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JP4582874B2 - 偏波モード分散補償方法および偏波モード分散補償装置 - Google Patents
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JP4582874B2 - 偏波モード分散補償方法および偏波モード分散補償装置 - Google Patents

偏波モード分散補償方法および偏波モード分散補償装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、伝送路の偏波モード分散による信号光への影響を補償する技術に関し、特に、信号光におけるベースバンドスペクトル中の特定周波数成分の強度を検出して偏波モード分散の補償を行う偏波モード分散補償方法および偏波モード分散補償装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、日本国内や国外において、伝送速度10Gb/s(ギガビット/秒)の光伝送システムの商用化が進められている。また、今後のインターネット等による伝送容量需要の急速な増大に対応し、安価で周波数利用効率の高い通信サービスを提供するために、例えば、伝送速度が40Gb/sなどの超高速光伝送システムの実現が求められている。
【0003】
しかしながら、上記のような超高速光伝送システムにおいては、伝送路で生じる偏波モード分散(Polarization-mode Dispersion:以下、PMDとする)などの影響により信号光の伝送波形が劣化してしまうため、信号光の伝送距離が制限されるという課題がある。このPMDは、信号光における偏波成分(例えばTEモードおよびTMモードのような2つのモード光)の伝播遅延時間が異なることによって生じる分散であり、あらゆる光ファイバに対して起こり得るものである。
【0004】
したがって、超高速の長距離光伝送を実現するためには、PMD補償技術の適用が必須となる。また、PMDは、温度やストレス等の伝送路環境の変化によっても経時的に変動するため、システム運用中にPMDの状態をモニタし、フィードバック制御を行う自動PMD補償技術が必要とされる。
【0005】
従来の自動PMD補償技術としては、例えば、光領域での補償方式(例えば、T. Takahashi et al., Electron. Lett. 30, pp.348-349, 1994.や、F. Heismann et al., ECOC'98 Technical Digest, pp.529-530.や、特開平11−196046号公報等参照)および電気段での補償方式(例えばH. Bulow, NOC'97 Technical Digest, pp.65-72.等参照)の報告がなされている。
【0006】
また、本発明者らは、簡易な構成、変調方式や他の波形劣化要因(波長分散、非線形効果)に無依存、高速化に有利、といった観点から、光領域における補償方式を採用した自動PMD補償技術を提案している(特願平11-515959号や、H. Ooi et al., OFC'99, Technical Digest WE5 pp.86-88, 1999.等参照)。この補償技術は、大規模な測定器を不要とする簡易な構成のPMDモニタ方式を採用して、伝送光信号におけるベースバンドスペクトル中の特定周波数成分の強度(例えば、40Gb/s信号光における20GHz成分の強度など)を検出し、該検出強度が極大になるように補償量をフィードバック制御する技術である。この補償技術を適用することにより、信号光の伝送距離が4倍以上に拡大されるようになる。
【0007】
しかし、上記のような補償技術においては、補償可能なPMDの上限が伝送光の1タイムスロットに制約されてしまうという課題があった。すなわち、特定周波数成分の強度は、伝送路のPMDによる偏波モード間の光遅延量ΔτT(以下、PMD量ΔτTとする)に対して図12に示すように変化し、PMD量ΔτTが伝送光の1タイムスロット(例えば40Gb/s信号光の場合25ps)になると、特定周波数成分の強度が零(または極小)になる。このため、PMD量ΔτTが1タイムスロットを超える場合に、特定周波数成分の強度が極大になるように補償量をフィードバック制御すると、制御後のPMD量ΔτTは増加するようになり伝送光波形の劣化が大きくなってしまう。
【0008】
このような課題に対して、PMDの補償可能範囲を拡大する技術としては、例えば、伝送速度Bb/sの伝送光信号におけるベースバントスペクトル中の周波数B/2Hz成分、B/4Hz成分およびB/8Hz成分などをバンドパスフィルタ(BPF)で抽出して各々の強度を検出する方式が提案されている(例えばD.Sandel et al., Electron. Lett. 34, pp.2258-2259, 1998等参照)。
【0009】
図13は、上記のPMD補償技術を説明する図である。ただし、横軸はPMD量ΔτTを伝送光の1タイムスロットTで規格化した値(ΔτT/T)を示し、縦軸は各BPFで抽出した周波数成分の強度を示している。なお、(BPF0.5/T)で示される曲線はB/2Hz成分の強度を表し、(BPF0.25/T)で示される曲線はB/4Hz成分の強度を表し、(BPF0.125/T)で示される曲線はB/8Hz成分の強度を表している。また、LPFで示された曲線は、ローパスフィルタ(LPF)で抽出されたB/8Hz成分の強度を表すものである。
【0010】
図13に示すように、BPFで抽出される周波数が低くなるほど、各々の成分の強度が零になるPMD量ΔτTが大きくなるため、補償可能範囲は拡大される。しかしながら、PMD量ΔτTが小さい領域では、検出される強度(モニタ強度)の変化が小さくなる(各々の曲線が平坦に近くなる)ため、モニタ強度が極大になるようにPMDの補償量をフィードバック制御した場合、該フィードバック制御の収束が悪くなってしまう。また、モニタ系の感度には不確定幅があることから、経時的に不安定な制御となる可能性もある。そこで、上記のPMD補償技術では、各々の周波数成分の強度を検出する3つのPMDモニタを順次切り替えて用いるようにしている。このPMDモニタの切り替えは、モニタ強度に対してしきい値Th1,Th2が予め設定され、例えば、モニタ強度が増大する場合には、B/8Hz成分の強度を検出するPMDモニタの検出値(曲線BPF0.125/T)が、図13で上側のしきい値Th1まで増加すると、B/4Hz成分の強度を検出するPMDモニタに切り替えられ、その後、該PMDモニタの検出値(曲線BPF0.25/T)がしきい値Th1まで増加すると、B/2Hz成分の強度を検出するPMDモニタに切り替えられる。また例えば、モニタ強度が減少する場合には、図13で下側のしきい値Th2を基準として、B/2Hz成分の強度を検出するPMDモニタ、B/4Hz成分の強度を検出するPMDモニタ、B/8Hz成分の強度を検出するPMDモニタへと順次切り替えられる。
【0011】
このように、モニタ強度に対して予め設定したしきい値Th1,Th2に従って、複数のPMDモニタを順次切り替え制御することにより、PMDの補償可能範囲を1タイムスロット以上に拡大することができる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような複数のPMDモニタを切り替え制御する従来のPMD補償技術では、PMDモニタを切り替えるために予め設定されるしきい値として絶対的な値が用いられるため、PMD補償を高い精度で行うことが難しいという問題点があった。すなわち、各PMDモニタで検出される各々の周波数成分の強度は、伝送路のPMD以外にも、例えば、温度変動等による波長分散や、偏波モード間の光強度の分岐比等のパラメータの経時的変化に従って変動することが知られている。PMDモニタの切り替え制御の基準となるしきい値を、相対的な値ではなく絶対的な値を用いて予め設定してしまうと、上記のようなPMD以外の要因による強度変動に対して、しきい値の設定が不適切なものとなり、精度の高いPMD補償の実現が難しくなってしまう。
【0013】
また、複数のPMDモニタを用いる従来の補償技術では、強度検出する周波数成分として、信号光の伝送速度Bの1/2倍、1/4倍、1/8倍などといった特定の周波数にしなければならないという制約がある。この制約は、信号光の伝送速度が変化するようなシステムへの適用を難しくするとともに、補償範囲をより広くするためには、数多くの周波数成分をモニタしなければならないという欠点がある。
【0014】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、信号光に生じた偏波モード分散(PMD)を広い範囲に亘って高い精度で補償できるようにした偏波モード分散補償方法および偏波モード分散補償装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明によるPMD補償方法は、まず、伝送路を介して入力される信号光に生じたPMDを補償する。そして、補償後の信号光におけるベースバンドスペクトル中の複数の異なる特定周波数成分を抽出した後に、該各特定周波数成分の強度をそれぞれ検出する。このとき、抽出される複数の異なる特定周波数は、強度検出時における検出感度の不確定幅に応じて決められる。次に、検出した各特定周波数成分の強度うちの相対的に低周波側の特定周波数成分の強度を用い、該低周波側の特定周波数成分の強度が最大値に近づくように、前述したPMDの補償量をフィードバック制御し、該低周波側の特定周波数成分の強度を用いたフィードバック制御が収束した後に、順次、相対的に高周波側の特定周波数成分の強度に切り替え、該高周波側の特定周波数成分が最大値に近づくように、PMDの補償量をフィードバック制御する
