JP4560945B2 - 植物の生育調節方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物の生育調節方法に関し、詳しくは、植物生育地域の土壌表面にマルチシートを形成する植物の生育調節方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、植物の生育調節方法として植物生育地域の土壌表面にマルチシート(温床シート又はフイルム)を敷設する方法が知られている。この方法は、地熱の放散を抑制し、雑草の生育を阻止する等の効果を有するが、シート(又はフイルム)の敷設(マルチング)及び使用後の回収に多大な労力を必要とする欠点がある。
【0003】
近時、上記の問題を解決するため、フィルム形成用ポリマーを使用し、植物生育地域の土壌表面にマルチシートを形成する方法が提案されている。例えば、特開平11−92304号公報に記載の方法ではポリ乳酸などの生分解性ポリマーの溶融液または溶液が使用され、特開平2000−4687号公報に記載の方法ではアスファルト乳剤などの樹脂エマルジョンが使用されている。
【0004】
しかしながら、生分解性ポリマーの溶融液を使用する場合は、散液ノズルの加熱手段を必要としてコスト的な不利益があり、溶液を使用する場合は、クロロホルム、塩化メチレン等の人体に対して毒性の強い有機溶媒を必要として散液時の環境・衛生問題があり、また、上記の樹脂エマルジョンを使用する場合は生分解性に問題がある。
【0005】
ところで、一般に、セルロース、澱粉などの天然高分子は、生体系において、加水分解とそれに続く酸化によって分解されることが知られており、このことから、生分解性ポリマーは、加水分解され易い結合を主鎖中に含むという構造上の特徴を持っているとされている。そして、特開平11−299369号公報には、生分解性ポリマーとして、澱粉やポリビニルアルコール等の数多くの親水性ポリマーが提案され、また、溶媒(分散媒)として、水やアルコールも提案されている。
【0006】
しかしながら、親水性ポリマーによっては、耐雨水性や生分解性の程度に問題があり、例えば、特開平11−299369号公報で提案された澱粉やポリビニルアルコールでは実用に耐え得ない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、植物生育地域の土壌表面にマルチシートを形成する植物の生育調節方法であって、フィルム形成時において、ポリマーの加熱を必要とせず、環境・衛生問題がなく、しかも、特に耐雨水性に優れ且つ適切な生分解速度を有するマルチシートが得られる様に改良された、植物の生育調節方法を提供することにある。
【0008】
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、天然物質として知られる特定のポリマーの使用により、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得、本発明の完成に至った。
【0009】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、植物生育地域の土壌表面にマルチシート形成用組成物を散液してマルチシートを形成する植物の生育調節方法において、シェラック、ガムロジン、ウッドロジンの群から選ばれた1種以上のマルチシート形成用のポリマーと水および/または低級アルコールとを含有するマルチシート形成用組成物を使用することを特徴とする植物の生育調節方法に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、本発明で使用するマルチシート形成用組成物について説明する。この組成物は、シェラック、ガムロジン、ウッドロジンの群から選ばれた1種以上のポリマーと水および/または低級アルコールとを含有する。水および/または低級アルコールは、溶媒として機能し、上記のマルチシート形成用ポリマーである各成分を溶解し又は分散させる。
【0011】
本発明の最大の特徴は、マルチシート形成用ポリマーとして、上記の特定のポリマーを使用した点にある。すなわち、本発明は、前述の改良された従来法について、マルチシート形成前における使用特性および形成後におけるフィルム特性の観点から更に改良を加えたものであり、天然物質として知られる上記の特定のポリマーを選択したことにより、溶媒として水および/または低級アルコールの使用を可能にし、しかも、耐雨水性に優れ且つ適切な生分解速度を有するマルチシートが得られる様にしたものである。
【0012】
シェラック、ガムロジン、ウッドロジンは、水に不溶であるが低級アルコールに溶解する。しかしながら、シェラックは、カルボン酸基を含む樹脂酸の1種であり、塩に中和することにより水に溶解させることが出来る。また、ガムロジン及びウッドロジンは、シェラックの塩の存在下で水に分散させることが出来る。
これはシェラック塩による分散作用に基づくものと考えられる。シェラックの変中和用アルカリとしては、例えば、アンモニア、草木灰、水酸化カリウム等が好適に使用される。
【0013】
また、上記のシェラックには、熱溶融法、ソーダ法、溶剤抽出法によって得られ各種のシェラックが知られている。本発明においては、何れの種類のシェラックであってもよく、特にアルコールによって精製されたシェラック(アルコールシェラック)が好適に使用される。
