JP4570595B2 - 生胚芽粉末を含むパン用穀粉及びこれを使用したパン - Google Patents
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Description
しかし、製粉用ロール機やピュリファイヤの発明、製粉機械の加工精度の上昇、製粉ソフトウエア(機械の組み合わせ方法など)の発達により、小麦粉製造技術はここ数十年で長足の進歩を遂げ、生産される小麦粉のグレード(ふすまなどの混入率の低さ)も著しく上昇した。
この傾向は、欧米諸国などよりも日本の方が著しい。
小麦やトウモロコシなどの穀物には、炭水化物、たん白質、脂質、無機質、ビタミン類、食物繊維などの栄養素が含まれる。
そのうち、食物繊維や無機質はふすま(穀物の皮部)中に多く、穀粉中には少量しか含まれないので、それらの増量のために食品にふすまを加えることがある。
また、脂質(特に必須脂肪酸を多く含むもの)、ビタミン類(ビタミンB群とビタミンE)は胚芽中に偏在しているので、それらの栄養成分を増量するために、食品に胚芽を加えることがある。
焙煎以外には、乳酸菌で醗酵させる方法も知られている(例えば特許文献2参照)。
しかし、胚芽中のグルタチオンが生地性を悪化させるため(例えば非特許文献1参照)、従来、焙煎などの処理を行っていない胚芽をベーカリー製品に加えることはなかった。
ベーカリー製品以外では、乳飲料などへの胚芽の添加が知られているが、そのような場合にも、焙煎した胚芽が使用されている(例えば特許文献3参照)。
焙煎胚芽以外の胚芽を使用して製パンを行う方法としては、小麦胚芽の煮汁を使用する方法が知られている(例えば特許文献4参照)。
一定の粒度をもつ小麦胚乳、小麦胚芽、小麦ふすまの混合物をロール機にかけると、胚乳は砕かれて粉状となるが、ふすまはロール機でほとんど砕けないため、サイズの変化はない。
胚芽は柔らかいので、ロールにより押しつぶされてフレーク状になり、サイズは元の粒子よりも大きくなる。
したがって、ロール機の処理後に、元の粒子よりも粗い目開きの篩いを通すことで、胚芽を回収することができる。
小麦胚芽はこのような方法で製造されており、粒径は1mm前後が多く、細かくても500〜800μm程度である。
生の小麦胚芽は、粉砕することが困難なので、前記のとおり生の胚芽粉末をパンなどの食品に添加することはなかった。
トウモロコシにおいては、製粉方法は小麦などの場合と異なり、胚芽は粗砕後に比重分離で回収されるが、粉砕困難という点や、含有成分などは小麦などの胚芽と良く似ている。
従って、本発明は、生胚芽粉末を穀粉又は穀粉と澱粉の合計100質量部に対し0.5〜2.5質量部含み、灰分が1.00質量%以下である、小麦粉、ライ麦粉、ライ小麦粉、トウモロコシ粉からなる群から選ばれる1種又は2種以上からなるパン用穀粉である。
また、前記パン用穀粉を使用して製造したパンである。
本発明のパン用穀粉は胚芽が含まれるにもかかわらず、保存性に優れる。
本発明の穀粉は、製パン用に使用されるものであり、小麦粉、ライ麦粉、ライ小麦粉、トウモロコシ粉からなる群から選ばれる1種又は2種以上からなるパン用穀粉である。
パンに使用される小麦粉は強力小麦粉が多いが、製造するパンの種類によって、もしくは食感上の特徴を出すなどの目的で、中力小麦粉、薄力小麦粉、デュラムフラワー、さらにはデュラムセモリナを使用する場合もある。
また、栄養成分の増強や特徴のある色調、食感などを出すといった理由で、スペルト小麦(ディンケル小麦とも呼ばれる)、一粒小麦(アインコルン小麦とも呼ばれる)、カムート小麦、ポーランド小麦、イギリス小麦、エンマー小麦、黒小麦、オレンジ小麦、青小麦などの特殊な小麦から製粉した小麦粉も使用されることがある。
本発明の小麦粉にはこれらの小麦粉も含まれる。
胚芽に遊離糖、遊離アミノ酸が多いという特徴は穀物に共通しているので、どの穀物の胚芽でも利用できる。
