音響スピーカの駆動には、構成が簡単なA級、B級、AB級などのリニア型の電力増幅装置が多く利用されている。このようなリニア型電力増幅装置は、動作原理上、電力増幅装置自身の電力損失が大きく、出力電力が大きくなるに従って電力増幅装置自身の消費電力による発熱が大きくなる。このため、これを放散させるための大きな放熱器が必要になるなどの課題がある。そこで出力電力が大きい電力増幅装置には、スイッチング型の電力増幅装置が使われるようになっている。
スイッチング型の電力増幅装置は、電力を供給する出力段のパワースイッチをオンまたはオフすることにより、出力端子間に正電源電圧またはゼロ電圧または負電源電圧を高速に切替発生させる。この出力端子と負荷との間に備えた電力ロー・パス・フィルタ(LPF)で可聴外高周波数域電力を除去して、負荷に可聴帯域の電力のみを供給する。スイッチがオン状態の時は電流が流れるが端子間電圧は極めて小さく、また、オフ状態の時には電圧がかかるが通過電流はほとんどゼロになるため、これらの積であるスイッチ自身の電力消費は何れも小さくなる。これが、スイッチング型の電力増幅装置の消費電力が少ない理由である。なお、上述のような出力は、例えば、負荷の一端が接地されて他端に正電源電圧および負電源電圧を切替える構成や、負荷の両端それぞれにゼロまたは正の電圧を印加するブリッジ構成などがあり、後者の場合は、一つの電源のみで負荷に正負の電圧を印加することができる。
このようなスイッチング型の電力増幅装置の従来の技術としては、図14の回路ブロック図に示されるような構成のものが知られている。これを従来の第1の電力増幅装置とする。この構成は、ブリッジ・タイド・ロード(Bridge−Tide Load、以下、BTLと略称する)やHブリッジと呼ばれ、その接続点を出力端子とする2つのスイッチの直列回路を並列に1対備え、各出力端子間に負荷部を接続したブリッジ構成のものである。図の左側に描いた2つのスイッチの直列回路を第1のスイッチ回路、右側を第2のスイッチ回路とする。以下にその動作を説明する。
図14において、電力増幅装置は変調回路810及び主回路180を備える。主回路180は第1のスイッチ回路182と第2のスイッチ回路183と、電力LPFのインダクタ185と負荷186との直列回路からなる負荷部(電力LPFを構成する負荷186に並列のコンデンサは省略)と、電源部である直流電源103から構成される。直流電源103は基準電位となる負極を接地され、正極から電源電圧を主回路180へ供給する。更に、第1のスイッチ回路182はハイサイドスイッチ1821とローサイドスイッチ1822との直列回路、また、第2のスイッチ回路183はハイサイドスイッチ1831とローサイドスイッチ1832との直列回路で構成されている。ハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの接続点が各スイッチ回路の出力端子である。
さらに、電力増幅装置は、第1の分配回路120、第2の分配回路130、ハイサイドスイッチ1821を制御するスイッチ制御回路140、ローサイドスイッチ1822を制御するスイッチ制御回路150、ハイサイドスイッチ1831を制御するスイッチ制御回路160、ローサイドスイッチ1832を制御するスイッチ制御回路170を含む。分配回路120は、変調回路810から出力される変調信号M1をスイッチ制御回路140とスイッチ制御回路150に分配し、分配回路130は、変調回路810から出力される変調信号M2をスイッチ制御回路160とスイッチ制御回路170に分配する。変調回路810は、入力信号Vsを発生する入力信号源110、三角波信号Vtを発生させる三角波発生器111、入力信号Vsと三角波信号Vtとを比較出力する比較器112を含む。電源102は変調回路810などの回路に電力を供給する。
さらに、各スイッチ制御回路140,150,160,170は、各々のスイッチのオン/オフ操作をするスイッチドライバ141,151,161,171と、各々のスイッチの過電流状態などを検出する状態検出回路142,162,162,172を備えている。主回路180の各スイッチには、半導体に集積しやすく、比較的小さい面積で低いオン抵抗が得られるNチャネル型FETを用いている。このNチャネル型FETをオンするためには、ゲート電位をソース電位に対して3〜5V高くすればよく、また、オフにするにはこれをゼロにすればよい。具体的に、ローサイドスイッチのNチャネル型FETをオンする場合は、ゲートには接地電位を基準に必要な電圧を与えればよく、直流電源102から電源供給される回路から直接駆動ができる。一方、ハイサイドスイッチのNチャネル型FETは、そのソースがスイッチ回路の出力端子であるため、接地電位と直流電源103の電源電圧の間で変動する。このために、ハイサイドスイッチのNチャネル型FETを駆動するには、特別に工夫されたスイッチ制御回路が必要になる。
図14において、ハイサイドスイッチ1821を駆動するスイッチ制御回路140には、ハイサイドスイッチ1821のソース電位を基準とした浮動電源回路144と、変調回路810などの接地電位を基準とする回路との信号交換を担うレベルシフト回路143が備えられている。スイッチ制御回路140内の各電位は第1のスイッチ回路182の出力端子の電位変動に追従して動く。このため、第1のスイッチ回路182の出力端子の電位が変動しても、スイッチ制御回路140は常にスイッチ1821のソース電位を基準に動作する。浮動電源回路144は、コンデンサ1441とダイオード1442とで構成される。第1のスイッチ回路182の出力端子が接地電位(以後、低電位と表記する)の際は、直流電源102からの電流がダイオード1442を介してコンデンサ1441を充電すると共に、スイッチ制御回路140内の各回路に電力を供給する。第1のスイッチ回路182の出力端子が直流電源103の電源電圧(以後、高電位と表記する)になった際は、コンデンサ1441に蓄積されたエネルギーでスイッチ制御回路140内の回路の電力をまかなう。ダイオード1442は第1のスイッチ回路182の出力端子が高電位になった際に、コンデンサ1441の電荷が直流電源102に逆流しない役割を持っている。
レベルシフト回路143は、接地電位を基準として動作している分配回路120からのスイッチオン/オフ制御信号を、変動する第1のスイッチ回路182の出力端子の電位を基準とする回路に伝える役割を持っている。なお図示していないが、状態検出回路142からのスイッチ状態信号は、接地電位を基準とするシステムに伝える回路を備える。このような変動する基準レベル間の信号伝達では、送信側にて信号を電流に置き換えて電流源で出力し、受信側でこの電流をそのまま、または、電圧に置き換えて受け取る回路構成が一般的である。
図15は、図14に示した従来の第1の電力増幅装置の各部動作波形図である。以下に図14の動作波形図を用いて、動作を説明する。入力信号源101からの入力信号Vsと三角波発生器111からの三角波信号Vtとの比較結果である、比較器112の出力信号L0は、入力信号Vsが三角波信号Vtより大きい(Vs>Vt)場合にハイレベル(以後、“H”と表記する)になる。そして、この信号L0が“H”である時間幅は、入力信号Vsが無信号(ゼロ電圧)の場合は三角波信号Vtの周期Tの1/2になり、三角波信号Vtの周期Tとの割合である時比率δで表わすと、δ=0.5となる。さらに、入力信号Vsの瞬時値が正の場合、時比率δは0.5より大きくなり(δ>0.5)、また、入力信号Vsの瞬時値が負の場合、時比率δは0.5より小さくなる(δ<0.5)。
さて、この比較器112の信号L0は、そのまま変調回路810出力される変調信号M1になり、また、これをインバータ1140で反転したものが変調信号M2になる。さらに、信号M1は第1の分配回路120のバッファ121及びインバータ122を経由し、スイッチ制御回路140及びスイッチ制御回路150を経て、スイッチ1821及び1822をオン/オフ制御する。すなわち、信号M1が“H”の時、スイッチ制御回路140は、バッファ121からの“H”信号をレベルシフト回路143で受けて、スイッチドライバ141を介してスイッチ1821をオンさせ、また、スイッチ制御回路150は、インバータ122の“L” 信号を受けて、スイッチドライバ151を介してスイッチ1822をオフさせて、最終的に、第1のスイッチ回路182の出力は高電位になる。反対に、信号M1が“L”の時は、第1のスイッチ回路182の出力は低電位になる。信号M2は信号M1と論理反転しているため、第1のスイッチ回路182の出力が高電位の時は、第2のスイッチ回路183の出力が低電位になり、反対に、第1のスイッチ回路182の出力が低電位の時は、第2のスイッチ回路183の出力が高電位になる。
以上のような、各スイッチ回路の状態を表したのが図16の状態遷移図である。第1のスイッチ回路182の出力端子と第2のスイッチ回路183の出力端子の電位は、互いに逆極性の関係にあり、「第1のスイッチ回路182の出力端子が高電位で第2のスイッチ回路183の出力端子が低電位(HL)」または「第1のスイッチ回路182の出力端子が低電位で第2のスイッチ回路183の出力端子が高電位(LH)」の2状態がある。そして、インダクタ185及び負荷186の直列体に印加される電圧Vpnのとり得る状態も、正の電源電圧または負の電源電圧の2通りになる。
ここで、上記の変調回路810で生成された信号M1及びM2のパルス幅(“H”の時間幅)と、入力信号Vsとの関係を説明する。入力信号Vsの瞬時値は、比較器112で三角波信号Vtの瞬時値と比較され、信号Vsの瞬時値に対応するパルス幅を信号L0が得られ、信号L0はそのまま信号M1となり、また、信号L0の論理反転結果が信号M2となる。三角波信号Vtは、時間に対する電圧変化が線形になるように設定され、また、三角波信号Vtの周期は信号Vsの変化よりも十分に短く設定されているため、信号M1のパルス幅は信号Vsの瞬時値に比例したものになる。いま、三角波信号Vtの振幅をVpt(正及び負のピーク電圧の絶対値)とし、信号M1の周期Tにおけるパルス幅の割合を時比率δ1とすると、時比率δ1は下記の式(1)で表される。
δ1=(1+Vs/Vpt)/2 (1)
同様に信号M2の周期Tにおけるパルス幅の割合を時比率δ2とする。信号M2は信号M1を論理反転したものなので、時比率δ2は1からδ1を減じた下記の式(2)で表わされる。
δ2=(1−Vs/Vpt)/2 (2)
但し、|Vs/Vpt|<1であり、この条件は、スイッチング型の電力増幅装置の変調信号の生成を、三角波と比較器で実現する方法の必要条件であり、もし、|Vs/Vpt|の値が1を越えると、比較器112の信号L0は、三角波信号Vtの一周期を通じて、“H”または“L”の状態に固定されるため、信号Vsの大きさに比例した時比率のパルスの生成ができず、電力増幅としての動作ができない。
直流電源103の電源電圧をVhとする。信号M1が“H”且つ信号M2が“L”の場合、インダクタ185及び負荷186の直列体に印加される電圧Vpnは、正の電源電圧(Vh)となり、インダクタ185によって負荷186の通過電流が正方向に積分される。反対に、信号M1が“L”且つ信号M2が“H”の場合、電圧Vpnは負の電源電圧(−Vh)となり、インダクタ185によって負荷186の通過電流が負方向に積分される。最終的に、負荷186に発生する電圧Voは、正の電源電圧の印加時間から負の電源電圧の印加時時間を減じた値に比例し、さらに、その電源電圧Vhを乗じた値になる。正の電源電圧の印加時間の1周期Tにおける割合は、信号M1の時比率δ1に等しく、負の電源電圧の印加時時間の1周期Tにおける割合は、信号M2の時比率δ2に等しい。すなわち、負荷186に発生する電圧Voは下記の式(3)ように表せ、式(1)及び(2)から、入力信号Vsに比例した出力を得ることができる。
Vo=(δ1−δ2)・Vh=(Vh/Vpt)・Vs (3)
このように、従来の第1の電力増幅装置では、直流電源103の電力は入力信号Vsに比例した電力として負荷186へ変換供給される。
図17は従来の第2の電力増幅装置のブロック図を示したもので、図18は動作波形図である。図17において、図14に示した従来の第1の電力増幅装置と同じ構成と機能を有する要素については、同じ符号を付与し、その説明を省略する。図14に示した従来の第1の電力増幅装置と異なるのは、変調回路910の構成であり、従来の第1の電力増幅装置の変調回路810に、比較器1122とリニア反転器1131が追加されている点である。比較器1121は、従来の第1の電力増幅装置の変調回路810の比較器112に相当する。