【0016】
このようなPMD補償方法では、複数の異なる特定周波数成分の強度が各々の最大値に収束するようにPMD補償量を制御することで、信号光のPMD量の変化に正確に追随したフィードバック制御が可能になる。このとき、強度検出感度の不確定幅に応じて各特定周波数成分を決め、フィードバック制御に用いる特定周波数成分の強度を、低周波側から高周波側に順次切り替えるようにすることで、従来のような絶対的なしきい値を基準とするのではなく、強度の最大値収束状態を基準にしてPMDモニタの切り替えが行われるため、高い精度のPMD補償が実現できるようになる。
【0017】
本発明によるPMD補償装置は、伝送路のPMDによる信号光への影響を補償するPMD補償装置において、伝送路を介して入力される信号光に生じたPMDを補償する偏波モード分散補償手段と、該偏波モード分散補償手段から出力される信号光におけるベースバンドスペクトル中の複数の異なる特定周波数成分を抽出する特定周波数成分抽出手段と、該特定周波数成分抽出手段で抽出された各特定周波数成分の強度をそれぞれ検出する強度検出手段と、該強度検出手段で検出される各特定周波数成分の強度うちの相対的に低周波側の特定周波数成分の強度を用い、該低周波側の特定周波数成分の強度が最大値に近づくように、偏波モード分散補償手段における偏波モード分散補償量をフィードバック制御し、該低周波側の特定周波数成分の強度を用いたフィードバック制御が収束した後に、順次、相対的に高周波側の特定周波数成分の強度に切り替え、該高周波側の特定周波数成分が最大値に近づくように、偏波モード分散補償手段における偏波モード分散補償量をフィードバック制御する補償量制御手段と、を備える。また、特定周波数成分抽出手段は、強度検出手段での検出感度の不確定幅に応じて、抽出する複数の異なる特定周波数を決める
【0018】
かかる構成では、偏波モード分散補償手段で補償された信号光について、複数の異なる特定周波数成分の強度が特定周波数成分抽出手段および強度検出手段によって検出される。補償量制御手段では、検出された各特定周波数成分の強度を用いて、各々の強度が最大値に収束するように、偏波モード分散補償手段におけるPMD補償量のフィードバック制御が行われる。このとき、強度検出感度の不確定幅に応じて各特定周波数成分を決め、フィードバック制御に用いる特定周波数成分の強度を、低周波側から高周波側に順次切り替えるような制御を行うことで、従来のような絶対的なしきい値を基準とするのではなく、強度の最大値収束状態を基準にしてPMDモニタの切り替えが行われるため、高い精度のPMD補償が実現できるようになる。
【0019】
さらに、上記PMD補償装置について、特定周波数成分抽出手段の具体的な構成としては、特定周波数成分に対応した透過中心周波数を持つバンドパスフィルタを有し、該バンドパスフィルタを用いて特定周波数成分の抽出を行うようにしてもよい。または、特定周波数成分に対応したカットオフ周波数を持つローパスフィルタを有し、該ローパスフィルタを用いて特定周波数成分の抽出を行うようにしても構わない。
【0020】
このような具体的な構成によれば、信号光におけるベースバンドスペクトル中の複数の特定周波数成分がバンドパスフィルタまたはローパスフィルタによって抽出されるようになる。特に、ローパスフィルタを用いて抽出する場合には、広範囲の周波数成分の強度を積分した値が得られるため、より安定したPMD補償を実現することが可能になる。
【0021】
また、前述したPMD補償装置の偏波モード分散補償手段は、信号光について、2つの偏波モードへの光強度の分岐比を決定する偏波制御部と、2つの偏波モード間に光遅延差を与える光遅延部とを有し、偏波制御部の分岐比および光遅延部の光遅延差の組み合わせに応じて偏波モード分散補償量が設定されるようにしてもよい。
【0022】
かかる構成では、伝送路を介して入力される信号光の偏波状態が偏波制御部によって調整されることで、信号光の2つの偏波モードへの光強度の分岐比が設定されると共に、その信号光が光遅延部を通過することで2つの偏波モード間に光遅延差が与えられ、PMDの補償量が所要の値に設定されるようになる。
【0023】
さらに、上記PMD補償装置の具体的な構成として、偏波モード分散補償手段は、光遅延差を変えることが可能な可変光遅延素子と、該可変光遅延素子への入力光の偏波方向を変える波長板とを有し、補償量制御手段は、可変光遅延素子の光遅延量および波長板の位置の少なくとも一方をフィードバック制御するようにしてもよい。あるいは、偏波モード分散補償手段は、直列に接続された複数の偏波モード分散補償ユニットを有し、該各偏波モード分散補償ユニットは、予め設定した光遅延差を与える固定光遅延素子と、該固定光遅延素子への入力光の偏波方向を変える波長板とを含み、補償量制御手段は、前記各偏波モード分散補償ユニットの波長板の位置をそれぞれフィードバック制御するようにしても構わない。
【0024】
上述したような本発明によるPMD補償装置は、各種光伝送システムへの適用が可能である。この場合、偏波モード分散補償装置は、光送信機と光受信機の間を接続する伝送路の途中に設けられる。このような光伝送システムでは、伝送路を伝搬する信号光のPMDが広い範囲で確実に補償されるため、高速信号光を長距離に亘って伝送することが可能になる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明による偏波モード分散(PMD)の補償技術を理解するうえで有用と思われるので、PMDによる伝送光波形劣化について説明する。ここでは、例えば40Gb/sの光伝送システムについて行った実験結果を用いてPMDによる伝送光波形劣化を概説することにする。なお、この実験結果は、H.Ooi et al., OFC'99, Technical Digest WE5 pp.86-88, 1999.で報告されているので、詳しい内容については上記の文献を参照されたい。
【0026】
図14は、PMDによる伝送光波形劣化を測定するための実験系の概要を示す図である。
図14の実験系では、光送信機OSから送出された伝送速度40Gb/sのNRZ(Non-Return-to-Zero)信号光に対して、偏波制御器100にて各偏波モード間の光強度の分岐比γ(0≦γ≦1)が変えられ、さらに、PMDエミュレータ(PMD emulator)200によってPMDが加えられ、そして、光受信機ORにおいて復調される。ここで、PMDエミュレータ200は、伝送路で生じるPMDを模擬するためのものであって、偏波ビームスプリッタ(PBS)で分離した直交する偏波モード間に、光遅延差ΔτTを与える一般的な装置である。
【0027】
図15は、光遅延差ΔτTを変化させたときのパワーペナルティ(受信感度劣化)を示す図である。また、図16は、図15の場合における伝送光波形の変化を示した図である。なお、伝送光波形の劣化が最大となるように、ここでは偏波制御器100において光強度の分岐比γが0.5に設定されている。
【0028】
各図に示すように、PMDエミュレータ200による光遅延差ΔτTが大きくなる、すなわち、伝送路で生じるPMDが増大するほど、伝送光波形の劣化が著しくなる。例えば、伝送後のパワーペナルティが1dB以下を伝送可能の基準とした場合には、PMD耐力(PMDの許容値)は約11psとなる(図15)。
【0029】
上記のようなパワーペナルティの値について考察すると、既設の比較的古いファイバには、単位長さ当たり0.5〜2ps/km1/2を超える大きなPMD値をもつと言われているものもあり、上記のPMD耐力から計算すると、40Gb/sでの伝送距離は、3〜50km程度に制限されることになる。ただし、最悪のPMD値を平均(許容値)の3倍と仮定している。このような既設の伝送路環境において、超高速の長距離光伝送を実現するためには、PMD補償技術の適用が必須となる。また、伝送路のPMDは、温度やストレス等の伝送路環境の変化によっても経時的に変動するため、システム運用中にPMDの状態をモニタし、フィードバック制御を行う自動PMD補償技術が必要とされる。
【0030】
そこで、本発明者らは、上述したように、例えば40Gb/s信号光について、受信ベースバンド信号中の20GHz成分強度をモニタし、該モニタ強度に基づいてPMD補償器をフィードバック制御する自動PMD補償技術を提案した(特願平11-515959号や、H. Ooi et al., OFC'99, Technical Digest WE5 pp.86-88, 1999.等参照)。この補償技術は、本発明によるPMD補償の基本となる技術であるので、ここで具体的に説明しておく。
【0031】
