JP4591899B2 - 油入電気機器の寿命診断方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油入電気機器の寿命診断方法、特に油入変圧器、油入リアクトル等の油入電気機器の寿命を診断する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
油入変圧器、油入リアクトル等の油入電気機器の寿命は、巻線に巻かれている絶縁紙の最高温度部の劣化の程度に左右されるといわれている。絶縁紙の主要成分は、セルロース化合物であり、通常、下記の式で示される。
【0003】
【式1】
セルロース化合物は、グルコース環が連結したものであり、分子中に水酸基を有することから、油入電気機器の長期間の使用条件下においては、熱分解、酸化および加水分解等によりアルコール、アルデヒド、有機酸等の生成およびグルコース結合の切断、グルコース環の開環等により二酸化炭素および一酸化炭素(以下、必要に応じ「CO2+CO」という。)等の各種劣化物の生成が知られている。このようなセルロース化合物の分解反応により、当初約800〜約1200の絶縁紙の平均重合度が200程度にまで低下することが観察されている。この絶縁紙の劣化の程度は、絶縁紙自体の引張強さ、平均重合度などの測定により診断される。しかし、運転中の油入電気機器から絶縁紙を採取することができないため、一般に絶縁紙の引張強さや平均重合度と密接な関係がある絶縁油中に生成する前記 CO2+CO、フルフラール、アセトンなどの絶縁紙劣化指標成分の含有量を測定して、絶縁紙の劣化、寿命診断が行なわれている。
【0004】
従来、油入電気機器の寿命診断方法としては、実験結果または実器の解体調査結果から得られた絶縁油中の絶縁紙劣化指標成分量と絶縁紙平均重合度との関係を用いて、測定した絶縁紙劣化指標成分量を平均重合度または平均重合度残率に換算し、その値を次に示す Ackerの式(IEEE, PES WINTER MEETING A76 021-6(1976)参照)などの劣化特性式に代入して寿命を推定している。
LR =LO (1−r)n
Ackerの式は、油入電気機器の絶縁材料の劣化速度が温度の他に反応物質の濃度によっても影響されることを前提に油入電気機器の残存寿命LR と初期寿命LO との関係を上記のように表わしたものである。式中rは寿命劣化率であり、nは時間である。余寿命を推定するには、LO を平均重合度の初期値とし、一定期間運転後の絶縁紙平均重合度LR は CO2+CO量等から推定する。前記式のLO 、LR 、nに当該油入電気機器の具体的な数値を代入すればrを算出することができ、LO とrを定数とすれば、LR をnの関数とすることにより寿命曲線を得ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような油入電気機器の寿命診断方法では、測定した絶縁紙劣化指標成分量を絶縁紙平均重合度または平均重合度残率に換算する必要があり、この換算に必要な実験結果または実器の解体調査結果から得られた両者の関係の幅が大きく、換算式の精度が十分でないという問題点があった。
【0006】
また、 Ackerの式などの劣化特性式も油入電気機器の寿命診断における有効性が未だ検証されていないという問題点があった。
従って、本発明の課題は、このような問題点を解決し、簡便で、かつ精度の高い油入電気機器の寿命診断方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、前記の本発明の課題を解決するため、鋭意検討を重ねたところ、油入電気機器の実器の解体調査結果から得られた絶縁紙劣化指標成分量と絶縁紙平均重合度450以下との関係に確率の考え方を導入することにより、従来から行なわれている絶縁紙劣化指標成分量の平均重合度および平均重合度残率への換算をしなくとも油入電気機器の寿命の診断可能な方法に想到し、これらの知見に基づいて本発明の完成に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、油入電気機器の余寿命を絶縁油中に生成した絶縁紙劣化指標成分量から推定する油入電気機器の寿命診断方法であって、