次に、図18の動作波形図を用いて、動作を順を追って説明する。入力信号源101の入力信号Vsは、比較器1121の正入力に印加されるとともに、リニア反転器1131で極性反転されて信号Vsrとなって、比較器1122の正入力に印加される。比較器1121及び比較器1122の各負入力には、三角波発生器111から周期Tの三角波信号Vtが印加されている。比較器1121の出力信号L1は、入力信号Vsが三角波信号Vtより大きい時(Vs>Vt)に“H”になり、また、比較器1122の出力信号L2は、信号Vsrが三角波信号Vtより大きい時(Vsr>Vt)に“H”になる。前述のように、比較器1121の構成は、従来の第1の電力増幅装置の比較器112と同様であり、得られる出力信号L1も比較器112の出力信号L0と同様のものが得られる。一方の比較器1122から得られる出力信号L2のパルス幅は、正入力に印加される信号の極性が比較器1121と逆転しているため、出力信号L1のパルス幅の増減の傾向が逆になっている。信号L1が“H”である期間が1周期Tに占める割合である時比率δ1は、入力信号Vsが無信号の場合は50%となり、入力信号Vsの瞬時値が正の場合は、時比率は50%より大きくなり、また、入力信号Vsの瞬時値が負の場合は50%より小さくなる。一方、信号L2の時比率δ2は、入力信号Vsが無信号の場合は50%となり、入力信号Vsの瞬時値が正の場合は、時比率は50%より小さくなり、また、入力信号Vsの瞬時値が負の場合は50%より大きくなる。
さて、信号L1は、そのまま変調回路910の出力信号M1になり、また、信号L2も出力信号M2になる。そして、信号M1は第1のスイッチ回路側分配回路120のバッファ121及びインバータ122を経由して、スイッチ制御回路140及びスイッチ制御回路150を経て、スイッチ1821及びスイッチ1822をオン/オフ制御する。すなわち、信号M1が“H”の時、スイッチ制御回路140は、バッファ121の“H”をレベルシフト回路143で受けて、スイッチドライバ141を介してスイッチ1821をオンさせ、また、スイッチ制御回路150は、インバータ122の“L”を受けて、スイッチドライバ151を介してスイッチ1822をオフさせ、第1のスイッチ回路182の出力は高電位になる。反対に、信号M1が“L”の時は、第1のスイッチ回路182の出力は低電位になる。信号M2についても、第1のスイッチ回路側と同様で、信号M2が“H”の時は、第2のスイッチ回路183の出力は高電位になり、また、信号M2が“L”の時は、第2のスイッチ回路183の出力は低電位になる。
図19は主回路180の各スイッチのオン/オフの状態を示した状態遷移図である。前述の従来の第1の電力増幅装置では、第1のスイッチ回路182と第2のスイッチ回路183の各出力電位は、同じタイミングで互いに逆極性の動作をしていたが、この従来の第2の電力増幅装置では、それぞれのスイッチ回路の出力状態は、互いに独立に変化し、その両方が高電位または低電位になる場合もある。すなわち、図19に示したように、第1のスイッチ回路182と第2のスイッチ回路183の各出力状態は、「第1のスイッチ回路182の出力端子が高電位で第2のスイッチ回路183の出力端子が低電位(HL)」、「第1のスイッチ回路182の出力端子が高電位で第2のスイッチ回路183の出力端子も高電位(HH)」、「第1のスイッチ回路182の出力端子が低電位で第2のスイッチ回路183の出力端子が高電位(LH)」、「第1のスイッチ回路182の出力端子が低電位で第2のスイッチ回路183の出力端子も低電位(LL)」の4状態がある。(HH)または(LL)の状態は、インダクタ185及び負荷186の直列体の両端が短絡された状態であり、インダクタ185及び負荷186の直列体に印加される電圧Vpnのとり得る状態は、正の電源電圧またはゼロVまたは負の電源電圧の3状態になる。
ここで、上記の変調回路910で生成された信号M1及びM2のパルス幅(“H”である時間幅)と、入力信号Vsとの関係を説明する。三角波信号Vtは、時間に対する電圧変化が線形になるように設定され、また、三角波信号Vtの周期は入力信号Vsの変化よりも十分に短く設定されているため、信号M1のパルス幅は入力信号Vsの瞬時値に比例し、また、信号M2のパルス幅は入力信号Vsrの瞬時値に比例したものになる。いま、三角波信号Vtの振幅をVptとすると、信号M1の時比率δ1は下記の式(4)で表される。
δ1=(1+Vs/Vpt)/2 (4)
また、信号M2の時比率δ2は、入力信号Vsの符号が逆であるため、上記の信号M1の入力信号Vsの符号を変えた下記の式(5)で表現できる。
δ2=(1−Vs/Vpt)/2 (5)
ただし、|Vs/Vpt|<1であることは従来の第1の電力増幅装置の場合と同様である。
信号M1が“H”且つ信号M2が“L”の場合、インダクタ185及び負荷186の直列体に印加される電圧Vpnは、正の電源電圧(Vh)となり、インダクタ185によって負荷186の通過電流が正方向に積分される。また、信号M1が“L”且つ信号M2が“H”の場合、電圧Vpnは負の電源電圧(−Vh)となり、インダクタ185によって負荷186の通過電流が負方向に積分される。さらに、信号M1が“H”且つ信号M2が“H”の場合、もしくは、信号M1が“L”且つ信号M2が“L”の場合、インダクタ185と負荷186の直列回路の端子間電圧はゼロVとなるため、外部からの電力供給はなくなる。
入力信号Vsの変化が三角波信号Vtの周期に対して十分に緩慢であると見なせば、信号M1及びM2の“H”区間は、それぞれ三角波信号Vtのディップ時刻を中心とした対象形になり、あたかも、時比率の大きな方が小さな方を遮るように並んでいる。上記の状態(HL)の時比率は信号M1の時比率δ1から信号M2の時比率δ2を減じた値(δ1−δ2)になる。反対に、状態(LH)の時比率は信号M2の時比率δ2から信号M1の時比率δ1を減じた値(δ2−δ1)となる。なお、この状態(LH)の時比率(δ2−δ1)に出力電圧Voの極性を加味させると、正の場合と同じ(δ1−δ2)となり、式(4)及び(5)を考慮すると、負荷186に発生する電圧をVoは、以下の式(6)のように表せ、入力信号Vsに比例した出力を得ることができる。
Vo=(δ1−δ2)・Vh=(Vh/Vpt)・Vs (6)
図18の動作波形図から判るように、入力信号Vsが無信号や小信号レベルの時においては、第1のスイッチ回路182と第2のスイッチ回路183には時比率が50%になるが、各スイッチ回路の出力電位が同期して同じ値になるため、インダクタ185及び負荷186の直列体に印加される電圧はゼロになる。一方、小信号のレベルが加わると、第1のスイッチ回路182と第2のスイッチ回路183の時比率は、一方は50%を中心に微増し、他方は微減するため、インダクタ185及び負荷186の直列体には、それぞれのスイッチ回路の出力電位の立ち上がり立ち下がりの時差区間に狭パルスが印加される。このような無信号及び小信号の時には、インダクタ185及び負荷186の直列体に印加される正もしくは負の電源電圧のパルス幅が狭いので、電源から出力される電流が少なくなり、消費電力を小さくできる。同時に、電磁波の放射量も少なくすることができる。特に、一般的な音声信号のような平均レベルが低い信号では、このような従来の第2の電力増幅装置の構成の方が、先の従来の第1の電力増幅装置より有効である。
以上のように、従来の第2の電力増幅装置では、変調回路910に制御のもと、インダクタ185及び負荷186の直列体には、直流電源103の電圧が正方向または負方向またはゼロが加わり、直流電源103の電力は入力信号Vsに比例した電力として負荷186へ変換供給される。その結果、入力信号Vsの信号レベルが小さい際に、ゼロV印加状態が長くなり、消費電力と電磁波の輻射が低く抑えられる(例えば、特許文献1参照)。
上記2つの従来のスイッチング型の電力増幅装置における無信号時の出力時比率の違いは、リニア増幅器における出力トランジスタの無信号時のバイアス電流の違いによる区別と相似性が見出せる。すなわち、リニア増幅器のA級動作の無信号時のバイアス電流は最大出力時の50%であり、AB級動作ではこれが数%まで小さく、さらに、B級動作ではこれがほぼゼロになる。これらをスイッチング型電力増幅器の時比率に対応させると、図14の従来例のスイッチング型電力増幅装置はリニア増幅器のA級動作に対応し、また、図17の従来例のスイッチング型電力増幅装置はリニア増幅器のB級動作に対応している。このリニア増幅器のB級動作およびAB級動作の目的も、消費電力の低減である。
尚、スイッチング型の電力増幅装置には、三角波発生器を用いないものもある。例えば特許文献2や特許文献3のような、デルタシグマ変調方式と呼ばれる電力増幅装置である。これは、基本的には、入力信号Vsと出力からの帰還パルス信号との差信号を求め、それを重み付けフィルタ(差分積分器)で処理した後に、比較器(1ビット量子化器)で電圧の量子化を行い、さらにクロック発生器と遅延器によって時間軸の量子化を行った後のパルス信号で主回路のスイッチ回路を操作するものである。そして、最終的に、入力信号Vsと出力からの帰還パルス信号との差信号を小さくするように負帰還動作することで、主回路に接続された負荷に入力信号Vsに比例した電圧が発生するようになっている。
実用新案登録第852597号
特開平5−063457号
特開平5−152867号
以下、添付の図面を参照しながら本発明の電力増幅装置の好ましい実施を説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の電力増幅装置のブロック図である。電力増幅装置は、変調回路110と、第1及び第2の分配回路120と、130、第1及び第2のハイサイドスイッチ制御回路140、160と、第1及び第2のローサイドスイッチ制御回路150、170とを備える。
主回路180は第1のスイッチ回路182と第2のスイッチ回路183と、電力LPFのインダクタ185と負荷186との直列回路からなる負荷部(電力LPFを構成する負荷186に並列のコンデンサは省略)と、電源部である直流電源103から構成される。直流電源103は基準電位となる負極を接地され、正極から電源電圧を主回路180へ供給する。第1のスイッチ回路182は、第1のハイサイドスイッチ1821と、第1のローサイドスイッチ1822との直列回路で構成される。また、第2のスイッチ回路183は第2のハイサイドスイッチ1831と第2のローサイドスイッチ1832との直列回路で構成される。ハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの接続点が各スイッチ回路の出力端子である。
第1のハイサイドスイッチ制御回路140は第1のハイサイドスイッチ1821を制御する。第1のローサイドスイッチ制御回路150は第1のローサイドスイッチ1822を制御する。第2のハイサイドスイッチ制御回路160は第2のハイサイドスイッチ1831を制御する。第2のローサイドスイッチ制御回路170は第2のローサイドスイッチ1832を制御する。第1の分配回路120は、変調回路110から出力される第1の変調信号M1を第1のハイサイドスイッチ制御回路140と第1のローサイドスイッチ制御回路150に分配し、第2の分配回路130は、変調回路110から出力される第2の変調信号M2を第2のハイサイドスイッチ制御回路160と第2のローサイドスイッチ制御回路170に分配する。
変調回路110は入力信号Vsを発生する入力信号源110と、入力信号Vsを、アナログ的に極性を反転するリニア反転器1131と、三角波信号Vtを発生させる三角波発生器111と、比較器1121及び1122と、インバータ1141及び1142と、ANDゲート1143及び1144と、変調回路110などの回路に電力を供給する直流電源102とを含む。
各スイッチ制御回路140,150,160,170は、各々のスイッチのオン/オフ操作をするスイッチドライバ141,161,161,171と、各々のスイッチの過電流状態などを検出する状態検出回路142,162,162,172とを備えている。主回路180の各スイッチには、半導体に集積しやすく、比較的小さい面積で低いオン抵抗が得られるNチャネル型FETを用いている。このNチャネル型FETをオンするためには、ゲート電位をソース電位に対して3〜5V高くすればよく、また、オフにするにはこれをゼロにすればよい。具体的に、ローサイドスイッチのNチャネル型FETをオンする場合は、ゲートには接地電位を基準に必要な電圧を与えればよく、直流電源102から電源供給される回路から直接駆動ができる。一方、ハイサイドスイッチのNチャネル型FETは、そのソースがスイッチ回路の出力端子であるため、接地電位と直流電源103の電源電圧の間で変動する。このために、ハイサイドスイッチのNチャネル型FETを駆動するには、特別に工夫されたスイッチ制御回路が必要になる。
