本発明の実施形態を以下、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による磁気抵抗効果素子の構成を図1に示す。この実施形態の磁気抵抗効果素子1は、下部電極となる下地層2と、下地層2上に設けられた反強磁性層4と、反強磁性層4上に設けられた強磁性層6と、強磁性層6上に設けられたトンネルバリア層8と、トンネルバリア層8上に設けられ誘電体12によってそれぞれが隔てられた複数の強磁性粒11を有する磁気記録層10と、磁気記録層10上に設けられた非磁性層14と、非磁性層14上に設けられ上部電極となる非磁性電極層16とを備え、下部電極2と上部電極16間に電流を流す構成となっている。強磁性層6は反強磁性層4との交換結合により磁化が固着されており、磁化固着層となる。誘電体12によって隔てられた複数の強磁性粒11は、それぞれがトンネルバリア層8および非磁性層14に接するように構成されている。
このように構成された本実施形態の磁気抵抗効果素子1においては、強磁性トンネル接合の実効的な接合面積が誘電体12で隔てられた複数の強磁性粒11の、強磁性層6への膜面垂直方向の投影面積で規定されるため、磁気記録層が強磁性体からなる連続膜の場合に比べて実効的な接合面積が小さい。このため、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層10においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。
なお、非磁性層14は、材料を選択して用いることにより、スピン偏極した電子を反射する性質を有するが詳細は第5実施形態の後で説明する。
本実施形態において、反強磁性層4を削除し、強磁性層6を膜厚5nmのCoFe、トンネルバリア層8を膜厚1.6nmのAlOx、誘電体10で隔てられた強磁性粒11を膜厚方向の厚さ2.0nmのCo−Pt、非磁性層14を膜厚5nmのRuからなるように構成した素子を作成し、実験を行った。この素子に外部磁界を印加した場合は、CoFeがCo−Ptに比べて保持力が小さいため、CoFeからなる強磁性層6の方が誘電体10で隔てられたCo−Ptからなる強磁性粒11に比べて磁化が先に反転する。しかし、スピン偏極した電流を膜面に垂直に、すなわち膜厚方向に流すと、誘電体10で隔てられたCo−Ptからなる強磁性粒11が先に磁化が反転することが本発明者等によって見いだされた。
したがって、誘電体12で隔てられた強磁性粒11としては、室温でも磁気異方性エネルギー密度Kuが高い(保持力の大きな)、熱揺らぎ耐性を有するCo−Pt系、Co−Fe−Pt系、Fe−Pt系、Co−Fe−Cr−Pt系、Co−Cr−Pt系などの材料を用いることが好ましい。このような材料を用いることにより、熱揺らぎに対する磁気記録層の熱安定性の問題も無くなる。
(第2実施形態)
次に、本実施形態による磁気抵抗効果素子の第2実施形態の構成を図2に示す。この実施形態の磁気抵抗効果素子1Aは、図1に示す第1実施形態の磁気抵抗効果素子1において、磁化固着層となる強磁性層6を強磁性層6Aに置き換えた構成となっている。この強磁性層6Aは、トンネルバリア層8との接合面積は変わらないが、強磁性層6に比べて体積が大きくなるように構成されている。したがって、第2実施形態においては、第1実施形態に比べて、磁化固着層となる強磁性層6Aの体積が大きい。このため、スピン注入書き込み時の磁化固着層の磁化は第1実施形態に比べてより安定性を増すことになる。
なお、第2実施形態も、第1実施形態と同様に、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層10においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態による磁気メモリの構成を図3に示す。この実施形態の磁気メモリは少なくとも1個のメモリセルを有し、このメモリセルは、第2実施形態の磁気抵抗効果素子1Aと、選択トランジスタ60とを備えている。上記磁気抵抗効果素子は、引き出し電極40上に設けられた反強磁性層4と、この反強磁性層4上に設けられた磁化固着層6Aと、この磁化固着層6A上に設けられたトンネルバリア層8と、トンネルバリア層8上に設けられ誘電体10に隔てられた強磁性粒11からなる磁気記録層10と、磁気記録層10上に設けられた非磁性層14と、非磁性層14上に設けられた上部電極16とを備えている。選択トランジスタ60は、ゲート電極61と、このゲート電極の両側に設けられたソースおよびドレイン領域63、65とを備えている。上部電極16は、メモリセルを選択するビット線30に接続され、引き出し電極40は接続部50を介して、選択トランジスタ60のソース63に接続される。選択トランジスタ60のゲート電極61はメモリセルを選択するためのワード線を兼ねている。したがって、メモリセルはビット線30と、ワード線61が交差する領域に設けられている。
次に、この実施形態のスピン注入書き込み原理を、以下に説明する。まず、選択トランジスタ60のゲート電極に電圧を印加し、選択トランジスタ60をオンさせる。
a)磁化固着層6A、磁気記録層10のスピンモーメントが反平行→平行へのスピン反転の場合;
磁化固着層6A側から電子を注入し、磁化固着層6Aでスピン偏極した電子がトンネルバリア層8を介し、磁気記録層10へスピントルクをおよぼし、磁気記録層10のスピンが反平行→平行へ反転する。
b)磁化固着層、磁気記録層のスピンモーメントが平行→反平行へのスピン反転の場合;
磁気記録層10側から電子を注入すると磁気記録層10でスピン偏極した電子が注入される。その際、磁化固着層6Aのスピンの方向と同じスピンの方向を持つ電子は散乱確率が低く容易にスピン電流が流れるが、反平行のスピンは反射される。磁気記録層10へ反射してきた電子は、磁気記録層10へスピントルクを及ぼし、磁気記録層10のスピンが平行→反平行へ反転する。
この時に必要な電流は以下の式で書き表すことができる。
反平行→平行の場合;
Ic P=eαMAt[H−Hk−2πM]/hg(π)
平行→反平行の場合;
Ic AP=eαMAt[H+Hk+2πM]/hg(0)
ここで、eは電気素量、αはGilbert damping parameter、Mは磁化、Atは磁気記録層の体積、Hは磁場の強さ、Hkは異方性定数、hはプランク定数である。g(π)、g(π)は、磁化固着層/非磁性層界面でのスピン依存で、次式で与えられる。
g(θ)=[−4+(1+p)3(3+cosθ)/4p3/2]−1
ここで、pはスピン偏極率である。この式より、g(π)>g(0)であるため、一般に、反平行→平行にスピン反転させる場合の電流Ic Pの方が、平行→反平行にスピン反転させる場合の電流Ic APに比べて小さい。
この実施形態の磁気メモリは、メモリ素子として第2実施形態の磁気抵抗効果素子1Aを備えているため、第2実施形態と同様に、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層10においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。なお、スピン書き込み時における磁化固着層の磁化の安定性を保つためには、磁化固着層の体積をなるべく大きくしたほうがよい。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態による磁気メモリの構成を図4に示す。この実施形態の磁気メモリは、図3に示す第3実施形態の磁気メモリにおいて、磁気抵抗効果素子1Aを磁気抵抗効果素子1Bに置き換えた構成となっている。磁気抵抗効果素子1Bは、磁気抵抗効果素子1Aの反強磁性層4および磁化固着層6Aを、反強磁性層と強磁性層が交互に積層された積層膜6Bに置き換えた構成となっている。積層膜6Bの強磁性層は反強磁性層との交換結合により磁化が固着され、磁化固着層となる。そして、第3実施形態の反強磁性層4および磁化固着層6Aの積層膜の形状と、第4実施形態の積層膜6Bの形状はほぼ同一となっている。また、積層膜6Bはトンネルバリア層8に接する層が強磁性層であるように構成する必要があるが、引き出し電極40に接する層が強磁性層または反強磁性層であるように構成してもよい。
この第4実施形態も、第3実施形態と同様に、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層10においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。なお、この第4実施形態は、磁化固着層となる積層膜6Bの総体積が第3実施形態の磁化固着層6Aの体積よりも大きいため、第3実施形態に比べて、スピン書き込み時における磁化固着層の磁化を、より安定に保つことができる。
(変形例)
