JP4582966B2 - 香味賦与前駆体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カレーやシチュー等の調理食品に、特有の調理感やコク味を賦与するための、シャロット及び/又はオニオンの抽出物からなる香味賦与前駆体、該香味賦与前駆体を含有する香味料組成物及びそれらを含有する飲食物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にカレーやシチュー等の調理食品においては、その風味ベースとしてオニオン、ガーリックなどの香辛野菜を焙煎したものが使用され、これらにより調理食品に特有の調理感やコク味が賦与される。従来これらの焙煎香辛野菜を得るためには、フライパンに細断したオニオンやガーリックなどの香辛野菜と適量の油脂を入れ、中〜弱火で長時間炒め、きつね色になるまで水分をとばして(50%以上)焙煎する方法が採られている。このようにして時間と手間暇かけて調製した焙煎香辛野菜は、調理食品に特有の調理感とコク味を与えるものであるが、調製に長時間費やすのみならず、好ましい調理感が時間とともに消失してしまうという問題点があった。
【0003】
時間をかけずに容易に入手可能な風味ベースとしては、香辛野菜を抽出・濃縮した香辛野菜エキスや、焙煎した香辛野菜をペースト状に加工したものなどが市販されているが、これらの素材では、長時間じっくりと焙煎した香辛野菜に本来感じられる特有の調理感と深みのあるコク味に欠けるものであり、また、強いロースト感を伴うため、調理食品の自然な風味を損なうおそれもあった。調理食品に特有の調理感とコク味を与える方法としては、例えば特開平8−228694号公報においては、冷凍又は冷蔵加工食品の製造に際し、原料の一部を油ちょうして添加することを特徴とする炒め感、調理感を有する食品の製造方法が提案され、特開平11−196810号公報においては、焙煎野菜及び肉エキスのうち少なくとも1種、並びに一般式RN=C=Sで表される化合物の少なくとも1種を含有してなる調理食品用素材が提案され、特開平11−215972号公報においては、野菜・果実を歩留まり70%以下まで焙煎した焙煎物及び/又は野菜・果実の凍結乾燥物を粘性材として用いることを特徴とするペースト状ルウが提案されているが、いずれも各素材を添加した時点での調理感とコク味は賦与することはできるが、当該食品を殺菌などで再加熱したときには香味が飛んでしまい満足できるものではなかった。従来より香辛野菜の香気成分として種々のサルファイド類、ジサルファイド類、トリサルファイド類が知られており、ガーリックの香気成分であるアリルサルファイド類は強い香気香味とコク味を有することが知られており、オニオンの成分としてはジプロピルジサルファイドやジプロピルトリサルファイドがその特徴的な香気香味成分といわれている。しかしながらこれらの素材を直接飲食品に添加した場合は、当該飲食品との微妙な香味バランスを維持することが難しく、また価格的にも高くつくという問題点を有していた。
【0004】
また、香辛野菜の風味前駆体についても研究がなされており、Sci. Am. 252, (3), 114-119, (1985)においては、0℃でアリウム属植物を抽出すれば、アリイン等のガーリック風味前駆体が得られることが記載されているが、それらによる風味のコントロールについては記載されていない。日本食品化学工学会誌 Vol.42, No.12, 1003-1011, (1995)においては、オニオンは炒めることによりその香気を発生させることが記載されているが、生のオニオンの香味については刺激的な香りであるとしている。日本味と匂い学会誌 Vol.4, No.2, 197-200, (1997)においては、アリインがガーリックの呈味成分であり、S-1-プロペニルシステインスルホキシドがオニオンの呈味成分であり、共に原体を加熱処理し、酵素を失活させた後に取り出すことが記載されているが、やはり調理感については記載されていない。特公昭49−6670号公報においては、種々のジアルキルチオスルフィネートを加熱処理することにより各種ジアルキルサルファイド類、ジアルキルジサルファイド類、ジアルキルトリサルファイド類の混合物を得、これがネギなどアリウム属植物の香味を賦与することが記載されているが、ジアルキルチオスルフィネート類は合成することが難しく、また一般に入手できる素材としては高価である。特開平11−243904号公報においては、システィンスルホキシド化合物及び/又はS置換システィン誘導体を糖の存在下、溶剤中、水分含量が該溶剤に対して15%(W/W)以下で加熱反応させることを特徴とする、野菜のフライフレーバーの製造方法が提案されているが、これはあくまで野菜のフライフレーバーの製造方法であり、調理食品に特有の調理感や深いコク味を与えるものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、即席カレーやレトルトシチューの様な調理食品に特有の調理感と深いコク味を、飲食品に与える香味賦与前駆体を得ることにある。