1)前記油入電気機器から採取した絶縁油中の絶縁紙劣化指標成分量を測定し、
2)前記1)で得られた絶縁紙劣化指標成分量の測定値から、下記のステップ▲1▼および▲2▼を経て作成された関係図IIを用いて、当該油入電気機器が、絶縁紙平均重合度450以下である油入電気機器に属する確率(以下、本明細書において必要に応じ、「絶縁紙平均重合度450以下である確率」という。)を求め、
ステップ▲1▼:統計的解析の可能な台数の油入電気機器から収集した過去の解析結果に基づいて絶縁紙劣化指標成分量と絶縁紙平均重合度との関係図Iを作成し、
ステップ▲2▼:関係図Iに基づいて絶縁紙劣化指標成分量と絶縁紙平均重合度450以下である油入電気機器に属する油入電気機器の確率0%〜100%との対応関係を示す関係図IIを作成する。
3)前記2)で得られた当該油入電気機器の前記確率および当該油入電気機器の現在まで経時的に測定された絶縁紙劣化指標成分量から求めた確率と対応する運転時間とに基づいて作成された関係図III を用いて当該油入電気機器の余寿命を推定する
ことを特徴とする油入電気機器の寿命診断方法に関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の油入電気機器の寿命診断方法に適用される油入電気機器は、コイル等の巻線部に絶縁紙が使用され、かつ絶縁油中に浸漬される構造のものであり、具体的には、油入変圧器、油入リアクトル等を挙げることができる。また、これらの電気機器については、完全密閉型および開放型のいずれにも適用することができる。
【0010】
油入電気機器に用いられる絶縁油としては、鉱油または合成油を挙げることができる。鉱油は、沸点約250℃〜約400℃の炭化水素油であり、ナフテン系炭化水素、パラフィン系炭化水素および芳香族系炭化水素等から構成されている。炭化水素油としては、通常、水素化精製等により硫黄化合物、窒素化合物、酸素化合物および不飽和成分等の不純物を除去したものが用いられるが、電気的性質および熱・酸化安定性の観点から両者を満足させる適度の精製が行なわれ、硫黄化合物、窒素化合物等の熱・酸化安定性に対する有効成分の含有量が制御されている。合成油としてはアルキルベンゼン、シリコーン油等が挙げられる。さらに、これらの鉱油および合成油の混合物およびこれらを基油としベンゾトリアゾール等の添加剤を加えたものも使用することができる。
【0011】
絶縁紙の主たる構成材料は、セルロース化合物からなり、前記構造式を有するものを用いることができる。絶縁紙の平均重合度として1000〜1200のもの、すなわち、前記セルロース化合物の式中、nが1000〜1200のものが有用である。絶縁紙は、長期間にわたって使用することが可能であるが、その長期間の使用により主成分のセルロース化合物の分解、酸化等により劣化し機械的強度、平均重合度が低下する。従って、本発明の油入電気機器の寿命診断方法においては、このような現象に着目し、平均重合度450以下を絶縁紙の寿命に達した段階とした。絶縁紙の寿命は、絶縁紙の引張強さ等の機械的強度に依存し、その引張強さは平均重合度と密接な関係にあることが従来の実測データに基づいて検証されているので平均重合度を絶縁紙の寿命診断の指標として利用することができる。
【0012】
次に、本発明の油入電気機器の寿命診断方法について具体的に説明すると、絶縁紙劣化指標成分量の測定結果に基づいて、絶縁紙平均重合度450以下である確率を求め、その推移により油入電気機器の余寿命を推定することからなるものであり、下記の三段階の工程から構成される。
【0013】
第一工程 絶縁油試料を採取し絶縁紙劣化指標成分量を測定する。
第二工程 絶縁紙劣化指標成分量の測定値から、前記ステップ▲1▼および▲2▼を経て前記関係図Iから誘導された関係図IIを用いて、該絶縁紙劣化指標成分量に対応する絶縁紙平均重合度450以下である確率を求める。
第三工程 第二工程で得られた現在の絶縁紙平均重合度450以下である確率および当該油入電気機器について現在まで経時的に測定された絶縁紙劣化指標成分量から求めた絶縁紙平均重合度450以下である確率と運転時間との関係図III を作成し、該確率の推移により油入電気機器の余寿命を推定する。
