本発明は、少量の塗液でもって円筒芯体表面に塗布することが可能な環状塗布装置に関し、特に、塗膜に気泡を生じさせにくい環状塗布装置に関する
円筒芯体表面に塗布をすることは広く行われており、一般的には、円筒芯体を塗液に浸漬して引き上げる浸漬塗布方法が知られている。このような浸漬塗布方法では、円筒芯体が余裕で入る塗布槽の容量分の液量が必要であるため、円筒芯体が大きくなると、必要とする塗液は多量になる。ところが、塗液が電子写真感光体用塗料や、ポリイミド樹脂溶液のように、高価な液体の場合には、必要液量が多くなることは、はなはだ不都合である。
浸漬塗布方法に代わり、例えば、特許文献1記載のように、環状塗布槽で塗布する方法も知られている。この方法は、塗布装置の断面図を図10に示すように、環状塗布槽103の底面に環状シール材108を取り付け、その中に円筒芯体101を通し、塗液102を入れ、環状塗布槽103から円筒芯体101を相対的に上昇させ、円筒芯体101の表面に塗膜104を形成するものである。円筒芯体101の上下には、中間体109が設けられるが、円筒芯体101同士を積み重ねても良い。
上記環状塗布方法の場合、環状シール材108は円筒芯体101の表面に接し、塗液102の漏洩を防止しているのであるが、円筒芯体101を環状塗布槽103から相対的に上昇させる際、環状シール材108が、円筒芯体101と中間体109のつなぎ目、あるいは円筒芯体101同士のつなぎ目を通過する箇所がある。つなぎ目は、全く段差なく平坦に形成されていれば問題ないが、現実のつなぎ目というのは、円筒芯体101又は中間体109の外径の誤差、もしくは真円度の不足、つなぎ目における位置ずれ、もしくは多少の傾き、「面取り」と称する直角の角を少し滑らかにする処置、等の理由によって、少なからぬ段差が生じる。
環状シール材108がそのような段差を通過する時は、環状シール材108が振動したりして、塗液102が漏洩したり、気泡が発生して塗液中に気泡が持ち込まれる場合がある。さらに、環状シール材108が磨耗し、磨耗粉が塗液102に混入することもある。
また、塗布終了時に塗液102が漏洩したり、気泡が発生して塗液中に気泡が持ち込まれる場合がある。この推定メカニズムを図11に示す。まず、塗布中は円筒芯体101の上昇に伴う摩擦や液中の圧力変化で、環状シール材108は環状塗布槽103側(円筒芯体101の通過方向)へと引きずられる(図11(a))。しかし、塗布終了時は摩擦が急激に低下するため、環状シール材108は元の形状へ復元しようとする(図11(b))。このとき、環状シール材108の形状復元に塗液が追従できない場合、環状シール材108と円筒芯体101の接触部分より気泡が発生する(図11(c))。その際に、やはり環状シール材108が磨耗することもある。
いずれも塗布作業には好ましくないが、特に、塗液中に気泡や磨耗粉が入ることは、塗膜にも気泡や磨耗粉が入って品質を低下させることにつながるので、非常に好ましくない。例えば、電子写真装置における感光体、帯電体、転写体及び定着体などに、ポリイミド(以後、PIと略す)樹脂の無端ベルトが用いられるが、このベルトに気泡、もしくは気泡痕、あるいは磨耗粉があると明確に画像へ現れ、画質の低下を招く。したがって気泡や磨耗粉の混入は重要な課題といえる。
一方、浸漬塗布方法にて比較的高粘度の塗液を塗布すると、膜厚が厚くなり過ぎたり、液の垂れがひどく発生する、という問題がある。この問題を解消するために、本発明者は、特許文献2記載のように、円筒芯体の外径よりも大きな内径の穴を設けた環状体を塗液上に設け、その穴を通して塗膜の厚さを調整する塗布方法を出願した。この方法は前記環状塗布方法にも展開できるが、粘度が高い塗液に、上述の如く気泡や磨耗粉が入ると、極めて抜けにくく、気泡や磨耗粉の問題はより深刻である。
なお、上記問題が顕著になる比較的高粘度とは、粘度が200mPa・s以上特に、400mPa・s以上の場合である。但し、粘度が200mPa・s以上の塗液は、従来の浸漬塗布方法において常に課題であった上端部での垂れは少なくなる利点がある。
また、PI樹脂で無端ベルトを作製するには、例えば、特許文献3記載のように、芯体の表面に浸漬塗布法によってPI前駆体溶液を塗布して乾燥し、加熱した後、PI樹脂皮膜を芯体から剥離する方法がある。この方法では、外型に載せ換える工数が不要なので有利である。但し、芯体の表面に、浸漬塗布法によってPI前駆体溶液を塗布すると、一般にPI前駆体溶液は粘度が非常に高いために、上述の記載の如く、塗膜の付着量が多くなり、膜厚が厚くなり過ぎる問題があったので、改善が望まれていた。
特開昭58−11064号公報
特開2002−91027号公報
特公昭64−1026号公報
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、浸漬塗布方法よりも塗液の必要量が少なくて済む環状塗布方法を利用しても、気泡や磨耗粉が発生しにくい環状塗布装置及び環状塗布方法を提供することを目的とする。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
<1> 塗液を保持すると共に、円筒芯体の外径よりも小さい穴を持つ環状シール材を底部に有する環状塗布槽を具備し、
