JP4590082B2 - 回折光学素子及びそれを用いた光学系 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は回折光学素子及びそれを用いた光学系に関し、例えばデバイス製造用の露光装置、照明装置、写真用カメラ、双眼鏡、プロジェクター、望遠鏡、顕微鏡、複写機等の各種の光学系に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、光学系の色収差を補正する方法の1つとして分散の異なる2つの材質の硝材(レンズ)を組み合わせる方法がある。この硝材の組み合わせにより色収差を減じる方法に対して、レンズ面やあるいは光学系の一部に回折作用を有する回折光学素子を用いて色収差を減じる方法がSPIEVol.1354 International Lens Design Conference (1990)等の文献や特開平4−213421号公報、特開平6−324262公報、USP第5044706号等により開示されている。これは光学系中の屈折面と回折面とではある基準波長の光線に対する色収差の出方が逆方向になるという物理的現象を利用したものである。
【0003】
さらに、このような回折光学素子は、その回折格子の周期的構造の周期を変化させることで非球面レンズ的な効果を持たせることができ収差の低減に大きな効果がある。
【0004】
ここで、光線の屈折作用において比較すると、レンズ面では1本の光線は屈折後も1本の光線であるのに対し、回折格子では1本の光線が回折されると各次数に光が分かれてしまう。
【0005】
そこで、レンズ系として回折光学素子を使う場合には、使用波長域の光束が特定次数(設計次数)に集中するように格子構造を決定する必要がある。特定次数の光が集中している場合では、それ以外の回折光の光線の強度は低いものとなり、強度が0の場合にはその回折光は存在しないものとなる。そのため、前記特長を有するためには、特定次数の光線の回折光が十分高いことが必要となる。また、特定次数以外の回折次数を持った光線が存在し、その光線が特定次数の光線とは別のところに入射すると、その光線はフレア光(有害光)となる。
【0006】
従って、回折光学素子を利用した光学系においては、以上のような問題点を解決しなければならなかった。この間題点を解決する手法として図6に示すような基板ガラス101上に第1の回折格子103、第2の回折格子102を重ね合わせた積層断面形状を持つ積層タイプの回折光学素子や図7に示すような基板ガラス106、107上に第1の回折格子104、第2の回折格子105を個別に形成し、各格子ピッチが対応するように空気層を介して重ね合わせる積層タイプの回折光学素子が提案されている。
【0007】
また、これらの回折格子104,105の格子厚dl、d2は材質の屈折率n01、n02と基準波長λ0によって次式の関係式によって決定される。
【0008】
(n0l−1)dl−(n02−1)d2=mλ0 ・・・・(1)
この関係式は基準波長λ0におけるm次光の回折光の回折効率を最もよくするための式であり、この関係を満たすように屈折率n01、n02と格子厚d1、d2は決定される。
【0009】
回折光学素子の製造方法として射出成形や加圧成形等がある。
【0010】
このうち射出成形や加圧成形を利用して積層型の回折光学素子を製造する方法が特開平11-344611号公報で提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
積層型の回折光学素子においては1つの回折格子の格子形状と他の回折格子の格子形状とを適切に設定する必要がある。例えば2つの回折格子の格子面間隔が広すぎると一方の格子面で回折した所定次数の回折光が対面する他方の格子面に入射しなくなり、又、格子面間隔が狭くなり過ぎると製造の際に一方の格子面が他方の格子面と抵触して格子面が破損するので、高い回折効率を得るのが難しくなり、光学系の一部に用いたとき色収差の補正効果が不十分となってくる。
【0012】
本発明は、高い回折効率が得られる回折光学素子及びそれを用いた光学系の提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の回折光学素子は、複数の回折格子を積層した回折光学素子において、
