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JP4567907B2 - ハイドロフォーム成形性に優れた鋼管およびその製造方法 - Google Patents
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ハイドロフォーム成形性に優れた鋼管およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車のパネル類、足廻り、メンバー等に用いられる鋼管とその製造方法に関し、特に、ハイドロフォーミング法にて成形したこれら用途に適した鋼管とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の軽量化ニーズに伴い、鋼板の高強度化が望まれており、これにより板厚減少による軽量化や衝突時の安全性向上が可能となる。また、最近では複雑な形状の部材については、高強度鋼の鋼管をハイドロフォーミング法(特開平10−175027号公報参照)によって成形加工する試みが行われている。これは、自動車の軽量化や低コストのニーズに伴う部品数の減少や溶接フランジ箇所の削減を狙ったものである。このように、ハイドロフォームなどの新しい成形加工方法が実際に使用されることで、コスト低減や設計の自由度が拡大される等の大きなメリットが期待できる。このハイドロフォーム成形のメリットを十分に生かすためには、この新しい成形方法に適した材料が必要となる。本発明者らは、既に特願2000−52574号により集合組織を制御した成形性に優れた鋼管について提案している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況において、ハイドロフォーム成形に対しては、これまで以上に高強度の鋼管への要求が高まり、しかもより高い成形性が要求されることは必至と考えられる。本発明は、より一層成形性に優れ、しかも低コストの鋼管とその製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ハイドロフォーム等の成形性に優れた材料の集合組織およびその制御方法を見いだし、これら制御方法の条件を特定することで新たなハイドロフォーム成形性に優れた鋼管とその製造方法を提案するもので、その要旨は次のとおりである。
(1)質量%で、
C :0.0010.3%、
Si:0.001〜2.0%、
Mn:0.01〜3.0%、
Al:0.3%以下、
P:0.1%以下
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼管で、引張強度TS(MPa)と一様伸びU.EL(%)の関係が
TS+60U.EL>1300
を満たし、管軸方向のr値が1.5以上であり、かつ鋼管板厚1/2での板面の{110}<110>〜{221}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均が2.0以上、および鋼管板厚1/2での板面の{110}<110>のX線ランダム強度比が3.0以上の何れか一方または両方の集合組織を有し、かつ、鋼管板厚1/2での板面の{100}<110>〜{223}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均、および鋼管板厚1/2での板面の{100}<110>のX線ランダム強度比の何れか一方または両方が3.0以下の集合組織を有することを特徴とするハイドロフォーム成形性に優れた鋼管。
)前記鋼管の集合組織が、鋼管板厚1/2での板面の{100}<100>のX線ランダム強度比が1以上8以下の集合組織を有することを特徴とする上記(1)記載のハイドロフォーム成形性に優れた鋼管。
)前記鋼管が、質量%で、更にTi,Zr,V,Nb,Mgの一種または二種以上を合計で0.001〜0.5%含有することを特徴とする上記(1)または2)記載のハイドロフォーム成形性に優れた鋼管。
)前記鋼管が、質量%で、更に、Cr,Cu,Ni,Co,W,Moの1種または2種以上を合計で0.001〜3.0%含有することを特徴とする上記(1)〜()の何れかの項に記載のハイドロフォーム成形性に優れた鋼管。
)前記鋼管が、質量%で、更にBが0.001〜0.01%含有することを特徴とする上記(1)〜()の何れかの項に記載のハイドロフォーム成形性に優れた鋼管。