ただし、穀物により胚芽成分の微妙な差があるため、生成される風味は異なる。
この性質を利用して、胚芽を使い分けることにより、パンの種類に応じて風味を調整することもできる。
例えば、小麦粉にコーン生胚芽粉末を添加すると、焼きトウモロコシ風の香ばしい風味を付けることができる。
使用する胚芽には、搾油した残りの脱脂胚芽も(焙煎していない場合に限り)使用可能であるが、焙煎した胚芽は使用できない。
広く行われているロール式製粉では生胚芽の粉砕が困難である。
製粉の工程で生胚芽の粉砕が困難な場合には、別途粉砕した生胚芽粉末を穀粉に添加する方法を採ることになる。
製粉工程中で胚乳とともに胚芽を粉砕する方法として、石臼製粉が挙げられる。
ただし、従来の石臼製粉では穀粉への胚芽の混入量が十分ではないため、石臼のギャップや、篩いの目開きを調整するなどして胚芽を増量する必要がある。
前記した2つの方法で生胚芽粉末を添加した穀粉は、粉末状の生胚芽が混入しているという点では同一であり、生胚芽粉末の添加方法はパンの加工性や品質に影響を及ぼさない。
従って、本発明の穀粉において、生胚芽粉末を加えるための方法は、前記したいずれも使用できる。
焙煎胚芽は酸化を抑える目的で酸化防止剤を入れた密封パッケージで販売されているが、小麦粉などの穀粉はエージング(空気中の酸素による酸化により、グルテン蛋白の性状が改善されること)をとるために通気性の紙袋で包装される。
そのため、穀粉と焙煎胚芽の双方に適した包装形態は存在せず、胚芽を加えた穀粉は長期保存が困難であった。
したがって、焙煎胚芽を使用したパンは、ロースト臭は強くても、焦げ臭を伴う不快な香りとなり、味も甘味や旨味が失われて薄っぺらなものとなってしまう。
そのような理由により、焙煎胚芽を粉末状にして穀粉に添加しても、本発明の課題は達成できない。
しかし、粉末状にして穀粉に添加すると、生地性の悪化が少なくなる。
表面積を大きくすると、前記の成分の一部が(おそらく空気中の酸素により酸化されることで)破壊されるためと推定される。
生胚芽は、胚芽油を採取した残りの脱脂胚芽も、焙煎していない場合に限り使用可能である。
胚芽油の抽出により、脂溶性のビタミン類や、一部のアミノ酸が失われるという欠点はあるため、搾油前の胚芽と比較すると効果はやや落ちるが、糖や大部分のアミノ酸は残っているため使用可能である。
生胚芽は、粉末にした方が表面積が大きくなり、風味を発生させる非酵素的褐変化反応が均一に起こり易くなる。
また、フレーク状生胚芽をパンに添加すると、食感にざらつきなどの違和感を感じるが、生胚芽粉末ではその問題が解消される。
さらに、フレーク状生胚芽を添加した場合には製品に濃褐色の斑点が多数見られるようになり、外観を損なう。
穀粉に生胚芽粉末を添加する際には、穀粉と同じ粒度にするのが、粉体の取り扱い上も望ましい。
穀粉の製造には篩いの工程が含まれており、フレーク状の生胚芽を加えても篩いで除去されてしまうが、生胚芽粉末は篩いを抜けるので、既存の製造設備をそのまま使用した製造が可能となる。
従来の小麦粉などの穀粉は、特殊なものを除き目開き212μmもしくは200μmの篩いを通過するように粒度調整されている。
遊離糖や遊離アミノ酸はアミノカルボニル反応やカラメル化反応といった非酵素的褐変化反応により多種多様な物質を生成することで香りや味を発生する。
したがって、胚芽を含む素材を非酵素的褐変化反応が起こる条件で加熱すれば、風味が良い食品を製造することができる。
また、非酵素的褐変化反応に使われなかった胚芽中の成分(アミノ酸など)も、甘味や旨味として風味に貢献する。
さらに、パンは製造工程の中に醗酵を含む場合が多いが、胚芽中の各種成分が醗酵生成物の構成に影響を与え、風味を向上させている可能性もある。
通常の穀粉は精製度が高く、遊離アミノ酸や遊離糖の含有量が少ないが、それを生胚芽粉末の添加により補うことで、風味を格段に向上させることが可能となる。