更に詳しくいえば、本発明の目的は、香辛野菜の微塵切りを油脂で炒めて次いで煮込んだときに得られる風味を、飲食品を喫食前に再加熱したときに与える香味賦与前駆体であり、該香味賦与前駆体を添加することにより、調理食品が本来持っている、調理食品全体をまとめ上げる豊かな調理感と深いコク味をもった飲食物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、低温で抽出されたシャロット及び/又はオニオン抽出物が、加熱工程により各種のサルファイド類、ジサルファイド類、トリサルファイド類を生じ、それを添加した飲食品に自然で豊かな調理感を賦与し、当該効果はその時のみならず、その後再可熱処理したときに発生することを見いだし本発明を完成させた。すなわち本発明はシャロット抽出物からなる各種のサルファイド類、ジサルファイド類、トリサルファイド類の香味賦与前駆体であり、詳しくは、シャロット及び/又はオニオンを低温にて、アルコール性溶媒で抽出し、ついで溶媒を留去した抽出物からなる各種のサルファイド類、ジサルファイド類、トリサルファイド類の香味賦与前駆体であり、更に詳しくは、抽出温度が−25℃〜5℃の温度であることを特徴とする該香味賦与前駆体であり、アルコール性溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物、或いはこれらの水溶液であることを特徴とする該香味賦与前駆体であり、アルコール性溶媒が30〜95%(V/V%)のアルコール水溶液であることを特徴とする該香味賦与前駆体であり、抽出時間が8〜96時間であることを特徴とする該香味賦与前駆体であり、該香味賦与前駆体を含有することを特徴とする香味料組成物又は飲食物であり、該香味料組成物を含有することを特徴とする飲食物である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の香味賦与前駆体並びに該香味賦与前駆体を含有する香味料及び飲食物について、発明の実施の形態に即して詳しく説明する。
【0008】
本発明で用いられるシャロットとは、鱗茎のいくつかが房になってできるオニオンの変種の一つで、学名を(Allium ascalonicum L.)といい、西洋料理では一般に用いられる香辛野菜である。また、本発明においては、オニオン(Allium capa L.)も好適に用いることができ、これらは単独で及び/又は組み合わせて用いることができる。これらは生のまま細断されるか、或いは目的に応じて乾燥や加熱処理を経た原体を加えて抽出されることもあるが、好ましくは生のまま細断し、遅滞なく冷却、抽出することが望ましい。
【0009】
本発明における抽出温度は−25℃〜5℃の範囲内が好ましく、更に好ましくは−20℃〜0℃、特に好ましくは−20〜−5℃、最も好ましくは−15〜−5℃である。−25℃未満の場合は、植物中の細胞が凍結破壊され収率は上がるものの好ましくない成分までも抽出されるため香味的に劣り、5℃を越えると植物中の酵素反応が活発になり香味をコントロールすることが困難となる。
【0010】
本発明で用いられるアルコール性溶媒は、分子内に一つ以上の水酸基をもち常温で液体であれば特に限定されるものではなく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの1価のアルコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが例示され、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの1価のアルコールが用いられ、最も好ましくはエタノールが選択される。上記アルコール類は水溶液の形で使用することができ、好ましくは30〜95%水溶液、より好ましくは50〜90%の水溶液、最も好ましくは60〜85%の水溶液で用いられる。30%未満の場合は、溶媒が抽出中に凍ってしまう可能性があり、95%を越えた場合は抽出時間が長くなる傾向がある。
【0011】
本発明における抽出時間は任意に設定され、特に限定されるものではないが、好ましくは8〜96時間であり、より好ましくは24〜84時間であり、最も好ましくは48〜72時間である。8時間未満であれば抽出効率が低くなる可能性があり、96時間以上抽出に費やすことは経済上好ましくない。
【0012】
本発明の抽出物からなる香味賦与前駆体には更に食品添加物、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、苦味料、酸味料、乳化剤、強化剤、製造用剤及び香料などを添加して香味料組成物として用いることができ、使用形態もそのまま或いは希釈した状態、乳化状態、更には粉化した様々な製剤の形で用いることができる。
【0013】
本発明で得られる香味賦与前駆体又は該香味賦与前駆体含有香味料を飲食物に添加する場合、その添加率は対象となる加工食品に応じて任意に設定するものであるが、好ましくは0.01〜10%、より好ましくは0.1〜5%で添加される。添加率が0.01%未満であると添加した効果が低くなる可能性があり、10%を越える場合は経済的に好ましくない。添加する時期は、飲食品が調製され、消費者が喫食するまでの任意の時期で可能であり、該飲食品の調製後加熱殺菌過程において香味を生成させることもでき、或いは該飲食品の別添調味料として添付し、消費者が家庭で喫食直前に加熱することにより香味を生成させることもできる。次に実施例を挙げ、更に詳細に説明する。
【0014】
【実施例】
[実施例1]