)上記(1)〜()の何れかの項に記載のハイドロフォーム成形性に優れた鋼管の製造において、上記(1)〜(5)の何れかの項に記載の成分を有する母管を造管後、950℃以上、1350℃以下の温度に加熱後、縮径加工後の鋼管の板厚変化が−30%〜+20%になるように、Ar3 変態点以上、Ar3 変態点+200℃の温度領域で縮径率25%以上の縮径加工を行い、該縮径加工を終了することを特徴とするハイドロフォーム成形性に優れた鋼管の製造方法。
)上記(1)〜()の何れかの項に記載のハイドロフォーム成形性に優れた鋼管の製造において、上記(1)〜(5)の何れかの項に記載の成分を有する母管を造管後、950℃以上、1350℃以下の温度に加熱後、縮径加工後の鋼管の板厚変化が−30%〜+20%になるように、Ar3 変態点以上、Ar3 変態点+200℃の温度領域で縮径率25%以上の縮径加工を行い、引き続きAr3 変態点以下で縮径率2〜20%の縮径加工後、765℃以上、Ar3 変態点以下で縮径加工を終了することを特徴とするハイドロフォーム成形性に優れた鋼管の製造方法。
【0005】
【発明の実施の形態】
ハイドロフォームをはじめとしたこれまでにない厳しい加工に耐えうる鋼管に必要な材質のひとつに一様伸びがある。一般に、一様伸びは引張強度の上昇に伴い低下する。今後予想される厳しい加工に耐えうる成形性に優れた鋼管として、引張強度TS(MPa)と一様伸びU.EL(%)との関係は、TS+60U.EL>1300を満たすことが必要である。
【0006】
このような制約下で、たとえば枝張り成型のような絞り加工が支配的となる加工において良好であるためには、r値が高いことが重要となる。r値向上は集合組織形成の工夫によって達成される。発明者らは、鋼管の縮径加工によって鋼管の管軸方向r値を高めることが出来る知見を新たに見出し、一様伸びが高くかつ管軸方向のr値が高い鋼管及び製造方法について明らかにした。
【0007】
以下に、本発明を詳細に説明する。成分含有量は質量%である。
C:高強度化に有効で0.0005%以上の添加とするが、集合組織を制御する上では過度の添加は好ましいものではなく、上限を0.50%とする。0.001〜0.3%がより好ましく、0.002〜0.2%がさらに好ましい範囲である。
【0008】
Si:安価に機械的強度を高めることが可能であり、要求される強度レベルに応じて添加すれば良いが、過剰の添加はメッキのぬれ性や加工性の劣化を招くばかりか良好な集合組織形成を阻害するので、上限を2.0%とした。下限を0.001%としたのは、これ未満とするのは製鋼技術上困難なためである。
Mn:高強度化に有効な元素であるため下限を0.01%とした。また、Mnは変態中のバリアント選択に好ましい影響を与え、集合組織を改善する効果を有するので、0.5%以上の添加が好ましい。一方で過剰の添加は延性の低下を招くため、上限を3.0%とした。
【0009】
鋼板の1/2板厚での板面の{110}<110>〜{221}<110>の方位群および{110}<110>のX線ランダム強度比:ハイドロフォーム成形等を行う上で最も重要な特性値である。板厚中心位置での板面のX線回折を行い、ランダム試料に対する各方位の強度比を求めたときの、{110}<110>〜{221}<110>の方位群での平均が2.0以上とした。
【0010】
この方位群に含まれる主な方位は{110}<110>,{661}<110>,{441}<110>,{331}<110>,{221}<110>である。これらは深絞り冷延鋼板を素材として電縫溶接などによって単に鋼管にしたのでは得られない結晶方位群である。
また本発明では、高r値冷延鋼板の代表的な結晶方位である{111}<112>や{554}<225>はほとんどなく、これらはいずれも2.0以下、さらに好ましくは1.0未満である。これらの各方位のX線ランダム強度比は{110}極点図よりベクトル法により計算した3次元集合組織や、{110},{100},{211},{310}極点図のうち複数の極点図を基に級数展開法で計算した3次元集合組織から求めればよい。
【0011】
たとえば、後者の方法によって各結晶方位のX線ランダム強度比を求めるには、3次元集合組織のφ2=45°断面における(110)[1−10],(661)[1−10],(441)[1−10],(331)[1−10],(221)[1−10]の強度で代表させる。