焼成は、放射熱、伝導熱、対流を利用したオーブンや、熱した金属板、金属の型、石などに被加熱物質を乗せて加熱する方法が一般的であるが、非酵素的褐変化反応が起こる条件での加熱であれば、特段方法は問わない。
高温の液体(例えば食用の油脂)に被加熱物質を入れて加熱する方法も、非酵素的褐変化反応が起こるので本発明の焼成に含む。
茹でる、蒸すなどの加熱方法は、非酵素的褐変化反応がほとんど起きないので焼成には含まないが、高温の水蒸気(例えば150℃以上)を使用して被加熱物質に非酵素的褐変化反応が起こるような条件で加熱する場合は本発明の焼成に含まれる。
パンを焼成すると澱粉が糊化することで生地の流動性が失われ、形状が保持されるが、生胚芽粉末は全く糊化しないので、パン組織の結合が弱まり、もろく、口溶けが良い食感となる。
また、生胚芽中の油脂もパンの組織を弱める働きを持つ。(脱脂生胚芽を使用した場合には、食感改良効果は弱くなる。)
さらに、少量の生胚芽粉末を穀粉に加える場合、生地の伸展性が大きくなり、製パン作業性が改良される。(特にハースブレッドの場合に顕著である)
これは、澱粉を添加する場合に、穀粉中の澱粉と外から加えた澱粉の機能(風味への寄与など)にはほとんど差はなく、穀粉の量が単純に増えたと見做すことができ、したがって(澱粉で増量された)穀粉に対する生胚芽粉末の量は相対的に減少するためである。
生胚芽粉末の量が2.5質量%を超えると、濃厚な風味は発生するものの、エグミや焦げ臭などの不快な味と香りが感じられるようになり、また加工する製品によっては作業性が悪化するため、好ましくない。
灰分が高すぎる場合には、ふすま臭やにが味、エグミなどの原因となったり、製パン時の作業性が劣ったりといった問題が発生する。
例えば、全粒小麦粉には、生胚芽は約2.5質量%程度含まれるが、ふすまの比率が高すぎるため、ふすま臭やにが味、エグミが強く、風味は劣る。
従って、本発明の穀粉は、生胚芽粉末を添加した状態で、灰分含有量が1.00質量%以下である必要がある。
0.80質量%以下の灰分含有量だと一層好ましい。
なお、本発明の灰分の値は、酢酸マグネシウム添加灰化法により測定した値である。
ライ麦粉、ライ小麦粉、コーンフラワーなどは、それよりも灰分が高い。
したがって、灰分が最も低い小麦粉に胚芽を0.5質量%混ぜたものが灰分の下限となる。
しかしながら、今後の製粉技術の改良や、穀物の品種改良によっては、さらに低灰分のものが製造できる可能性がある。
胚芽の混入量が0.5質量%以上2.5質量%以下の範囲に入っていれば、アミノ酸などの含有量はパンの品質を向上させる範囲に入るため、元となる穀粉の灰分がさらに下がった場合を仮定しても、パンの品質改良効果は失われない。
そのような理由により、灰分の下限については厳密には設定できない。
例えば、製パンに必要な副資材を本発明のパン用穀粉にあらかじめ混合しパン用ミックス粉として使用することができる。
前記パンを製造する際に、生地に他の食材を練りこんだもの(ベジタブルブレッド、フルーツブレッド、納豆パン、ナッツブレッド、胡椒パンなどを含む)、前記パンにフィリングを入れたもの(あんぱん、クリームパン、ジャムパン、チョコパン、チョココロネ、カレーパン、あんドーナッツ、ベーコンエピーなどを含む)、前記パンに他の食材をはさんだり乗せたりしたもの(サンドウィッチ、ハンバーガー、ホットドッグ、調理パン、フレンチトーストなどを含む)もパンに含まれる。
パン粉はパンの加工品であり、本発明のパンに含まれるが、通電による加熱で製造したパン粉は、非酵素的褐変化反応がほとんど起こらず、焼成しているとは見做せないので、本発明のパンには含まない。
スポンジケーキなどのケーキ類は食塩を使用せず、水も加えない場合が多いので、パンには含まれない。
蒸しパンは焼成していないので、本発明のパンには含まない。