前記複数の回折格子は、それぞれ複数の格子面を有しており、
前記複数の回折格子のうち光の入射方向に沿って隣接する2つの回折格子の格子面は、光の入射方向に離間しており、
前記複数の回折格子のうち光の入射方向に沿って隣接する2つの回折格子は、分散の異なる材質からなり、
前記複数の回折格子のうち光の入射方向に沿って隣接する2つの回折格子は、一方の回折格子の光の入射方向に他方の回折格子の格子面に最も近い格子面の格子最上部と他方の回折格子の光の入射方向に一方の回折格子の格子面に最も近い格子面の格子最下部の間隔をD(μm)としたとき
20μm<D<35μm
を満足することを特徴としている。
【0014】
請求項2の発明は請求項1の発明において、前記複数の回折格子のうち光の入射方向に沿って隣接する2つの回折格子の格子面は、光の入射方向に空気層を介して離間していることを特徴としている。
【0015】
請求項3の発明は請求項1の発明において、前記複数の回折格子のうち光の入射方向に沿って隣接する2つの回折格子の格子面は、光の入射方向に屈折率n>1を満たす光学材料を介して接合していることを特徴としている。
【0016】
請求項4の発明は請求項1乃至3のいずれか一項の発明において、前記一方の回折格子は、射出成形したプラスチック製より成り、前記他方の回折格子は、紫外線硬化樹脂より成ることを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明の撮影光学系は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の回折光学素子を有することを特徴としている。
【0026】
【発明の実施の形態】
[第1の実施例]
図1は本発明の積層型の回折光学素子BOの実施形態1の要部断面図である。
同図は回折格子が、その深さ方向にデフォルメされた図になっている。
【0027】
図1においてBOは回折光学素子であり、射出成形によって成形された第1の回折格子1と、格子ピッチは同じであるが第1の回折格子1の媒質と異なる分散を持つ媒質によって形成された第2の回折格子2とを空気層air又は光学材料(屈折率n>1)を介して対向配置(離間)している。同図は空気層airの場合を示している。d1、d2は、第1、第2の回折格子1、2の格子厚さであり、互いに異なっている。本実施形態では図1に示すように基板と回折格子を射出成形により一体にして第1の回折格子1を成形している。これにより、製作を容易にしている。又、第2の回折格子2は基板6上に紫外線硬化樹脂で回折格子5を形成し、射出成形で製作された回折格子1と互いに格子面が向かい合うように対向配置している。ここで基板6は平行平板又は曲面を有するものであっても良い。
【0028】
又、この射出成形により成形された回折格子1が光入射側の第1面もしくは最終面の回折格子面を形成するように回折光学素子を構成している。これにより射出成形した回折格子を積層タイプの回折光学素子のベースとすることを可能としている。回折格子2を成形するための媒質としては、回折格子1と分散の異なる媒質を材料としている。これによって、可視波長全域で高い回折効率を得ている。
【0029】
例えば、図1では回折格子1の媒質として射出成形可能なプラスチック光学材料(プラスチック製)である商品名XEONEX(日本ゼオン(株))、回折格子2の媒質は、積層という観点と分散を異なるようにするため、回折格子1よりも分散の高い媒質として、紫外線硬化樹脂である商品名UV1000(三菱化学(株))を用いている。このため、本実施形態ではそれぞれの回折格子1、2の媒質の屈折率と波長の関係からそれぞれの格子厚はd1=8.2μm、d2=5.9μmとなっている。
【0030】
本実施形態では、図1から明らかのように光の入射方向に空気層airに最も近い一方の回折格子1の格子面の格子最上部と空気層airに最も近い他方の回折格子5の格子面の格子最下部の間隔D(μm)が
10μm<D<40μm ・・・(1)
を満足するようにしている。
【0031】
これによって隣接する2つの回折格子の製作を容易にしつつ、高い回折効率を有しかつ色収差補正を良好に行うことができる回折光学素子を得ている。条件式(1)の下限値(10μm)を超えると製作するときに2つの格子面が接触しやすくなってくるので良くない。又、上限値(40μm)を超えると回折面で回折した光が対応する回折面から外れてしまうため、回折効率が低下してくるので良くない。