環状シール材の穴に円筒芯体を通し、前記環状塗布槽から前記円筒芯体を相対的に上昇させ、前記円筒芯体の表面に前記塗液を塗布する環状塗布装置において、
前記環状シール材は、サンドスラリー磨耗量が20mg以下の第1部材と、サンドスラリー磨耗量が20mgを越える第2部材と、を前記第1部材が円筒芯体と当接されるよう貼り合わせて構成されたことを特徴とする環状塗布装置。
<2> 前記サンドスラリー磨耗量が20mg以下の第1部材と、サンドスラリー磨耗量が20mgを越える第2部材と、が熱融着により貼り合わせて構成された<1>に記載の環状塗布装置。
<3> 前記第1部材が、多孔質構造を有するポリエチレンである<1>に記載の環状塗布装置。
<4> 前記環状シール材は、前記環状塗布槽に取り付けた後、前記円筒芯体を前記環状シール材の穴に嵌め込んだ状態で前記環状シール材の軟化点以上に加熱して変形されてなる<1>に記載の環状塗布装置。
<5> 前記環状シール材に設ける穴は、円筒芯体の外径よりも小さい最大径を持ち、その形状が、楕円形、または波型の縁部を有する円形である<1>に記載の環状塗布装置。
<8> サンドスラリー磨耗量が20mg以下の第1部材と、サンドスラリー磨耗量が20mgを越える第2部材と、を前記第1部材が円筒芯体と当接されるよう貼り合わせて構成され、円筒芯体の外径よりも小さい穴を持つ環状シール材を底部に有する環状塗布槽に塗液を保持させ、前記環状シール材の前記穴に前記円筒芯体を通し、前記環状塗布槽から前記円筒芯体を相対的に上昇させ、前記円筒芯体の表面に前記塗液を塗布する環状塗布方法において、
前記円筒芯体への塗布終了時には、円筒芯体の相対的上昇速度を1.0秒以上かけて減速させて停止することを特徴とする環状塗布方法。
本発明によれば、浸漬塗布方法よりも塗液の必要量が少なくて済む環状塗布方法を利用しても、気泡や磨耗紛が発生しにくい環状塗布装置を提供することができる。また、粘度の高い塗液を用いて、その膜厚が比較的厚い場合であっても、やはり気泡や磨耗紛を生じさせず、均一な膜厚で塗布できる塗布装置を提供することもできる。
以下、本発明の環状塗布装置及び環状塗布方法について、図面を用いて説明する。
図1は環状塗布装置の概略断面図である。但し、塗布主要部のみを示し、周辺部は省略した。なお、本明細書において、「円筒芯体上に塗布する」とは、円筒芯体の表面上、及び該表面に層を有する場合はその層上に塗液を塗布する意味である。また、「円筒芯体を上昇」とは、塗布液面との相対関係であり、「円筒芯体を停止し、塗布液面を下降」させる場合を含む。
図1において、塗液2を環状塗布槽3に入れ、その下部から上部へ円筒芯体1を通過させると、塗布が行われ、塗膜4が形成される。環状塗布槽の底部には、塗布時に円筒芯体1を通すための穴10が設けられた環状シール材8を取り付ける。また、軸方向が垂直方向(重力方向)となるように配置された円筒芯体1は、両端面が中間体9に固定され、不図示の昇降装置に設置された中間体9を介して垂直方向に移動される。
環状シール材8は、サンドスラリー磨耗量が20mg以下とする。環状シール材8をサンドスラリー磨耗量が20mg以下として硬くすることで、塗布時における環状シール材8と円筒芯体1との摩擦を低減させると共に、その変形量を小さくし、円筒芯体1の段差(後述する円筒芯体1と中間体9との段差など)に起因する環状シール材8のはじけを抑制し、気泡の発生を抑制する。
また、塗布時における環状シール材8と円筒芯体1との摩擦が低減することによって磨耗しにくくなり、磨耗紛の発生を抑制し、磨耗紛が塗膜中に異物として混入することが防止される。
環状シール材8のサンドスラリー磨耗量は、好ましくは1〜20mgであり、さらに好ましくは1〜5mgである。
環状シール材8の構成材料として、耐溶剤性を有し、サンドスラリー摩耗量が上記範囲の樹脂材料が使用されるが、具体的には、例えば、フッ素樹脂(例えばポリテトラフロロエチレン:サンドスラリー摩耗量18mg)、硬質(高分子量)ポリエチレン(重量平均分子量50000〜500000、サンドスラリー摩耗量15mg)、超高分子量ポリエチレン(重量平均分量1000000〜6000000、サンドスラリー摩耗量3mg)、等が挙げられる。また、それらの多孔質材料であってもよい。
なお、サンドスラリー摩耗量が20mgを越えるものとしては、例えば軟質ポリエチレン(重量平均分子量2000〜5000、サンドスラリー摩耗量100mg)、ポリプロピレンサンドスラリー摩耗量40mg)は、摩耗しやすく、磨耗粉を生じやすいので、本発明に使用する環状シール材8の構成材料としては適さない。
ここで、サンドスラリー摩耗量が20mg以下の材料として、所望の大きさや厚みのものがない場合、あるいは多孔質であって液が漏れる場合、等においては、サンドスラリー摩耗量が20mg以下の材料がどうしても必要となる部分は、少なくとも前記円筒芯体との当接部分だけであるので、その部分だけサンドスラリー摩耗量が20mg以下の材料で構成し、他の部分はサンドスラリー摩耗量が20mgを越える材料で構成しても良い。
