求項14に記載の回折レンズ。
  16. 前記レリーフが形成される前記光学材料の表面が、平面である請求項13又は14に記載の回折レンズ。
  17. 前記格子ピッチが最大のレリーフのレリーフ段差であって、前記複数のレリーフが重なった各レリーフ段差の大きさが、ゾーン方向で一定とされている請求項13乃至16の何れか一項に記載の回折レンズ。
  18. 前記複数のレリーフを重ねて設定した径方向の領域には、前記格子ピッチが最大のレリーフの各一つのゾーンにおいて、別の種類の前記レリーフが少なくとも二つのレリーフ段差をもって形成され、且つそれら少なくとも二つのレリーフ段差における前記ベース表面に対する高さがゾーン方向で次第に変化している請求項17に記載の回折レンズ。
  19. 前記複数のレリーフを重ねて設定した径方向の領域には、前記格子ピッチが最大のレリーフの各一つのゾーンにおいて、別の種類の前記レリーフが少なくとも二つのレリーフ段差をもって形成され、且つそれら少なくとも二つのレリーフ段差における前記ベース表面に対する高さがゾーン方向で一定とされている請求項17に記載の回折レンズ。
  20. 複数種類の前記レリーフが、何れも、鋭角の頂角をもった断面形状で周方向に延びる稜線と鋭角の夾角をもった断面形状で周方向に延びる谷線とを有している請求項13乃至19の何れか一項に記載の回折レンズ。
  21. 前記光学材料が屈折面をもった眼科用レンズであり、該屈折面による0次光が遠方視用焦点に設定されている一方、一つの種類の前記レリーフによる回折一次光が近方視用焦点に設定されていると共に、別の種類の前記レリーフによる回折一次光が中間視用焦点に設定されている請求項13乃至20の何れか一項に記載の回折レンズ。
  22. 前記光学材料が屈折面をもった眼科用レンズであり、該屈折面による0次光が近方視用焦点に設定されている一方、一つの種類の前記レリーフによる回折一次光が遠方視用焦点に設定されていると共に、別の種類の前記レリーフによる回折一次光が中間視用焦点に設定されている請求項13乃至20の何れか一項に記載の回折レンズ。
  23. 前記光学材料が屈折面をもった眼科用レンズであり、該屈折面に対して複数種類の前記レリーフからなる回折格子が形成されていると共に、該屈折面が凹形状とされており、少なくとも一種類の該レリーフが径方向断面においてゾーン間の傾斜方向をレリーフ段差の突出方向と同じレンズ軸方向外方に向かって形成されている請求項13乃至22の何れか一項に記載の回折レンズ。
  24. 複数の前記レリーフが、レリーフ段差の高さ寸法をD、設計波長をλ、前記光学材料の屈折率をNlens、周囲媒質屈折率をNmed として、下式:
    D≦λ/(Nlens−Nmed
    を満足するように形成されている請求項13乃至23の何れか一項に記載の回折レンズ。
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