図17は、上記の補償技術に用いられるPMDモニタ系の一例を示す図である。なお、ここでも伝送速度40Gb/sのNRZ信号光が伝送されるものとする。
【0032】
図17のPMDモニタ系では、光送信機OSで生成された40Gb/sのNRZ信号光に対して、偏波制御器100により各偏波モード間の光強度の分岐比γが変えられ、PMDエミュレータにより光遅延差ΔτTが与えられ、該信号光が受信端のPMDモニタ300に送られる。このPMDモニタ300では、例えば、光プリアンプ301で所要のレベルまで増幅された信号光が、受光器(PD)302で電気信号に変換され、狭帯域バンドバスフィルタ(BPF)303で20GHz成分が抽出されて、パワーメータ304で20GHz成分の強度が検出される。
【0033】
図18は、図17のPMDモニタ系を用い、光強度の分岐比γ=0.5および0.25にそれぞれ設定して測定した20GHz成分強度のΔτT依存性を示す図である。また、図19は、光遅延差ΔτT=10psおよび20psにそれぞれ設定して測定した20GHz成分強度のγ依存性を示す図である。
【0034】
図18に示すように、20GHz成分強度は、光遅延差ΔτT=0のときに最大で、ΔτTが25psまで増大するに従って単調減少することが分かる。また、図19に示すように、20GHz成分強度は、PMDによる波形劣化が最悪となるγ=0.5において最小となることが分かる。これらの20GHz成分強度の実測値は、一般に知られている理論式のK(fe=20GHz)=1−4γ(1−γ)sin2(πfeΔτT)によく一致する。この結果から、20GHz成分強度が最大になるようにPMDの補償量をフィードバック制御することで、波形劣化を補償できることが分かる。
【0035】
図20は、40Gb/s光伝送システムについて上記の補償技術を適用したときの実験系を示す図である。なお、この実験系の構成は、前述のH. Ooi et al., OFC'99, Technical Digest WE5 pp.86-88, 1999.に記載されたものと同様である。
【0036】
図20に示す実験系では、伝送路のPMD(ここではPMDエミュレータ200によって光遅延差ΔτTを与えている)を補償するためのPMD補償ユニット400として、偏波制御器401と偏波保持ファイバ(polarization-maintaining fiber:以下、PMFとする)402が用いられる。なお、PMF402では、偏波モード間に光遅延差ΔτCが与えられる。PMD補償ユニット400の出力端に接続したPMDモニタ300では、検出した20GHz成分の強度情報が図示しないA/Dコンバータを介してパソコン(PC)に記録され、このパソコンのソフトウェア処理によって、20GHz成分の強度が最大となるように、偏波制御器401内のλ/4波長板(QWP)およびλ/2波長板(HWP)がフィードバック制御される。
【0037】
図21および図22は、上記図20の実験系を用いてPMD補償を行った場合とPMD補償を行わない場合の双方について測定した、伝送路のPMDに相当する光遅延差ΔτTに対するパワーペナルティおよび伝送光波形を示すものである。なお、偏波モード間の光強度の分岐比γは、PMDによる波形劣化が最悪となる0.5に設定した。
【0038】
各図に示すように、20GHz成分の強度情報を基に偏波制御器401をフィードバック制御してPMDの補償を行うことで、伝送特性が改善されることが分かる。具体的には、図21にあるように、パワーペナルティが1dB以下となるPMD耐力の値がPMD補償無しの場合には約11psであったが、PMD補償を行うことによって約23psまで拡大されていることが分かる。実際の伝送路ファイバで生じるPMD量は伝送距離の平方根に比例するため、PMD耐力の2倍以上の拡大は、PMDによる伝送制限距離の4倍以上の拡大に相当する。例えば、伝送路の平均PMD係数を0.5ps/km1/2とすると、上記のようなPMD補償を行うことによって、伝送制限距離が54kmから240kmに拡大されることになる。ただし、ここでは最悪条件でのPMDの値が平均値(許容値)の3倍である仮定している。この仮定は、一般に、敷設伝送路におけるPMDがマックスウェル分布をしていることに基づくものである。
【0039】
しかし、このようなPMDの補償技術においては、上述したようにPMDの補償可能範囲の上限が信号光の1タイムスロット(40Gb/sでは25ps)に制限されてしまうという課題がある。例えば、古い既存の伝送路の平均PMD係数として2ps/km1/2を例にとって具体的に考えてみる。最大の伝送路距離として現行の10Gb/s光伝送システムと同等の約600kmを想定した場合、最悪条件でのPMDの値が平均値(許容値)の3倍である仮定して算出した、伝送路で発生するPMDの最悪値は、
2ps/km1/2×(600km)1/2×3≒150ps
まで大きくなることがあり得る。この値は、上記の補償技術における補償可能範囲の上限値、例えば40Gb/s信号光について25psという値よりも遥かに大きい。したがって、PMDの補償可能範囲の拡大が必要となるのである。そこで、本発明は、複数のPMDモニタを組み合わせることで、補償可能範囲の拡大を図ると共に、上述の図13で説明したような公知技術とは異なる手法に従って各PMDモニタを切り替え制御することで、高い精度のPMD補償を実現しようとするものである。
【0040】
以下、本発明によるPMD補償技術について詳しく説明していく。
図1は、本発明によるPMD補償装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。なお、図1には、第1実施形態のPMD補償装置を用いて構成した光伝送システムの要部も示してあり、以下の他の実施形態における構成図においても同様とする。
【0041】
図1において、PMD補償装置1Aは、伝送路LのPMDによる信号光への影響を補償するものであって、ここでは、光受信機OR前段の伝送路Lの途中に設けられる。伝送路Lは、光送信機OSと光受信機ORの間を接続する一般的な光ファイバである。なお、この伝送路Lの途中には、例えば光中継器や波長分散補償器等の各種光デバイスが接続されていてもよい。光送信機OSは、伝送速度B(b/s)の信号光(例えば、40Gb/sのNRZ信号光など)を生成して伝送路Lに送出する公知の光送信機である。光受信機ORは、PMD補償装置1Aから出力されるPMD補償後の信号光を受信処理可能な公知の光受信機である。
【0042】
PMD補償装置1Aは、偏波制御部10、可変PMD補償部11、光カプラ12A,12B、PMDモニタ13A,13Bおよび制御回路14を有する。偏波制御部10は、伝送路Lから送られる任意の偏波状態の信号光について、後段の可変PMD補償部11に入力する際の偏波方向の調整(軸合わせ)を行うものであり、例えば、1/4波長板(λ/4板)10aおよび1/2波長板(λ/2板)10bを有する。1/4波長板10aおよび1/2波長板10bは、図示しないがアクチュエータをそれぞれ備えており、制御回路14から送られる制御信号に従って外部から駆動できるようになっている。
【0043】
可変PMD補償部11は、例えば、偏波ビームスプリッタ(PBS)11a,11cおよび光遅延器11bを有する。PBS11aは、入力側に位置する分岐型光導波路の分岐部に設けられ、偏波制御部10からの信号光を2つの直交する偏波成分に分離する。このPBS11aで分離された一方の偏波成分は、光遅延器11bを介してPBS11cに送られ、他方の偏波成分はPBS11cに送られる。光遅延器11bは、通過する光を遅延させるものであって、その遅延量が外部からの制御信号により可変である公知の光デバイスである。具体的には、例えば、可変光遅延線(Variable optical delay line)等を使用することができる。この光遅延器11bによって、2つの偏波成分間に光遅延差ΔτCが与えられる。PBS11cは、出力側に位置する分岐型光導波路の分岐部に設けられ、PBS11aおよび光遅延器11bから出力される各偏波成分を、直交状態のまま合波して光カプラ12Aに送る。
【0044】
光カプラ12Aは、可変PMD補償部11からの出力される信号光を2分岐して、一方の分岐光を光受信機ORに送り、他方の分岐光を光カプラ12Bに送る。光カプラ12Bは、光カプラ12Bからの分岐光をさらに2分岐して、各分岐光をPMDモニタ13A,13Bにそれぞれ送る。
【0045】
各PMDモニタ13A,13Bは、例えば図2のブロック図に示すように、受光器(PD)13a、バンドパスフィルタ(BPF)13bおよび強度検出器13cをそれぞれ有する。PD13aは、光カプラ12Bからの分岐光を電気信号に変換して出力する。BPF13bは、PD13aで変換された電気信号に含まれる特定周波数成分を抽出する狭帯域のバンドパスフィルタである。ここでは、PMDモニタ13Aに用いられるBPF13bの通過帯の中心周波数をf1とし、PMDモニタ13Bに用いられるBPF13bの通過帯の中心周波数をf2(<f1)とする。なお、各周波数f1,f2の設定については後述することにする。強度検出器13cは、BPF13bで抽出された周波数成分の強度を検出し、その検出結果を示す強度検出信号を制御回路14に送る。
【0046】