この第4実施形態のように、磁化固着層が強磁性層と反強磁性層が交互に積層された積層膜6Bからなる構造は、図5に示すように、サイズが0.1×0.1μm2以下の素子面積でかつ磁気記録層13が連続膜からなる磁気抵抗効果素子1Cを有する磁気メモリに用いることができる。磁気抵抗効果素子1Cは、図4に示す磁気メモリの磁気抵抗効果素子1Bにおいて、磁気記録層10を強磁性層の連続膜からなる磁気記録層13に置き換えた構成となっている。この図5に示す磁気メモリにおいては、サイズが0.1×0.1μm2以下であってもスピン書き込み時における磁化固着層の磁化を安定に保つことができる。
また、図5に示す磁気メモリにおいて、磁気抵抗効果素子1Cを図6に示す磁気抵抗効果素子1Dに置き換えた構成としてもよい。磁気抵抗効果素子1Dは、磁気抵抗効果素子1Cにおいて、強磁性層と反強磁性層が交互に積層された積層膜6Bを、強磁性層と非磁性層が交互に積層された積層膜6Cと、反強磁性層4との積層構造膜に置き換えた構成となっている。この図6に示す磁気メモリにおいても、サイズが0.1×0.1μm2以下であってもスピン書き込み時における磁化固着層の磁化を安定に保つことができる。なお、積層膜6Cは、トンネルバリア層8および反強磁性層4に接する層、すなわち最上層および最下層が強磁性層となるように構成する必要がある。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態による磁気抵抗効果素子の構成を図7に示す。この第5実施形態の磁気抵抗効果素子1Eは、図1に示す第1実施形態の磁気抵抗効果素子1において、非磁性層14と上部電極16との間に、強磁性層18と、この強磁性層18と交換結合して強磁性層18の磁化を固着させる反強磁性層20とを設けた構成となっている。そして、磁化固着層となる強磁性層6と、磁化固着層となる強磁性層18の磁化の向きは略180度と異なっている。また、本実施形態においては、非磁性層14は、CuまたはCu合金からなる非磁性金属層となっている。
図7の磁化の向きが略180度異なっているため、磁化固着層6から磁化固着層18側へスピン注入を行う場合と逆の場合とで、磁気記録層10の磁化の向きが変化することになる。
つまり本実施形態において、磁化固着層6、トンネルバリア層8、磁気記録層10間のスピンモーメント(磁化)を反平行→平行へのスピン反転させる場合、磁化固着層6側から磁気記録層へ電子を注入すると磁化固着層6でスピン偏極した電子がトンネルバリア層8をトンネルし、磁気記録層10へスピントルクを及ぼす。このとき、スピン偏極した電子は、磁気記録層10から非磁性金属層14を介して磁化固着層18に流れるので、磁気記録層10のスピンが磁化固着層6のスピンに対して反平行の間は、磁気記録層10と磁化固着層18のスピンが平行のため、磁化固着層18によって反射された反射スピン電子も磁気記録層10へスピントルクを及ぼし、磁気記録層10のスピンが磁化固着層6のスピンに対して反平行→平行へ反転する。この2つのスピントルクにより、磁気記録層のスピンの方向が変化することになる。
また、本実施形態において、磁化固着層6、トンネルバリア層8、磁気記録層10間のスピンモーメントを平行→反平行へスピン反転させる場合、磁化固着層18から磁気記録層10へ電子を注入すると、磁化固着層18でスピン偏極された電子が非磁性金属層14を通過して磁気記録層10へ流れスピントルクを及ぼす。このとき、スピン偏極した電子はトンネルバリア層8をトンネルして磁化固着層6へ流れようとするが、トンネルバリア層8をトンネルする際、磁化固着層6のスピンの方向と同じスピンの方向を持つ電子はトンネル確率が高く容易に流れるが、反平行のスピンは反射される。磁気記録層10へ反射してきた電子は、磁気記録層10へスピントルクを及ぼし、この2つのスピントルクにより、磁気記録層10のスピンが平行→反平行へ反転する。
したがって、本実施形態の磁気抵抗効果素子1Eにおいて、電流を流す方向を変えることにより、スピン注入書き込みを行うことが可能となり、“1”、“0”の書き込みを行うことができる。
なお、本実施形態においては、磁化固着層18および反強磁性層20がスピン偏極した電子の反射層となる。
本実施形態の磁気抵抗効果素子も、第1実施形態と同様に、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層10においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。
(変形例)
また、本実施形態の変形例による磁気抵抗効果素子の構成を図8に示す。この変形例の磁気抵抗効果素子1Fは、第5実施形態の磁気抵抗効果素子1Eにおいて、磁化固着層18を、磁性層181、非磁性層182、および磁性層183からなる積層構造の磁化固着層18に置き換えた構成となっている。そして、磁気記録層10側の磁性層181と、磁化固着層6の磁化の向きは、180度異なっている。
この変形例の磁気抵抗効果素子1Fも第5実施形態と同様に、電流を流す方向を変えることにより、スピン注入書き込みを行うことが可能となり、“1”、“0”の書き込みを行うことができる。また、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層10においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。
この変形例において、非磁性層14がCuまたはCu合金からなっている場合は、非磁性層182としては、Cr、Ru、Os、Re、Rhから選ばれた少なくとも1種類の元素を含むことが好ましい。
なお、磁化固着層6および磁化固着層18の磁気モーメントの方向が互いに略180度異なるようにする一つの方法としては、図7に示すように、磁化固着層6、18にネール温度TNが異なる反強磁性層4、20を付与し、磁場中でのアニール処理後の冷却時に反強磁性層4と反強磁性層20のネール温度の間の適当な温度で磁場印加方向を180度回転する。また、もう一つの方法としては、磁化固着層6、18のうちの一方の磁化固着層を、図8に示すように、磁性層と非磁性層が交互に積層され、最上層と最下層に磁性層となる多層構造(図8では3層構造)にし、非磁性層を介した磁性層間の相互作用が反強磁性相互作用を有するようにすることで実現できる。なお、本変形例においては、磁化固着層18および反強磁性層20がスピン偏極した電子の反射層となる。
なお、第5実施形態およびその変形例の磁気抵抗効果素子を、例えば図3乃至図4に示す磁気メモリの磁気記憶素子(磁気抵抗効果素子)として用いることができる。この場合、第3乃至第4実施形態の場合と同様に、スピン書き込み時における磁化固着層の磁化の安定性を保つために、磁化固着層の体積をなるべく大きくしたほうがよい。
第5実施形態およびその変形例においては、スピン偏極した電子の反射層が設けられていたが、図1乃至図6に示す磁気抵抗効果素子の非磁性層14の材料を限定することで、この非磁性層14を、磁気記録層10の磁化と反対方向のスピン電流を反射させる反射層として機能させることができる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態による磁気抵抗効果素子の構成を図9に示す。この実施形態の磁気抵抗効果素子1Gは、第1実施形態の磁気抵抗効果素子1において、非磁性層14の材料を限定して、磁気記録層10の磁化と反対方向のスピン電流を反射させる反射層として機能させるとともに、非磁性層14の磁気記録層10と反対側の面に磁化の向きが磁化固着層6の磁化の向きと平行となるように固着された強磁性層18を設けた構成となっている。この強磁性層18は、スピン偏極した電子の反射層としての機能を有するので、第1実施形態において、非磁性層14を反射層として用いた場合よりも有効にスピン偏極した電子を反射することが可能となり、磁気記録層10の磁化を反転されるのに必要な電流の密度を少なくすることができる。
なお、本実施形態において、非磁性層14を反射層として機能させるためには、以下の材料を用いればよい。
具体的には、強磁性層18がCoリッチである強磁性材料からなっている場合は、非磁性層14の材料としては、Cr、Ru、Ir、Os、Reから選ばれる少なくとも1種の元素を含むか、またはそれらの合金であることが好ましい。
また、強磁性層18がFeリッチである強磁性材料からなっている場合は、非磁性層14の材料は、Cr、Ru、Os、Re、W、Mn、V、Ti、Moから選ばれる少なくとも1種の元素を含むか、またはそれらの合金であることが好ましい。
また、強磁性層18がNiリッチである強磁性材料からなっている場合は、非磁性層14の材料は、Cr、Ru、Os、Re、Rh、Ir、W、Nb、V、Ta、Moから選ばれる少なくとも1種の元素を含むか、またはそれらの合金であることが好ましい。
上記のことから分かるように、スピン注入書き込みを行う場合では、強磁性層18がNi−Co、Ni−Fe、Co−Fe、またはCo−Fe−Niを含む場合は、非磁性層14の材料として好ましいものはCr、Ru、Os、Reから選ばれた少なくとも一種の元素を含むか、またはこれらの合金であり、これらを用いればスピン注入書き込み時の電流を低減することができる。