皮をむき微塵切りにした北海道産オニオン500重量部に対し、76%(V/V)エタノール水溶液750重量部を加え、−5℃±2℃で64時間浸漬抽出を行った。抽出終了後不溶物を濾別し、減圧濃縮を行うことにより淡褐色のペースト状オニオンエキス365重量部(固形物含量7%)を得た。
【0015】
[実施例2]
皮をむき微塵切りにしたインドネシア産シャロット500重量部に対し、76%(V/V)エタノール水溶液500重量部を加え、−12℃±2℃で64時間浸漬抽出を行った。抽出終了後不溶物を濾別し、減圧濃縮を行うことにより淡褐色のペースト状シャロットエキス245重量部(固形物含量24%)を得た。
【0016】
[比較例]
皮をむき微塵切りにした北海道産オニオン500重量部を76%(V/V)エタノール水溶液750重量部を加え、沸騰温度にて1時間攪拌抽出を行った。抽出終了後不溶物を濾別し、減圧濃縮を行うことにより暗褐色のペースト状オニオンエキス343重量部(固形物含量8%)を得た。
【0017】
[試験例1]加熱による香気成分の生成。
比較例、実施例1及び実施例2について、それぞれ密封して121℃20分の加熱処理を行い、加熱処理前と加熱処理後の各種のサルファイド類、ジサルファイド類、トリサルファイド類の生成をGCにより分析、定量した。その結果を表1に示した。
【0018】
[表1]加熱前後における含硫化合物(単位:ng/g)
実施例は比較例に比べ、3倍から5倍の香気成分を生成していることが解る。これらの香気成分はいずれも加熱調理に伴う特徴的な香気を持つ成分であることが知られている。
【0019】
[試験例2]
実施例1、実施例2及び比較例についてコーンスープを調製し、官能評価を行った。コーンスープは、牛乳30部、脱脂粉乳4部、砂糖1部、食塩0.4部、チキンエキス1部、コーンペースト7部、無塩バター0.5部、乳化剤0.1部を混合し、水を加えて均一に分散させ全量を100部とし、実施例1、実施例2及び比較例の香味料組成物を0.1部添加したものを121℃20分殺菌することにより調製した。なお、コントロールとして香味料組成物無添加のコーンスープを調製し、併せて評価した。評価の方法は、まろやかな焙煎風味調理感を指標とし、好ましい→7、好ましくない→1の7段階評価とし、評価は熟練したパネル7名によって行った。各コーンスープについての評価点の平均値と香味のコメントを表2に示した。
【0020】
[表2]
本発明品は、比較例と比べて自然な甘さ、コクとボリューム感を与える。
【0021】
[試験例3]カレーへの賦香評価
市販のレトルトカレー(中辛)に、実施例2及び比較例のペースト状抽出物をそれぞれ0.3重量%添加し、1時間煮込んだ後の風味を、無添加品をコントロールとして、よく訓練されたパネル7名により官能評価を行った。評価の項目は「甘さ」、「煮込感」、「濃厚感」、「酸味」及び「ロースト感」の5項目とし、香味の強さが、弱い/なし:1〜強い/あり:7 の7点法により評価を行った。評価結果は、評価点の平均値を表3に示し、香味のコメントを表4に示した。
【0022】
[表3]
【0023】
[表4]
表3及び表4の結果から、本発明の効果は明らかである。
【0024】
[実施例3]
皮をむき微塵切りにしたインドネシア産シャロット500重量部に対し、76%(V/V)エタノール水溶液500重量部を加え、3℃±2℃で64時間浸漬抽出を行った。抽出終了後不溶物を濾別し、減圧濃縮を行うことにより淡褐色のペースト状シャロットエキス235重量部(固形物含量24%)を得た。
【0025】
[実施例4]
皮をむき微塵切りにした北海道産オニオン500重量部に対し、76%(V/V)エタノール水溶液750重量部を加え、−20℃±2℃で64時間浸漬抽出を行った。抽出終了後不溶物を濾別し、減圧濃縮を行うことにより淡褐色のペースト状オニオンエキス355重量部(固形物含量7%)を得た。
【0026】
[試験例4]ホワイトソースによる評価
鍋に無塩バター40gを入れて溶解し、小麦粉(薄力粉)40gを加えてさらさらになるまで炒めた。牛乳320g、水393gを加え、更にホワイトペッパーパウダー0.2g、チキンコンソメパウダー1.6g及び食塩5.2gを加え、粘度がでるまでよく攪拌した。このホワイトソース100重量部に対し、実施例1〜実施例4及び比較例のペースト状抽出物を0.2重量部を添加し、レトルトパウチに充填し、121℃20分の加圧殺菌後の風味を評価したところ、実施例1〜実施例4のペースト状抽出物を用いたホワイトソースは、比較例のペースト状抽出物を用いたホワイトソースに比べて、自然な調理感と深いコク、甘さとボリューム感ある非常に美味しいものであった。
【0027】
【発明の効果】
本発明の香味賦与前駆体は、加熱工程を経ることにより、調理食品本来持っている豊かな調理感と深いコク味、甘さとボリューム感を増強するのみならず、調理食品のロースト感、酸味、生地の粉臭さ等の要素をマスキングするものである。本発明の香味賦与前駆体を用いることにより、非常に美味なる調理食品を提供することができる。
Claims (1)
- シャロットを−25℃〜5℃の温度範囲で、30〜95%(V/V%)のアルコール水溶液により、8〜96時間抽出した香味賦与前駆体を飲食物に添加し、当該飲食物を喫食前に再加熱することにより香味を発生させることを特徴とする、飲食物への香味付与方法。
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