JP4589525B2 - 果実の保護袋および果実栽培方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、果実栽培に用いられる果実の保護袋および果実栽培方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、桃やリンゴなどの果実の栽培園では、雨水の侵入を避けて、虫害や各種細菌による病害から果実を守り、健全な果実を生育させるために、少なくとも袋表面に防水層を備えた保護袋のいわゆる袋かけの作業が行われている。
【0003】
このための保護袋として、通気性の低い紙素材を用いた袋では、袋内の湿度が高まって、果実が蒸れるなどして品質が低下すると営農指導されていることから、一般には、通気性の大きな紙素材を用いた袋や、底部分を一部切開した袋(図3のcを参照)を用いて、虫類や病原菌の侵入を防御するための袋かけを行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このように袋かけを行ってはいても、現状では、穿孔細菌病や黒星病、灰星病などが発生して、果実に甚大な被害を受けることが多々あり、特に、底部分を一部切開した袋では、その切開部分からカメムシなどの穿孔虫類が侵入して、果実が食害を受けることも多々あったのである。
【0005】
そこで本発明者らは、これまでの営農指導に基づいて用いられている袋について、これの紙素材の複数枚について性状を考察したところ、平均的には、目付け量が約50g/m2 であって、通気性が約0.2cc/cm2 /sec(通気性の試験方法は、JIS−L−1096 A法による。以下、同じ。)であり、保護袋の一部を顕微鏡で見た図3の拡大図(基準長さLは50μmである。)を基にした計測では、25〜50μmの微細孔隙(図3の拡大図を参照して、複雑に絡んだ紙繊維の微細な隙間による孔隙であり、この微細孔隙を有することで、紙素材はフィルター機能を持つのである。)bが分散していることを知見したのである。
【0006】
そして、湿度の高まりや果実の蒸れを防ぐ上で、通気性を高くするために微細孔隙を大きくしたことが、病原菌の防御フィルターとしての機能を著しく低下させることに繋がって、これが原因で、穿孔細菌や黒星病菌、灰星病菌、その他の病原菌、胞子などが袋内に侵入し、病害が発生し易くなっていると判断したのである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この判断に基づいて、本発明者らは、紙素材の通気性を高めることが健全な果実を生育させる上で重要であるとした従来の観念を覆すように、少なくとも袋表面に防水層を備えるようにした紙素材として、通気性を従来よりも低く設定した多種類の紙素材を選択し、この紙素材で形成した保護袋を用いて、かつ、底部分を切開せずに、これを果実(実験では白桃)に袋かけして栽培実験を行ったところ、紙素材の性状によっては、果実の蒸れによる品質低下が生じるどころか、病害の発生率が極端に低下する結果を得たのである。
【0008】
具体的には、上記の実験に用いた多種類の紙素材のうち、出荷基準外の栽培状況を示した紙素材を除いて、残りの紙素材の性状を分析したところ、この取捨した紙素材の複数枚の性状は、平均的には、目付け量が30〜50g/m2 で、通気性が0.05〜0.18cc/cm2 /secであり、かつ、数層から十数層に積層されたパルプ繊維からなるもので、保護袋の一部を顕微鏡で見た図1の拡大図(基準長さLは50μmである。)を基にした計測では、少なくともパルプ繊維層の一層あたりで、10〜25μmの微細孔隙bが分散していることが判明したのである。
【0009】
このことから、病害の発生率が極端に低下したことは、紙素材の通気性を0.05〜0.18cc/cm2 /secに設定したことの結果であって、微細孔隙が10〜25μmと小さいことから、この果実の保護袋は、穿孔細菌(0.4〜1.8μm)や黒星病菌(30〜40μm)、灰星病菌(10〜20μm)、その他の病原菌、胞子等のフィルターの役目を十分に果たし、袋内への病原菌の侵入をほゞ完全に防御したものと判断される。
【0010】
そして、果実の蒸れによる一部の品質低下の発生については、微細孔隙を余りにも小さく設定し過ぎて、通気性が極端に低下した結果であると推測される。
【0011】
従って、本発明は、請求項1に記載の通り、少なくとも袋表面に防水層を備えて成る果実の保護袋であって、組成にサイズ剤および紙力増強剤を含めることで、目付け量が30〜50g/m2 で、通気性が0.05〜0.18cc/cm2 /secとした紙素材から成り、さらに、前記紙素材は、数層から十数層に積層されたパルプ繊維の少なくとも繊維層の一層の微細孔隙が10〜25μmであることを特徴とする果実の保護袋を提供する。 本発明では、数層から十数層に積層されたパルプ繊維の少なくとも繊維層の一層の微細孔隙が10〜25μmである紙素材製の保護袋を形成しているので、これを果実に袋かけすれば、病害の発生率を極端に低下させる果実栽培が容易に可能となる。
【0012】
一方、従来の袋かけによる白桃の栽培では、平均的な玉太りが270g/個であったのに対して、上記の白桃についての実験結果では、平均的な玉太りが380g/個と40%も大きく成長したのであり、その糖度においては、従来の栽培では糖度10であったのに対して糖度13と、品質的に非常に優れた果実を得ることができたのである。
【0013】
この点についても更に考察したところ、従来の袋かけに用いられていた紙素材の平均的な光透過率は、450nm付近の波長域で3〜4%、580nm付近の波長域で20〜23%であった。
【0014】
これに対して、上記の取捨した紙素材の平均的な光透過率は、450nm付近の波長域では10〜20%(従来の紙素材の3〜5倍)、580nm付近の波長域では25〜40%(同じく約1.3〜2倍)であった。
【0015】