本実施形態の磁気抵抗効果素子も、第1実施形態と同様に、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層10においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。
(第1変形例)
次に、第6実施形態の第1変形例による磁気抵抗効果素子の構成を図10に示す。この第1変形例による磁気抵抗効果素子1Hは、第6実施形態による磁気抵抗効果素子1Gにおいて、強磁性層18と上部電極16との間に強磁性層18の磁化の向きを固着する反強磁性層20を設けた構成となっている。これにより、強磁性層18の磁化は、第6実施形態に比べて安定する。
なお、この第1変形例も第6実施形態と同様に、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層10においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。
(第2変形例)
次に、第6実施形態の第2変形例による磁気抵抗効果素子の構成を図11に示す。この第2変形例による磁気抵抗効果素子1Iは、第2変形例による磁気抵抗効果素子1Hにおいて、強磁性層18を、強磁性層181、非磁性層182、強磁性層183、非磁性層184、強磁性層185からなる積層構造とした構成となっている。、強磁性層181と、強磁性層185は、磁化固着層6の磁化と同じ向きすなわち平行に磁化が固着され、強磁性層183は磁化固着層6の磁化と反対の向きすなわち反平行に磁化が固着されている。すなわち、強磁性層18はシンセティクな反強磁性結合を有している。強磁性層18は、第1変形例に比べて体積が大きくすることが可能となり、磁化がより安定することになる。
なお、この第2変形例も第1変形例と同様に、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層10においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。
(第3変形例)
次に、第6実施形態の第3変形例による磁気抵抗効果素子の構成を図12に示す。この第3変形例の磁気抵抗効果素子1Jは、第6実施形態の磁気抵抗効果素子1Gにおいて、磁化固着層となる強磁性層6を強磁性層6Aに置き換えた構成となっている。この強磁性層6Aは、トンネルバリア層8との接合面積は変わらないが、強磁性層6に比べて体積が大きくなるように構成されている。したがって、第3変形例においては、第6実施形態に比べて、磁化固着層となる強磁性層6Aの体積が大きい。このため、スピン注入書き込み時の磁化固着層の磁化は第1実施形態に比べてより安定性を増すことになる。
なお、第3変形例も、第6実施形態と同様に、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層10においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態による磁気メモリの構成を図13に示す。この実施形態による磁気メモリは、第3実施形態の磁気メモリにおいて、磁気抵抗効果素子1Aを、第6実施形態の第3変形例による磁気抵抗効果素子1Jに置き換えた構成となっている。
この実施形態の磁気メモリは、メモリ素子として第6実施形態の第3変形例による磁気抵抗効果素子1Jを備えているため、第6実施形態の第3変形例と同様に、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層10においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。なお、スピン書き込み時における磁化固着層の磁化の安定性を保つためには、磁化固着層の体積をなるべく大きくしたほうがよい。
なお、本実施形態による磁気メモリにおいては、磁気記憶素子として第6実施形態の第3変形例による磁気抵抗効果素子を用いたが、第6実施形態、第1変形例、または第2変形例による磁気抵抗効果素子を用いてもよい。
(変形例)
次に、第7実施形態の変形例による磁気メモリの構成を図14に示す。この変形例による磁気メモリは、第7実施形態による磁気メモリにおいて、磁気抵抗効果素子1Jを磁気抵抗効果素子1Kに置き換えた構成となっている。磁気抵抗効果素子1Kは、磁気抵抗効果素子1Jの反強磁性層4および磁化固着層6Aを、反強磁性層と強磁性層が交互に積層された積層膜6Bに置き換えた構成となっている。積層膜6Bの強磁性層は反強磁性層との交換結合により磁化が固着され、磁化固着層となる。そして、第7実施形態の反強磁性層4および磁化固着層6Aの積層膜の形状と、この変形例の積層膜6Bの形状はほぼ同一となっている。また、積層膜6Bはトンネルバリア層8に接する層が強磁性層であるように構成する必要があるが、引き出し電極40に接する層が強磁性層または反強磁性層であるように構成してもよい。
この変形例も、第7実施形態と同様に、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層10においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。なお、この変形例は、磁化固着層となる積層膜6Bの総体積が第7実施形態の磁化固着層6Aの体積よりも大きいため、第7実施形態に比べて、スピン書き込み時における磁化固着層の磁化を、より安定に保つことができる。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態による磁気抵抗効果素子の構成を図15に示す。第1乃至第7実施形態の磁気抵抗効果素子においては、誘電体で隔てられた強磁性粒を備えた磁気記録層上に設けられる非磁性層14、強磁性層18、反強磁性層20等は連続膜であったが、本実施形態による磁気抵抗効果素子1Lは、磁気記録層となる強磁性層11上に、非磁性層14、磁化が固着された強磁性層18、反強磁性層20、および金属コンタクト層19が積層された柱状の形状の構造部を構成している。すなわち、磁気記録層11、非磁性層14、強磁性層18、反強磁性層20、および金属コンタクト層19は積層されて柱状の構造部を構成し、この柱状の積層構造部が複数個、トンネルバリア層8上にそれぞれ離間して設けられている。そして、複数の柱状に積層された構造部はお互いに層間絶縁膜36によって絶縁されている。各積層構造部の金属コンタクト層19は共通の上部電極16に接続されている。なお、トンネルバリア層8は磁化固着層6上に設けられ、磁化固着層6は反強磁性層4上に設けられ、反強磁性層4は下地層2上に設けられている。強磁性層18の磁化の向きは、磁化固着層6の磁化の向きと同じ方向、すなわち平行となるように固着される。このため非磁性層14は第6実施形態で説明した材料、すなわち強磁性層18の材料に応じて選択した材料を用いる。
このように構成された本実施形態の磁気抵抗効果素子においては、第1乃至第7実施形態と同様に、強磁性トンネル接合の実効的な接合面積が複数の強磁性層11の、強磁性層6への膜面垂直方向の投影面積で規定されるため、磁気記録層が強磁性体からなる連続膜の場合に比べて実効的な接合面積が小さい。このため、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は発生せず、大きな素子サイズの磁気記録層10においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。
なお、本実施形態においては、柱状の積層構造部は、磁気記録層11、非磁性層14、強磁性層18、反強磁性層20、および金属コンタクト層19から構成されていたが、トンネルバリア層8を含んでもよいし、磁化固着層6の一部分を含んでいてもよい。
次に、第8実施形態の磁気抵抗効果素子の製造方法を図16乃至図19を参照して説明する。この製造方法は、パターンドメディア作成プロセスを応用したものである。
まず、図16(a)に示すように、非磁性基板100上に下地層2、反強磁性層4、磁化が固着された強磁性層6、トンネルバリア層8、強磁性層11、非磁性層14、強磁性層18、反強磁性層20、金属コンタクト層19を積層する。続いて、図16(b)に示すように、金属コンタクト層19上にフォトレジスト24を塗布し、フォトレジスト24をハードベークする。その後フォトレジスト24上に、ジブロックコポリマー26を有機溶剤に溶かしたものをスピンコート法で形成する(図16(b)参照)。
次に、真空中で140℃〜200℃程度の温度で30時間ほど長時間アニールを行なう。すると、アニール中にジブロックコポリマー26は自己組織化による相分離を起こし、15nm〜30nmサイズの海島構造が数十nm間隔で整列する(図17(a)参照)。なお、図17(a)では、説明を簡単にするため、海島構造は1個しか表示していない。この自己組織化現象を用いたパターン形成方法は、通常のパターン形成方法、例えば、EB描画、フォトリソグラフィー、X線リソグラフィー、近接場光リソグラフィー、干渉露光法、FIB(Focused Ion Beam)などに比べると安価で短時間に大面積のパターンを形成することができる。その後、酸素プラズマにさらし、ジブロックポリマー部26aのみを選択的に除去する。ジブロックポリマー部26aが除去された部分に穴27が開く(図17(b)参照)。