このような構成の環状シール材8としては、例えば、サンドスラリー磨耗量が20mg以下の第1部材と、サンドスラリー磨耗量が20mgを越える第2部材と、を前記第1部材が円筒芯体と当接されるよう貼り合わせて構成が挙げられる。具体的には、環状シール材8は、図8のように、サンドスラリー磨耗量が20mg以下の第1部材8aとサンドスラリー摩耗量と20mgを越える第2部材8bを積層した構成することができる。この構成では、第1部材が図中下側に設けられており、環状シール材8の穴10に円筒芯体1が挿入されたとき、円筒芯体1はサンドスラリー磨耗量が20mg以下の第1部材8aにのみ当接することとなる。
そして、本発明では、環状シール材8としては本構成が採用される。
また、環状シール材8は、図9のように、第1部材8aと第2部材8bとがその端部同士で貼り合わされた構成が挙げられる。この構成では、第1部材に穴10が設けられており、環状シール材8の穴10に円筒芯体1が挿入されたとき、円筒芯体1はサンドスラリー磨耗量が20mg以下の第1部材8aにのみ当接することとなる。
なお、いずれの構成も、第1部材が円筒芯体1と当接し、第2部材8bが円筒芯体1と当接しないように構成する。この両者を張り合わせる方法としては、サンドスラリー磨耗量が20mg以下の材料が接着剤では接着しにくい材料であることから、熱融着が好ましい。
また、サンドスラリー磨耗量の測定方法は以下のとおりである。まず、砂(2850g)と水(700g)を入れた容器に、厚さ3mm、幅22mm、長さ25mmの板を、砂面に対して直角にしてシャフトに取付け、これをモーターに直結して、上記組成の砂と水のスラリーの中に入れ、500rpmで回転させ、60000回転後の摩耗量を測定する。そして、下記式によって算出する。
式:摩耗量=試験前の重量―試験後の重量
環状シール材8の厚みとしては、0.1〜3mmが好ましく、より好ましくは0.2〜1mmである。厚みを上記範囲とすることで、より効果的に、環状シール材8と円筒芯体1との摩擦を低減させると共に、磨耗紛の発生を抑制させることができる。
環状シール材8は、図2に示すように、環状塗布槽3に連結される環状シール材本体8aと、環状シール材本体8aと連続して形成されると共に穴10を形成し、円筒芯体1の上昇方向に向かって突出したテーパー状の突出片8bと、から構成させることがよい。
予め、環状シール材8の突出片8b(穴10縁部周辺)を、円筒芯体1が通過させるときと同様に通過方向(上昇方向)に突出させて盛り上がった形状にしておくことで、円筒芯体1の通過時、環状シール材8の突出片8b(穴10縁部)の弾性変形が少なくなり、円筒芯体1の段差(例えば円筒芯体1と中間体9との段差など)に起因する環状シール材8のはじけを抑制し、気泡の発生を抑制する。また、円筒芯体1を穴10に通し易くなる。
環状シール材8の突出片8b(穴10縁部)は、略筒状で、基端側(環状シール材本体8aとの連結部側)から先端側(穴10縁部側)に向けて漸次内径寸法が小さくなるテーパー状となっている。
環状シール材8を上記形状とするには、例えば、環状シール材8を環状塗布槽3に連結した後、円筒芯体1を穴10に嵌め込んだ状態で、環状シール材8の軟化点以上に加熱させる方法が挙げられる。また、成形型により上記形状となるように形成してもよい。
環状シール材8の中央には、図3に示すように、円筒芯体1の外径よりも小さい穴10を設ける。環状シール材8に設けられる中央の穴10は、円筒芯体1を通させると、円筒芯体1の外径よりも小さいため、円筒芯体1の通過方向に盛り上がるように弾性変形する。この際、環状シール材8の穴10の形状が円形であると、図5に示すように、円形の穴10により形成される環状シール材8縁部は円筒芯体1と円筒芯体1軸方向に垂直な面に対して角度をなさず、直線状に当接することになる。このため、環状シール材8縁部の円筒芯体1表面との当接部13は、円筒芯体通過方向と直交することになり、例えば、円筒芯体1の表面に段差12があると、段差12の通過する際、段差12に環状シール材8縁部(当接部13)が引っ掛かり、一気に弾けて振動し、塗膜内に気泡が入ってしまう。特に、この現象は、上述のように、中間体9と円筒芯体1とのつなぎ目や、2以上の円筒芯体1のつなぎ目に起因する段差があると生じ易くなる。
これに対し、図4に示すように、楕円形の穴10により形成される環状シール材8縁部は、円筒芯体1と円筒芯体1軸方向に垂直な面に対して角度をなして、曲線状に当接することとなる。このため、環状シール材8の円筒芯体1表面との当接部11は、円筒芯体通過方向と直交しておらず、円筒芯体1の表面に段差12があっても、段差12が環状シール材8縁部(当接部11)に引っ掛かり難く、段差12は環状シール材8縁部に対し順次なめらかに通過することになるので、環状シール材8がはじけて振動することがなくなる。
環状シール材8に設けられる楕円形の穴10は、その長径が円筒芯体1の外径より、やや小さく作られる。具体的には、材質や厚みにもよるが、0.5〜3mm小さいことが好ましい。これが少ないと液漏れの虞があり、多いと接触面の曲線状態が小さくなる。楕円形の穴10は、その短径が長径よりさらに1〜5mm小さいことが好ましい。これが少ないと当接部の曲線状態が小さくなり、多いと内径が小さくなりすぎて、円筒芯体1を通すことが困難になる。