お好み焼きやたこ焼きはパンには含まないが、膨剤を加えて膨化させたものは本発明のパンに含む。
さらに、地域によっては小麦以外の穀物から作った穀粉を利用したパンもあり、代表的な例としてはドイツや北欧などのライ麦パン、ロシアやポーランドなどのライ小麦パン、アメリカ合衆国南部や中南米などのトウモロコシパンなどが挙げられる。
代表的なパンとして、フランスパン、食パン、ドイツパン、コーンブレッドによる評価を行った。
市販のフランスパン用小麦粉(灰分0.42質量%、 胚芽0.0質量%)に生胚芽粉末を添加した小麦粉を使用してフランスパンの試作を行い、風味と食感の評価を行った。
小麦粉への生胚芽粉末の添加量は、実施例1で0.5質量%、実施例2で1.0質量%、実施例3で1.5質量%、実施例4で2.0質量%、実施例5で2.5質量%、比較例1で0.0質量%、比較例2で0.3質量%、比較例3で3.0質量%、比較例4で5.0質量%であった。
また、比較例5〜7は小麦粉にフレーク状生胚芽(灰分3.58質量%、胚芽92.8質量%)を添加したもので、生胚芽の添加量は比較例5で0.5質量%、比較例6で1.5質量%、比較例7で2.5質量%であった。
生胚芽粉末は、市販の小麦胚芽に粉砕したドライアイスを混合してレッチェ社製超遠心粉砕機により粉砕し、製粉用の7xxの篩い(目開き200μm)で抜けたものを使用した。
生胚芽粉末は灰分3.53質量%、胚芽99.3質量%を含んでいた。
フレーク状生胚芽は、市販の小麦胚芽を使用した。
なお、前記灰分は酢酸マグネシウム添加灰化法により測定したものであり、前記胚芽混入量は蛍光光度法により測定したものである。
実施例3、4、5および比較例6、7では、加水量を640mlとした。
比較例3、4では、加水量を630mlとした。
(1)小麦粉1kg、 食塩20g、
インスタントドライイースト7g、 VC1%溶液1ml、モルト4g、水650mlをミキサーで捏ねて生地を作った。
VC1%溶液とは、ビタミンC1gを99mlの水に溶解したものである。
捏練時間は低速で5分、高速で3分とした。
捏ね上げ温度は24℃となるように調整した。
(2)捏ね上がった生地を27℃の醗酵室で120分間醗酵し、パンチ(ガス抜き)をした後にさらに27℃で60分間醗酵した。
(3)醗酵した生地を350gに分割し、手作業でバタールの形に整形した。
(4)整形した生地を30℃で1時間醗酵し、クープ(切れ込み)を入れて、240℃で30分間焼成した。
(5)焼成後に室温で30分間間冷却し、比較例1を対照として官能評価を行った。
各項目は、次に示す7段階で数値化した。
7点 非常に優れる
6点 優れる
5点 やや優れる
4点 普通
3点 やや劣る
2点 劣る
1点 非常に劣る
製パン作業性の評価は製パン技術者2名が行い、その平均をとった。
外観、内相、食感、風味の評価は熟練のパネラー10名が官能試験により行い、その平均をとった。
評価結果を表1に示す。
生胚芽粉末添加量が過剰の比較例3〜4では、生地がべたついたために作業性が劣ったほか、生地が傷んだために外観や内相にも悪影響が見られた。
さらに、比較例3〜4では風味は強いもののエグミを感じるため、好ましい風味ではなかった。
フレーク状胚芽を添加した比較例5〜7では、添加量が増えるに従い風味が濃くなったが、生胚芽粉末を添加した小麦粉には及ばなかった。
さらに、比較例5〜7では胚芽の粒が目立つなどの理由で外観や内相が劣り、食感もざらつきを感じた。
以上の結果より、生胚芽粉末を0.5〜2.5質量%添加した実施例1〜5が、フランスパン用小麦粉として優れていた。
市販のパン用小麦粉(灰分0.38質量%、 胚芽0.0質量%)に生胚芽粉末を添加した小麦粉を使用して食パンを製造し、風味と食感の評価を行った。
前記灰分は酢酸マグネシウム添加灰化法により測定したものであり、前記胚芽混入量は蛍光光度法により測定したものである。