次に、乳酸で希釈したSOG(スピンオングラス)をスピンコート法で塗布すると、この穴27内にSOG28が埋め込まれる(図18(a)参照)。その後、酸素プラズマを用いてSOG28をマスクとしてRIE(Reactive Ion Etching)でフォトレジスト24およびジブロックコポリマー26をパターニングする。このとき、SOGで被覆されたフォトレジスト以外のフォトレジストが除去される。このパターニングされたレジストとSOG28からなるエッチングマスクを用いて、イオンミリングで図18(b)に示すように強磁性層6の途中までパターニングする。続いて、エッチングマスクを除去した後、直ちにAlOxまたはSiOxからなる保護膜34を形成する(図18(c)参照)。
次に、図19(a)に示すように、全面にSOGを塗布してベーキングすることにより層間絶縁膜36を形成する。その後、層間絶縁膜36をエッチバックし、金属コンタクト層19の表面を露出させる(図19(b)参照)。続いて、非磁性金属膜を成膜し、パターニングすることにより上部電極16を形成する(図19(c)参照)。これにより、本実施形態の磁気抵抗効果素子が製造される。
なお、上記製造方法を用いれば、図20に示す構造の磁気抵抗効果素子1Mを得ることができる。この磁気抵抗効果素子1Mは、図15に示す本実施形態の磁気抵抗効果素子1Lにおいて、反強磁性層20を除去した構成となっている。また、図21に示す構造の磁気抵抗効果素子1Nを得ることができる。この磁気抵抗効果素子1Nは、図15に示す本実施形態の磁気抵抗効果素子1Lにおいて、強磁性層18を強磁性層181、非磁性層182、および強磁性層183が積層された積層膜18に置き換えた構成となっている。なお、
磁気記録層11に近い強磁性層181の磁化の向きは、磁化固着層6の磁化の向きと同じ、すなわち平行となっており、強磁性層183の磁化の向きは、磁化固着層6の磁化の向きと反対、すなわち反平行となっている。したがって、強磁性層18はシンセティクな反強磁性結合を有している。
図20および図21に示す磁気抵抗効果素子も本実施形態と同様に、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層10においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。なお、図21に示す磁気抵抗効果素子1Nにおいては、強磁性層18が、図15に示す本実施形態の磁気抵抗効果素子に比べて体積が大きくすることが可能となり、磁化がより安定することになる。
なお、本実施形態、図20および図21に示す構造の磁気抵抗効果素子は図3に示す磁気メモリの磁気記憶素子として用いることができることはいうまでもない。
また、上記製造方法を第1乃至第7実施形態の磁気抵抗効果素子の製造に用いれば、強磁性粒11上に設けられる非磁性層14、強磁性層18、反強磁性層20等は連続膜ではなく、柱状の積層構造部を構成することになる。
なお、第1乃至第8実施形態において、反強磁性層としては、Fe−Mn(鉄−マンガン)、Pt−Mn(白金−マンガン)、Pt−Cr−Mn(白金−クロム−マンガン)、Ni−Mn(ニッケル−マンガン)、Ir−Mn(イリジウム−マンガン)、NiO(酸化ニッケル)、Fe2O3(酸化鉄)などを用いることができる。
第3実施形態、第4実施形態、第7実施形態においては、磁気抵抗効果素子の一端に電気的にビット線が接続されており、磁気抵抗効果素子の他端に読み出し/書き込み兼用選択トランジスタ60が接続されている。この場合、読み出し/書き込み兼用選択トランジスタ60をONにし、同じ基板上のトンネル磁気抵抗効果素子を利用して“1”か“0”を判定して読み込みを行う。また書き込みは読み出し/書き込み兼用選択トランジスタ60をONにし、スピン注入書き込みを行うことにより“1”か“0”の書き込みを行う。スピン注入による読み出し/書き込み動作では、読み出し電流は書き込み電流より小さく設定される。上記構造により素子面積を容易に小さくすることが出来、スピン注入書き込みが可能となり、小さな書き込み電流でスピン反転が可能になったと考えられる。
また、第3実施形態、第4実施形態、第7実施形態の磁気メモリにおいては、磁気抵抗効果素子が記憶する情報を読み出すために上記磁気抵抗効果素子に流すセンス電流を制御するセンス電流制御素子回路、ドライバ、およびシンカーをさらに具備することとなる。
磁化固着層としては、一方向異方性を、磁気記録層としては、一軸異方性を有することが望ましい。またその厚さは0.1nmから100nmが好ましい。さらに、この強磁性層の膜厚は、超常磁性にならない程度の厚さが必要であり、0.4nm以上であることがより望ましい。
磁気記録層として用いる、誘電体で隔てられた強磁性粒としては、Co−Pt,Co−Fe−Pt、Fe−Pt、Co−Fe−Cr−Pt,Co−Cr−Ptからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
磁気記録層においても磁性材料に、Ag(銀)、Cu(銅)、Au(金)、Al(アルミニウム)、Ru(ルテニウム)、Os(オスニウム)、Re(レニウム)、Ta(タンタル)、B(ボロン)、C(炭素)、O(酸素)、N(窒素)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、Zr(ジルコニウム)、Ir(イリジウム)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Nb(ニオブ)などの非磁性元素を添加して、磁気特性を調節したり、結晶性、機械的特性、化学的特性などの各種物性を調節することができる。
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態による磁気抵抗効果素子の構成を図22に示す。この実施形態の磁気抵抗効果素子1Oは、図示しない基板上に設けられた下部電極層72と、下部電極72上に設けられ磁化が可変の磁性体からなる磁気記録層74と、磁気記録層74上に設けられたトンネルバリア層76と、トンネルバリア層76上に離散的に設けられた絶縁層78と、トンネルバリア層76および絶縁層78を覆うように設けられ磁化が固着された磁性体からなる磁化固着層80と、磁気記録層80上に設けられた上部電極層82とを備えている。なお、磁化固着層80は、反強磁性層を付加して磁化を固着することが好ましい。絶縁層78は原子一層分の膜厚であってもよい。
このように、本実施形態においては、磁気記録層74と磁化固着層80との間のトンネルバリア層76および絶縁層78からなる絶縁体の合計膜厚は、均一ではない。絶縁体の厚さに対してトンネル電流密度は指数関数的に低くなるので、絶縁体の膜厚が均一でない場合のトンネル電流は絶縁体の薄い部分に集中して流れる。すなわち、絶縁層78が設けられたトンネルバリア層76の領域を通して流れる電流密度は、絶縁層78が設けられていないトンネルバリア層76の領域を流れるトンネル電流密度に比べて無視できるほど低い。このため、絶縁体が堆積された領域は高抵抗となり、素子形状の面積に対してトンネル電流の流れている面積は実効的に小さくなる。
以上説明したように、本実施形態によれば、素子形状の面積に対してトンネル電流の流れる面積が実効的に小さくできるので、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。
(第10実施形態)
次に、本発明の第10実施形態による磁気抵抗効果素子の構成を図23に示す。この実施形態の磁気抵抗効果素子1Pは、第9実施形態の磁気抵抗効果素子1Oにおいて、トンネルバリア層76と、絶縁層78の配置を逆にした構成となっている。すなわち、本実施形による磁気抵抗効果素子1Pは、図示しない基板上に設けられた下部電極層72と、下部電極72上に設けられた磁気記録層74と、磁気記録層74上に離散的に設けられた絶縁層78と、磁気記録層74および絶縁層78を覆うように設けられたトンネルバリア層76と、トンネルバリア層76上に設けられた磁化固着層80と、磁気記録層80上に設けられた上部電極層82とを備えている。
この実施形態も、第6実施形態と同様に、磁気記録層74と磁化固着層80との間のトンネルバリア層76および絶縁層78からなる絶縁体の合計膜厚は、均一ではない。このため、素子形状の面積に対してトンネル電流の流れる面積が実効的に小さくできるので、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。
(第11実施形態)