環状シール材8に設けられる穴10の形状は、楕円形に限られず、上述のように当該穴10に円筒芯体1を通させるとき、該穴10により形成される環状シール材8縁部が円筒芯体1と円筒芯体1軸方向に垂直な面に対して角度をなして当接するような形状、例えば、図6に示すように、波型の縁部を形成する形状の穴10であってもよく、楕円形と同様の機能を有することとなる。なお、これらの穴10の形状は、その最大径が円筒芯体1の外径よりもやや小さくなるように構成する。
本発明の環状塗布装置及び環状塗布方法においては、上記構成により円筒芯体1の外周面に塗液2を塗布される。この際、円筒芯体1への塗布終了時と同時に円筒芯体1の上昇を止めると、上述のように、環状シール材8と円筒芯体1との摩擦が急激に低下し、環状シール材8の形状復元変化に塗液2が追随できなくなり、気泡の発生が発生してしまうことがある。
そこで、本発明では、前記円筒芯体の上昇速度Vsを1.0秒以上かけて減速させて、塗布を終了させる。このように、上昇速度Vsを1.0秒以上という時間をかけて徐々に減速させて塗布を終了させることで、環状シール材8と円筒芯体1との摩擦の急激な低下を抑制し、形状復元変化に塗液2が追随できるようになり、塗布終了に伴う円筒芯体1の停止に起因する気泡の発生が抑制される。
ここで、この塗布終了は円筒芯体1の停止、即ち上昇速度Vs=0であることを意味する。言い換えれば、時間tをかけて減速させるとは、円筒芯体1の減速開始から停止までに時間tを掛けて、円筒芯体1を停止させることである。この円筒芯体1の減速開始から停止まで時間は、1.0秒以上であり、円筒芯体1の上昇速度(塗布速度)や液粘度に影響されるが、0.1〜10秒が好ましく、より好ましくは、0.3〜5秒である。
円筒芯体1の減速は一次関数的に減速してもよいし、二次関数的に減速してもよい。数式で表せば、式(a)V=Vs−kt(kは定数)、式(b)V=Vs−k2t−k1t2(k1、k2は定数)で示される。Vは減速後の上昇速度(m/min)、Vsは減速前の上昇速度(m/min)、tは減速開始からの時間を示す。このため、V=0になる時間tが、円筒芯体1の減速開始から停止まで時間を示す。
また、定数k、k1、k2は、塗布速度や塗布液粘度、環状シール材の硬度、環状シール材と円筒芯体との摩擦力により決定される。
次に、他の塗布方法について図7に示す。塗液2上には、円筒芯体1の断面の外周外径よりも大きな円形の孔6を設けた環状体5を自由移動可能状態で設置する。塗布を行う際は、円筒芯体1を、孔6を通して上昇させる。この際、円筒芯体1と孔6との間隙により、塗膜4の膜厚が制限される。そのため、高粘度の塗液であっても、均一な膜厚に塗布することができる。
環状体5の材質は、塗液2によって侵されないものであり、種々の金属、プラスチック等から選ばれ、軽量化のために、中空構造でもよい。環状体5に設けられる孔6の内壁の形状は、塗液に浸る下部で芯体との間隙が広く、上部が狭い形状であれば、図7に示すように斜めの直線状であるもののほか、階段状や曲線状でもよい。
以下、環状体5の最小内径部分における円筒芯体1との間隙を本発明では「間隙」とし、環状体5の「高さ」とは、環状体5の最小内径部分の塗液面からの高さを示す。間隙は、所望の膜厚を鑑みて調整する。乾燥膜厚は、濡れ膜厚と塗液の不揮発分濃度の積であるが、これから所望の濡れ膜厚が求められ、前記間隙は、所望の濡れ膜厚の1倍〜2倍にするのがよい。1倍〜2倍とするのは、塗液の粘度及び/又は表面張力、及び皮膜の収縮などにより、間隙の距離が濡れ膜厚になるとは限らないからである。
環状体5は、塗液2上でわずかの力で動くことができるよう、自由移動可能状態で設置する。その方法としては、環状体5を塗液上に浮遊させる方法のほか、環状体5をロールやベアリングで支える方法、環状体5をエア圧で支える方法、などがある。
環状体5の孔6を通して円筒芯体1を上昇させると、塗液2の介在により、円筒芯体と環状体との間隙にて摩擦抵抗が生じ、環状体5には上昇力が作用し、持ち上げられる。その際、環状体5は円筒芯体1との摩擦抵抗が周方向で一定になるように水平方向に移動し、間隙が周方向で一定になる。
塗布していない時、環状体5には上昇力が作用していないのであるが、環状体5の浮力が不足する場合、あるいは環状体5の高さが高い場合等は、環状体5の底面が、塗布槽3の壁面(底面)又は環状シール材8に接触することとなる。そうなると塗布を開始しても、環状体5が上昇しにくいので、環状体5は塗布槽3の壁面(底面)又は環状シール材8との間に隙間を設けておくことが好ましい。そこで、図7に示すように、環状体5の外周面に環状体5を支える腕14、あるいは環状体5の底又は塗布槽3にピン15を設けて、環状体5を支えるのがよい。環状体5の塗液2への沈没を防止するための沈没防止部材としての腕14は、例えば、環状体5が塗液2にある程度浸る高さで塗布槽3の外壁上端に当接する形状で設けられ、また、ピン15は環状体5或いは塗布槽3内壁の所定の箇所に、環状体5が塗液2にある程度沈むと干渉するように設けられる。なお、沈没防止部材の構成は、腕14やピン15に限らず、環状体5の沈没を防止する構成であれば、例えば、板状、突起状、リング状の如何なる構成であってもよい。