【0032】
尚、本発明においてさらに好ましくは条件式(1)の数値範囲を
20μm<D<35μm ・・・(1a)
程度とするのが良い。
【0033】
上限値(35μm)と下限値(20μm)の持つ技術的意味は条件式(1)と同様である。
【0034】
本実施形態ではD=30μmとなっている。
【0035】
図2は本発明の回折光学素子の実施形態2の要部断面図である。図2において1は第1の回折格子であり、図1の実施形態1と同様の形状、材質より成っている。7は第2の回折格子であり、第1の回折格子1上に形成している。
【0036】
第2の回折格子7は第1の回折格子1と格子ピッチは同じであるが材質が異なっている。例えば紫外線硬化樹脂より成っている。図2において格子面7aaは格子面7aを第1の回折格子1の格子面1a側にピッチが同一であることを示すために平行移動させたときの状態を模式的に示している。
【0037】
本実施形態において図2から明らかのように射出成形された一方の回折格子1の格子面1aの格子最上部と向かい合わせて格子面7aを形成している他方の回折格子7の格子最下部との距離(間隔)をDとすると、この距離Dは10μmよりも大きく40μmよりも小さい幅を持っている。D<10μmであると回折格子7を成形するための型が回折格子1にぶつかる可能性が高くなってしまい、D>40μmを超えてしまうと回折光学素子自身がかなり厚みを持ってしまうため所望の性能より悪化してしまう。本実施形態ではD=30μmとなっている。
【0038】
図3は本発明の回折光学素子の実施形態3の要部断面図である。図3において4は第1の回折格子であり、図1の実施形態1と同様に射出成形より形成している。8は第2の回折格子であり、第1の回折格子4上に形成している。
【0039】
第2の回折格子8は第1の回折格子4と格子ピッチは同じであるが材質が異なっている。例えば紫外線硬化樹脂より成っている。図3において格子面8aaは格子面8aを第1の回折格子4の格子面4a側にピッチが同一であることを示すために平行移動させたときの状態を模式的に示している。
【0040】
本実施形態において射出成形された回折格子4の格子最上部と向かい合わせて格子面を形成している回折格子8の最下部との距離をDとすると、この距離Dは10μmよりも大きく40μmよりも小さい幅を持っている。D<10μmであると回折格子8を成形するための型が回折格子4にぶつかる可能性が高くなってしまい、D>40μmを超えてしまうと回折光学素子自身がかなり厚みを持ってしまうため所望の性能より悪化してしまう。本実施形態ではD=30μmとなっている。又d3=19.5μm、d4=16.1μmとなっている。
【0041】
図4は本発明の回折光学素子を用いた光学系の実施形態1の概略図であり、カメラ等の撮影光学系の断面を示している。同図中、51は撮影レンズで、内部に絞り52と回折光学素子BOを持っている。53は結像面であるフィルムまたはCCDである。
【0042】
積層構造の回折光学素子を用いることで、回折効率の波長依存性は大幅に改善されているので、フレアが少なく低周波数での解像力も高い高性能な撮影レンズを達成している。又、本発明の回折光学素子は、簡単な製法で作成することができるので、撮影レンズとしては量産性に優れた安価なレンズを提供することができる。
【0043】
図4では絞り52近傍の平板ガラス面に回折光学素子BOを設けたが、これに限定するものではなく、レンズ曲面表面に回折光学素子を設けても良いし、撮影レンズ内に複数、回折光学素子を使用しても良い。
【0044】
また、本実施形態では、カメラの撮影レンズの場合を示したが、これに限定するものではなく、ビデオカメラの撮影レンズ、事務機のイメージスキャナーや、デジタル複写機のリーダーレンズ、半導体デバイス製造用の露光装置等に使用しても同様の効果が得られる。
【0045】
図5は本発明の回折光学素子を用いた光学系の実施形態2の概略図であり、双眼鏡等観察光学系の断面を示したものである。同図中、61は対物レンズ、62は像を成立させるための像反転プリズム、63は接眼レンズ、64は評価面(瞳面)である。