次に、本発明の第11実施形態による磁気抵抗効果素子の構成を図24に示す。この実施形態の磁気抵抗効果素子1Qは、図22に示す第9実施形態の磁気抵抗効果素子1Oにおいて、トンネルバリア層76と、絶縁層78との間に非磁性層77を設けた構成となっている。すなわち、この実施形態の磁気抵抗効果素子1Qは、図示しない基板上に設けられた下部電極層72と、下部電極72上に設けられた磁気記録層74と、磁気記録層74上に設けられたトンネルバリア層76と、トンネルバリア層76上に離散的に設けられた非磁性層77と、この非磁性層77の表面を覆うように設けられた絶縁層78と、トンネルバリア層76および絶縁層78を覆うように設けられた磁化固着層80と、磁気記録層80上に設けられた上部電極層82とを備えている。絶縁層78は、非磁性層77の表面を酸化することによって形成してもよい。
なお、非磁性層77は、Mg、Al、Ga、In、Hf、Ta、半導体、および希土類元素から選択された少なくとも一つの元素を含むか、これらの化合物または合金であることが好ましい。
この実施形態においても、絶縁層78が設けられたトンネルバリア層76の領域を通して流れる電流密度は、絶縁層78が設けられていないトンネルバリア層76の領域を流れるトンネル電流密度に比べて無視できるほど低い。このため、絶縁体が堆積された領域は高抵抗となり、素子形状の面積に対してトンネル電流の流れている面積は実効的に小さくなる。
以上説明したように、本実施形態によれば、素子形状の面積に対してトンネル電流の流れる面積が実効的に小さくできるので、書き込み時にスピン偏極した電流を流してもこの書き込み電流による環状磁界は非常に小さく、大きな素子サイズの磁気記録層においても磁化が安定して反転することになり、書き込み動作を確実に行うことができる。
なお、上記第9乃至第11実施形態のそれぞれにおいては、磁気記録層74には非磁性元素(例えばCrまたはPt)を添加することにより粒界を形成し、絶縁層78が設けられていない領域より小さな磁区を形成してもよい。すなわち、磁気記録層74は非磁性元素を含む強磁性材料、例えばCoCrPt、CoFeCrPt等から形成すればよい。この場合、小さな磁区により磁気記録層74における電流の流れる領域と流れない領域が磁気的に分かれる。このように小さな磁区を形成することにより、磁気記録層74の電流が流れる領域のみをスピン注入により磁化反転させることが可能となり、さらに書き込み動作を確実に行うことができる。
また、第9乃至第11実施形態のそれぞれにおいては、素子形状を小さくすることなく、磁気抵抗効果素子のスピン注入による磁化反転が実現できる。
また、第9乃至第11実施形態のそれぞれにおいては、磁気記録層74上にトンネルバリア層76を設け、トンネルバリア層76上に絶縁層78を設け、トンネルバリア層76および絶縁層78を覆うように磁化固着層89を設けたが、磁気記録層74と磁化固着層80の配置を逆にしてもよい。
また、第9乃至第11実施形態の磁気抵抗効果素子は、図3乃至図4に示す第3乃至第4実施形態による磁気メモリのメモリ素子(磁気抵抗効果素子)として用いることができる。この場合、第3乃至第4実施形態の場合と同様に、スピン書き込み時における磁化固着層の磁化の安定性を保つために、磁化固着層の体積をなるべく大きくしたほうがよい。
第1乃至第11実施形態のそれぞれにおいては、磁気抵抗効果素子の磁性層は、Ni−Fe、Co−Fe、Co−Fe−Ni合金、または、(Co,Fe,Ni)−(Si,B)、(Co,Fe,Ni)−(Si,B)−(P,Al,Mo,Nb,Mn)系またはCo−(Zr,Hf,Nb,Ta,Ti)系などのアモルファス材料、Fe2(CrxNi1−x)Al、Co2(CrxFe1−x)Al、Co2MnSi、Co2MnAl系などのホイスラー材料、Co−Pt系、Co−Fe−Pt系、Fe−Pt系、Co−Fe−Cr−Pt系、Co−Cr−Pt系からなる群より選ばれる少なくとも1種の薄膜またはそれらの積層膜で構成される。なお、“−”は含まれる成分を示し、“(,)”は括弧内の少なくとも1つの元素が選択されることを意味している。
第1乃至第11実施形態のそれぞれにおいては、磁気記録層における磁性材料に、Ag(銀)、Cu(銅)、Au(金)、Al(アルミニウム)、Ru(ルテニウム)、Os(オスニウム)、Re(レニウム)、Ta(タンタル)、B(ボロン)、C(炭素)、O(酸素)、N(窒素)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、Zr(ジルコニウム)、Ir(イリジウム)、W(タングステン)、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、Nb(ニオブ)、Mg(マグネシウム)などの非磁性元素を添加して、磁気特性を調節するばかりでなく、結晶性、機械的特性、化学的特性などの各種物性を調節することができる。
特に、磁気記録層が強磁性層を少なくとも2つ含む積層膜の場合には、トンネルバリア層に近い強磁性層には磁気抵抗効果による抵抗変化率が大きくなるCo−Fe、Co−Fe−Ni、FeリッチNi−Feを用い、トンネルバリア層と接していない強磁性層にはNiリッチNi−Fe、NiリッチNi−Fe−Coなどを用いると抵抗変化率を大きく保ったまま、書き込み電流を低減でき、より好ましい。
添加する非磁性材料としては、Ag(銀)、Cu(銅)、Au(金)、Al(アルミニウム)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Os(オスニウム)、Re(レニウム)、Si(シリコン)、Bi(ビスマス)、Ta(タンタル)、B(ボロン)、C(炭素)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、Zr(ジルコニウム)、Ir(イリジウム)、W(タングステン)、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、Nb(ニオブ)またはそれら合金を用いることが出来る。
また第5乃至第11実施形態のそれぞれにおいては、磁気記録層として、軟磁性層/強磁性層という2層構造、または強磁性層/軟磁性層/強磁性層という3層構造を用いてもよい。また磁気記録層として、強磁性層/非磁性層/強磁性層という3層構造または強磁性層/非磁性層/強磁性層/非磁性層/強磁性層という5層構造を用いて、強磁性層の層間の交互作用の強さを制御することにより、メモリセルである磁気記録層のセル幅がサブミクロン以下になっても、スピン注入の書き込み電流を増大させずに済むという好ましい効果が得られる。スピン注入書き込みの場合は、特に層間の相互作用としてはその相互作用の強さが2000Oe以下であることが好ましい。また、その交換相互作用の符合は正(強磁性的)であることがより好ましい。層間の相互作用の強さ、符号を選ぶことによって電流を低減することが可能となる。この際、強磁性層の種類、膜厚を変えてもかまわない。
また第1乃至第11実施形態のそれぞれにおいては、磁化固着層として用いる強磁性層には、反強磁性膜を付加して磁化を固着することが望ましい。反強磁性膜としては、Fe−Mn(鉄−マンガン)、Pt−Mn(白金−マンガン)、Pt−Cr−Mn(白金−クロム−マンガン)、Ni−Mn(ニッケル−マンガン)、Ir−Mn(イリジウム−マンガン)、NiO(酸化ニッケル)、Fe2O3(酸化鉄)などを用いることができる。
また、磁化固着層と磁気記録層を構成する磁性体にも、Ag(銀)、Cu(銅)、Au(金)、Al(アルミニウム)、Mg(マグネシウム)、Si(シリコン)、Bi(ビスマス)、Ta(タンタル)、B(ボロン)、C(炭素)、O(酸素)、N(窒素)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、Zr(ジルコニウム)、Ir(イリジウム)、W(タングステン)、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、Nb(ニオブ)などの非磁性元素を添加して、磁気特性を調節するだけでなく、結晶性、機械的特性、化学的特性などの各種物性を調節することができる。
第1乃至第11実施形態のそれぞれにおいて、磁化固着層としては、一方向異方性を、磁気記録層としては、一軸異方性を有することが望ましい。またその厚さは0.1nmから100nmが好ましい。さらに、この強磁性層の膜厚は、超常磁性にならない程度の厚さが必要であり、0.4nm以上であることがより望ましい。
第1乃至第11実施形態のそれぞれにおいて、磁気抵抗効果素子としてトンネル接合を用いる場合に、磁化固着層と磁気記録層との間に設けられる絶縁層としては、Al2O3(酸化アルミニウム)、SiO2(酸化シリコン)、MgO(酸化マグネシウム)、AlN(窒化アルミニウム)、Bi2O3(酸化ビスマス)、MgF2(フッ化マグネシウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、LaAlO3(ランタンアルミネート)、Al−N−O(酸化窒化アルミニウム)、HfO(酸化ハフニウム)などの各種の絶縁体を用いることができる。
これらの化合物は、化学量論的にみて完全に正確な組成である必要はなく、酸素、窒素、フッ素などの欠損、あるいは過不足が存在していてもよい。また、この絶縁層の厚さは、トンネル電流が流れる程度に薄いほうが望ましく、実際上は、10nm以下、より好ましくは2nm以下であることが望ましい。