次に円筒芯体1について説明する。被塗布物が感光体の場合、円筒芯体1にはアルミニウム、ステンレス鋼等の金属や、導電性を付与したプラスチックが用いられる。被塗布物が帯電ロールの場合、円筒芯体1は芯金の周囲に例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性に優れたゴム材からなる弾性層を設けたロールが用いられる。被塗布物が帯電ロールの場合、円筒芯体1は芯金の周囲に例えばウレタンゴムやスポンジ等の弾性層を設けたロールが用いられる。
本発明の環状塗布装置により無端ベルトを作製するには、円筒芯体1に皮膜形成用塗液を塗布した後、加熱硬化などを行い、形成された皮膜を芯体から剥離する。無端ベルトを作製するための円筒芯体は、アルミニウムやステンレス等の金属が好ましい。また、皮膜の剥離性を良くするため、その表面は、クロムやニッケルでメッキしたり、フッ素樹脂やシリコーン樹脂で表面を被覆したり、あるいは表面に離型剤を塗布することが有効である。
次に塗液について説明する。本明細書において、「塗液」とは、種々の溶液、分散液など、種々の液体を含む意である。
無端ベルトを作製する場合、塗液は樹脂材料及び/又はこれらの前駆体(以下、「樹脂材料等」という場合がある)を含有するものである。樹脂材料等として、ポリイミド(PIと略す)、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、フタル酸系ポリエステル、ポリカーボネート等がある。これらの中では、強度や寸法安定性の面でPIが特に好ましい。樹脂材料等を含有する塗液の固形分濃度は、15〜50%程度、粘度は10〜1000Pa・s、上昇速度は0.1〜1.5m/min程度であるのが好ましい。作製される無端ベルトの厚さは、25〜200μm程度である。
無端ベルトを作製するには、円筒芯体の表面に塗液を塗布した後、塗液を乾燥し、塗膜を芯体ごと所定温度で加熱すると、樹脂材料等が反応(硬化)し、皮膜が形成される。乾燥時に塗液が下方に垂れる場合、芯体を横にして回転しながら乾燥させてもよい。形成された皮膜を芯体から剥離して無端ベルトを得る。
乾燥時に、残留溶剤を完全に除去できない場合、あるいは加熱反応時に樹脂から発生する水等の気化成分が除去しきれない場合、樹脂皮膜に膨れが生じることが避けられないことがある。これは特にPI樹脂皮膜の膜厚が50μmを越えるような場合に顕著である。
その場合、芯体の表面を、Ra0.2〜2μm程度に粗面化することが有効である。これにより、PI樹脂皮膜から生じる残留溶剤又は水の蒸気は、芯体とPI樹脂皮膜の間にできるわずかな隙間を通って外部に出ることができ、膨れを防止することができる。芯体表面の粗面化には、ブラスト、切削、サンドペーパーがけ等の方法がある。
無端ベルトを接触帯電フィルムのような帯電体、或いは転写ベルトとして使用する場合、樹脂材料等の中に必要に応じて予め導電剤を分散させる。導電剤としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト、カーボンナノチューブ等の炭素系物質;銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金;酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO2・In2O3複合酸化物等の導電性金属酸化物;チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー等が挙げられる。導電剤を分散した塗液は、組成のむらを生じやすいので、環状体を回転させて撹拌することも有効である。
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
[実施例1]
(参考例1−1)
図1と同様な構成の環状塗布装置を用いて、肉厚1mm、外径30mmφ、長さ300mmのアルミニウム管を円筒芯体1(基体)とし、有機感光体ドラムを製造する一工程として、以下の下引き層を塗布した。なお、アルミニウム管の表面は、湿式ホーニングにより、JISB601−1994に規定された表面粗さRaで0.2μmに粗面化した。
内径60mm、高さ40mmの環状塗布槽3の底面に、内径29mmの円形の穴10を設けた、硬質ポリエチレン(商品名コウベポリシートEL;新神戸電機製)製の環状シール材8(サンドスラリー磨耗量15mg、厚さ0.3mm)を取り付けた。
また、円筒芯体1の上下には、外径30mmφ、長さ50mmのアルミニウム製中間体9を嵌めた。円筒芯体1と中間体9のそれぞれの端面には、面取りが施されており、嵌めた際の継ぎ目には、0.1〜0.5mmの段差もしくは隙間が生じている。
8ナイロン(ラッカマイド、大日本インキ化学社製)5質量部をメタノール40質量部及び1−ブタノール60質量部の混合溶媒に溶解し、粘度30mPa・sの下引き層形成用の塗液2を調製した。円筒芯体1を0.15m/minで上昇させることにより、その表面に塗膜4が塗布され、135゜Cで10分間の乾燥により、0.7μm厚の下引き層が形成された。
得られた下引き層には気泡痕は見られなかったが、塗液2には若干気泡が発生したが問題ないレベルであり、しかも塗液2の粘度が低いため自然に消えていた。