図1において、ハイサイドスイッチ1821を駆動するスイッチ制御回路140は、ハイサイドスイッチ1821のソース電位を基準とした浮動電源回路144と、変調回路110などの接地電位を基準とする回路との信号交換を担うレベルシフト回路143が備える。スイッチ制御回路140内の各電位は第1のスイッチ回路182の出力端子の電位変動に追従して動く。このため、第1のスイッチ回路182の出力端子の電位が変動しても、スイッチ制御回路140は常にスイッチ1821のソース電位を基準に動作させることができる。浮動電源回路144は、コンデンサ1441とダイオード1442とで構成される。第1のスイッチ回路182の出力端子が接地電位(以後、「低電位」と表記する。)の際は、直流電源102からの電流がダイオード1442を介してコンデンサ1441を充電すると共に、スイッチ制御回路140内の各回路に電力を供給する。第1のスイッチ回路182の出力端子が直流電源103の電源電圧(以後、「高電位」と表記する。)になった際は、コンデンサ1441に蓄積されたエネルギーでスイッチ制御回路140内の回路の電力をまかなう。ダイオード1442は第1のスイッチ回路182の出力端子が高電位になった際に、コンデンサ1441の電荷が直流電源102に逆流しない役割を持っている。
この異なる基準電位を有する分配回路120とレベルシフト回路143の間の信号のやりとりは、送信側にて信号を電流に置き換えて電流源で出力し、受信側でこの電流をそのまま、または、電圧に置き換えて受け取る回路構成が一般的である。
図2は、分配回路120とレベルシフト回路143をより詳しく表したブロック図である。図2において、分配回路120は平衡出力を有する平衡変換回路1211と、高耐圧FETの1212及び1213とから構成され、レベルシフト回路143は抵抗1431及び1432と、差動受信回路1433とから構成されている。もう一方の分配回路130とレベルシフト回路163についても、これと同様な構成になっている。状態検出回路152はローサイドスイッチ1822の電流検出を行う回路であって、電流分流用スイッチ1521と電流検出抵抗1522を含み、ローサイドスイッチ1822に並列接続されている。増幅装置1523は、この電流検出抵抗1522の検出値を扱いやすいレベルまで増幅する。
変調回路110から出力され、接地電位を基準とした第1の変調信号M1は、先ず、バッファ121の平衡変換回路1211及び高耐圧FET1212及び1213によって平衡な電流信号対に変換される。この電流信号対はそれぞれレベルシフト回路143の抵抗1431及び1432に流れ、その端子間に平衡な信号電圧を発生する。この抵抗1431及び1432の一端は、浮動電源回路144に接続されているため、抵抗1431及び1432で発生した平衡な信号電圧の基準はスイッチ1821のソース電位に追従して変化する。この平衡な信号電圧は、同じように追従動作する差動受信回路1433にて、スイッチ1821のソース電位に追従動作する不平衡のスイッチオン/オフ制御信号に変換され、スイッチ1821のゲート・ソース間電圧になる。ところで、高耐圧FETの1212及び1213は、素子の特性上、そのソース・ドレイン間電圧の変動があっても、そのドレイン電流は変動が少ない定電流動作をする。そのため、スイッチ1821のソース電位が高電位であっても、低電位であっても、電流値はほぼ同じ値であり、後段の差動受信回路1433で状態が判別できる。さらに、信号伝送を平衡にしているために、各スイッチのオン/オフに起因する雑音が混入してもこれが相殺され、誤動作し難くなっている。状態検出回路152は、ローサイドスイッチ1822に並列に、これと相似系な素子構造を持つ電流分流用スイッチ1521と電流検出抵抗1522とを隣接配置させて、ローサイドスイッチ1822の通過電流に比例した値を検出するように構成している。
図3は、図1に示したスイッチング型の電力増幅装置の各部の動作波形図である。図3の動作波形図を用いて、電力増幅装置の動作を説明する。
入力信号源101からの入力信号Vsは、比較器1121の正入力に印加されるとともに、リニア反転器1131で極性反転されて信号Vsrとなって、比較器1122の正入力に印加される。比較器1121及び1122の負入力には、三角波発生器111から周期Tの三角波信号Vtが印加されており、三角波信号Vtは、時間に対する電圧変化が線形になるように設定されている。比較器1121から出力される第1の信号L1は、入力信号Vsが三角波信号Vtより大きい時(Vs>Vt)にハイレベル(“H”)になり、また、比較器1122から出力される第2の信号L2は、信号Vsrが三角波信号Vtより大きい時(Vsr>Vt)に“H”になる。以上までの構成は、図16の従来の第2の電力増幅装置の構成と同じで、信号Vsの波形に対する各比較器から出力される第1の信号L1及び第2の信号L2の波形も同じになる。
今、三角波信号Vtは平均値がゼロで且つ正負の両ピークの絶対値が同一であるとし、また、信号Vsは正弦波で且つ平均値がゼロであるとすると、1周期Tにおける信号L1の“H”の期間の割合である時比率は、信号Vsが無信号の場合は50%となり、信号Vsの瞬時値が正の場合は50%より大きくなり、また、信号Vsの瞬時値が負の場合は50%より小さくなる。一方、信号L2の時比率は、信号Vsが無信号の場合は50%となり、信号Vsの瞬時値が正の場合は50%より小さくなり、また、信号Vsの瞬時値が負の場合は50%より大きくなり、L1と逆になる。
次に、第1の信号L1と、第2の信号L2の論理反転信号とが、ANDゲート1143にて論理積演算され、第1の変調信号M1が生成される。同様に、第2の信号L2と、第1の信号L1の論理反転信号とが、ANDゲート1144で論理積演算され、第2の変調信号M2が生成される。信号M1及び信号M2の波形は、図3のタイムチャートに示すとおりである。すなわち、信号M1は、信号L1の“H”の区間から信号L2の“H”の区間を切り取った波形に、また、信号M2は、信号L2の“H”の区間から信号L1の“H”の区間を切り取った波形になる。この信号L1及びL2の“H”の区間の変化は、時比率が50%を上回った側が下回った側を、その立ち上がり/立ち下がりタイミングを隠すように広がるため、小さい時比率側は大きい時比率側を中央から抜き取ることになる。したがって、信号M1の時比率の値は、信号L1の時比率から信号L2の時比率を減じ、信号L1の時比率より信号L2の時比率が大きい場合はゼロになる。また、信号M2の時比率の値は、信号L2の時比率から信号L1の時比率を減じ、信号L2の時比率より信号L1の時比率が大きい場合はゼロになる。
例えば、信号Vsが無信号時では信号L1の時比率は50%であり、信号L2の時比率も50%となるため、信号L1及び信号L2に判定の遅延が無ければ、各々の立ち上がり立ち下がりのタイミングが同じで、信号M1及び信号M2は互いに切り取られ、時比率は共に0%になる。一方、信号Vsの瞬時値が正になると信号L1の時比率は50%より大きく、信号L2の時比率が50%より小さくなるため、信号M1の時比率は信号L1の時比率から信号L2の時比率を減じた値になり、他方の信号M2の時比率はゼロになる。反対に、信号Vsの瞬時値が負になると信号L1の時比率は50%より小さく信号L2の時比率が50%より大きくなるため、信号M1の時比率はゼロになり、他方の信号M2の時比率は信号L2の時比率から信号L1の時比率を減じた値になる。これら、信号M1及びM2の信号は、各々の分配回路及びスイッチ制御回路を経て、主回路の各スイッチを制御するように構成されている。
さて、第1の変調信号M1は第1の分配回路120のバッファ121及びインバータ122を経由して、スイッチ制御回路140及びスイッチ制御回路150を経て、スイッチ1821及び1822をオン/オフ制御する。すなわち、信号M1が“H”の時、スイッチ制御回路140は、バッファ121の“H”をレベルシフト回路143で受けて、スイッチドライバ141を介してハイサイドスイッチ1821をオンさせ、また、スイッチ制御回路150は、インバータ122の“L”レベルを受けて、スイッチドライバ151を介してローサイドスイッチ1822をオフさせ、第1のスイッチ回路182の出力は高電位になる。反対に、信号M1が“L”の時は、第1のスイッチ回路182の出力は低電位になる。第2の変調信号M2についても、第1のスイッチ回路側と同様で、信号M2が“H”の時は、第2のスイッチ回路183の出力は高電位になり、また、信号M2が“L”の時は、第2のスイッチ回路183の出力は低電位になる。
図4は実施の形態1の電力増幅装置の主回路180の各スイッチのオン/オフの状態を示した状態遷移図である。第1のスイッチ回路182と第2のスイッチ回路183の各出力の状態として以下の3つの状態のみを含む。
(HL):第1のスイッチ回路182の出力端子が高電位(H)、第2のスイッチ回路183の出力端子が低電位(L)。図4(a)参照。
(LH):第1のスイッチ回路182の出力端子が低電位(L)、第2のスイッチ回路183の出力端子が高電位(H)。図4(c)参照。
(LL):第1のスイッチ回路182の出力端子が低電位(L)、第2のスイッチ回路183の出力端子も低電位(L)。図4(b)参照。
すなわち、本実施形態の電力増幅装置では、図18に示した従来の第2の電力増幅装置の状態遷移図のような「第1のスイッチ回路182の出力端子が高電位(H)で、第2のスイッチ回路183の出力端子も高電位(H)」となる状態(HH)が存在しない。(LL)の状態は、インダクタ185及び負荷186の直列体の両端が短絡された状態であり、印加される電圧Vpnのとり得る状態は、正の電源電圧またはゼロVまた負の電源電圧の3状態になる。
ここで、上記の変調回路110で生成された第1の変調信号M1及び第2の変調信号M2のパルス幅(“H”である時間幅)と、入力信号Vsとの関係を説明する。その前にまず、その基となる第1の信号L1及び第2の信号L2のパルス幅と、入力信号Vsとの関係を確認する。信号L1及び信号L2は、前述の従来の第2の電力増幅装置と同一の回路構成をとっているために、その信号M1及び信号M2と同一の関係になる。すなわち、三角波信号Vtは、時間に対する電圧変化が線形になるように設定され、また、三角波信号Vtの周期は信号Vsの変化よりも十分に短く設定されているため、信号M1のパルス幅は信号Vsの瞬時値に比例し、同じように、信号M2のパルス幅は信号Vsrの瞬時値に比例したものになる。いま、三角波信号Vtの振幅をVptとすると、信号L1の時比率δ1’は下記の式(7)で表される。
δ1’=(1+Vs/Vpt)/2 (7)
また、信号L2の時比率δ2’は、入力信号Vsの符号が逆であるため、上記の信号L1の入力信号Vsの符号を変えた下記の式(8)で表現できる。
δ2’=(1−Vs/Vpt)/2 (8)
ただし、|Vs/Vpt|<1であることは従来の電力増幅装置の場合と同様である。
上記で説明した動作より、第1の変調信号M1の時比率δ1の値は、式(9)のように、第1の信号L1の時比率δ1’から第2の信号L2の時比率δ2’を減じ(δ1=δ1’−δ2’)、また、信号L1の時比率より信号L2の時比率が大きい場合はゼロになる。
δ1=δ1’−δ2’=Vs/Vpt,
ただし、δ1’−δ2’<0の時はδ1=0 (9)
また、同様に、第2の変調信号M2の時比率の値は、式(10)のように、第2の信号L2の時比率から第1の信号L1の時比率を減じ(δ2=δ2’−δ1’)、また、信号L2の時比率より信号L1の時比率が大きい場合はゼロになる。
δ2=δ2’−δ1’=−Vs/Vpt,
ただし、δ2’−δ1’<0の時はδ2=0 (10)
信号M1が“H”且つ信号M2が“L”の場合、インダクタ185及び負荷186の直列体に印加される電圧Vpnは、正の電源電圧(Vh)となり、インダクタ185によって負荷186の通過電流が正方向に積分される。また、信号M1が“L”且つ信号M2が“H”の場合、電圧Vpnは負の電源電圧(−Vh)となり、インダクタ185によって負荷186の通過電流が負方向に積分される。さらに、信号M1が“L”且つ信号M2が“L”の場合、インダクタ185と負荷186の直列回路の端子間電圧はゼロVとなるため、外部からの電力供給はなくなる。