【0046】
図中BOは回折光学素子である。回折光学素子BOは対物レンズ61の結像面65での色収差等を補正する目的で形成されている。
【0047】
積層構造の回折光学素子を用いることで、回折効率の波長依存性は大幅に改善されているので、フレアが少なく低周波数での解像力も高い高性能な対物レンズを達成している。また、本発明の回折光学素子は、簡単な製法で作成できるので、観察光学系としては量産性に優れた安価な光学系を提供できる。
【0048】
本実施形態では、対物レンズ郡61に回折光学素子BOを形成した場合を示したが、これに限定するものではなく、プリズム表面や接眼レンズ63内の位置であっても同様の効果が得られる。結像面65より物体側に設けると対物レンズ61のみでの色収差低減効果があるため、肉眼の観察系の場合少なくとも対物レンズ61側に設けることが望ましい。
【0049】
また、本実施形態では、双眼鏡の場合を示したが、これに限定するものではなく地上望遠鏡や天体観測用望遠鏡等であっても良く、またレンズシャッターカメラやビデオカメラ等の光学式のファインダーであっても同様の効果が得られる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば積層型の回折光学素子において光の入射方向に沿って隣接する2つの回折格子の間隔を適切に設定することにより高い回折効率が得られる回折光学素子及びそれを用いた光学系を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回折光学素子の実施形態1の要部断面図
【図2】本発明の回折光学素子の実施形態2の要部断面図
【図3】本発明の回折光学素子の実施形態3の要部断面図
【図4】本発明の回折光学素子を用いた光学系の概略図
【図5】本発明の回折光学素子を用いた光学系の概略図
【図6】従来の積層タイプの回折光学素子の説明図
【図7】従来の積層タイプの回折光学素子の説明図
【符号の説明】
1、4 射出成形によって成形された回折格子
5、7、8 紫外線硬化樹脂によって成形された回折格子
6 基板
101、106、107 基板
102、103、104 紫外線硬化樹脂によって成形された回折格子
d1〜d4 回折格子格子厚
D 回折格子最上部最下部間距離
51 屈折レンズ
52 絞り
53 結像面
65 1次結像面
64 評価面(アイポイント)
61 対物レンズ
62 プリズム
63 接眼レンズ
Claims (5)
- 複数の回折格子を積層した回折光学素子において、
前記複数の回折格子は、それぞれ複数の格子面を有しており、
前記複数の回折格子のうち光の入射方向に沿って隣接する2つの回折格子の格子面は、光の入射方向に離間しており、
前記複数の回折格子のうち光の入射方向に沿って隣接する2つの回折格子は、分散の異なる材質からなり、
前記複数の回折格子のうち光の入射方向に沿って隣接する2つの回折格子は、一方の回折格子の光の入射方向に他方の回折格子の格子面に最も近い格子面の格子最上部と他方の回折格子の光の入射方向に一方の回折格子の格子面に最も近い格子面の格子最下部の間隔をD(μm)としたとき
20μm<D<35μm
を満足することを特徴とする回折光学素子。 - 前記複数の回折格子のうち光の入射方向に沿って隣接する2つの回折格子の格子面は、光の入射方向に空気層を介して離間していることを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子。
- 前記複数の回折格子のうち光の入射方向に沿って隣接する2つの回折格子の格子面は、光の入射方向に屈折率n>1を満たす光学材料を介して接合していることを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子。
- 前記一方の回折格子は、射出成形したプラスチック製より成り、前記他方の回折格子は、紫外線硬化樹脂より成ることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の回折光学素子。
- 請求項1乃至4の何れか一項に記載の回折光学素子を有することを特徴とする撮影光学系。
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