また、100本連続して塗布しても、得られた下引き層には磨耗粉に起因する欠陥は見られなかった。
(比較例1−1)
参考例1において、硬質ポリエチレン製の環状シール材8に代えて、軟質ポリエチレン(商品名コウベポリシートEH;新神戸電機製)製の環状シール材8(サンドスラリー摩耗量100mg、厚さ0.3mm)を用い、他は同様にして塗布を行った。その結果、得られた下引き層には気泡痕が見られ、塗液2には気泡が大量に発生していた。なお、塗液2の粘度が低いため自然に消えた。
また、100本連続して塗布したところ、最初の20本程度は問題なく塗布できたが、それ以後、約5本に1本の割で、下引き層中に異物欠陥が発生した。その異物を分析すると、ポリエチレンの微小な粉であった。環状シール材8が摩耗して粉が生じたと考えられる。
(比較例1−2)
参考例1において、硬質ポリエチレン製の環状シール材8に代えて、ポリプロピレン(商品名コウベポリシートPP;新神戸電機製)製の環状シール材8(サンドスラリー摩耗量40mg、厚さ0.3mm)を用い、他は同様にして塗布を行った。その結果、得られた下引き層には気泡痕が見られ、塗液2には気泡が発生していた。なお、塗液2の粘度が低いため自然に消えた。
また、100本連続して塗布したところ、最初の40本程度は問題なく塗布できたが、それ以後、約10本に1本の割で、下引き層中に異物欠陥が発生した。その異物を分析すると、ポリプロピレンの微小な粉であった。環状シール材が摩耗して粉が生じたと考えられる。
(参考例1−2)
図7と同様な構成の環状塗布装置を用い、以下のようにしてポリイミド前駆体溶液を塗布し、無端ベルトを作製した。
ポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(商品名:UワニスS、宇部興産(株)製)を塗液2とした。固形分濃度は約18%、粘度は5Pa・sである。これを内径120mm、高さ50mmの塗布槽3に入れた。底面には、長径29mm、短径26mmの楕円形の穴10を設けた、硬質ポリエチレン(商品名コウベポリシートEL;新神戸電機製)製の環状シール材8(サンドスラリー磨耗量15mg、厚さ0.5mm)を取り付けた。
外径30mm、長さ400mmのアルミニウム製円筒を用意し、球形アルミナ粒子(不二製作所社製、粒径105〜125μm)によるブラスト処理により、表面をRa1.0μmに粗面化した後、表面にシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理し、円筒芯体1とした。円筒芯体1の上下には、外径30mm、長さ50mmのアルミニウム製中間体9を嵌めた。それぞれの端面には、参考例1と同じく、面取りが施されている。
環状体5として、高さが25mm、外径が80mmで、最も狭い部分の内径が28.8mmの孔6を設けたアルミニウム製の中空体を作製した。環状体5の外側には、3本の腕14を取り付け、塗布しない時はそれが塗布槽3の上に乗るようにした。
円筒芯体1を環状体の孔6に通しながら、0.7m/minの速度で上昇させたところ、環状体5は当初より約20mm持ち上げられ、芯体1の上昇途中で環状体5が芯体1に接触することはなく、塗布後には、芯体1に濡れ膜厚が約600μmの塗膜4が形成された。その膜厚は芯体と環状体の孔の間隙により定まり、芯体の上昇速度には左右されなかった。
その後、円筒芯体1の軸方向を水平にして20rpmで回転させながら、120℃で60分間乾燥し、次いで芯体1を縦にして200℃で30分間、380℃で1時間加熱して樹脂を反応させた。室温に冷えてから皮膜を取り出すことにより、ポリイミド樹脂製の無端ベルトを得ることができた。
膜厚を測定すると、上端部から30mmを除いて、平均値70μmであり、面内に気泡に起因する欠陥はなかった。また、100本連続して塗布しても異物に起因する欠陥は見られなかった。得られた無端ベルトは、定着ベルトの基体として使用することができた。
また、環状体5を用いることで、ポリイミド前駆体溶液などの比較的粘度の高い塗液を用いて、その膜厚が比較的厚い場合であっても、やはり気泡を生じさせず、均一な膜厚で塗布できた。
(参考例1−3)
参考例1−2において、硬質ポリエチレン製の環状シール材8に代えて、超高分子量ポリエチレン((商品名ASプレート;旭エンジニアリング製))製の環状シール材8(サンドスラリー摩耗量3mg、厚さ0.5mm)を使用した。この環状シール材8は、硬質ポリエチレン製のものより更に硬くて円筒芯体1を穴10に通しにくかったので、環状塗布槽3に取り付け、100℃に加熱して軟らかくした後、穴10に円筒芯体1を通した状態で、130℃に温度を上げて20分間加熱して、冷却した。これにより、図2に示す形状の環状シール材8となった。これ以外は、参考例2と同様にして塗布を行った。