このような磁気抵抗効果素子は、各種スパッタ法、蒸着法、分子線エピタキシャル法などの通常の薄膜形成手段を用いて、所定の基板上に形成することが出来る。この場合の基板としては、Si(シリコン)、SiO2(酸化シリコン)、Al2O3(酸化アルミニウム)、スピネル、AlN(窒化アルミニウム)など各種の基板を用いることができる。
また、基板の上に下地層や保護層、ハードマスクなどとして、Ta(タンタル)、Ti(チタン)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Au(金)、Ti/Pt(チタン/白金)、Ta/Pt(タンタル/白金)、Ti/Pd(チタン/パラジウム)、Ta/Pd(タンタル/パラジウム)、Cu(銅)、Al−Cu(アルミニウム−銅)、Ru(ルテニウム)、Ir(イリジウム)、Os(オスミウム)Rh(ロジウム)などからなる層を設けてもよい。
以下、実施例を参照して本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
まず、本発明の実施例1として、図1および図3に示すTMR構造を有する磁気抵抗効果素子の試料を作製した。
この磁気抵抗効果素子の試料の製造手順は、以下の通りである。
まず、SiO2基板上に、Ta(50nm)/Ru(10nm)の積層膜からなる下地電極、PtMn(20nm)からなる反強磁性層、Co90Fe10(5nm)からなる磁化固着層、AlOx(1.4nm)からなるトンネルバリア層、AlOxからなる誘電体で隔てられたCo80Pt20からなる強磁性粒を有する膜厚2.0nmの磁気記録層、Ru(15nm)からなる非磁性層、Ta(150nm)からなるコンタクト層をスパッタにより順次成膜した。なお、括弧内の数値は膜厚を示す。なお、磁気記録層は強磁性体と誘電体を同時にスパッタリングし、成膜される基板に高周波のバイアスを印加することにより形成される。この方法によって形成される強磁性粒のサイズは20nm〜100nmの大きさとなる。高周波のバイアスを基板に印加しながら誘電体と強磁性体を同時に成膜すると、強磁性粒の粒径をそろえることができ、スピン注入書き込みで最適である。今回の実験で粒の面積の誤差範囲は5%以下に抑えられることが分かった。
膜厚1.4nmのAlOxからなるトンネルバリア層は、膜厚6nmのAlを成膜した後、そのままの位置(in situ)で純酸素を用いて自然酸化するプロセスを2回繰り返して作製した。その後、断面TEM(Transmission Electron Microscope)でAlOx層の膜厚を調べたところ、膜厚1.2nmのAlが酸化されAlOxは膜厚が1.4nmになっていることが分かった。
トンネル接合の形成は接合面積を規定する部分だけはEB(Electron Beam)描画装置を用い、その他はKrFステッパ装置を用いてパターニングした。接合分離を行う際、図1に示すように磁化固着層を完全に切りきったサンプル(試料1)と、図3に示すように磁化固着層の途中で接合分離をストップした試料2を作製した。接合面積が0.1×0.1μm2である試料1,2をそれぞれ試料1−1,試料2−1とし、接合面積が0.1×0.15μm2である試料1,2をそれぞれ試料1−2,試料2−2とし、接合面積が0.2×0.3μm2である試料1,2をそれぞれ試料1−3,試料2−3とし、接合面積が0.25×0.35μm2である試料1,2をそれぞれ試料1−4,試料2−4とするものを作製した。
接合分離を行った後、SiOxからなる膜厚35nmの保護膜を成膜し、Ta/Ruからなる下地電極をパターニングし、ミリングにより形成した後、層間絶縁膜を成膜する。続いて、エッチバックでコンタクト層を露出させた後、コンタクトクリーニングを行い、Ti(15nm)/Al(300nm)/Ti(15nm)からなる上部電極をスパッタし、RIE(Reactive Ion Etching)法によってパターニングした。
その後、磁性層の長軸方向に磁場を印加して、280℃で10時間アニールを行い一軸異方性を付与した。
まず、外部磁界で磁気抵抗効果を測定したところ、磁化固着層の磁気モーメントと、誘電体で隔てられた強磁性粒を有する磁気記録層の磁気モーメントが平行または反平行になる磁場が存在し(図25(a)、(b)参照)、MR変化率は全ての試料で26%±1%の範囲に入っていることが分かった。なお、上記各試料に対して、膜厚15nmのRuからなる非磁性層および膜厚150nmのTaからなる金属コンタクト層を、膜厚7nmのRuからなる非磁性層、膜厚5nmのCo90Fe10からなる磁化が固着された強磁性層、膜厚20nmのPtMnからなる反強磁性層、膜厚10nmのRuおよび膜厚150nmのTaからなる金属コンタクト層に置き換えたもの、すなわち非磁性層と金属コンタクト層との間に第2磁化固着層を設けた試料を作成し、外部磁界で磁気抵抗を測定したところ、すべての試料に対してMR変化率は26%±1%の範囲に入っていた。このことは、第2磁化固着層も外部磁場によって磁化の向きが反転しているはずであるが、この磁化の向きの反転は磁気抵抗変化に効いていないことがわかる。
図25(a)、(b)から明らかなように、誘電体で隔てられた強磁性粒を有する磁気記録層の飽和磁化は、上記強磁性粒の材料にCo−Ptを用いたことおよび磁気記録層の膜厚が薄いことのため、小さいが、Co−Ptの保磁力が大きいため、熱揺らぎに対する磁気記録層の熱安定性は良いことが分かる。
図26(a)、(b)に電流−電圧特性を示す。約400mVのところで電流注入によるスピン反転が実現され、抵抗変化が観測された。電流注入によるスピン反転電流が試料1,試料2でほとんど変化していないことから、誘電体で隔てられた強磁性粒を有する磁気記録層がスピン反転していることがわかる。スピン反転の電流密度は磁気記録層の磁化の向きを磁化固着層に対して反平行から平行の向きに反転させる場合は1.3×107A/cm2、逆に平行から反平行へ反転させる場合は1.5×107A/cm2と見積もられる。なお、第2磁化固着層を設けた場合は、スピン反転の電流密度は磁気記録層の磁化の向きを磁化固着層に対して反平行から平行の向きに反転させる場合は0.6×107A/cm2、逆に平行から反平行へ反転させる場合は0.75×107A/cm2と見積もられる。すなわち、第2磁化固着層を設けた場合は、設けない場合に比べてスピン反転の電流密度は1/2以下となる。
図26(b)に示したように、0.25×0.35μm2の大きさまで還流磁場による影響は見られず、0.1×0.1μm2の小さい面積の時と反転電流密度は変わらなかった。
また、接合面積が0.2×0.3μm2である試料1−3,試料2−3に106回のスピン反転(書き込み)を繰り返した結果を図27に示す。図3に示す構造の試料2−3ではスピン注入に関して安定した特性が得られたが、図1に示す構造の試料1−3ではMR値に不安定性が観測され、図3に示す構造がスピン注入書き込みには好ましいことがわかった。また、第2磁化固着層を設けた場合も同様の結果が得られた。
以上説明したように、0.25×0.35μm2の大きさまで環状磁界による影響は見られず、素子サイズが0.1×0.1μm2のセルも含め、幅広いサイズで低電流書き込みが可能となる。また、熱揺らぎに対する磁気記録層の熱安定性も得ることができる。また、スピン注入書き込み時の磁化固着層の磁化の安定性も図3に示す構造を用いることにより得ることができる。
(実施例2)
次に本発明の実施例2として、図4乃至図6に示すTMR構造を有する試料3,4,5を作製した。
この磁気抵抗効果素子の試料3,4,5の製造手順は実施例1と同様である。
試料は以下の構造を作製した。
(試料3の構成)
この試料3は、図4に示す構造を有し、SiO2基板上にTa(50nm)/Ru(10nm)からなる下地電極、PtMn(15nm)からなる反強磁性層とCo90Fe10(3nm)からなる磁化固着層との積層膜を2層積層した積層構造、AlOx(1.4nm)からなるトンネルバリア層、AlOxからなる誘電体で隔てられた(Co90Fe10)80Pt20からなる強磁性粒を有する磁気記録層、Ru(15nm)からなる非磁性層、およびTa(150nm)からなるコンタクト層を備えている。
(試料4の構成)
この試料4は、図5に示す構造を有し、SiO2基板上にTa(50nm)/Ru(10nm)からなる下地電極、PtMn(15nm)からなる反強磁性層とCo90Fe10(3nm)からなる磁化固着層との積層膜を2層積層した積層構造、AlOx(1.4nm)からなるトンネルバリア層、Co90Fe10(3.0nm)からなる磁気記録層、Ru(14nm)からなる非磁性層、およびTa(150nm)からなるコンタクト層を備えている。
(試料5の構成)
この試料5は、図6に示す構造を有し、SiO2基板上にTa(50nm)/Ru(10nm)からなる下地電極、PtMn(15nm)からなる反強磁性層、Ru(0.9nm)からなる非磁性層を介してCo90Fe10(3nm)からなる磁化固着層を2層積層した積層構造、AlOx(1.4nm)からなるトンネルバリア層、Co90Fe10(3.0nm)からなる磁気記録層、Ru(14nm)からなる非磁性層、およびTa(150nm)からなるコンタクト層を備えている。