なお、本発明の集合組織は通常の場合、φ2=45°断面において上記の方位群の範囲内に最高強度を有し、この方位群から離れるにしたがって徐々に強度レベルが低下するが、X線の測定精度の問題や鋼管製造時の軸周りのねじれの問題、X線試料作製の精度の問題などを考慮すると、最高強度を示す方位がこれらの方位群から±5°ないし10°程度ずれる場合も有りうる。
【0012】
{110}<110>〜{221}<110>方位群の平均X線ランダム強度比とは、上記の各方位のX線ランダム強度比の相加平均である。上記方位のすべての強度が得られない場合には{110}<110>,{441}<110>,{221}<110>の方位の相加平均で代替しても良い。中でも、{110}<110>は重要であり、本発明ではこの方位のX線ランダム強度比が3.0以上である。また、成形困難な場合には上記方位群の平均強度比が4.0以上でかつ{110}<110>の強度比が8.0以上であることが望ましい。
【0013】
さらに{001}<110>および{112}<110>は、いずれもその強度が2.0以下でなくてはならない。これらは軸方向のr値を低下せしめる方位だからである。好ましくは1.0以下である。その他の方位、例えば{116}<110>,{114}<110>,{113}<110>,{223}<110>などの強度は特に限定しないが、これらも軸方向のr値を低下させるので、それぞれ2.0以下であることが好ましい。
【0014】
さらに、{110}<110>をより先鋭に発達させるため、1000℃以上の高温加熱を行いγ域で高縮径加工した場合、変態後の集合組織は{100}<100>の方位が同時に発達することが新たに知見された。{100}<100>の方位は成形後の形状保存に良好であるが、過度に大きいとr値低下を招く。
従って、X線ランダム強度比は1以上8以下とした。
【0015】
{001}<110>,{116}<110>,{114}<110>,{113}<110>,{112}<110>,{223}<110>のX線ランダム強度比とは、3次元集合組織のφ2=45°断面における、(001)[1−10],(116)[1−10],(114)[1−10],(113)[1−10],(112)[1−10],(223)[1−10]で代表させれば良い。
【0016】
鋼管のX線回折を行う場合には、鋼管より弧状試験片を切り出し、これをプレスして平板としX線解析を行う。また、弧状試験片から平板とするときは、試験片加工による結晶回転の影響を避けるため極力低歪みで行うものとし、加工により導入される歪み量の上限を10%以下で行うこととした。
このようにして得られた板状の試料について機械研磨や化学研磨などによって板厚中心付近まで研磨し、バフ研磨によって鏡面に仕上げた後、電解研磨や化学研磨によって歪みを除去すると同時に、板厚中心層が測定面となるように調整する。なお、鋼板の板厚中心層に偏析帯が認められる場合には、板厚の3/8〜5/8の範囲で偏析帯のない場所について測定すればよい。さらにX線測定が困難な場合には、EBSP法やECP法により測定しても差し支えない。
【0017】
本発明の集合組織は、上述の通り板厚中心または板厚中心近傍の面におけるX線測定結果により規定されるが、中心付近以外の板厚においても同様の集合組織を有することが好ましい。しかしながら鋼管の外側表面〜板厚1/4程度までは、後述する縮径加工によるせん断変形に起因して集合組織が変化し、上記の集合組織の要件を満たさない場合もあり得る。
【0018】
本発明の集合組織に関する特徴は、通常の逆極点図や正極点図だけでは表すことができないが、例えば鋼管の半径方向の方位を表す逆極点図を板厚の中心付近に関して測定した場合、各方位のX線ランダム強度比は以下のようになることが好ましい。
<100>:1.5以下、<411>:1.5以下、<211>:1.5以下、<111>:5以下、<332>:10以下、<221>:30.0以下、<110>:50.0以下。
【0019】
また、軸方向を表す逆極点図においては、<110>:15以上、<110>以外の全ての方位:3以下。
鋼管のr値は、集合組織の変化によって種々変化するが、少なくとも軸方向のr値は1.5以上となる。製造条件によっては軸方向のr値が3.5を超える場合もある。r値の異方性については特に限定するものではないが、本発明では軸方向のr値が円周方向や半径方向のr値よりも常に大きい。なお、例えば高r値冷延鋼板を単に電縫溶接により鋼管とした場合、板取りによっては軸方向のr値が1.7以上となる場合がある。しかしながら、本発明は既述の集合組織を有し、同時にr値が1.5以上である点において、そのような鋼管とは明瞭に区別されるものである。