小麦粉への生胚芽粉末の添加量は、実施例6で0.5質量%、実施例7で1.0質量%、実施例8で1.5質量%、実施例9で2.0質量%、実施例10で2.5質量%、比較例8で0.0質量%、比較例9で0.3質量%、比較例10で3.0質量%、比較例11で5.0質量%であった。
また、比較例12〜14は小麦粉にフレーク状生胚芽を添加したもので、生胚芽の添加量は比較例12で0.5質量%、比較例13で1.5質量%、比較例14で2.5質量%であった。
生胚芽粉末およびフレーク状生胚芽は、実施例1〜5および比較例1〜7と同じものを使用した。
(1) 製パン用ミキサーに水700ml、 食塩20g、 砂糖50g、 脱脂粉乳20g、 小麦粉1kg、 イーストフード1g、
イースト 20gを入れて生地がまとまるまで混捏した。
ただし、実施例8、9、10および比較例13、14では加水量を690ml、比較例10、11では加水量を680mlとした。
(2) ショートニング50gを加えて、低速で1分間、中速で3分間、高速で5分間混捏した。捏ね上げ温度は27℃となるように調整した。
(3) 捏ね上がった生地を27℃の醗酵室で1時間半醗酵させ、パンチ(ガス抜き)を行った後に再度30分間醗酵させた。
(4) 醗酵した生地を230gに分割し、丸めて生地玉として、室温で25分間休ませた。
(5) 生地玉をモルダーにより棒状に整形し、食パンの型(2斤用)に4本ずつ詰め、38℃で醗酵させた。
(6)前記生地の上端が食パン型の80%に達したところで型に蓋をし、200℃のオーブンで40分間焼成した。
(7)焼成した食パンを室温で1時間放置、冷却した後に袋詰めした。
(8)翌日、前記食パンを厚さ15mmにスライスし、比較例8を対照として官能評価を行った。
各項目は、次に示す7段階で数値化した。
7点 非常に優れる
6点 優れる
5点 やや優れる
4点 普通
3点 やや劣る
2点 劣る
1点 非常に劣る
外観、内相、食感、風味の評価は熟練のパネラー10名が官能試験により行い、その平均をとった。
結果を表2に示す。
生胚芽粉末添加量が過剰の比較例10〜11では、生地がべたついたために作業性が劣ったほか、生地が傷んだために外観や内相にも悪影響が見られた。
さらに、比較例11では風味は強いものの後味にエグミとにが味を感じ、好ましい風味ではなかった。
フレーク状胚芽を添加した比較例12〜14では、風味の改良効果は極わずかであり、胚芽の粒が目立つために外観や内相が劣り、食感もざらつきを感じた。
以上の結果より、生胚芽粉末を0.5〜2.5質量%添加した実施例6〜10が、食パン用小麦粉として優れていた。
ライ麦パン(ミッシュブロート)を製造して評価を行った。
製パン方法は次のとおりである。
(1)
市販のライ麦粉500g、粉末サワー種50g、水400mlをミキサーで5分間混捏して前生地を作り、室温で16時間醗酵させた。
(2)
醗酵させた前生地をミキサーに投入し、さらに小麦粉1kg、市販のライ麦粉500g、食塩34g、イースト36g、水880mlを加え、低速2分間、中速3分間混捏して生地とした。
(3)
捏ね上がった生地を10分間寝かせた後に、400gに分割し、丸めて型に入れた。
(4)
32℃で40分間醗酵した。
(5)
醗酵した生地を型から出し、クープ(切り込み)を入れて230℃で45分間焼成した。
(6)
室温で1時間冷却した後に、10名の熟練のパネラーにより評価を行った。
使用した市販のライ麦粉は、灰分0.72質量%、胚芽0.2質量%であった。
小麦粉としては、市販の強力粉(灰分0.45質量%、胚芽0.1質量%)を用いたものを比較例15とした。
なお、前記灰分は酢酸マグネシウム添加灰化法により測定したものであり、前記胚芽混入量は蛍光光度法により測定したものである。
比較例15と同じ小麦粉985gに生胚芽粉末15gを混合したものを実施例11とした。