制御回路14は、各PMDモニタ13A,13Bから出力される各強度検出信号に基づいて、可変PMD補償部11から出力される信号光のPMD量を判断し、PMDの補償量が最適となるように、偏波制御部10および可変PMD補償部11をフィードバック制御する。なお、制御回路14で行われる具体的な処理動作については後述する。
【0047】
次に、第1実施形態の動作について説明する。
まず、本発明によるPMD補償技術の基本原理を、第1実施形態の構成に対応させて詳しく説明する。
【0048】
図3は、2つのPMDモニタ13A,13Bを用いた場合の基本原理を示す図である。なお、横軸は、信号光のPMD量ΔτTを表し、縦軸は、各PMDモニタ13A,13Bで検出される周波数f1,f2成分の強度(モニタ強度)を表している。
【0049】
図3に示すように、各PMDモニタ13A,13Bで検出されるモニタ強度は、PMD量ΔτTの変化に対し、BPF13bで抽出される周波数f1,f2成分(f1>f2)に対応して周期的に変化する。具体的には、周波数の高いPMDモニタ13Aで検出されるモニタ強度の周期の方が、周波数の低いPMDモニタ13Bで検出されるモニタ強度の周期よりも小さくなる。ここでは、PMD量ΔτTの増加に伴い、PMDモニタ13Aのモニタ強度が最初に零(または極小)になるPMD量をT1とし、PMDモニタ13Bのモニタ強度が最初に零(または極小)になるPMD量をT2とする。
【0050】
ここで、まず、初期状態(PMD補償無し)における伝送後の信号光に生じるPMD量がΔτT1(>T1)であるときに、モニタ強度を最大化するフィードバック制御を行った場合を考える。この場合、PMDモニタ13Aのモニタ強度を用いてフィードバック制御を行うと、図3のA1点に示すように補償後のPMD量ΔτTが大きくなる方向に自動制御されるため、波形劣化が大きくなり、正常な補償動作が行われなくなる。これに対して、PMDモニタ13Bのモニタ強度を用いて制御を行うと、A2点に示すように補償後のPMD量ΔτTが小さくなる方向に自動制御されるため、波形劣化が改善されるようになる。よって、上記のような状況においては、抽出周波数の低い側のPMDモニタ13Bを用いてPMD補償量のフィードバック制御を行うようにする。
【0051】
ここで、図3の縦軸付近に示すように、各PMDモニタは、検出感度の不確定幅を有することが知られている。この検出感度不確定幅は、PMDモニタに固有であって、PMD以外の要因や偏波モード間の光強度の分岐比γ等による短時間内での不確定幅分を含むものである。このようなPMDモニタの検出感度不確定幅を考慮すると、PMDモニタ13Bのモニタ強度を用いたフィードバック制御の動作点は、図のD点およびE2点の間(例えばB2点)に収束するようになる。
本発明では、このフィードバック制御が収束するタイミングに着目してPMDモニタの切り替えが行われる。すなわち、PMDモニタ13Bのモニタ強度がD〜E2の間で安定した後に、PMDモニタ13Aのモニタ強度を用いたフィードバック制御に切り替えられる。具体的には、例えば、フィードバック制御が収束するのに要する所要の収束時間を経過したこと、あるいは、所定の時間内におけるモニタ強度の変動量が所定の値以下になったことなどを基準として、PMDモニタの切り替えを行うことが可能である。PMDモニタ13BからPMDモニタ13Aへの切り替えを行った結果、フィードバック制御の動作点はB2点からB1点に移る。その後は、PMD量ΔτTが小さくなる方向に自動制御されるため、最終的には、PMDモニタの検出感度不確定幅に対応したD点およびE1点の間(例えばC1点)に動作点は収束し、PMD量はΔτT2まで補償されるようになる。
【0052】
ここで、許容PMD量(PMD耐力)が、例えば図3の横軸付近に示される範囲である場合、PMDモニタ13Bのモニタ強度のみを用いてフィードバック制御を行ったとすると、PMD量不確定幅a2に示すように、補償後のPMD量が許容PMD変動量を超えてしまう可能性がある。しかし、PMDモニタ13Aを併用することで、PMD不確定幅a1に示すように許容PMD量以下に補償後のPMD量を抑えることができる。
【0053】
このように、本発明によるPMD補償技術では、複数のPMDモニタの切り替えを、従来のようなしきい値(絶対的な値として予め設定される)を基準として行うのではなく、PMDモニタの検出感度不確定幅に対応したフィードバック制御の収束状態を基準として、すなわち、モニタ強度が最大値収束範囲内に安定したことに基づいて行うようにしたことで、高い精度の自動PMD補償が実現されるようになる。
【0054】
PMDモニタ13Aで抽出される周波数f1成分の設定範囲としては、PMDモニタの検出感度不確定幅に応じて決まるPMD量不確定幅a1が許容PMD量に一致する場合が下限となる。また、PMDモニタ13Bで抽出される周波数f2成分の設定範囲としては、PMDモニタ13BのPMD量不確定幅a2が、PMDモニタ13Aのモニタ強度が零(または極小)になるPMD量T1に一致する点が下限となる。したがって、周波数f1,f2を両方とも下限に設定した場合に、PMDモニタ13Bのモニタ強度が零(または極小)になるPMD量T2が、PMDの補償可能範囲の上限となる。
【0055】
次に、PMD補償装置1Aの具体的な動作について説明する。
PMD補償装置1Aでは、伝送路LのPMDにより偏波モード間に光遅延差ΔτTの生じた伝送速度B(b/s)の信号光に対して、偏波制御部10の1/4波長板10aおよび1/2波長板10bによって与えられる方位角に従って偏波方向の調整(軸合わせ)が行われる。この偏波制御部10で調整される信号光の偏波方向に対応して、可変PMD補償部11のPBS11aで分離される2つの偏波モード間の光強度の分岐比γが決定される。可変PMD補償部11では、PBS11aで分離された一方の偏波成分が光遅延器11bで遅延されてPBS11cに送られ、他方の偏波成分は遅延されることなくPBS11cに送られて、各偏波成分がPBS11cで合波される。これにより、信号光の直交する2つの偏波モード間に光遅延差ΔτCが与えられる。この光遅延差ΔτCが伝送路LでのPMD量ΔτTに対して逆符号で絶対値がほぼ一致するように、偏波制御部10の方位角および光遅延器11bの光遅延量がフィードバック制御されることで、PMDの補償が行われる。
【0056】
このフィードバック制御は、可変PMD補償部11から出力される信号光の一部を用いて行われる。具体的には、可変PMD補償部11からの出力光の一部が光カプラ12Aで分岐され、さらに光カプラ12Bで2分岐されて、各PMDモニタ13A,13Bに送られる。PMDモニタ13Aでは、光カプラ12Bからの分岐光がPD13aで光電変換され、電気信号に含まれる周波数f1成分がBPF13bで抽出された後に、その周波数f1成分の強度が強度検出器13cで検出される。また、PMDモニタ13Bでも同様にして、周波数f2成分の強度が検出される。そして、PMDモニタ13A,13Bで検出された周波数f1,f2成分の各モニタ強度が制御回路14に送られ、制御回路14では、各周波数f1,f2成分のモニタ強度に基づいたフィードバック制御が実施される。
【0057】
図4は、PMD補償装置1Aを用いてPMD補償を行った場合における、PMD量ΔτTに対するパワーペナルティの変化を示す図である。図4に示すように、信号光のPMD量ΔτTに応じて、偏波制御部10の方位角および光遅延器11bの光遅延量をフィードバック制御し、PMD補償量を最適化することで、PMDの補償可能範囲にわたってパワーペナルティがほぼ零になることが分かる。
【0058】
ここで、制御回路14の具体的な処理動作について説明する。ここでは、システム運用開始時などにおける初期設定モードと、システム運用中におけるトラッキングモードとに分けて、制御回路14の処理動作を考えることにする。
【0059】
初期設定モードでは、偏波制御部10および可変PMD補償部11の設定を最適値にして、運用開始後のフィードバック制御が正しく行われるようにしておく必要がある。
【0060】
初期設定モードにおけるアルゴリズムとしては、例えば、抽出周波数の低い側のPMDモニタ13Bのモニタ強度のみを用いた制御方法が可能である。
具体的には、まず、光送信機OSから初期設定用のテスト信号光を送出し、偏波制御部10の1/4波長板10aおよび1/2波長板10bをそれぞれスキャンしながら、PMDモニタ13Bのモニタ強度を測定する。そして、該モニタ強度の測定結果を基に、PMDモニタ13Bのモニタ強度が最大となる状態を判断し、その状態が実現されるように1/4波長板10aおよび1/2波長板10bの位置を設定する。次に、可変PMD補償部11の光遅延器11bの光遅延量ΔτCをスキャンしながら、PMDモニタ13Bのモニタ強度を測定する。そして、該モニタ強度の測定結果を基に、PMDモニタ13Bのモニタ強度が最大となる状態を判断し、その状態が実現されるように光遅延量ΔτCを設定する。このようなアルゴリズムによって、偏波制御部10および可変PMD補償部11がフィードバック制御に適した状態に設定される。
【0061】
また、初期設定モードにおける別のアルゴリズムとしては、例えば、PMDモニタ13A,13Bの両方のモニタ強度を用いた制御も可能である。