【0020】
r値の評価は、JIS11号管状試験片またはJIS12号弧状試験片によって行えば良い。そのときの歪量は伸び率15%で評価するが、均一伸びが15%未満のときには、均一伸びの範囲内の歪量で評価する。なお、試験片はシーム部以外から試料を採取することが望ましい。なお、鋼管を板状に巻き戻してJIS13号板状引張試験片とすると、弧状試験片よりもr値が大きくなる傾向にあるので、板状試験片で評価する場合には、r値は1.9以上となる。
【0021】
本発明においては、上述した成分に加え、以下の成分を添加することができる。
Al,Zr,Mg:脱酸元素として有効である。一方、過剰の添加は酸化物、硫化物や窒化物の多量の晶出や析出を招き清浄度が劣化して、延性を低下させてしまう上、めっき性を損なう。したがって、必要に応じてこれらの1種または2種以上を合計で0.0001〜0.50%とする。
【0022】
Ti,V,Nb,P:必要に応じて添加する。Ti,V,Nbは、炭化物、窒化物もしくは炭窒化物を形成することによって、鋼材を高強度化したり加工性を向上することができるばかりでなく、集合組織形成にも好ましいので、0.001%以上添加する。その合計が0.5%を超えた場合には母相であるフェライト粒内もしくは粒界に多量の炭化物、窒化物もしくは炭窒化物として析出して、延性を低下させることから、添加範囲を0.001〜0.5質量%とした。より好ましくは0.01〜0.08%である。Pも高強度化に有効な元素であるので0.4%以下添加する。0.4%を超えて添加すると熱間圧延や縮径加工時に欠陥が発生したり、成形性が劣化するので0.4%を上限とする。
【0023】
Cr,Cu,Ni,Co,W,Mo:これらは強化元素であり、必要に応じてこれらの1種又は2種以上の合計で0.001%以上添加する。また、過剰の添加は、コストアップや延性の低下を招くことから、3.0%以下とした。
B:Bは、粒界の強化や鋼材の高強度化に有効ではあるが、その添加量が0.01%を超えるとその効果が飽和するばかりでなく、必要以上に鋼板強度を上昇させ、加工性も低下させることから、0.0001〜0.01%とした。
【0024】
さらに製造にあたっては、高炉、電炉等による溶製に続き各種の2次製錬を行いインゴット鋳造や連続鋳造を行い、連続鋳造の場合には室温付近まで冷却することなく熱間圧延するCC−DRなどの製造方法を組み合わせて製造してもかまわない。鋳造インゴットや鋳造スラブを再加熱して熱間圧延を行っても良いのは言うまでもない。熱間圧延の加熱温度は特に限定するものではなく、目的とする仕上げ温度を具現化するのに適切な温度であれば良い。
【0025】
熱延の仕上げ温度は通常のγ単相域のほかα+γ2相域やα単相域、α+パーライト、α+セメンタイトのいずれの温度域で行っても良い。熱間圧延の1パス以上について潤滑を施しても良い。また、粗圧延バーを互いに接合し、連続的に仕上げ熱延を行っても良い。粗圧延バーは一度巻き取っても再度巻き戻してから仕上げ熱延に供してもかまわない。熱延後の冷却速度や巻き取り温度は特に限定するものではない。熱間圧延後は酸洗することが望ましい。さらにスキンパス圧延や50%以下の圧下率の冷間圧延を施しても良い。
【0026】
鋼管の製造にあたっては、通常は電縫溶接を用いるが、TIG,MIG、レーザー溶接、UOや鍛接等の溶接・造管手法等を用いることも出来る。これらの溶接鋼管製造に於いて、溶接熱影響部は必要とする特性に応じて局部的な固溶化熱処理を単独あるいは複合して、場合によっては複数回重ねて行っても良く、本発明の効果をさらに高める。この熱処理は溶接部と溶接熱影響部のみに付加することが目的であって、製造時にオンラインであるいはオフラインで施工できる。
【0027】
鋼管を縮径加工する前の加熱温度および続く縮径加工の条件は、本発明において重要である。本発明は以下のような新知見に立脚するものである。
すなわち、鋼管をγ域まで加熱後、引き続きγ域で縮径加工するわけであるが、縮径加工に基づく応力あるいは歪み状態下で加工したγから変態させると、ハイドロフォーム成形に良好な{110}<110>近傍の集合組織が顕著に発達することを見出した。
【0028】