前記生胚芽粉末は実施例1〜5と同じものを使用した。
実施例11のライ麦パンは、ライ麦パン独特の風味に加えて旨味や甘味が強く感じられ、さらに、香ばしさも強くなっており、比較例15と比べて風味が優れていた。
コーンブレッドを製造して評価を行った。
製パン方法は次のとおりである。
(1)卵6個と牛乳1リットルを混合し、卵液とした。
(2)穀粉1kg、ベーキングパウダー20g、重曹5g、砂糖40gを混ぜ合わせた。
(3)前記混合物を卵液に加え、低速で1分間混合し、均一なバッターとした。
(4)前記バッターをコーンブレッド型に500gずつ注ぎ、220℃で22分間焼成した。
(5)30分間冷却して粗熱を取った後に、10人のパネラーにより評価した。
比較例16では、穀粉としてコーングリッツとパン用小麦粉を各500gずつ混合したものを使用した。
実施例12では、穀粉としてコーングリッツ490g、パン用小麦粉490g、コーン生胚芽粉末20gを混合したものを使用した。
使用したパン用小麦粉は、実施例6〜10で使用したのと同じものである。
使用したコーングリッツは、市販のコーングリッツであり、灰分0.45質量%、胚芽量0.2質量%であった。
コーン生胚芽粉末は、コーングリッツ製造ラインから採取したトウモロコシ胚芽を使用して、実施例1〜5で使用した小麦生胚芽粉末と同じ方法で製造したものである。
コーン生胚芽粉末の灰分は3.66質量%、胚芽98.1質量%であった。
なお、前記灰分は酢酸マグネシウム添加灰化法により測定したものであり、前記胚芽混入量は蛍光光度法により測定したものである。
実施例12のコーンブレッドは焼きトウモロコシ風の香ばしさが強く、また上品な甘味が感じられ、比較例16よりも風味が優れていた。
スペルト小麦からフランスパンを作り、評価を行った。
ドイツ産スペルト小麦をビューラー社製テストミルで製粉し、灰分0.51質量%、胚芽量0.1質量%の小麦粉を作り、比較例17とした。
前記灰分は酢酸マグネシウム添加灰化法により測定したものであり、前記胚芽混入量は蛍光光度法により測定したものである。
比較例17の小麦粉985gに生胚芽粉末15gを加え、実施例13とした。
生胚芽粉末は実施例1〜5と同じものを用いた。
実施例13と比較例17の小麦粉からフランスパンを製造した。
フランスパンの製造および評価の方法は実施例1〜5と同じものを用いた。
実施例13の小麦粉から作ったフランスパンは、比較例17に比べてロースト臭と甘味およびクラストのクリスピー感が強く感じられ、食感と風味ともに優れていた。
黒小麦をビューラー社製テストミルで製粉し、比較例1と同じ市販のフランスパン用小麦粉と等質量混合し、比較例18の小麦粉とした。
比較例18の小麦粉は、灰分0.47質量%、胚芽0.0%を含んでいた。
前記灰分は酢酸マグネシウム添加灰化法により測定したものであり、前記胚芽混入量は蛍光光度法により測定したものである。
比較例18の小麦粉980gと生胚芽粉末20gを混合し、実施例14の小麦粉とした。
実施例14と比較例18の小麦粉からフランスパンを製造した。
フランスパンの製造および評価の方法は実施例1〜5と同じものを用いた。
実施例14の小麦粉から作ったフランスパンは、クラストの香ばしい香りが強く、甘味や旨味も強く感じられ、比較例18と比べて風味が優れていた。また、クラストのクリスピー感でも実施例14が比較例18よりもやや優れていた。
通常の生胚芽以外の胚芽として、脱脂胚芽と焙煎胚芽の評価を行った。
小麦粉995gに脱脂胚芽粉末を5g添加し、実施例15とした。
小麦粉975gに脱脂胚芽粉末を25g添加し、実施例16とした。
小麦粉995gに焙煎胚芽粉末を5g添加し、比較例19とした。
小麦粉975gに焙煎胚芽粉末を25g添加し、比較例20とした。
実施例15〜16および比較例19〜20の小麦粉は、実施例1〜5と同じものを使用した。