【0014】
図1において第一の工程が(1)および(2)からなり、第二の工程および第三の工程がそれぞれ(3)および(4)である。図中、(a)および(b)は、第一の工程を機能させるために提供される情報であり、(a)は関係図I、(b)は関係図IIを示す。また、(c)は工程(4)のために提供される情報であり、関係図III を示す。各工程についてさらに具体的に説明する。
【0015】
第一の工程は、
運転中の油入電気機器から採取した絶縁油中の絶縁紙劣化指標成分量を測定することを内容とする。絶縁紙劣化指標成分としては、 CO2+CO、フルフラールまたはアセトンを挙げることができ、いずれの成分も本発明の油入電気機器の寿命診断方法に用いることができる。絶縁油中に生成した絶縁紙劣化指標成分量の測定方法は特に限定されるものではなく各種の測定方法を利用することができるが、 CO2+COの含有量の測定方法は、石油学会規格JPI−5R−51−98「油入電気機器からのガス及び絶縁油の採取と遊離及び溶存ガス分析方法」を利用することが好ましい。具体的には、絶縁油に溶解しているガスを抽出し、その抽出ガスをガスクロマトグラフを使用して分析する。分析に際しては油中ガスの抽出装置、抽出方法、抽出手段その他、測定条件は当該規格に従うこととし、また油中ガス濃度を正確に求めるには検量線が用いられる。このようにして、絶縁紙単位重量当たりの CO2+CO量(ml/g)を算出することができる。
【0016】
また、絶縁油中に含有されるフルフラール量は、石油学会規格JPI−5S−58−99「電気絶縁油フルフラールの定量試験方法」(1999)により、アセトン量は、電気協同研究第54巻第5号(その1)「油入変圧器の保守管理」(1999)により測定することができる。
【0017】
第二の工程において、
先ず、関係図Iを作成する。関係図Iは、統計的解析が可能な台数の油入電気機器から収集した過去の解析結果に基づいて作成した絶縁紙劣化指標成分量と絶縁紙平均重合度との関係を示すものである。統計的解析が可能な台数は、限定するものではないが、例えば、約60台以上であれば好ましい。
【0018】
関係図Iの具体例として図2が示される。図2は、油入電気機器、具体的には90台以上の変圧器、リアクトル等の解体による経年劣化度の調査により得られた絶縁紙劣化指標成分量と対応する絶縁紙平均重合度の各測定値を収集し、全測定値数の約90%以上が含まれるように、該測定値を用いて下限範囲ラインと上限範囲ラインを設定することにより定まる絶縁紙劣化指標成分量と絶縁紙平均重合度との関係を図示したものである。
【0019】
図2は、絶縁紙劣化指標成分として CO2+COを利用した具体例を示すものであり、絶縁油中の CO2+CO量と絶縁紙平均重合度との関係は、下限範囲ライン2および上限範囲ライン1を設定することにより図示されている。この場合、下限範囲ライン2と上限範囲ライン1との間の巾は、実測値の分布の状況により決定される。
【0020】
図2についてさらに詳細に説明すると、A点は、絶縁紙平均重合度450ライン3と下限範囲ライン2と、さらに CO2+CO量ライン4とが交叉する点であり、AA’間が0%を示すことから、▲1▼ CO2+CO量が 0.2ml/g のとき、▲2▼絶縁紙平均重合度450以下である確率が0%であることを示す。
【0021】
b点は、絶縁紙平均重合度450ライン3と CO2+CO量ライン5とが交叉する点であり、巾BB’間のうちBb間が25%となった点を示すことから、▲1▼ CO2+CO量が0.37ml/g のとき、▲2▼絶縁紙平均重合度450以下である確率が25%であることを示す。
【0022】
また、c点は、絶縁紙平均重合度450ライン3と CO2+CO量ライン6とが交叉する点であり、CC’間のうちCc間が50%の点を示すことから、▲1▼ CO2+CO量が0.67ml/g のとき、▲2▼絶縁紙平均重合度450以下である確率が50%であることを示す。
【0023】