加熱温度についてはγ粒径を大きくすることが集合組織形成に影響を及ぼすので、Ac点+80℃以上にする必要がある。なお、加熱温度の下限は実施例に基づいて、950℃以上とする。ただし鋼管の表面性状を考慮すると、最大1350℃となる。γ域での縮径加工は縮径率が25%以上となるように行う。20%未満では集合組織がγ域で発達しないため、最終的に好ましいr値や集合組織を得ることが困難となる。γ域で縮径率30%以上とするのが好ましく、50%以上がより一層望ましい。なお、この場合の縮径率とは{(縮径加工前の母管の直径−γ域での縮径完了後の鋼管の直径)/縮径加工前の母管の直径)}×100(%)で定義される。
【0029】
さらにAr点以上Ar点+200℃の温度域で、縮径率25%以上の縮径加工を行うことが望ましい。すなわち縮径という応力ないし歪み状態下でγを加工し、再結晶+加工集合組織を大きく発達させ、その後の変態で目的とする集合組織形成すなわち{110}<110>〜{221}<110>方位群、特に{110}<110>の先鋭な発達に必須だからである。
【0030】
上記縮径加工に引き続き、Ar点以下で縮径加工するとさらに目的とする集合組織はさらに発達する。Ar点以下の温度域でフェライト組織を若干出すことでγにより大きな歪みが集中し、γ集合組織が発達する。その結果、変態後の目的とする集合組織はより一層発達する。その効果を発揮させるためには、Ar点以下の縮径率は2%以上必要である。ただし過度に縮径加工すると一様伸びが大きく低下するので、Ar点以下の縮径加工は20%以下とする。なお、この場合、縮径加工の終了温度の下限は、実施例に基づいて、765℃以上とする。
【0031】
このようにして製造された鋼管の全縮径率は29%以上でなくてはならない。
全縮径率が29%未満では集合組織の発達が十分ではない。好ましくは50%以上である。全縮径率は下式で定義される。
{(縮径加工後前の母管の直径−縮径完了後の鋼管の直径)
/縮径加工前の母管の直径)}×100(%)。
【0032】
母管に対する縮径加工後の鋼管の板厚変化率は、+15%〜−30%とすることが好ましい。板厚減少率は{(縮径加工完了後の鋼管の板厚−縮径加工前の母管の板厚)/縮径加工前の母管の板厚)}×100(%)で定義される。なお、鋼管の直径は鋼管の外形を測定する。目的とする{110}<110>〜{221}<110>方位群、特に{110}<110>方位の集合組織を発達させるためには、縮径加工中に板厚が減少する方がより効果的である。板厚が増加するようになると、集合組織形成が弱くなり、15%以下の増加に押さえなければならない。また、生産性を考慮すると減少率は30%程度までであり、これらから、板厚変化は、−30%〜+15%が望ましい。
【0033】
縮径加工は、複数のロールを組み合わせて多段パスのラインを通板することによって行っても良いし、ダイスを用いて引き抜いて行っても良い。また、縮径時に潤滑を施すことは成形性向上の点で望ましい。
本発明に係る鋼管は、延性を確保するためフェライトを面積率で50%以上含有することが好ましいが、フェライト以外の金属組織として、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト、オーステナイトおよび炭窒化物等の組織を含んでも良い。
【0034】
フェライト粒径は、Ar3変態点近傍で加工すると混粒となり、その粒径は0.5μmから500μmとなる。平均粒径が10μm以下となると、一様伸びあるいはn値が大きく低下することから、平均粒径は10μm以上が望ましい。
【0035】
【実施例】
表1に示す成分の各鋼を溶製して1250℃に加熱後、表1に示す仕上げ温度で熱間圧延して巻き取った。酸洗に引き続き電縫溶接により直径100〜200mmに造管した後、所定の温度に加熱して、縮径加工を行った。
得られた鋼管の加工性の評価は以下の方法で行った。
【0036】
前もって鋼管に10mmφのスクライブドサークルを転写し、内圧と軸押し量を制御して、円周方向への張り出し成形を行った。バースト直前での最大拡管率を示す部位(拡管率=成形後の最大周長/母管の周長)の軸方向の歪εΦと円周方向の歪εθを測定した。
この2つの歪の比ρ=εΦ/εθと最大拡管率をプロットし、ρ=−0.5となる拡管率Reをもってハイドロフォームの成形性指標とした。X線測定は、縮径前の母管および縮径後の鋼管から弧状試験片を切り出し、プレスして平板として行った。(110),(200),(211),(310)極点図を測定し、これらを用いて級数展開法により3次元集合組織を計算し、φ2=45°断面における各結晶方位のX線ランダム強度比を求めた。