図3の動作波形図のように、状態(HL)となるのは、信号L1の時比率δ1’が50%以上の時で、その時比率は信号M1の時比率δ1になる。また、状態(LH)となるのは、信号L1の時比率が50%以下の時で、その時比率は信号M2の時比率δ2になる。なお、式(8)及び(10)から、δ1及びδ2は、一方が正の時は、他方はゼロであるため、別な見方をすると、インダクタ185及び負荷186の直列体に正の電源電圧(Vh)を印加する量を時比率δ1で制御し、また、負の電源電圧(−Vh)を印加する量を時比率δ2で制御していることになる。以上から、負荷186に発生する電圧Voは、以下の式(11)のように表せ、入力信号Vsに比例した出力を得ることができる。
Vo=(δ1−δ2)・Vh=(Vh/Vpt)・Vs (11)
図3において、入力信号Vsが無信号時では、第1のスイッチ回路182と第2のスイッチ回路183はともに時比率が0%になり、この動作が前述の従来の第2の電力増幅装置の時比率の50%と大きく異なる点である。次に、入力信号Vsが僅かに正または負に増加すると、第1のスイッチ回路182と第2のスイッチ回路183の時比率のうち、一方は0%から微増し、他方は0%のままで低電位を維持するため、インダクタ185及び負荷186の直列体には一方の側のスイッチ回路からの狭パルスのみが印加される。
このように、無信号及び小信号の時には、インダクタ185及び負荷186の直列体に印加されるパルス幅が狭いので、各スイッチが導通状態の際に流れる電流が少なくなり、各スイッチのオン抵抗による損失や、インダクタ185の等価直列抵抗による損失を低くすることができる。同時に、電流に起因する電磁波の放射量も少なくすることができる。これらは、音声信号のような平均レベルが低い信号では、平均パルス幅が狭くなるため、特に有効である。以上の効果は、従来の第2の電力増幅装置と同じである。この効果は、主回路180の導通損失が減少することで得られており、これらのスイッチング型の電力増幅装置は、インダクタ185及び負荷186の直列体に印加される電圧Vpnのとり得る状態が、正の電源電圧またはゼロVまた負の電源電圧の3状態であるからである。
ところで、携帯機器のように負荷185のインピーダンスが高く、また、取り出す電力が小さくなると、負荷電流も小さくなるため、主回路の導通損失も低くなり、他の回路の損失が目立ってきて、電力変換の効率が低下する問題が生れる。一般に、スイッチング型の電力増幅装置での電力損失には、主回路180で発生するもの、スイッチ制御回路で発生するもの、変調回路で発生するものがあり、これまでの説明は、特に主回路180で発生する導通損失に関するものについて述べてきた。主回路180の損失には、導通損失以外にスイッチング損失があり、これは、主に、各スイッチ回路の出力の高/低の電圧変化によって伴って各スイッチの寄生容量などの充放電に関わるもので、オン/オフ回数に比例する。
本発明の実施の形態1の電力増幅装置は、このような問題を解決するために、上記に挙げた主回路180の各スイッチをオン/オフ制御する際にスイッチ制御回路で発生する損失の低減に着目し、これを実現している。すなわち、スイッチ制御回路で発生する損失には、Nチャネル型FETのスイッチ1821,1822,1831,1832のゲート容量を充放電する電力と、ハイサイドスイッチ1821,1831のレベルシフト回路が信号伝達に使う電流によるものが大きい。前者のゲート容量の充放電による電力は断続的で、FETのゲート端からみた静電容量及び必要な電圧値と、スイッチングの回数に依存する。後者は、例えば、図2のレベルシフト回路が定常的に流す電流による電力消費で、抵抗1431及び1432が浮動電源側から取り込む電流などによるもので、これらの抵抗に流れる総電流に浮動電源の正極の電位(高耐圧FET1212及び1213のソース電位との電位差)を乗じたものが電力の損失になる。
図4に示したレベルシフト回路は、回路構成上、抵抗1431及び1432に流れる電流は概ね定電流であることから、浮動電源の正極電位が高い時に、この部分で発生する損失が大きくなる。図1及び図2の構成において、抵抗1431及び1432の浮動電源側の電位は、ローサイドスイッチ1822がオンしている際は、電力源102から供給される電圧の電位である。高側スイッチ1821がオンしている時は、浮動電源144に一時的に蓄えられた電力源102からの電圧の電位と、第1のスイッチ回路の出力端子電圧(直流電源103の電源電圧相当)とを加えたものになる。このような、スイッチ制御回路におけるレベルシフトのための信号伝達用の電流による損失は、更に、電力増幅装置の最大出力電圧を大きくした場合、すなわち、主回路180の直流電源103の電圧Vhが大きくなると更に増大する。
しかしながら、この損失は、各スイッチ回路の出力が上記のような高電位になる期間を短くすることで、低減することができる。本実施の形態の電力増幅装置は、各スイッチ回路の出力が高電位になる期間が、従来の第2の電力増幅装置よりも短くなるように構成されているため、消費電力を低く抑えることができる。
なお、第1のハイサイドスイッチ制御回路140に設けた状態検出回路142からの状態信号を、接地電位を基準に構成されたシステム制御部に伝送するレベルシフト回路(図示せず)の電力消費も考慮すると、本実施形態の電力増幅装置の構成は、損失の低減に有効である。また、各スイッチ回路の出力が高電位になる期間が短いため、浮動電源回路144のコンデンサ1441から放電される平均電流が小さくなるため、この静電容量値を小さくすることができる。
以上のような3つの状態を用いて、インダクタ185および負荷186の直列体に電力を供給する方法でも、従来のスイッチング型電力増幅装置と同様に、出力のパルス電圧が正の期間はインダクタ185によって電流が正方向に積分され、負の期間はこれが負方向に積分され、ゼロ電圧の期間は電流がゼロ方向にその絶対値が小さくなる方向に積分されるため、負荷186には入力信号Vsに比例した電圧が得られる。また、入力信号Vsが無信号もしくは小信号時では、インダクタ185及び負荷186の直列体に印加されるパルス幅が狭いため、電力源から出力される電流が少なくなり、消費する電力を小さくすることができるとともに、電磁波の放射量も少なくすることができる。
それに加えて、さらに、BTL181の状態が、「第1のスイッチ回路182の出力端子が高電位で、第2のスイッチ回路183の出力端子が低電位(HL)」、「第1のスイッチ回路182の出力端子が低電位で、第2のスイッチ回路183の出力端子が高電位(LH)」、「第1のスイッチ回路182の出力端子が低電位で、第2のスイッチ回路183の出力端子も低電位(LL)」の3つの状態のみを含み、「第1のスイッチ回路182の出力端子が高電位で、第2のスイッチ回路183の出力端子が高電位(HH)」の状態を含まない。このため、各スイッチ回路の出力が高電位になる期間が、信号Vsが無信号または微小な際には短くなる。このため、スイッチ制御回路におけるレベルシフトのための信号伝達用の電流による損失は、従来のスイッチング型の電力増幅装置よりも低く抑えることができる。これは、特に、取り出す電力が小さいインピーダンスが高い負荷を駆動する場合や、圧電デバイスのように駆動電圧が高い場合に、より効果的に消費電力を低く抑えることができる。
さらに、本実施形態のようなブリッジ構成のスイッチング型の電力増幅装置で、圧電デバイスのような静電容量系の負荷を駆動した場合は、圧電デバイスに一時的に蓄積された電荷が、再び電力源に戻される(回生)動作をする特徴があるため、電力源から供給される電力は更に少なくなる。そのため、圧電デバイスには駆動電圧が高い難点はあるものの、それ自身が静電容量であるために電力損失がほとんどなく、電力消費の面では電磁力を利用したデバイスよりも省電力になる利点がある。このような用途は電力源が限られた携帯機器などに適している。また、浮動電源回路のコンデンサの静電容量値が小さくできる点も、携帯機器などに適している。
ところで、従来の第2の電力増幅装置では、主回路の各スイッチ回路の出力端子がともに“H”となる状態があるが、スイッチ回路の状態検出回路の一つとして、電流モニタ機能を考えた場合、この(HH)の状態の電流検出のために、ハイサイドスイッチ側に電流モニタ回路が必要であった。このため、ハイサイドスイッチ駆動部に、その検出回路や検出結果を接地レベルに伝送するレベルシフト回路などが必要で、それらの電力も浮動電源回路から供給せざるを得ず、電力損失が大きくなる欠点があった。これに対し、本発明の実施の形態1の電力増幅装置は、主回路の各スイッチ回路の出力端子がともに“H”となる状態が無いので、ローサイドスイッチ部のみで通過電流検出ができるという効果を奏する。
さらに、本実施形態によれば、入力信号の無信号時に両スイッチ回路の出力端子を低電位に固定して待機させれば、この待機中の主回路の電力源からの電力供給を遮断でき、電力消費を抑えることができる。そして、この待機の状態では、ハイサイドスイッチ制御回路の浮動電源は充電状態であるため、起動の際は速やかに動作することができる。さらに、待機中の出力電位が基準レベルであるため、主回路の動作が始まっても負荷に直流電位が発生せず、ポップ雑音が発生しない。また、主回路の電源電圧を昇圧コンバータなどから供給する場合、このコンバータの起動過程では両スイッチ回路の出力を低電位に固定しておけば、負荷電流が少なくなるため、起動が容易で且つ速やか立ち上げることができる。さらに、このような待機や通常動作の状態を、入力信号などに応じて間欠的に動作するようにすれば、より一層の低消費電力化が図れる。さらに、主回路の電源電圧を低電圧状態から規定値まで緩やかに上昇させることで、主回路が負荷に供給する駆動電力を滑らかに立ち上げることができるといった効果を有する。
また、出力信号振幅は電源電圧と変調信号の時比率で決まるため、ここで、電源電圧を加減すれば、出力信号振幅も加減することができ、音量調節をすることができる。従来例においても、これを適用すれば、同様に音量調節ができるが、この場合、各スイッチ回路の出力電圧の基準レベルが電源電圧の2分の1になっているため、電源電圧の加減による基準レベルの変動で、雑音が混入する場合がある。しかし、本発明の電力増幅装置では、基準レベルが基準電位(実施例では接地電位)に固定されているため、電源電圧の加減による雑音の混入はない。
尚、本実施形態において、入力信号Vsを、リニア反転器1131を介して得られる信号Vsrと三角波信号Vtとを比較することによって、第2の信号L2を生成したが、第2の信号L2は、三角波信号Vtを位相反転させた第2の三角波信号と入力信号Vsとを比較することによっても同様にして得ることができる。
(実施の形態2)
図5Aは、本発明の電力増幅装置の第2の実施形態のブロック図である。図5Aにおいて、図1に示した実施の形態1の電力増幅装置と同じ機能と構成を有するものには同一の符号を付している。実施の形態2と実施の形態1との差異は、変調回路の構成である。以下、本実施形態の変調回路210の構成を説明する。
変調回路210は、実施の形態1の変調回路110に対して比較器1121、112に入力する三角波信号の波形が異なる。すなわち、実施の形態1では、比較器1121、112に対して、三角波発生器111の出力信号Vtをそのまま、またはその極性を反転して入力していたが、本実施形態では三角波発生器111の出力信号Vtに、矩形波信号Vqを加算または減算したものを比較器1121、112に入力する。そのため、変調回路210は、三角波信号Vtと同期した矩形波信号Vqを発生させる矩形波発生器22111と、矩形波信号Vqを、アナログ的に極性を反転して極性反転信号Vqrを生成するリニア反転器2150と、リニア加算器2151、2152とを備える。リニア加算器2151は信号Vqと三角波信号Vtを加算して第1の三角波信号Vt1を生成し、出力する。第1の三角波信号Vt1は比較器1121の負入力に印加される。リニア加算器2152は、極性反転信号Vqrと三角波信号Vtを加算し第2の三角波信号Vt2を生成し、出力する。第2の三角波信号Vt2は比較器1122の負入力に印加される。図5Bに信号Vqと三角波信号Vtを加算して生成される第1の三角波信号Vt1の波形を示す。
図6は、図5Aに示した本実施形態の電力増幅装置の各部の動作波形図である。図6の動作波形図を用いて電力増幅装置の動作を説明する。
入力信号源101からの入力信号Vsは、比較器1121の正入力に印加されるとともに、リニア反転器1131で極性反転されて信号Vsrとなって、比較器1122の正入力に印加される。比較器1121の負入力には、三角波信号Vtに矩形波信号Vqが加算された第1の三角波信号Vt1が印加され、比較器1122の負入力には、三角波信号Vtに矩形波信号Vqの極性反転信号Vqrが加算された第2の三角波信号Vt2が印加されている。従って第1の三角波信号Vt1及び第2の三角波信号Vt2は、図6に示すように、三角波信号Vtの上昇期間と下降期間が相補的にレベルシフトしたような波形となる。