d点は、絶縁紙平均重合度450ライン3と CO2+CO量ライン7とが交叉する点であり、DD’間のうちDd間が75%の点を示すことから、▲1▼ CO2+CO量が 1.2ml/g のとき、▲2▼絶縁紙平均重合度450以下である確率が75%であることを示す。
【0024】
さらに、E’点は、絶縁紙平均重合度450ライン3と上限範囲ライン1と交叉する点であり、EE’間が100%を示すことから、▲1▼ CO2+CO量が 2.0ml/g のとき、▲2▼絶縁紙平均重合度450以下である確率が100%であることを示す。
【0025】
以上説明したように、図2の事例は、実器の解体調査により得られた実測値を用いた CO2+CO量に対する絶縁紙平均重合度との関係において、下限範囲ライン2と交叉するA点の CO2+CO量が 0.2ml/g 、絶縁紙平均重合度450以下である確率が0%であり、一方、上限範囲ライン1と交叉するE’点の CO2+CO量が 2.0ml/g で絶縁紙平均重合度450以下である確率が100%であることを示すものである。このように、 CO2+CO量が 0.2ml/g 〜 2.0ml/g においては絶縁紙平均重合度450以下である確率が0%〜100%であり、この範囲を要注意レベルの範囲とされ、確率100%において危険レベルに達したものと判断される。
【0026】
次に、関係図Iに基づいて関係図IIを作成する。
関係図IIは、絶縁紙劣化指標成分量と絶縁紙平均重合度450以下である確率との関係を示す。関係図IIの具体例として図3を挙げる。図3は、図2で示す CO2+CO量と絶縁紙平均重合度との関係から誘導されたものであり、 CO2+CO量に対する絶縁紙平均重合度450以下である確率0%〜100%の関係を示すものである。
【0027】
従って、絶縁油中の CO2+CO量の測定値を得ることができれば、図3を用いることにより絶縁紙平均重合度450以下である確率を求めることができる。例えば、変圧器絶縁油中の CO2+CO量を測定し、絶縁紙単位重量当たりの CO2+CO量が 0.4ml/g である場合、絶縁紙平均重合度450以下である確率約26%が得られる。
【0028】
本発明の油入電気機器の寿命診断方法における第三の工程は、前記第二の工程において得られた現在の絶縁紙平均重合度450以下である確率および現在までに経時的に測定された絶縁紙劣化指標成分量から求めた絶縁紙平均重合度450以下である確率と運転時間との関係を示す油入電気機器毎の関係図III(寿命曲線)を作成し、これを用いて当該油入電気機器の余寿命を推定することを内容とする。
【0029】
具体的に説明すると図4は、関係図III を例示したものであり、絶縁油中の CO2+CO量の経年の測定結果(●印)と現在の測定結果(○印)をプロットすることにより得られた寿命曲線を示すものである。寿命曲線は、通常、運転条件等の違いにより油入電気機器毎に絶縁紙平均重合度450以下である確率100%に到達する時間が異なっている。また、寿命点については油入電気機器の特性等を考慮して絶縁紙平均重合度450以下である確率を100%、90%、80%など任意に設定することが可能である。図4には、曲線▲1▼で示す運転時間5年、10年および15年で絶縁紙平均重合度450以下である確率がそれぞれ21%、50%および68%の変圧器、曲線▲2▼で示す運転時間10年、20年および30年で絶縁紙平均重合度450以下である確率がそれぞれ21%、50%および68%の変圧器の寿命曲線が示されている。
【0030】
また、過去における経年の CO2+CO量の測定結果が存在せず、初めて測定した場合、寿命曲線は、 CO2+CO量が運転開始から現在まで一定速度で増加したとして作成し、次回の測定結果の加入により寿命曲線を修正すればよい。
【0031】
前記の寿命曲線の説明において、曲線▲1▼の変圧器の場合、運転時間15年における余寿命は、寿命点を絶縁紙平均重合度450以下である確率100%とすると15年、75%とすると2年を得ることができる。
【0032】
また、曲線▲2▼の変圧器の場合、運転時間30年における余寿命は、寿命点を絶縁紙平均重合度450以下である確率100%とすると30年、75%とすると6年を得ることができる。
【0033】