具体的には、まず、光送信機OSから初期設定用のテスト信号光を送出し、偏波制御部10の1/4波長板10aおよび1/2波長板10bをそれぞれスキャンしながら、PMDモニタ13AおよびPMDモニタ13Bの各モニタ強度を測定する。そして、該モニタ強度の測定結果を基に、PMDモニタ13Bのモニタ強度が最大となる1/4波長板10aおよび1/2波長板10bの位置を基準として、予め設定した±α°のスキャン範囲内について、PMDモニタ13Aのモニタ強度が最大になる状態を判断し、その状態が実現されるように1/4波長板10aおよび1/2波長板10bの位置を設定する。次に、光遅延器11bの光遅延量ΔτCをスキャンしながら、PMDモニタ13AおよびPMDモニタ13Bの各モニタ強度を測定する。そして、該モニタ強度の測定結果を基に、PMDモニタ13Bのモニタ強度が最大となる1/4波長板10aおよび1/2波長板10bの位置を基準として、予め設定した±β°のスキャン範囲内について、PMDモニタ13Aのモニタ強度が最大になる状態を判断し、その状態が実現されるように光遅延量ΔτCを設定する。このようなアルゴリズムによって、偏波制御部10および可変PMD補償部11がフィードバック制御により適した状態に設定される。
【0062】
上記のようにして初期設定が完了した後にシステムの運用が開始されると、前述の図3を用いて説明したPMD補償の基本原理に従って、2つのPMDモニタ13A,13Bを切り替えながら、各々のモニタ強度が最大になるようにPMDの補償量がフィードバック制御される。システム運用中においては、温度等の環境変化によるPMDの変動に追随して常に最適なPMD補償が実現されるように、偏波制御部10および可変PMD補償部11の設定をトラッキング制御する必要がある(トラッキングモード)。このトラッキング制御の一例としては、PMD補償のフィードバック制御について、モニタ強度が最大となる設定の周辺で光遅延量ΔτCに影響を及ぼすパラメータを微小変化させて(ディザリングさせて)、新しい最大点を自動的に検出する制御が可能である。
【0063】
トラッキングモードにおける具体的なアルゴリズムとしては、例えば、通常は1/4波長板10aおよび1/2波長板10bに対するディザリングを行い、一定時間毎に光遅延器11bの光遅延量ΔτCに対するディザリングを差し挟み、各PMDモニタ13A,13Bのモニタ強度が最大になるように各々の設定パラメータを最適化する制御が可能である。
【0064】
また、トラッキングモードにおける別のアルゴリズムとしては、1/4波長板10a、1/2波長板10bおよび光遅延量ΔτCに対するディザリングを順次行うようにする制御も可能である。例えば、1/4波長板10a→1/2波長板10b→光遅延量ΔτC→1/4波長板10a→…の順にディザリングを繰り返し、各PMDモニタ13A,13Bのモニタ強度が最大になるように各々の設定パラメータを最適化する制御としてもよい。
【0065】
上記のようなトラッキングモードの各アルゴリズムにおいて、制御回路14は、各PMDモニタ13A,13Bからの強度検出信号をそれぞれ受信し、各々のモニタ強度に応じてフィードバック制御に用いる一方のPMDモニタを判断することになる。この際、通常は設定パラメータが初期設定モードで最適化されているので、ディザリングを実施してもPMD量ΔτTの変化は、高周波側のPMDモニタ13Aのモニタ強度が最小になるまでの範囲(図3においてΔτTがT1を超えない範囲)で収まるものと考えられるので、このような場合には高周波側のPMDモニタ13Aのモニタ強度を選択すればよい。しかし、突発的な温度等の環境変化により伝送路PMD量ΔτTが大きく変化してT1を超えてしまう可能性もある。このような場合、各PMDモニタ13A,13Bのモニタ強度は、例えば図3のA1点、A2点に示すように、モニタ強度を最大にするフィードバック制御を行うことで、PMD量の変化方向に対する各モニタ強度の変化方向(各点の移動方向)が相反するようになることが分かる。そこで、このようなときには、低周波側のPMDモニタ13Bのモニタ強度を優先的に選択してフィードバック制御を行うというアルゴリズムを制御回路14に加えておくことが有効である。
【0066】
上述したように第1実施形態のPMD補償装置1Aによれば、2つのPMDモニタ13A,13Bの切り替えを、絶対値として予め設定したしきい値を基準にして行うのではなく、モニタ強度が最大値に収束した状態を基準にして行うようにしたことで、伝送路LにおけるPMDの変化に正確に追随したフィードバック制御が行われるようになるため、高い精度のPMD補償を実現することができる。また、各PMDモニタ13A,13Bで抽出する周波数f1,f2成分の設定は、従来のように伝送速度の1/2倍、1/4倍といった特定の周波数に制約されることなく、PMDモニタの検出感度不確定幅に応じて決めることができるため、例えば、信号光の伝送速度が変化するようなシステムへの適用が可能であり、かつ、各PMDモニタの周波数差を最大限に確保できるため、2つのPMDモニタでも広い補償可能範囲を実現することができる。これにより、40Gb/s等の超高速信号光を長距離に亘って伝送できる光伝送システムの実現が可能になる。
【0067】
次に、第1実施形態の変形例について説明する。
図5は、第1実施形態の変形例にかかるPMD補償装置の構成を示すブロック図である。
【0068】
図5において、本PMD補償装置1Bは、上述した第1実施形態のPMD補償装置1Aの構成について、制御回路14に相当する機能を偏波制御部10および可変11に内蔵させたものである。具体的には、1/4波長板10aおよび1/2波長板10bを制御する制御回路10cを備えた偏波制御部10’を設けると共に、光遅延器11bを制御する制御回路11dを備えた可変PMD補償部11’を設け、PMDモニタ13A,13Bから出力される各強度検出信号が、偏波制御部10’の制御回路10cおよび可変PMD補償部11’の制御回路11dにそれぞれ送られるようにする。上記以外の他の部分の構成および本PMD補償装置1Bが適用される光伝送システムの構成は、第1実施形態の場合と同様であるため説明を省略する。
【0069】
上記のような構成のPMD補償装置1Bでは、PMDモニタ13A,13Bの各モニタ強度を用いたフィードバック制御が、偏波制御部10’および可変PMD補償部11’の各制御回路10cおよび11dによりそれぞれ行われるようになる。各々の制御回路10c,11dの制御動作は、上述した第1実施形態の制御回路14の制御動作と基本的に同様であって、フィードバック制御の対象となる設定パラメータが、偏波制御部10’の制御回路10cは1/4波長板10aおよび1/2波長板10bの各位置となり、可変PMD補償部11’の制御回路11dは光遅延器の光遅延量ΔτCの位置となる点が異なるだけである。
【0070】
このように、偏波制御部10’および可変PMD補償部11’が制御回路をそれぞれ備えることで、第1実施形態の場合に比べて、例えば偏波制御部10’または可変PMD補償部11’の交換やアップグレード等を容易に行うことが可能になる。
【0071】
次に、第1実施形態の別の変形例について説明する。
図6は、第1実施形態の別の変形例にかかるPMD補償装置の構成を示すブロック図である。
【0072】
図6において、本PMD補償装置1Cは、上述の図5に示した変形例の構成について、抽出周波数の高い側のPMDモニタ13Aからの検出強度信号のみが偏波制御部10’の制御回路10cに対して送られ、抽出周波数の低い側のPMDモニタ13Bからの検出強度信号のみが可変PMD補償部11’の制御回路11dに対して送られるようにしたものである。上記以外の他の部分の構成および本PMD補償装置1Bが適用される光伝送システムの構成は、図5の変形例の場合と同様であるため説明を省略する。
【0073】
上記のような構成のPMD補償装置1Cでは、PMDモニタ13Aの周波数f1成分のモニタ強度を用いて、1/4波長板10aおよび1/2波長板10bの各位置がフィードバック制御され、PMDモニタ13Bの周波数f2成分のモニタ強度を用いて、光遅延器11bの光遅延量ΔτCがフィードバック制御されるようになる。
【0074】
このように、抽出周波数の高い側のモニタ強度を用いて偏波制御部10’を制御し、抽出周波数の低い側のモニタ強度を用いて可変PMD補償部11’を制御することによって、より高速に応答するPMD補償が可能になる。すなわち、偏波制御部10’に要求される応答速度は、可変PMD補償部11’への入射光の軸合わせを高速に行う必要があるため、可変PMD補償部11’に要求される応答速度に比べて速くなるものと考えられる。このため、フィードバック制御の収束性がより速い高周波側のモニタ強度のみを用いて偏波制御部10’を制御すれば、偏波制御部10’の応答速度を下げることなく設定パラメータを最適化することができるのである。
【0075】
次に、本発明によるPMD補償装置の第2実施形態について説明する。
図7は、本発明によるPMD補償装置の第2実施形態を示すブロック図である。
【0076】