比較器1121から出力される第1の信号L1は、入力信号Vsが第1の三角波信号Vt1より大きい時(Vs>Vt1)にハイレベル(“H”)になり、また、比較器1122から出力される第2の信号L2は、信号Vsrが三角波第2の三角波信号Vt2より大きい時(Vsr>Vt2)に“H”になる。このため、信号L1及び信号L2は実施の形態1の電力増幅装置に比べて時比率は同じであるが、信号L1は位相が所定量ΔTだけ進み(+ΔT)、信号L2は逆にわずかに遅れた(−ΔT)波形になる。以上の動作から、三角波発生器111、矩形波発生器2111、リニア反転器2150、リニア加算器2151および2152から成る構成は、実質的に、三角波信号Vtの時間軸を進め遅らせる時間オフセット回路と見なすことができる。
変調回路において信号L1と信号L2から第1の変調信号M1と第2の変調信号M2が生成される構成は、実施の形態1の電力増幅装置の場合と同様である。従って、信号M1は、信号L1の“H”の区間から信号L2の“H”の区間を切り取った波形に、また、信号M2は、信号L2の“H”の区間から信号L1の“H”の区間を切り取った波形になる。
しかし、信号L1及び信号L2に位相のずれ(±ΔT)があるため、小さい時比率側では大きい時比率側の中央からΔTの2倍(2ΔT)ずれて切り取ることになる。したがって、信号M1の時比率の値は、信号L1の時比率から信号L2の時比率を減じ、信号L1の時比率より信号L2の時比率がある程度大きい場合はゼロになる。また、信号M2の時比率の値は、信号L2の時比率から信号L1の時比率を減じ、信号L2の時比率より信号L1の時比率がある程度大きい場合はゼロになる。そして、信号Vsが無信号時の場合、信号L1と信号L2の時比率はともに50%であるが、上記の位相のずれ(2ΔT)に相当する狭パルスが、信号M1及び信号M2それぞれに発生する。
以下の主回路180の動作は、実施の形態1の電力増幅装置と同様である。すなわち、第1の変調信号M1が“H”の時、第1のスイッチ回路182の出力は高電位になり、“L”の時は低電位になる。また、第2の変調信号M2が“H”の時は、第2のスイッチ回路183の出力は高電位になり、“L”の時は低電位になる。
第1のスイッチ回路182と第2のスイッチ回路183の各出力の状態は以下の3つの状態のみを含む。
(HL):第1の出力端子が電源電圧、第2の出力端子が基準電位
(LH):第1の出力端子が基準電位、第2の出力端子が電源電圧
(LL):第1の出力端子が基準電位、第2の出力端子も基準電位
インダクタ185及び負荷186の直列体に印加される電圧Vpnのとり得る状態は、正の電源電圧(Vh)、ゼロまたは負の電源電圧(−Vh)の3状態になる。
ここで、変調回路210で生成された第1の変調信号M1及び第2の変調信号M2のパルス幅(“H”である時間幅)と、入力信号Vsとの関係を説明する。いま、三角波信号Vtの振幅をVptとすると、信号L1の時比率δ1’は下記の式(12)で表される。
δ1’=(1+Vs/Vpt)/2 (12)
また、信号L2の時比率δ2’は、入力信号Vsの符号が逆であるため、上記の信号L1の入力信号Vsの符号を変えた下記の式(13)で表現できる。
δ2’=(1−Vs/Vpt)/2 (13)
信号M1の周期Tにおける平均パルス幅の割合を時比率δ1とし、信号L1及び信号L2の位相ずれの周期Tに対する割合をδx(δx=2ΔT/T)とすると、下記の式(14)に示すように、時比率δ1は、信号L1の時比率δ1’から信号L2の時比率δ2’を減じた値がδxの2倍(2・δx)以上の場合は、その差(δ1=δ1’−δ2’)となり、−2・δxから2・δxの間にある場合は、その差の半分にδ3の2倍を加えた値(δ1=(δ1’−δ2’)/2+δx)となり、−δx以下の場合はゼロになる。
δ1’−δ2’≧2・δxの時は、δ1=δ1’−δ2’=Vs/Vpt,
−2・δx<δ1’−δ2’<2・δxの時は、
δ1=(δ1’−δ2’)/2+δx=Vs/Vpt/2+δx
δ1’−δ2’≦−2・δxの時は、δ1=0 (14)
同様に、信号M2の周期Tにおける平均パルス幅の割合を時比率δ2とすると、下記の式(15)のようになる。
δ2’−δ1’≧2・δxの時は、δ2=δ2’−δ1’=−Vs/Vpt,
−2・δx<δ2’−δ1’<2・δxの時は、
δ2=(δ2’−δ1’)/2+δx=−Vs/Vpt/2+δx
δ2’−δ1’≦−2・δxの時は、δ2=0 (15)
負荷186に発生する電圧Voは、以下の式(16)のように表せ、入力信号Vsに比例した出力を得ることができる。
Vo=(δ1−δ2)・Vh=(Vh/Vpt)・Vs (16)
以上のように本実施形態の電力増幅装置は、変調回路210において、三角波信号Vtに矩形波信号Vqを加算して得られる第1の三角波信号Vt1と、入力信号Vsとを比較し、また、三角波信号Vtから矩形波信号Vqを減算して得られる第2の三角波信号Vt2と反転入力信号Vsrとを比較し、第1の信号L1及び第2の信号L2を生成して、両信号間に微小な位相差を設けている。そのため、入力信号Vsが無信号の場合においても、この位相差に相当する狭パルスが、第1の変調信号M1及び第2の変調信号M2のそれぞれに発生する。このことにより、本実施形態の電力増幅装置は、各スイッチ回路の出力端子が高電位となる期間が短くなって、消費電力が低く抑えられるといった実施の形態1の電力増幅装置の特徴に加え、さらに、信号のゼロクロス付近や低信号レベルの非線形歪みを軽減することができる。すなわち、ゼロクロス付近ではパルス幅が狭くなるため、スイッチの動作遅れや、デッドタイム設定によって失われているパルス幅の占める割合が大きくなり、その線形性が失われてくる。しかし、上述の構成では、ゼロクロス付近でもパルスが出ているため、負荷に加わる電圧は、正の電圧と負の電圧の差になるため、その影響を小さくすることができる。
尚、本実施形態の電力増幅装置では、三角波信号Vtに矩形波信号Vqを加算して第1の三角波信号Vt1を得、また、三角波信号Vtに矩形波信号Vqを減算して第2の三角波信号Vt2を得ているが、これら第1及び第2の三角波信号を逆にしても良く、また、三角波信号Vt1及び三角波信号Vt2の何れか一方と、元の三角波信号Vtとを用いても良い。さらには、信号L1または信号L2を生成する比較器の入力部に電圧オフセットを持たせても良い。
本実施形態の要旨は、入力信号Vsのゼロクロス付近で、変調信号M1、M2のパルス幅を確保するために、第1の信号L1及び第2の信号L2間に微小な位相差を設けるための時間オフセットを、三角波信号Vtの時間と瞬時値の関係が線形であることを利用して、三角波信号Vtにオフセット量に該当する直流電圧を加減算することで、得るようにしたものである。
(実施の形態3)
図7は、本発明の第3の実施形態の電力増幅装置のブロック図である。図7において、実施の形態1の電力増幅装置と同じ機能と構成を有するものには同一の符号を付与し、その説明は省略する。本実施形態の電力増幅装置は、実施の形態1の電力増幅装置と変調回路の構成が異なる。
すなわち、本実施形態の変調回路310が図1の変調回路110の構成と異なる点は、比較器1122の出力とANDゲート1144の入力間に遅延回路316を設けた点である。比較器1122の出力信号L2は遅延回路316を介して信号L3となってインバータ1141及びANDゲート1144に入力される。
図8は、図7に示した電力増幅装置の各部の動作波形図である。図8の動作波形図を用いて、電力増幅装置の動作を説明する。入力信号源101からの入力信号Vsは、比較器1121の正入力に印加されるとともに、リニア反転器1131で極性反転されて信号Vsrとなって、比較器1122の正入力に印加される。比較器1121及び比較器1122の負入力には、三角波信号Vtが印加される。比較器1121から出力される第1の信号L1は、入力信号Vsが第1の三角波信号Vt1より大きい時(Vs>Vt1)にハイレベル(“H”)になり、また、比較器1122から出力される第2の信号L2は、信号Vsrが三角波第2の三角波信号Vt2より大きい時(Vsr>Vt2)に“H”になる。信号L2は、さらに遅延回路316を介して第3の信号L3として出力される。この遅延時間をΔTとする。
変調回路310において第1の信号L1と第3の信号L3から第1の変調信号M1と第2の変調信号M2が生成される構成は、実施の形態1の電力増幅装置の場合と同様である。従って、信号M1は、信号L1の“H”の区間から信号L3の“H”の区間を切り取った波形に、また、信号M2は、信号L2の“H”の区間から信号L1の“H”の区間を切り取った波形になる。
しかし、第3の信号L3に遅延による位相のずれ(ΔT)があるため、小さい時比率側は大きい時比率側の中央からΔTずれて切り取ることになる。したがって、信号M1の時比率の値は、信号L1の時比率から信号L2の時比率を減じ、信号L1の時比率より信号L2の時比率がある程度大きい場合はゼロになる。また、信号M2の時比率の値は、信号L2の時比率から信号L1の時比率を減じ、信号L2の時比率より信号L1の時比率がある程度大きい場合はゼロになる。そして、信号Vsが無信号時の場合、信号L1と信号L2の時比率はともに50%であるが、上記の位相のずれ(ΔT)に相当する狭パルスが、信号M1及び信号M2それぞれに発生する。
以下の主回路180の動作は、実施の形態1の電力増幅装置と同様である。すなわち、第1の変調信号M1が“H”の時、第1のスイッチ回路182の出力は高電位になり、“L”の時は低電位になる。また、第2の変調信号M2が”H”の時は、第2のスイッチ回路183の出力は高電位になり、“L”の時は低電位になる。第1のスイッチ回路182と第2のスイッチ回路183の各出力の状態は、「第1のスイッチ回路182の出力端子が高電位で第2のスイッチ回路183の出力端子が低電位(HL)」、「第1のスイッチ回路182の出力端子が基準電位で第2のスイッチ回路183の出力端子が高電位(LH)」、「第1のスイッチ回路182の出力端子が低電位で第2のスイッチ回路183の出力端子も低電位(LL)」の3状態であり、インダクタ185及び負荷186の直列体に印加される電圧Vpnのとり得る状態は、正の電源電圧(Vh)、ゼロVまたは負の電源電圧(−Vh)の3状態になる。
ここで、変調回路310で生成された信号M1及び信号M2のパルス幅(“H” である時間幅)と、入力信号Vsとの関係を説明する。いま、三角波信号Vtの振幅をVptとすると、信号L1の時比率δ1’は下記の式(17)で表される。
δ1’=(1+Vs/Vpt)/2 (17)
また、信号L3の時比率δ3’は、入力信号Vsの符号が逆であるため、上記の信号L1の入力信号Vsの符号を変えた下記の式(18)で表現できる。
δ3’=(1−Vs/Vpt)/2 (18)
信号M1の周期Tにおける平均パルス幅の割合を時比率δ1とし、信号L3の位相ずれの周期Tに対する割合をδy(δy=ΔT/T)とすると、下記の式(19)に示すように、時比率δ1は、信号L1の時比率δ1’から信号L2の時比率δ3’を減じた値がδyの2倍(2・δy)以上の場合は、その差(δ1=δ1’−δ3’)となり、−2・δyから2・δyの間にある場合は、その差の半分にδ3の2倍を加えた値(δ1=(δ1’−δ3’)/2+δy)となり、−2・δy以下の場合はゼロになる。
δ1’−δ3’≧2・δyの時は、δ1=δ1’−δ2’=Vs/Vpt,
−2・δy<δ1’−δ3’<2・δyの時は、
δ1=(δ1’−δ3’)/2+δy=Vs/Vpt/2+δy
δ1’−δ3’≦−2・δyの時は、δ1=0 (19)
同様に、信号M2の周期Tにおける平均パルス幅の割合を時比率δ2とすると、下記の式(20)のようになる。
δ3’−δ1’≧2・δyの時は、δ2=δ3’−δ1’=−Vs/Vpt,
−2・δy<δ3’−δ1’<2・δyの時は、
δ2=(δ3’−δ1’)/2+δy=−Vs/Vpt/2+δy
δ3’−δ1’≦−2・δyの時は、δ2=0 (20)
負荷186に発生する電圧Voは、以下の式(21)のように表せ、入力信号Vsに比例した出力を得ることができる。
Vo=(δ1−δ2)・Vh=(Vh/Vpt)・Vs (21)