【0014】
低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等の炭素数が通常6以下のアルコールが使用される。これらの中ではエタノールが好適に使用される。
【0015】
マルチシート形成用組成物としては、得られるシートの強度の点からシェラックと低級アルコールを含有する組成物(シェラックの低級アルコール溶液または当該溶液を含む組成物)が特に好適である。しかしながら、アルカリ中和された水溶性シェラックと水とを含有する組成物、または、アルカリ中和された水溶性シェラック及びロジンと水を含有する組成物であっても十分に使用し得る。ロジンに対する水溶性シェラックの割合は、通常1〜100重量%、好ましくは10〜50重量%である。
【0016】
組成物中のマルチシート形成用ポリマーの含有量は、通常1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%である。ポリマーの含有量が上記の範囲より低い場合はマルチシート形成時の散液量が多くする必要があり、上記の範囲より高い場合は組成物の粘度が高くなりすぎる。
【0017】
本発明においては、遮光によって雑草の発生を抑制し、太陽熱の吸収によって地表面の温度をコントロールするため、マルチシート形成用組成物中に炭素系材料を含有させることが出来る。炭素系材料としては、例えば、備長炭、竹炭、モミガラ燻炭、広葉樹木炭、針葉樹木炭、椰子殻炭などの各種の炭の他、黒鉛、コークス、カーボンブラック等が挙げられる。また、遮光材としては、上記の他に、弁柄、酸化チタン、水酸化鉄などの着色材を使用することも出来る。
【0018】
組成物中の炭素系材料や上記の着色剤の含有量は、通常1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%である。炭素系材料の含有量が上記の範囲より低い場合はその効果が不十分であり、上記の範囲より高い場合は組成物の粘度が高くなりすぎる。また、炭素系材料の含有量は、マルチシートの強度の観点から、マルチシート形成用ポリマーに対して10重量倍以下とするのがよい。
【0019】
本発明においては、種々の目的により、白色、褐色、黄色、黄土色、灰色などに着色されたマルチシートとするため、マルチシート形成用組成物中に各種の着色材を含有させることが出来る。着色材としては、二酸化チタン、アルミナ、亜鉛華、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ(以上は白色)、ベンガラ、酸化鉄(茶・褐色)、酸化チタン、酸化鉄、水酸化鉄(黄・黄土色)、クレー、カオリン、ケイ酸塩鉱物(白・灰色)、アルミニウム、マイカ、パール顔料(金属光沢)等が挙げられる。組成物中の着色材の含有量は、上記の炭素系材料の場合と同様の理由により同様の範囲とされる。
【0020】
本発明においては、マルチシート形成用組成物に防腐効果を付与するためリモネンを含有させることが出来る。組成物中のリモネンの含有量は、通常0.05〜50重量%である。更に、本発明においては、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ソルビトール等の可塑剤やN、P、K、Mg、Ca等の肥効成分を適量含有させることが出来る。
【0021】
上記のマルチシート形成用組成物にはコロイダルシリカを含有させることが好ましい。これにより、前記の無機材料の沈降が抑制され且つ組成物の保存性が高められる。しかも、マルチシートの耐水性が一層高められ且つ被膜強度が向上する。コロイダルシリカは、水和によって表面にOH基を有するのコロイド懸濁液である。従って、コロイダルシリカは、前述の水および/または低級アルコールの一部または全部として使用することも出来る。
【0022】
市販されているコロイダルシリカとしては、デュポン社製の「ルドックス(Ludux)」、モンサント社製の「サイトン(Syton)」、ナルコ社製の「ナルコアグ(Naclcoag)」、日産化学社製の「スノーテックス」等が挙げられる。組成物中のコロイダルシリカに由来する二酸化ケイ素(SiO2)の含有量は、通常1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%である。二酸化ケイ素の含有量が上記の範囲より低い場合はその効果が不十分であり、上記の範囲より高い場合は組成物の粘度が高くなりすぎる。また、二酸化ケイ素の含有量は、マルチシートの強度の観点から、マルチシート形成用ポリマーに対して50重量倍以下とするのがよい。
【0023】
上記のマルチシート形成用組成物は、例えば、ディゾルバー等の攪拌機、ボールミル、ニーダー等の分散機、ホモミキサー等の乳化機を適宜使用し、前記の必要な成分を均質となるまで処理することにより得ることが出来る。マルチシート形成用組成物の粘度は、25℃における測定値として、通常3〜5,000mPa・sとされる。
【0024】
次に、本発明に係る植物の生育調節方法について説明する。本発明においては、植物生育地域の土壌表面に前記のマルチシート形成用組成物を散液してマルチシートを形成する。この点は、前述の改良された従来法(特開平11−92304号公報、特開平2000−4687号公報に記載方法)と同じである。植物生育地域の土壌表面は、平畝、半台形畝、半円形畝の何れであってもよく、また、雑草の発生を阻止するために畝以外であってもよい。