接合面積は全て0.1×0.15μm2である。外部磁界でMR値を測定したところ、試料3,4,5に対してそれぞれ26%,31.5%、32%であった。この試料にスピン注入書き込みを行い、106回のスピン反転を繰り返した結果を図28に示す。図4、図5、図6に示す構造では、スピン注入に関して安定した特性が得られたが、図27に示す試料1−3ではMR値に不安定性が観測され、図4、図5、図6に示す構造がスピン注入書き込み構造として好ましいことが分かった。
以上説明したように、スピン注入書き込み時の磁化固着層の磁化の安定性も保つことができることが分かった。
(実施例3)
次に、本発明の実施例3として、第8実施形態で説明した製造方法を用いて、下地層、反強磁性層、磁化固着層、トンネルバリア層、磁気記録層、および反射層を備えた図29に示す試料6−1〜試料6−15を作成するとともに反射層を備えていない比較例1−1、1−2を作成し、それぞれの電流密度を測定した。これらの試料6−1〜試料6−15および比較例1−1、比較例1−2はいずれも、下地層が膜厚50nmのTaおよび膜厚10nmのRu、反強磁性層が膜厚15nmのPtMn、磁化固着層が膜厚5nmのCo90Fe10、トンネルバリア層が膜厚1.4nmのAlOxからなっている。そして、磁気記録層および反射層は第8実施形態で説明したように、柱状に積層された構成となっている。なお、各試料および比較例の素子サイズは0.1×0.15μm2であり、図19(c)に示す保護膜34はAlOx、層間絶縁膜36はSiOxを用いた。
また磁気記録層は、試料6−1〜試料6−10、試料6−13〜試料6−14、および比較例1−2が膜厚3nmのCo80Pt20であり、試料6−11〜試料6−12、試料6−15および比較例1−1が膜厚4nmのCo90Fe10である。
試料6−1は、図1に示す第1実施形態の磁気抵抗効果素子を上述の製造方法で製造したものであり、非磁性層14を膜厚5nmのRuを用いて反射層の機能を持たせた構成となっている。試料6−2は、図20に示す磁気抵抗効果素子であって、非磁性層14が膜厚5nmのRu、強磁性層18が膜厚5nmのCo90Fe10、反強磁性層19が膜厚15nmのPtMnから構成されている。すなわち、試料6−1は試料6−2の強磁性層および反強磁性層を削除した構成となっている。
試料6−3は、試料6−2の非磁性層14をRuからCrに換えた構成となっている。試料6−4は、試料6−3の非磁性層14をCrからRuCrに換えた構成となっている。
試料6−5は、試料6−1の非磁性層14RuからIrに換えた構成となっている。試料6−6は、試料6−2の非磁性層14をRuからIrに換えた構成となっている。すなわち、試料6−5は試料6−6の強磁性層および反強磁性層を削除した構成となっている。
試料6−7は、試料6−1の非磁性層14をRuからIrRuに換えた構成となっている。試料6−8は、試料6−2の非磁性層14をRuからIrRuに置き換えた構成となっている。すなわち、試料6−7は試料6−8の強磁性層および反強磁性層を削除した構成となっている。
試料6−9は、試料6−2の非磁性層14をRuからReに換えた構成となっている。試料6−10は、試料6−2の非磁性層14をRuからRuReに換えた構成となっている。
試料6−11は、試料6−2の磁気記録層を膜厚3nmのCo80Pt20から膜厚4nmのCo90Fe10に換えた構成となっている。試料6−12は、試料6−11の非磁性層をRuからIrに換えた構成となっている。
試料6−13は、図8に示す第5実施形態の変形例による磁気抵抗効果素子を上述の製造方法によって製造したもので、非磁性層14が膜厚5nmのCu、強磁性層181が膜厚4nmのCo90Fe10、非磁性層182が膜厚0.9nmのRu、強磁性層183が膜厚5nmのCo90Fe10、反強磁性層20が膜厚15nmのPtMnから構成されている。
試料6−14は、図7に示す第5実施形態による磁気抵抗効果素子を上述の製造方法で製造したものであって、非磁性層が膜厚5nmのCu、強磁性層18が膜厚5nmのCo90Fe10、反強磁性層20が膜厚15nmのIrMnから構成されている。
試料6−15は、試料6−13の磁気記録層を膜厚3nmのCo80Pt20から膜厚4nmのCo90Fe10に換えた構成となっている。
なお、試料6−1〜試料6−15は、反射層上に金属コンタクト層として膜厚5nmのRu層と膜厚150nmのTa層が積層され、比較例1−1,比較例1−2では反射層上に膜厚155nmのTa層が形成されている。
図29からわかるように、反射層が非磁性層のみからなる場合(試料6−1、試料6−5、試料6−7は反射層がない比較例1−2に比べて電流密度は2/3倍程度になる。
また、反射層が非磁性層/強磁性層/反強磁性層からなる場合(試料6−2、試料6−6、試料6−8)は、反射層が非磁性層のみからなる場合(試料6−1、試料6−5、試料6−7)に比べて電流密度は約半分程度となる。
また、反射層が非磁性層/強磁性層/反強磁性層から構成されているときに、磁化固着層と、反射層を構成する磁気記録層側の強磁性層の磁化の向きが平行な場合(試料6−2〜試料6−4、試料6−6、試料6−8〜試料6−10)は、磁化固着層と、反射層を構成する磁気記録層側の強磁性層の磁化の向きが反平行な場合(試料6−13〜試料6−15)に比べて電流密度が小さいことがわかる。
なお、図29に示す電流密度は、平行の向きに反転させる場合の電流密度と逆に平行から反平行へ反転させる場合の電流密度との平均値を示す。
また、反射層の材料の違いによる特性をみるために、上記試料6−2〜試料6−4、試料6−6、試料6−8、試料6−9に対して反射層の材料を換えた比較例2−1〜比較例2−4を作成し、電流密度を測定した結果を図30に示す。比較例2−1は試料6−2の膜厚5nmのRu層と膜厚5nmのCo90Fe10層とからなる反射層を膜厚5nmのCu層と膜厚5nmのCo90Fe10層とからなる反射層に置き換えた構成であり、比較例2−2は試料6−2の膜厚5nmのRu層と膜厚5nmのCo90Fe10層とからなる反射層を膜厚5nmのRh層と膜厚5nmのCo90Fe10層とからなる反射層に置き換えた構成であり、比較例2−3は試料6−2の膜厚5nmのRu層と膜厚5nmのCo90Fe10層とからなる反射層を膜厚5nmのAg層と膜厚5nmのCo90Fe10層とからなる反射層に置き換えた構成であり、比較例2−4は試料6−2の膜厚5nmのRu層と膜厚5nmのCo90Fe10層とからなる反射層を膜厚5nmのAu層と膜厚5nmのCo90Fe10層とからなる反射層に置き換えた構成である。なお、比較例2−1〜比較例2−4は試料6−2〜試料6−4、試料6−6、試料6−8、試料6−9と同様に、反射層上に形成されたPtMnからなる反強磁性層上に、膜厚5nmのRu層と膜厚150nmのTa層からなる金属コンタクト層が設けられている。また、試料6−2〜試料6−4、試料6−6、試料6−8、試料6−9および比較例2−1〜比較例2−4においては、反射層を構成するCo90Fe10からなる強磁性層はこの強磁性層上に設けられるPtMnからなる反強磁性層によって磁化の向きが固着されるが、この磁化の向きと、トンネルバリア層下に設けられる磁化固着層との磁化の向きは平行となっている。
図29および図30の測定結果からわかるように、反射層の強磁性層がCoを含む強磁性層である場合、この強磁性層に接する非磁性層の材料がCr、Ru、Ir、Reから選ばれる少なくとも1種の元素を含むか、またはそれら合金であるが好ましいことがわかる。
また、磁気記録層が磁性粒からなる場合と連続膜からなる場合とを比較するために、磁気記録層が磁性粒からなる試料6−11と、この試料6−11の反射層の膜厚5nmのRu層を膜厚5nmのCr層に置き換えたものを製作して試料6−16とし、試料6−11の反射層の膜厚5nmのRu層を膜厚5nmのRuCr層に置き換えたものを製作して試料6−17とした。また、試料6−11、試料6−16、試料6−17の磁気記録層および反射層を連続膜としたものを製作し、それぞれ比較例3−1、比較例3−2、比較例3−3とした。なお、試料6−11、試料6−16、試料6−17および比較例3−1〜比較例3−3においては、反射層を構成するCo90Fe10からなる強磁性層はこの強磁性層上に設けられるPtMnからなる反強磁性層によって磁化の向きが固着されるが、この磁化の向きと、トンネルバリア層下に設けられる磁化固着層との磁化の向きは平行となっている。
これらの試料6−11、試料6−16、試料6−17、比較例3−1、比較例3−2、比較例3−3の電流密度を測定した結果を図31に示す。図31に示す結果から磁気記録層が強磁性粒からなる場合のほうが連続膜の場合に比べて電流密度が低いことがわかる。
(実施例4)
次に、本発明の実施例4として、図22に示す構造の磁気抵抗効果素子を製作した。この実施例の磁気抵抗効果素子は以下のように形成される。