以上のように本実施形態の電力増幅装置は、変調回路310において遅延回路316を設け、比較器1122から出力される第2の信号L2が遅延回路316を介して第3の信号L3となってインバータ1141及びANDゲート1144に入力される構成とすることにより、両信号間に微小な位相差を設けている。そのため、この位相差に相当する狭パルスが、入力信号Vsが無信号の場合においても第1の変調信号M1及び第2の変調信号M2それぞれに発生する。このことにより、実施の形態3の電力増幅装置は、各スイッチ回路の出力端子が高電位となる期間が短くなって消費電力が低く抑えられるといった、実施の形態1の電力増幅装置の特徴に加え、さらに、信号のゼロクロス付近や低信号レベルの非線形歪みを軽減することができる。すなわち、ゼロクロス付近ではパルス幅が狭くなるため、スイッチの動作遅れや、デッドタイム設定によって失われているパルス幅の占める割合が大きくなり、その線形性が失われてくる。しかし、上述の構成では、ゼロクロス付近でもパルスが出ているため、負荷に加わる電圧は、正の電圧と負の電圧の差になるため、その影響を小さくすることができる。
尚、本発明の実施の形態3の電力増幅装置では、第2の信号L2を遅延させて第3の信号L3を生成したが、第1の信号L1を遅延させて第3の信号L3を生成しても良い。また、信号L1またはL2を生成する比較器1121、1122の前段におけるアナログ信号に時間遅延を設けても良い。
本実施形態の要旨は、ゼロクロス付近でパルス幅を確保するために、第1の信号L1及び第2の信号L2の間に微小な位相差を設けるための時間オフセットを、上記のように、時間遅延の回路を用いることで、得るようにしたものである。そして、この時間遅延回路は、信号L1または信号L2を得る比較器の前段、後段のいずれにあっても良い。
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4の電力増幅装置のブロック図である。図9において、実施の形態1の電力増幅装置と同じ機能と構成を有するものには同一の符号を付与し、その説明は省略する。本発明の実施の形態4の電力増幅装置が実施の形態1の電力増幅装置と異なるのは変調回路の構成である。
本実施形態の変調回路410は、入力信号Vsを発生する入力信号源101、三角波信号Vtを発生させる三角波発生器111、直流電圧V4153を出力する定電圧源4153、直流電圧V4127を出力する定電圧源4127、直流電圧V4128を出力する定電圧源4128、リニア反転器2150、リニア加算器2151及び2152、比較器1121,1122,1123,1124,4125及び4126、ORゲート4145及び4146、ANDゲート1143及び1144を含む。
入力信号源101からの入力信号Vsは、比較器1121の正入力及び比較器1122の負入力に印加される。定電圧源4153からの直流電圧V4153はリニア加算器2151に印加されるとともに、リニア反転器2150によって極性が反転され、出力電圧(−V4153)として、リニア加算器2152に印加される。リニア加算器2151は三角波信号Vtと電圧V4153を加算して三角波信号Vtp(=Vt+V4153)を出力する。リニア加算器2152は三角波信号Vtとリニア反転器2150の出力電圧(−V4153)を加算して三角波信号Vtn(=Vt−V4153)を出力する。ここで、三角波信号Vtを振幅Vptで接地電位ゼロVを中心に増減しているものとすると、電圧V4153は三角波振幅Vptよりわずかに小さな値に設定される。
比較器1123の正入力及び比較器1124の負入力は接地される。比較器4125の正入力には定電圧源4127からの直流電圧V4127が印加される。直流電圧V4127は三角波振幅Vptの2倍よりわずかに小さな値に設定される。比較器4126の正入力には定電圧源4127からの直流電圧V4127が印加される。直流電圧V4128は負電圧であり、その絶対値は直流電圧V4127に等しく、三角波振幅Vptの2倍よりわずかに小さな値に設定される。比較器1121、比較器1123及び比較器4125の各負入力には、三角波信号Vtpが印加される。比較器1122、比較器1124及び比較器4126の正入力には、三角波信号Vtnが印加される。
比較器1121から出力される第1の信号L1と比較器1123から出力される第3の信号L11はORゲート4145に入力される。ORゲート4145の出力信号と比較器4125から出力される第5の信号L12はANDゲート1143に入力される。比較器1122から出力される第2の信号L2と比較器1124から出力される第4の信号L21はORゲート4146に入力される。ORゲート4146の出力信号と比較器4126から出力される第6の信号L22はANDゲート1144に入力される。ANDゲート1143から出力される第1の変調信号M1とANDゲート1144から出力される第2の変調信号M2が、変調回路410の出力信号として、それぞれ分配回路120及び130へ入力される。
図10は、図9に示した電力増幅装置の各部動作波形図である。図10の動作波形図を用いて、電力増幅装置の動作を説明する。
三角波信号Vtpはその振幅Vpよりわずかに小さな電圧V4153だけ高電位にシフトしている。そのため、三角波信号Vtpは、下降から上昇に転じる直前で接地電位と交差し、上昇から下降に転じる直前で電圧V4127と交差する。そのため、比較器1123から出力される第3の信号L11は、三角波信号Vtpが下降から上昇に転じる際に発生する狭パルスとなり、また、比較器4125から出力される第5の信号L12は、三角波信号Vtpが上昇から下降に転じる際の狭隙を有するパルスとなる。一方、三角波信号Vtnもその振幅Vptよりわずかに小さな電圧V4153だけ低電位にシフトしている。そのため、三角波信号Vtnは、上昇から下降に転じる直前で接地電位と交差し、下降から上昇に転じる直前で電圧V4128と交差する。そのため、比較器1124から出力される第4の信号L21は、三角波信号Vtnが上昇から下降に転じる際に発生する狭パルスとなり、比較器4126から出力される第6の信号L22は、三角波信号Vtnが下降から上昇に転じる際の狭隙を有するパルスとなる。説明の簡単化のため、これらの狭隙及び狭パルスの幅は全てΔTとしておく。
第1の信号L1は、入力信号Vsと三角波信号Vtpとの比較結果であるので、入力信号Vsが接地電位よりわずかに低い電位以上の場合にパルス幅を有し、そのパルス幅は入力信号Vsが高いほど広くなる。同様に、第2の信号L2は、入力信号Vsと三角波信号Vtnとの比較結果であるので、入力信号Vsが接地電位よりわずかに高い電位以下の場合にパルス幅を有し、そのパルス幅は入力信号Vsが低いほど広くなる。
第1の変調信号M1は、第1の信号L1と第3の信号L11との論理和と第5の信号L12との論理積である。従って、信号M1は、信号L1に、三角波信号Vtpが下降から上昇に転じる際に発生する狭パルスと上昇から下降に転じる際の狭隙とを備えたものとなる。すなわち、信号M1の時比率の値は、信号L11の時比率を最小値とし、信号L12の時比率を最大値とする範囲内で、信号L1の時比率が反映される。一方、第2の変調信号M2は、第2の信号L2と第4の信号L21との論理和と第6の信号L22との論理積である。従って、信号M2は、信号L2に、三角波信号Vtnが上昇から下降に転じる際に発生する狭パルスと下降から上昇に転じる際の狭隙とを備えたものとなる。すなわち、信号M2の時比率の値は、信号L21の時比率を最小値とし、信号L22の時比率を最大値とする範囲内で、信号L2の時比率が反映される。
主回路180の動作は、実施の形態1の電力増幅装置のものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
ここで、変調回路410で生成された第1の変調信号M1及び第2の変調信号M2のパルス幅と、入力信号Vsとの関係を説明する。いま、信号L11及び信号L12の時比率をδz(=ΔT/T)とすると、第1の変調信号M1の時比率δ1は下記の式(22)で表される。
Vs<0の場合、δ1=δz
0≦Vs/Vpt≦2−δzの場合、δ1=δz+Vs/Vpt/2
Vs/Vpt>1−2δzの場合、δ1=1−δz (22)
また、第2の変調信号M2の時比率δ2は、下記の式(23)で表される。
Vs>0の場合、δ2=δz
δz−2≦Vs/Vpt≦0の場合、δ2=δz−Vs/Vpt/2
Vs/Vpt<δz−2の場合、δ2=1−δz (23)
負荷186に発生する電圧Voは、以下の式(24)のように表せ、入力信号Vsに比例した出力を得ることができる。
Vo=(δ1−δ2)・Vh=(Vh/Vpt)・Vs (24)
但し、|Vs/Vpt|≦2−δzである。
以上のように本発明の実施の形態4では、変調回路410において、三角波発生器111の三角波信号Vtから、三角波振幅Vptより所定量だけ小さな第1の直流電圧V4153だけ正負にシフトした2つの三角波信号VtpとVtnを発生させる。第1の三角波信号Vtpと入力信号Vsとの比較出力である第1の信号L1、三角波信号Vtpとゼロ電圧との比較出力である第3の信号L11、電圧V4153の2倍以下の第2の直流電圧V4127との比較出力である第5の信号L12とを生成する。
第1の信号L1と第3の信号L11との論理和と、第5の信号L12との論理積を第1の変調信号M1として出力する。また、第2の三角波信号Vtnと入力信号Vsとの比較出力である第2の信号L2と、三角波信号Vtnとゼロ電圧との比較出力である第4の信号L21と、負電位で電圧V4153の絶対値の2倍以下の第3の直流電圧V4128との比較出力である第6の信号L22とを生成する。第2の信号L2と第4の信号L21との論理和と第6の信号L22との論理積を第2の変調信号M2として出力する構成とすることにより、信号L11と信号L12の時比率に最小時比率および最大時比率を設けたパルス信号M1およびM2が得られる。そのため、信号Vsが無信号の場合においても、最小時比率に相当する狭パルスが、信号M1及び信号M2それぞれに出力される。
このことにより、実施の形態4の電力増幅装置は、各スイッチ回路の出力端子が高電位となる期間が短くなって消費電力が低く抑えられるといった実施の形態1の電力増幅装置の特徴に加え、さらに、信号のゼロクロス付近や低信号レベルの非線形歪みを軽減することができる。すなわち、ゼロクロス付近では、パルス幅が狭くなるため、スイッチの動作遅れや、デッドタイム設定によって失われているパルス幅の占める割合が大きくなり、その線形性が失われてくる。しかし、上述の構成では、ゼロクロス付近でもパルスが出ているため、負荷に加わる電圧は、正の電圧と負の電圧の差になるため、その影響を小さくすることができる。
さらに、入力信号Vsの振幅が、三角波の振幅Vtの2倍を越えた場合、第1の信号L1は常時“H”に、第2の信号L2は常時“L”になる。しかしながら第1の変調信号M1は、第5の信号L12の有するパルスの狭隙との論理積を取られて出力されるので、この狭隙の期間は“L”となる。同時に、第2の変調信号M2には、第4の信号L21のパルス幅が出力される。このような最大時比率の設定により、三角波信号Vtの一周期を通じて“H”または“L”の状態に固定される事態は起こらなくなる。
尚、上記の最大時比率の設定機構において、第3の信号L11と第4の信号L21のパルス幅、及び第5の信号L12と第6の信号L22のパルスの狭隙はいずれもΔTとしてきたので、第1の変調信号M1の狭隙と第2の変調信号M2のパルス幅は一致する。実際の設定はバラツキも考慮し、第1の変調信号M1の狭隙が第2の変調信号M2のパルス幅より広くなるように設定する必要がある。もし、第1の変調信号M1の狭隙よりも第2の変調信号M2のパルス幅の方が広くなると、第1のスイッチ回路の出力と第2のスイッチ回路の出力がともに“H”となる期間が発生し、本願の基本的な考えを実現することができなくなる。第2の直流電圧V4127及び第3の直流電圧V4128の大きさを、第1の直流電圧V4153の2倍以下としたのはそのためである。また、第1の変調信号M1と第2の変調信号M2の最小無パルス区間は、第1の変調信号M1と前記第2の変調信号M2の最小パルス幅より大きくするのが好ましい。
上記の第3の信号L11は、三角波信号Vtpとゼロ電圧を比較した比較器1123の出力であって、このゼロ電圧は入力信号Vsの交流振幅がゼロの際の入力信号Vsの基準電位に相当する。いま、入力信号Vsの交流振幅がゼロの場合、比較器1121にも、三角波信号Vtpと交流振幅がゼロの入力信号Vsが入力されているため、その出力である第1の信号L1は、第3の信号L11と同じになる。次に、入力信号Vsの瞬時値がその基準電位よりも正側に増えると、第1の信号L1のパルス幅は、第3の信号L11のパルス幅よりも大きくなる。反対に、負側に減ると、第1の信号L1のパルス幅は、第3の信号L11のパルス幅よりも小さくなり、瞬時値が更に負側に減るとパルスは出なくなる。このような第1の信号L1と第3の信号L11は、ORゲート4145で論理和がとられる。このORゲート4145から出力されるパルス幅は、入力信号Vsが正側に増えている場合は、第1の信号L1のパルス幅に従い、負側に減っている場合は、第3の信号L11のパルス幅で固定される。三角波信号Vtn側の入力信号Vsが負のときの動作もこれと同様になる。