その結果、得られた無端ベルトの膜厚を測定すると、上端部から30mmを除いて、平均値70μmであり、面内に気泡に起因する欠陥はなかった。また、100本連続して塗布しても異物に起因する欠陥は見られなかった。超高分子量ポリエチレン製の環状シール材8は、硬質ポリエチレン製のものより更に硬いので、円筒芯体1との摩擦が低減され、さらに摩耗に対する耐久性は更に増した。また、弾性が乏しい環状シール材8の突出片8b(穴10縁部)を、円筒芯体1が通過させるときと同様に通過方向(上昇方向)に突出させて盛り上がった形状にしておくことで、円筒芯体1の通過時、環状シール材8の(穴10縁部)の弾性変形が少なくなり、円筒芯体1の段差をスムーズに通過出来た。
また、環状体5を用いることで、ポリイミド前駆体溶液などの比較的粘度の高い塗液を用いて、その膜厚が比較的厚い場合であっても、やはり気泡を生じさせず、均一な膜厚で塗布できた。
(実施例1−4)
孔径10〜50μm程度の微小な隙間を有する多孔質超高分子量ポリエチレン(商品名:サンマット、日東電工製)はサンドスラリー磨耗量が2mgであり、多孔質であるため、参考例1−3の超高分子量ポリエチレンよりも柔軟性があり、粗面化した芯体との摩擦も小さく、環状シール材8として非常に好ましい材料であるが、多孔質であるので、塗液が染み出る問題があった。そこで、0.3mm厚の上記多孔質超高分子量ポリエチレンと0.3mm厚の軟質ポリエチレン(比較例1−1記載)をアルミニウム板ではさみ、140℃に加熱して両者を融着させた。その後、長径29mm、短径26mmの楕円形の穴10を設け、環状シール材8とした(図8参照)。他は、参考例1−2と同様にしてPI樹脂無端ベルトを作製した。
その結果、得られた無端は面内に気泡に起因する欠陥はなかった。また、100本連続して塗布しても異物に起因する欠陥は見られなかった。環状シール材は、芯体と接する側が多孔質超高分子量ポリエチレンであるので、硬質ポリエチレン製のものより摩耗に対する耐久性は更に増したほか、超高分子量ポリエチレンよりも柔軟性があるため、参考例1−3のように加熱して変形させる必要はなかった。
これら実施例から、サンドスラリー磨耗量の小さい環状シール材8を使用することで、気泡の発生を抑制する共に、磨耗による異物の混入が防止されることがわかる。
[実施例2]
(比較例2−1)
図1と同様な構成の環状塗布装置を用い、以下のようにしてポリイミド前駆体溶液を塗布し、無端ベルトを作製した。
ポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(商品名:UワニスS、宇部興産(株)製)を塗液2とした。固形分濃度は約18%、粘度は5Pa・sである。これを内径120mm、高さ50mmの塗布槽3に入れた。底面には、長径67mm、短径64mmの楕円形の穴10を設けた、0.5mm厚の軟質ポリエチレン製の環状シール材8を取り付けた。この後、環状塗布槽3ごと減圧して、塗液投入時に生じる気泡を除去した。
外径68mm、長さ500mmのアルミニウム製円筒を用意し、球形アルミナ粒子(不二製作所社製、粒径105〜125μm)によるブラスト処理により、表面をRa1.0μmに粗面化した後、表面にシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理し、円筒芯体1とした。円筒芯体1の上下には、外径68mm、長さ50mmのアルミニウム製中間体9を嵌めた。それぞれの端面には、参考例1−1と同じく、面取りが施されている。
円筒芯体1を0.8m/minの速度で上昇させて塗布を行い、上記式(a)V=Vs−ktに従い1次関数的に0.5秒かけて減速して円筒芯体1を停止させ、塗布を終了した。ここで、式(a)においては、Vsは0.8m/min、k=1.6 、t=0.5sである。
その後、芯体1の軸方向を水平にして18rpmで回転させながら、120℃で60分間乾燥した。その後、340℃で30分間加熱して樹脂を反応させた。室温に冷えてから皮膜を取り出すことにより、ポリイミド樹脂製の無端ベルトを得ることができた。
無端ベルトを作製した後、環状塗布槽3中の塗液2を観察したところ、気泡が3つ観察された。また、1本目に作製した無端ベルトには気泡痕は見られなかったが、2本目に作製した無端ベルトには2つの気泡痕が観察された。結果を表1に示す。
(参考例2−1)
円筒芯体1を、上記式(a)V=Vs−ktに従い1次関数的に1.5秒かけて減速して円筒芯体1を停止させ、塗布を終了した以外は、比較例2−1と同様にして無端ベルトを作製した。ここで、式(a)においては、Vsは0.8m/min、k=0.53、t=1.5sである。
無端ベルトを作製した後、環状塗布槽3中の塗液2を観察したところ、気泡は観察されなかった。また、1本目、2本目以降に作製した無端ベルトに気泡痕は観察されなかった。結果を表1に示す。
(参考例2−2)
円筒芯体1を、上記式(a)V=Vs−ktに従い1次関数的に3秒かけて減速して円筒芯体1を停止させ、塗布を終了した以外は、比較例2−1と同様にして無端ベルトを作製した。ここで、式(a)においては、Vsは0.8m/min、k=0.27、t=3sである。
無端ベルトを作製した後、環状塗布槽3中の塗液2を観察したところ、気泡は観察されなかった。また、1本目、2本目以降に作製した無端ベルトに気泡痕は観察されなかった。結果を表1に示す。
(参考例2−3)