図7において、本PMD補償装置2Aは、光送信機(図示は省略)から伝送路Lを介して送られてくる伝送速度B(b/s)の信号光(例えば、40Gb/sのNRZ信号光など)が順次入力される多段接続されたPMD補償ユニット201〜20Nと、N段のPMD補償ユニット201〜20Nを通過して光受信機ORに送られる信号光の一部を分岐する光カプラ23Aと、その光カプラ23Aの分岐光をさらに2分岐する光カプラ23Bと、光カプラ23Bの一方の分岐光から周波数f1成分を抽出してその強度を検出するPMDモニタ24Aと、光カプラ23Bの他方の分岐光から周波数f2成分を抽出してその強度を検出するPMDモニタ24Bと、PMDモニタ24A,24Bで検出された各モニタ強度を用いて、各々のPMD補償ユニット201〜20Nをフィードバック制御する制御回路25と、から構成される。ここでは、上記の光カプラ23A,23Bが、第1実施形態における光カプラ12A,12Bと同様であり、また、PMDモニタ24A,24Bが、第1実施形態におけるPMDモニタ13A,13Bと同様である。
【0077】
各PMD補償ユニット201〜20Nは、偏波制御部21および固定遅延素子22をそれぞれ有する。偏波制御部21は、後段の固定遅延素子22への入力光の偏波方向を調整(軸合わせ)するものであり、例えば、1/4波長板(λ/4板)21aおよび1/2波長板(λ/2板)21bを有する。1/4波長板21aおよび1/2波長板21bは、図示しないがアクチュエータをそれぞれ備えており、制御回路25から送られる制御信号に従って外部から駆動できるようになっている。固定遅延素子22は、例えば、偏波保持ファイバ(PMF)等を用いて、偏波制御部21から出力される信号光の偏波モード間に固定の光遅延量を与えらるものである。ここでは、各PMD補償ユニット201〜20Nで与えられる各々の光遅延量をΔτC1〜ΔτCNとする。
【0078】
制御回路25は、各PMDモニタ24A,24Bからのモニタ強度に基づいて、PMD補償ユニット20Nから出力される信号光のPMD量を判断し、PMD補償量が最適となるように、各PMD補償ユニット201〜20Nをフィードバック制御する。
【0079】
次に、第2実施形態の動作について説明する。
図8は、上記のような構成のPMD補償装置2Aを用いてPMD補償を行った場合における、PMD量ΔτTに対するパワーペナルティの変化を示す図である。
【0080】
図8に示すように、例えば、伝送速度Bが40Gb/sのNRZ信号光に対して、PMDによる許容ペナルティを1dBとすると、PMD補償無しの場合のPMD耐力は約10psとなる。そこで、本PMD補償装置2Aでは、各PMD補償ユニット201〜20Nの固定遅延素子22における光遅延量ΔτC1〜ΔτCNを、例えば20ps等にそれぞれ設定する。そして、制御回路25によって、PMDモニタ24A,24Bのモニタ強度が最大になるように、各固定遅延素子22の前段に配置した偏波制御部21が、上述の図3で説明した基本原理に従ってフィードバック制御される。
【0081】
具体的には、信号光のPMD量ΔτTが、例えば20ps,40ps,…,20×Npsとなるとき、図8の横軸下方に対応させて示したような、PMD補償ユニット201〜20Nにおける光遅延量の組み合わせ(ΔτC1,ΔτC2,…,ΔτCN)が実現されるように、各PMD補償ユニット201〜20Nの偏波制御部21を制御することで、補償後のPMD量を零にすることが可能となり、PMD補償後のパワーペナルティが零になる。なお、図8には、伝送路Lで発生するPMD量ΔτTの値を正とし、それを補償する光遅延量ΔτC1〜ΔτCNの値を負として表記したが、これとは逆の符号設定も可能である。
【0082】
例えば、信号光のPMD量ΔτT=20psを補償する場合を考えると、1段目のPMD補償ユニット201の固定遅延素子22に入力される信号光の偏波方向が、固定遅延素子22で最大の光遅延が生じる方向に一致するように、偏波制御部21によって制御され、他のPMD補償ユニット202〜20Nの各固定遅延素子22に入力される信号光の偏波方向が、固定遅延素子22での光遅延量が零となる方向に一致するように、各々の偏波制御部21によって制御されることで、光遅延量の組み合わせ(ΔτC1,ΔτC2,…,ΔτCN)=(−20,0,…,0)が実現される。
【0083】
上記のような設定例の場合、光遅延量が20psの固定遅延素子22をN段接続することで、補償可能なPMD量ΔτTとしては、20ps×N+10psまで拡大できることになる。例えば、伝送路LのPMD量ΔτT=150psをPMD補償装置2Aで補償するためには、7段のPMD補償ユニットを用いればよいことになる。上記の内容を一般化した場合、許容PMD量をΔτmaxとすると、光遅延量2Δτmaxの固定遅延素子22をN段接続することで、PMDの補償可能範囲の上限が(2N+1)Δτmaxとなる。
【0084】
なお、ここでは、固定遅延素子22の光遅延量を許容PMD量の2倍に設定するようにしたが、本発明はこれに限られるものではない。図8に示したように、伝送路LのPMD量ΔτTがPMD補償ユニット201〜20Nの組み合わせによってちょうど相殺される場合(ΔτT=20ps,40ps,…,20×Nps)には、パワーペナルティの値がほぼ零となるが、伝送路LのPMD量ΔτTがそれらの値から離れてしまうと、パワーペナルティの値が上昇することが分かる。このような場合でも、PMDによる許容ペナルティ(例えば1dB等)を超えないようにする必要があり、そのためには、各段のPMD補償ユニット201〜20Nにおける固定の光遅延量の値を小さく設定するのが望ましい。ただし、これは、所要のPMD補償可能範囲を確保しようとすると、PMD補償ユニットの段装を増やすことになるため、伝送特性とシステム全体の大きさとのトレードオフを考慮して、各段の光遅延量とPMD補償ユニットの数とを決める必要がある。
【0085】
このように第2実施形態のPMD補償器によれば、偏波制御部21および固定遅延素子22からなるPMD補償ユニットを多段接続し、PMDモニタ24A,24Bのモニタ強度が最大となるように、各PMD補償ユニットの偏波制御部21をフィードバック制御することによっても、第1実施形態の場合と同様の効果を得ることが可能である。また、固定遅延素子22は、第1実施形態で用いた可変PMD補償部11に比べてデバイスの実現が比較的簡単であるため、本PMD補償装置2Aを容易に構成することができるという利点もある。
【0086】
次に、第2実施形態の変形例について説明する。
図9は、第2実施形態の変形例にかかるPMD補償装置の構成を示すブロック図である。
【0087】
図9において、本PMD補償装置2Bは、上述した第2実施形態のPMD補償装置2Aの構成について、制御回路25に相当する機能を各PMD補償ユニット201〜20Nに内蔵させたものである。具体的には、1/4波長板21aおよび1/2波長板21bを制御する制御回路25’が各PMD補償ユニット201〜20Nに設けられ、PMDモニタ24A,24Bから出力される各強度検出信号が、各々のPMD補償ユニット201〜20Nの制御回路25’にそれぞれ送られるようにする。上記以外の他の部分の構成および本PMD補償装置2Bが適用される光伝送システムの構成は、第2実施形態の場合と同様である。
【0088】
上記のような構成のPMD補償装置2Bでは、PMDモニタ24A,24Bの各モニタ強度を用いたフィードバック制御が、PMD補償ユニット201〜20Nの各制御回路25’によりそれぞれ行われるようになる。各々の制御回路25’の制御動作は、上述した第2実施形態の制御回路25の制御動作と基本的に同様であって、フィードバック制御の対象となる設定パラメータが、それぞれのユニット内にある1/4波長板21aおよび1/2波長板21bの各位置となる点が異なるだけである。
【0089】
このように、各PMD補償ユニット201〜20Nが制御回路25’をそれぞれ備えるようにしたことで、第2実施形態の場合に比べて、例えば、個々のPMD補償ユニット201〜20Nの交換やアップグレード等を容易に行うことが可能になる。
【0090】
次に、本発明によるPMD補償装置の第3実施形態について説明する。
上述した第1実施形態および第2実施形態では、抽出周波数の異なる2つのPMDモニタのモニタ強度を用いて、PMDの補償量のフィードバック制御を行うようにした場合を説明した。第3実施形態では、PMDの補償可能範囲をさらに拡大させる場合について考える。第1、2実施形態における補償可能範囲をさらに拡大させるためには、PMDモニタの検出感度を上げて不確定幅を狭くするか、若しくは、PMDモニタの数を増やせばよい。PMDモニタの検出感度不確定幅を狭くするのには一定の限界があるため、ここでは、PMDモニタの数を3つに増やして補償可能範囲のさらなる拡大を図ることを考える。
【0091】
図10は、本発明によるPMD補償装置の第3実施形態を示すブロック図である。
図10において、本PMD補償装置3の構成が上述した第1実施形態のPMD補償装置1Aの構成と異なる点は、周波数f3成分の強度を検出するPMDモニタ13Cを新たに設けると共に、光カプラ12Bに代えて、光カプラ12Aの分岐光を3分岐して各PMDモニタ13A,13B,13Cにそれぞれ送る光カプラ12B’を設けた点である。上記以外の他のPMD補償装置3の構成および該PMD補償装置3を用いた光伝送システムの構成は第1実施形態の場合と同様である。
【0092】