このように入力信号Vsの振幅のゼロ付近では、パルス幅の生成機構が切り替わるため、この切り替え近傍で不連続性や遅延があると、線形性を損ねる。そのため、本発明の実施の形態4の電力増幅器のような構成では、各比較器の入力オフセット電圧を小さくする必要がある。
上記の最大時比率の設定機構を従来の電力増幅器に搭載した場合、入力信号Vsの振幅が、三角波の振幅Vtを越えても、式(1)、(2)、(4)、(5)の条件である|Vs/Vpt|<1を満足することができ、各比較器の出力は、三角波信号Vtの一周期を通じて、“H”または“L”の状態に固定される事態は起こらなくなる。そのため、入力部に過大な信号が印加されるのを防ぐ機構が不要になる利点がある。
尚、実施の形態1から4において、三角波発生器と入力信号の比較を、それぞれの信号を各別に2入力の比較器にそれぞれ印加している。この代わりとして、三角波発生器と入力信号をその符号を考慮して加算した後、参照値を内蔵した1入力の比較器に印加してもよい。
(実施の形態5)
図11は、本発明の実施の形態5の電力増幅装置のブロック図である。図11において、実施の形態1の電力増幅装置と同じ機能と構成を有するものには同一の符号を付与し、その説明は省略する。本実施形態の電力増幅装置が実施の形態1の電力増幅装置と異なるのは変調回路の構成である。
本実施形態の変調回路510は、入力信号Vsを発生する入力信号源101、リニア加算器5171及び5193、積分器などの重み付けフィルタ5172、判定器518、第1及び第2のラッチ回路であるDラッチ5191及び5192、及びクロック発生器5194を備える。
判定器518は、比較器5181、5182と、リニア反転器5183と、定電圧源5184とから構成される。クロック発生器5194は各Dラッチ5191、5192のD入力に印加されたパルスの立ち上がりまたは立ち下がり時刻を量子化する。
変調回路510の構成は、特許文献2や特許文献3で開示されたような、三角波発生器を用いない種類の電力増幅装置に対するものである。これは、入力信号Vsと出力からの帰還パルス信号との差信号を求め、それを重み付けフィルタ(差分積分器)を通過させた後に、比較器で電圧の量子化を行い、さらにクロック発生器と遅延器によって時間軸の量子化を行った後のパルス信号で主回路180のスイッチ回路182、183を操作するものである。そして、入力信号Vsと出力からの帰還パルス信号との差信号を小さくするように負帰還動作することで、主回路に接続された負荷に入力信号Vsに比例した電圧を供給させるようにしている。
特許文献2や特許文献3の電力増幅装置における比較器は、入力しきい値が1つで比較出力が2値のものであるが、本発明の実施の形態5では、入力しきい値が2つで比較出力が3値である点が異なる。さらに、この判定器518から出力される3値を、それぞれ主回路の3状態になるように割り振る点が特許文献2や特許文献3と異なる。すなわち、「第1のスイッチ回路の出力端子が高電位で第2のスイッチ回路の出力端子が低電位(HL)」,「第1のスイッチ回路の出力端子が低電位で第2のスイッチ回路の出力端子が高電位(LH)」,「第1のスイッチ回路の出力端子が低電位で第2のスイッチ回路の出力端子も低電位(LL)」の3状態に割り振ることによって、前述の実施の形態1〜4の実施例と同様の効果が得られる。
以下に、変調回路510の詳細を説明する。まず、入力信号源101からの入力信号Vsは、リニア加算器5171によって、帰還されたパルス変調された出力信号で減算され、このリニア加算器5171の出力には、入力信号Vsとパルス変調された出力信号の誤差信号が得られる。この誤差信号は、重み付けフィルタ5172でパルスの高周波成分が抑えられた後、判定器518に入力される。判定器518において比較器5181と比較器5182には、極性の異なるしきい値がそれぞれ設定されている。
リニア加算器5171から出力される誤差信号の極性が正で比較器5181のしきい値よりも大きいときは、比較器5181から出力される第1の信号L1は“H”と、比較器5182から出力される第2の信号L2は“L”となる。また、誤差信号の絶対値がしきい値よりも小さいときはその極性にかかわらず、信号L1及び信号L2は共に“L”となる。そして、誤差信号が負極性でその絶対値が比較器5182のしきい値よりも大きいときは、信号L1は“L”、信号L2は“H”となるように構成されている。
信号L1及び信号L2は、それぞれDラッチ5191及びDラッチ5192のデータ入力に印加され、それぞれのQ出力には、各々の入力状態がクロック発生器5194のタイミングで出力および保持され、変調回路510の出力である第1の変調信号M1及び第2の変調信号M2になる。そして、信号M1及び信号M2は、分配回路120及び130を介して、主回路180の出力状態を制御し、例えば、信号M1が“H”または“L”の場合、主回路180の第1のスイッチ回路の出力もまたそれぞれ“H”または“L”になり、他方の信号M2が“H”または“L”の場合も、主回路180の第2のスイッチ回路の出力もまたそれぞれ“H”または“L”になるように構成されている。
したがって、回路構成上、重み付けフィルタ5172の出力信号の極性および大きさによって、主回路180に接続された負荷には正の電圧が印加されたり、ゼロ電圧が印加されたり、負の電圧が印加されたりして、前述の実施の形態1〜4と同様な3状態が出力される。一方、第1の変調信号M1及び第2の変調信号M2は、それぞれリニア加算器5193にも供給され、信号M1から信号M2を減じるような極性になっており、(M1−M2)がリニア加算器5171の一方に帰還される。
ここで、入力信号源101からの入力信号Vsが急に増加したときの振る舞いを説明する。入力信号Vsが急に増加すると、リニア加算器5193からの帰還信号は未だ変化する前であるため、リニア加算器5171の出力は増加する。そのため、これに従属接続される重み付けフィルタ5172の出力も増加しようとするため、判定器518の出力(L1,L2)の値は、それぞれ、次のような方向に遷移しようとする。すなわち、重み付けフィルタ5172の出力値が比較器5181と比較器5182の何れのしきい値よりも低い状態にある際は、まず、比較器5181と比較器5182のしきい値の間の値に変化するため、出力(L1,L2)は、(L,H)→(L,L)に変化する。これから、さらに、重み付けフィルタ5172の出力値が増加すると、比較器5181と比較器5182の何れのしきい値よりも高い状態に変化するため、出力(L1,L2)は、(L,L)→(H,L)に変化する。これらの出力(L1,L2)は、Dラッチ5191,Dラッチ5192及びクロック発生器5194の構成により、クロックの時刻で変調回路の出力(M1,M2)に現れるようになっているため、タイミングは遅れるものの、出力(L1,L2)と同様に、それぞれ、この出力(M1,M2)は、(L,H)→(L,L)に、また、(L,L)→(H,L)に変化する。そのため、リニア加算器5193の出力には、回路構成上、(M1−M2)が現れ、それぞれ「負→ゼロ」,「ゼロ→正」のように、電圧が増加する方向に変化する。そして、これらの変化は、リニア加算器5193からの帰還信号を高め、リニア加算器5171の出力の絶対値を小さくする方向に誘導する。入力信号Vsが急に減少した場合も、同様で、リニア加算器5193の出力(M1−M2)は、「正→ゼロ」,「ゼロ→負」のように、減少する方向に変化し、これもリニア加算器5171の出力の絶対値を小さくする方向に誘導する。このように、リニア加算器5193からの帰還信号(M1−M2)は、変調回路510に入力される信号Vsに追従して変化するような負帰還動作をする。
上記のように得られた、リニア加算器5171の出力には、アナログ信号である入力信号Vsから、正,ゼロ,負の3値を持つデジタルの帰還信号(M1−M2)を減じたアナログとデジタル混在の誤差信号が現れている。この高い周波数成分は、重み付けフィルタ5172によって除去された後、デジタル成分をアナログ化した誤差信号として得られる。この帰還系の一巡伝達関数の利得を高くすると、重み付けフィルタ5172の帯域内の誤差信号の振幅は小さくなるため、3値を持つデジタル信号である帰還信号(M1−M2)を積分したものは、入力信号Vsに比例することになる。一方、主回路180に接続された負荷186およびインダクタ185の直列体に印加される電圧は、回路構成上、リニア加算器5193の出力の帰還信号(M1−M2)に比例するため、これを積分した後に負荷186に印加される電圧は、入力信号Vsに比例する。負荷186に印加された電圧もインダクタ185で高い周波数成分が除去されるため、入力信号Vsに比例したアナログ信号に戻る。特に、入力信号Vsの大きさが小さいときは、リニア加算器5193から出力される帰還信号がこれに細かく追従するため、信号M1及び信号M2を頻繁に操作し、そのパルス幅は狭くなる。
このような3つの状態を出力する変調回路510を用いた方法でも、従来のスイッチング型の電力増幅装置と同様に、出力のパルス電圧が正の期間はインダクタ185によって電流が正方向に積分され、負の期間はこれが負方向に積分され、ゼロVの期間は電流の絶対値が小さくなる方向に積分されるため、負荷186には入力信号Vsに比例した電圧が得られ、また、無信号および小信号時では、インダクタ185および負荷186の直列体に印加されるパルス幅が狭く、電力源から出力される電流が少なくなり、消費する電力を小さくすることができるとともに、電磁波の放射量も少なくすることができる。
さらに、BTL181の状態が、「第1のスイッチ回路の出力端子が高電位で第2のスイッチ回路の出力端子が低電位(HL)」、「第1のスイッチ回路の出力端子が低電位で第2のスイッチ回路の出力端子が高電位(LH)」、「第1のスイッチ回路の出力端子が低電位で第2のスイッチ回路の出力端子も低電位(LL)」の3状態のみである。よって、各スイッチ回路の出力が高電位になる期間が、入力信号Vsが無信号または微小な際には短くなるため、スイッチ制御回路におけるレベルシフトのための信号伝達用の電流による損失は、従来のスイッチング型の電力増幅装置よりも低く抑えることができる。これにより、特に、取り出す電力が小さい負荷を駆動する場合や、圧電デバイスのように駆動電圧が高い場合に、より低い消費電力にすることができる。
このように、本実施形態5の電力増幅装置は、三角波発生器を用いた実施の形態1~4の電力増幅装置に要求される直線性の良い低歪の三角波を備える必要がない利点に加え、上記のような効果を有している。
尚、重み付けフィルタ5172は、Dラッチ5191、5192およびクロック発生器5194による時刻量子化の遅延の影響を含め、一巡伝達関数が安定するように設定される。重み付けフィルタ5172は、リニア加算器5193からの3値の帰還信号に含まれる高調波などの量子化雑音を除去する。このような電力増幅装置では、その通過信号の帯域幅や、ダイナミックレンジを高くするには、クロック発生器5194の周波数を高くしたり、この帰還信号の解像度を高くしたりする必要がある。前者は、主回路のスイッチング周波数が高くなり、そのまま主回路の制御信号にするには損失が増加するので好ましくない。また、後者の解像度を高める方法として、重み付けフィルタ5172後の比較器の更なる多値化があるが、やはり、そのままでは主回路の3状態との整合性が良くない。
これらを整合させる方法として、例えば、前者の場合、高いクロックでもって生成された繰り返し頻度の高いパルスで表現された時間解像度を、低い繰り返し頻度で細かく加減されたパルス幅で解像度を持った3値のパルス幅で表現するというデジタル領域での信号処理が考えられる。同様に、後者は多値化された比較器で生成された多値の振幅で表現された振幅解像度を、低い繰り返し頻度で細かく加減されたパルス幅で解像度を持った3値のパルス幅で表現する。このように、本発明の実施の形態5のような図11の構成の変調回路510は、より高いクロック周波数を用いたり、より多くのレベルを判定する比較器を備えたりしても良く、最終的に、信号M1及びM2の状態表現(M1,M2)が、それぞれ(H,L),(L,L),(L,H)の3状態であれば、上記のような効果が得られる。