このようにして、油入電気機器の絶縁油中の絶縁紙劣化指標成分量の測定値から、絶縁紙平均重合度への換算を要することなく、絶縁紙平均重合度450以下である確率をもって余寿命を推定することができる。
【0034】
従って、本発明によれば、
絶縁油中の絶縁紙劣化指標成分量から前記の工程を経ることにより絶縁紙平均重合度450以下である確率を求め、その確率の推移により油入電気機器の寿命を推定する方法を提供するものである。
【0035】
【実施例】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。もっとも本発明は、実施例等により何ら限定されるものではない。なお、実施例等で利用した測定方法は次の通りである。
【0036】
(1)CO2 +CO量
石油学会規格JPI−5R−51−98「油入電気機器からのガス及び絶縁油の採取と遊離及び溶存ガス分析方法」(1998)による。
(2)絶縁紙平均重合度
日本電機工業会規格JEM1455「変圧器用絶縁紙の平均重合度測定方法」(1991)による。
【0037】
実施例1
CO 2 + CO 量の測定
変圧器A(運転時間20年)から絶縁油を採取し、前記石油学会規格JPI−5R−51−98の方法により CO2+CO量を測定し、絶縁紙1g当たり0.92mlの結果を得た。
【0038】
絶縁紙平均重合度450以下である確率の算出
図3を用いて CO2+CO量0.92ml/g から絶縁紙平均重合度450以下である確率を求めたところ65%であった。
【0039】
ここで用いた図2および図3は次のようにして作成した。
図2は、絶縁紙劣化指標成分として CO2+COを用いた場合について、その生成量と絶縁紙平均重合度との関係を示しており、電気協同研究第54巻第5号(その1)から引用した。図中の2本の曲線は99台の変圧器、リアクトル等の実器の解体調査結果から得られた範囲を示しており、絶縁紙平均重合度450に対する CO2+CO量は 0.2ml/g 〜2.0 ml/g となり、この濃度範囲を要注意レベルとした。なお、0.2 ml/g 以下は絶縁紙平均重合度450以下である確率が0%、2.0 ml/g 以上は100%である。絶縁紙平均重合度450以下である確率の設定は、要注意レベルについて行ない、図中には例として確率25%、50%、75%の場合について直線(実線)で示した。
【0040】
図3は、絶縁紙劣化指標成分として CO2+COを用いた場合について、図2の要注意レベルにおける CO2+CO量と絶縁紙平均重合度450以下である確率0%〜100%との関係をプロットしたものである。この関係を用いて CO2+CO量から絶縁紙平均重合度450以下である確率を求めた。
【0041】
余寿命の推定
変圧器Aの過去の経時的に測定した CO2+CO量をプロット(●印)した図5に、今回運転時間20年で絶縁紙平均重合度450以下である確率の評価結果を追加プロット(○印)し、寿命曲線を作成した。
この寿命曲線から変圧器Aについて同一負荷条件では余寿命は確率100%の場合26年、確率90%の場合は16年となり、確率80%では8年の結果を得た。
【0042】
実施例2
変圧器Bについて20年間運転した時点で初めて CO2+CO量を測定したところ0.60ml/gであった。この測定結果から図3を用いて、絶縁紙平均重合度450以下である確率46%の結果を得た。この結果に基づき図6に示す変圧器Bの寿命曲線を作成した。なお、変圧器Bの寿命曲線は、過去データのない場合であり、 CO2+CO量が運転開始から現在まで一定速度で増加したとして作成した。
この結果、変圧器Bについて、同一負荷条件では余寿命は確率80%の場合23年、確率86%以上で30年以上の結果を得た。
【0043】
実施例3〜6
変圧器C〜Fについて、それぞれ、絶縁油試料を採取し、 CO2+CO量を測定して、表1に示す結果を得た。これらの結果から、図3を用いて絶縁紙平均重合度450以下である確率を求めた。この確率の値を過去の経時的に測定して得られた集積値に追加することにより各変圧器の寿命曲線を作成し、これに基づいて確率80%を寿命点とした場合の余寿命を推定した。各結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