前記脱脂胚芽粉末は、市販の脱脂小麦胚芽をレッチェ社製超遠心粉砕機により粉砕し、目開き200μmの篩いを抜けたものを使用した。
前記焙煎胚芽粉末は、市販の焙煎小麦胚芽をレッチェ社製超遠心粉砕機により粉砕し、目開き200μmの篩いを抜けたものを使用した。
脱脂胚芽の灰分は4.53質量%、焙煎胚芽の灰分は3.93質量%であった。
前記灰分は酢酸マグネシウム添加灰化法により測定したものである。
実施例15、16および比較例19、20の小麦粉を使い、実施例1〜5と同様の方法でフランスパンを製造して、評価を行った。
フランスパンの評価結果を表3に示す。
比較例19および20のフランスパンは、食感に若干の改良がみられるものの、風味と外観は劣っていた。
特に比較例20においては、焦げ臭さとにが味を感じ、甘味と旨味は感じられなかった。
さらに、外観も色が濃すぎて好ましくなかった。
この結果より、脱脂小麦胚芽(焙煎していないもの)は本発明の生胚芽粉末を作るために使用できるが、焙煎小麦胚芽は使用できないことが確認できた。
灰分含有量が異なる小麦粉を作成し、フランスパンを製造して評価を行った。
実施例4の小麦粉にふすま粉末を混合し、灰分値を変えた小麦粉(実施例17〜20、比較例21〜22)を製造した。
ふすま粉末は、市販の小麦ふすまを目開き1mmの篩いにかけ、そのオーバーをレッチェ社製超遠心粉砕機により粉砕し、目開き200μmの篩いの抜けとして回収したものであり、生胚芽粉末の混入量は1.4質量%、灰分は4.96質量%であった。
実施例17の小麦粉における生胚芽粉末の混入量は2.0質量%、灰分は0.70質量%であった。
実施例18の小麦粉における生胚芽粉末の混入量は1.9質量%、灰分は0.80質量%であった。
実施例19の小麦粉における生胚芽粉末の混入量は1.9質量%、灰分は0.90質量%であった。
実施例20の小麦粉における生胚芽粉末の混入量は1.9質量%、灰分は1.00質量%であった。
比較例21の小麦粉における生胚芽粉末の混入量は1.9質量%、灰分は1.10質量%であった。
比較例22の小麦粉における生胚芽粉末の混入量は1.9質量%、灰分は1.20質量%であった。
なお、ふすま粉末の胚芽混入量の測定には蛍光光度法を、灰分の測定には炭酸マグネシウム添加灰化法を用いた。
実施例17〜20および比較例21〜22の胚芽混入量と灰分は、ふすま粉末と実施例9の分析結果からの計算値である。
実施例17〜20および比較例21〜22の小麦粉を用い、実施例1〜5と同様の方法でフランスパンによる評価を行った。
結果を表4に示す。
しかし、灰分が1.10質量%では、にが味、エグミ、ふすま臭が目立ち始め、灰分1.20質量%では不快な風味となった。
パンの外観(色調やボリューム)は灰分の上昇とともに徐々に悪化するが、灰分が1.10質量%で目立って悪化した。
内相のキメや色調も同様に、灰分が1.10質量%以上で急激に悪化した。
灰分が1.20質量%では食感にパサパサ感とざらつきとを感じた。
これらの結果より、本発明のパン用穀粉は、灰分が1.00質量%以下である必要がある。
風味、外観、内相の悪化は灰分が1.10質量%以上で顕著となるが、にが味などの異味を感じ出すのは灰分0.90質量%からである。
したがって、灰分を0.80質量%以下に抑えると、いっそう好ましいといえる。
市販の小麦胚芽をコーヒーミルで粗粉砕した後に篩い分け、粒径200μm以上400μm未満、および粒径400μm以上600μm未満の胚芽を製造した。
比較例8と同じ小麦粉980gに、粒径200μm以上400μm未満の胚芽を20g添加し、比較例23とした。比較例23の小麦粉の灰分は0.44質量%、胚芽は1.8質量%であった。
比較例8と同じ小麦粉980gに粒径400μm以上600μm未満の胚芽を20g添加し、比較例24とした。比較例24の小麦粉の灰分は0.44質量%、胚芽は1.9質量%であった。