まず、SiO2からなる基板上に超高真空スパッタ装置により、膜厚80nmのTaからなる下部電極層、膜厚5nmのRuからなるバッファー層、膜厚3nmのCoFeCrPtからなる磁気記録層を成膜する。次に、膜厚0.7nmのAlの層を成膜し、純酸素ガスを導入することによりAl層を酸化させ、薄いトンネルバリア層を形成した。その後、酸化Al層の表面全体は覆わない平均膜厚が0.5nmのAl2O3からなる絶縁体を堆積させる。次に、膜厚5nmのCoFeからなる磁化固着層、膜厚15nmのPtMnからなる反強磁性層、膜厚20nmのRuからなるキャップ層の順に成膜する。その後、キャップ層上に膜厚100nmのTaからなる上部電極層を形成する。なお、酸化Al層の表面全体は覆わない平均膜厚が0.5nmのAl2O3からなる絶縁体の形成は、形成される絶縁体が平坦にならないような方法で形成すればよく、平均膜厚が5nm以下であれば表面全体は覆わない絶縁体を形成することができる。このとき、絶縁体のサイズは形成される絶縁体の平均膜厚による。
上記積層膜上にレジストで素子形状のレジストパターンを形成した後、このレジストパターンをマスクとして反応性エッチングを用いて上部電極層をパターニングし、上部電極を形成すると同時に素子形状が形成される。レジストパターンを剥離した後、素子部分を除いてイオンミリングによりキャップ層、磁気記録層、トンネルバリア層、磁化固着層をエッチングする。その後、膜厚50nmのSiO2からなる絶縁層を成膜し、素子をSiO2で覆う。次に、下部電極のパターンをレジストで形成し、反応性イオンエッチングにより下部電極層をパターニングし、レジストを剥離する。膜厚300nmのSiO2からなる絶縁層を成膜し、下部電極をSiO2で覆う。
平坦化レジストを塗布した後、反応性イオンエッチングにより平坦化レジストおよびSiO2絶縁層をエッチングし、素子の上部電極が現れたところでエッチングを止めた。その後、膜厚60nmのTi、膜厚180nmのAl、膜厚60nmのTiを成膜する。次にレジストにより、上部配線層のパターンを形成し、反応性イオンエッチングにより上部配線のパターニングを行う。レジストを剥離した後、磁性層の長軸方向に磁場を印加しながら、280℃でアニールを行った。
このような製造方法により素子形状が0.4×0.8μm2の面積の素子が形成できた。図32に示すように、この素子の電流−電圧特性においてはスピン注入磁化反転による抵抗変化を示した。磁気記録層の磁化が平行から反平行へ磁化反転する電圧は320mV、電流は59μAであった。
本実施例ではAl2O3からなる絶縁体を堆積した領域が高抵抗になり、実効的にトンネル電流の流れる面積を小さくすることができた。また、磁気記録層にCrおよびPtが粒界を形成しているため磁気記録層は小さな磁区が形成されており、スピン反転する領域の体積が小さくなっている。そのためスピン反転が容易になり、スピン反転の電流密度を低くすることができた。本実施例ではスピン注入による磁化反転が実現され、23%の抵抗変化が得られた。本実施例の構造は、低電流でスピン注入磁化反転ができ、大容量メモリとして適していることがわかった。
(実施例5)
次に、本発明の実施例5として、図23に示す構造の磁気抵抗効果素子を製作した。この実施例の磁気抵抗効果素子は以下のように形成される。
まず、SiO2からなる基板上に超高真空スパッタ装置により、膜厚80nmのTaからなる下部電極層、膜厚5nmのCrからなるバッファー層、膜厚3nmのCoCrPtからなる磁気記録層を成膜する。次に、磁気記録層の表面全体は覆わない平均膜厚が0.5nmのAl2O3からなる絶縁体を堆積させた後、膜厚0.7nmのAlの層を成膜し、純酸素ガスを導入することによりAl層を酸化させ、薄いトンネルバリアを形成した。その後、膜厚5nmのCoFeからなる磁化固着層、膜厚15nmのPtMnからなる反強磁性層、膜厚20nmのRuからなるキャップ層の順に成膜する。その後、キャップ層上に膜厚100nmのTaからなる上部電極層を形成する。上記積層膜を上記実施例4と同様に加工し、素子を形成する。
このような製造方法により素子形状が0.4×0.8μm2の面積の素子が形成できた。この素子の電流−電圧特性においてはスピン注入磁化反転による抵抗変化を示した。磁気記録層の磁化が平行から反平行へ磁化反転する電圧は360mV、電流は230μAであった。
本実施例ではAl2O3からなる絶縁体を堆積した領域が高抵抗になり、実効的にトンネル電流の流れる面積を小さくすることが出来た。また、磁気記録層がCrおよびPtを含んでいるため磁気記録層は小さな磁区が形成されており、スピン反転する領域の体積が小さくなっている。そのためスピン反転が容易になり、スピン反転の電流密度を低くすることができた。本実施例ではスピン注入による磁化反転が実現され、17%の抵抗変化が得られた。本実施例の構造は、低電流でスピン注入磁化反転ができ、大容量メモリとして適していることがわかった。
(実施例6)
次に、本発明の実施例6として、図24に示す構造の磁気抵抗効果素子を製作した。この実施例の磁気抵抗効果素子は以下のように形成される。
まず、SiO2からなる基板上に超高真空スパッタ装置により、膜厚80nmのTaからなる下部電極層、膜厚5nmのRuからなるバッファー層、膜厚3nmのCoFeCrPtからなる磁気記録層を成膜する。次に、膜厚0.7nmのAlの層を成膜し、純酸素ガスを導入することによりAl層を酸化させ、薄いトンネルバリアを形成した。その後、酸化Al層の表面全体は覆わない平均膜厚が0.4nmのAlを堆積させ、純酸素を導入して堆積させたAlの表面を酸化させる。次に、膜厚5nmのCoFeからなる磁化固着層、膜厚15nmのPtMnからなる反強磁性層、膜厚20nmのRuからなるキャップ層の順に成膜する。その後、キャップ層上に膜厚100nmのTaからなる上部電極層を形成する。上記積層膜を上記実施例1と同様に加工し、素子を形成する。
このような製造方法により素子形状が0.4×0.8μm2の面積の素子が形成できた。この素子の電流−電圧特性においてはスピン注入磁化反転による抵抗変化を示した。磁気記録層の磁化が平行から反平行へ磁化反転する電圧は290mV、電流は53μAであった。
本実施例では、表面を覆わないように堆積させたAlの表面を酸化させた領域が高抵抗になり、実効的にトンネル電流の流れる面積を小さくすることができた。また、磁気記録層がCrおよびPtを含んでいるため磁気記録層は小さな磁区が形成されており、スピン反転する領域の体積が小さくなっている。そのためスピン反転が容易になり、スピン反転の電流密度を低くすることができた。本実施例ではスピン注入による磁化反転が実現され、28%の抵抗変化が得られた。本実施例の構造は、低電流でスピン注入磁化反転ができ、大容量メモリとして適していることがわかった。
(実施例7)
本発明の実施例7として、実施例4で磁気記録層にCoCrPtを用いた磁気抵抗効果素子を製作した。この実施例の磁気抵抗効果素子は以下のように形成される。
磁気記録層の材料にCoCrPtを用い、それ以外は実施例4と同じ作製プロセスにより磁気抵抗効果素子を作製した。このような製造方法により0.08×0.3μm2の小面積の素子が形成できた。本実施例では小面積の素子を形成できたため、電流注入によるスピン反転が実現され、21%の抵抗変化が得られた。スピン反転の電流密度は磁気記録層の磁化の向きを磁化固着層に対して反平行から平行の向きに反転させる場合は7.3×106A/cm2、逆に平行から反平行へ反転させる場合は1.1×107A/cm2と見積もられる。
本実施例では添加された非磁性元素Cr及びPtにより磁気記録層に粒界が形成され、小さな磁区が形成されており、スピン反転する領域の体積が小さくなっている。そのためスピン反転が容易になり、スピン反転の電流密度を低くすることができた。
本実施例の構造は、低電流でスピン注入書き込みが出来、大容量メモリとして適していることが分かった。
(実施例8)
本発明の実施例8として、実施例5で磁気記録層にCoFeCrPtを用いた磁気抵抗効果素子を製作した。この実施例の磁気抵抗効果素子は以下のように形成される。
磁気記録層の材料にCoFeCrPtを用い、それ以外は実施例5と同じ作製プロセスにより磁気抵抗効果素子を作製した。このような製造方法により0.08×0.3μm2の小面積の素子が形成できた。本実施例では小面積の素子を形成できたため、電流注入によるスピン反転が実現され、21%の抵抗変化が得られた。スピン反転の電流密度は磁気記録層の磁化の向きを磁化固着層に対して反平行から平行の向きに反転させる場合は7.1×106A/cm2、逆に平行から反平行へ反転させる場合は1.0×107A/cm2と見積もられる。
本実施例では添加された非磁性元素Cr及びPtにより磁気記録層に粒界が形成され、小さな磁区が形成されており、スピン反転する領域の体積が小さくなっている。そのためスピン反転が容易になり、スピン反転の電流密度を低くすることができた。
本実施例の構造は、低電流でスピン注入書き込みができ、大容量メモリとして適していることが分かった。
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、スピン注入による書き込み動作を確実に行うことができる。