PMDモニタ13Cは、上述の図2に示したPMDモニタ13A,13Bの構成と同様に、受光器(PD)13a、バンドパスフィルタ(BPF)13bおよび強度検出器13cからなる。PMDモニタ13CのBPF13bは、中心周波数がf3(<f2<f1)の通過帯を持つものとする。このPMDモニタ13Cで検出されたモニタ強度は、他のPMDモニタ13A,13Bの各モニタ強度と共に制御回路14’に伝えられて、PMD補償量のフィードバック制御に用いられる。
【0093】
ここで、3つのPMDモニタを用いたPMD補償量のフィードバック制御について説明する。
図11は、PMDモニタを3つに増やすことによるPMD補償範囲の拡大の効果を説明する図である。なお、横軸は、伝送路Lにより信号光に生じるPMD量ΔτTを表し、縦軸は、各PMDモニタ13A〜13Cで検出される周波数f1〜f3成分の強度(モニタ強度)を表している。また、PMDモニタ13Cのモニタ強度が最初に零(または極小)になるPMD量をT3とする。さらに、ここでは、PMDモニタ13A〜13Cでそれぞれ抽出される各周波数f1〜f3は、許容PMD量およびPMDモニタの検出感度不確定幅から決まる最小値に設定してある。
【0094】
図11に示すような3つのPMDモニタ13A〜13Cを用いたPMD補償では、まず、PMDモニタ13Cのモニタ強度(周波数f3成分)を用いたフィードバック制御が最大値収束範囲内に安定してPMD量がT2以下になった後に、PMDモニタ13Bのモニタ強度(周波数f2成分)を用いたフィードバック制御に切り替えられる。そして、PMDモニタ13Bによるフィードバック制御が最大値収束範囲内に安定してPMD量がT1以下になった後に、PMDモニタ13Aのモニタ強度(周波数f1成分)を用いたフィードバック制御に切り替えられ、PMD量ΔτTが許容PMD量以下にされる。このように、モニタ強度が最大になる状態を基準としてPMDモニタの切り替えを行う方式は、上述の図3で説明した本発明の基本原理と同様であり、ここでは、PMDモニタを3系統に増やしたことによって、PMDの補償可能範囲の上限が、2系統のときのT2からT3に大幅に拡大されることになる。
【0095】
ここで、上記のようなPMDの補償可能範囲の拡大効果を定量的に説明しておく。
一般に、PMDモニタで抽出される周波数feに対するモニタ強度を表す、図11に示したような特性曲線K(fe)は、光強度分岐比γを0.5とした場合、次の(1)式で表すことができる。
【0096】
Figure 0004582874
PMDモニタの検出感度不確定幅をピーク(モニタ強度の最大値)のΔI倍、許容PMD量をΔτmaxとすると、PMDモニタ13Aに対応した特性曲線(fe=f1)に関して、次のような関係が成り立つことになる。
【0097】
{1+cos(2πf1Δτmax)}/2=1−ΔI
∴f1=cos-1(1−2ΔI)/2πΔτmax
∴T1=1/(2f1)=πΔτmax/cos-1(1−2ΔI)
また、これと同様にして他のPMDモニタについても次のような関係が成り立つことになる。
【0098】
2=πT1/cos-1(1−2ΔI)
3=πT2/cos-1(1−2ΔI)
上記の関係をn系統のPMDモニタにまで拡張して一般化すると、次のようになる。
【0099】
n={π/cos-1(1−2ΔI)}n・Δτmax
このように本発明によるPMDの補償可能範囲は、PMDモニタの系統数に応じて指数関数的に拡大することが分かる。例えば、Δτmax=0.2T(Tは1タイムスロット)、ΔI=0.1とすると、PMDの補償可能範囲の上限値は、T1=0.98T,T2=4.8T,T3=23T,…,Tn=4.88n×0.2Tなどになる。
【0100】
上記のようにして、第3実施形態のPMD補償装置3では、3つのPMDモニタを用いたPMD補償量のフィードバック制御が制御回路14’によって実行される。なお、1/4波長板10a、1/2波長板10bおよび光遅延器11bに対する制御回路14’の具体的な処理動作は、第1実施形態の場合に説明した、初期設定モードおよびトラッキングモードにおけるそれぞれのアルゴリズムと同様であるため説明を省略する。
【0101】
このように第3実施形態のPMD補償装置3によれば、3つのPMDモニタ13A〜13Bを用いることで、PMDの補償可能範囲をさらに拡大することができ、一般化すると、n個のPMDモニタを用いることで、PMDの補償可能範囲を指数関数的に拡大することが可能である。本発明によるPMD補償技術では、複数のPMDモニタの周波数差を最大限に確保できるため、従来の補償技術に比べて、PMDモニタの数を最小限にすることが可能になる。
【0102】
なお、上記の第3実施形態では、第1実施形態の構成についてPMDモニタを追加する場合を説明したが、これと同様にして、第1実施形態の各変形例、並びに、第2実施形態およびその変形例についても、3つまたはそれ以上のPMDモニタを追加することが可能である。
【0103】
また、上述した第1〜第3実施形態では、各PMDモニタがバンドパスフィルタ(BPF)を使用して抽出した周波数成分の強度を検出する構成について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、BPFに代えてローパスフィルタ(LPF)を使用して抽出した周波数成分の強度を検出するようにしても構わない。
LPFを使用する方式は、例えば、信号光が経時的にスペクトルの変動する符号形式である場合に、広範囲の周波数成分の強度を積分した値が得られるため、単一周波数を抽出するBPFを用いた方式に比べて、より安定したPMD補償を実現することが可能である。さらに、BPFとLPFを併用することも考えられる。例えば、高周波側のPMDモニタとしてBPFを用い、低周波側のPMDモニタとしてLPFを用いてもよい。これは、信号光のベースバンド信号が高周波側の成分を時間的に安定して持っているのに対して、低周波側に相当する長いビットパターンに関しては、検出頻度が時間変動しやすいことが考えられるため、低周波側にLPFを用いることでモニタ強度の安定化を図ることができるという利点がある。
【0104】
(付記1)伝送路の偏波モード分散による信号光への影響を補償する偏波モード分散補償方法において、
伝送路を介して入力される信号光に生じた偏波モード分散を補償する偏波モード分散補償ステップと、
該偏波モード分散補償ステップで補償された信号光におけるベースバンドスペクトル中の複数の特定周波数成分を抽出する特定周波数成分抽出ステップと、
該特定周波数成分抽出ステップで抽出された各特定周波数成分の強度をそれぞれ検出する強度検出ステップと、
該強度検出ステップで検出されるすべての特定周波数成分の強度が、検出感度の不確定幅に応じて決まる最大値収束範囲内になるように、前記偏波モード分散補償ステップにおける偏波モード分散補償量をフィードバック制御する補償量制御ステップと、
を含んでなることを特徴とする偏波モード分散補償方法。
【0105】
(付記2)前記補償量制御ステップは、相対的に低周波側の特定周波数成分の強度が前記最大値収束範囲内になった後に、相対的に高周波側の特定周波数成分の強度が前記最大値収束範囲内になるように、偏波モード分散補償量のフィードバック制御に用いる特定周波数成分の強度の切り替えを順次行うことを特徴とする付記2に記載の偏波モード分散補償方法。
【0106】
(付記3)伝送路の偏波モード分散による信号光への影響を補償する偏波モード分散補償装置において、
伝送路を介して入力される信号光に生じた偏波モード分散を補償する偏波モード分散補償手段と、
該偏波モード分散補償手段から出力される信号光におけるベースバンドスペクトル中の複数の特定周波数成分を抽出する特定周波数成分抽出手段と、
該特定周波数成分抽出手段で抽出された各特定周波数成分の強度をそれぞれ検出する強度検出手段と、
該強度検出手段で検出されるすべての特定周波数成分の強度が、検出感度の不確定幅に応じて決まる最大値収束範囲内になるように、前記偏波モード分散補償手段における偏波モード分散補償量をフィードバック制御する補償量制御手段と、
を備えて構成されたことを特徴とする偏波モード分散補償装置。
【0107】
(付記4)前記補償量制御手段は、相対的に低周波側の特定周波数成分の強度が前記最大値収束範囲内になった後に、相対的に高周波側の特定周波数成分の強度が前記最大値収束範囲内になるように、前記偏波モード分散補償手段における偏波モード分散補償量のフィードバック制御に用いる特定周波数成分の強度の切り替えを順次行うことを特徴とする付記3に記載の偏波モード分散補償装置。
【0108】
(付記5)前記特定周波数成分抽出手段は、前記特定周波数成分に対応した通過中心周波数を持つバンドパスフィルタを有し、該バンドパスフィルタを用いて当該特定周波数成分の抽出を行うことを特徴とする付記3に記載の偏波モード分散補償装置。
【0109】
(付記6)前記特定周波数成分抽出手段は、前記特定周波数成分に対応したカットオフ周波数を持つローパスフィルタを有し、該ローパスフィルタを用いて当該特定周波数成分の抽出を行うことを特徴とする付記3に記載の偏波モード分散補償装置。
【0110】