前記灰分は酢酸マグネシウム添加灰化法により測定したものであり、前記胚芽混入量は蛍光光度法により測定したものである。
比較例23〜24の小麦粉を使い、実施例6〜10と同様の方法で食パンを製造して評価を行った。
結果を表5に示す。
さらに、やや粗い生胚芽を使用した食パンでは、ざらつきを感じるとともに、口溶けが悪化して好ましくなかった。
その傾向は、生胚芽が粗くなるほど強くなった。
この結果より、200μmより粗い生胚芽を使う場合には、一部の評価項目には改善がみられるものの、悪化する項目もあるため、総合的には高い改善効果は得られなかった。
従って、パンの改良に使用する生胚芽は、粉末状(200μmの篩い抜け)のものが好ましいことが確認された。
生胚芽粉末を添加した穀粉の保存性を確認した。
市販のパン用小麦粉1kg(灰分0.38質量%、胚芽0.0質量%)を比較例25とした。
前記灰分は酢酸マグネシウム添加灰化法により測定したものであり、前記胚芽混入量は蛍光光度法により測定したものである。
比較例25と同じ小麦粉995gに小麦生胚芽粉末を5g添加し、実施例21とした。
比較例25と同じ小麦粉975gに小麦生胚芽粉末を25g添加し、実施例22とした。
使用した生胚芽粉末は、実施例1〜5と同様の方法で製造したものである。
比較例25と同じ小麦粉995gにコーン生胚芽粉末を5g添加し、実施例23とした。
比較例25と同じ小麦粉975gにコーン生胚芽粉末を25g添加し、実施例24とした。
使用したコーン生胚芽粉末は、実施例12と同様の方法で製造したものである。
比較例25と同じ小麦粉995gに焙煎小麦胚芽粉末を5g添加し、比較例26とした。
比較例25と同じ小麦粉975gに焙煎小麦胚芽粉末を25g添加し、比較例27とした。
使用した焙煎小麦胚芽粉末は、比較例19〜20と同様の方法で製造したものである。
その結果、実施例21〜24および比較例25の小麦粉につき、試験期間内に酸敗臭(油脂の劣化による臭い)を指摘したパネラーは1名もいなかった。
比較例27は1箇月経過時点で酸敗臭が感じられた。
比較例26は2箇月経過時点で酸敗臭が感じられた。
比較例26および比較例27は保存性に問題が認められたので、酸敗臭が感じられた時点で試験を打ち切った。
その結果、比較例25と比較して実施例21は(ロースト臭、および甘味とうまみ)が感じられ、実施例22ではさらに風味が良く感じられた。
実施例23〜24でも、コーン生胚芽粉末の添加量が多いほど風味が強くなるが、焼きトウモロコシ風の香ばしさを持った特徴ある香りが強く感じられた。
比較例26および比較例27は保存性に問題が認められたため、パンの評価は行っていない。
この結果より、生胚芽粉末を添加したパン用穀粉は、長期保存可能なことが確認された。
実施例5において、原料として、小麦粉1kgを小麦粉950gに小麦澱粉を50gさらに加えて小麦粉と小麦澱粉の混合物1kgに変更した以外は実施例5と同様にしてフランスパンを得た。
得られたフランスパンの評価は実施例4とほぼ同等であった。
実施例5において、原料として、小麦粉1kgを小麦粉950gにワキシコーンスターチを50gさらに加えて小麦粉と小麦澱粉の混合物1kgに変更した以外は実施例5と同様にしてフランスパンを得た。
得られたフランスパンは、ワキシ澱粉の添加によりクラムのモチモチ感としっとり感が強くなった。
風味とクラストの食感は、実施例4とほぼ同等であった。
Claims (2)
- 生胚芽粉末を穀粉又は穀粉と澱粉の合計100質量部に対し0.5〜2.5質量部含み、灰分が1.00質量%以下である、小麦粉、ライ麦粉、ライ小麦粉、トウモロコシ粉からなる群から選ばれる1種又は2種以上からなるパン用穀粉。
- 請求項1に記載のパン用穀粉を使用して製造したパン。
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