比較例1
実施例1で測定した変圧器Aの CO2+CO量(0.92ml/g)を用いて、従来の方法により余寿命を推定した。図2から、 CO2+CO量0.92ml/gに対する絶縁紙平均重合度は263〜555であり、中央値は409となる。寿命点を絶縁紙平均重合度450とすると、変圧器Aはすでに寿命に達していることになる。
【0046】
比較例2
実施例2で測定した変圧器Bの CO2+CO量(0.60ml/g)を用いて、従来の方法により余寿命を推定した。図2から、 CO2+CO量0.60ml/gに対する絶縁紙平均重合度は305〜621であり、中央値は463となる。寿命点を絶縁紙平均重合度450、LO =1000として Ackerの式を用いて変圧器Bの余寿命を推定すると1年となる。
【0047】
実施例および比較例から、従来の寿命診断方法によれば、絶縁紙劣化指標成分量の絶縁紙平均重合度への換算にはかなりばらつきが大きく、精度のよい推定ができないことがわかる。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の油入電気機器の寿命診断方法によれば、従来の方法による絶縁紙劣化指標成分量から絶縁紙平均重合度への換算を必要とすることなく、絶縁紙平均重合度450以下である確率を求め、この確率の推移により寿命曲線を作成し余寿命を推定することができるので、簡便でありかつ寿命診断の精度が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の油入電気機器の寿命診断方法のフローチャートである。
【図2】変圧器、リアクトル等の実器の解体調査結果の CO2+COについて、 CO2+CO量と絶縁紙平均重合度との関係を示すグラフである。
【図3】図2から求めた CO2+CO量と絶縁紙平均重合度450以下である確率との関係を示すグラフである。
【図4】絶縁紙平均重合度450以下である確率の推移で表わした寿命曲線である。
【図5】実施例1の変圧器Aについて、絶縁紙平均重合度450以下である確率の推移で表した寿命曲線である。
【図6】実施例2の変圧器Bについて、絶縁紙平均重合度450以下である確率の推移で表した寿命曲線である。
Claims (2)
- 油入電気機器の余寿命を、絶縁油中に生成した絶縁紙劣化指標成分量から推定する油入電気機器の寿命診断方法であって、
1)前記油入電気機器から採取した絶縁油中の絶縁紙劣化指標成分量を測定し、
2)前記1)で得られた絶縁紙劣化指標成分量の測定値から、下記のステップ1およ び2を経て作成された関係図IIを用いて、当該油入電気機器が、絶縁紙平均重合 度450以下である油入電気機器に属する確率を求め、
ステップ1:統計的解析の可能な台数の油入電気機器の解体による調査により、 収集した過去の絶縁紙劣化指標成分量の測定値と該測定値に対応す る絶縁紙平均重合度の測定値の全測定値数の90%以上が含まれる ように、前記絶縁紙劣化指標成分量と前記絶縁紙平均重合度との関 係において、上限範囲ライン1および下限範囲ライン2を設定し、 これらの二種のラインならびにライン5、6および7と交叉し、該 交点でそれぞれ絶縁紙平均重合度450以下である確率を示す絶縁 紙平均重合度450ライン3を設定した関係図Iを作成する。
ステップ2:関係図Iに基づいて絶縁紙劣化指標成分量と絶縁紙平均重合度 450以下である油入電気機器に属する油入電気機器の確率0%〜 100%との対応関係を示す関係図IIを作成する。
3)前記2)で得られた当該油入電気機器の前記確率および当該油入電気機器の現在 まで経時的に測定された絶縁紙劣化指標成分量から求めた絶縁紙平均重合度 450以下の確率と対応する運転時間とに基づいて作成された関係図III を用い て前記油入電気機器の余寿命を推定する
ことを特徴とする油入電気機器の寿命診断方法。 - 前記絶縁紙劣化指標成分が、二酸化炭素および一酸化炭素(CO2+CO)、フルフラールまたはアセトンである請求項1に記載の油入電気機器の寿命診断方法。
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