円筒芯体1を、上記式(a)V=Vs−ktに従い1次関数的に5秒かけて減速して円筒芯体1を停止させ、塗布を終了した以外は、比較例2−1と同様にして無端ベルトを作製した。ここで、式(a)においては、Vsは0.8m/min、k=0.16、t=5sである。
無端ベルトを作製した後、環状塗布槽3中の塗液2を観察したところ、気泡は観察されなかった。また、1本目、2本目以降に作製した無端ベルトに気泡痕は観察されなかった。結果を表1に示す。
(比較例2−2)
図7と同様な構成の環状塗布装置を用い、以下のようにしてポリイミド前駆体溶液を塗布し、無端ベルトを作製した。
ポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(商品名:UワニスS、宇部興産(株)製)を塗液2とした。固形分濃度は約18%、粘度は5Pa・sである。これを内径120mm、高さ50mmの塗布槽3に入れた。底面には、長径67mm、短径64mmの楕円形の穴10を設けた、0.5mm厚の軟質ポリエチレン製の環状シール材8を取り付けた。この後、環状塗布槽3ごと減圧して、塗液投入時に生じる気泡を除去した。
外径68mm、長さ500mmのアルミニウム製円筒を用意し、球形アルミナ粒子(不二製作所社製、粒径105〜125μm)によるブラスト処理により、表面をRa1.0μmに粗面化した後、表面にシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理し、円筒芯体1とした。円筒芯体1の上下には、外径68mm、長さ50mmのアルミニウム製中間体9を嵌めた。それぞれの端面には、参考例1−1と同じく、面取りが施されている。
環状体5として、高さが25mm、外径が84mmで、最も狭い部分の内径が68.9mmの孔6を設けたステンレス製の中空体を作製した。環状体5の外側には、3本の腕14を取り付け、塗布しない時はそれが塗布槽3の上に乗るようにした。
円筒芯体1を環状体5の孔6に通しながら、0.8m/minの速度で上昇させて塗布を行い、上記式(a)V=Vs−ktに従い1次関数的に0.5秒かけて減速して円筒芯体1を停止させ、塗布を終了した。ここで、式(a)においては、Vsは0.8m/min、k=1.6、t=0.5sである。
なお、塗布の際、環状体5は当初より約20mm持ち上げられ、芯体1の上昇途中で環状体5が芯体1に接触することはなく、塗布後には、芯体1に濡れ膜厚が約600μmの塗膜4が形成された。その膜厚は芯体と環状体の孔の間隙により定まり、芯体の上昇速度には左右されなかった。
その後、芯体1の軸方向を水平にして18rpmで回転させながら、120℃で60分間乾燥した。その後、340℃で30分間加熱して樹脂を反応させた。室温に冷えてから皮膜を取り出すことにより、ポリイミド樹脂製の無端ベルトを得ることができた。
無端ベルトを作製した後、環状塗布槽3中の塗液2を観察したところ、6つの気泡が観察された。また、1本目に作製した無端ベルトには気泡痕は観察されなかったが、2本目に作製した無端ベルトには3つの気泡痕が観察された。結果を表1に示す。
(参考例2−4)
円筒芯体1を、上記式(a)V=Vs−ktに従い1次関数的に1.5秒かけて減速して円筒芯体1を停止させ、塗布を終了した以外は、比較例2−2と同様にして無端ベルトを作製した。ここで、式(a)においては、Vsは0.8m/min、k=0.53、t=1.5sである。
無端ベルトを作製した後、環状塗布槽3中の塗液2を観察したところ、3つの気泡が観察された。また、1本目に作製した無端ベルトには気泡痕は観察されなかったが、2本目に作製した無端ベルトには2つの気泡痕が観察された。結果を表1に示す。
(参考例2−5)
円筒芯体1を、上記式(a)V=Vs−ktに従い1次関数的に3秒かけて減速して円筒芯体1を停止させ、塗布を終了した以外は、比較例2−2と同様にして無端ベルトを作製した。ここで、式(a)においては、Vsは0.8m/min、k=0.27、t=3sである。
無端ベルトを作製した後、環状塗布槽3中の塗液2を観察したところ、1つの気泡が観察された。また、1本目、2本目以降に作製した無端ベルトに気泡痕は観察されなかった。結果を表1に示す。
表1の結果から、急激に円筒芯体1を停止して塗布を終了させるときに比べ、徐々に円筒芯体1を停止して塗布を終了させると、塗液に気泡が発生を抑制し、ベルトに気泡痕の発生を防止できることがわかる。
本発明の環状塗布装置の一例を示す概略断面図である。
本発明の環状塗布装置の環状シール材の一例を示す平面図である。
本発明の環状塗布装置の環状シール材と円筒芯体との接触状態を説明するたもの説明図である。
従来の環状塗布装置の環状シール材と円筒芯体との接触状態を説明するための説明図である。
本発明の環状塗布装置の環状シール材の他の一例を示す平面図である。
本発明の環状塗布装置の他の一例を示す概略断面図である。
従来の環状塗布装置の一例を示す概略断面図である。
本発明の環状シール材の構成を示す断面図である。
本発明の環状シール材の他の構成を示す断面図である。
従来の環状塗布装置を示す概略断面図である。
従来の環状塗布装置において気泡が発生する推定メカニズムを示す図である。
符号の説明
1 円筒芯体
2 塗液
3 環状塗布槽
4 塗膜
5 環状体
6 孔
8 環状シール材
9 中間体
10 穴