上記の分析に基づいて、上記の取捨した紙素材そのものの光透過率を、従来の袋かけに用いられていた紙素材の光透過率にほゞ合わせるように設定して、白桃の栽培実験を行ったところ、玉太りや糖度は殆ど変わりがなかったのであり、このことから、紙素材の光透過率(ひいては光の強度)が、果実の玉太りや糖度の向上に大きく関与することが判明したのである。
【0016】
従って、本発明では、請求項2に記載の通り、紙素材の光透過率を、450nm付近の波長域で10〜20%、580nm付近の波長域で25〜40%に設定して、果実の保護袋を形成し、これを果実に袋かけすれば、玉太りと共に糖度の飛躍的な向上を期し得る果実栽培が容易に可能となる。
【0017】
そして、本発明は、請求項3に記載の通り、請求項1または2に記載の果実の保護袋を、果実に袋かけして栽培することを特徴とする果実栽培方法を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、果実の栽培に際して、果実の保護用として袋かけされる果実の保護袋1を示しており、紙素材2を所定の形状に切り出して、これの両側縁部を折り重ねて接着し、かつ、下側縁部を折り重ねて接着して成る。
【0019】
この実施の形態による紙素材2の組成は、未晒しのクラフトパルプに対して、サイズ剤としてロジンエマルジョンの0.01〜2.0%、紙力増強剤としてポリアミド樹脂の0.1〜2.5%、防水(撥水)剤としてパラフィンワックスの約1.0%を混合又は塗布したものである。
【0020】
具体的には、袋表面となる一側面に防水層aを備えた状態で、目付け量が30〜50g/m2 、数層から十数層に積層されたパルプ繊維の少なくとも繊維層の一層の分散された微細孔隙bが10〜25μm、通気性が0.05〜0.18cc/cm2 /secを示し、更に、光の強度として、450nm付近の波長域における光透過率が10〜20%、530nm付近の波長域における光透過率が20〜30%、580nm付近の波長域における光透過率が25〜40%になるように、紙素材2の性状を調整している。
【0021】
このときの紙素材2の紙厚は、目付け量を32g/m2 とした場合、約0.04mmであり、目付け量を40g/m2 とした場合は約0.06mmであり、目付け量を50g/m2 とした場合は約0.078mmであった。
【0022】
図3は従来に用いられている袋かけ用の保護袋1Aを示し、例えば袋折りの後に底部分を一部切開cして成るもので、紙素材2として、平均的には、目付け量が約50g/m2 であって、25〜50μmの微細孔隙bを分散させて、袋表面となる一側面に防水層aを備えた状態で、その通気性が約0.2cc/cm2 /secを示し、更に、450nm付近の波長域における光透過率が約3〜4%、530nm付近の波長域における光透過率が10〜15%、580nm付近の波長域における光透過率が20〜23%になるように調整されたものが用いられていた。
【0023】
この従来の保護袋1Aを用いた袋かけでは、玉太りと糖度とについては、出荷基準を難なくクリアする品質の果実栽培が可能であったが、微細孔隙bが25〜50μmと大きくて、フィルター機能が低いことから、穿孔細菌や黒星病菌、灰星病菌、その他、胞子などが袋内に侵入し易くて、病害やその他の虫害が発生し易い点で難があった。
【0024】
これに対して、上記の調整を施した本発明の保護袋1による袋かけでは、病害やその他の虫害の発生が極端に低い上に、飛躍的な玉太りと大幅な糖度アップを示す高品質の果実栽培が成されたのであり、更に栽培上で好適には、通気性を0.07〜0.13cc/cm2 /secに設定することである。
【0025】
ここで、上記の実施の形態では、紙素材2の袋表面となる一側面にのみ防水層aを備えているが、防水層aを紙素材2の両面に備えての実施も好適に可能であり、この際、防水層aを両面に備えた状態で、紙素材2の性状を上記の通りに調整することは言うまでもない。
【0026】
尚、従来に用いられている保護袋と、上記の取捨した紙素材を用いた保護袋の各1枚を無作為に取り出して、その光透過率を測定したところの波長と光透過率との相関関係図を図2に示している。この図2において、従来の保護袋の波長と光透過率との相関関係を二点鎖線Aで示し、上記の取捨した紙素材による保護袋の波長と光透過率との相関関係を実線Bで示している。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、病害の発生率を極端に低下させることが可能な果実の保護袋が提供されるのであり、請求項2に記載の発明によれば、果実の玉太りと共に、糖度の飛躍的な向上を期し得る果実の保護袋が提供される。
【0028】
すなわち、請求項2に記載の発明によれば、病害の発生率を極端に低下させ得る上に、玉太りと糖度の飛躍的な向上を期し得る果実の保護袋が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 果実保護袋の平面図およびその一部を顕微鏡で見た拡大図である。
【図2】 波長と光透過率との相関関係図である。
【図3】 従来例の果実保護袋の平面図およびその一部を顕微鏡で見た拡大図である。
【符号の説明】
1…保護袋、2…紙素材、a…防水層、b…微細孔隙。
Claims (3)
- 少なくとも袋表面に防水層を備えて成る果実の保護袋であって、組成にサイズ剤および紙力増強剤を含めることで、目付け量が30〜50g/m2 で、通気性が0.05〜0.18cc/cm2 /secとした紙素材から成り、さらに、前記紙素材は、数層から十数層に積層されたパルプ繊維の少なくとも繊維層の一層の微細孔隙が10〜25μmであることを特徴とする果実の保護袋。
- 前記紙素材は、450nm付近の波長域における光透過率が10〜20%、580nm付近の波長域における光透過率が25〜40%であることを特徴とする請求項1に記載の果実の保護袋。
- 請求項1または2に記載の果実の保護袋を、果実に袋かけして栽培することを特徴とする果実栽培方法。
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