【0025】
マルチシート形成用組成物の散液は、一般に適宜の噴霧装置を使用して行われる。土壌表面に噴霧された組成物は、それに含有される溶媒(水および/低級アルコール)の揮散除去により、1〜120分程度で乾燥されてマルチシートを形成する。斯かるマルチシートは、土壌表面の凹凸に関係なく形成され、次の様な機能を有する。すなわち、土壌の表面を結合するバインダーとしての機能を有し、優れた通気性のため、夏期の高温時には水蒸気を放散して地温を低下させ、水滴の溜まりを防止して根腐れを防止する。
【0026】
マルチシートの厚さは、強度、遮光性、熱の吸収および反射によるマルチシートとしての機能とその生分解速度を考慮して適宜決定されるが、通常0.01〜5mm程度とされる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例中の「部」は「重量部」を表す。
【0028】
製造例1
アルコールシェラック40部とエタノール50部とをディゾルバーで60分撹拌して褐色の液体を得た。この褐色液の全量とモミガラ燻炭10部とをダイノミルにて60分間分散処理した後、濾過により粗大粒子を除去し、黒色のマルチシート形成用組成物を得た。
【0029】
製造例2
製造例1において、アルコールシェラック40部の代わりに、アルコールシェラック20部およびガムロジン20部を使用した以外は、製造例1と同様にして黒色のマルチシート形成用組成物を得た。
【0030】
製造例3
シェラックアンモニウム塩20部と水70部とをディゾルバーで60分撹拌して褐色の液体を得た。この褐色液の全量とモミガラ燻炭10部とをダイノミルにて60分間分散処理した後、濾過により粗大粒子を除去し、黒色のマルチシート形成用組成物を得た。
【0031】
製造例4
製造例3において、シェラックアンモニウム塩20部の代わりに、シェラックアンモニウム塩10部およびガムロジン10部を使用した以外は、製造例1と同様にして黒色のマルチシート形成用組成物を得た。
【0032】
製造例5
完全ケン化ポリビニルアルコール5部と80℃の湯100部とをバスケットミルで分散処理してポリビニルアルコール水溶液を得た。この水溶液の全量とモミガラ燻炭10部とをダイノミルにて60分間分散処理した後、濾過により粗大粒子を除去し、黒色のマルチシート形成用組成物を得た。
【0033】
製造例6
製造例5において、完全ケン化ポリビニルアルコール5部の代わりに、ゼラチン3部を使用した以外は、製造例5と同様にして黒色のマルチシート形成用組成物を得た。
【0034】
製造例7
製造例5において、完全ケン化ポリビニルアルコール5部の代わりに、カゼイン10部を使用した以外は、製造例5と同様にして黒色のマルチシート形成用組成物を得た。
【0035】
表1に上記の製造例で得られたマルチシート形成用組成物の組成をまとめて示す。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例1〜4及び比較例1〜3
温室内に形成された7床の畝の上、製造例1〜6で得られたマルチシート形成用組成物をそれぞれ噴霧して1時間放置した。得られたマルチシートの厚さは何れも厚さ約0.03mmとなる様にした。そして、7床の畝ともに朝夕の定期的散水を同一条件で植物の生育区間として4ケ月に亘って繰り返し、その後、土壌中にすき込み、更に8ケ間(合計1年間)に亘って観察を行い、その間の異常の有無および生分解状態を調査した。
【0038】
製造例1〜4で得られたマルチシート形成用組成物を使用した実施例1〜4の場合は、何れも、散水によるシートの溶解や破損などの異常は全く認められず、そして、1年後にはシートの残骸は観察されなかった。
【0039】
製造例5で得られたマルチシート形成用組成物(ポリビニルアルコールベース)を使用した比較例1の場合、および、製造例6で得られたマルチシート形成用組成物(ゼラチンベース)を使用した比較例2の場合は、何れも、散水によるシートの溶解や破損が認められた。また、製造例7で得られたマルチシート形成用組成物(カゼインベース)を使用した比較例3の場合は、シートの生分解のため、植物の生育区間に亘ってマルチシート十分な状態で維持することが出来なかった。
【0040】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、フィルム形成時において、ポリマーの加熱を必要とせず、環境・衛生問題がなく、しかも、特に耐雨水性に優れ且つ適切な生分解速度を有するマルチシートが得られる様に改良された、植物の生育調節方法が提供され、本発明の産業的価値は大きい。
Claims (2)
- 植物生育地域の土壌表面にマルチシート形成用組成物を散液してマルチシートを形成する植物の生育調節方法において、シェラック、ガムロジン、ウッドロジンの群から選ばれた1種以上のマルチシート形成用のポリマーと水および/または低級アルコールとを含有するマルチシート形成用組成物を使用することを特徴とする植物の生育調節方法。
- マルチシート形成用組成物がシェラックと低級アルコールを含有する組成物である請求項1に記載の方法。
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