ところで、リニア加算器5171以降で時間量子化された処理を行うため、入力信号源101とリニア加算器5171の間にアンチエリアスフィルタ(図示せず)が必要であるが、前者のように高いクロック周波数を用いる場合は、このフィルタの肩特性を緩やかにできるため、その構成を簡単にすることができる。それから、重み付けフィルタ5172の伝達特性は、判定器518に入力される誤差信号のスペクトルに影響を与え、Dラッチ5191、5192およびクロック発生器5194による時刻量子化を含めた伝達関数の逆数の特性が、負帰還後に残された誤差信号である雑音のスペクトルの形になる。そのため、重み付けフィルタ5172の周波数特性によって、雑音スペクトラムを操作することができ、この雑音エネルギーを再生帯域幅の上限以上に移動させることで、再生帯域幅の雑音レベルを低くすることができる。
また、図11の構成で、リニア加算器5171への負帰還を第1の変調信号M1及び第2の変調信号M2の差である(M1−M2)としているが、これは、それぞれ主回路180の第1のスイッチ回路の出力端子および第2のスイッチ回路の出力端子の差であっても良く、この場合、主回路で発生する遅延などによる歪みも併せて低減させることができる。
図11の構成の変調回路では、リニア加算器5171,5193,重み付けフィルタ5172,比較器5181,5182などは、アナログ回路で表現しているが、これは、上記のような動作をデジタル信号領域での論理演算や代数演算で実現しても良い。
また、本実施形態では、判定器のしきい値の設定を正負の異なる極性で絶対値を同じにしているが、これは、重み付けフィルタ5172の出力信号の平均値をゼロとしているためであり、この値は、どのように設定しても良い。
(実施の形態6)
図12は、実施の形態6の電力増幅装置のブロック図である。図12において実施の形態1の電力増幅装置と同じ機能と構成を有するものには同一の符号を付与し、その説明は省略する。本実施の形態の電力増幅装置が実施の形態1の電力増幅装置と異なるのは変調回路の構成である。
本実施形態の変調回路610は、入力信号を差動入力とした帰還入力回路1010と、主回路180の各スイッチ回路の出力端子から帰還入力回路1010へ帰還信号変換回路6100と、変調信号生成回路6200とを備える。矩形波発生器2111は三角波発生器111の三角波信号Vtと同期した矩形波信号Vqを発生させる。
帰還入力回路1010は、差動入力信号を抵抗1012と1013を介して入力されるオペアンプ1011と、帰還信号変換回路6100からの帰還信号Q1およびQ2の高調波成分を除去する平衡型LPFを構成する抵抗1018および1019とコンデンサ1020と、この平衡出力をオペアンプ1011の非反転入力端子へ印加する抵抗1014とその反転入力端子へ印加する抵抗1015と、オペアンプ1011の出力端子と非反転入力端子との間に接続される抵抗1016と、オペアンプ1011の反転入力端子と接地との間に接続される抵抗1017とから構成され、オペアンプ1011の出力を信号Vsとして出力する。
帰還信号変換回路6100は、第1のスイッチ回路182の出力端子を論理レベルに変換するレベル変換器6115と、その出力信号が入力されるインバータ6101とNORゲート6102とANDゲート6103とを有する。インバータ6101の出力はNORゲート6102とANDゲート6103に入力される。帰還信号変換回路6100は、第2のスイッチ回路183の出力電圧を論理レベルに変換するレベル変換器6116と、その出力信号が入力されるインバータ6104とNORゲート6105とANDゲート6106を有する。インバータ6104の出力はNORゲート6105とANDゲート6106に入力される。
帰還信号変換回路6100は、NORゲート6102とANDゲート6106の各出力を入力されるORゲート6107と、NORゲート6105とANDゲート6103の各出力を入力されるORゲート6108と、ORゲート6107の出力と矩形波信号Vqを入力されるANDゲート6109と、ORゲート6108の出力と矩形波信号Vqの反転信号を入力されるANDゲート6110と、ORゲート6108の出力と矩形波信号Vqを入力されるANDゲート6111と、ORゲート6107の出力と矩形波信号Vqの反転信号を入力されるANDゲート6112と、ANDゲート6109の出力信号R1をリセット端子に入力され、ANDゲート6110の出力信号S1をセット端子に入力されるRSラッチ6113と、ANDゲート6111の出力信号R2をリセット端子に入力され、ANDゲート6112の出力信号S2をセット端子に入力されるRSラッチ6114とを有し、RSラッチ6113の出力Q1とRSラッチ6114の出力Q2を帰還入力回路1010へ入力する構成を成す。
今、説明の簡単化のために、帰還信号Q1及びQ2の影響がない場合を考えてみる。このような帰還入力回路1010において、抵抗1012と抵抗1013はそれぞれ等しい抵抗値R1を有し、抵抗1016と抵抗1017もそれぞれ等しい抵抗値R2を有し、オペアンプ1011の増幅率が充分大きい場合、入力信号Vsp及びVsnの差電圧(Vsp−Vsn)が信号Vsとして出力される。信号Vsによって変調回路610は、信号M1及びM2を出力する。信号M1は分配回路120及びスイッチ制御回路140及び150を介して第1のスイッチ回路182を駆動する。信号M2も分配回路130及びスイッチ制御回路160及び170を介して、第2のスイッチ回路183を駆動する。以上の動作は、図1に示した実施の形態1の電力増幅装置と同じである。
図13は、図12に示した電力増幅装置の各部の動作波形図である。以下に図13の動作波形図を用いて、帰還信号変換回路6100の動作を説明する。
第1のスイッチ回路182の出力Vpは、信号M1の振幅が主回路180で拡大され、ハイサイドスイッチ1821とローサイドスイッチ1822のデッドタイムによる遅れ時間を伴った波形である。レベル変換器6115で論理レベルになった出力Vpのタイミングを持つ信号は、インバータ6101とNORゲート6102とANDゲート6103によって、第1のスイッチ回路182の出力Vpの立ち上りと立下りに同期したワンショットパルスを出力する。同様に、レベル変換器6116で論理レベルになった出力Vnのタイミングを持つ信号は、インバータ6104とNORゲート6105とANDゲート6106によって、第2のスイッチ回路183の出力Vnの立ち上りと立下りに同期したワンショットパルスを出力する。
信号Vpの立ち上りに同期したワンショットパルスと信号Vnの立下りに同期したワンショットパルスは、ORゲート6107を経て矩形波信号VqとのAND演算され、リセット信号R1としてRSラッチ6113へ入力される。信号Vpの立下りに同期したワンショットパルスと信号Vnの立ち上りに同期したワンショットパルスは、ORゲート6108を経て矩形波信号Vqの反転信号とAND演算され、セット信号S1としてRSラッチ6113へ入力される。従って、RSラッチ6113の出力信号Q1は、矩形波信号VqがLレベルの時の第1のスイッチ回路182の出力Vpの立ち上りに同期して、Hレベルとなり、矩形波信号VqがHレベルの時の第1のスイッチ回路182の出力Vpの立下りに同期して、Lレベルとなる。また、信号Q1は、矩形波信号VqがLレベルの時の第2のスイッチ回路183の出力Vpの立下りに同期して、Hレベルとなり、矩形波信号VqがHレベルの時の第2のスイッチ回路183の出力Vnの立ち上りに同期して、Lレベルとなる。
一方、信号Vpの立ち上りに同期したワンショットパルスと信号Vnの立下りに同期したワンショットパルスは、ORゲート6107を経て矩形波信号Vqの反転信号とAND演算され、セット信号S2としてRSラッチ6114へ入力される。信号Vpの立下りに同期したワンショットパルスと信号Vnの立ち上りに同期したワンショットパルスは、ORゲート6108を経て矩形波信号VqとAND演算され、リセット信号R2としてRSラッチ6114へ入力される。従って、RSラッチ6114の出力信号Q2は、矩形波信号VqがLレベルの時の第1のスイッチ回路182の出力Vpの立下りに同期してHレベルとなり、矩形波信号VqがHレベルの時の第1のスイッチ回路182の出力Vpの立ち上りに同期してLレベルとなる。また、信号Q2は、矩形波信号VqがLレベルの時の第2のスイッチ回路183の出力Vpの立ち上りに同期して、Hレベルとなり、矩形波信号VqがHレベルの時の第2のスイッチ回路183の出力Vnの立下りに同期して、Lレベルとなる。
以上のようにして得られた信号Q1及びQ2は、従来の第2の電力増幅装置の図17および図18における信号L1及びL2と同じような4つの状態を持つ信号であるが、主回路180の各スイッチ回路での遅延や設定されたデッドタイムなどの遅れを含んでいる。このように、帰還信号変換回路6100は、本発明の実施の形態1〜3のような電力増幅装置の3つの状態を、4つの状態に変換するものである。ここで得られたQ1とQ2の差電圧(Q1−Q2)を積分した信号は、振幅を除けば、実質的に、負荷186に供給される電圧と相似の波形になる。
帰還信号変換回路6100の出力Q1およびQ2は、帰還入力回路1010の平衡型LPFを構成する抵抗1018,1019,1015,1014,コンデンサ1020を介して、それぞれ負帰還になる極性で戻される。最終的に、本実施の形態6の電力増幅装置では、出力から平衡で、かつ、遅滞なく、負帰還をかけることができ、デッドタイムや電源電圧変動に起因する出力歪みを補正することができる。
上記の実施の形態1乃至5までの電力増幅装置においても、第1のスイッチ回路182の出力端子Vpと第2のスイッチ回路183の出力端子Vnの出力を負帰還することで、上記のような出力歪みを補正することができるが、この場合、第1のスイッチ回路182の出力端子Vpおよび第2のスイッチ回路183の出力端子Vn電圧は、それぞれ一方の極性しか表現していないため、信号レベルの増減により、その平均電圧が大きく変化するために、その合成から負帰還までの経路では、直流域から安定に動作する構成が必要である。また、負帰還を構成する際は、各別に入力信号と比較するか、正と負の帰還信号を一つの信号に合成した後に比較することになる。正または負のみの信号波形には、ゼロクロス付近に鋭角な部分があるため、これらを担う演算増幅器にはスルーレイトの高いものが必要である。また、正負の合成を行う場合は、ゼロクロス付近での合成に際し、オフセットを合わせる配慮も必要になるなどの課題があった。
本実施形態では、この合成をデジタル的に行うため、これらのアナログに纏わる問題が生じない。すなわち、帰還信号変換回路6100によって、主回路で出力される差電圧であるVpnに比例した平衡な電圧が生成されるため、信号Q1およびQ2には波形の繋ぎ目がなく、また、信号の大小に関わらずその平均値は論理HおよびLレベルの平均値(H+L)/2になる。そのため、実際に負荷に印加されたVpnを再び入力部に帰還させ、その歪みを低減させることを、簡素な回路構成で実現することができる。
なお、変調回路610から負荷に印加されるVpnまでの経路で発生する歪みのほとんどは、主回路に纏わるものであり、貫通電流を防止するデッドタイム、各スイッチ回路のスイッチの動作遅れ、インダクタ185の慣性電流など、回路構成上、不可避なものであるため、このような簡素な負帰還は、本発明のような3つの状態で動作する構成では、特に、有益である。
また、図12の帰還入力回路1010では、入力部を平衡型としているため、同じく並行型の主回路の出力信号は、受動素子の抵抗とコンデンサだけで構成した平衡型LPFだけで、遅滞なく負帰還をさせることができるため、能動素子にありがちな遅延やスルーレイトに関わる問題に煩わされることがない。また、平衡型は、主回路180のスイッチング動作に起因したノイズの影響を低減することができる利点もある。なお、入力部が不平衡である場合でも、主回路の出力Vpと出力Vnの差を演算する回路や、スイッチ回路182とスイッチ回路183の出力の何れか一方の極性を反転させ、それらを重ね合わせた正、負、接地の3値の出力信号を合成する回路などを備えれば、短い遅延時間や耐ノイズ性能は得られないが、負帰還の動作はさせることができる。
なお、図12における各スイッチ回路の出力端子信号には、スイッチング時の雑音が多く含まれるため、これを除去するフィルタ機能をレベル変換器6115,6116に併せ持たせることで、帰還信号変換回路6100の動作をより安定したものにすることができる。
また、上記の実施の形態1乃至3までの電力増幅装置においても、本実施形態のような機能を持つ帰還信号変換回路6100や、帰還入力回路1010を、それぞれ備えることで、本実施形態と同様の効果を得ることができる。