(付記7)前記偏波モード分散補償手段は、前記信号光について、2つの偏波モードへの光強度の分岐比を決定する偏波制御部と、2つの偏波モード間に光遅延差を与える光遅延部とを有し、前記偏波制御部の分岐比および前記光遅延部の光遅延差の組み合わせに応じて偏波モード分散補償量が設定されることを特徴とする付記3に記載の偏波モード分散補償装置。
【0111】
(付記8)前記偏波モード分散補償手段は、光遅延差を変えることが可能な可変光遅延素子と、該可変光遅延素子への入力光の偏波方向を変える波長板とを有し、
前記補償量制御手段は、前記可変光遅延素子の光遅延量および前記波長板の位置の少なくとも一方をフィードバック制御することを特徴とする付記7に記載の偏波モード分散補償装置。
【0112】
(付記9)前記偏波モード分散補償手段は、直列に接続された複数の偏波モード分散補償ユニットを有し、該各偏波モード分散補償ユニットは、予め設定した光遅延差を与える固定光遅延素子と、該固定光遅延素子への入力光の偏波方向を変える波長板とを含み、
前記補償量制御手段は、前記各偏波モード分散補償ユニットの波長板の位置をそれぞれフィードバック制御することを特徴とする付記7に記載の偏波モード分散補償装置。
【0113】
(付記10)付記3に記載の偏波モード分散補償装置を用いた光伝送システムであって、
前記偏波モード分散補償装置が、光送信機と光受信機の間を接続する伝送路の途中に設けられたことを特徴とする光伝送システム。
【0114】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によるPMD補償技術によれば、複数の異なる特定周波数成分を強度検出感度の不確定幅に応じて決め、PMD補償量のフィードバック制御に用いる特定周波数成分の強度を、低周波側から高周波側に順次切り替えるようにすることで、従来のような絶対的なしきい値を基準とするのではなく、強度の最大値収束状態を基準にしてPMDモニタの切り替えが行われるため、高い精度のPMD補償が実現できる。このようなPMD補償技術を適用して光伝送システムを構築すれば、伝送路を伝搬する信号光のPMDが広い範囲で確実に補償されるため、高速信号光を長距離に亘って伝送することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に用いられるPMDモニタの構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明によるPMD補償の基本原理を説明するための図であって、2つのPMDモニタを用いた場合に対応する図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるPMD量に対するパワーペナルティの変化を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態の変形例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1実施形態の別の変形例を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図8】同上第2実施形態の動作を説明する図である。
【図9】本発明の第2実施形態の変形例を示すブロック図である。
【図10】本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明によるPMD補償の基本原理を説明するための図であって、3つのPMDモニタを用いた場合に対応する図である。
【図12】従来のPMD補償技術について補償可能範囲が1タイムスロットに制約されてしまうことを説明する図である。
【図13】複数のPMDモニタを用いた従来のPMD補償技術を説明するための図である。
【図14】PMDによる伝送光波形劣化を測定するための実験系の概要を示す図である。
【図15】図14の実験系において、光遅延差ΔτTを変化させたときのパワーペナルティを示す図である。
【図16】図15の場合における伝送光波形の変化を示す図である。
【図17】公知のPMD補償技術に用いられるPMDモニタ系の一例を示す図である。
【図18】図17のPMDモニタ系を用いて測定した20GHz成分強度のΔτT依存性を示す図である。
【図19】図17のPMDモニタ系を用いて測定した20GHz成分強度のγ依存性を示す図である。
【図20】公知のPMD補償技術を40Gb/s光伝送システムに適用したときの実験系を示す図である。
【図21】図20の実験系を用いて測定した光遅延差ΔτTに対するパワーペナルティを示す図である。
【図22】図20の実験系を用いて測定した光遅延差ΔτTに対する伝送光波形を示す図である。
【符号の説明】
1A,1B,1C,2A,2B,3 PMD補償装置
10,10’,21 偏波制御部
10a,21a 1/4波長板
10b,21b 1/2波長板
11,11’ 可変PMD補償部
11a,11c 偏波ビームスプリッタ(PBS)
11b 光遅延器
12A,12B,12B’,12C,23A,23B 光カプラ
13A,13B,13C,24A,24B PMDモニタ
14,10c,11d,25,25’ 制御回路
201〜20N,201’〜20N’ PMD補償ユニット
22 固定遅延素子(PMF)
OS 光送信機
OR 光受信機
L 伝送路

Claims (5)

  1. 伝送路の偏波モード分散による信号光への影響を補償する偏波モード分散補償方法において、
    伝送路を介して入力される信号光に生じた偏波モード分散を補償する偏波モード分散補償ステップと、
    該偏波モード分散補償ステップで偏波モード分散の補償を行った後、該補償された信号光におけるベースバンドスペクトル中の複数の異なる特定周波数成分を抽出する特定周波数成分抽出ステップと、
    該特定周波数成分抽出ステップで特定周波数成分の抽出を行った後、該抽出された各特定周波数成分の強度をそれぞれ検出する強度検出ステップと、
    該強度検出ステップで検出される各特定周波数成分の強度うちの相対的に低周波側の特定周波数成分の強度を用い、該低周波側の特定周波数成分の強度が最大値に近づくように、前記偏波モード分散補償ステップにおける偏波モード分散補償量をフィードバック制御し、該低周波側の特定周波数成分の強度を用いたフィードバック制御が収束した後に、順次、相対的に高周波側の特定周波数成分の強度に切り替え、該高周波側の特定周波数成分が最大値に近づくように、前記偏波モード分散補償ステップにおける偏波モード分散補償量をフィードバック制御する補償量制御ステップと、を含んでなり、
    前記特定周波数成分抽出ステップで抽出される複数の異なる特定周波数が、前記強度検出ステップでの検出感度の不確定幅に応じて決められることを特徴とする偏波モード分散補償方法。
  2. 伝送路の偏波モード分散による信号光への影響を補償する偏波モード分散補償装置において、
    伝送路を介して入力される信号光に生じた偏波モード分散を補償する偏波モード分散補償手段と、
    該偏波モード分散補償手段から出力される信号光におけるベースバンドスペクトル中の複数の異なる特定周波数成分を抽出する特定周波数成分抽出手段と、
    該特定周波数成分抽出手段で抽出された各特定周波数成分の強度をそれぞれ検出する強度検出手段と、
    該強度検出手段で検出される各特定周波数成分の強度うちの相対的に低周波側の特定周波数成分の強度を用い、該低周波側の特定周波数成分の強度が最大値に近づくように、前記偏波モード分散補償手段における偏波モード分散補償量をフィードバック制御し、該低周波側の特定周波数成分の強度を用いたフィードバック制御が収束した後に、順次、相対的に高周波側の特定周波数成分の強度に切り替え、該高周波側の特定周波数成分が最大値に近づくように、前記偏波モード分散補償手段における偏波モード分散補償量をフィードバック制御する補償量制御手段と、を備え
    前記特定周波数成分抽出手段は、前記強度検出手段での検出感度の不確定幅に応じて、抽出する複数の異なる特定周波数を決めることを特徴とする偏波モード分散補償装置。
  3. 前記偏波モード分散補償手段は、前記信号光について、2つの偏波モードへの光強度の分岐比を決定する偏波制御部と、2つの偏波モード間に光遅延差を与える光遅延部とを有し、前記偏波制御部の分岐比および前記光遅延部の光遅延差の組み合わせに応じて偏波モード分散補償量が設定されることを特徴とする請求項2に記載の偏波モード分散補償装置。
  4. 前記偏波モード分散補償手段は、光遅延差を変えることが可能な可変光遅延素子と、該可変光遅延素子への入力光の偏波方向を変える波長板とを有し、
    前記補償量制御手段は、前記可変光遅延素子の光遅延量および前記波長板の位置の少なくとも一方をフィードバック制御することを特徴とする請求項3に記載の偏波モード分散補償装置。
  5. 前記偏波モード分散補償手段は、直列に接続された複数の偏波モード分散補償ユニットを有し、該各偏波モード分散補償ユニットは、予め設定した光遅延差を与える固定光遅延素子と、該固定光遅延素子への入力光の偏波方向を変える波長板とを含み、
    前記補償量制御手段は、前記各偏波モード分散補償ユニットの波長板の位置をそれぞれフィードバック制御することを特徴とする請求項3に記載の偏波モード分散補償装置。
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