【0037】
表2、表3には、縮径加工の諸条件と縮径加工後の鋼管の特性を示す。
本発明例ではいずれも良好な集合組織とr値を有し、ハイドロフォーム成形時の最大拡管率も高いのに対して、本発明外の例では集合組織、r値が好ましくなく、最大拡管率も低い。
【0038】
【表1】
Figure 0004567907
【0039】
【表2】
Figure 0004567907
【0040】
【表3】
Figure 0004567907
【0041】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明による鋼管は、特に軸押し力の働くハイドロフォーム成形性に極めて優れており、ハイドロフォーム成形時の自動車用部品の製造効率を向上させることができる。また、本発明は高強度鋼管にも適用できるため部品の板厚を低減させることが可能となる。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C :0.0010.3%、
    Si:0.001〜2.0%、
    Mn:0.01〜3.0%、
    Al:0.3%以下、
    P:0.1%以下
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼管で、引張強度TS(MPa)と一様伸びU.EL(%)の関係が
    TS+60U.EL>1300
    を満たし、管軸方向のr値が1.5以上であり、かつ鋼管板厚1/2での板面の{110}<110>〜{221}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均が2.0以上、および鋼管板厚1/2での板面の{110}<110>のX線ランダム強度比が3.0以上の何れか一方または両方の集合組織を有し、かつ、鋼管板厚1/2での板面の{100}<110>〜{223}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均、および鋼管板厚1/2での板面の{100}<110>のX線ランダム強度比の何れか一方または両方が3.0以下の集合組織を有することを特徴とするハイドロフォーム成形性に優れた鋼管。
  2. 前記鋼管の集合組織が、鋼管板厚1/2での板面の{100}<100>のX線ランダム強度比が1以上8以下の集合組織を有することを特徴とする請求項1記載のハイドロフォーム成形性に優れた鋼管。
  3. 前記鋼管が、質量%で、更にTi,Zr,V,Nb,Mgの一種または二種以上を合計で0.001〜0.5%含有することを特徴とする請求項1または2記載のハイドロフォーム成形性に優れた鋼管。
  4. 前記鋼管が、質量%で、更に、Cr,Cu,Ni,Co,W,Moの1種または2種以上を合計で0.001〜3.0%含有することを特徴とする請求項1〜の何れかの項に記載のハイドロフォーム成形性に優れた鋼管。
  5. 前記鋼管が、質量%で、更にBが0.001〜0.01%含有することを特徴とする請求項1〜の何れかの項に記載のハイドロフォーム成形性に優れた鋼管。
  6. 請求項1〜の何れかの項に記載のハイドロフォーム成形性に優れた鋼管の製造において、請求項1〜5の何れかの項に記載の成分を有する母管を造管後、950℃以上、1350℃以下の温度に加熱後、縮径加工後の鋼管の板厚変化が−30%〜+20%になるように、Ar3 変態点以上、Ar3 変態点+200℃の温度領域で縮径率25%以上の縮径加工を行い、該縮径加工を終了することを特徴とするハイドロフォーム成形性に優れた鋼管の製造方法。
  7. 請求項1〜の何れかの項に記載のハイドロフォーム成形性に優れた鋼管の製造において、請求項1〜5の何れかの項に記載の成分を有する母管を造管後、950℃以上、1350℃以下の温度に加熱後、縮径加工後の鋼管の板厚変化が−30%〜+20%になるように、Ar3 変態点以上、Ar3 変態点+200℃の温度領域で縮径率25%以上の縮径加工を行い、引き続きAr3 変態点以下で縮径率2〜20%の縮径加工後、765℃以上、Ar3 変態点以下で縮径加工を終了することを特徴とするハイドロフォーム成形性に優れた鋼管の製造方法。
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